副鼻腔疾患を治療するための装置及び方法
上顎洞の排液及び/又は通気を改善するための装置及び方法、並びに上顎洞疾患を治療するための装置及び方法が記載される。スペーサ装置は、上顎洞の中の自然開口部又は人工開口部を介して埋め込まれる。一部の実施形態において、スペーサ装置は治療剤で充填され、該治療剤はその後、上顎洞疾患を治療するために所望の期間にわたって装置を出て行く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第12/639,919号(2009年12月16日出願)の優先権を主張し、該特許出願は同時係属中の米国特許出願第12/100,361号(2008年4月9日出願)の一部継続出願であり、該特許出願は米国仮特許出願第60/922,730号(2007年4月9日出願)の優先権を主張し、かつ該米国特許出願は米国特許出願第11/544,009号(2006年10月4日発行)(米国特許第7,419,497として発行)の一部継続出願であり、該米国特許出願は米国特許出願第11/234,395号(2005年9月23日出願)(米国特許第7,410,480号として発行)の一部継続出願であり、該米国特許出願は米国特許出願第10/829,917号(2004年4月21日出願)及び同第10/912,578号(2004年8月4日出願)(米国特許第7,361,168号として発行)の一部継続出願である。以上に列挙した各特許及び特許出願の完全な開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、一般に、医療装置及び方法に関し、より詳細には、上顎洞開口部の開通性を維持する及び/又は上顎洞の症状を治療するための物質を送達するための埋め込み型装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトでは、副鼻腔は、主として前頭骨、篩骨、蝶形骨及び上顎の洞腔である、数対の右及び左の洞腔(sinus cavities)を含む。これらのうち、上顎洞は最も大きく、副鼻腔感染症を最もよく発症する部位である。
【0004】
上顎洞は、鼻管の両側の眼窩の下で頬骨の後方に位置している。通常、各上顎洞は、開口部である自然口を有しており、この開口部を通って、粘液が洞腔から出て鼻管の中に入り、かつ空気が洞腔に入る。上顎洞の自然口が、微生物感染、長期にわたるアレルギー性炎、又は解剖学的変形(例えば、鼻中隔彎曲)によって閉塞すると、粘液の流出及び空気の流入が損なわれ、それによって上顎洞炎として知られている病状を発生させる場合がある。それほど多くはないが、各上顎洞の真下に位置する上顎臼歯又は小臼歯に影響を及ぼす歯の疾病が、上顎洞炎を引き起こす場合がある。
【0005】
前頭洞は、前額部の両側に眼窩と隣接して又はその上方に存在する。右及び左前頭洞は洞中隔によって分割されている。各前頭洞は、洞底の後内側面に形成される自然開口部(即ち、口(ostium))を有する。ほとんどの患者では、前頭陥凹として知られる狭い解剖学的副室が、前頭洞口と鼻腔との間に延びている。前頭陥凹は、粘膜組織で覆われた骨構造である。前頭陥凹の前縁は、鼻堤細胞の後壁によって形成され、前頭陥凹の内側面は、篩及び篩板の外側板に関連している。粘液は、通常、前頭陥凹を通って前頭洞口から流れ出て鼻腔に流れ込む。口及び前頭陥凹は、組み合わされて前頭洞流出路(FOT:frontal outflow tract)と呼ばれることもある。多くの個体において、FOTは比較的長い通路である。急性前頭洞炎を患う患者では、FOTが炎症を起こして閉塞される場合あり、それによって、前頭洞腔からの自然排出が妨げられて、前頭洞腔及び関連する篩骨蜂巣内で感染性微生物が繁殖可能となる。急性前頭洞炎は、時として頭蓋内の合併症及び/又は眼の合併症を伴う。前頭洞炎が原因であることが知られている眼の合併症としては、血栓症、静脈血栓症、蜂巣炎(cellulites)、及び眼窩内膿瘍が挙げられる。ポット腫脹性腫瘍として知られる眼窩内膿瘍の一種は、前頭骨を超えて腫れた多量の軟組織を伴う。前頭洞炎に伴う頭蓋内合併症としては、髄膜炎、脳膿瘍、硬膜外蓄膿、硬膜下膿瘍、及び脳蓄膿症(cerebral empyema)が挙げられる。
【0006】
上顎洞又は前頭洞炎を、薬物療法(例えば、抗生物質、充血除去剤、及びステロイドのスプレー式点鼻薬)で成功裏に治療することができない場合、外科手術又はカテーテルを使用したインターベンションが行われることがある。副鼻腔炎の治療に対する外科的アプローチとしては、内視鏡下機能的副鼻腔手術(FESS:functional edoscopic sinus surgery)があり、その場合、洞の排液及び通気を改善するために、内視鏡及び種々の外科用器具が鼻孔を通して挿入され、骨及び軟組織を切断及び/又は除去するのに使用される。近年、カテーテルを使用したアプローチは、典型的なFESS手術における骨及び軟組織の切断及び除去の代用として開発されてきた。