説明

剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物、剥離性硬化皮膜を有するシート状基材およびその製造方法

【課題】基材への密着性に優れ、粘着性物質に対する剥離性に優れた硬化皮膜を形成可能なオルガノポリシロキサン組成物、該硬化皮膜を有するシート状基材およびその製法を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)粘度が5〜1000mPa・sであり、平均シロキサン単位式:[R2HSiO1/2]k[R3SiO1/2]r [RHSiO2/2]m [R2SiO2/2]n[RSiO3/2]p [SiO4/2]qを有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(Rは脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基、)、(C)ヒドロシリル化反応用白金系触媒からなる剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物、該組成物からなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材、シート状基材に該組成物をコーテイングし加熱硬化させるその製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応硬化性であり、硬化して各種基材表面への密着性および粘着性物質に対する剥離性に優れた硬化皮膜を形成するオルガノポリシロキサン組成物、該組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種紙,ラミネート紙,合成フィルム,金属箔等のシート状基材表面にオルガノポリシロキサン組成物の硬化皮膜を形成させることにより、粘着性物質に対する剥離性を付与することができる硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特には、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応用白金族金属系触媒からなる、ヒドロシリル化反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物が周知であり、汎用されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
上記ヒドロシリル化反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、硬化皮膜の紙、フィルム等の基材への密着性が不十分なため、紙、フィルム等の基材への密着性が改良されたヒドロシリル化反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物が特許文献3〜特許文献5に教示されている。特許文献3のヒドロシリル化反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、式R1SiO3/2(R1はメチル基、ビニル基等の1価炭化水素基)で表されるシロキサン単位(T単位)を含有する分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと直鎖状のアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンを必須成分とする。特許文献4のヒドロシリル化反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、R2SiO3/2(R2はメチル基等の1価炭化水素基)で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを必須成分とする。特許文献5のヒドロシリル化反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、一般式(a)R3aSiO(4-a)/2 、(b)R33SiO1/2および(c)R32SiO2/2(式中、R3はメチル基等の1価炭化水素基または水素原子を表し、aは1または0)からなるシロキサン単位を有し、シロキサン単位(b)は全シロキサン単位の40%以下であり、シロキサン単位(c)は全シロキサン単位の少なくとも40%であり、ケイ素結合水素を有するシロキサン単位が全シロキサン単位の少なくとも50%であり、かつ、全シロキサン単位の少なくとも0.75%がシロキサン単位(a)である分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを必須成分とする。シロキサン単位(a)は、a=0のときはSiO4/2となりえるが、そのような説明はなく、SiO4/2単位を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは記載されていない。ましてや、SiO4/2単位と他のシロキサン単位とのモル比も記載されていない。
【0004】
白金系触媒は優れたヒドロシリル化反応硬化促進作用があるが、高価なためその配合量は少ないほどよい。しかしながら、本発明者らは、特許文献3〜特許文献5のヒドロシリル化反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、硬化温度が80℃〜130℃という比較的高くない温度である場合、白金系触媒の配合量を低減すると、十分な硬化性を得ることができず、あるいは基材、特にポリエチレンラミネート紙やプラスチックフィルムに対する密着性を得ることができず、実用的な性能を発揮できないという問題があることに気付いた。
【0005】
【特許文献1】特開昭47−32072号公報
【特許文献2】特開平07−258606号公報
【特許文献3】特開平05−186695号公報
【特許文献4】特開平06−220327号公報
