説明

副甲状腺ホルモン受容体の活性化並びに幹細胞及び前駆細胞の増殖

本発明は、細胞周辺のPTH/PTHrP受容体を活性化して、造血幹細胞又は前駆細胞、間葉幹細胞、上皮幹細胞、神経幹細胞及び関連する生成物を処理する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
赤血球、白血球、血小板及びリンパ球のような、循環している血液細胞は、造血といわれる工程の、前駆細胞の最終分化から生じる。胎児期に於いては、造血は網状の網内系を介して起こる。正常な成人では、前駆細胞の最終分化は、近位大腿及び上腕にいくらか拡大して、専ら軸骨格の髄腔内で起こる。また、これらの前駆細胞は、前駆細胞、幹細胞又は造血細胞と呼ばれる未成熟な細胞に由来する。
【0002】
造血前駆細胞は、臓器レシピエントに於ける血液及び免疫細胞機能を復帰する能力により、更に脳、筋肉及び肝臓のような他の組織の細胞を生成する潜在能力により、治療可能性を有している(Choi, 1998 Biochem Cell Biol 76, 947-56; Eglitis and Mazey, 1997 Proc Natl Acad Sci U S A 94, 4080-5; Gussoni et al., 1999 Nature 401, 390-4; Theise et al., 2000, Hepatology 32, 11-6)。
【0003】
ヒトの自己及び同種骨髄移植方法が、白血病、リンパ腫及びその他の生命に関わる病気のような疾患の治療として最近用いられている。これらの方法には、移植用に十分な細胞があることを保証するために、提供者の骨髄を大量に単離しなければならない。骨髄移植のために、造血前駆細胞の拡充が、これらの治療有用性に対して、長期にわたるヒト骨髄培養を促すための可能性ある方法である。造血前駆細胞の単離及び精製について幾つかの検討が報告されている(例えば、米国特許第5,061,620号を参照されたい)が、これらの方法の何れも殆ど成功していない。
【0004】
前駆細胞の局在化のための基準を決定することは、これらの細胞の治療能力を最大化するために重要である。発育過程において、造血は胎児肝臓から骨髄へ移行し、成人期を通して造血の部位はここにとどまる。骨髄での造血が確立されると、造血前駆細胞は骨空洞の至るところにランダムに分布しない。そうではなく、造血前駆細胞は骨内膜表面の直近に見出され(Lord et al., 1975, Blood, 46:65-72; Gong et al., 1978, Science, 199:1443-1445)、投与約10時間後に、精製された造血前駆細胞が骨内膜表面に優先的に局在化して見出されるという、観察が最近確認された(Nilsson, et al., 2001, Blood, 97:2293-2299)。より成熟した前駆細胞(それらのCFU−C活性により測定)が、進展した骨表面からの距離に従って数が増加した。最後に、骨の中枢長手方向軸に近づくと、成熟細胞の最終分化が生じていることが示されている(Lord et al., 1975, Blood, 46:65-72; Cui et al., 1996, Cell Prolif., 29:243-257; Lord et al., 1990, Int. J. Cell Clon., 8:317-331)。
【0005】
造血前駆細胞と骨の骨内膜表面との間の関係を考えると、造血の役割を果たすのに関連する1つの細胞型は骨芽細胞である(Taichman and Emerson, 1998, Stem Cells, 16:7-15)。骨芽細胞は、局部及びホルモン刺激に応答して、骨基質の生成及び石化に関与する骨細胞である(Ducy et al., 2000, Science, 289:1501-1504)。更に、これらの細胞は、RANK/RANK−リガンド系を通して、造血源の破骨細胞及び骨吸収細胞の形成及び活性を調節して骨の再形成を規制する(Teitelbaum et al., 2000, Science, 289:1504-1508)。骨芽細胞は、G−CSF及びその他の成長因子を放出して、初期の造血細胞の成長を支援できるということが、検討で立証されている(Taichman and Emerson, 1994, J. Exp. Med., 179:1677-1682; Taichman et al., 1996, Blood, 87:518-524; Taichman et al., 2001, Br. J. Haematol., 112:438-448)。
【0006】
前駆細胞を操作する能力は、移植された細胞の生着の効率を改善することができる。現在のところ、移植技術は大変非効率的である。これらの大きな治療可能性があるとの観点では、如何にして造血前駆細胞を規制するか、例えば、どの因子が細胞の局在化、拡大などを引き起こすか、について比較的僅かしか知られていない。ある検討は、前駆細胞の骨髄空隙への局在化は、ケモカインに依存していることを示唆している。例えば、SDF−1か、その受容体か、又はCXCR−4の何れかが存在しないことが、発育中のマウスの骨髄での造血の局在化を妨げる、ことが見出された(Nagasawa et al., 1996, Nature, 382:635-8; Su et al., 1999, J Immunol., 162:7128-7132; Zou et al., 1998, Nature, 393:595-9)。更に、CXCR−4の操作は、成熟マウスに於ける前駆細胞の帰巣本能及び保持を変化させ、更にその重要な役割を支援する(Ma et al., 1999, Immunity, 10:463-71; Peled et al., 1999, Science, 283::845-8)。セレクチン類及びインテグリン類も、このプロセスに参画するものと信じられており、そしてインビボ又はインビトロに於いて、初期細胞の骨髄への保持又は付着の調節媒体(mediator)として同定されている(Greenberg et al., 2000, Blood, 95:478-86; Naiyer et al., 1999, Blood, 94:4011-9; Rood et al., 1999, Exp. Hematol., 27:1306-14; van der Loo et al., 1998, J. Clin. Invest. 102:1051-61; Williams et al., 1991, Nature, 352:438-41; Zanjani et al., 1999, Blood, 94:2515-22)。しかしながら、これらの検討は、前駆細胞の局在化の完全な理解を提供しているものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前駆細胞集団の拡大に寄与する外因性のシグナル伝達分子を理解することは、治療方法を明示するのに重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、幹細胞及び前駆細胞を操作するための方法の特徴に関連する。驚くべきことに、本発明によると、微小環境を形成している細胞中の、副甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン関連タンパク質(Parthyroid Hormone/Parathyroid Hormone-related Protein:PTH/PTHrP)受容体の活性化が、前駆細胞及び幹細胞(例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、間葉幹細胞、上皮幹細胞、神経幹細胞)の生育(自己再生の増加/数量の増加を包含する)及び/又は維持において、向上させることが見出された。
【0009】
ある態様に於いて、本発明は造血幹細胞及び前駆細胞の生育及び維持を向上させる方法を提供する。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞を、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤の、造血幹細胞又は前駆細胞の生育及び維持を支援するのに有効な量を接触させることを包含する。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、造血幹細胞又は前駆細胞の直近に存在している。一態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、リンパ網内系細胞である。更なる態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、造血前駆細胞である。PTH/PTHrP受容体を発現する細胞と、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤との接触は、インビトロ又はインビボで起こってもよい。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤は、PTH(遺伝子操作で合成されたヒトPTH(1−34)及び活性PTH断片を包含する)、PTH類縁体、又はPTH/PTHrP受容体作動薬である。造血前駆細胞の生育及び維持は、インビトロ又はインビボで起こってもよい。
【0010】
本発明の別の態様に於いて、造血幹細胞又は前駆細胞の自己再生を誘発する方法を提供する。この方法は、造血幹細胞又は前駆細胞とPTH/PTHrP受容体を発現する細胞との共培養、及びPTH/PTHrP受容体を発現する細胞をPTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤と接触させて造血幹細胞又は前駆細胞の自己再生を誘発することを包含する。この共培養は、インビトロ又はインビボで起こってもよい。
【0011】
本発明の更なる態様に於いて、対象中の造血幹細胞又は前駆細胞の生育及び維持を向上させる方法を提供する。この方法は、このような治療を必要とする患者に、PTH/PTHrP受容体を発現する患者の細胞のPTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、造血幹細胞又は前駆細胞の生育及び維持を支援するのに有効な量で、投与することを包含する。幾つかの態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、リンパ網内系細胞である。ある特定の態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、造血幹細胞又は前駆細胞である。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤は、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である。更なる重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、骨髄ドナーである。この骨髄ドナーは、骨髄を提供した者でもよい、又はまだ骨髄を提供していない者である。ある特定の態様に於いては、このような治療を必要とする対象は骨髄レシピエントである。一態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、環境ストレス下にある造血前駆細胞を有している対象である。環境ストレスは、温度上昇(例えば、熱)、身体外傷、酸化、滲透ストレス及び化学ストレス(例えば、化学療法藥)、及び/又は照射(例えば、紫外線(UV)、X線、ガンマ、アルファ又はベータ線照射)を包含する。
【0012】
更なる態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、免疫系不全症を有している。免疫系不全症は、慢性感染症の対象、放射線又は化学療法を受けている対象、CD4細胞数が異常に低い対象、遺伝性の免疫不全症である患者を包含する。対象は、単球、マクロファージ、好中球、T細胞、B細胞、赤血球、血小板、好塩基球数が異常に低いような、1つ又はそれ以上の種類の造血細胞不全を有する対象であってもよい。
【0013】
本発明の更なる態様に於いては、造血細胞をその必要とする対象に供給する方法が提供される。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現する対象の細胞のPTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、造血幹細胞又は前駆細胞の産生を増加するのに有効な量で、投与することを包含する。幾つかの態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、リンパ網内系間質細胞である。ある特定の態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は造血幹細胞又は前駆細胞である。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤は、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である。更なる重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、癌の化学療法又は放射線療法を受けた、受けるであろう又は併用して受けている対象である。この対象は、これらに限定されないが、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫及び白血病を包含する疾患を有している。対象は、これらに限定されないが、血小板不全症、貧血症(例えば、再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血、ファンコニ貧血及び急性リンパ球性貧血)及び好中球減少症を包含する、機能的血液細胞の欠如により特徴付けられる疾患を有していてもよい。対象は、これらに限定されないが、リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞及びAIDSを包含する、機能的免疫細胞の欠如により特徴付けられる疾患を有していてもよい。対象は幹細胞の提供者であってもよい。重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、免疫抑制剤を投与された、投与されるであろう又は併用投与されている対象である。更なる重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、G−CSFを投与された、投与されるであろう又は併用投与されている対象である。
【0014】
本発明の別の態様によると、造血幹細胞又は前駆細胞の動員を向上させる方法が提供される。この方法はこのような治療を必要とする対象に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、造血幹細胞又は前駆細胞の動員を向上させるのに十分な量で、投与することを包含する。重要な態様に於いては、対象は骨髄提供者である。
【0015】
本発明の更なる態様に於いて、治療を必要とする対象の異常造血細胞に対する正常細胞の比率を増加させる方法が提供される。この方法は、対象中のPTH/PTHrP受容体を発現する細胞集団に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤の造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大させるのに有効な量を接触させ、それにより対象中の異常造血細胞に対する正常細胞の比率を増加させることを包含する。幾つかの態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞の集団は、造血幹細胞又は前駆細胞の集団の直近に存在している。PTH/PTHrP受容体を発現する細胞の集団は、これらに限定されないが、骨芽細胞、リンパ網内系間質細胞、及び骨芽細胞とリンパ網内系間質細胞の混合物であってよい。重要な態様に於いては、異常細胞は、白血病細胞(例えば、リンパ芽球性)又は前白血病細胞(例えば、骨髄異形成細胞)である。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤は、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である。更なる重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、白血病に罹っているか又は罹るリスクがあり、ここにおける白血病は慢性(例えば、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病)であるか、又は白血病は急性(例えば、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病)である。
【0016】
本発明の更なる態様に於いて、白血病に罹っているか又は罹るリスクのある対象を治療する方法が提供される。この方法は、対象にPTH、PTH類縁体、又はPTH/PTHrP受容体作動薬を、正常な造血幹細胞及び前駆細胞の量を増加させるのに有効な量で投与し;そして白血病細胞又は前白血病細胞の量を減少させ、それにより白血病に罹っているか又は罹るリスクのある対象を治療することを含有している。重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は、白血病に罹っているか又は罹るリスクがあり、ここにおける白血病は慢性(例えば、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病)であるか、又は白血病は急性(例えば、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病)である。
【0017】
本発明の更なる態様に於いて、その必要とする対象の異常な造血細胞の量を減少させる方法が提供される。この方法は、対象にPTH、PTH類縁体、又はPTH/PTHrP受容体作動薬を、対象中の正常な造血幹細胞及び前駆細胞の量を増加させるのに有効な量で投与し、それにより対象中の異常な造血幹細胞を減少させることを包含している。重要な態様に於いては、異常な細胞は、白血病細胞(例えば、リンパ芽球性)又は前白血病細胞(例えば、骨髄異形成細胞)である。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤は、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である。更なる重要な態様に於いては、このような治療を必要とする対象は白血病に罹っているか又は罹るリスクがあり、ここにおける白血病は慢性(例えば、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病)であるか、又は白血病は急性(例えば、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病)である。
【0018】
更なる態様によると、本発明は、単離されたPTHで処理された細胞の集団を提供する。細胞の集団は、間質細胞の集団が好ましい。細胞は、対象から単離されたエキソビボ細胞であってもよい。また、細胞はインビトロで培養された細胞であってもよい。一態様に於いては、単離された細胞は同種である。別の態様に於いては、単離された細胞は、異種であり、そして2つ又はそれ以上の細胞型である。これらの細胞型の1つは、間質細胞である。
【0019】
本発明の方法は、非造血幹細胞及び前駆細胞にも適用することができる。
【0020】
別の態様に於いては、間葉幹細胞の生育及び維持を向上させる方法が提供される。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、間葉幹細胞の生育及び維持を支援するのに有効な量で接触させることを包含する。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、間葉幹細胞の直近に存在している。一態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、骨(例えば、骨芽細胞)、乳腺(例えば、乳腺細胞)、皮膚(例えば、ケラチン生成細胞及び繊維芽細胞)、上皮、肺(例えば、肺胞細胞)、泌尿生殖器又は胃腸の細胞である。間葉幹細胞の生育及び維持は、インビトロ又はインビボで起こってもよい。
【0021】
更なる別の態様に於いては、その必要とする対象の異常な骨、乳腺、皮膚、上皮、肺、泌尿生殖器又は胃腸の細胞に対する正常細胞の比率を増加させる方法が提供される。この方法は、対象中のPTH/PTHrP受容体を発現する細胞集団に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、間葉系幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大するのに有効な量で接触させ、それにより、対象中の異常な骨、乳腺、皮膚、上皮、肺、泌尿生殖器又は胃腸の細胞に対する正常細胞の比率を増加させることを含有する。
【0022】
更なる別の態様に於いて、上皮幹細胞の生育及び維持を向上させる方法が提供される。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、上皮幹細胞の生育及び維持を支援するのに有効な量で接触させることを包含する。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、上皮幹細胞の直近に存在している。一態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、乳腺(例えば、乳腺細胞)、皮膚(例えば、ケラチン生成細胞、繊維芽細胞、毛嚢細胞)、上皮、肺(例えば、肺胞細胞)、泌尿生殖器又は胃腸の細胞である。上皮幹細胞の生育及び維持はインビトロ又はインビボで起こってもよい。
【0023】
更なる別の態様に於いては、その必要とする対象の異常な乳腺、皮膚、肺、泌尿生殖器又は胃腸の細胞に対する正常細胞の比率を増加させる方法が提供される。この方法は、対象中のPTH/PTHrP受容体を発現する細胞集団に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、上皮幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大するのに有効な量で接触させ、それにより、対象中の異常な乳腺、皮膚、肺、泌尿生殖器又は胃腸の細胞に対する正常細胞の比率を増加させることを含有する。
【0024】