こうしたカテーテルを使用したアプローチでは、バルーンカテーテルのバルーンなどの拡張器が、副鼻腔の自然口又は流出路にうまく動かし入れられて、自然口を拡張するために使用される。上顎洞炎の治療に用いることができるこのようなカテーテルを使用した手技及び関連装置の例は、これらの全開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、米国特許第7,316,168号;同第7,500,971号;同第7,419,497号;同第7,462,175号;及び同第7,410,408号;及び米国特許出願公開第2006/0004286号;同第2006/0063973号;同第2006/0210605号;同第2007/0129751号;同第2007/0135789号;同第2007/0167682号;同第2007/0208252号;同第2007/0208301号;同第2007/0293727号;同第2008/0097154号;同第2008/0097239号;同第2008/0097295号;同第2008/0097514号;同第2008/0097515号;同第2008/0097516号;同第2008/0103361号;同第2008/0103521号;同第2008/0119693号;同第2008/0125626号;同第2008/0154250号;同第2008/0195041号;同第2008/0228085号;同第2008/0234720号;同第2008/0187098号;同第2008/0275483号;同第2008/0281156号;同第2009/0030274号;同第2009/0093823号;及び同第2009/0187089号に記載されている。
【0007】
外科手術又は前述のタイプのカテーテルを使用したインターベンションの代用として、又はこれらと併用して、特定の副鼻腔の中に薬物又は治療薬を送達するための種々の装置及び方法が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2004/0116958A1(Gopferichら)は、生分解性又は生物分解性でないポリマーで形成され、かつコルチコステロイド又は抗増殖剤などの作用物質で充填された管状スペーサを記述している。前頭洞に開窓を形成する外科手術を行った後、スペーサ(space)がかかる開窓の中に入れられ、次いで、作用物質がスペーサから排出される。更に、Tarasov D Iらの「Application of Drugs Based on Polymers in the Treatment of Acute and Chronic Maxillary Sinusitis」(Vestn Otorinolaringol.1978;6:45〜47)は、副鼻腔炎の治療を目的とした上顎洞腔の中への薬物の直接送達を報告している。更に、Deutschmann Rらの「A Contribution to the Topical Treatment of [Maxillary] Sinusitis Preliminary Communication」(Stomat.1976;DDR26:585〜92)は、上顎洞炎の治療を目的として、薬物(即ち、クロラムフェニコール)と混合した水溶性ゼラチンの上顎洞腔内への滴下注入を記述している。このゼラチン/薬物製剤は比較的短期作用であったので、著者は、治療効果を得るためには、2〜3日おきにこれを滴下注入する必要があると報告した。副鼻洞腔の中に薬物を徐々に送達するための装置及び方法は、米国特許第3,948,254号(Zafferoni);同第5,512,055号(Dombら);同第7,361,168号(Makowerら);同第7,410,480号(Muniら);及び同第7,419,497号(Muniら);並びに米国特許出願公開第2003/0185872A2号(Kochinke);同第2005/0245906A1号(Makowerら);同第2005/0043706(Eatonら);同第2006/0106361A1号(Muniら);同第2007/0005094(Eatonら)号;同第2008/0015540号(Muniら);同第2008/0287908号(Muniら);同第2008/0319424号(Muniら);同第2009/0028923号(Muniら);同第2009/0017090号(Arensdorfら);同第2009/0047326号(Eatonら);同第2009/0156980号(Eatonら)、及び同第2009/0227945号(Eatonら)、並びにPCT国際特許出願公開WO92/15286(Shikani)にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上顎洞又は前頭洞の排液及び/若しくは通気を改善することができる、並びに/又は上顎洞又は前頭洞の中に治療剤を送達することができる新しい装置及び方法を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、ヒト又は動物対象における上顎洞の疾患を治療する方法は、上顎洞内への開口部を形成する工程と、洞スペーサ装置を開口部を介して少なくともある程度まで前進させる工程と、スペーサ装置の少なくとも一部を上顎洞内に保持するために、スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、装置が収縮形状から拡張形状へと拡張するために、スペーサ装置の中に物質を導入する工程と、導入された物質がスペーサ装置を出て疾患を治療するのを可能にするために、スペーサ装置を対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、を含む。