説明

剥離ライナーおよび該剥離ライナーが用いられた両面粘着テープ又はシート

【課題】 特別な製造装置が製造工程中に設けられていなくても、重面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度の経時変化を抑制できる剥離ライナーを得る。
【解決手段】 剥離ライナーは、基材の両面に離型処理層が形成された構成を有しており、基材の一方の面側の離型処理層が熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成され、且つ基材の他方の面側の離型処理層が電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成されていることを特徴とする。電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤としては、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤が好適である。熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層は、粘着面に対する剥離強度が小さい側の離型処理層として利用でき、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層は、粘着面に対する剥離強度が大きい側の離型処理層として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離ライナーおよび該剥離ライナーが用いられた両面粘着テープ又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の紙、加工紙、合成フィルム等の基材表面に、シリコーン組成物の硬化皮膜を形成することにより、基材に、粘着性物質に対する剥離性を付与することが知られている。この際、シリコーン組成物による皮膜を形成する方法としては、白金系化合物を触媒として、脂肪族不飽和結合含有基(アルケニル基など)を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて硬化皮膜を形成する方法、有機スズ化合物等の有機酸金属塩触媒を使用し、オルガノポリシロキサンを縮合反応させて硬化皮膜を形成する方法などが知られている。これらの方法において使用されるシリコーン組成物には、有機溶剤に溶解された形態の溶剤タイプ、水に乳化された形態のエマルションタイプ、シリコーン組成物のみからなる無溶剤タイプなどが知られている。特に、現在では、生産性の面から、硬化速度の速い付加反応タイプのシリコーン組成物が剥離剤として多く使用され、また、均一な硬化皮膜が得られるため、前記付加反応タイプのシリコーン組成物は、トルエン等の有機溶剤に溶解した形態で生産される傾向にある。
【0003】
なお、シリコーン組成物等の剥離剤による硬化皮膜(離型処理層)は、粘着剤層に対する剥離強度の大きさにより分類することができ、例えば、硬化皮膜の剥離強度の大きい方から、いわゆる「重剥離タイプ」、「中剥離タイプ」、「軽剥離タイプ」の3つに分類することができる。
【0004】
また、両面粘着テープ又はシートは、両面の粘着面が、1枚の剥離ライナー(セパレータ)により保護されている場合、通常、剥離ライナーは、基材の各面に、粘着面に対する剥離強度が大きい側の離型処理層(重面側離型処理層)と、粘着面に対する剥離強度が小さい側の離型処理層(軽面側離型処理層)とが形成された構成を有している。すなわち、両面が剥離面となっている剥離ライナーは、通常、一方の剥離面(離型処理層表面)が、粘着面に対する剥離強度が大きい側の剥離面(重面)となっており、他方の剥離面が、剥離面(軽面)となっている。具体的には、図1で示されるように、基材の両面に粘着剤層が形成され且つロール状に巻回された形態の両面粘着テープは、通常、剥離ライナー用基材(セパレータ基材)のそれぞれの面に、重面側離型処理層、軽面側離型処理層が形成された構成の剥離ライナーにおける重面側離型処理層と、両面粘着テープにおける一方の粘着剤層とが接触するように貼り合わせられ、また両面粘着テープにおける他方の粘着剤層が、剥離ライナーにおける軽面側離型処理層と接触し且つ軽面側離型処理層が外面側に位置する形態でロール状に巻回された形態を有している。従って、このロール状に巻回された形態の両面粘着テープを巻き戻す際には、通常、剥離ライナーの軽面側離型処理層と、粘着剤層との間で剥離され、常に、ロール状に巻回された形態の粘着テープの外面は、剥離ライナーの軽面側離型処理層表面とすることができる。
【0005】
なお、図1は、ロール状に巻回された形態の両面粘着テープを示す概略図である。図1において、1はロール状に巻回された形態の両面粘着テープ(両面粘着テープ巻回体)、2は両面粘着テープ、2aは粘着剤層、2bは基材(両面粘着テープ用基材)、2cは粘着剤層、3は剥離ライナー、3aは軽面側離型処理層、3bは基材(剥離ライナー用基材)、3cは重面側離型処理層である。両面粘着テープ2は、基材2bの一方の面に粘着剤層2aが形成され、他方の面に粘着剤層2cが形成された構成を有している。また、剥離ライナー3は、基材3bの一方の面に軽面側離型処理層3aが形成され、他方の面に重面側離型処理層3cが形成された構成を有している。両面粘着テープ巻回体1は、両面粘着テープ2が剥離ライナー3に、両面粘着テープ2の一方の面側の粘着剤層2aと、剥離ライナー3の重面側離型処理層3cとが接触するようにして貼り合わせられたシート状物を、粘着剤層2cが軽面側離型処理層3aと接触し且つ軽面側離型処理層3aを外側に位置するようにしてロール状に巻回された形態を有している。
【0006】
しかしながら、特に、硬化皮膜の剥離強度が中剥離タイプ〜重剥離タイプの範囲にある付加反応タイプのシリコーン系剥離剤(中剥離タイプ〜重剥離タイプの硬化皮膜を形成することが可能な付加反応タイプのシリコーン系剥離剤)は、硬化皮膜の形成時から、粘着性物質を貼り合わせ加工するまでの経時で、剥離強度が著しく低下するという問題があった。従って、このようなシリコーン系剥離剤を、両面粘着テープに用いられる剥離ライナーにおける重面側離型処理層を形成するために用いると、経時で、軽面側離型処理層との剥離強度の有意差が無くなり、ロール状に巻回された形態の両面粘着テープを巻き戻す際に、重面側離型処理層と粘着剤層との間で剥離されてしまう現象(いわゆる「泣き別れ現象」)が発生してしまい、粘着テープを有効に使用することができなくなるという重大問題に発展する場合があった。
【0007】
この問題に対して、例えば、熱または電離性放射線によるシリコーン系剥離剤の反応硬化後に、さらに、積算照度500〜1200(mJ/cm2)の紫外線を照射する特別な処理を施すことにより、経時による剥離強度の低下を防ぐ方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、既存のプロセスに紫外線照射装置を設ける必要があり、なおかつ、剥離強度の低下を防止するのに効果を示す積算照度を達成するためには、塗工速度の制限や大規模な紫外線照射設備が必要となるなどの問題が生じる。
【0008】
【特許文献1】特許第3514582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、製造に際して特別な製造装置が製造工程中に設けられていなくても、基材の一方の面に形成された重面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度の経時変化を抑制又は防止させることができる剥離ライナー、および該剥離ライナーが用いられた両面粘着テープ又はシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有せず、電離性放射線硬化性のカチオン硬化型シリコーン系剥離剤を用いて、重面側離型処理層を形成すると、該重面側離型処理層の剥離強度の経時変化を抑制又は防止することができ、重面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度の方が、軽面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度よりも大きくなっている状態を有効に保持させることができ、泣き別れ現象の発生を抑制又は防止することができることを見出した。
【0011】