更なる別の態様に於いて、神経幹細胞の生育及び維持を向上させる方法が提供される。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、神経幹細胞の生育及び維持を支援するのに有効な量で接触させることを包含する。重要な態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、神経幹細胞の直近に存在している。一態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、星状細胞、乏突起膠細胞、グリア細胞、GABA性神経細胞又はドーパミン作動性神経細胞である。別の態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞は、小脳(例えば、プルキンエ細胞、顆粒細胞)、終脳、間脳、中脳、髄質、脳橋、視床、海馬、三叉神経節又は軟髄膜の細胞のような、特定の解剖学的部位に位置している。神経幹細胞の生育及び維持は、インビトロ又はインビボで起こってもよい。
【0025】
更なる別の態様に於いては、その必要とする対象の異常な神経細胞に対する正常細胞の比率を増加させる方法が提供される。この方法は、対象中のPTH/PTHrP受容体を発現する細胞集団に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、神経幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大するのに有効な量で接触させ、それにより、対象中の異常な神経細胞に対する正常細胞の比率を増加させることを含有する。
【0026】
更なる別の態様に於いては、本発明は、造血幹細胞若しくは前駆細胞、上皮幹細胞又は間葉幹細胞の生育又は維持を向上させるためのキット、及び本明細書に記載の方法による細胞の生育又は維持を向上させるためのPTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を用いるための使用説明書を提供する。
【0027】
更なる別の態様に於いて、工程が、
(a)PTH/PTHrP受容体を発現する細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を接触させること;
(b)工程(a)の薬剤に応答して、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞により産生されるタンパク質又はタンパク質をコードするmRNAを採取すること;
(c)幹細胞又は前駆細胞に、工程(b)の1つ又はそれ以上のタンパク質を接触させること;
(d)幹細胞又は前駆細胞により示される生理学的効果を測定すること;及び
(e)前記生理学的効果に関連する1つ又はそれ以上のタンパク質を単離すること:
を包含し、当該生理学的効果が増加した幹細胞又は前駆細胞の複製を含有するところの、幹細胞又は前駆細胞の集団を増加させる細胞産生物を同定する方法が提供される。
【0028】
本発明の限定の各々は、本発明の種々な態様を包含することができる。従って、要素の何れか1つ又はその組み合わせを含有している本発明の限定の各々は、本発明の各々の態様に包含されると見込まれる。
【0029】
(発明の詳細説明)
本発明により、前駆細胞及び幹細胞を操作する新規な方法が同定された。これらの方法及び関連する産生物は、大きな治療及び研究価値を有する。例えば、造血前駆細胞は、免疫不全の患者の免疫系を補完する移植に用いられている。これらの細胞は、多くの付加的治療用途を有している。しかしながら、本発明以前には造血前駆細胞を単離及び精製する能力は、限定されていた。これらの細胞は骨髄中に存在し、技術的に複雑な操作によってこれらは単離される。さらに、サンプル中のこれらの細胞を同定するための商業的に価値のある方法は多くない。本発明はこれらの多くの問題を解決した。
【0030】
本発明により、幹細胞又は前駆細胞の生育又は維持を向上させる方法が提供される。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現している細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、幹細胞又は前駆細胞(例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、間葉幹細胞、上皮幹細胞、神経幹細胞)の生育又は維持を支援するのに有効な量で接触させることを包含する。
【0031】
本明細書で用いられる「生育又は維持を向上させる」は、細胞の生存及び分化する能力を包含している、幹細胞又は前駆細胞の状態を促進し、増やし又は向上させることを示している。
【0032】
本明細書で用いられる「幹細胞」は、自己複製及びより成熟した細胞(ここでは「子孫」とも呼ぶ)へ分化する能力のある未成熟細胞を示している。前駆細胞も自己複製及びより成熟した細胞へ分化する能力を有しているが、系統が決まっている(例えば、造血前駆細胞は、血液細胞の系列)のに対して、幹細胞はこのような限定が必要ではない。本開示に於いては、前駆細胞は本明細書を通して、「幹細胞」と同義に記載することができる。
【0033】
本発明の方法は、上皮、間葉及び神経の幹細胞のような、非造血幹細胞及び前駆細胞を拡大する方法を更に提供する。このような幹細胞集団の生育及び拡大は、例えば神経、乳腺、皮膚、呼吸器、筋肉、骨、泌尿生殖器及び胃腸系を包含する、多数の臓器系での組織の質を改善することができる。更に、同じ臓器に異常な細胞(例えば、悪性細胞)を有している対象に於いての上皮、間葉又は神経幹細胞の量の増加は、異常細胞に対する正常細胞の比率を増やすことができる。
【0034】
従って、本発明の方法から利益を得ることのできる幹細胞集団は、間葉幹細胞を包含する。間葉幹細胞は、骨髄の外側へ移動して、特定の組織に結合し、そこでこれらは最終的に多様な系統に分化するであろうと思われている。インビトロ又はエキソビボでの間葉幹細胞の生育及び維持の向上は、胸腺、皮膚、筋肉、上皮、骨、呼吸器、泌尿生殖器、胃腸、結合又は繊維芽組織を包含する、新しい組織を生成するために用いることができる。
【0035】
間葉幹細胞又は「MSCs」は、当該技術分野でよく知られている。最初は胎児性中胚葉から派生し、そして成人の骨髄から単離されるMSCsは、分化して、筋肉、骨、軟骨、脂肪、骨髄間質及び腱を形成することができる。胚形成中に中胚葉は、肢芽中胚葉、骨を生成する組織、軟骨、脂肪、骨格筋及び上皮に発達する。中胚葉は、内臓の中胚葉にも分化し、これは心筋、平滑筋、又は上皮及び造血前駆細胞よりなる血島を生成することができる。従って、初期の中胚葉又はMSCsは、多数の細胞及び組織型の供給源を提供できる。多数のMSCsが単離されている(例えば、Caplan, A.らの米国特許第5,486,359号; Young, H.らの米国特許第5,827,735号;Caplan, A.らの米国特許第5,811,094号;Bruder, S.らの米国特許第5,736,396号;Caplan, A.らの米国特許第5,837,539号;Masinovsky, B.の米国特許第5,837,670号;Pittenger, M.の米国特許第5,827,740号;「Jaisal, N., et al., (1997) J. Cell Biochem. 64(2):295-312」; 「Cassiede, P., et al., (1996) J Bone Miner Res. 9:1264-73」; 「Johnstone, B., et al., (1998) Exp Cell Res. 1:265-72」; 「Yoo, et al., (1998) J Bone Joint Surg Am. 12:1745-57」; 「Gronthos, S., et al., (1994) Blood 84:4164-73」; 「Pittenger, et al., (1999) Science 284:143-147」を参照のこと)。この細胞は原体である間葉の多数の細胞型に分化する能力がある。MSCsは、神経系統を包含する、内胚葉性及び外胚葉性にも分化できる。
【0036】
本発明の方法から利益を得ることのできる幹細胞集団は、上皮幹細胞も包含する。上皮組織は、動物体の表面を覆うか、又は管若しくは空洞の内側を覆う膜状の細胞組織である。上皮組織は、身体のその他の部分を囲んだり保護する働きをし、そして分泌物及び排出物を産生でき、胃腸管で見られるような吸収にも関連することができる。上皮組織は、身体の4つの一次組織の内の1つであり、呼吸器の表皮及び内面、消化及び泌尿生殖管である。
【0037】
上皮幹細胞も、当該技術分野でよく知られている。上皮幹細胞は、寿命が長く、比較的分化されず、細胞分割に大きな能力を有し、そして最終的に上皮のホメオスタシスに関与する細胞である。この型の細胞は、米国特許第5,556,783号;同第5,423,778号;「Rochat et al., Cell 76:1063 (1994)」;「Jones et al., Cell 73:713 (1993)」;「Jones et al., Cell 80:83 (1995)」及び「Slack, Science 287:1431-1433 (2000)」に記載のものを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0038】
皮膚は、上皮幹細胞の1つの供給源である。ヒトの皮膚は、上皮細胞の外層である表皮、及び支持組織の内層である真皮からなっている。真皮は表皮の支持を与える、血管がよく発達した組織である。真皮は繊維芽細胞を含有しており、これは、コラーゲン、フィブロネクチン及びエラスチンのような、皮膚の強度及び柔軟性に寄与する、細胞外基質タンパク質を包含する、結合組織の種々の成分を産生する。皮膚は、毛嚢及び汗腺のような各種副器官も含有している。表皮は、ケラチノサイトと呼ばれる、継続的に再生している上皮細胞の多層膜から成っている。表皮の基底層は、分割して、(その他の細胞型での)ケラチノサイトになる上皮幹細胞を含有しており、このケラチノサイトは、分化に伴ってケラチンを産生し、表皮の表面に「押し出す」ことになる。上皮幹細胞(「ESCs」)は、皮膚及び消化管の内側のような組織から公知の方法で得ることができ、組織培養で生育することができる(Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A:229; Pittelkow and Scott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771)。
【0039】
本発明の方法から利益を得ることのできる幹細胞集団は、神経幹細胞も包含する。インビトロ又はエキソビボでの神経幹細胞の生育及び維持を向上は、星状細胞、乏突起膠細胞、グリア細胞、GABA性及びドーパミン作動性神経細胞を包含する、神経組織を生成するために使用できる拡大した集団をもたらす。
【0040】
神経幹細胞は、当該技術分野で公知である(Gage F. H. (2000) Science 287:1433-1438; Svendsen C. N. et al, (1999) Brain Path 9:499-513; Okabe S. et al, (1996) Mech Dev 59:89-102)。以前は、成体の脳は、幹細胞の可能性を有する細胞をすでに含有していないと信じられていた。しかしながら、齧歯類、最近では、非ヒト霊長類及びヒトでの検討で、成体の脳に幹細胞が存続していることを示している。これらの幹細胞は、インビボで増殖することができ、そしてインビボで少なくとも幾つかの神経細胞を継続的に再生成している。エキソビボで培養すると、神経幹細胞は増殖すること、更に異なる型の神経及びグリア細胞への分化することも誘発される。脳に移植されると、神経幹細胞は、生着して、神経細胞及びグリア細胞を産生することができる。
【0041】
神経幹細胞は、成熟哺乳動物の脳の脳室下帯及び海馬で同定され(Ciccolini et al., (1998) J Neuroscience 18:7869-7880; Palmer et al., (1999) Neurosci. 19:8487-97; Reynolds and Weiss, (1992) Science 255:1707-10; Vescovi et al., (1999) Exp Neurol 156:71-83)、そして脳の脳室上皮及びその他の推定の非神経部位にも存在できる(Doetsch et al., (1999) Cell 97:703-716; Johnsson et al., (1999) Cell 96, 25-34; Palmer et al., (1999) J Neurosci. 19:8487-97)。胎児又は成体の脳由来の神経幹細胞は、エキソビボで拡大され、そして星状細胞、乏突起膠細胞及び機能性神経への分化が誘導される(Ciccolini et al., (1998) J Neuroscience 18:7869-7880; Johansson et al., (1999) Cell 96, 25-34; Palmer et al., (1999) J Neurosci. 19:8487-97; Reynolds et al., (1996) Dev Biol 175:1-13; Ryder et al., (1990) J Neurobiol 21:356-375; Studer et al., (1996) Exp Brain Res 108,328-36; Vescovi et al., (1993) Neuron 11, 951-66)。インビボで、未分化の神経幹細胞を種々の時間培養すると、最終的にはグリア細胞、GABA性及びドーパミン作動性神経細胞に分化する(Flax et al., (1998) Nature Biotechnol 16:1033-1038; Gage et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92:11879-83; Suhonen et al., (1996) Nature 383:624-7)。
【0042】
PTH/PTHrP受容体を発現している細胞は、神経幹細胞の直近に存在させることができる。例えば、PTH/PTHrP受容体を発現している細胞を、小脳の細胞(例えば、プルキンエ細胞、顆粒細胞)、終脳、間脳、中脳、髄質、脳橋、視床、海馬、三叉神経節又は軟髄膜のような、脳の特定な解剖学的部位に位置させることができる(Weaver et al., (1995) Mol. Brain Res. 28:296)。
【0043】
その他の態様に於いて、造血幹細胞又は前駆細胞の生育及び維持を向上させる方法が提供される。この方法は、PTH/PTHrP受容体を発現している細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を、造血幹細胞又は前駆細胞の生育及び維持を支援するのに有効な量で接触させることを包含する。
【0044】
本発明の幾つかの態様によると、副甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH/PTHrP)の活性化は、造血幹細胞又は前駆細胞の生育(自己再生の増加/数量の増加を包含する)又は維持の向上させることになるのが見出された。この効果は、骨髄微小環境に存在する、受容体を発現している細胞が介在しているものと思われる。従って、この受容体を活性化する薬剤(例えば、副甲状腺ホルモン−PTH)が、インビボ及びインビトロで、幹細胞又は前駆細胞の産生を向上させる刺激剤としての機能を果たすことができる。このことは、前駆細胞移植の分野に重要な臨床的示唆をもたらす、予期せぬ発見であることを意味している。
【0045】
骨髄由来の前駆細胞の数の拡大は、造血及び腫瘍疾患に於ける移植に使用可能な幹細胞及び前駆細胞の量が不十分なことに対する念願の解決法である。有益な効果は、少なくとも以下の設定に対して想定される:
(i)インビボで、幹細胞及び前駆細胞の数の増加;これは、採取前に幹細胞及び前駆細胞を得ることを促進するか、又は骨髄移植後に幹細胞及び前駆細胞の回復を促進するかのどちらかであり得る、及び/又は、
(ii)エキソビボで、集めた幹細胞及び前駆細胞を拡大する。
インビボで幹細胞及び前駆細胞の数を増加させる方法は、骨髄/末梢前駆細胞の採取に関わる時間及び不快感を減少させ、そしてドナーの前駆細胞の貯蔵量を増加させる可能性がある。現在、自己ドナー移植の約25%が、前駆細胞が不足であるため禁止されている。更に、同種移植を必要とする患者の25%未満しか、組織適合性のあるドナーを見つけることができない。最近、臍帯血のバンクが存在して、一般の人々の人種構成を広くカバーしているが、検体中の前駆細胞数が不適正なため、現在のところ小児への使用が限定されている。幹細胞及び前駆細胞の数を増加させる方法は、臍帯血を成人患者に使用することを可能とし、それにより同種移植の利用を拡大する。
【0046】
本発明の幾つかの態様によると、PTH/PTHrP刺激による造血幹細胞又は前駆細胞の生育(自己再生の増加/数量の増加を包含する)又は維持の向上が、異常な造血細胞に対する正常細胞の比率を増加させることも見出された。有益な効果は、異常細胞の進行性支配が病気となる、白血病又は前白血病に対して想定できる。
【0047】
造血細胞が、多能性幹細胞、多能性前駆細胞(例えば、リンパ系幹細胞)、及び/又は特定の造血系統になる前駆細胞を包含していることは、当該技術分野でよく知られている。特定の造血系統になる前駆細胞は、T細胞系統、B細胞系統、樹状細胞系統、ランゲルハンス細胞系統及び/又はリンパ組織特定のマクロファージ細胞系統であってよい。造血前駆細胞は、CD34細胞を包含していても、包含していなくてもよい、ことも当該技術分野で知られている。CD34細胞は、下記の「血液産生物」に存在する未成熟細胞であり、CD34細胞表面マーカーを発現し、そして上で定義した「前駆細胞」の性質を有する細胞亜集団を含有すると思われている。
【0048】
造血幹細胞及び前駆細胞は、血液産生物から得ることができる。本発明で用いられる「血液産生物」は、造血源の細胞を含有している身体又は身体の臓器から得られる産生物と定義される。このような造血源は、未分画骨髄、臍帯、末梢血、肝臓、胸腺、リンパ液及び脾臓を包含する。前記の粗製又は未分画の血液産生物の全てから、いろいろな方法により「造血前駆細胞」の特徴を有する細胞を濃縮できることは、当業者には明らかであろう。例えば、血液産生物は、より分化した子孫では枯渇している。より成熟し、分化した細胞を、それらが発現する細胞表面分子を介して、選択することができる。更に、血液産生物は、CD34細胞を選択するように分画することができる。先に述べたように、CD34細胞は自己再生及び多能可能性の可能な細胞の亜集団を包含すると、当該技術分野で思われている。このような選択は、例えば市販の磁性抗CD34ビーズ(Dynal, Lake Success, NY)を用いて実施することができる。未分画血液産生物は、ドナーから直接得るか、又は冷凍保存貯蔵から回収することができる。
【0049】
造血幹細胞及び前駆細胞の子孫は、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板生成巨核球、血小板)及び単球(例えば、単球、マクロファージ)よりなる。
【0050】
重要な態様に於いて、PTH/PTHrP受容体を発現している細胞は、造血幹細胞又は前駆細胞の直近に存在している。ある特定の態様に於いては、PTH/PTHrP受容体を発現している細胞は、リンパ網内系間質細胞である。
本明細書で用いられる「リンパ網内系間質細胞」は、これらに限定されないが、リンパ球、リンパ球先駆細胞又はリンパ球前駆細胞ではない、リンパ系組織に存在する全ての細胞型を包含し、例えば骨芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、中皮細胞、樹状細胞、脾細胞及びマクロファージである。リンパ網内系間質細胞は、繊維芽細胞のような、通常はリンパ網内系間質細胞のように機能しない細胞も包含し、これら繊維芽細胞はその細胞表面に、造血幹細胞及び前駆細胞(その子孫を包含する)の維持、生育及び/又は分化に必要な因子を分泌又は発現するように遺伝子組み換えされている。リンパ網内系間質細胞は、リンパ系組織の断片の解離に由来している(以下の議論を参照されたい)。本発明のこのような細胞は、造血幹細胞及び前駆細胞(その子孫を包含する)の維持、生育及び/又は分化を支援する能力がある。「リンパ系組織」は、骨髄、末梢血(動員された末梢血を包含する)、臍帯血、胎盤血、胎児の肝臓、胚細胞(胚幹細胞を包含する)、大動脈−生殖腺−中腎由来の細胞(aortal-gonadal-mesonephros derived cell)、及びリンパ系軟組織を包含することを意味している。本明細書で用いられている「リンパ系軟組織」は、これらに限定されないが、胸腺、脾臓、肝臓、リンパ節、皮膚、扁桃腺、アデノイド及びバイエル板(Peyer's patch)、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0051】
リンパ網内系間質細胞は、造血幹細胞及び前駆細胞(その子孫を包含する)の維持、生育及び/又は分化のために、無傷のリンパ系組織中の微小環境を支援することをもたらす。微小環境は、溶解性の及びリンパ網内系間質よりなる各種の細胞型により発現される細胞表面因子を包含する。一般に、リンパ網内系間質細胞がもたらす支援には、接触依存性及び非接触依存性の両方で特徴付けることができる。
【0052】
リンパ網内系間質細胞は、造血前駆細胞又は抗原提示細胞に対して、自系(「自己」)であっても、非自系(「非自己」、例えば同種、同系又は異種)であってもよい。本明細書で用いられる「自系」は、同じ対象からの細胞を示す。本明細書で用いられる「同種」は、相対的にその細胞と遺伝学的に異なる同じ種の細胞を示す。本明細書で用いられる「同系」は、相対的にその細胞と遺伝学的に同一である異なる対象の細胞を示す。本明細書で用いられる「異種」は、相対的にその細胞と異なる種の細胞を示す。リンパ網内系間質細胞は、ヒト又は非ヒト対象のリンパ組織から、臓器/組織が造血幹細胞及び前駆細胞の生育及び/又は分化の維持を支援できる段階(すなわち、成熟段階)まで発達した後の何れかの時期に、得ることができる。この段階は、臓器/組織間で及び対象間で異なるであろう。例えば、霊長類では、胸腺発達の成熟段階は、妊娠第二期(3ヶ月間)の時期に達成される。この発達段階で、胸腺はチミュリン(thymulin)、α及びβ−チモシン、並びにサイモポエチン(thymopoietin)、更にT細胞分化のための適切な微小環境を提供するのに必要なその他の因子のような、ペプチドホルモンを分泌することができる。異なる臓器/組織及び異なる対象間に対する異なる成熟段階は、当該技術分野でよく知られている。
【0053】
リンパ網内系間質細胞は、PTH/PTHrP受容体を発現することが好ましい。リンパ網内系間質細胞が由来するリンパ組織は通常、系統約束の造血幹細胞及び前駆細胞の着手を決定し、分化された子孫の系統特異性をもたらす。ある特定の態様に於いては、リンパ網内系間質細胞が胸腺間質細胞であり、そして多能性前駆細胞及び/又は約束された前駆細胞はT細胞系統になることが確約されている。その他の態様に於いては、リンパ網内系間質細胞が脾臓間質細胞であり、そして多能性前駆細胞及び/又は約束された前駆細胞はB細胞系になることが確約されている。また驚くべきことに、ヒト造血前駆細胞を異種(非ヒト)リンパ網内系間質細胞の存在下で培養すると、分化された子孫細胞が高収率で生じることが見出された。異種リンパ網内系間質細胞はマウス起源が好ましい。