この方法の一部の実施形態において、上顎洞内への開口部は、洞の壁を貫通して鼻腔と上顎洞との間に形成される開口部であり得る。かかる開口部は、下鼻道又は中鼻道を通してペネトレータを挿入し、ペネトレータを使用して上顎洞の隣接壁を貫通させるなどによることを含む、任意の好適な手段によって形成され得る。この方法の他の実施形態において、上顎洞内への開口部は、口腔と上顎洞との間の開口部(例えば、頬側窩又は犬歯窩を貫通して形成された開口部)であり得る。この方法の一部の実施形態では、スペーサ装置が開口部を通して設置された後に、スペーサ装置が重力によって滑るのを防止するために、開口部は下向きの角度で形成され得る。
【0010】
本発明の別の態様において、上顎洞の壁を貫通する開口部を形成するのに使用可能であるペネトレータは、貫通遠位端と、シャフトに形成された約80度〜約110度の湾曲と、を有するシャフトを含んでもよい。一部の実施形態において、ペネトレータは、画像誘導システムと併用して使用され得るように、センサー、反射器、又は他の装置を備えてもよく、開口部の形成は、画像誘導手技として行われてもよい。一部の実施形態において、ペネトレータは、ペネトレータシャフトの湾曲の方向を示すために、ペネトレータの近位端上又はペネトレータの近位端近くにインジケータフラッグを有してもよく、それにより、操作者はフラッグを使用して、ペネトレータが対象の身体に挿入される間にペネトレータの湾曲の方向を判定又は確認することができる。
【0011】
一部の実施形態において、ペネトレータは管腔を有し得る。ペネトレータを使用して上顎洞の壁を貫通した後、装置又は物質は、ペネトレータの管腔を通して送達され得る。例えば、ガイド部材(例えばガイドワイヤー)は、ペネトレータの管腔を通り、開口部を介して、上顎洞の中に前進させられてもよい。その後、スペーサ装置はこのガイド部材を越えて前進させられてもよい。
【0012】
本発明の別の態様において、開口部内へのスペーサの配置を容易にするために、管状ガイド装置が使用され得る。そうした管状ガイド装置は、シャフトの遠位部に形成された約80度〜約110度、典型的には約90度〜約100度の湾曲を有する管状シャフトを備え得る。ペネトレータを使用して開口部が形成された後、ペネトレータは除去されることができ、次に、管状ガイドは、その遠位端が開口部内にある又は開口部と整列する位置まで進められることができる。次に、スペーサ装置は管状ガイドを通って進められることができ、スペーサ装置が開口部又は上顎洞内に位置付けられた状態のまま管状ガイドが除去されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様において、スペーサ装置は、中にスタイレットを挿入することができる管腔を有する細長い部材を備え得る。スタイレットは、細長いシャフトの管腔に挿入されることができ、中にスタイレットが位置決めされたスペーサは、次に、開口部を介して進められ得る。その後、スタイレットは除去されることができる。スタイレットは、近位端と、遠位端と、近位端上のハブ(例えば、ルアーハブ)とを有する細長いシャフトを備え得る。スタイレットのシャフトの直径は、連続的に先細であってもよく、又は、近位端から遠位端に向けて徐々に小さくなる直径の一連の領域を含んでもよい。
【0014】
一部の実施形態において、スペーサは、細長いシャフトと拡張可能なリザーバ(例えば、バルーン)とを備えて得る。拡張可能なリザーバは、リザーバが上顎洞に埋め込まれる間に、リザーバに導入された物質がリザーバから排出される(又は「出る」)ように構成され得る。このタイプのスペーサ装置の例としては、Acclarent,Inc.(Menlo Park,California)から市販されているRelieva Stratus(商標)Microflowスペーサ、並びに、それらの全開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、米国特許第7,361,168号;同第7,410,480号、及び同第7,419,497号、並びに米国特許出願第12/100,361号及び同第12/341,602号に記載されているものが挙げられる。
【0015】