より具体的には、従来、重面側離型処理層を形成するための剥離剤としては、熱硬化型シリコーン系剥離剤が用いられており、この熱硬化型シリコーン系剥離剤は熱付加型であり、重面側離型処理層は、ケイ素原子に結合するビニル基(SiCH=CH2基)を含有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、白金触媒の下、熱硬化させて、硬化皮膜を形成させることにより、形成されている。この場合、皮膜が十分に硬化するには、SiCH=CH2基に対するSiH基の割合は1〜1.2で、SiH基が過剰になっていることが重要であり、そのため、皮膜硬化後にもSiH基が皮膜中に残存する。この残存しているSiH基が粘着剤層に化学的又は擬化学的に作用するため、剥離強度がSiH基の残存量に影響される。このSiH基は、大気中の水等と反応して消失しうるため、経時により、SiH基の量が減少し、剥離強度が低下する現象が顕著となって現れる。そこで、本発明では、重面側離型処理層を形成するための剥離剤として、SiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられていない電離性放射線硬化性のカチオン硬化型シリコーン系剥離剤を使用することにより、経時による剥離強度の低下という問題を解決し、軽面側離型処理層と重面側離型処理層とに関する剥離強度の有意差を有効に保持させることができ、泣き別れ現象の発生を抑制又は防止させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、基材の両面に離型処理層が形成された構成を有する剥離ライナーであって、基材の一方の面側の離型処理層が熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成され、且つ基材の他方の面側の離型処理層が電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成されていることを特徴とする剥離ライナーである。
【0013】
前記電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤としては紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を好適に用いることができる。
【0014】
本発明の剥離ライナーにおいて、熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層は、粘着面に対する剥離強度が小さい側の離型処理層として利用することができ、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層は、粘着面に対する剥離強度が大きい側の離型処理層として利用することができる。このような電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層は、粘着面に対する剥離強度(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、23℃、50%RH)が0.1〜1.0N/50mmであり、且つ温度60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置した際の剥離強度の低下率が50%以下である特性を有していることが好ましい。
【0015】
本発明は、また、両面の粘着面が1枚の剥離ライナーにより保護されている構成を有している両面粘着テープ又はシートであって、剥離ライナーとして、前記剥離ライナーが用いられていることを特徴とする両面粘着テープ又はシートである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の剥離ライナーによれば、特別な製造装置を必要とする特別な処理が施されていなくても、基材の一方の面に形成された重面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度の経時変化を抑制又は防止させることができる。従って、本発明の剥離ライナーは、特別な製造装置を必要とする特別な処理が施されていなくても、基材の一方の面に形成された重面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度の方が、基材の他方の面に形成された軽面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度よりも大きくなっている状態を有効に維持させることができる。そのため、本発明の剥離ライナーを用いて作製された両面粘着テープ又はシートは、使用する際には、軽面側離型処理層と粘着剤層との間で剥離させることができ、重面側離型処理層と粘着剤層との間で剥離されてしまう現象(いわゆる「泣き別れ現象」)の発生を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[剥離ライナー]
本発明の剥離ライナーは、基材の一方の面に熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層(「熱硬化型シリコーン系離型処理層」と称する場合がある)を有しており、且つ基材の他方の面に電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層(「電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層」と称する場合がある)を有している。このように、剥離ライナーは、基材の両面に離型処理層が形成されているとともに、この両面の離型処理層うち一方の離型処理層が、電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層である構成を有しているので、この電離性放射線硬化型離型処理層を重面側離型処理層(粘着面に対する剥離強度が大きい側の離型処理層)として用いることにより、重面側離型処理層の粘着面に対する剥離強度の経時変化を長期間にわたり抑制又は防止させることができる。
【0018】
(熱硬化型シリコーン系剥離剤)
熱硬化型シリコーン系剥離剤としては、熱により硬化が生じるタイプのシリコーン系剥離剤であれば特に制限されないが、熱による付加反応型の架橋(硬化反応)により硬化して剥離性皮膜を形成するタイプの熱付加反応型シリコーン系剥離剤を好適に用いることができる。熱硬化型シリコーン系剥離剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
前記熱付加反応型シリコーン系剥離剤としては、分子中にSi−H結合を有する基に対して反応性を有する基を有しているポリシロキサン系ポリマーと、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を有しているポリシロキサン系ポリマーとを含有する熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤を用いることができる。なお、「Si−H結合」とは、「ケイ素原子(Si)と水素原子(H)との結合」を意味している。
【0020】
分子中にSi−H結合を有する基に対して反応性を有する基を有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、Si−H結合を有する基に対して反応性を有する基としては、例えば、ビニル基やヘキセニル基等のアルケニル基などが挙げられる。前記アルケニル基は、分子中にSi−H結合を有する基に対して反応性を有する基を有しているポリシロキサン系ポリマーの分子中に2個以上有していることが好ましい。また、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、ケイ素原子に結合している水素原子は、分子中に2個以上有していることが好ましい。従って、熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤としては、分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーと、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーとを含有するポリシロキサン系剥離剤が好適である。
【0021】
分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、アルケニル基は、通常、主鎖又は骨格を形成しているポリシロキサン系ポリマーのケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に直接結合している。従って、分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーとしては、分子中に、ケイ素原子に直接結合しているアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーを好適に用いることができる。なお、主鎖又は骨格を形成しているポリシロキサン系ポリマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン系ポリマー、ポリジエチルシロキサン系ポリマー、ポリメチルエチルシロキサン系ポリマー等のポリアルキルアルキルシロキサン系ポリマーや、ポリアルキルアリールシロキサン系ポリマーの他、ケイ素原子含有モノマー成分が複数種用いられている共重合体[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン)など]などが挙げられ、ポリジメチルシロキサン系ポリマーが好適である。
【0022】
一方、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、水素原子が結合しているケイ素原子は、主鎖中のケイ素原子、側鎖中のケイ素原子のいずれであってもよい。分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーとしては、ポリジメチルハイドロジェンシロキサン系ポリマー[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−メチルシロキサン)等]が好適である。なお、熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤において、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーは、架橋剤としての機能を有している。