【特許文献5】特開平10−195298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、白金系触媒の配合量が少なくても、80℃〜130℃という比較的高くない温度で硬化させた場合でも、硬化性が低下せず、硬化中に接触していた基材への密着性に優れ、粘着性物質に対する 剥離性の優れた硬化皮膜を形成することができるヒドロシリル化反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物および該組成物を硬化させてなり、粘着性物質に対する剥離性の優れた硬化皮膜を有するシート状基材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らはオルガノハイドロジェンポリシロキサンを構成するシロキサン単位の種類とモル比を鋭意検討した結果、下記平均シロキサン単位式(1)からなるものを選択すると、上記目的を達成できることに気付き、本発明に到達した。
上記目的を達成する剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物および該組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材およびその製造方法は、次のとおりである。
[1](A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン: 100重量部、
(B)25℃における粘度が5〜1,000mPa・sであり、下記の平均シロキサン単位式(1)で示され、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: [成分(B)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(A)中のアルケニル基]のモル比が0.3〜5.0となる量
[R2HSiO1/2]k[R3SiO1/2]r [RHSiO2/2]m [R2SiO2/2]n[RSiO3/2]p [SiO4/2]q (1)
(式中、Rはそれぞれ独立に一価の脂肪族不飽和結合を含まない非置換もしくは置換炭化水素基であり、kとrは0以上の数、かつ、1≦k+r≦10であり、mは30≦m≦200であり、nは10≦n≦100であり、pは0≦p≦10であり、qは1であり、0.5≦(k+m)/(k+r+m+n+p+q)<1であり、k+r+m+n+p+qは前記粘度範囲を満足する数である。)、および
(C)ヒドロシリル化反応用白金系触媒: 触媒量
からなることを特徴とする剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[2] 成分(A)の分子構造が直鎖状または分岐鎖状であり、ケイ素原子結合アルケニル基がビニル基、アリル基またはヘキセニル基であり、ケイ素原子結合有機基がアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基であり(ただし、50モル%以上がメチル基である)、成分(B)のRがアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基(ただし、50モル%以上がメチル基である)である[1]に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[3] 成分(C)が白金アルケニルシロキサン錯体触媒である[1]または[2]記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[4] 組成物中の白金金属量が成分(A)と成分(B)の合計重量の10〜300ppmである[3]記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[5] 成分(A)の25℃における粘度が50〜2000mPa・sであり、組成物が無溶剤型である[1]〜[4]のいずれかに記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[6] さらに(D)有機溶剤:10〜3000重量部からなる[1]〜[4]のいずれかに記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[7] さらに(E)ヒドロシリル化反応抑制剤:0.001〜5重量部からなり、常温で非硬化性であり、加熱硬化性である [1]〜[6]のいずれかに記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[8] [1〜[7]のいずれかに記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材。
[9] シート状基材が、ポリエチレンラミネート紙またはプラスチックフィルムである[8]に記載のシート状基材。
[10] シート状基材上に[1]〜[7]のいずれかに記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物をコーテイングし、加熱して硬化させることを特徴とする剥離性硬化皮膜を有するシート状基材の製造方法。
[11] シート状基材が、ポリエチレンラミネート紙またはプラスチックフィルムである[10]に記載のシート状基材の製造方法。
[12] 加熱温度が80〜130℃である[10] または[11]に記載の剥離性硬化皮膜を有するシート状基材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、白金系触媒の配合量が少なくても、80℃〜130℃という比較的高くない温度で硬化させた場合でも、硬化性に優れ、密着性に優れた硬化皮膜を基材上に形成することができるヒドロシリル化反応硬化型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物および該組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材、特にはポリエチレンラミネート紙およびプラスチックフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物について具体的に説明する。
1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである成分(A)は、本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の主成分であり、成分(C)の触媒作用により成分(B)とヒドロシリル化反応して架橋する。分子構造は、直鎖状が一般的であるが、分岐鎖状であってもよい。分岐鎖状であるもの代表例は、平均シロキサン単位[R2R5SiO1/2]x[R2SiO2/2]y[SiO4/2]z (式中、Rは前記どおりであり、R5はアルケニル基であり、xは4であり、yは5〜1000であり、z=1である)で示される。