【0054】
リンパ網内系間質細胞は遺伝子操作によって変えることができるのは、その他の多くの態様で提供されている。ある特定の態様に於いては、リンパ網内系間質細胞が、PTH/PTHrP受容体を発現する(内因的に又は遺伝子操作によって改変)ことが好ましい。リンパ網内系間質細胞に、例えば本明細書の他の場所に記載されている造血の成長因子の1つをコードする外因性のDNAを導入することができる。
【0055】
先に述べたように、リンパ網内系間質細胞は、細胞懸濁液を形成するリンパ組織片の解離によってもたらされる。単細胞懸濁液を形成することが好ましい。これらのリンパ網内系間質細胞の懸濁液は直接使用するか、又は組織細胞技術分野に於いて標準的な操作によって非有糸分裂させてもよい。このような方法の例は、リンパ網内系間質細胞にガンマ線源を照射すること、又は細胞をマイトマイシンCと細胞の有糸分裂を不活性化するのに十分な時間培養することである。リンパ網内系間質細胞がヒト起源の時は、有糸分裂の不活性化(懸濁液に存在している前駆細胞を取り除いて)が好ましい。次いで、リンパ網内系間質細胞を本発明の3次元マトリックス中に蒔種して、多孔性、固体マトリックスの表面に結合するようにできる。また、リンパ網内系間質細胞は、後で使用するために、又はキットを販売に関連して使用するような、貯蔵して遠隔地に発送するために、冷凍保存することができる。インビトロの細胞培養物の冷凍保存は、当該技術分野で確立されている。細胞サンプルの単離(及び/又は有糸分裂の不活性化)に続いて、最初に細胞を冷凍保存媒体に懸濁させ、次いで細胞懸濁液を徐々に凍結することによって、細胞を冷凍保存することができる。凍結細胞は通常、液体窒素中で、又はジメチルスルホキシドのような凍結保存剤及び血清を含有している媒体中で同等の温度で保存される。
【0056】
造血幹細胞又は前駆細胞(及びそれらの子孫)とリンパ網内系間質細胞との共培養は、本発明のある特定の態様によれば、造血幹細胞又は前駆細胞から派生する、リンパ組織起源の細胞数で、ある割合の増加もたらすのに十分な条件下で行うのが好ましい。用いる条件は、当該技術分野で公知の条件(例えば、温度、CO及びOの含有量、栄養培地、時間の長さなど)の組み合わせを意味する。細胞数を増加させるのに十分な時間は、当業者が容易に決定できる時間であり、そして蒔種した細胞の最初の数によって変わる。最初に多孔性の固体マトリックスに導入する(及び次いで蒔種する)造血幹細胞又は前駆細胞及びリンパ網内系間質細胞の量は、その実験の要求によって変えることができる。望ましい量は必要に応じて、当業者が容易に決定できる。造血前駆細胞は、異なる数量で添加できる。例としては、ある特定の時間を超える培養液の変色は、密集度の指標として利用できる。更に、そしてより正確には、異なる数の造血幹細胞及び前駆細胞又は異なる量の血液産生物は、同一の条件下で培養することができ、細胞を一定間隔で収集して計数し、そして「コントロールカーブ」を作成することができる。これらの「コントロールカーブ」は、引き続くアッセイに於いて細胞数を測定するために使用できる。
【0057】
コロニーを形成する潜在能力を測定する条件は、同様に測定される。コロニーを形成する潜在能力は、細胞が子孫を形成する能力である。このためのアッセイは、当業者によく知られており、細胞を半固体のマトリックスに蒔種して、成長因子で処理し、そしてコロニーの数をカウントすることを包含する。
【0058】
本発明の好ましい態様に於いては、造血幹細胞及び前駆細胞を収集することができる。造血前駆細胞の「収集」は、マトリックスから細胞を除去又は分離することと定義される。これは、酵素的、非酵素的、遠心分離式、電気的、又は寸法基準の方法のような、多くの方法を用いて、又は好ましくは、媒体(例えば、細胞を培養した培地)を用いて細胞を洗い流すことによって実施できる。細胞は更に収集、分離、そして更に、分化された子孫のもっと大きな集団を生成するよう拡大することができる。
【0059】
上記のように、幹細胞及び前駆細胞並びにそれらの子孫は、遺伝子操作によって改変することができる。幹細胞及び前駆細胞の遺伝子改変は、外因性遺伝物質の付加によって作成された細胞性遺伝物質の一過性及び安定な変化の全てを包含する。遺伝子改変の例は、突然変異又は非発現性遺伝子を置き換える機能性遺伝子の導入、優性ネガティブ遺伝子産生物をコードするベクター(媒介物)の導入、リボザイムを発現するように改変されたベクターの導入、及び治療遺伝子産生物をコードする遺伝子の導入のような、遺伝子治療方法の何れかを包含する。何れの薬剤も導入せずに起こるT細胞受容体遺伝子の自然転移のような、天然の遺伝子変化は、この態様に包含されない。外因性遺伝物質は、幹細胞又は前駆細胞に導入される、天然又は合成の核酸又はオリゴヌクレオチドを包含する。この外因性遺伝物質は、細胞に生来存在しているもの、又は細胞に生来存在していないもの、の複製物であってよい。それは通常、ベクター構成要素中のプロモーターの操作可能制御のもとに置かれている、天然遺伝子の少なくとも一部分である。
【0060】
核酸を細胞に導入するために、種々の技術を用いることができる。このような技術は、核酸−CaPO沈殿物のトランスフェクション、DEAEに関連する核酸のトランスフェクション、目的の核酸を包含するレトロウィルスでのトランスフェクション、リポゾームが介在するトランスフェクションなどを包含する。ある特定の使用に対しては、核酸を特別な細胞に対する標的にすることが好ましい。このような場合には、本発明による核酸を細胞中に送達するために用いる媒体(例えば、レトロウィルス又はその他のウィルス;リボソーム)は、それに結合した標的分子を有することができる。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体、又は標的細胞上の受容体に対するリガンドは、核酸送達媒体に結合しているか、又は組み込まれていてもよい。例えば、本発明の核酸を送達するためにリボソームを用いる場合には、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合しているタンパク質が、標的及び/又は摂取促進のためにリボソーム製剤に組み入れられていてもよい。このようなタンパク質は、特別な細胞型に影響を及ぼすタンパク質又はその断片、循環系に内在化させるタンパク質に対する抗体、細胞内の局在を標的にするタンパク質、そして細胞内半減期を向上させるタンパク質、などを包含する。細胞中に核酸を送達するするために、当業者に公知のような、多因子送達システムもうまく用いることができる。このようなシステムは、核酸の経口的な送達も可能にする。
【0061】
本発明に於いて、外因性の遺伝物質を細胞に導入する好ましい方法は、複製欠損性レトロウィルスを用いて、マトリックス上で細胞をそのまま形質導入することである。複製欠損性レトロウィルスは、全てのウィルス粒子タンパク質を直接合成する能力があるが、感染性粒子を形成する能力がない。従って、これらの遺伝子改変レトロウィルス性ベクターは、培養した細胞への高効率な遺伝子導入に対して汎用的な有用性、及び本発明の方法で用いるための具体的な有用性を有している。レトロウィルスは、遺伝物質を細胞に導入するために広範囲に用いられている。複製欠損性レトロウィルスを生成する標準的な手順(外因性遺伝物質のプラスミドへの取り込み、パッケイジング細胞株のプラスミドでのトランスフェクション、パッケイジング細胞株による組み換え型レトロウィルスの産生、組織培養培地からウィルス粒子の収集、及びウィルス粒子での標的細胞の感染の各工程を包含する)は、当該技術分野で提供されている。
【0062】
レトロウィルスを使用することによる主な利点は、ウィルスが治療薬剤をコードする遺伝子の単一コピーを宿主細胞のゲノムに挿入し、それにより外因性遺伝物質が細胞が分割するときにその子孫に伝わることが可能になることである。更に、LTR部位にある遺伝子プロモーター配列が、多種の細胞型に於いて、挿入されたコード配列の発現を向上させると、報告されている。レトロウィルス発現ベクターを用いることの主な欠点は、(1)挿入突然変異、すなわち治療遺伝子の標的細胞ゲノムの望ましくない部位への挿入、それにより、例えば細胞の無秩序な生育をもたらすこと、及び(2)ベクターによって運ばれる治療遺伝子を標的ゲノムに組み込むために、標的細胞を増殖する必要があること、である。これらの明らかな制限があるにも関わらず、治療有効量の治療剤をレトロウィルス介在で伝達することは、形質導入の効率が高くそして/又は形質導入するために利用できる標的細胞の数が多い場合には、有効であるだろう。
【0063】
細胞の形質転換のための発現ベクターとして有用な別なウィルスの候補は、二重鎖DNAウィルスである、アデノウィルスである。レトロウィルスのように、アデノウィルスのゲノムは、すなわち、ウィルス自体の生成を制御する遺伝情報を除去することによって、遺伝子の形質導入のための発現ベクターとしての使用に適用できる。アデノウィルスは通常、染色体外の方式で機能するので、組換え型アデノウィルスは、挿入突然変異の理論上の問題点を有していない。一方、標的細胞のアデノウィルスの形質転換は、安定した形質導入の結果にならないこともある。しかしながら、ある特定のアデノウィルス配列がキャリヤー配列に染色体内組込み特性を与えて、外来遺伝物質の安定な形質導入をもたらすことが、最近になって報告されている。
【0064】
従って、当業者に明らかなように、細胞に外来遺伝物質を導入するために、いろいろな適切なベクターを利用できる。遺伝子置換の治療を受け容れやすい特定の疾患のための治療薬剤を伝達する適切なベクターの選択、及び選択された発現ベクターを細胞に挿入するための条件の最適化は、当業者の技術分野の1つの範囲であり、過度な実験を必要とするものではない。プロモーターは、転写を開始するために必要な特定な核酸配列を、特徴的に有している。外来遺伝子物質は、望ましい遺伝子転写活性を得るのに必要な、追加の配列(すなわち、エンハンサー(賦活薬))を更に包含していてもよい。この議論の目的では、「エンハサー」は、単に何れかの非翻訳DNA配列であり、この配列は、コード配列に隣接(シス配列で)して、プロモーターによって指示された基礎転写レベルを変更するように働く。外来遺伝物質をプロモーターの直ぐ下流の細胞ゲノム中に導入して、コード配列の転写を可能にするようにプロモーター及びコード配列を作動可能に結合させることが好ましい。好ましいレトロウィルスの発現ベクターは、挿入された外来遺伝子の転写を制御する外来プロモーター成分を包含する。このような外来プロモーターは、構成的プロモーター及び誘導的プロモーターの両方を包含する。
【0065】
天然の構成的プロモーターは、細胞の必須機能の発現を制御する。その結果、構成的プロモーターの制御下の遺伝子は、細胞生育の全ての条件下で発現する。典型的な構成的プロモーターは、ある特定の構成的又は「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子についてのプロモーターを包含する:ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HRRT)、ジヒドロ葉酸・リダターゼ(DHFR)(Scharfimann et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4626-4630)、アデノシン・デアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター(Lai et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10006-10010)、及び当該技術分野で公知のその他の構成的プロモーター。更に、多くのウィルス性プロモーターは、真核性細胞に於いて構成的に機能する。これらは、数ある中で、SV40の初期及び後期プロモーター、モロニー白血病ウィルス(Moloney Leukemia Virus)及びその他のレトロウィルスの長い末端反復(LTRS)、単純ヘルペスウィルスのチミジンキナーゼプロモーターを包含する。従って、上で示した構成的プロモーターの何れも、異種遺伝子導入の転写を制御するために使用することができる。
【0066】
誘導的プロモーターの制御下の遺伝子は、誘導剤の存在下でのみ発現されるか又は大いに発現される(例えば、メタロチオネイン(金属結合性タンパク質)プロモーターで制御されている転写は、ある特定の金属イオンの存在下で、大いに増大する)。誘導的プロモーターは、それらの誘導剤と結合したときに転写を刺激する、応答配列(REs)を包含する。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸及びサイクリックAMPに対するREsが存在する。特定のREを含有しているプロモーターは、導入応答を得るために選択され、ある場合には、RE自体が異なったプロモーターと結合でき、それにより組換え型遺伝子に誘導性を与える。従って、適切なプロモーターを選択すること(構成的対誘導的;強対弱)により、遺伝子組換え型改変細胞中での治療剤の存在及び発現のレベルの両方を制御することが可能となる。特定の治療剤の治療有効量を伝達するために、これらの因子の選択及び最適化は、上記で開示した要素及び患者の臨床的なプロフィールを考慮すれば、当業者の技術分野の1つの範囲と考えられ、過度な実験を必要をするものではない。
【0067】
治療剤をコードする少なくとも1つの異種核酸及び少なくとも1つのプロモーターに加えて、発現ベクターは、発現ベクターによって形質転換又は形質導入された細胞の選択を促進するために、選択遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子、を包含することが好ましい。また、これらの細胞は、2つ又はそれ以上の発現ベクター(治療剤をコードする遺伝子を含有する少なくとも1つのベクター及び選択遺伝子を含有するもう一方のベクター)で形質転換されている。適切なプロモーター、エンハンサー、選択遺伝子及び/又はシグナル配列(後述)の選択は、当業者の技術分野の1つの範囲と考えられ、過度な実験を必要をするものではない。
【0068】
単離された細胞中の特定の遺伝子産生物を発現するための特別な発現ベクターを選択し最適化することは、好ましくは1つ又はそれ以上の適当な制御領域(例えば、プロモーター、挿入配列)を有する遺伝子を得ること;遺伝子を挿入するベクターを含有するベクター構築物を調製すること;インビトロで培養細胞をベクター構築物で形質転換又は形質導入すること;及び培養細胞中に遺伝子産生物が存在しているかを判定すること;によって達成される。
【0069】
(表1)
表1.RACにより承認されたヒト遺伝子治療の手順(1990〜1994)
・ADA欠損による重症 ヒトADAで形質導入の自家リンパ球 7/31/90
複合免疫不全(SCID)
・進行癌 腫瘍壊死因子遺伝子で形質導入の 7/31/90
腫瘍浸潤性リンパ球
・進行癌 腫瘍壊死因子遺伝子で形質導入の自家 10/07/91
癌細胞での免疫付与
・進行癌 インターロイキン2遺伝子で形質導入の 10/07/91
自家癌細胞での免疫付与
・HIV−1感染の HIV−1遺伝子をコードするマウス 6/07/93
無症状患者 レトロウィルスベクター[HIV-IT(V)]
・エイズ エイズ介入におけるrev遺伝子の 6/07/93
トランスドミナント(transdominant)
形態の効果
・進行癌 ヒト多剤耐性(MDR)遺伝子の移入 6/08/93
・HIV感染 HIV−1 RNAに開裂する触媒作用の 9/10/93
リボザイムで形質導入の自家リンパ球
(フェイズI治験)
・移転性悪性黒色腫 インターロイキン2を産生する遺伝子 9/10/93
組み換えの自家腫瘍ワクチン
・HIV感染 HIV−IT(V)遺伝子をコードする 12/03/93
マウスレトロウィルスベクター
(非盲検フェイズI/II治験)
・HIV感染 同系細胞腫瘍のTリンパ球の養子免疫 3/03/94
(卵性双生児) 伝達(フェイズI/II予備研究)
・乳癌 通常造血細胞への化学療法耐性配列の 6/09/94
(治療時の化学防御) 導入の改変レトロウィルスの使用
(予備研究)
・ファンコーニ貧血 レトロウィルス介在のファンコーニ貧 6/09/94
血の相補性グループC遺伝子の造血
前駆細胞への遺伝子移入
・移転性前立腺癌 自家ヒト顆粒球のマクロファージ RDA/NIH
コロニーの刺激因子遺伝子導入の 8/03/94
前立腺癌ワクチン
(早期検査工程で最初の承認プロトコール;
ORDA=Office of Recombinant DNA
活性)
・移転性乳癌 アンチセンスc−fox又はアンチセン 9/12/94
スc−mycRNAを発現する胸腺標
的のレトロウィルスベクターでのイン
ビボ感染
・移転性乳癌 ヒトインターロイキン2遺伝子の自家腫 9/12/94
(難治性又は再発) 瘍細胞への送達のための非ウィルスシ
ステム(リポソームベース)
・中程度ハンター症候群 レトロウィルス介在のイズロネート−2 9/13/94
−スルファターゼ遺伝子のリンパ球へ
の移入
・進行性中皮腫 組み換え型アデノウィルスの使用 9/13/94
(フェイスI検討)
【0070】
前述のもの(表1)は、本発明の方法に従って配送できる遺伝子のほんの一例を示している。このような遺伝子に対して適したプロモーター、エンハンサー、ベクター(媒介物)などは、先行の治験に関連する文献中に公表されている。一般に、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の治療の臨床治験に用いられている、アデノシンデアミナーゼ(ADA)のような欠損酵素、及びインシュリン及び凝固因子VIIIのような補酵素をコードする遺伝子を包含する有用な遺伝子は、置換又は補完機能を有する。制御に影響する遺伝子も、単独で又は特定機能を置換したり補完する遺伝子と組み合わせて投与される。例えば、特定のタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子を投与することができる。本発明は、ウィルス抗原、腫瘍抗原、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子)及びサイトカインの誘導因子(例えば、エンドトキシン)を包含する、免疫応答を刺激する遺伝子を配送する点で特に有用である。
【0071】
以下により詳細に述べられている培養条件を採用すると、本発明に従って、造血幹細胞及び前駆細胞を保存して、造血幹細胞及び前駆細胞の数及び/又はコロニー形成単位潜在力の拡大を刺激することができる。拡大すると、これらの細胞は、例えば身体に戻して、患者の造血幹細胞及び前駆細胞集団を補完、補充等することができる。これは例えば、個体が化学療法を受けた後に行うのが適切であろう。造血幹細胞及び前駆細胞が減少するようなある特定の遺伝子条件があり、このような状況下に本発明方法を用いることがよい。
【0072】
本発明により産生された数が増えた造血幹細胞及び前駆細胞を採取し、造血細胞を保持、拡大及び/又は分化を促進する造血成長薬剤でそれらを刺激し、そしてインビトロでより成熟した血液細胞を得るように細胞の局在化に影響することも可能である。このように拡大した血液細胞の集団は、上記のようにインビボで適用するか、又は当業者に認識されるように実験的に用いることができる。このように分化した細胞は、上記のようなもの、更にT細胞、形質細胞、赤血球、巨核球、好塩基球、多形核白血球、単球、マクロファージ、好酸球及び血小板も包含する。
【0073】
本発明による全てのインビボ及びエキソビボの培養方法に於いて、別段の定めのある場合を除いて、用いられる培地は細胞の培養に通常用いられているものである。例には、RPMI、DMEM、Iscove培地などを包含する。通常は、これらの培地をヒト又は動物の血清又は血漿で補完する。本発明に従って使用される培地は、当該技術分野で通常用いられているものと異なっていてもよい。
【0074】
本発明に関連して特に興味のある成長剤は、造血成長因子である。造血成長因子とは、造血幹細胞及び前駆細胞の生存、増殖又は分化に影響を及ぼす因子を意味する。生存及び増殖のみに影響するが、分化を促進しないと思われている成長剤には、インターロイキン3、6及び11、幹細胞因子、及びFLT−3リガンドが包含される。分化を促進する造血成長因子には、GMCSF、GCSF、MCSF、Tpo、Epo、オンコスタチンM、及びIL−3、6及び11以外のインターロイキンが包含される。前述の成長剤は、当業者には公知であり、多くのものは市販されている。それらは精製することにより、遺伝子操作方法により、又は合成的に導くか合成して、得ることができる。
【0075】
「間質細胞の条件培地」とは、前述のリンパ網内系間質細胞が培養される培地を示す。培養は、間質細胞が培地に因子を分泌させるのに十分な時間実施される。このような「間質細胞の条件培地」は次いで、造血幹細胞及び前駆細胞をその増殖及び/又は分化を促進する培養を補完するために使用される。
【0076】
従って、細胞を上記の薬剤の何れも用いずに培養する場合は、ここでは血清、通常の栄養培地の存在下、又は単離された非分画又は分画の血液産生物(これは造血幹細胞及び前駆細胞を含有する)中で行うことを除いて、細胞をこのような薬剤を添加せずに培養することを意味する。
【0077】
本発明による造血細胞機能を調節する1つの方法は、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を用いて造血前駆細胞の動員を向上させる方法である。骨髄移植で現在実施されていることは、ドナー対象の骨髄及び/又は末梢血から骨髄の単離を包含している。これら対象の約3分の1は、彼らの骨髄が移植に適していると考えられるには、十分な骨髄及び/又は末梢血からの造血前駆細胞を「産生」していない。本発明を用いると、この「産生」が向上させることができる。例えば、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤は、造血前駆細胞の「動員」をもたらし、そしてこのような薬剤で処置された対象からの(特に対象の末梢血から)造血前駆細胞を単離する効率が改善される。その結果、移植に使用できるドナーサンプル数の増加がもたらされることになる。
【0078】
従って、幾つかの態様に於いて、対象に於ける造血細胞の動員を向上させる方法が提供される。この方法は、対象にPTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を投与して、対象に於ける造血前駆細胞の動員を向上させることを包含する。
【0079】
本明細書で用いられる対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ及び齧歯類である。ヒト造血前駆細胞及びヒト対象が、特に重要な態様である。
【0080】