【0023】
分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーの使用量としては、特に制限されず、皮膜の硬化性、剥離強度などに応じて適宜選択することができる。具体的には、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーは、皮膜を十分に硬化させるためには、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおける水素原子が結合しているケイ素原子(すなわち、Si−H結合のケイ素原子)のモル数(「モル数(X)」と称する場合がある)と、分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおけるアルケニル基のモル数(「モル数(Y)」と称する場合がある)とが、モル数(X)>モル数(Y)となる割合で用いることが好ましく、通常、モル数(X)/モル数(Y)が1.0〜2.0(好ましくは1.2〜1.6)となる割合で用いられる。
【0024】
分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーを、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー(架橋剤)により硬化させる際には、触媒を用いることができる。該触媒としては、白金系触媒(例えば、白金微粒子、塩化白金酸又はその誘導体等の白金系化合物など)を好適に用いることができる。触媒の使用量としては、特に制限されないが、例えば、分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン系ポリマーに対して0.1〜1000ppm(好ましくは1〜100ppm)の範囲から選択することができる。
【0025】
熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤は、前記構成成分(例えば、分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー、必要に応じて触媒や各種添加剤など)を、必要に応じて有機溶剤を用いて混合することにより調製することができる。なお、熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤は、ポリシロキサン系ポリマー等のポリマー成分が有機溶剤に溶解された状態で用いることができる。熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤には、公知乃至慣用の添加剤[例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料等)など]が適宜配合されていてもよい。
【0026】
このような熱付加反応型ポリシロキサン系剥離剤としては、例えば、商品名「KS−847T」(信越化学社製)、商品名「KS−774」(信越化学社製)、商品名「KS−841」(信越化学社製)などが市販されている。
【0027】
(電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤)
電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤としては、電離性放射線(α線、β線、γ線、中性子線、電子線や、紫外線など)により硬化が生じるタイプのシリコーン系剥離剤であれば特に制限されないが、紫外線照射による架橋(硬化反応)により硬化して剥離性皮膜を形成するタイプの紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を好適に用いることができる。電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
前記紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、紫外線照射により硬化することが可能なシリコーン系剥離剤であれば特に制限されず、各種の硬化タイプ(硬化メカニズム)のものを用いることができる。このような硬化タイプとしては、例えば、カチオン重合により硬化するカチオン重合型、ラジカル重合により硬化するラジカル重合型、ラジカル付加重合により硬化するラジカル付加型、ヒドロシリル化反応により硬化するヒドロシリル化反応型などが挙げられる。紫外線硬化型シリコーン系剥離剤の硬化タイプとしては、特に、カチオン重合型が好適である。すなわち、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を好適に用いることができる。
【0029】
なお、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤では、主鎖のポリシロキサン成分中にエポキシ官能性有機基が1種又は2種以上導入されたエポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分が、1種又は2種以上組み合わせられて用いられている。エポキシ官能性有機基は、ポリシロキサン成分中の主鎖又は側鎖の珪素原子に、直接結合していてもよく、2価の基(例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基等の2価の有機基など)を介して結合していてもよい。エポキシ官能性有機基は、主鎖のポリシロキサン成分中に少なくとも2つ導入されていることが重要である。
【0030】
具体的には、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤において、エポキシ官能性有機基としては、グリシジル基、グリシドキシ基(グリシジルオキシ基)、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2,3−エポキシシクロペンチル基などが挙げられる。
【0031】
エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分は、例えば、ベースポリマーであるポリメチルハイドロジェンシロキサンに、4−ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、7−エポキシ−1−オクテン等のオレフィン性エポキシ単量体を、白金化合物等の触媒を用いて付加反応させることにより得ることができる。なお、エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分は、直鎖状、分岐鎖状のいずれの鎖状形態を有していてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0032】
また、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤では、紫外線開裂型開始剤(光重合開始剤)として、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤(オニウム塩系光重合開始剤)を用いることができる。オニウム塩系紫外線開裂型開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、例えば、特開平6−32873号公報で記載されているオニウム塩光開始剤や、特開2000−281965号公報で記載されているオニウム塩系光開始剤、特開平11−228702号公報で記載されているオニウム塩系光開始剤、特公平8−26120号公報で記載されているオニウム塩系光開始剤などが挙げられる。このようなオニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩などが挙げられる。オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩が好適である。
【0034】
より具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩としては、「Y2+-(Yは置換基を有していてもよいアリール基を示す。また、X-は、非求核性且つ非塩基性の陰イオンである。)」で表される化合物が挙げられる。なお、X-の非求核性且つ非塩基性の陰イオンとしては、例えば、SbF6-、SbCl6-、BF4-、[B(C654-、[B(C654-、[B(C64CF34-、[(C652BF2-、[C65BF3-、[B(C6324-、AsF6-、PF6-、HSO4-、ClO4-などが挙げられる。このような陰イオンとしては、アンチモン系の陰イオン、ホウ素系の陰イオンが好適である。
【0035】
なお、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩は、前記ジアリールヨードニウム塩に対応した化合物が挙げられる。具体的には、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩としては、それぞれ、「Y3+-」、「Y3Se+-」、「Y4+-」、「YN2+-」(Y、X-は、前記に同じ)で表される化合物を用いることができる。