スペーサ装置のリザーバは、上顎洞壁に形成された開口部を介する送達を目的として、最初は比較的小さな断面輪郭を有し得る。その後、流体(例えば、生理食塩水)及び/又は作用物質(例えば、薬物、生物学的物質、若しくは他の治療剤)がリザーバに導入されることができ、リザーバをその場で拡張させる。少なくとも一部の実施形態において、リザーバは、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張するように構成されてもよい。リザーバの透過性は、物質がリザーバを出るのに望ましい速度及び時間に応じて様々であり得る。例えば、一部の実施形態において、リザーバは、物質が約14日〜約21日の間リザーバから出続けるように構成され得る。
【0016】
スペーサ装置は、少なくとも1つの位置保持部材を更に備えてもよく、この位置保持部材は、展開された後、隣接する解剖学的構造に当接、係合、又は結合して、リザーバを上顎洞内の位置に実質的に維持する。一部の実施形態では、位置保持部材は、縫合又はその他の連結装置(例えば、ステープル、クリップ等)によって装置を隣接する解剖学的構造に取り付けるための、縫合糸受け部材(例えば、ループ、スロット、バー等)を含み得る。これに加えて、又はこれに代えて、位置保持部材が隣接する解剖学的構造に当接又は係合(例えば、摩擦係合又は加圧力)し、それによって装置が所望の埋め込み部位に実質的に保持されるように、位置保持部材は、装置から突き出る1つ以上の突出部(例えば、アーム)を含み得る。スペーサ装置の少なくとも一部が開口部を介して挿入されている間、そのような突出部は収縮位置に維持されることができ、その後、そのような突出部は拡張位置へと移行させられて、突出部は少なくとも1つの隣接する解剖学的構造と機械的に接触する。一部の実施形態では、そのような突出部は、第1及び第2の横方向に対向する突出部(例えば、ワイヤーループ又はウィング)を含んでもよく、該突出部は、拡張位置にあるときに、約14mm〜約20mmの直径に広がる。
【0017】
本発明の別の態様において、ヒト又は動物対象における上顎洞の疾患を治療するための方法は、上顎洞口を拡張する工程と、洞スペーサ装置(上記に要約されたようなスペーサ装置等)を、上顎洞口を介して少なくともある程度まで前進させる工程と、スペーサ装置の少なくとも一部を上顎洞内に保持するために、スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、装置を収縮形状から拡張形状へと拡張するために、スペーサ装置に物質を導入する工程と、導入された物質がスペーサ装置を出て疾患を治療するのを可能にするために、スペーサ装置を対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、を含む。篩骨漏斗の拡張を含み得る上顎洞口の拡張は、拡張可能な拡張器(例えば、バルーン)を上顎洞口内に位置決めし、その後拡張器を拡張することによって行われてもよい。この拡張で用いることができる拡張装置及び方法の具体例としては、Acclarent,Inc.(Menlo Park,California)から市販の、Relieva(登録商標)洞ガイドカテーテル、Relieva(登録商標)洞バルーンカテーテル、及びRelieva Solo Pro(商標)洞バルーンカテーテル、並びに上記で組み込まれた米国特許及び米国特許出願公開に記載されている装置が挙げられる。
【0018】
更に本発明によると、前述の特性を有する装置、システム、及び方法が提供され、この特性は、前頭洞流出路の開通性の維持、並びに/又は前頭洞及び/若しくは前頭洞流出路への治療剤の送達を目的として具体的に設計される。
【0019】
種々の実施形態の更なる態様及び詳細が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】スペーサ装置とスタイレットとを組み合わせて含む物質送達システムの一実施形態の側面図。
【図1B】装置の拡張可能なリザーバに物質を注入している間の、図1Aのスペーサ装置の遠位端の断面図。
【図1C】装置の拡張可能なリザーバが物質で充填された後の、図1Aのスペーサ装置の遠位端の断面図。
【図2】図1Aのスタイレットの側面図。
【図3】図1Aのシステムと併用して使用可能なガイドカテーテルの側断面図。
【図4】種々の実施形態による方法を実施する際に使用可能な上顎挿入プローブ装置の側面図。
【図5A】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5B】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5C】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5D】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5E】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5F】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5G】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図6】上顎洞の口を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の別の実施形態を示す、上顎洞口の断面図。