架橋するために分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基が存在する。
【0010】
ケイ素原子結合アルケニル基は、好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基が例示される。好ましくは、ビニル基であり、ついでアリル基、ヘキセニル基である。分子中のアルケニル基の含有量は、1分子中の全有機基の0.1〜20モル%であることが好ましく、0.2〜10モル%がより好ましい。アルケニル基の含有量が前記下限未満では実用に足る硬化速度が得られない場合があり、前記上限を超えると硬化皮膜の剥離力が大きくなり過ぎる場合がある。アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合している場合、側鎖のケイ素原子に結合している場合、分子鎖末端のケイ素原子と側鎖のケイ素原子の両方に結合している場合があり得る。
【0011】
成分(A)中のケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、式C2m+1CHCH−(ただし、mは1〜10の整数である)で表されるパーフルオロアルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基)等のハロゲン化アルキル基;式F[CF(CF)CFO]CF(CF)CFOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CFCFCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCH−、C2m+1CHCHOCHCHCH−、C2m+1CHOCHCHCH−(ただし、nは1〜5の整数、mは3〜10の整数である)で表されるパーフルオロエーテル化アルキル基;シアノエチル基が例示されるが、合成の容易性や硬化皮膜特性の点で、好ましくはアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基(ただし、50モル%以上がメチル基)である。アルケニル基以外のすべての有機基がメチル基であることがより好ましい。
【0012】
成分(A)として、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルエトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、平均シロキサン単位[MeViSiO1/2]4[Me2SiO2/2]y[SiO4/2] (式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、yは5〜1000である)で示される分岐鎖状メチルビニルポリシロキサン、平均シロキサン単位[MeViSiO1/2]3[Me2SiO2/2]y[MeSiO3/2] (式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、yは5〜1000である)で示される分岐鎖状メチルビニルポリシロキサンが例示される。
【0013】
成分(A)は、常温で液状でも生ゴム状でもよいが、無溶剤型組成物用には液状である必要があり、好ましくは50〜10,000mPa・sであり、より好ましくは50〜2,000mPa・sである。常温で生ゴム状の場合は、キシレン、トルエン等の有機溶剤に溶解する必要がある。
【0014】
分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである成分(B)は、成分(A)の架橋剤であり、成分(C)の触媒作用により成分(A)とヒドロシリル化反応して架橋させる。架橋するために分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子結合水素原子が存在する。本成分は、下記の平均シロキサン単位式(1)で示されるが、分子中に存在する各シロキサン単位量の相対値を示すにすぎず、構造式を示すものではない。
[R2HSiO1/2]k[R3SiO1/2]r [RHSiO2/2]m [R2SiO2/2]n[RSiO3/2]p [SiO4/2]q (1)
(式中、Rはそれぞれ独立に一価の脂肪族不飽和結合を含まない非置換もしくは置換炭化水素基であり、kとrは0以上の数、かつ、1≦k+r≦10であり、mは30≦m≦200であり、nは10≦n≦100であり、pは0≦p≦10であり、qは1であり、0.5≦(k+m)/(k+r+m+n+p+q)<1であり、k+r+m+n+p+qは前記粘度範囲を満足する数である。)
【0015】
一価の脂肪族不飽和結合を含まない非置換もしくは置換炭化水素基であるRは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、式C2m+1CHCH−(ただし、mは1〜10の整数である)で表されるパーフルオロアルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基)等のハロゲン化アルキル基;式F[CF(CF)CFO]CF(CF)CFOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CFCFCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCH−、C2m+1CHCHOCHCHCH−、C2m+1CHOCHCHCH−(ただし、nは1〜5の整数、mは3〜10の整数である)で表されるパーフルオロエーテル化アルキル基;シアノエチル基が例示されるが、合成の容易性や硬化皮膜特性の点で、好ましくはアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基(ただし、50モル%以上がメチル基)であり、より好ましくはすべてメチル基である。
【0016】