【0036】
オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、アンチモン原子を含有する紫外線開裂型開始剤(アンチモン系紫外線開裂型開始剤)、ホウ素原子を含有する紫外線開裂型開始剤(ホウ素系紫外線開裂型開始剤)を好適に用いることができ、特に、アンチモン原子を含有するジアリールヨードニウム塩系紫外線開裂型開始剤や、ホウ素原子を含有するジアリールヨードニウム塩系紫外線開裂型開始剤が好適である。
【0037】
従って、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、例えば、分子中に少なくとも2つのエポキシ官能性有機基を有するポリシロキサン成分(エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分)と、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤とを少なくとも含有するものなどが挙げられる。カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤において、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤の割合としては、触媒量であれば特に制限されないが、例えば、エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分100重量部に対して0.1〜8重量部(好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0038】
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤は、前記構成成分(エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分、必要に応じてオニウム塩系紫外線開裂型開始剤や各種添加剤など)を、必要に応じて有機溶剤を用いて混合することにより調製することができる。なお、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤は、エポキシ官能性シリコーン系ポリマー成分等のポリマー成分が有機溶剤に溶解された状態で用いることができる。カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤には、公知乃至慣用の添加剤[例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料等)など]が適宜配合されていてもよい。
【0039】
このようなカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離剤としては、例えば、商品名「X−62−7622」(信越化学社製)、商品名「X−62−7629」(信越化学社製)、商品名「X−62−7655」(信越化学社製)、商品名「X−62−7634」(信越化学社製)、商品名「X−62−7658」(信越化学社製)などが市販されている。
【0040】
(基材)
本発明の剥離ライナーでは、基材(剥離ライナー用基材)が用いられている。このような剥離ライナー用基材としては、特に制限されず、プラスチック系基材、紙系基材、繊維系基材などの各種基材を用いることができる。剥離ライナー用基材は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。剥離ライナー用基材において、プラスチック系基材としては、各種のプラスチック系基材から適宜選択して用いることができ、例えば、ポリオレフィン系基材(ポリエチレン系基材、ポリプロピレン系基材等)、ポリエステル系基材(ポリエチレンテレフタレート系基材、ポリエチレンナフタレート系基材、ポリブチレンテレフタレート系基材等)、ポリアミド系基材(いわゆる「ナイロン」系基材)、セルロース系基材(いわゆる「セロハン」系基材)などが挙げられる。また、紙系基材としては、各種の紙系基材から適宜選択して用いることができ、例えば、和紙、洋紙、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙、クレーコート紙、トップコート紙、合成紙などが挙げられる。
【0041】
剥離ライナー用基材には、必要に応じて、その表面をコロナ放電処理等の各種表面処理を施したり、エンボス加工等の各種表面加工を施したりすることができる。
【0042】
剥離ライナー用基材の厚みとしては、特に制限されず、用途等に応じて適宜選択することができ、一般には、2〜200μm(好ましくは25〜150μm)の範囲から選択することができる。
【0043】
剥離ライナーは、剥離ライナー用基材の一方の面に熱硬化型シリコーン系離型処理層を形成し、剥離ライナー用基材の他方の面に電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層を形成することにより、製造することができる。具体的には、剥離ライナーの作製方法としては、剥離ライナー用基材の一方の面に、熱硬化型シリコーン系剥離剤を、乾燥乃至硬化後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で塗布して、加熱により乾燥乃至硬化させて熱硬化型シリコーン系離型処理層を形成した後、剥離ライナー用基材の他方の面に、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤を、乾燥乃至硬化後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で塗布して、必要に応じて加熱により乾燥させた後、電離性放射線(紫外線など)の照射により硬化させて電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層を形成することにより、剥離ライナーを作製する方法などが挙げられる。
【0044】
なお、熱硬化型シリコーン系剥離剤を乾燥乃至硬化させる際に加熱する方法としては、特に制限されず、公知の加熱方法(例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線等の電磁波を用いた加熱方法など)から適宜選択して採用することができる。また、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤を硬化させる際に電離性放射線を照射する方法としては、特に制限されず、公知の電離性放射線照射方法(例えば、有電極の高圧水銀ランプ、オゾンレスランプ、メタルハライドランプ、無電極マイクロウェーブランプ等の公知の紫外線ランプを用いた紫外線照射方法など)から適宜選択して採用することができる。
【0045】
熱硬化型シリコーン系剥離剤や、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤などの剥離剤は、適正な塗布量で、基材(剥離ライナー用基材)上に塗布することが重要である。剥離剤の塗布量が、少なすぎると、剥離強度(剥離に要する力)が所望する剥離強度よりもが大きくなって実用上問題が生じ、一方、多すぎると、コストが高くなって経済的に不利になる。剥離剤の適正な塗布量(固形分)としては、用いられる粘着剤の種類や、剥離ライナー用基材の種類、熱硬化型シリコーン系剥離剤の種類、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜10g/m2程度であり、好ましくは0.05〜5g/m2である。
【0046】
なお、剥離ライナー用基材に、剥離剤(熱硬化型シリコーン系剥離剤、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤)を塗布する際には、例えば、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーターなどの公知の塗工装置を適宜選択して使用することができる。
【0047】
本発明の剥離ライナーでは、各剥離処理層における粘着面に対する剥離強度(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、23℃、50%RH)は、特に制限されないが、電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層が重面側離型処理層として有効に利用することができるような剥離強度となっていることが好ましい。具体的には、電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層における粘着面に対する剥離強度(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、23℃、50%RH)としては、例えば、0.1〜1.0N/50mm(好ましくは0.15〜0.8N/50mm、さらに好ましくは0.2〜0.6N/50mm)の範囲から適宜選択することができる。なお、この際、熱硬化型シリコーン系離型処理層は、軽面側離型処理層として有効に利用することができるような剥離強度(すなわち、前記電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層における粘着面に対する剥離強度よりも小さな剥離強度)を有していることが重要である。熱硬化型シリコーン系離型処理層における粘着面に対する剥離強度(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、23℃、50%RH)としては、例えば、0.01〜0.3N/50mm(好ましくは0.03〜0.2N/50mm、さらに好ましくは0.05〜0.15N/50mm)の範囲から適宜選択することができる。なお、本発明において、各剥離処理層における粘着面に対する剥離強度は、商品名「No.502」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ)を用いて測定される値とする。