本明細書で用いられる「PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤」は、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺関連タンパク質(PTHrP)、及びこれらの類縁体を包含する化合物である。
【0081】
「PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を得ること」中の「得ること」という用語は、薬剤(又は表示された物質又は原料)を購入すること、合成すること又は別の方法で取得することを包含するよう意図されている。
【0082】
PTHの正常機能は、細胞外液のカルシウム濃度を保持することである。PTHは、骨及び腎臓に直接的に、そして腸に間接的に作用する。健康な個体に於けるPTHの産生は、血清のイオン化カルシウム濃度によって厳密に調節されている。低カルシウム血症になりやすい傾向、例えばカルシウム欠乏食によってもたらされるものは、PTH分泌の増加によって平衡が保たれている。PTHレベルの増加は、骨吸収の比率を高めて、それにより骨から血液へのカルシウムの流れを増加させ、カルシウムの腎クリアランスを減少させ、そして腸に於けるカルシウム吸収の効率を増加させる。
【0083】
副甲状腺関連のタンパク質(PTHrP)の生理学的役割は、十分に理解されていないが、主にパラクリン(傍分泌)又は自己分泌の因子として作用するものと思われている。PTHrPは胎児の発育のみならず、成人の生理にも影響を与えている。PTHrPは、脳、膵臓、心臓、肺、記憶組織、胎盤、内皮、及び平滑筋細胞を含む、多くの細胞型によって産生される。成人に於いて、PTHrPは、疾患時を除いて、カルシウムのホメオスタシスに殆ど作用しないと思われている。
【0084】
PTHとPTHrPとは、別個のタンパク質であって、異なった遺伝子から作られる。しかしながら、これらが共通な先祖遺伝子から進化したのではないかと示唆する、同様な生物活性プロフィール及び非常に限られた配列相同性を共有している。N−末端の最初の13個のアミノ酸残基のうちの8個が同一である。84個のアミノ酸残基ペプチドである、PTH、及び139〜173個のアミノ酸残基ペプチドである、PTHrPの両方は、PTH受容体(しばしば、PTH/PTHrP受容体と示す)に結合して、同じ細胞内シグナル伝達回路を刺激する。
【0085】
副甲状腺から通常に分泌される副甲状腺ホルモンは、84個のアミノ酸のペプチドである。PTHは、血清カルシウムを狭い範囲に保持する重要な生理学的な役割を有している。更に、間欠的に投与されると同化促進性を示す。このことは多くの動物実験及び臨床オープン検討で実証され、最近「Demster, D. W. et al. (Endocrine Reviews 1993, vol.14, 690-709)」によって概説された。PTHは、骨で多数の効力を有している。その一部分は、リモデリングサイクルを通じて存在している。PTHは、サイクル毎の活性化頻度を増加させ、またサイクル毎のバランスをポジティブの方に導く。ヒトPTHは、ペプチド合成によって、又は遺伝子組み換えした酵母、細菌又は哺乳類細胞宿主から得られる。合成ヒトPTHは、Bachem Inc.(Bubendorf, Switzerland)から市販されている。遺伝子組み換え型ヒト副甲状腺ホルモンの産生は、例えば、EP−B第0383751号に開示されている。
【0086】
副甲状腺ホルモンの成熟循環形態は、84個のアミノ酸残基からなっている。最も骨に関連する活性については、PTHの切断型であるPTH(1−34)が、天然型84アミノ酸ホルモンのような完全な作動薬である。アミノ末端切断は、PTH刺激されたアデニル酸シクラーゼの競合的拮抗薬であるポリペプチドをもたらす。例えば、[Tyr34]bPTH(7−34)NHは、腎PTH受容体に対して中等度の親和性を保持しているが、何れの作動薬活性も有しておらず;弱い受容体結合の活性は、PTH(25−34)のように小さい断片中に保持されている(M. Rodenblatt et al., 1980, Endoclrinol., 107:545-550)。対照的に、カルボン酸末端切断のPTH(1−34)は、親和性が徐々に低下する作動薬を産生する(Shimizu et al. J. Biol. Chem. 276:52(2001))。PTHの主な受容体結合ドメインは、アミノ酸残基25−34を包含していると報告され、主な活性ドメインは、アミノ酸残基1−6を包含している報告されている。
【0087】
「副甲状腺ホルモン」(PTH)という用語は、天然型のヒトPTH、更に合成又は遺伝子組み換え型PTH(rPTH)も包含する。更に、「副甲状腺ホルモン」という用語は、PTH(1−84)の全長、更にPTH断片をも包含する。従って、PTH(1−84)と同等の生物活性を与える量の、PTH変異体の断片が、必要により、本発明の製剤に組み込まれることを理解できるであろう。これに関連して、「生物学的に活性」という用語は、本明細書に記載されている方法によるPTH活性に対するバイオアッセイに於いて、十分な応答を引き出すものであると理解すべきである。PTHの断片は、少なくとも無傷のPTHのそれと同等な生物学的活性に必要なPTHのアミノ酸残基を包含している。このような断片の例は、PTH(1−31)、PTH(1−34)、PTH(1−36)、PTH(1−37)、PTH(1−38)、PTH(1−41)、PTH(28−48)、PTH(1−25)変異体、及びPTH(25−39)である。
【0088】
「副甲状腺ホルモン」という用語は、PTHの変異体及び機能的な類縁体も包含する。従って、本発明は、置換、削除、挿入、転回又は環化のような改変を有しているが、実質的に副甲状腺ホルモンの生物学的活性を有している、PTH変異体及び機能類縁体を含有しているような医薬製剤を包含している。PTHの安定性を向上させた変異体は、当該技術分野、例えば、国際公開第92/11286号公報及び 国際公開第93/20203号公報において周知である。PTHの変異体は、例えば、8番目及び/又は18番目の位置でのメチオニン残基の置換、及び16番目の位置でのアスパラギンの置換のような、PTHの安定性及び半減期を改善するアミノ酸置換を組み込むことができる。
【0089】
哺乳類種、例えばヒト、ウシ、ブタ又はウサギの生物学的に活性なPTH/PTHrP類縁体は、本発明の方法で使用できるが、ヒトの類縁体が好ましい。本発明に従って使用するのに適したPTH/PTHrP類縁体は、米国特許第5,589,452号、同第5,849,695号、同第5,695,955号、同第6,362,163号、同第6,147,186号及び同第6,583,114号に記載のものを包含する。環化したPTH類縁体は、例えば国際公開第98/05683号公報に開示されている。
【0090】
米国特許第5,589,452号、同第5,695,955号、及び同第6,583,114号は、ある特定のアミノ酸残基(23−31)が両親媒性アルファへリックスを形成している、PTH及びPTHrPの合成PTH類縁体を記載している。
【0091】
米国特許第5,849,695号は、3番目の位置のセリンアミノ酸、6番目の位置のグルタミンアミノ酸、9番目の位置のヒスチジンアミノ酸又はこれらの組み合わせ位置を、その他の天然又は合成アミノ酸で置換した、PTH及びPTHrPのPTH類縁体を記載している。
【0092】
米国特許第6,362,163号及び同第6,147,186号は、PTHrPの1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を対応するPTHの残基に置換(例えば、アミノ酸配列が、5番目及び23番目の位置のアミノ酸残基で変換する、例えば、PTHrPアミノ酸残基の5番目の位置のヒスチジンのイソロイシンへの置換及びPTHrPアミノ酸残基の23番目の位置のフェニルアニリンのトリプトファンへの置換により変換する、(Ile、Trp23)PTHrP(1−36))することによってPTH−2受容体作動薬に変換した、PTHrP類縁体を記載している。
【0093】
断片、変異体及び類縁体を包含する各種のPTH/PTHrP産生物は、市販されているか、又は開発の各種段階にある。例えば、合成ウシPTH(1−34)は、BaChem,Inc.,(Torrance, CA) から入手でき;合成ヒトPTHrP(1−34)アミドは、Merck Sharp and Dohme (West Point, PA) から入手でき;PTH(1−34)の類縁体である、BIM−44058は、Ipsen Ltd(Slough, Berkshire, U.K.) で製造され;PTH類縁体Ostabolin−C(登録商標)は、Zelos Therapeutics Inc.(Ottawa, ON, Canada) で製造され;そして遺伝子組み換えPTH類縁体Forteo(登録商標)は、Eli Lilly and Company(Indianapolis, IN)で製造されている。
【0094】
Ostabolin−C(登録商標)ペプチドは、PTHの31個のアミノ酸のペプチド誘導体である。Ostabolin−C(登録商標)ペプチドは、Glu22とLys26の間がラクタム部分によって環化されていること及びLys27がLeuで置換されている点でPTHと異なっている。Ostabolin−C(登録商標)ペプチドは、図8(配列番号1)で示されるように、Leu27シクロ[Glu22−Lys26]hPTH(1−31)−NHと表される。
【0095】
環化PTH類縁体は、米国特許第5,556,940号;同第5,955,425号;同第6,110,892号;同第6,316,410号;及び同第6,541,450号に記載されており、これら全ての教示は、本明細書にその全てが参照として組み込まれる。
【0096】
幾つかの状況下では、PTHは骨同化剤であり、骨形成を促進する。しかしながら、PTHは、骨吸収も同様に刺激する。高用量のPTH連続投与は骨質量の低下をもたらすが、低用量のPTH間欠投与は骨質量を増加することができると報告されている。PTHの連続投与は、破骨細胞を含む骨細胞の数を増加及び骨リモデリングの増加をもたらすと報告されている。報告されたこれらの増加はPTH投与後1時間以内に現れ、PTHを止めてから数時間持続する。ヒト又は動物でのPTHの数日にわたる間欠投与は、骨形成の実質的な刺激をもたらすと報告されている。例えば、「Neer et al., 2001, N. Engl. J. Med., 344:1434-1441」を参照されたい。その一方、高濃度のPTHへの連続暴露は、破骨細胞介在の骨吸収をもたらす。幾つかのグループが、骨粗鬆症治療剤としてのPTH及びPTHrP類縁体の使用について検討している。これらの活動は、米国特許第5,747,456号;米国特許第5,849,695号;米国特許第4,656,250号;米国特許第6,051,686号;及び米国特許第6,316,410号に記載されている。
【0097】
一態様に於いて、対象が骨髄のドナーである。骨髄細胞の動員を向上させることによって、骨髄を単離する必要性を除くことができる。この動員の結果、骨髄細胞が骨髄を離れて、治療受けている対象の血液循環に入っていく。循環している骨髄細胞は、本発明の技術又は当該技術分野で周知のその他の方法で容易に単離することができる。例えば、これらの方法は、治療のための多量の骨髄採取の必要性を減らすことができる。この方法は、骨髄から血液への局在化を促進することにより、末梢血から造血幹細胞及び前駆細胞の単離を可能にし、骨髄採取の必要性を排除する。
【0098】
当業者は、末梢血から造血幹細胞及び前駆細胞を単離する方法を、よく承知しているであろう。例えば、PBS中の血液をフィコール(Ficoll; Ficoll-Paque, Amersham)のチューブに入れて、1500rpmで25〜30分遠心分離する。遠心分離後、造血幹細胞を含有している白色のセンターリングを採取する。
【0099】
造血幹細胞及び前駆細胞の取り扱いは、化学療法の補足治療としても有用であり、例えば、造血前駆細胞を末梢血に局在化せ、次いで化学療法を受ける対象から単離し、そして治療後にそれらの細胞を戻す(例えばエキソビボ治療を単離した細胞に行うことができる)。従って、幾つかの態様に於いては、対象が、化学療法のような免疫細胞枯渇治療を受けているか受けることを控えている対象である。用いられている殆どの化学療法剤は、細胞分割を経由する全ての細胞を殺すことによって、作用する。骨髄は、体内で最も増殖する組織の1つであるので、最初に化学療法剤によってダメージを受ける臓器となることが多い。その結果、化学療法の治療中に血液細胞の産生が速やかに損なわれ、化学療法で患者を再治療する前に造血系を血液細胞の供給を補充するように、化学療法を終結しなければならない。このことは本発明方法を用いることによって避けることができる。
【0100】
造血幹細胞及び前駆細胞が、骨髄から末梢血に動員されると、造血前駆細胞を得るために血液サンプルを単離することができる。これらの細胞は直ちに移植するか、又は最初にインビトロで処理することができる。例えば、細胞をインビトロで拡大でき、そして/又はこれらを単離又は濃縮処理することができる。粗製の又は未分画の血液産生物を、「造血前駆細胞」の性質を有する細胞に濃縮することができるということは、当業者に明らかであろう。濃縮する幾つかの方法は、例えば血液産生物を、より分化した子孫から取り除くことを包含する。より成熟し、分化した細胞が、それらが発現する細胞表面分子を介して選択することができる。更に、血液産生物は、CD34細胞を選択するために分画することができる。このような選択は、例えば市販の磁性の抗CD34ビーズ(Dynal, Lake Success, NY)を用いて実施することができる。しかしながら、好ましい態様に於いては、本発明方法は造血幹細胞及び前駆細胞を単離するために用いることができる。
【0101】
造血幹細胞及び前駆細胞を単離する方法は、当該技術分野に於いて周知であり、そして一般に、細胞表面マーカー及び機能的な特徴に基づく精製技術を包含している。造血幹細胞及び前駆細胞は、骨髄、血液、臍帯血、胎児肝臓及び卵黄嚢から単離でき、そして多数の造血系統を生じさせて、レシピエントの人生に造血を再開することができる(Fei,R.らの米国特許第5,635,387号;McGlaveらの米国特許第5,460,964号;Simmons,P.らの米国特許第5,677,136号;Tsukamotoらの米国特許第5,750,397号;Schwartzらの米国特許第5,759,793号;DiGuistoらの米国特許第5,681,599号;Tsukamotoらの米国特許第5,716,827号;Hill,B.らの1966を参照されたい)。致死的な放射線を浴びた動物又はヒトに移植する場合、造血幹細胞は、赤血球、好中球マクロファージ、巨核球及びリンパ造血の細胞プールを再び存在させることができる。インビトロに於いて、造血幹細胞は、少なくとも幾つかの自己再生分割を誘発するか、又はインビボで観察される幾つかの系統への分割を誘発することができる。従って、本発明の方法は、刺激されたPTH/PTHrP受容体の発現細胞との共培養によって、造血幹細胞及び前駆細胞をインビトロで増殖し、それによりインビボの微環境を再現することを包含できる。
【0102】
本発明の共培養による方法で用いる造血幹細胞は、多能性幹細胞起源からも同様に得ることができる。例えば、米国特許第5,914,268号には、造血細胞、前駆細胞及びそれらの前駆細胞に発達させるために用いる多能性細胞集団が記載されている。多能性細胞集団は、胚幹細胞集団を培養して胚様体細胞集団を得、次いでこの胚様体細胞集団を、多能性細胞集団を生成するのに有効な条件下で培養することによって得ることができる。培養条件は、胚芽細胞培地を含む。
【0103】
本発明は更に、個体の、例えば感染疾患のような疾患又は病気に対する免疫化及び/又は治療の方法を提供する。この方法は一般に、対象に本発明の化合物を、造血を刺激するのに有効な量で投与することを包含する。
【0104】
本明細書で用いられる「治療」、「治療すること」などの用語は、望ましい薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを示す。この効果は、その疾患又は症状を完全に又は部分的に阻止するという観点での予防的、及び/又は疾患及び/又はこの疾患に起因する副作用を部分的に又は完全に取り除くという観点での治療的であってよい。本明細書で用いられる「治療」は、哺乳類特にヒトに於ける疾患の何れかの治療を包含し、そして(a)その疾患に罹りやすいが、未だ罹っていると診断されていない対象に於いて発症を防ぐこと;(b)疾患を抑制すること、すなわちその進行を阻止すること;及び(c)疾患を軽減すること、例えば疾患の原因を退行させること、例えば疾患の症状を完全に又は部分的に取り除くこと;を包含する。
【0105】
本発明の方法は、造血幹細胞及び前駆細胞の産生を増加させること、造血幹細胞及び前駆細胞の維持又は生存を支援すること、又は造血幹細胞を動員することが望ましい、病気又は疾患を治療するために用いることができる。例えば、本発明の方法は、化学療法及び/又は放射線療法を受けている癌患者のような、骨髄移植又は造血幹細胞若しくは前駆細胞の移植を必要としている患者を治療するために用いることができる。本発明の方法は、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫又は白血病に罹っている患者包含する、癌に対して化学療法又は放射線療法を受けている患者の治療に於いて特に有用である。
【0106】
治療は、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病)、急性白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病)及び前白血病(例えば、骨髄異形性)の疾患に於けるような、異常造血細胞の進行性増加が病気をもたらす、疾患に於いて造血幹細胞及び前駆細胞の量を増やす手段として用いられる。効果的に減少又は根絶できる異常細胞は、リンパ芽球性白血病細胞のような、白血病細胞を包含する。治療は異常な造血細胞に対する正常細胞の比を増加することができ、これにより悪性腫瘍の表現型を変化させて改善又は根絶する。
【0107】
治療は更に、造血幹細胞に由来する成熟細胞(例えば、赤血球)の量を増加させる手段として用いることができる。例えば、血液細胞の欠乏又は血液細胞の欠陥によって特徴付けられる疾患又は病気は、造血幹細胞の産生を増加することによって治療することができる。このような疾患は、血小板減少症(血小板欠乏症)、並びに再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血及び急性リンパ急性貧血のような貧血を包含する。
【0108】
本発明の方法で治療される疾患は、放射線療法、化学療法、又はジドブジン、クロラムフェニコール又はガンシクロビルのような骨髄抑制剤による治療のような、別な初期治療の望ましくない副作用又は競合作用の結果であってもよい。このような疾患は、好中球減少症、貧血、血小板減少症及び免疫機能障害を包含する。更に、本発明の方法は、不注意による毒薬又は放射線への暴露に起因する骨髄損傷の治療に用いることができる。
【0109】
治療される疾患は、幹細胞又は前駆細胞の損傷を引き起こす感染(例えば、ウィルス感染、細菌感染又は真菌感染)の結果であってもよい。
【0110】
T及び/又はBリンパ球欠乏症のような免疫不全症、又は関節リウマチ及び狼瘡のようなその他の免疫疾患も、本発明の方法によって治療することができる。このような免疫不全症は、感染(例えば、AIDSをもたらすHIVによる感染)、又は放射線、化学療法又は毒素への暴露の結果であってもよい。
【0111】
上記に加えて、本発明の方法を用いる治療によって利益を享受する更なる疾患は、リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞、赤血球減少症、赤血球変性疾患、赤芽球減少症、白血赤芽球症、赤血球崩壊、サラセミア、骨髄繊維症、血小板減少症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、免疫性(自己免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)、HIVによるITP、骨髄異形成、thrombocytotic disease、血小板増加症、先天性好中球減少症(コストマン(Kostmann)型症候群及びシュバックマン−ダイアモンド(Schwachman-Diamond)型症候群のような)、腫瘍関連の好中球減少症、小児及び成人周期性好中球減少症、感染後好中球減少症、脊髄異形成症候群、及び化学療法及び放射線療法関連の好中球減少症を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0112】
健康であるが、本明細書に記述の病気又は疾患の何れかを発症する危険性がある個体(「危険性のある」個体)も、本発明の方法を用いる治療によって利益を享受する。危険性のある個体は、血球減少症又は免疫不全症になる一般的な人々よりも大きな可能性を有している個体を包含するが、これらに限定されるものではない。免疫不全症になる危険性のある個体は、HIVに感染している個体との性的活動によってHIVに感染する危険のある個体;静脈投与するドラッグの使用者;HIVに感染している血液、血液産生物、又はその他のHIV含有体液に曝される可能性のある個体;HIVに感染している母親によって授乳されている乳児;以前に、例えば化学療法又は放射線療法で癌を治療された、及び以前に治療されて癌の再発を観察されている個体;及び骨髄移植又はその他の臓器移植を受けている個体、又は化学療法若しくは放射線療法を受けようとしている患者又は移植のための幹細胞のドナーを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0113】
正常な対象に比べて低い免疫機能のレベルは、白血病による免疫反応抑制疾患、腎不全;これらに限定されないが、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、炎症性大腸炎を包含する自己免疫疾患;各種の癌及び腫瘍;これに限定されないが、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)を包含するウィルス感染;細菌感染;及び寄生虫感染を包含する、各種の疾患、感染症又は症状の結果としてなるであろう。
【0114】
正常な対象に比べて低い免疫機能のレベルは、これらに限定されないが、遺伝的な原因又は加齢による免疫不全疾患又は病気の結果としてなるであろう。これらの例は、高免疫グロブリンM症候群、CD40リガンド欠乏症、IL−2受容体欠乏症、□鎖欠乏症、分類不能型免疫不全症、チェディアック−東(Chediak-Higashi)型症候群、及びウィスコット−アルドリッチ(Wiskott-Aldrich)型症候群を包含する、加齢及び遺伝的な原因と関連する免疫不全疾患である。
【0115】
正常な対象に比べて低い免疫機能のレベルは、これらに限定されないが、癌を治療する化学療法剤;ある特定の免疫治療剤;放射線療法;骨髄移植と同時に使用する免疫抑制剤;及び臓器移植と同時に使用する免疫抑制剤を包含する、特定の薬剤による治療の結果としてなるであろう。