成分(B)の25℃における粘度は5〜1,000mPa・sであるが、無溶剤型組成物用には10〜300mPa・sが好ましい。5mPa・s未満の粘度のものを合成することは容易でなく、1,000mPa・sより大きいと成分(A)との相溶性が低下することがある。
【0017】
[R2HSiO1/2]単位と[R3SiO1/2]単位は、分岐状オルガノポリシロキサン鎖の末端封止シロキサン単位である。
kとrは0以上の数であり、1≦k+r≦10である。組成物の硬化性の点で1分子中の[R2HSiO1/2]単位と[RHSiO2/2]単位の合計数、すなわち、k+mは少なくとも2であり、3以上であることが好ましい。
[RHSiO2/2]単位と[R2SiO2/2]単位は、分岐状オルガノポリシロキサン鎖の分岐点と末端封止基間の直鎖状部分を構成する。組成物の硬化性と硬化皮膜の粘着性物質に対する剥離性の点でmは30〜200であり、nは10〜100である。
[RSiO3/2]単位は、分岐状オルガノポリシロキサン鎖の分岐点に位置する。[SiO4/2]単位が存在するので、本単位は必須ではない。本単位が多すぎると、分岐度が大きくなりすぎて成分(A)への相溶性が低下するので、pは0〜10であり、好ましくは0〜5である。
[SiO4/2]単位は、必須単位であり、qは1である。[SiO4/2]単位が存在せずq=0のときは、[R1SiO3/2]単位が存在してpが1〜10であっても、組成物の硬化性および基材への密着性は不十分となる。
分子中の[R2HSiO1/2]単位と[RHSiO2/2]単位が少ないと基材への密着性が低下するので、0.5≦(k+m)/(k+r+m+n+p+q)<1である。
【0018】
かかる成分(B)として、以下の平均シロキサン単位式(2)〜(8)で表される分岐鎖状のメチルハイドロジェンポリシロキサンが例示される。
【化1】

【0019】
成分(A)と成分(B)の配合比率は、[成分(B)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(A)中のアルケニル基]のモル比が0.3〜5.0となる量である。このモル比が0.3より小さいと硬化速度が遅くなりすぎ、硬化皮膜が弱くなる。このモル比が5.0より大きいと粘着性物質に対する剥離性が低下し、硬化皮膜同士がブロッキングしやすくなる。こうした観点から、好ましくは0.7〜2.0となる量である。
【0020】
ヒドロシリル化反応用白金系触媒である成分(C)は、成分(Aと成分(B)のヒドロシリル化反応による架橋、硬化を促進させる。かかる白金系触媒として、塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,塩化白金酸のアルデヒド溶液,塩化白金酸のオレフィン錯体,塩化白金酸とジケトン類との錯体;塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体,塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体,白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体;四塩化白金,白金微粉末,アルミナ微粒子またはシリカ微粒子に微粉末状白金を担持させたもの,白金黒,白金オレフィン錯体,白金ジケトン錯体,白金カルボニル錯体が例示される。成分(A)および成分(B)との相溶性、有機溶剤への溶解性、硬化促進能の点で、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体,塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体,白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体,白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が好ましい。
【0021】
成分(C)の配合量は触媒量、すなわち、本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させるのに十分な量であるが、該組成物の硬化性、基材への密着性、経済性を勘案すると、成分(A)と成分(B)の合計100重量部当り白金金属量で5〜1000ppmの範囲が好ましく、10〜300ppmの範囲がより好ましい。
【0022】
成分(C)が白金アルケニルシロキサン錯体であると、その配合量が成分(A)と成分(B)の合計100重量部当り白金金属量が10〜120ppmという少量であっても、また、硬化温度が80℃〜130℃という比較的高くない温度であっても、120〜1秒間という短い硬化時間で本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて、硬化中に接触していた基材への密着性に優れ、粘着性物質に対する剥離性に優れた硬化皮膜を形成することができる。
【0023】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、成分(A)が生ゴム状である場合は、組成物をシート状基材へ薄くコーテイングすることができないので、成分(A)100重量部当り、(D)有機溶剤 10〜3000重量部を配合するとよい。かかる成分(D)は、成分(A)と成分(B)を均一に溶解でき、硬化を阻害しないものであれば特に限定されない。具体的には、トルエン,キシレン等の芳香族系炭化水素;ペンタン,ヘキサン,ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン,パークロロエチレン,トリフルオロメチルベンゼン,1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン,メチルペンタフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンが例示される。これらのうちでは、溶解性と安全性と経済性の点からトルエン,キシレン,n−ヘキサンが好ましい。
【0024】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、上記成分以外に、