【0048】
剥離ライナーの各離型処理層における粘着面に対する剥離強度は、次のようにして求められる。まず、商品名「No.502」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm)の黄色剥離紙を剥がして、粘着面を露出させた後、該粘着面を、50℃の環境下で1日間放置された剥離ライナーの所定の離型処理層(電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層または熱硬化型シリコーン系離型処理層)の表面にハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、100℃の環境下1時間の条件で1Kgの荷重をかけた状態で放置させて貼り合わせ、その後、23℃、50%RHの環境下で1時間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで剥離ライナーを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の最高値を読み取り、該応力の最高値を剥離強度(N/50mm)とすることにより求められる。
【0049】
特に、本発明では、電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層は、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成されているので、粘着面に対する剥離強度の経時安定性が優れている。具体的には、電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層において、温度60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置した際の剥離強度の低下率は、例えば、50%以下(0〜50%)の範囲から適宜選択することができ、好ましくは40%以下(さらに好ましくは30%以下)である。
【0050】
電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層における剥離強度の低下率は、次のようにして求められる。まず、剥離ライナーを、60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置したものを経時サンプルとし、該放置前の剥離ライナーを初期サンプルとする。次に、商品名「No.502」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm)の黄色剥離紙を剥がして、粘着面を露出させた後、該粘着面を、前記初期サンプルの所定の離型処理層(電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層または熱硬化型シリコーン系離型処理層)の表面にハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、50℃の環境下1時間の条件で1Kgの荷重をかけた状態で放置させて貼り合わせ、その後、23℃、50%RHの環境下で1時間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで剥離ライナーを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の最高値を読み取り、該応力の最高値を初期サンプルの剥離強度(W0)(N/50mm)とする。
【0051】
また、前記と同様にして、商品名「No.502」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm)の黄色剥離紙を剥がして、粘着面を露出させた後、該粘着面を、経時サンプルの所定の離型処理層(電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層または熱硬化型シリコーン系離型処理層)の表面にハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、50℃の環境下1時間の条件で1Kgの荷重をかけた状態で放置させて貼り合わせ、その後、23℃、50%RHの環境下で1時間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで剥離ライナーを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の最高値を読み取り、該応力の最高値を経時サンプルの剥離強度(W)(N/50mm)とする。
【0052】
そして、前記初期サンプルの剥離強度(W0)と、前記経時サンプルの剥離強度(W)とを用いて、次式により、剥離強度の低下率(%)が求められる。
剥離強度の低下率(%)=[(W0−W)/W0]×100
【0053】
[両面粘着テープ又はシート]
本発明の両面粘着テープ又はシートは、前記剥離ライナーを1枚用いて、各剥離処理層(電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層や、熱硬化型シリコーン系離型処理層)により各粘着面を保護している構成を有している。すなわち、両面粘着テープ又はシートは、両面の粘着面が1枚の剥離ライナーにより保護されている構成を有しており、剥離ライナーとして、前記剥離ライナーが用いられている。
【0054】
両面粘着テープ又はシートは、前記構成を有していれば、基材の両面に粘着剤層が形成された構成の両面粘着テープ又はシート(基材付き両面粘着テープ又はシート)、粘着剤層のみから形成された構成の両面粘着テープ又はシート(基材レス両面粘着テープ又はシート)のいずれであってもよい。
【0055】
具体的には、両面粘着テープ又はシートは、例えば、一方の粘着面を電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層と貼り合わせた状態で、他方の粘着面を熱硬化型シリコーン系離型処理層と接触し且つ熱硬化型シリコーン系離型処理層が外側に位置する形態でロール状に巻回させた構成を有する両面粘着テープ巻回体などが挙げられる。
【0056】
(粘着剤層)
本発明の両面粘着テープ又はシートにおいて、粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、公知の粘着剤から適宜選択して用いることができる。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などが挙げられる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上が単量体主成分として用いられ、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合が可能な単量体(共重合性単量体)が1種又は2種以上用いられたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマー又はポリマー主成分とするアクリル系粘着剤が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステル]などが挙げられる。
【0058】
アクリル系粘着剤において、共重合性単量体としては、特に制限されず、公知の共重合性単量体から適宜選択して用いることができる。共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物などを好適に用いることができる。
【0059】
なお、アクリル系重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが単量体主成分として用いられていれば特に制限されず、粘着剤層の各種物性や接着性などに応じて適宜選択することができる。
【0060】
粘着剤(特に、アクリル系粘着剤)には、必要に応じて、粘着付与剤(例えば、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クロマンインデン系樹脂、フェノール系樹脂など)、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、過酸化物系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミノ系架橋剤、カップリング剤系架橋剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、各種安定剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤などの公知の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0061】