【0116】
「免疫系の不全」は、例えば腫瘍若しくは癌(例えば、脳、肺(例えば、小細胞又は非小細胞)、卵巣、胸部、前立腺及び大腸の腫瘍、更にその他の癌及び肉腫)又は対象に於ける感染を除く、対象の免疫応答を高めるのが有用であるような病気又は疾患を意味するであろう。
【0117】
本発明の化合物は、単独で、又は腫瘍抗原、ウィルス性、細菌性若しくは真菌性の抗原又はその他の治療剤と併用して、対象に投与することができる。
【0118】
感染性のウィルスの例は、レトロウィルス科(例えば、HIV−1、またHTLV−III、LAV、HTLV−III/LAV又はHIV−IIIとも示されるような、ヒト免疫不全ウィルス、及びHIV−LPのようなその他の分離株);ピコルナウィルス科(例えば、ポリオウィルス、A型肝炎ウィルス;エンテロウィルス、ヒトコクサッキーウィルス、ライノウィルス、エコーウィルス);カリシウィルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウィルス科(例えば、ウマ脳炎ウィルス、風疹ウィルス);フラウィルス科(Flaviridae)(例えば、デングウィルス、脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス);コロナウィルス科(例えば、コロナウィルス);ラブドウィルス科(例えば、水疱性口内炎ウィルス、狂犬病ウィルス);フィロウィルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウィルス);パラミクソウィルス科(例えば、パラインフルエンザウィルス、おたふく風邪ウィルス、麻疹ウィルス、呼吸器多核体ウィルス);オルトミクソウィルス科(例えば、インフルエンザウィルス);ブンガウィルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターン(Hantaan)ウィルス、ブンガウィルス、フレボウィルス(phleboviruses)及びナイロ(Nairo)ウィルス);アレナウィルス科(Arena viridae)(出血熱ウィルス);レオウィルス科(例えば、レオウィルス、オルビウィルス(orbiviruses)及びロタウィルス);ビルナウィルス科(Birnaviridae);ヘパドナウィルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウィルス);パルボウィルス科(Parvoviridae)(パルボウィルス);パポバウィルス科(パピローマ (papilloma)ウィルス、ポリオーマウィルス);アデノウィルス科(殆どのアデノウィルス);ヘルペスウィルス科(単純ヘルペスウィルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス(CMV)、ヘルペスウィルス);ポックスウィルス科(痘瘡ウィルス、痘疹ウィルス、ポックスウィルス)及びイリドウィルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカ豚コレラウィルス);及び未分類ウィルス(例えば、海綿状脳症の病原体、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎の不完全不随物と考えられる)、非A、非B肝炎の病原体(クラス1−経口感染、クラス2−非経口感染(すなわち、C型肝炎));ノーウォークウィルス及び関連ウィルス、並びにアストロウィルス(astroviruses));を包含する。
【0119】
感染性の細菌の例は、ヘリコバクター・ピロリ、ボレリア・バーグドルフェリー(ライム病菌)、ラジオネラ・ニューモフィラ(在郷軍人病菌)、マイコバクテリア種(例えば、結核菌、マイコバクテリウム・アビウム菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ菌、カンサシ菌、マイコバクテリウム・ゴルドナエ)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア・モノサイトゲネス菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、無乳性連鎖球菌(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(緑色連鎖球菌群)、大便連鎖球菌、ストレプトコッカス・ボビス、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター種、腸球菌種、ヘモフィリス・インフルエンザ菌、炭疽菌、コリネバクテリウム・ジフテリア菌、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、エンテロバクター・アエロゲネス、肺炎桿菌、パスツレラ皮膚壊死毒素、バクテロイデス種、フソバクテリウム・ヌクレアタム、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、及びアクチノマイセス・イスラエリ(Actinomeyces israelli);を包含する。
【0120】
感染性の真菌の例は;クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、ブラストミセス・デルマティティジス、クラミジア・トラコマチス、カンジダ・アルビカンス;を包含する。
その他の感染性微生物(すなわち、原生生物)は;熱帯熱マラリア原虫及びトキソプラズマ原虫を包含する。
【0121】
細胞又はPTHのような本発明の化合物(治療化合物と呼ぶ)を対象に投与する場合には、治療化合物を薬学的に許容される製剤中で投与することができる。このような製剤は、薬学的に許容される濃度の塩類、緩衝剤、保存剤、適合する担体及び任意のその他の治療剤を含有していてもよい。
【0122】
治療化合物は、注射を包含する従来のルートにより、又は時間をかけた段階的な注入により投与することができる。投与は、投与する化合物によるが、例えば経口、経肺、静脈内、腹腔内、筋肉内、 腔内、皮下、経鼻又は経皮であってよい。活性薬剤を含有するエアロゾル送達システムの調製技術は、当業者に周知である。一般には、このようなシステムは、活性薬剤の生物学的性質を著しく損なわない成分を用いるべきである(例えば、「Sciarra and Cutie, "Aerosols", in Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eddition, 1990, pp1694-1712」(参照として組み込まれている)を参照されたい)。当業者は、過度な実験をすることなく、エアロゾルを製造するための各種パラメーター及び条件を容易に決定するすることができる。アンチセンス製剤を用いるときは、静脈内又は経口投与が好ましい。
【0123】
化合物は有効量を投与する。「有効量」とは、単独で又は更なる用量と共に、所望の応答、例えば骨髄中の造血前駆細胞の増加をもたらす、を生ずる化合物の量のことである。「治療化合物」という用語は、「活性化合物」、「活性薬剤」又は「活性組成物」という用語と同義で用いられ、そして本明細書では、生物学的効果をもたらす本発明の活性化合物、例えば、PTH、米国特許第4,086,196号、米国特許第6,541,450号及びWO第93/06845号(参照として組み込まれている)に記載されているようなPTH類縁体、造血幹細胞が濃縮された製剤等の何れかを示している。免疫不全を特徴とする特定の病気又は疾患を治療する場合に於いて、所望の応答とは免疫系機能での何らかの改善である。これは、一時的に、造血幹細胞の実数の増加、免疫系不全がもたらす感染症の発症及び進行の遅延させるだけでもよいが、好ましくは、疾患を永久に阻止する実質的な改善である。これは通常の方法で観察できる。
【0124】
このような量は、もちろん、治療する特定の疾患、疾患の重症度、年齢、体調、サイズ、体重を含む個々の患者のパラメーター、治療の期間、併用療法の種類(もしあれば)、特定の投与経路、及び医療関係者の知識及び専門知識の範囲内の類似の要素によって決まる。これらの因子は当業者にとって周知であり、通常の試験のみで対処できる。一般に、個々の成分又はその組み合わせの最大用量、すなわち確かな医学的判断に基づく最高安全用量、を用いることが好ましい。しかしながら、患者は、医学的な理由で、心理学的な理由で、又は実質的にその他の理由で、低用量又は許容用量を要求するかもしれないということを、当業者は理解しなければならない。
【0125】
前記の方法で用いられる医薬組成物は、殺菌されており、そして患者に投与するのに適した重量又は容量のユニットで、所望の応答を生ずるために有効な量の治療組成物を含有していることが好ましい。この応答は、例えば、治療組成物の投与後の細胞動員の効果をレポーターシステムを介して測定することにより、又はインビトロで細胞を単離して動員数を測定することにより、判断することができる。その他のアッセイは当業者に周知であり、応答のレベルを判断するために利用できる。
【0126】
投与する場合、本発明の医薬製剤は、薬学的に許容される量及び薬学的に許容される組成物で用いられる。このような製剤は通常、塩類、緩衝剤、保存剤、適合する担体及び任意のその他の治療成分を含有していてもよい。医薬として用いるときには、塩類は薬学的に許容されるものでなければならないが、薬学的に許容されない塩もその薬学的に許容される塩を製造するために便利に用いられ、本発明の範囲から排除されるものではない。このような薬理学的及び薬学的に許容される塩は、これらに限定されないが、次の酸;塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、パモン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、及びベンゼンスルホン酸から調製されるものを包含する。また、薬学的に許容される塩は、カルボン酸基のナトリウム、アンモニウム、マグネシウム、カリウム又はカルシウムの塩のような、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩として調製することができる。
【0127】
適当な緩衝剤は、酢酸及びその塩(1〜2%W/V)、クエン酸及びその塩(1〜3%W/V)、ホウ酸及びその塩(0.5〜2.5%W/V)、及びリン酸びその塩(0.8〜2%W/V)を包含する。
【0128】
適当な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%W/V)、クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V)、パラベン類(0.01〜0.25%W/V)及びチメロサール(0.004〜0.02%W/V)を包含する。
【0129】
各種の投与経路が、利用できる。選択される特定の様式は、もちろん、選択された治療薬剤の特定な組み合わせ、治療の又は予防の症状又は疾患の重症度、患者の状態及び治療効果に必要な用量によって決まる。一般的に言えば、本発明の方法は、臨床的に許容できない副作用を引き起こさずに活性化合物の有効レベルを生ずる何れかの方法を意味する、医学的に許容される何れかの投与方法を用いて実施することができる。このような投与方法は、経口、経直腸、局所、経皮、舌下又は筋肉内投与、注入、注射、静脈内、筋肉内、口腔内投与、飼料添加物として、エアロゾルとして、口腔内、耳内(例えば、点耳剤として)、経鼻、吸入剤、又は皮下を包含する。損傷部位への局所送達には、直接注射も好ましい。
【0130】
PTH及び/又はPTHrP投与の用量は、用量当たり約5〜約100マイクログラム、約5〜約150マイクログラム、少なくとも約5マイクログラム、少なくとも約10マイクログラム、少なくとも約20マイクログラム、少なくとも約25マイクログラム、少なくとも約40マイクログラム、少なくとも約50マイクログラム、少なくとも約60マイクログラム、少なくとも約75マイクログラム、少なくとも約100マイクログラムそして少なくとも約150マイクログラムである。
【0131】
現在、PTH及び/又はPTHrPの投与に皮下投与が通常用いられているが、経口投与が、対象(患者)の利便性、更に用量計画の理由で、治療には好ましいであろう。一般に、活性化合物の毎日の経口用量は、1日当たり約0.1マイクログラム〜約1000マイクログラムである。1日に1回又は数回の投与で、0.5〜500マイクログラムの範囲の経口投与が、所望の結果をもたらすであろうと期待されている。
【0132】
PTH(1−34)を投与する場合は、1日当たり約10〜約250マイクログラムの範囲の用量で、毎日1回投与することが好ましい。より好ましくは、約40〜約100マイクログラムの範囲の用量で、毎日1回投与する。更により好ましくは、約100マイクログラムの用量で、毎日1回投与すべきである。PTH(1−84)を投与する場合は、1日当たり約10〜約250マイクログラムの範囲の用量で、毎日1回投与することが好ましい。より好ましくは、約120〜約170マイクログラムの範囲の用量で、毎日1回投与する。更により好ましくは、約120マイクログラムの用量で、毎日1回投与すべきである。
【0133】
使用する正確な用量は、投与するPTH分子の分子量及び安定性を含む特定な性質、及び投与方法に基づいて、局所又は全身の望ましい薬物レベルをもたらすために適切に調節することができる。例えば、静脈内投与は、経口投与に比べて1日当たり、一桁から数桁低い用量であろうと、期待できる。対象に於ける応答がこのような用量で不十分な場合には、更により大きい用量(又は異なる、より局所的な送達経路による効率的なより大きい用量)を患者の許容範囲まで採用することができる。
【0134】
本発明のポリペプチドを間欠的に投与することが好ましく、これはPTH、PTHrP及びその類縁体の同化作用を促進するするものとして当該技術分野で公知である。好ましい間欠投与計画は、毎日、2日に1回、3日に1回、1週間に2回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、及び1週間に1回である。
【0135】
組成物は単位用量形態とすることが好ましく、これは医薬技術分野で公知の何れかの方法によって製造することができる。全ての方法が、本発明の化合物を1つ又はそれ以上の補助的成分を構成する担体と混合する工程を包含している。一般に、組成物は、本発明の化合物を、液体の担体、細砕した固体の担体、又はその両方と均質に密接に混合して、次いで必要により、生成物を成形することによって、製造される。
【0136】
注射投与に適した組成物は、好適に本発明化合物の無菌の水性製剤からなっている。この製剤は、注射される対象の血液と等張であることが好ましい。この水性製剤は、適当な分散及び湿潤剤、及び懸濁化剤を用いて、公知の方法で製剤化することができる。無菌注射用製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオールの溶液のような、非毒性の注射可能な希釈液又は溶媒中の無菌の溶液又は懸濁液であってもよい。許容される賦形剤及び溶媒のうち使用できるものは、水、リンゲル液及び等張食塩溶液である。更に、無菌の不揮発性オイルが、溶媒又は懸濁媒体として好適に用いることができる。この目的のために、合成のモノ又はジグリセリドを包含する、無菌の不揮発性オイルの幾つかを使用することができる。更に、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用製剤に使い道を見出される。経口、皮下、静脈内、筋肉内等に適した担体製剤は、当該技術分野で公知である。
【0137】
経口投与に適している組成物は、各々が本発明化合物の一定量を含有している、カプセル(capsules、cachets)、錠剤、シロップ、エリキシル剤又はトローチ剤のような、別々のユニットであってよい。肺送達に適した組成物は、一般に噴霧器中に製剤化及び/又は含有されている。
【0138】
その他の送達システムは、徐放性、遅延放出性又は持続放出性の送達システムである。このようなシステムは、本発明化合物の繰り返し投与を避けることができ、患者及び医師の利便性を増し、その上本発明のポリペプチドの同化促進利益をもたらすことも構築される。各種の遅延送達システムが利用でき、当業者によく知られている。これらは、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、ポリ酸無水物及びポリカプロラクトンのようなポリマー系のシステム、コレステロールのようなステロール、リポソーム、リン脂質を包含する脂質である非ポリマー系のシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティック(silastic)システム;ペプチドベースのシステム;埋め込み等を包含する。具体的な例は、これらに限定されないが、(a)米国特許第4,452,775号、4,675,189号及び5,736,152号に見出される、ポリペプチドがマトリックス内の形態で含有されている浸食性システム、及び(b)米国特許第3,854,480号、5,133,974号及び5,407,686号に記載されているような、活性化合物がポリマーから制御された速度で浸透する拡散システムを包含する。更に、ポンプによる送達システムが使用でき、これらの幾つかは埋め込みに適用される。
【0139】
長期持続放出の埋め込みの使用は、慢性疾患の治療に特に適している。
【0140】
本明細書で用いられる「長期(間)」放出性は、埋め込みが、有効成分の治療レベルを少なくとも7日間、好ましくは30〜60日間、そして更に好ましくはより長い期間(例えば、12ヶ月又はそれ以上)にわたって送達するように構築及び設定されている、ということを意味している。この埋め込みは、損傷部位に設置できるが、必ずしも必要とはしない。長期持続放出の埋め込みは、当業者によく知られており、上記の放出システムの幾つかを包含している。このような埋め込みシステムの1つは、米国特許第6,159,490号に記載されている。
【0141】
投与量、注射計画、注射部位、投与方法等が前記のものと異なる、治療組成物を投与するその他の手順は、当業者には公知であろう。例えば、実験の目的又は家畜治療の目的の、治療組成物のヒト以外の哺乳類への投与は、上記と実質的に同じ条件下で実行される。
【0142】
本発明の方法は更に、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞の幹細胞又は前駆細胞への影響を、調節することに関与する細胞産生物を同定する方法を提供する。このような細胞産生物は、例えば、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、糖タンパク質、脂質又はステロイドを包含する。
【0143】
PTH/PTHrP受容体を発現する細胞の幹細胞又は前駆細胞への影響を、調節することに関与する細胞産生物は、例えば細胞分割又は「複製」を増加させることによって、生育を調節できる。従って、幹細胞及び前駆細胞の集団を増加させる細胞産生物の同定方法が提供され、この方法は工程、
a)PTH/PTHrP受容体を発現する細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化する薬剤を接触させること;
b)工程(a)の薬剤に応答して、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞によって生成されたタンパク質又はタンパク質をコードするmRNAを採取すること;
c)幹細胞又は前駆細胞に、1つ又はそれ以上の工程(b)のタンパク質を接触させること;
d)幹細胞又は前駆細胞によって示される生理学的な効果を測定すること;そして
e)この生理学的な効果に関連する1つ又はそれ以上のタンパク質を単離すること:
からなり、ここにおいて生理学的な効果は、幹細胞又は前駆細胞の増加した複製を包含している。
【0144】
多数のタンパク質を含有しているサンプルから個々のタンパク質を単離する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、所定の生理学的効果(例えば、細胞の複製)についての実験で陽性の分画は、更に十分な小集団が残存するまで再分割し、再実験できる。これは活性化PTH/PTHrP受容体を発現する細胞からcDNAライブラリーを得て、ライブラリーを画分に分画して、各々が幹細胞又は前駆細胞と共培養されて、最終的に陽性の応答としてアッセイされた細胞の集団(pool)にトランフェクションすることによって実施することができる。陽性の応答は、1つ又はそれ以上の細胞集団に対応させることができる。陽性の集団と関連するcDNAsを採取し、更に十分な少数の候補cDNAが得られるまで再分割し、再実験して、そして配列を決定することができる。
【0145】
目的の細胞のタンパク質のプロフィールを特徴付けるその他の方法は、当該技術分野でよく知られており、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry;「MALDI−TOF」)のようなものである。サンプル中に於けるタンパク質の存在及び分子量を、MALDI−TOFを用いて測定することができる。本質的には、サンプルをUV吸収試薬と混合し、結晶化し、そして鉄の表面に載せる。レーザー処理を用いて気化し、サンプルをイオン化する。次いでペプチドイオンを電場で加速して、飛行時間を質量に変換する。表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(Surface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry;「SELDI−TOF」)と知られている、特殊な型のMALDI−TOFは、ポリペプチド結合性リガンドで誘導体化される表面の利用を含む取り組みまで拡大させる。
【0146】
PTH/PTHrP受容体の活性化に対する応答での遺伝子発現プロフィールの特徴はまた、更に実験するための候補cDNAを選択するために利用することができる。例えば、PTH/PTHrP受容体の活性化後の遺伝子発現の増加は、サブトラクションハイブリダイゼーション法によって確認することができる。次いで、目的のcDNAは、幹細胞又は前駆細胞と共培養し、そして最終的に陽性の応答としてアッセイされる細胞中でクローン化して、発現する。次いで、十分に少数の候補cDNAが得られて、配列を決定することができる。
【0147】
実施された実施例の以下の記載は、例示であり、請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例)
【0148】