【図7】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の別の実施形態を示す、上顎洞口の断面図。
【図8A】本発明の前頭洞ガイドカテーテルの側面図。
【図8B】図8Aの前頭洞ガイドカテーテルの上面図。
【図8C】図8Aの前頭洞ガイドカテーテルの近位端図。
【図9】本発明のスペーサ/物質送達装置の別の実施形態の側面図。
【図9A】図9の領域9Aの拡大図。
【図10A】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10B】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10C】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10D】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10E】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明、及びこれが参照する添付図面は、本発明の実施例又は実施形態の、必ずしも全てではないが一部のものを説明することを目的とするものである。記載される実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本明細書の発明を実施するための形態の内容及び添付図面は、本発明の範囲をいかなる形でも限定するものではない。
【0022】
スペーサ/スタイレットシステム:
図1Aを参照すると、一実施形態において、上顎洞を治療するためのシステム10は、埋め込み可能なスペーサ装置11とスタイレット40の組み合わせを含むことができる。(図1Aではスタイレット40のハブ42だけが可視であるが、図2に更なる詳細が提供されている。)システム10の一部の実施形態は、上顎挿入ガイド50(図3)及び/又は上顎挿入プローブ60(図4)を更に含んでもよい。
【0023】
一実施形態において、スペーサ装置11は、近位シャフト部分12aと遠位シャフト部分12bとを含む細長い軟性カテーテルシャフト12を備え、近位シャフト部分12aと遠位シャフト部分12bとは、分離マーカー15の位置又はシャフト12に沿った他の場所で互いに切り離されることができる。近位側シャフト部分12a及び遠位シャフト部分12bは、同じ又は異なる材料で形成されてよく、同じ又は異なる寸法(例えば、直径、壁厚など)を有してよい。例えば、一部の実施形態において、近位シャフト部分12aは、ポリアミドなどの好適な生体適合性材料で作製されてもよい。一部の実施形態では、遠位シャフト部分12bを、ナイロンなどのより可撓性の高い生体適合性材料で形成することができる。管腔13は、シャフト部分12a、12bを通って連続して延び、その遠位端にはプラグ23が装着される。プラグ23は、管の閉鎖端部、エンドキャップ、管腔13の端部内の塊状物、又は他の任意の好適な流れ遮断部材といった、任意の好適な閉鎖部材を含み得る。図面に示される具体例では、プラグ23は、管腔13の遠位端の内部に配置された生体適合性のポリマー接着剤からなるものである。
【0024】
拡張可能なリザーバ14は、収縮形状で遠位シャフト部分12bの遠位端近くに装着される。リザーバ14の詳細は図1B及び図1Cに見られる。図のように、この実施形態では、リザーバ14は、開口部31が形成された円筒状の側壁を有するバルーンからなるものである。リザーバ14は任意の好適な生体適合性材料で形成されてもよく、一部の実施形態では、ナイロン12などの非柔軟性又は半柔軟性の材料で形成されたバルーン備えてもよい。リザーバ14の寸法、リザーバの数(例えば2個以上)、並びに開口部31の数及びサイズは、意図される埋め込み部位並びに/又は送達される物質の有効性、粘度(又は粒径)及び/若しくは他の性質に基づいて様々であり得る。例えば、篩骨洞炎を治療するために、篩骨洞切開チャネルに通されて、篩骨蜂巣内に配置されることが意図されているスペーサ装置11の実施形態では、リザーバ14は、約0.5cm〜約3.5cm、典型的には約2cmの長さ、及び完全に拡張された場合に、約0.1cm〜約0.5cm、典型的には約0.3cmの直径を有し得る。種々の実施形態において、リザーバ14は、約50〜約5000個の開口部を有することができ、各開口部は、約5ミクロン〜約80ミクロンの直径を有し得る。一実施形態において、例えば、リザーバ14は、リザーバ14の側壁に形成された、直径約20ミクロンの約2200個のレーザー切断された開口部31を備える。開口部31は、リザーバ14に沿って1つの列から次の列へと互い違いにされることができ、リザーバ14の傾斜した又はテーパの部分にも開口部が存在し得る。