粘着剤層の厚さとしては、特に制限されず、10〜100μmであることが好ましい。なお、粘着剤層は、単層の形態、積層された形態のいずれの形態を有していてもよい。
【0062】
(基材)
両面粘着テープ又はシートにおいて、基材(両面粘着テープ又はシート用基材)としては、特に制限されず、粘着テープ又はシート等の接着シート類の基材として公知の基材から適宜選択して用いることができる。具体的には、両面粘着テープ又はシート用基材としては、例えば、各種プラスチック材(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等)によるフィルムやシートなどのプラスチック系基材;マニラ麻、レーヨン製繊維、ポリエステル製繊維、パルプ繊維等の各種繊維を原料とする繊維系基材(織布、不織布、フェルト、ネットなど);和紙、合成紙などの紙系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体;アルミニウム箔などの金属系基材や、これらの積層体等が挙げられる。両面粘着テープ又はシート用基材は、単層の形態、積層された形態のいずれの形態を有していてもよい。
【0063】
両面粘着テープ又はシート用基材としては、強度、加工性、寸法安定性等の観点から、プラスチック製フィルム、不織布が好適である。
【0064】
両面粘着テープ又はシート用基材の厚みとしては、特に制限されず、用途等に応じて適宜選択することができ、一般には、2〜200μm程度である。
【0065】
なお、基材付き両面粘着テープ又はシートにおいて、両面粘着テープ又はシート用基材の両面に形成されている粘着剤層は、同一の粘着剤により形成されていてもよく、異なる粘着剤により形成されていてもよい。また、それぞれの粘着剤層の厚みは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0066】
両面粘着テープ又はシートを製造する方法としては、特に制限されず、公知乃至慣用の両面粘着テープ又はシートの製造方法を適宜採用することができる。具体的には、両面粘着テープ又はシートが、例えば、ロール状に巻回された形態の基材レス両面粘着テープ又はシートである場合、両面粘着テープ又はシートの製造方法としては、例えば、剥離ライナーとして、剥離ライナー用基材の一方の面に熱硬化型シリコーン系離型処理層が形成され、且つ他方の面に電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層が形成された構成を有している剥離ライナーを用い、該剥離ライナーの一方の離型処理層上に、粘着剤を、乾燥乃至硬化後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で塗布し乾燥乃至硬化させて粘着剤層を形成した後、露出している粘着面を他方の離型処理層表面と接触し且つ熱硬化型シリコーン系離型処理層が外側に位置するようにしてロール状に巻回する方法などが挙げられる。
【0067】
一方、両面粘着テープ又はシートが基材付き両面粘着テープ又はシートである場合、両面粘着テープ又はシートの製造方法としては、例えば、両面粘着テープ又はシート用基材のそれぞれの面に、各粘着剤を、乾燥乃至硬化後の厚みがそれぞれ所定の厚みとなる塗布量で塗布し乾燥乃至硬化させて粘着剤層を形成した後、両面粘着テープ又はシート用基材の一方の粘着剤層上に、該粘着剤層と、剥離ライナーの一方の離型処理層とが接触するように、剥離ライナー用基材の一方の面に熱硬化型シリコーン系離型処理層が形成され、且つ他方の面に電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層が形成された構成を有している剥離ライナーを貼り合わせ、さらに、露出している粘着面を他方の離型処理層表面と接触し且つ熱硬化型シリコーン系離型処理層が外側に位置するようにしてロール状に巻回する方法や、剥離ライナーとして、剥離ライナー用基材の一方の面に熱硬化型シリコーン系離型処理層が形成され、且つ他方の面に電離性放射線硬化型シリコーン系離型処理層が形成された構成を有している剥離ライナーを用い、該剥離ライナーの一方の離型処理層上に、粘着剤を、乾燥乃至硬化後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で塗布し乾燥乃至硬化させて粘着剤層を形成し、その後、該粘着剤層上に両面粘着テープ又はシート用基材を貼り合わせて積層し、さらにその後、該両面粘着テープ又はシート用基材上に、粘着剤を、乾燥乃至硬化後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で塗布し乾燥乃至硬化させて粘着剤層を形成した後、露出している粘着面を他方の離型処理層表面と接触し且つ熱硬化型シリコーン系離型処理層が外側に位置するようにしてロール状に巻回する方法などが挙げられる。
【0068】
なお、粘着剤層の形成に際しては、必要に応じて、加熱等により架橋処理を行ったり、電磁波(紫外線など)の照射等により重合を行ったりすることができる。また、粘着剤層は、溶融押出方法を利用して形成することもできる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
(参考例1;軽面側離型処理層の作製例1)
シリコーン系剥離剤として、商品名「KS−847T」(信越化学株式会社製;熱硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、白金系触媒(商品名「CAT−PL−50T」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、熱硬化型シリコーン系剥離剤(「軽面側剥離剤A」と称する場合がある)を調製した。
【0071】
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(商品名「ルミラーS−27」東レ株式会社製)の一方の面に、前記軽面側剥離剤Aを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、130℃で60秒間の条件で乾燥乃至硬化させて、離型処理層(「軽面側離型処理層A」と称する場合がある)を形成して、片面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、軽面側剥離剤Aの塗布量は1.0g/m2であった。
【0072】
(実施例1)
シリコーン系剥離剤として、商品名「X−62−7622」(信越化学株式会社製;紫外線硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、紫外線開裂型開始剤(商品名「CAT7605」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤A」と称する場合がある)を調製した。
【0073】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Aを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、120℃で90秒間の条件での乾燥によりヘプタンを揮発させて、剥離剤皮膜を得た。次に、高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)を用いて、塗工速度4m/minで照射量200mJ/cm2となるように、前記剥離剤皮膜に露光し、硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層A」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Aの塗布量は1.0g/m2であった。
【0074】
(実施例2)
シリコーン系剥離剤として、商品名「X−62−7629」(信越化学株式会社製;紫外線硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、紫外線開裂型開始剤(商品名「CAT7605」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤B」と称する場合がある)を調製した。
【0075】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Bを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、120℃で90秒間の条件での乾燥によりヘプタンを揮発させて、剥離剤皮膜を得た。次に、高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)を用いて、塗工速度4m/minで照射量200mJ/cm2となるように、前記剥離剤皮膜に露光し、硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層B」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Bの塗布量は1.0g/m2であった。