造血幹細胞の発生頻度は、細胞の自律的、内因的及び細胞の非自律的、外因的な要因によって影響される。内因的な要因は、マウスゲノムの特定部位に位置し(de Haam & van Zant, 1997, J. Exp. Med., 186:529-536)、これは造血幹細胞又は限定された前駆細胞の発生頻度を調節するが、両方を調節することはない(Morrison et al, 2002, J. Immunol., 168:635-642)。造血幹細胞(p21)又は前駆細胞(p27)集団のサイズの分化段階の特異的な分子調節媒体(mediators)である、細胞周期依存性キナーゼ阻害剤(cell cycle dependent kinase inhibitors:CDKIs)が同定されている(Cheng et al., 2000, Nature Med., 6:1235-1240)。しかしながら、CDKI発現は、微小環境の刺激によって提供される細胞の外因的な合図の影響を受けるが、その程度は明確には定義されていない。前駆細胞における細胞周期侵入に対するCDK1による阻害を克服することは、骨髄中の多数の細胞型によって生成され、血清中に測定可能なレベルで存在する、多くのサイトカインによってエキソビボで既に実行されている。一方、成人の骨髄由来の造血幹細胞は一般に、エキソビボで拡大することは困難であり、インビボでの幹細胞の拡大を明確にもたらす操作は、ほんの少ししかない。それらには、細胞表面Notch1及びWnt(Reya et al., 2003, Nature, 423:409-414; Murdoch et al., 2003., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:3422-3427)の受容体(Stier et al., 2002, Blood, 99:2369-2378)の活性化、及び抗アポトーシスタンパク質、bcl−2(Weissman I et al., J. Exp. Med., 191:253-264)又はホメオボックスタンパク質、HoxB4(Humphries et al., 1999, Blood, 94:2605-2612)の過剰発現がある。
しかしながら、これらの分子が生理学的性質を変えるかどうかは明確ではなく、そしてインビボでの造血微小環境内で幹細胞数を変化させるのにどの細胞型が参画しているかは、未だ特定化されていない。
【0149】
本明細書に示されているデータは、骨芽細胞の活性化受容体の特異的発現が、骨及び骨髄の微小環境の両方に意図的に影響し、骨の量及び造血幹細胞の集団サイズを変化させることができる、ということを示唆している。本明細書に示されているデータは、骨芽細胞がマウスの造血幹細胞ニッチの調節成分であるということを示している。PPR活性化によるこれらの細胞の数及び場合によれば機能においての動揺は、一見したところ増加した自己再生により幹細胞の数の増加もたらす。初期の造血細胞とこのニッチとの物理的な相互作用は必要であり、そしてノッチ(Notch)シグナル経路が包含されている。これらの結果は、骨芽細胞が造血の調節として、そしてインビボでの骨及び骨髄の間の重要な相互作用を支えていることを明確にしている。
【0150】
PPRの活性化が造血に影響を及ぼすのに、幾つかのメカニズムがある。造血幹細胞が中間洞空間(paratrabacular space)にある骨内膜の表面と結合すると、活性化PPRが骨形成の増加による骨髄の構造の変化を誘導し、幹細胞を支援する表面領域に影響を及ぼすことができる。幹細胞を保持することが可能な物理的なニッチの拡大により、幹細胞数に釣り合った増加となることができる。脱凝集されたcoll−caPPR骨髄基質は、そのような物理的なニッチの同様な拡大をもたらすことを期待できない、しかしながら、エキソビボで幹細胞の支援を増加させることはまだ可能である。エキソビボでLTC−ICを増加させるPTHの能力は、この説明に対して更に反論し、3次元ニッチの構造がこのアッセイで用いられる間質の2次元の単層培養にもたらすことは、同様にありそうもない。代替えのそしてよりありそうな説明は、PPR刺激の能力が骨芽細胞の活性化を誘導し、それにより間接的に造血を刺激することである。
【0151】
造血に連結する骨形成要素は、何が有利な点であろうか? 発達との関連では、間違いなく発達の緊急になすべきことである、妊娠第二期(3ヶ月間)での骨の石化及び骨量の増加が、胎児の胎内生活後に備えることである。造血組織内で、これが主に赤血球及び血小板の生成から、本質的及び適応免疫系の細胞成分の形成への移行を包含する。造血細胞生成が、胎児肝臓から移行し、臓器が肝細胞の集団及び機能を獲得する。血液生成の骨髄及び胸腺への移動は、血液成分の系統分化のプロフィールに於いて、相対的に直列のマーキング変化が起こる。成熟細胞集団での移行増強に伴い、初期細胞系統の成果が調節され、そして幹細胞周期が、胎児肝臓中での強力な増殖から、骨髄に於ける少し活性の低い周期状態へ移行する。幹細胞は、最終的に成熟動物の長期維持に必要な相対的な静止状態を獲得する(Cheng et al., 2000, Science,287:1804-1808)。骨髄への転位は、幹細胞の周期及び分化の移行を伴う。骨格の形成とこれらの事象の一致は、大雑把に言えば、外界と遭遇の誕生前に必要なものであり、そして体重に見合ったスケールにほぼ必要なものであると見なされる。異常な転位又は大理石骨病の何れかによる骨髄造血の実現の失敗は、分子欠損の誘導により直接影響を受けないと考えられる系統も含めて、重症な造血欠損症を伴う(Ma Q et al., 1998, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 95:9448-9453; Dai XM et al., 2002, Blood, 99:111-120)。造血の骨髄への連結は、正常なホメオスタシス(恒常性)に重要と思われる。
【0152】
造血の細胞レパートリーが拡大するのに伴い、ストレスに応じて修正しながら、幹細胞の機能にフィードバックできる細胞の集団を生成する。骨芽細胞が骨髄組織の成熟した子孫を意味する限りに於いて、それは、その他の成熟骨髄由来の細胞成分により設定されたパラダイムに分類される。単球/マクロファージ及びT細胞は、それらの活性化産生物に混じって、造血にポジティブにそしてネガティブに影響するサイトカインを有することがよく知られている。PTHrPは、動物モデルに於いて内毒性ストレスへの応答が増強される(Funk JL et al., 1997, Endocrinology, 138:2665)、そして骨芽細胞の活性化が、ストレスの条件下にPTHr刺激によって増加する(Ryder KD et al., 2000, Calcif. Tissu. Int. 67:241-246)。従って、骨芽細胞は、出生後の変化する環境に於いて造血に対する調整効果を提供し、そして幹細胞周辺の微小環境の調節を提供することができる、骨髄由来の細胞の1つである。骨芽細胞は、それが出現する細胞のフィードバック規制を含む多面的な作用を有する細胞であると考えられる間葉幹細胞の産生物であろう。
【0153】
走化性刺激剤として作用するばかりでなく、SDF−1αは、アポトーシス経路の阻害及び細胞の周期の促進を通して、造血幹/前駆細胞の数及び機能を増加させることが示されている(Lataillade et al., 2000, Blood, 95:756-768; Lataillade et al., 2002, Blood, 99:1117-1129)。SDF−1αタンパク質を過剰発現するように遺伝子組み換えされた造血細胞は、成熟マウスに於いて、数の増加を実現する(Onai et al., 2000, Blood, 96:2074-2080)。
【0154】
造血幹細胞は、個体発生期に発達段階に特異的な転位を受けて、最終的に成人骨髄中に存在する。成人期を通してのよりよく再生する細胞集団の保持は、幹細胞の相対的な静止状態によって決まる。以下の実施例は、改善された治療目的のために、造血幹細胞を処理する新規な方法を示している。この検討は、骨芽細胞に対するPTHの作用が、造血を支援するそれらの能力を変えることができるか否かに集中している。造血は、構成的に活性なPPRを骨芽細胞系統の細胞で発現している、以前に記載のトランスジェニックマウスのモデルで特定化された(Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286)。
【実施例1】
【0155】
材料及び方法
トランスジェニックマウスの同定。
マウスα1(I)コラーゲンプロモーター(Rossert et al., 1995, J. Cell. Biol., 129:1421-1432)の2.3kb断片で制御されている、構成的に活性なPPRを発現しているマウスを以前に産生した(Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286)。この導入遺伝子構造(図1a)は、マウスα1(I)コラーゲンプロモーターの2.3kb断片、ヒト突然変異PPR HKrk−H223R(Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286)をコードする1,880bp、及びpcDNAIベクター(これはHKrk−H223RをコードするcDNAでは見られない、スプライス配列及びコンセンサスポリアデニル化シグナルを提供)からの750bpを含有した。遺伝子型の同定及び導入遺伝子の挿入部位の数の測定は、「Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286」の記載のようにして実施した。実施した全ての検討は、動物委員会(the institutional animal care committee)の承認を受けた。
【0156】
導入遺伝子の発現
in situハイブリッド形成法によって導入遺伝子の発現を確認するために、導入遺伝子コンストラクト中で、リバースプライマーA1(5’−TAATACGACTCACTATAGGGCGATAAACAAGTTAACAACAACAAT−3’ SEQ ID NO:2)及びフォワードプライマーS2(5’−CTTTGTGAAGGAACCTTACT−3’SEQ ID NO:3)を用い、pcDNAIベクターのPCR増幅によって596bpプローブ(DT7)を作成した。このA1リバースプライマーの配列は、T7RNAポリメラーゼ結合部位も包含している。PCR条件は以下の通りである;94℃で1分間、58℃で45秒間、72℃で1分間、そして45サイクルの最後に更に72℃で10分間。in situハイブリッド形成法は、間質細胞に於ける遺伝子導入mRNAの発現を検出するために、DT7PCR産生物から転写された相補性の35S標識のリボプローブを用いて、「Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286」の記載のようにして実施した。
【0157】
サンプル調製及び組織学的解析
組織学的解析のために、トランスジェニックマウス及び性対応野生型同腹子を12週齢で頸部脱臼によって犠牲にした。トランスジェニックマウス及び野生型同腹子の組織を、「Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286」の記載のように、固定して保存した。後肢を「Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286」の記載のように、脱灰して、標準的な組織学的解析手順によってパラフィン保護物を調整した。
【0158】
免疫組織化学的検査のため、野生型及びトランスジェニックマウスの脱灰切片を、抗IL−6 gAb M−19(1:100希釈)、抗SCF gAb G−19(1:100希釈)、抗SDF−1 gAb C−19(1:50希釈)、抗オステオポンチン(Osteopontin)gAb P−18(1:200希釈)及び抗ジャゲドル(Jaggedl)rAb H−114(1:100希釈)(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, California)で染色した。免疫組織化学的染色は、ビオチン化抗ヒツジウサギ又は抗ウサギヒツジの2次抗体(Vector Labs, Burlingame, California)、西洋わさびペルオキシダーゼ抱合型ストレプトアビジン(Jackson Immuno Reserch, West Grove, Pensylvania)、及びAECクロモゲン(Biocare Medical, Walnut Creek, California)、又はベクターABCアルカリホスファターゼキット(Vector Labs, Burlingame, California)を用いて実施した。スライドをメイヤーのヘマトキシリンで対比染色した。
【0159】
細胞学的分析
細胞学的分析のために、安楽死させた野生型及びトランゲニック同腹子から後肢を切り裂き、長骨を10%牛胎仔血清(Gibco)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する□−MEMで洗浄して、細胞調製物を得た。
【0160】
次いで細胞を組織培養フラスコ中、初期濃度5×10細胞/mlで培養した。2週間又は間質細胞層が集密になるまで、培地を3日毎に取り替えた。付着した細胞をトリプシン処理して、マルチウェルチャンバーに7、14、28日間10細胞/mlの濃度で蒔いて、培地を3日毎に取り替えた。in situハイブリッド形成法のために、細胞をPBSで3回濯ぎ、次いで3.7%のPBS緩衝ホルムアルデヒドで、室温で1時間固定した。免疫組織化学的検査のために、細胞をTBS.Ca(1mMのCaCl、50mMのトリス/HCl、pH7.4、150mLのNaCl)で4回濯いで、室温でアセトンとメタノールの1:1溶液で1分間固定した。
【0161】
免疫細胞化学
免疫細胞化学的染色をアセトン:メタノール固定間質細胞で実施した。マルチウェルプレート中で生育した細胞を、1:50希釈の、抗SDF−1ヒツジポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)と室温で60分間、そして蛍光標識の第2抗体と45分間培養した。細胞をエバンスブルーで対比染色した。カバーグラスにDAPIを含有するベクタシールド(Vectashield; Vector Laboratories, Burlingame, CA)を取り付けて、スライドを適切なフィルターを備えた蛍光顕微鏡を用いて検査した。
【0162】
骨髄間質細胞層の調製
マウスをCO窒息で安楽死させ、次いで大腿及び脛骨を除去して、長期培養培地(12.5%のウマ血清、12.5%のウシ胎仔血清、0.2mMのi−イノシトール、20μMの葉酸、10−4Mの2−メルカプトエタノール、2mLのL−グルタミン及び10−6Mのハイドロコルチゾンを含有するα−MEM;M5300 Stem Cell Technologies)で洗い流した。次いで単核細胞を、組織培養用のフラスコ中、初期濃度5×10細胞/mlで培養した。2週間又は間質細胞層が集密になるまで、培地を3日毎に取り替えた。
【0163】
フローサイトメトリー分析
骨髄単核細胞を上記のようにして単離した。次いで、単一細胞の懸濁液をビオチン化細胞系統抗体(CD3、CD4、CD8、Ter119、Gr−1、Mac−1及びB220)、及びフィコエリトリン抱合の抗Sca−1及び抗c−キット(Pharmingen, San Diego, CA)で染色した。次いで、細胞を第2蛍光イソチオシアネート抱合ストレプトアビジンで標識して、セルクエストソフトウェアー(Cell Quest software)を用いる、FACScariburサイトメーター(Becton Dickinson and Co., Franklin Lakes, New Jersey)で分析した。初期集団に於ける細胞周期を評価するために、骨髄単核細胞(BM MNCs)を、「Cheng et al., 2000, Nature Med., 6:1235-1240」に記載のように、系統抗体、抗Sca−1、ピロニンY(RNA染料)及びヘキスト(Hoechst)33342(DNA染料)で染色した。細胞内NICD染色のために、linSca−1c−Kit細胞を、「Fix and Perm Cell Permeabilization Kit (Caltag)」を用い、製造者の説明書に従って透過処理し、そして1□gの抗NICD抗体で培養した。次いで、2次抗マウスヒツジ抗体を、抗NICDを検出するために用いた。
【0164】
コロニー形成率アッセイ
単核細胞を骨髄から単離して、10細胞/mlを次の培地で培養した;0.9%のメチルセルロース、15%のFBS、1%のBSA、10μg/mlのrhインスリン、200μg/mlのヒトトランスフェリン、10−4Mの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、50ng/mlのSCF、10ng/mlのrmIL−3、10ng/mlのrhIL−6及び3単位/mlのrhEpo(M3434;Stem cell Technologies, Vancouver, Canada)。10日目にコロニーの総数をカウントして、総CFU−Csとして報告した。
【0165】
長期培養開始細胞アッセイ
集密培養から得たマウス骨髄間質細胞を照射(15Gy)して、20,000細胞/ウエルの濃度で96ウエルプレートの長期培地中に蒔いた。次いで、細胞を2倍連続限界希釈でプレートに播種して、加湿環境下に33℃/5%COで培養した。培養を、ウェル中の培地の半分を1週間毎に取り替えて、5週間保持した。これに続いて、培地を上記の組み換えサイトカインで補充した培地を含有するメチルセルロースに置き換え、次いで培地追加の10日後にコロニーの生育について記録した。
【0166】
PTHによるインビトロ処理
野生型の間質及び造血細胞を用いてLTC−ICアッセイを実施した。ラットPTH(1−34)(Bachem, Torrance, California)又は媒体を、間質細胞の樹立する間及び/又は最終濃度を10−7Mに培養保持している間の何れかの培地交換時に加えた。2週間又は間質細胞層が集密になるまで、培地を3日毎に取り替えた。次いで、アルカリホスファターゼ染色のために、上記のようにして野生型及び/又はトランスジェニック同腹子から得られた初代単核細胞を、初期濃度5×10細胞/mlで、24ウェルプレート中で培養した。播種10又は14日後に、培地を吸引除去して付着している細胞をPBS中で静かに2回濯いだ。10%の中性ホルマリン緩衝液中に、室温で30分固定した後、0.1Mのトリス塩酸(pH8.5)中で、0.1mg/mlのナフトールAS−MXリン酸(Sigma)、0.5%のN,N−ジメチルホルムアミド、及び0.6mg/mlの赤紫色LB塩(Sigma)の混合物と室温で45分培養して、アルカリホスファターゼ活性を組織化学的に測定した。アルカリホスファターゼ陽性細胞を培養10日後にカウントした。そのとき培養は部分集密しており、個々の細胞を同定することができた。□−セクレターゼ活性を阻害するために、DMSOに溶解した30□Mの□−セクレターゼ阻害剤II(Calbiochem)を長期培養培地に加えて、LTC−ICアッセイを記載の通り実施した。非接触LTC−ICのために、骨髄間質細胞層を記載のように96ウェルプレートに蒔いた。穴の大きさが0.2□mの組織培養挿入膜(Nunc, Naperville, IL)をウェルに入れ、骨髄細胞を培養挿入物中に播種した。
【0167】
PTHのインビボ投与
PTHを投与するために、6〜8週齢の野生型C57/B雄性マウスを用いた。ラットPTH(1−34)(80μg/体重Kg)を4週間にわたって週に5回腹腔内投与した(n=5)。対照のマウス(n=4)には同量の媒体を投与した。治療期間の終了時に、Ciba/Coming634Ca++/pHアナライザーでイオン化血清カルシウムを測定して、安楽死させたのち、後肢及び前肢を切り裂いて細胞学的及び組織学的分析に利用した。
【0168】
SDF−1のELIZA
細胞培養上澄液中に放出されたSDF−1の量を、ELIZAによって測定した。SDF−1濃度を、トランスジェニック及び野生型同腹子からの初代間質細胞の部分集密の条件培地中で、「Quantikine SDF-1 Immunoassay (R & D Systems, Inc, Mineapolis, MN)」を用いて測定した。
【0169】
骨髄移植
競合的移植検討のために、CD45.1B6.SJL(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)マウスから得られた、4×10個のBM NMCsを、疑似投与又はPTH投与CD45.2C57B1/6マウスから得た2×10個の細胞と混合した。24時間前に15Gyの放射線(137Cs源)で致死的な量を照射された、移植B6.SJLマウスに細胞を投与した。6週間後に、マウスをCOで安楽死させ、BMを除去して、十分に補完されているイスコフ培地(Iscove's Medium)で洗い流した。異なった細胞源からの移植の相対的寄与を、抗CD45.1及び抗CD45.2抗体(Pharmingen, San Diego, CA)を用いてフローサイトメトリーで評価した。移植後PTH投与の効果を評価するために、移植C57B1/6マウスを致死的な放射線照射して、ドナーB6.SJLマウスから得た2×10個のBM MNCsを投与した。細胞の投与24時間後に、マウスに上記のようにPTH又は疑似物を4週間にわたって投与した。
【0170】
統計学的分析
結果を平均+/−標準誤差(s.e.m.)で表した。データは、データセットに適合するように、対応のない両側スチューデントt検定を用いて分析した。P<0.05には有意性があると考えられる。
【実施例2】
【0171】
トランスジェニックマウスでの実験
骨芽細胞系統の細胞中に構成的に活性なPPRを発現しているトランスジェニックマウスは、骨髄線維症及び貧血を有している。2及び12週齢でのcoll−mutPPRマウスの長骨は、多量の柵状織及び骨髄線維症によって特定化された。12週齢でのcoll−caPPRマウスの長骨を、組織学的に分析した。そして骨幹端部の骨髄スペースの減少に伴い多量の柵状織がはっきり示された。長骨の総骨髄スペースに対する骨幹端部の適度な寄与を考えると、成体トランスジェニックマウスの長骨に於ける総骨髄スペースの減少の規模は最小限であった。オステオカルシン、アルカリホスファターゼ、コラーゲンI型、オステオポンチン及びMMP−13(Calvi et al., 2001, J. Clin. Invest., 107:277-286)で染色されることによって明らかにされる、柵状織の繊維芽細胞集団の拡大があった。造血細胞が柵状織の間の小さな部位で見出され、そして脂肪細胞は殆ど見出されなかった。トランスジェニックマウスは軽度の貧血を有しており(ヘマトクリット、野生型、n=5:41+/−0.2%;トランスジェニック、n=4:35.9+/−0.6%、P<0.005)、重症の原発性副甲状腺機能亢進症のヒトに於ける知見も示されている(Kotzmann et al., 1997, Horm Metab. Res., 29:387-392)。この特有の表現型は、骨芽細胞系統の細胞に於けるPPRの構成的な活性が、間質細胞集団に影響を及ぼして正常な造血を変化させるということを、示唆している。トランスジェニックマウスの骨髄間質細胞は培養中に、ヒト突然変異PPRのmRNAを発現する。
【0172】