常温下でのゲル化、硬化を抑制して保存安定性を向上させ、加熱硬化性とするために、(E)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有することが好ましい。ヒドロシリル化反応抑制剤として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示され、具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール(=メチルブチノール)、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキニルアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、ベンゾトリアゾール、メチルビニルシクロシロキサンが例示される。この付加反応抑制剤の配合量は、通常、成分(A)100重量部当り0.001〜5重量部の範囲内であるが、本成分の種類、白金系触媒の性能と含有量、成分(A)中のアルケニル基量、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子量に応じて適宜選定するとよい。
【0025】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は前記の成分(A)〜成分(C)および必要に応じてさらに成分(D)、成分(E)からなるものであるが、シート状基材へのコーテイング性の点で、無溶剤型では25℃における粘度が50〜2,000mPa・sの範囲にあることが好ましく、溶剤型では25℃における粘度が50〜5,000mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0026】
硬化被膜の粘着性物質に対する剥離力を低下させるためにアルケニル基含有オルガノポリシロキサンレジンをさらに配合してもよく、硬化被膜の粘着性物質に対する剥離力を向上させるためにケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を有していない非反応性ジオルガノポリシロキサンをさらに配合してもよい。シート状基材への塗工性を向上するために、低粘度のケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を有していない非反応性ジオルガノポリシロキサンをさらに配合してもよく、塗工液の粘度を大きくするためにシリカ微粉末等の増粘剤をさらに配合してもよい。さらには、本発明の目的、効果を損なわないかぎり耐熱剤,染料,顔料等の公知の添加剤をさらに配合してもよい。
【0027】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、前記成分(A)〜成分(C)、成分(A)〜成分(D)、成分(A)〜成分(C)および成分(E)、あるいは、成分(A)〜成分(E)を均一に混合することにより容易に製造することができる。各成分の配合順序は特に制限されるものではないが、混合後、直ちに使用しないときは、成分(A)と成分(B)の混合物と、成分(A)と成分(C)の混合物を別々に保存しておき、使用直前に両者を混合することが好ましい。また、成分(A)〜成分(C)および成分(E)からなる組成物、あるいは、成分(A)〜成分(E)からなる組成物において、成分(E)の配合量を調整することにより常温では架橋せず、加熱すると架橋して硬化するようにした組成物も好ましい。
【0028】
以上のような本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を、紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,プラスチックフィルム,布,合成繊維,金属箔等の各種シート状基材表面に均一に塗工し、成分(A)と成分(B)がヒドロシリル化反応して架橋するのに十分な条件下で加熱すると、これらのシート状基材表面に、粘着性物質に対して適度な剥離抵抗を有する硬化皮膜を形成する。しかも、当該硬化皮膜はシート状基材への密着性に優れるという特徴を有する。
【0029】
シート状基材上での本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の硬化温度は、一般に50〜200℃が適切であるが、シート状基材の耐熱性が良好であれば200℃以上でもよい。加熱方法は特に限定されるものではなく、熱風循環式オーブン中での加熱、長尺の加熱炉への通過、赤外線ランプやハロゲンランプによる熱線輻射が例示される。また、加熱と紫外線照射を併用して硬化させてもよい。
成分(C)が白金アルケニルシロキサン錯体触媒であると、その配合量が成分(A)と成分(B)の合計100重量部当り白金金属量で10〜120ppmであっても、また、90〜130℃という比較的高くない温度で120〜1秒間という短時間であっても、シート状基材への密着性に優れ、粘着性物質に対する剥離性の優れた硬化皮膜を容易に得ることができる。
【0030】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を適用するシート状基材は、ポリオレフィンラミネート紙が好ましく、ポリエチレンラミネート紙がより好ましい。ポリエチレンラミネート紙は、ポリエチレン面をコロナ放電で処理していてもよい。また、プラスチックフィルム、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムのようなポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムも好ましい。本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、上記ポリオレフィンラミネート紙、特にはポリエチレンラミネート紙、プラスチックフィルムに適用した場合に特に顕著な効果を奏する。