【0076】
(実施例3)
シリコーン系剥離剤として、商品名「X−62−7629」(信越化学株式会社製;紫外線硬化型ポリジメチルシロキサン):90重量部に対して、商品名「X−62−7655」(信越化学株式会社製;紫外線硬化型ポリジメチルシロキサン)を10重量部の割合で混合した紫外線硬化型ポリジメチルシロキサン混合物:100重量部に対して、紫外線開裂型開始剤(商品名「CAT7605」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤C」と称する場合がある)を調製した。
【0077】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Cを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、120℃で90秒間の条件での乾燥によりヘプタンを揮発させて、剥離剤皮膜を得た。次に、高圧水銀ランプ(照度90mW/cm2)を用いて、塗工速度4m/minで照射量200mJ/cm2となるように、前記剥離剤皮膜に露光し、硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層C」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Cの塗布量は1.0g/m2であった。
【0078】
(比較例1)
シリコーン系剥離剤として、商品名「KS−774」(信越化学株式会社製;熱硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、白金系触媒(商品名「CAT−PL−3」信越化学株式会社製)を0.7重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、熱硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤D」と称する場合がある)を調製した。
【0079】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Dを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、130℃で60秒間の条件で乾燥乃至硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層D」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Dの塗布量は1.0g/m2であった。
【0080】
(比較例2)
シリコーン系剥離剤として、商品名「X−62−2087」(信越化学株式会社製;熱硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、白金系触媒(商品名「CAT−PL−50T」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、熱硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤E」と称する場合がある)を調製した。
【0081】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Eを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、130℃で60秒間の条件で乾燥乃至硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層E」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Eの塗布量は1.0g/m2であった。
【0082】
(比較例3)
シリコーン系剥離剤として、商品名「KS−841」(信越化学株式会社製;熱硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、白金系触媒(商品名「CAT−PL−50T」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、熱硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤F」と称する場合がある)を調製した。
【0083】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Fを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、130℃で60秒間の条件で乾燥乃至硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層F」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Fの塗布量は1.0g/m2であった。
【0084】
(比較例4)
シリコーン系剥離剤として、商品名「KS−839L」(信越化学株式会社製;熱硬化型ポリジメチルシロキサン):100重量部に対して、白金系触媒(商品名「CAT−PL−50T」信越化学株式会社製)を1重量部配合し、ヘプタンにより固形分濃度が1.0重量%となるように調整して、熱硬化型シリコーン系剥離剤(「重面側剥離剤G」と称する場合がある)を調製した。
【0085】
参考例1により得られた剥離ライナーの軽面側離型処理層Aが形成されていない側の面に、前記重面側剥離剤Gを、マイヤーバー(#18)により塗工した後、130℃で60秒間の条件で乾燥乃至硬化させて、重面側離型処理層(「重面側離型処理層G」と称する場合がある)を形成した後、さらに環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)して、両面に離型処理層が形成された剥離ライナーを得た。なお、重面側剥離剤Gの塗布量は1.0g/m2であった。
【0086】
(評価)
実施例1〜3、比較例1〜4、および参考例1により得られた剥離ライナーについて、下記の測定方法又は評価方法により、離型処理層における粘着面に対する剥離強度、該剥離強度の低下率、残留接着力、剥離異常の有無を測定又は評価した。評価結果は表1に示した。なお、参考例1により得られた剥離ライナーについては、環境温度50℃の条件下、1日間放置(エージング)した後、測定又は評価を行った。
【0087】
(剥離強度の測定方法1)
まず、剥離ライナーを、60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間(3週間)放置したものを経時サンプルとし、該放置前の剥離ライナー(エージング後の剥離ライナー)を初期サンプルとする。
【0088】
次に、粘着テープとして商品名「No.502」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm;表中「粘着テープA」と称する)を用い、該粘着テープの黄色剥離紙を剥がして、粘着面を露出させた後、該粘着面を、初期サンプルまたは経時サンプルの所定の離型処理層[実施例1〜3および比較例1〜4により得られた剥離ライナーについては、重面側離型処理層(重面側離型処理層A〜G)、参考例1により得られた剥離ライナーについては、軽面側離型処理層A]の表面に、ハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、100℃の環境下1時間の条件で1Kgの荷重をかけた状態で放置させて貼り合わせ、その後、23℃、50%RHの環境下で1時間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで剥離ライナーを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の最高値を読み取り、該応力の最高値を初期サンプルの剥離強度(W0)(N/50mm)、または経時サンプルの剥離強度(W)(N/50mm)とする。
【0089】
(剥離強度の低下率の測定方法1)
前記剥離強度の測定方法より測定された初期サンプルの剥離強度(W0)と、経時サンプルの剥離強度(W)とを用いて、次式により、剥離強度の低下率(%)を求める。
剥離強度の低下率(%)=[(W0−W)/W0]×100
【0090】
(残留接着力の測定方法)
剥離強度の測定方法1と同様にして、まず、剥離ライナーを、60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置したものを経時サンプルとし、該放置前の剥離ライナー(すなわち、エージング後の剥離ライナー)を初期サンプルとする。次に、商品名「No.31B」(日東電工株式会社製;ポリエステル基材を有する粘着テープ、幅:19mm)を、初期サンプルまたは経時サンプルに、粘着テープの粘着面が、初期サンプルまたは経時サンプルの所定の離型処理層[実施例1〜3および比較例1〜4により得られた剥離ライナーについては、重面側離型処理層(重面側離型処理層A〜G)、参考例1により得られた剥離ライナーについては、軽面側離型処理層A]の表面に接触する形態で、ハンドローラーを用いて貼り合わせ、50℃の環境下、1日間放置した。その後、粘着テープ(商品名「No.31B」)を初期サンプルまたは経時サンプルより剥がした後、粘着テープをステンレス板にハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、室温下で30分間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで粘着テープを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の平均値を読み取り、該応力の平均値を剥離強度(F)(N/50mm)とする。