トランスジェニックマウスでの骨髄中の増加した造血幹細胞
トランスジェニックマウスに於ける造血幹細胞上の骨芽細胞の増強された活性及び細胞数の影響を解明するために、骨髄中の造血幹細胞の発生頻度をフローサイトメトリーでまず検討した。総骨髄単核細胞からの細胞のSca−1lin亜集団の発生頻度の分析は、トランスジェニックマウスが、有意に増加した候補の幹細胞数を有していることを示した(P=<0.01、図2a)。この比例的増加は、絶対数に対応した増加であった(後肢に対する平均絶対数、野生型:32,500+/−8,000対トランスジェニック:65,700+/−7,500)。これが機能表現型に対応しているのか確認するために、インビボでの造血幹細胞(HSC)機能と直線的に関連する、定量的な限界希釈の長期培養始原細胞(LTC−IC)アッセイ(Proemacher et al., 1991, Blood, 78:2527-2533)を用いた。造血幹細胞の発生頻度を、骨髄単核細胞のlin画分に於けるLTC−IC発生頻度の機能的測定を用いて検査した。これは、トランスジェニック動物に於いて、LTC−ICsの発生頻度とほぼ同等の規模の増加を認めた(P=<0.0001、図2b)。この増加の規模は、免疫表現型的に定義された原始細胞で見られる増加に匹敵していた。この幹細胞発生頻度の増加は、トランスジェニック動物に於ける細胞周期プロフィールの変化からもたらされた可能性があるので、次にG0対G1期にあるSca−1lin細胞の比率を分析した。トランスジェニックと野生型マウスの間で差異は観察されなかった(P=0.768、図2c)。同様に、CFU−Cアッセイを用いる造血前駆細胞の発生頻度の測定は、トランスジェニックと野生型動物の間で差異を示さなかった(P=0.573;図2d)。これらのデータは、拡大の特異性が造血幹細胞のレベルであることを示している。特に、これらのデータは、細胞の拡大が、分化した小集団までは広範ではなく、明確に原始細胞に限定されているということを示している。
【0173】
インビトロでのPPRを通じての間質細胞に対するPTHの作用による十分な造血幹細胞数の増加
トランスジェニックマウスは、造血幹細胞の増加した発生頻度を有しているので、この増強のメカニズムを調査した。骨髄間質細胞がLTC−ICを支援する能力を評価して、トランスジェニックマウス由来の間質細胞が、野生型動物由来の間質細胞に比べて、増強されたLTC−ICを支援を示す(P=<0.005、図3a)ことが見出された。従って、coll−caPPRマウスの増加した原始細胞を、基質確認すると、造血細胞の遺伝子型から独立したものであった。トランスジェニックマウスが構成的に活性なPTH/PTHrP受容体を有していることに基づき、次いで外因性PTHの添加が先の観察結果を再現するか否かについて確認した。これらの実験に於いて、間質細胞集団はPTHの存在下で拡大し、また、LTC−ICアッセイは、長期培養培地中でPTHを用いて実施した。骨髄から間質細胞集団を拡大させるときにPTHを存在させると、間質細胞がITC−LCsを支援する能力を向上させることが見出された。
【実施例3】
【0174】
遺伝子組み換え細胞の実験
PPR遺伝子導入骨芽細胞のIL−6、SCF及びSDF−1の高発現
骨幹端部の柵状織中の遺伝子組み換え細胞での、インターロイキン6(IL−6)、キット・リガンド又は幹細胞因子(SCF)及び間質由来因子1(SDF−1)のレベルを算定するために、免疫組織化学を利用した。これらの細胞は、in situハイブリッド形成法により骨芽細胞の不均一集団として既に示されており(Calvi et al., 2001)、そして骨芽細胞のマーカーであるオステオポンチンの免疫組織化学検査で、これらのデータを確認した。野生型の動物では、ほんの僅かの骨芽細胞だけがこれらの因子を発現する。これに対して、トランスジェニック動物の骨芽細胞では、高いレベルのIL−6が不均一に検出された。DDF−1の発現が拡散したのに対し、SCFは主に柵状織を覆うより成熟した細胞中に高いレベルで存在していた。拡散性のサイトカインが、原始細胞への影響を明らかにできるか否かを検討するために、BM MNCs(非接触培養)由来の半透性膜分離の支持細胞を用いてLTC−ICを実施して、活性化PPRの影響が全く無いことを指摘した(P=0.982、図4)。これらのデータは、細胞−細胞接触、又は原始造血細胞とニッチ細胞又はマトリックス成分との直接相互作用の必要性を示唆している。SCFは、膜に結合していても、また遊離に分泌されていてもよい。しかしながら、幹細胞を拡大する、その他の膜限定の調節媒体(mediator)の候補を検討した。
【0175】
遺伝子組み換え骨芽細胞の高レベルなノッチリガンド(ジャゲドル)生成
ノッチシグナル伝達経路は、多様なシステムで細胞運命の仕様を制御し(Atravanis-Tsakonas et al., 1999, Science, 284:770-776)、HSCの自己再生に影響すると考えられている(Stier et al., 2002, Blood, 99:2369-2378; Varnum-Finney et al., 2003, Blood, 101:1784-1789; Varnum-Finney et al., 2000, Nat. Med., 6:1278-1281; Karanu et al., 2000, J. Exp. Med., 192:1365-1372; Karanu et al., 2001, Blood, 97:1960-1967)。ノッチシグナル伝達の操作には、成熟細胞を拡大せずに幹細胞の数を増やすことが知られている(Stier et al., 2002, Blood, 99:2369-2378; Karanu et al., 2000, J. Exp. Med., 192:1365-1372)。更に、ノッチリガンド・ジャゲドルは、骨髄間質細胞(Karanu et al., 2000, J. Exp. Med., 192:1365-1372; Li et al., 1998, Immunity, 8:43-55)、更にマウス骨髄細胞(Pereira et al., 2002, J. Cell Biochem., 85:252-258)によって発現されることが示されている。ノッチ及びサイトカインが誘発するシグナル伝達経路は、造血細胞運命の制御に組み合わせ効果を有していることが示されている(Varnum-Finney et al., 2003, Blood, 101:1784-1789)。従って、ジャゲドル・タンパク質のレベルがトランスジェニックマウスの骨髄中で変化するのかを検討し、そしてジャゲドルの総レベルが劇的に増加したことが、免疫組織化学によって観察された。ジャゲドルを発現している細胞は、それらの形態学的特徴及び抗オステオポンチン抗体による染色によって示されるように、骨芽細胞であった。トランスジェニック動物に於いて、造血幹細胞がジャゲドルの増加した発現に応答したのかを検討するために、野生型及びトランスジェニックマウス由来のlinScac−KitHSCs中でのノッチ細胞内ドメイン(NICD)のレベルを測定した。抗NICD抗体は、ノッチ1の活性化細胞内形態を選択的に検出することが既に示されている(Huppert et al., 2000, Nature, 405:996-970)。野生型マウスは、アイソタイプの対照と比較すると、NICDに対して最小の染色を有したのに対して、トランスジェニックマウス由来のlinScac−Kit細胞は、NICDのレベルの顕著な増加を有した(図3b)。これらのデータは、骨芽細胞集団に於けるPPRの活性化が、ジャゲドルの数及び総産生を増加させるモデルを示唆している。言い換えると、原始造血細胞上のノッチを活性化すると、原始細胞画分の拡大をもたらすことであろう。
【実施例4】
【0176】
インビトロに於けるATH投与
インビトロでのPTP処理によるcoll−caPPR効果の再生
coll−caPPRマウスは、内因性のリガンドによっても活性化される受容体を活性化する遺伝子方法を示したので、次にcoll−caPPR間質の効果が、野生型間質のPTHに曝すことによって、繰り返されるか否かをテストした。LTC−ICアッセイを、PTHの存在下又は非存在下で拡大したC57B1/6間質を用いて実施し、その後造血細胞をPTHの存在下又は非存在下にこの間質に導入した。間質がPTHを含有している培地中で生育したときに、coll−caPPR間質を用いるLTC−ICと全く同様に、LTC−ICを増加した(P=0.004、図5a)。注目すべきは、PTHの非存在下で拡大した間質細胞を使用するか、又はPTHを造血細胞と同時に添加したときには、この効果が見られず、インビトロで成熟したような間質の成分又は活性への効果を示唆している。PTHで処理した間質細胞培養液中の骨芽細胞数の増加があるか否かを調べるために、媒体又はPTHで処理した初代マウスの間質細胞培養液のアルカリホスファターゼ染色を実施した。14日後に、培養液は集密かつ不均一になり、そしてPTH処理培養液中にアルカリ陽性細胞の増加(図5b)があって、PPRの活性化が骨芽細胞数の増加をもたらすことが立証された。更に、原始造血細胞でのPPR活性化の効果が、ノッチ経路の活性化によるものか否かを評価するために、ノッチ1開裂を阻止できるγーセクレターゼ阻害剤(Wolfe et al., 1999, Biochemistry, 38:4720-4727)の存在下又は非存在下で長期共培養を実施した。阻害剤の添加は、PTHで処理した間質の支援能力をベースラインまで減少させた(図5c)。従って、ノッチ1の活性化は、骨芽細胞が誘導する原始造血細胞の増加に必要である。まとめると、これらの結果は、PPRの活性化がノッチ1の介在する原始造血細胞の拡大をもたらす骨髄細胞を増加させることができるという、モデルを更に支持している。
【実施例5】
【0177】
インビトロにおけるPTHの投与
正常マウスのPTH間欠処置
間質細胞のPTHによる処理が、間質細胞集団の造血幹細胞を支援する能力の増加をもたらすので、これらの効果がインビボで再現できるかを検討した。野生型C57B1/6マウスに、骨芽細胞を増やすために知られている間欠用量スケジュールを用いて、PTHを毎日注射して、骨髄中のLTC−ICsの発現頻度を測定した。2週間のPTH治療期間は、造血幹細胞集団の有意な増加をもたらさなかったが、PTHでの4週間のマウス治療は、疑似注射マウスよりも造血幹細胞の有意な増加をもたらした。4週間までに、疑似治療の対照に比較して、linScac−Kitの高い発生頻度及び絶対数を有するPTH治療マウスに、有意な差異が認められた(P=<0.01、図5d)。更に、限界希釈のLTC−ICアッセイが、幹様細胞の増加を示した(P=<0.005、図5e)。更に、機能的幹細胞がPTH治療後も増加するということを明確にするため、第2のレシピエントへの競合的移植のインビボアッセイを用いて、HSCの2倍以上の増加が立証された(P=<0.05、図5f)。これらのデータは、PTHによって誘導されるHSCsの増加の証拠を提供し、そしてこれらの検討に於けるインビトロ及びインビボでのアッセイの正当な比較可能性を証明するのにも役立つ。トランスジェニック動物に於ける観察と一致して、PTH処置は、CFU−Cアッセイで評価したように造血前駆細胞のレベルに影響を及ぼさなかった(P=0.780、図5g)。従って、PPRの薬理学的な活性化は幹細胞の数を増加したが、広範な造血細胞の拡大は伴わないと思われた。これらのデータは、ノッチの活性化の結果であると知られている現象である、向上した自己再生によるHSCの拡大と非常に一致する。注目すべきことに、PTH処置動物の血清カルシウム測定により高カルシウム血症の証拠は見出されなかった。
【0178】
骨髄移植後のインビボでのPTH投与
PPR刺激が、ヒトに於ける幹細胞の臨床使用に関係するモデルに影響を及ぼすか否かを評価するために、骨髄除去及び骨髄移植を受けた動物に対するPTH投与の影響を評価した。ドナー細胞由来の限定数の骨髄を、治療必要性の設定を呈するようにして用いた。疑似投与を受けた対照のマウスの骨髄移植30日後の生存率は40%であった。これとは際だって異なり、PTHのパルス投薬を受けた動物は、100%の生存率で極めて改善された結果を得た(図6)。
【実施例6】
【0179】
PTHによる化学療法損傷の予防
PTHによるG−CSF及びシクロフォスファミド治療工程中の保護効果
シクロフォスファミドは、血液悪性腫瘍の治療に於いて化学療法剤として用いられている。骨髄に対するシクロフォスファミドの骨髄毒性効果のため、一般に顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)が、化学療法による好中球減少症の回復を増大させるために投与されている。しかしながら、シクロフォスファミド投与に引き続くG−CSFによる治療は、骨髄細胞の造血幹細胞(HSC)の亜集団を減少させることが知られている。G−CSF及びシクロフォスファミド治療の工程中でのPTH投与の保護効果が、本明細書に記載のように観察された。
【0180】
インビボでのPTHの投与
野生型C57B1/6マウスを、5mgのシクロフォスファミドで処置した(第1日)。シクロフォスファミドの注射後に続いて、マウスを処置しないか、又はG−CSFで8日間(5μg/日)、PTHで11日間(80μg/Kg/日)、又はG−CSFとPTHの併用で処置した。G−CSFとPTHの併用処置されるマウスには、G−CSF処置を8日間とPTH処置を11日間を行った。この処置手順に続き、第15日目にシクロフォスファミドをマウスに注射して、上記のようにG−CSF、PTH又はG−CSFとPTHで処置した。次いでこの処置手順を、図7に概略を示したように、続いて2サイクル繰り返した。
【0181】
完全血球算定分析
4回の処置サイクル工程の間に、末梢血の完全血球算定(CBC)分析を2〜3日毎に実施した。この分析は、100μlの末梢血を尾静脈から採取し、続いてHEMAVET850FS(Drew Scientific)で分析することを包含している。尾からの反復出血による悪影響を避けるために、個々のマウスを1週間に1回採血した。
【0182】
造血幹細胞のアッセイ
シクロフォスファミド及びG−CSF/PTHによる処置の4サイクルの最後に、処置したマウスから骨髄を除去して、骨髄中のHSC集団の維持を測定するために、B6.SJLマウスへの競合移植を実施した。これは処置したC57B1/6マウスの5×10個のBM細胞(CD45.2)を、B6.SJLマウスの2.5×10個のBM細胞(CD45.1)と混合することを包含している。これらの細胞は、その後致死的な放射線照射されたB6.SJLに注射された。細胞の注射から18週後にこれらのマウスから末梢血を採取して、処置動物由来のHSCsの相対的寄与率を、CD45.2細胞についてフローサイトメトリーにより測定した。HSCsの末梢循環へ動員する能力を評価するために、1週間後に処置マウスにG−CSF(5μg/日)で5日間動員した。これらのマウスから末梢血(300μl)を採取して、B6.SJLマウス由来の2.5×10個のBM細胞と混合した。これらの細胞を致死的に放射線照射されたB6.SJLホストに注射した。細胞の注射から18週後にマウスから末梢血を採取して、処置動物由来のHSCsの相対的寄与率を、CD45.2細胞についてフローサイトメトリーにより測定した。
【0183】
G−CSF支援の有無に関わらないPTH投与の化学療法後の造血応答への無影響
8週間の化学療法処置期間中の、白血球(WBC)数、好中球(NE)数、ヘモグロビン濃度(Hb)及び血小板数(Plt)に関する末梢血の分析が図7、A〜Dに示されている。化学療法に続いて、G−CSFを投与されたマウスは、WBC及びNEの数の有意な増加を示しこれはPTH処置の付加によって変化しなかった。同様に、G−CSFを投与されなかったマウスは、PTH投与の有無で、化学療法に対する造血応答に相違を示さなかった。Hb及びPlt応答は何れの処置群の間で有意な差異はなかった。
【0184】
副甲状腺ホルモン(PTH)の投与による化学療法後のHSC集団の維持
化学療法後の骨髄中のHSC集団の分析は、PTH処置が骨髄毒性のある化学療法後にG−CSFで処置されなかった動物でHSC集団を増加したことを示した(図7E)。G−CSFのみで処置した動物に於いては、その他の人が記載したように、HSC集団の有意な減少があった。しかしながら、PTHとの併用処置は、HSC集団の保持をもたらした(図7E)。G−CSFによるHSCsの末梢循環への動員の分析は、骨髄破壊的な化学療法中にG−CSF支援療法を受けていないマウスに於いては、HSCsの循環への動員があり、これはPTH前処置によって増加した、ということを示した(図7F)。しかしながら、成長因子支持療法のみを受けているマウスは、末梢循環への動員が皆無かそれに近いことを示し、これはPTHとの併用処置である程度回復する(図7F)。
【0185】
纏めると、これらの検討は、ニッチを標的とすることが、骨髄毒性のある化学療法時の骨髄中のHSC集団を保護し、又は拡大さえもできることを示している。これは、成長因子支持療法を化学療法と併用するときに特に明確である。これらの結果は、骨髄毒性の化学療法時に造血幹細胞を保護する、PTH治療の有用性を示している。
【実施例7】
【0186】
白血病細胞の移植、生育及び成熟の動態
白血病細胞の移植、生育及び成熟の動態を正常マウスで検討した。マウスに移植したC−1498白血病細胞の生育及び運命を分析するために、細胞をGFP(C−1498/GFP)を発現するレトロウィルスで形質変換した。これはGFPをマーカーとして用いてインビボでのこれらの細胞を追跡することを容易にする(図9a)。C57/BL6(H2−b)マウス由来の自然発生急性骨髄性白血病である、急性骨髄性白血病細胞株C−1498は、容易に移植可能であり、インビトロで培養できてレトロウィルスで感染される。
【0187】
図9bで示されるように、50,000個のC−1498/GFP細胞をマウスに移植すると、骨髄中のGFP陽性細胞の数は2日目で2%、7日目で8%、そして18日目で12%であった。7日目に、末梢に芽細胞が無かった。しかしながら15〜18日で、末梢血に芽細胞が確実に現れ始めた。22日目に、殆どのマウスが瀕死となった。
【0188】
次に、PTHによる幹細胞ニッチの活性化が白血病細胞の生育及び成熟にいかに影響を及ぼすかを測定することに注目した。「ニッチを刺激した」動物中での白血病細胞の増殖の動態を検討するために、動物を80μg/Kg/日のPTHで1ヶ月間、前刺激した。次いで、マウスを10Grayで致死的に放射線照射し、次に50,000個の白血病細胞(GFP+)及び1×10個の正常骨髄細胞(GFP−)を移植した。移植15日後に、骨髄を採取して、次に、GFP陽性細胞をパーセント及び絶対数として記録した。総細胞の絶対数に両群間で統計的な差がなかったので、百分率のみが図10b(左パネル)に示されている。注目すべきことに、3実験例のうちの3実験で、GFP陽性白血病始原細胞の数が、PTH処置の動物で顕著に減少していた。
【0189】
これらの結果の組織学的に関連のあるものを得るために、10ミクロンの骨切片を移植した疑似処置及びPTH処置動物から切り出した。疑似処置動物に於いては、PTH受容体陽性細胞として同定される、骨芽細胞及び骨芽前駆細胞が、骨の内膜表面に並んでいるのが見出された。対照的に、PTH処置動物では、PTHr陽性細胞が骨髄に広く移動していた。付随して、GFP陽性白血病細胞が疑似処置動物で見出された(特に骨表面に沿って)のに対して、GFP陽性細胞がPTH処理動物で明らかに減少していた(図10b、右パネル)。
【0190】
PTH処理が、白血病始原幹細胞に対する正常始原幹細胞の相対比率を変化させる能力は、幾つかのメカニズムを包含している。第1に、これらの細胞は、様々のニッチスペースを獲得するために競争し、そしてPTHが「拡大した」ニッチは、白血病及び正常幹細胞を支援するのに比例した可能性を有しているのではないであろう。白血病細胞に対する正常細胞の相対存在量を白血病細胞に対する正常細胞の比を大きくすることによって修正する能力が、このようなメカニズムを適用できることを示唆している。PTH処置動物に於いて、白血病細胞に対する正常細胞の差別的な産生があることは、正常な造血の動態が変化しない状況が存在するとは、思われない(図11)。しかしながら、何らかの阻害するシグナル伝達に対する差別的な検出感度が、更にテストしたような可能性あるメカニズムであろう。
【0191】
PTHは、インビトロで白血病細胞に直接影響しないので、骨芽細胞−白血病細胞の相互関係を更に特定化した。骨芽細胞及びC1498/GFP白血病細胞を共培養した。この実験のスキームは図12aに示されている。骨髄を野生型及びCol A−PPRマウスから採取して、全細胞成分をインビトロで10日培養した。培養10日後に、細胞を解離して単一細胞懸濁液とした。骨芽細胞はPTH受容体を発現するが、造血細胞の一般的なマーカーである、CD45を発現しない。インビトロ培養物から骨芽細胞を精製するために、CD45−でPTH受容体+の画分を、FACSによって単離した(図12b)。次に、この集団をアルカリホスファターゼで染色して、これらが精製した骨芽細胞であること指す、Alk+として示した(図12c)。
【0192】
骨芽細胞を単離した後、骨芽細胞とC1498/GFP白血病細胞を共培養した(図12d)。共培養して3日後に、GFP+陽性細胞の画分及び総細胞をFACS分析によって再度カウントした(図12e)。注目すべきことに、対照の培養液(繊維芽細胞のみ)に比べて、骨芽細胞共培養液中に白血病細胞の有意な減少があった。更に、繊維芽細胞培養液中のクローンサイズは5〜8細胞であったのに対して、骨芽細胞培養液中の白血病細胞のクローンサイズが小さくなっていることが見出された(1〜2細胞)。これは、白血病細胞が、骨芽細胞の存在下では、拡大する能力を低減されたことを示唆している。
【0193】
骨芽細胞介在の白血病細胞阻害の現象(本明細書に記載されている先のインビトロでの実験で示されているような)を更に検討するために、候補分子検討法を用いた。骨芽細胞により分泌される分子である、オステオポンチン(OPN)が、正常造血幹細胞のニッチの主要調節因子である。特に、OPNは、初期に原始造血細胞の数を制限すると思われている(Stier, S. et al. (2005) J. Exp. Med. 201(11):1781-91)。
【0194】
候補分子としてのOPNの役割を検討するために、組み換えOPNがインビトロで白血病細胞の成長阻害を再現するのに十分であるかどうかを探索した。この目的のために、C−1498/GFP細胞をウェル中、(a)OPNが存在しない、(b)5及び10ug/mlのOPNの存在下で、培養した。注目すべきことに、OPNが、このシステムでは白血病細胞の生育の阻止を十分に再現することが見出された(図13b)。アネキシン(Annexin)による染色で、この効果が、アポトーシスを加速するのではなく、むしろOPN介在による成長阻害によるものであることを、明確にした(図13a)。従って、組み換えオステオポンチンは、白血病細胞の拡大を制限するのに十分であると結論づけた。OPNの原始細胞の拡大を制限する相対能力は、正常細胞に比べると白血病細胞に対しての方が高い。PTHがOPNの骨芽細胞産生を増加させるならば、インビボでの幹細胞ニッチのPTH刺激による、白血病細胞を上まわる正常細胞の選択的支援にOPNが参画しているものと思われる。