【0031】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材表面に塗工するためのコーターは、特に限定されず、ロールコーター,グラビヤコーター,エアーコーター,カーテンフローコーター,オフセット転写ロールコーターが例示される。シート状基材表面に本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を塗工し硬化させてなる剥離性シートに適用する粘着性物質は、各種粘着剤、各種接着剤等であり、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤;アクリル樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤が例示される。また、アスファルト、餅のような粘着性食品、糊、鳥もちが例示される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、部はいずれも重量部であり、粘度は25℃において測定した値である。また、剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物の硬化速度、その硬化皮膜の基材への密着性およびその硬化皮膜の粘着性物質に対する剥離抵抗値は以下に示す方法により評価した。
【0033】
[硬化速度]
剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物をポリエチレンラミネート紙の表面にシロキサン換算で1.0g/mとなる量塗工した後、熱風循環式オーブン中で所定の温度条件下で30秒間加熱して硬化皮膜を形成させた。次にオクスフォード社製蛍光X線装置で硬化皮膜を構成しているオルガノポリシロキサン量Aを測定した。この測定サンプルをメチルエチルケトオキシム(MEK)中に30分浸漬し、引き上げて乾燥した後、再度オクスフォード社製蛍光X線装置で硬化皮膜を構成しているオルガノポリシロキサン量Bを測定した。AからBを差し引くことによりMEK中に抽出されたオルガノポリシロキサン量を求め、(A−B)/AX100をもって硬化速度の指標とした。当該数値が大きいほど硬化速度が遅いことを意味する。なお、通常この数値が6%以下であれば十分に硬化していると考えられている。
【0034】
[硬化密着性]
剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物をポリエチレンラミネート紙の表面にシロキサン換算で1.0g/mとなる量塗工した後、熱風循環式オーブン中で所定の温度条件下で30秒間加熱して硬化皮膜を形成させた。該硬化皮膜を指で強く擦り、硬化皮膜の脱落の有無を観察した。その後、該硬化皮膜を有するポリエチレンラミネート紙を温度40℃、湿度90%のオーブン中に放置し、一定期間ごとに該硬化皮膜を指で強く擦り、硬化皮膜の脱落が発生するまでの日数を測定した。この日数が長いほど、形成された硬化皮膜はポリエチレンラミネート紙への硬化密着性に優れていることになる。
【0035】
[剥離抵抗値]
剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を、印刷適正試験機[(株)明製作所製;RI−2]を用いてポリエチレンラミネート紙の表面にシロキサン換算で1.0g/mとなる量塗工した後、熱風循環式オーブン中で120℃で30秒間加熱することにより、硬化皮膜を形成させた。この硬化皮膜面にアクリル系溶剤型粘着剤[東洋インキ製造株式会社製、商品名オリバインBPS−5127]を固形分で30g/mとなるようにアプリケーターを用いて均一に塗布し、温度70℃で2分間加熱した。次いで、このアクリル系粘着剤面に坪量64g/mの上質紙を貼合わせ、得られた貼合わせ紙を5cm幅に切断して試験片を作成した。該試験片を温度25℃、湿度60%の空気中に20時間放置した。この後、引っ張り試験機を用いて、この試験片のポリエチレンラミネート紙と上質紙を角度180度、剥離速度0.3m/minの条件で反対方向に引張り、剥離に要した力(N)を測定した。
【0036】
[メチルハイドロジェンポリシロキサン(XL−1)〜(XL−10)の合成例]
温度計および攪拌機を備えた300mlの四つ口セパラブルフラスコに、テトラメチルシクロテトラシロキサン(D)、オクタメチルテトラシクロシロキサン(D)および下記式(a),(b),(c)または(d)で表されるメチルシロキサンを、表1に示す部数ずつ仕込み、活性白土を全体の1重量%となる量を投入した。
【0037】
【化2】

【0038】
【表1】

【0039】
ついで、該フラスコ内を60℃で8時間撹拌し、撹拌を中止して活性白土をろ別し、ろ液から低沸分を留去することにより、液状残渣(XL−1)〜(XL−10)を得た。この液状残渣を29Si-NMR分析(以下、「NMR分析」という)したところ、平均シロキサン単位式(XL−1)〜平均シロキサン単位式(XL−10)で示される分岐状または直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサンであることが分かった。
【0040】
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0041】
[分岐状メチルハイドロジェンポリシロキサン(XL−11)の合成例]
温度計および攪拌機を備えた300mlの四つ口セパラブルフラスコに、下記平均シロキサン単位式で表されるメチルポリシロキサン
【化13】

を4.1g、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(粘度20mPa・s)を11.4g、オクタメチルテトラシクロシロキサン(D)を4.4g、ヘキサメチルジシロキサンを1.9g、および、活性白土0.2gを投入した。フラスコ内を撹拌しながら昇温し、60℃で8時間撹拌した。さらに、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(粘度20mPa・s)を66g、オクタメチルテトラシクロシロキサン(D)を10g、ヘキサメチルジシロキサンを1.2g、および、活性白土を1.0g投入した。フラスコ内を撹拌しながら昇温し、60℃で8時間撹拌した。次いで、ろ過し、ろ液を減圧下100℃でストリッピングすることにより、液状残渣を得た。この液状残渣をNMR分析したところ、下記の平均シロキサン単位式(XL−11)を有する分岐状メチルハイドロジェンポリシロキサンであることがわかった。
【化14】

【0042】
[分岐状メチルハイドロジェンポリシロキサン(XL−12)の合成例]