【0025】
種々の実施形態において、所望の治療薬又は薬物を所望の速度で所望の期間にわたって送達するために、リザーバ14を使用することができる。例えば、一実施形態では、リザーバ14を使用して、40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液、USP(Kenalog(登録商標)−40、Bristol−Myers Squibb,Somerville,New Jersey)を約0.10mL送達することができる。1日当たり約100μgのトリアムシノロンが14日にわたってこの実施形態のリザーバ14を出て行くことになる。
【0026】
微生物感染の治療のために使用する場合、リザーバ14を使用して、好適な抗菌剤(例えば、抗生物質又は抗真菌剤)を、単独で又はコルチコステロイドなどの消炎剤と組み合わせて送達することができる。例えば、真菌性上顎洞炎を患う患者の場合、このリザーバ14を使用して、PfizerよりAmphocin(登録商標)抗真菌剤として販売されている、0.3〜1.5mg/kgのリポソーム又は非リポソームアンフォテリシンBなどの抗真菌剤を送達することができる。全身投与されたアンフォテリシンは、典型的には、血流から粘膜を通過する分配(逆もまた同様)が限られている。この物質送達スペーサ装置11を用いれば、アンフォテリシンが有害な真菌が存在する粘膜内に局所的に放出されることができ、薬物が繊毛作用によって副鼻腔に分配される際に、薬物の治療上の有効濃度が粘液中で維持され得る。しかしながら、相当量のアンフォテリシンが副鼻腔粘膜から実質的に吸収されないため、腎毒性などのアンフォテリシンの望ましくない全身作用の可能性が回避される。更に、このリザーバ14は、溶液のみならず懸濁液を周囲の解剖学的構造に送達することが可能である。このことは、多くのステロイドが懸濁液として提供されることから、ステロイドの送達に特に有用である。
【0027】
また、リザーバ14は、拡張後に空間を占拠する装置(例えば、ステント)としての機能を果たすことができ、隣接する解剖学的構造にそれ自体が摩擦係合して、所望の埋め込み部位にある程度の保持力を提供することができる。リザーバ14のこうした側面は、リザーバ14上に表面突起を設けることによって更に促進することができる。空間占拠機能を実行することだけが意図される用途では、リザーバ14は、活性治療薬を含有する溶液又は懸濁液でなく、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)で充填されてもよい。
【0028】
リザーバ14は、空の(例えば、収縮している又は圧縮されている)ときに直径が比較的小さいという利点も有しているので、容易に挿入又は取り出されることができる。リザーバ14が非柔軟性又は半柔軟性の材料で形成される実施形態では、リザーバ14は充填過程で大きく弾性変形することはないため、開口部31から所望の物質を放出させるためにその内容物に圧力を作用させることはない。むしろ、リザーバ14内の物質は、重力により、又は副鼻腔内の線毛作用によって継続的に移動させられている粘膜と接触することにより、開口部31から送出される。この非加圧式送達によって、所望の物質を数日間にわたって徐々に放出させることができる。
【0029】
特定の他の実施形態では、リザーバ14は小さな開口部31を有する柔軟又は弾性材料で形成することができるため、バルーン14を形成する材料は、開口部31から物質が出て行くにしたがって収縮し、これによりバルーン内部の圧力が維持される。一実施形態において、例えば、リザーバ14は、直径3.0〜3.5mm×長さ13mmであってもよい。リザーバ14は、ナイロン12で作製されてもよい。この実施形態では、リザーバ14の側壁には、約768個のレーザー切断された開口部31が形成されている。レーザー切断された開口部31のそれぞれの直径は、30ミクロンである。シャフト12の遠位端は、Dymax 204CTH接着剤を使用して、図のように塞がれている。シャフト12の遠位部は、外径約0.0711cm(0.028インチ)、内径約0.0508cm(0.020インチ)、及び長さ約17mmのナイロン12で形成されてもよい。エラストマースリーブ弁26は、長さ3mmのC−flex医療グレードTPE管で作製される。この管は、約0.0559cm(0.022インチ)の内径及び約0.0127cm(0.005インチ)の壁厚を有してもよい。遠位の放射線不透過性マーカー24及び近位の放射線不透過性マーカー22は、外径が約0.0864cm(0.034インチ)及び内径が約0.0762cm(0.030インチ)であるプラチナ−イリジウム合金のリングで作製されてもよい。シャフト12近位部は、外径約0.1570cm(0.0618インチ)、内径約0.1321cm(0.052インチ)、及び長さ約20cmのポリイミド管で作製され得る。一実施形態において、ハブ54(図3参照)は、Qosina(Edgewood,NY)部品番号41519により製造された透明ポリカーボネート製の雌ルアーハブである。一実施形態において、各保持ウィング18は、0.0218cm(0.0086インチ)の直径を有するNitinolワイヤーのベントループで作製される。保持ウィングは、装置の長手方向軸から80°〜90°で配向される。ニチノールワイヤーループを520℃で20分熱処理して、20℃のAfを生成する。物質送達装置11のこうした設計は、1日当たり約100μgのKenalog(登録商標)−40を14日にわたって送達する。