【0195】
本明細書に記載した結果を考慮すると、PTH及びその類縁体によるPTH/PTHrP受容体の刺激は、正常細胞及び悪性細胞の機能の相対的なバランスに影響を及ぼすことができ、それにより患者に利益をもたらすように悪性腫瘍の表現型を変える。従って、異常細胞の進行性支配によって特徴付けられる、白血病及び前白血病(例えば、骨髄異形成症候群)は、PTH/PTHrP受容体の刺激によって改善又は根絶することができる。PTH受容体が多くの組織の多数の間質細胞成分上にあるならば、PTH刺激は、多くの腫瘍型に於いて正常細胞と悪性細胞の比率をかえることができる。
【0196】
上に記載された詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを可能とするのに十分であると思われる。本発明は、示されている実施例によって範囲を限定されものではなく、実施例は本発明の一態様を説明することを意図しており、そしてその他の機能的に同等な態様は、本発明の範囲内である。本明細書に示されそして記載されているものに加えて、本発明の各種改変は、先の記載から当業者に明白であり、添付の特許請求の範囲内に収まるものである。本発明の利点及び目的は、本発明の各々の態様によって必ずしも網羅されているものではない。
【0197】
本願で述べられている全ての引例、特許及び公開特許公報は、参照としてその全てが本明細書に組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】図1は、hPTH/PTHrP受容体の構築物を示す。
【図2】図2aは、総骨髄単核細胞由来のSca−1lin細胞亜集団の発現頻度を示すグラフである。 図2bは、骨髄単核細胞のlin画文の造血幹細胞の発現発生頻度を示すグラフである。 図2cは、G対G相に於けるSca−1lin細胞の比率を示すプロットである。 図2dは、CFU−Cアッセイを用いた造血幹細胞の発現発生頻度を示すグラフである。
【図3】図3aは、トランスジェニックマウス由来の間質細胞の支援を示すグラフである。 図3bは、linSca−1c−Kit造血幹細胞中のNICDのレベルを示すプロットである。
【図4】図4は、非接触培養条件下のLTC−ICアッセイを示すグラフである。
【図5−1】図5aは、PTHの非存在下又は存在下に於けるC57B1/6間質拡大のLTC−ICアッセイを示すグラフである。 図5bは、アルカリホスファターゼ陽性細胞を示す写真である。 図5cは、PTHの非存在下又は存在下に於けるLTC−ICの阻害を示すグラフである。
【図5−2】図5dは、疑似注射及びPTH注射したマウスに於ける、骨髄中のlinSca−1c−Kit細胞の百分率を示すグラフである。 図5eは、疑似注射及びPTH注射したマウスに於ける、骨髄単核細胞中のLTC−ICsの増加を示すグラフである。 図5fは、疑似注射及びPTH注射したマウスに於ける、骨髄中のCD45.2細胞の百分率を示すグラフである。 図5gは、疑似注射及びPTH注射したマウスに於ける、骨髄単核細胞中のCFU−Csを示すグラフである。
【図6】図6は、疑似注射及びPTH注射したマウスの生存率を示すプロットである。
【図7−1】図7A〜Cは、処置手順(図7A)及び化学療法、PTH処置及びG−CSF処置後の骨髄中のHSC分析(図7B及び7C)を描いている。
【図7−2】図7A〜Cは、処置手順(図7A)及び化学療法、PTH処置及びG−CSF処置後の骨髄中のHSC分析(図7B及び7C)を描いている。
【図7−3】図7A〜Cは、処置手順(図7A)及び化学療法、PTH処置及びG−CSF処置後の骨髄中のHSC分析(図7B及び7C)を描いている。
【図8】図8は、PTHのアミノ酸ペプチド誘導体、Leu27cyclo[Glu22−Lys26]−hPTH(1−31)−NH (Ostabolin−C (登録商標))の構造を描いている(SEQ ID NO:1)。
【図9】図9aは、総細胞集団中でのGFP細胞の追跡を示すグラフである。 図9bは、白血病(GFP+)細胞の骨髄中の時間経過による(上図)及び末梢中の時間経過による白血病芽球10個当たりの百分率を棒グラフである。
【図10】図10aは、「ニッチを刺激した」動物於ける白血病細胞生育検討の概略図である。 図10bは、上記検討の骨髄移植及び採取後にスコアしたGFP+細胞の百分率を示す棒グラフである。 図10cは、移植した疑似処置動物対PTH処置動物の10ミクロン骨切片の組織画像である。
【図11】図11は、疑似処置動物対PTH処置動物で測定した、HSCの6倍増加及び増加なしによって、変化しなかった白血病細胞阻害効果を示す棒グラフである。
【図12】図12aは、骨芽細胞/C1498/GFP白血病細胞の共培養実験の概略図である。 図12bは、CD45及びPTH受容体に基づいて単離した骨芽細胞を示すFACSプロットである。 図12cは、骨芽細胞のCD45、PTH受容体集団のアルカリホスファターゼ染色である。 図12dは、骨芽細胞/C1498/GFP白血病細胞の更なる共培養実験の概略図である。 図12eは、繊維芽細胞のみ及び繊維芽細胞と骨芽細胞を存在させたときの総細胞数を示す棒グラフである。
【図13】図13aは、組み換えオステオポンチンの各種濃度と培養したときのアネキシン陽性細胞の百分率を示す棒グラフである。 図13bは、異なった培養条件下での白血病細胞の細胞数×10を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTH/PTHrP受容体を発現している対象の細胞中のPTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤の、造血幹細胞又は前駆細胞の産生を増加させるのに有効な量を投与することを含んでなる、増血細胞を必要とする対象に増血細胞を供給する方法。
【請求項2】
PTH/PTHrP受容体を発現する前記細胞が、骨芽細胞、リンパ網内系間質細胞及び骨芽細胞とリンパ網内系間質細胞の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PTH/PTHrP受容体を発現する前記細胞が、造血幹細胞又は前駆細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PTHが、PTH(1−84)、PTH(1−31)、PTH(1−34)、PTH(1−36)、PTH(1−37)、PTH(1−38)、PTH(1−41)、PTH(28−48)及びPTH(25−39)よりなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、癌に対する化学療法又は放射線療法を受けた、受けるであろう、又は併用して受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫及び白血病よりなる群から選択される疾患を有している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与された、投与されるであろう又は同時に投与されている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、機能的血液細胞の欠如により特徴付けられる疾患を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患が、血小板欠乏症である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患が、貧血である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記貧血が、再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血、ファンコニ貧血及び急性リンパ球性貧血よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が、好中球減少症である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、機能的免疫細胞の欠如により特徴付けられる疾患を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫細胞が、T又はBリンパ球である、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記疾患が、リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞及びAIDSよりなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、免疫抑制剤を投与された、投与されるであろう又は投与されている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、幹細胞の提供者である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
PTH/PTHrP受容体を発現している細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤の、間葉幹細胞の生育又は維持を支援するのに有効な量を接触させることを含んでなる、間葉幹細胞の生育又は維持を向上させる細胞集団の調製方法。
【請求項20】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞が、間葉幹細胞の直近に存在している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞が、骨、乳腺、皮膚、上皮、肺、泌尿生殖器及び胃腸の細胞から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤をインビトロで接触させる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤をインビボで接触させる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
間葉幹細胞の生育又は維持をインビトロで行う、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
間葉幹細胞の生育又は維持をインビボで行う、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
PTH/PTHrP受容体を発現している細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤の、上皮幹細胞の生育又は維持を支援するのに有効な量を接触させることを含んでなる、上皮幹細胞の生育又は維持を向上させる細胞集団の調製方法。
【請求項28】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞が、上皮幹細胞の直近に存在している、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞が、乳腺、皮膚、上皮、肺、泌尿生殖器又は胃腸から選ばれる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤をインビトロで接触させる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤をインビボで接触させる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
上皮幹細胞の生育又は維持をインビトロで行う、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
上皮幹細胞の生育又は維持をインビボで行う、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
PTH/PTHrP受容体を発現している細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤の、神経幹細胞の生育又は維持を支援するのに有効な量を接触させることを含んでなる、神経幹細胞の生育又は維持を向上させる細胞集団の調製方法。
【請求項36】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞が、神経幹細胞の直近に存在している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞が、星状細胞、乏突起膠細胞、グリア細胞、GABA性神経細胞、ドーパミン作動性神経細胞、及び小脳、終脳、間脳、中脳、髄質、脳橋、視床、海馬、三叉神経節又は軟髄膜の細胞よりなる群から選ばれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞を、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤をインビトロで接触させる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
PTH/PTHrP受容体を発現している前記細胞を、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤をインビボで接触させる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
神経幹細胞の生育又は維持をインビトロで行う、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
神経幹細胞の生育又は維持をインビボで行う、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤を得ることを、更に含んでなる、前項の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項19〜26の何れか一項に記載の方法に従って、間葉幹細胞の生育又は維持を向上させるためのキット、及び間葉幹細胞の生育又は維持を向上させるためにPTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤を使用することについての説明書。
【請求項46】
請求項27〜34の何れか一項に記載の方法に従って、上皮幹細胞の生育又は維持を向上させるためのキット、及び上皮幹細胞の生育又は維持を向上させるためにPTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤を使用することについての説明書。
【請求項47】
請求項35〜42の何れか一項に記載の方法に従って、神経幹細胞の生育又は維持を向上させるためのキット、及び上皮幹細胞の生育又は維持を向上させるためにPTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤を使用することについての説明書。
【請求項48】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項45〜47の何れか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記PTHが、PTH(1−84)、PTH(1−31)、PTH(1−34)、PTH(1−36)、PTH(1−37)、PTH(1−38)、PTH(1−41)、PTH(28−48)及びPTH(25−39)よりなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
工程が、
(a)PTH/PTHrP受容体を発現する細胞に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤を接触させること;
(b)工程(a)の薬剤に応答して、PTH/PTHrP受容体を発現する細胞により産生されるタンパク質又はタンパク質をコードするmRNAを採取すること;
(c)幹細胞又は前駆細胞に、工程(b)の1つ又はそれ以上のタンパク質を接触させること;
(d)幹細胞又は前駆細胞により示される生理学的効果を測定すること;及び
(e)前記生理学的効果に関連する1つ又はそれ以上のタンパク質を単離すること:
を包含し、当該生理学的効果が増加した幹細胞又は前駆細胞の複製を含有するところの、幹細胞又は前駆細胞の集団を増加させる細胞産生物を同定する方法。
【請求項51】
前記タンパク質が、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質又は糖タンパク質である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記幹細胞が、造血幹細胞、上皮幹細胞又は間葉幹細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
PTH/PTHrP受容体を発現する前記細胞が、リンパ網内系間質細胞、骨芽細胞、骨、乳腺、皮膚、上皮、肺、泌尿生殖器又は胃腸の細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
対象中のPTH/PTHrP受容体を発現する細胞の集団に、PTH/PTHrP受容体を活性化させる薬剤の、造血幹又は前駆細胞の集団を拡大させるのに有効な量を接触させて、これにより対象中の異常造血細胞に対する正常細胞の比率を増加させることを含んでなる、その必要とする対象中の異常造血細胞に対する正常細胞の比率を増加させる方法。
【請求項56】
PTH/PTHrP受容体を発現する細胞の前記集団が、造血幹又は前駆細胞の集団の直近に存在している、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
PTH/PTHrP受容体を発現する細胞の前記集団が、骨芽細胞、リンパ網内系間質細胞及び骨芽細胞とリンパ網内系間質細胞の混合物よりなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記異常細胞が白血病細胞である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記白血病細胞がリンパ芽球性である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記異常細胞が前白血病細胞である、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記前白血病細胞が、骨髄異形成細胞である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
PTH/PTHrP受容体を活性化させる前記薬剤が、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬である、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記対象が、白血病に罹っているか又は罹るリスクがある、請求項55に記載の方法。
【請求項64】
前記白血病が慢性である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記慢性白血病が、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記白血病が急性である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記急性白血病が、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
対象に、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬の、正常な造血幹及び前駆細胞の量を増加させるのに有効な量を投与し;そして
白血病細胞又は前白血病細胞の量を減少させ;
これにより、白血病に罹っているか又は罹るリスクのある対象を治療すること;
を含んでなる、白血病に罹っているか又は罹るリスクのある対象を治療する方法。
【請求項69】
前記白血病が慢性である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記慢性白血病が、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記白血病が急性である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記急性白血病が、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
対象に、PTH、PTH類縁体又はPTH/PTHrP受容体作動薬の、正常な造血幹及び前駆細胞の量を増加させるのに有効な量を投与し;そして
これにより、対象中の異常造血細胞の量を低減することを含んでなる、その必要とする対象中の異常造血細胞の量を低減する方法。
【請求項74】
前記異常細胞が白血病細胞である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記白血病細胞がリンパ芽球性細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記異常細胞が前白血病細胞である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記前白血病細胞が骨髄異形成細胞である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記対象が、白血病に罹っているか又は罹るリスクのある、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記白血病が慢性である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記慢性白血病が、慢性骨髄球性、慢性骨髄性又は慢性顆粒球性白血病である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記白血病が急性である、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記急性白血病が、急性リンパ芽球性白血病又は急性非リンパ芽球性白血病である、請求項81に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−521753(P2008−521753A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541280(P2007−541280)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/040477
【国際公開番号】WO2006/052991
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】