温度計および攪拌機を備えた300mlの四つ口セパラブルフラスコに、n−オクチルトリス(ジメチルヒドロシロキシ)シラン6.77g、デカメチルシクロペンタシロキサン6.87g、および、ペンタメチルシクロペンタシロキサン35.5gを投入した。フラスコ内を撹拌しながら昇温し、80℃でトリフルオロメタンスルホン酸触媒0.05mlを添加し、その温度で4時間撹拌した。次いで、炭酸カルシウム粉末を添加して該触媒を中和し、4時間かけて反応混合物を室温まで冷却して、ろ過し、ろ液を減圧下100℃でストリッピングすることにより、液状残渣を得た。この液状残渣をNMR分析したところ、下記の平均シロキサン単位式(XL−12)を有する分岐状メチルハイドロジェンポリシロキサンであることがわかった。
【化15】

【0043】
[分岐状メチルハイドロジェンポリシロキサン(XL−13)の合成例]
温度計および攪拌機を備えた300mlの四つ口セパラブルフラスコに、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度20mPa・s)を97.5g、および、活性白土2.5gを投入した。フラスコ内を撹拌しながら昇温し、60℃で8時間撹拌した。次いで、ろ過し、ろ液を減圧下100℃でストリッピングすることにより、液状残渣を得た。この液状残渣をNMR分析したところ、平均シロキサン単位式(XL−13)を有する分岐状メチルハイドロジェンポリシロキサンであることがわかった。
【化16】

【0044】
前記のメチルハイドロジェンポリシロキサン(XL−1)〜(XL−13)を下記の平均シロキサン単位式(9)で表わした場合に、各メチルハイドロジェンポリシロキサンの粘度、各シロキサン単位の係数であるk,r,m,n,p,q,およびk+rとk+m/(k+r+m+n+p+q)を表2に示した。なお、メチルハイドロジェンポリシロキサン(XL−1)〜(XL−7)は、成分(B)である。
[Me2HSiO1/2]k[Me3SiO1/2]r [MeHSiO2/2]m [Me2SiO2/2]n[MeSiO3/2]p [SiO4/2]q (9)
(式中、Meはメチル基である。但し、XL−12の[MeSiO3/2]単位中のMeのみオクチル基(-C8H17)である。)。
【0045】
【表2】

【0046】
[実施例1〜実施例8,比較例1〜比較例9]
ミキサー中で、成分(A)としての下記平均シロキサン単位式(Vi−1)で表される末端ビニル基を有する分岐状メチルポリシロキサン(25℃における粘度170mPa・s)100重量部と、成分(B)としてのメチルハイドロジェンポリシロキサン(XL-1)〜(XL-10)のいずれか([成分(B)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(A)中のビニル基]のモル比が1.3となる量)を混合し、次に1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3重量部を投入して均一になるまで混合した。これに成分(C)として塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を、白金金属量が30ppm〜130ppmとなる量投入して均一になるまで混合して、液状の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物No.1〜No.17(いずれも無溶剤型である)を得た。成分(A)、成分(B)および成分(C)の配合量、ならびに成分(B)の種類を表3に示した。
【化17】

【0047】
【表3】

【0048】
表4に示す無溶剤型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物No.1〜No.17を表5に記載した温度で硬化させた場合における硬化速度、硬化密着性および剥離抵抗値を前記の方法で評価した結果を5に示した。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
比較例1の組成物(Q単位を有するが、D単位を有しないXL-8を含有する)は、実施例1〜実施例8の組成物に較べ硬化速度が遅い。
比較例2の組成物(T単位もQ単位も有しないXL-9を含有する)は、実施例1〜実施例8の組成物に較べ硬化密着性が著しく劣る。
比較例3〜比較例5(T単位もQ単位も有さないXL-10を含有する)の組成物うち、比較例3の組成物(白金金属量30ppm)は、実施例4の組成物(白金金属量30ppm)に較べ硬化速度が著しく遅く硬化密着性が劣り、比較例4の組成物(白金金属量65ppm)は、実施例1〜実施例3、実施例5、実施例7、実施例8の組成物(白金金属量65ppm)および実施例4の組成物(白金金属量30ppm)に較べ硬化速度が少々遅く、比較例5の組成物(白金金属量130ppm)は、白金金属量が著しく多いので硬化速度、硬化密着性ともに実施例1〜実施例8の組成物(白金金属量30ppm、65ppm、80ppm)並みである。
【0052】
比較例6の組成物(Q単位を有せずT単位を有するXL11を含有する)は、実施例1〜実施例8の組成物に較べ硬化密着性が著しく劣る。
比較例7の組成物(Q単位を有せずT単位を有するXL12を含有する)は、実施例1〜実施例8の組成物に較べ硬化速度が遅く、硬化密着性が劣る。
比較例8の組成物(Q単位を有せずT単位を有するXL12を含有する。白金金属量100ppm)は、白金含有量が多いので硬化速度が実施例1〜実施例8の組成物並みになっているが、硬化密着性が若干劣る。
比較例9の組成物(Q単位を有せずT単位を有するXL13を含有する)は、実施例の組成物1〜実施例8の組成物に較べ硬化速度が著しく遅い。
なお、XL11、XL12およびXL13は特許文献3〜特許文献5に開示されているような架橋剤としてのメチルハイドロジェンポリシロキサンである。
【0053】
[実施例9〜実施例12,比較例10,比較例11]
ミキサー中で、成分(A)としての30重量%トルエン溶液の粘度が5,000mPa・sであり、分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(メチルビニルシロキサン単位含有量1.5mol%)(Vi−2)30重量部と、成分(B)としてのメチルハイドロジェンポリシロキサン[成分(B)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(A)中のビニル基]のモル比が1.5となる量、および、メチルブチノール0.3重量部を均一になるまで混合した。この混合物を、成分(A)の濃度が30重量%となるように成分(D)としてのトルエンに均一に溶解させた。このトルエン溶液に成分(C)としての塩化白金酸1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を白金金属量が65ppmとなるような量添加し均一になるまで混合して、溶剤型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物No.18〜No.23を得た。成分(A)〜成分(D)の配合量、ならびに成分(B)の種類を表6に示した。