【0030】
一実施形態において、リザーバ14の外面は、生分解性マトリックス中に1種以上の治療剤を含有する破壊可能なコーティングでコーティングされてもよい。リザーバ14が充填されると、リザーバ14は拡張する。この拡張は破壊可能なコーティングを破壊し、その結果、コーティング片が周囲の解剖学的構造の中に入り、コーティング片はその後、治療剤を解剖学的構造の中に放出することになる。破壊可能なコーティングは、例えば、ゼラチン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、又は高分子量のポリエチレングリコール(PEG)などで形成され得る。このような破壊可能なコーティングは、典型的には、水性の環境中に溶解する。
【0031】
図1B及び図1Cを再度参照すると、一実施形態は、リザーバ14の充填を容易にするための開口28をカテーテルシャフト12の中に有する。弁26により、物質(又は物質の成分)はカテーテルシャフト12の管腔13からリザーバ14内に流入することができるが(図1Cを参照)、リザーバ14から管腔13内へと大きく逆流することはない(図1Bを参照)。弁26は、任意の好適な形式の逆止弁からなるものでよい。図に示される特定の実施形態では、弁28は、C−flex(登録商標)熱可塑性エラストマー(Consolidated Polymer Technologies,Inc.,Clearwater,Florida)で作製されたエラストマースリーブ弁からなる。
【0032】
一部の実施形態では、リザーバ14の近位端及び遠位端に印を付けるために、放射線不透過性マーカー22及び24が遠位カテーテルシャフト部分12bに取り付けられる。放射線不透過性マーカー22、24は、隣接する材料及び組織よりも明らかに放射線不透過性である材料で形成されるのが好ましい。この特定の非限定的な例では、マーカー22、24は、プラチナ−イリジウム合金で形成される。
【0033】
図1Aを再度参照すると、スペーサ装置11は、対象の身体の所望の位置に装置を保持するための位置保持部材を組み込んでもよい。図示されている非限定的な例では、位置保持部材は、縫合糸ループ20(例えば、小穴)並びに複数の突出部18(例えば、保持ウィング)を含む。縫合糸ループ20及び突出部18は、収縮されることができるように、柔軟な材料、可撓性材料、弾力材、弾性材料、又は超弾性材料(例えばニッケル−チタン合金(Nitinol)など)で形成され得る。突出部18は、図1Aに見られるように展開(例えば、外方に突出している)位置に付勢されていてもよいが、非展開(例えば、収縮している)形状に圧縮又は屈曲されている場合があり、この非展開形状では、突出部18は、カテーテルシャフト12の外表面と実質的に平行でありかつこれに隣接している。このようにして、以下により完全に記載されるように、これら突出部18は、スペーサ装置11の挿入及び位置決めの間、非展開位置に拘束されていてもよく、その後この拘束は取り除かれ(例えば、装置の遠位部が、ガイドカテーテル又はその他の管状送達ガイドの遠位端(disatl end)から外に出てきたときに)、突出部18がそれらの展開位置に跳ね上がる、ないしは別の方法で展開位置を呈することが可能となり、この展開位置において、突出部18は隣接する解剖学的構造と当接又は係合(例えば、摩擦係合)することになる。
【0034】
図に示される具体例では、突出部18はリザーバ14に近接して位置決めされており、正反対に対向する保持ウィングを形成するために曲げられた、直径0.0218cm(0.0086インチ)のワイヤー(例えば、ニッケル−チタンワイヤー)の2つのループの形態である。突出部18は、リザーバより遠位に、又は近位及び遠位の両方に位置決めされることも可能である。突出部18がニチノールの場合、冷却流体又は温流体を使用して、これらを「より柔軟な」状態に変化させることができる。各突出部18の長さは、意図された埋め込み部位に基づいて決定される。例えば、装置が幅約12mm未満の開口部を介して挿入される用途では、突出部18は、展開位置にあるときに約14mm〜約20mmの直径に広がるように寸法設定されてもよく、そうして、突出部18の付勢に打ち勝つような十分な抜き取り力が加えられるまで、開口部からスペーサ装置11が滑脱するのを防止する。突出部18の長さ及び形状はまた、スペーサ装置11が意図される埋め込み部位に最大限に保持されるのを確実にすると同時に、解剖学的構造にわずかな外傷を生じさせるように設計されてもよい。図の実施例では、突出部18を形成するワイヤーループ及び縫合糸ループ20は、ワイヤーをシャフトの周囲に巻き付け、シアノアクリレート、エポキシ、又は紫外線硬化性接着剤などの好適な接着剤を用いてワイヤーをシャフトに固定することにより、及び/又はポリマースリーブ又は熱収縮性部材をワイヤーのシャフト12の周囲に巻き付けられた部分の周囲に取り付けることによって、シャフト12の外表面に対して取り付けることができる。