【0091】
また、商品名「No.31B」(日東電工株式会社製;ポリエステル基材を有する粘着テープ、幅:19mm)を、ステンレス板にハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、室温下で30分間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで粘着テープを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の平均値を読み取り、該応力の平均値をブランクの剥離強度(F0)(N/50mm)とする。
【0092】
そして、前記剥離強度(F)と、ブランクの剥離強度(F0)とを用いて、次式により、残留接着力(%)を算出する。
残留接着力(%)=(F/F0)×100
【0093】
(剥離強度の測定方法2)
剥離強度の測定方法1と同様にして、まず、剥離ライナーを、60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置したものを経時サンプルとし、該放置前の剥離ライナー(すなわち、エージング後の剥離ライナー)を初期サンプルとする。
【0094】
次に、粘着テープとして商品名「No.5000NS」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm;表中「粘着テープB」と称する)または商品名「KSR−532P」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm;表中「粘着テープC」と称する)を用い、該粘着テープの剥離紙を剥がして、粘着面を露出させた後、該粘着面を、初期サンプルまたは経時サンプルの所定の離型処理層[実施例1〜3および比較例1〜4により得られた剥離ライナーについては、重面側離型処理層(重面側離型処理層A〜G)、参考例1により得られた剥離ライナーについては、軽面側離型処理層A]の表面に、ハンドローラーを用いて貼り合わせ、さらに、50℃の環境下1日間の条件で1Kgの荷重をかけた状態で放置させて貼り合わせ、その後、23℃、50%RHの環境下で1時間放置した後、引張試験機にて、補助板を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、180°の剥離角度で、引張速度300mm/minで剥離ライナーを50mm引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の最高値を読み取り、該応力の最高値を初期サンプルの剥離強度(W0)(N/50mm)、または経時サンプルの剥離強度(W)(N/50mm)とする。
【0095】
(剥離強度の低下率の測定方法2)
剥離強度の低下率の測定方法1と同様に、前記剥離強度の測定方法2より測定された初期サンプルの剥離強度(W0)と、経時サンプルの剥離強度(W)とを用いて、次式により、剥離強度の低下率(%)を求める。
剥離強度の低下率(%)=[(W0−W)/W0]×100
【0096】
(剥離異常の有無の評価方法)
実施例1〜3および比較例1〜4により得られた剥離ライナーについて、剥離異常の有無の評価を行う。まず、剥離強度の測定方法1等と同様にして、剥離ライナーを、60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置して、経時サンプルを作製する。また、粘着テープとして、商品名「No.502」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm;粘着テープA)、商品名「No.5000NS」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm;粘着テープB)、商品名「KSR−532P」(日東電工株式会社製;アクリル系両面粘着テープ、幅:50mm;粘着テープC)を用いる。
【0097】
粘着テープの剥離紙を剥がして、粘着テープの一方の粘着面に重面側離型処理層(重面側離型処理層A〜G)を貼り合わせた後、他方の露出している粘着面を、軽面側離型処理層(軽面側離型処理層A)と接触し且つ軽面側離型処理層が外側に位置するようにしてロール状に巻回させて、粘着テープのロール体(巻回体)を作製する。この粘着テープのロール体を、室温下で1日間保存した後、巻き戻して(剥がして)、粘着面と軽面側離型処理層との界面で剥離が生じているかどうか(すなわち、泣き別れ現象が生じているかどうか)を観察し、粘着面と軽面側離型処理層との界面で剥離が生じている場合(すなわち、泣き別れ現象が生じていない場合)を「○」とし、粘着面と重面側離型処理層との界面で剥離が生じている場合(すなわち、泣き別れ現象が生じている場合)を「×」として評価した。なお、粘着テープのロール体の巻き数(長さ)は10mで、ロール幅は250mmである。
【0098】
【表1】

【0099】
表1より明らかなように、実施例1〜3に係る剥離ライナーは、重面側離型処理層の経時での剥離強度低下率が50%以下と良好であり、加えて、残留接着力(%)も良好であることが確認された。従って、実施例1〜3に係る剥離ライナーを、両面粘着テープの剥離ライナーとして用いてロール状に巻回させた場合、泣き別れ現象の発生を抑制又は防止することができる。しかも、両面粘着テープの種類に関わらず、泣き別れ現象の発生を抑制又は防止することができる。従って、剥離ライナーの製造に際して特別な製造装置が製造工程中に設けられていなくても、該剥離ライナーが用いられた両面粘着テープを使用する際には、剥離異常の発生を効果的に抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、ロール状に巻回された形態の両面粘着テープを示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
1 ロール状に巻回された形態の両面粘着テープ(両面粘着テープ巻回体)
2 両面粘着テープ
2a 粘着剤層
2b 基材(両面粘着テープ用基材)
2c 粘着剤層
3 剥離ライナー
3a 軽面側離型処理層
3b 基材(剥離ライナー用基材)
3c 重面側離型処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の両面に離型処理層が形成された構成を有する剥離ライナーであって、基材の一方の面側の離型処理層が熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成され、且つ基材の他方の面側の離型処理層が電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成されていることを特徴とする剥離ライナー。
【請求項2】
電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤が紫外線硬化型シリコーン系剥離剤である請求項1記載の剥離ライナー。
【請求項3】
熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層が、粘着面に対する剥離強度が小さい側の離型処理層として利用され、電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層が、粘着面に対する剥離強度が大きい側の離型処理層として利用される請求項1又は2記載の剥離ライナー。
【請求項4】
電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤により形成された離型処理層が、粘着面に対する剥離強度(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、23℃、50%RH)が0.1〜1.0N/50mmであり、且つ温度60℃且つ湿度90%RHの環境下で21日間放置した際の剥離強度の低下率が50%以下である特性を有している請求項3記載の剥離ライナー。
【請求項5】
両面の粘着面が1枚の剥離ライナーにより保護されている構成を有している両面粘着テープ又はシートであって、剥離ライナーとして、請求項1乃至4の何れかの項に記載の剥離ライナーが用いられていることを特徴とする両面粘着テープ又はシート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−181816(P2006−181816A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376665(P2004−376665)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】