【0054】
【表6】

【0055】
表7に示す溶剤型の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物No.18〜No.23を表8に記載した温度で硬化させた場合における硬化速度、硬化密着性および剥離抵抗値を前記の方法で評価した結果を表8に示した。
【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
比較例10の組成物(T単位もQ単位も有しないXL-9を含有する)は、実施例9の組成物〜実施例12の組成物に較べ硬化密着性が著しく劣る。比較例11の組成物(D単位もT単位もQ単位も有しないXL-10を含有する)は、実施例9の組成物〜実施例12の組成物に較べ硬化速度が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物は、シート状基材表面に、密着性に優れ、粘着性物質に対する剥離性に優れた硬化皮膜を形成するのに有用であり、本発明の剥離性硬化皮膜を有するシート状基材は、特に工程紙,粘着物質包装紙,粘着テープ,粘着ラベル等に好適に使用することができる。本発明の剥離性硬化皮膜を有するシート状基材の製造方法は、かかる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材を効率よく、生産性よく製造するのに有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン: 100重量部、
(B)25℃における粘度が5〜1,000mPa・sであり、下記の平均シロキサン単位式(1)で示され、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: [成分(B)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(A)中のアルケニル基]のモル比が0.3〜5.0となる量
[R2HSiO1/2]k[R3SiO1/2]r [RHSiO2/2]m [R2SiO2/2]n[RSiO3/2]p [SiO4/2]q (1)
(式中、Rはそれぞれ独立に一価の脂肪族不飽和結合を含まない非置換もしくは置換炭化水素基であり、kとrは0以上の数、かつ、1≦k+r≦10であり、mは30≦m≦200であり、nは10≦n≦100であり、pは0≦p≦10であり、qは1であり、0.5≦(k+m)/(k+r+m+n+p+q)<1であり、k+r+m+n+p+qは前記粘度範囲を満足する数である。)、および
(C)ヒドロシリル化反応用白金系触媒: 触媒量
からなることを特徴とする剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
成分(A)の分子構造が直鎖状または分岐鎖状であり、ケイ素原子結合アルケニル基がビニル基、アリル基またはヘキセニル基であり、ケイ素原子結合有機基がアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基であり(ただし、50モル%以上がメチル基である)、成分(B)のRがアルキル基、フェニル基またはパーフルオロアルキル基(ただし、50モル%以上がメチル基である)である請求項1に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
成分(C)が白金アルケニルシロキサン錯体触媒である請求項1または請求項2記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
組成物中の白金金属量が成分(A)と成分(B)の合計重量の10〜300ppmである請求項3記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
成分(A)の25℃における粘度が50〜2000mPa・sであり、組成物が無溶剤型である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
さらに(D)有機溶剤:10〜3000重量部からなる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
さらに(E)ヒドロシリル化反応抑制剤:0.001〜5重量部からなり、常温で非硬化性であり、加熱硬化性である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる剥離性硬化皮膜を有するシート状基材。
【請求項9】
基材が、ポリエチレンラミネート紙またはプラスチックフィルムである請求項8に記載のシート状基材。
【請求項10】
シート状基材上に請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の剥離性硬化皮膜形成性オルガノポリシロキサン組成物をコーテイングし、加熱して硬化させることを特徴とする剥離性硬化皮膜を有するシート状基材の製造方法。
【請求項11】
シート状基材が、ポリエチレンラミネート紙またはプラスチックフィルムである請求項10に記載のシート状基材の製造方法。
【請求項12】
加熱温度が80〜130℃である請求項10または請求項11に記載の剥離性硬化皮膜を有するシート状基材の製造方法。

【公開番号】特開2007−211186(P2007−211186A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34395(P2006−34395)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(500295461)ダウ コーニング コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】