【0035】
位置保持部材は、一実施形態では、ニチノールワイヤーで製造された小さな保持ウィングを備え、この保持ウィングは洞腔の内部で外方に跳ね上がるが、所望のときに装置を外して取り出すことができるように、比較的弱いバネ力を有する。有利に、スペーサ装置11は、外科手術環境ではなく、診療所で取り出されることができる。
【0036】
任意に、可撓性遠位部材17(図1A)は、シャフト12bの遠位端の延長であってもよく、又はシャフト12bの遠位端から延出してもよい。この任意の遠位部材17は、約1cm〜約5cmの長さを有してもよく、対象とする開口部を介したスペーサ装置11の通過を容易にすることができる。遠位部17が十分な長さのものである実施形態では、遠位部17は、スペーサ装置11が埋め込まれるときに洞腔内でらせん状又は回旋状になっていてもよく、したがって、スペーサ装置11が埋め込まれている間にスペーサ装置11が滑脱又は移動するのを防止する追加の手段として機能することができる。
【0037】
図2は、スタイレット40の詳細を示している。スタイレット40は、細長いシャフト44と、シャフト44の近位端にあるハブ部材42とを備える。シャフト44は、以下により完全に記載されるように、スペーサ装置11の管腔13の中に前進して、スペーサ装置11の挿入を容易にするように寸法設定される。スタイレットシャフト44は、任意の好適な材料で形成されることができ、かつ任意の好適な構造であることができる。この具体的な例では、シャフト44は、一連の領域44a、44b、44c、44d、44eに対して機械加工されたニッケル−チタン合金ワイヤーで形成されることができ、この一連の領域の直径は次第に小さくなっており、それにより、シャフト44の遠位部に、近位部よりも高い柔軟性がもたらされる。図に示される具体例では、シャフト44は、近位シャフト領域44aの直径約0.0838cm(0.033インチ)から、遠位シャフト領域44eの遠位端での直径約0.0254cm(0.010インチ)まで段階的に減少する。近位ハブ部材42は、スタイレット40がスペーサ装置11の中に完全に挿入されると、スペーサ装置11の近位ルアーコネクタ16と当接する又は中に固定されるように構成される。スタイレットシャフト44の長さは、ハブ42がスペーサ装置11の近位ルアーコネクタ16内にしっかり固定されると、スタイレットシャフト44の遠位端がプラグ部材23の近位面と接触する、又はその近くに位置付けられるような長さであってもよい。このようにして、スタイレットシャフト44は、挿入中に細長いスペーサ12の全て又はほぼ全てを占めることになる。
【0038】
図9及び図9Aは、例えば、前頭洞炎の治療する及び/又は外科手術若しくはバルーン拡張の後に前頭洞流出路の開通性の維持するために使用可能である、スペーサ装置200の別の実施形態を示す。この装置200は、細長い軟性カテーテルシャフト202と、カテーテルシャフト202の近位端にある翼付ハブ204と、カテーテルシャフト202の遠位端又はその近くにあるリザーバ206と、保持突出部208(例えば、拘束されていないと外方に跳ね上がるループ又はウィング)と、縫合糸ループ218とを備える。翼付ハブ204及びリザーバ206は、図1A〜図1Cの実施形態に関連して前述した翼付ハブ16及びリザーバ14と実質的に同じ構造のものであってもよい。カテーテルシャフト202の近位部212pは、カテーテルシャフト202の管腔を通過する物質の可視化を可能にするために、透明又は半透明の材料で形成されてもよい。縫合糸ループ218及び保持突出部208は、収縮されることができるように、柔軟な材料、可撓性材料、弾力材、弾性材料、又はニッケル−チタン合金(ニチノール)などの超弾性材料で形成され得る。保持突出部208は、図9に見られるように展開(例えば、外方に突出)位置に付勢されることができるが、ガイドカテーテル管腔を通って挿入されている間は、典型的には、非展開(例えば、収縮している)形状に拘束されており、この非展開形状では、保持突出部208は、カテーテルシャフト202の遠位部212dの外表面と実質的に平行でありかつこれに隣接している。図9Aの拡大図に見られるように、この実施例では、両方の保持突出部208は一体構造とされており、直径0.0218cm(.0086インチ)の材料(例えば、ニッケル−チタンワイヤー)の単一部位を輪にして、保持突出部208を含む2つの突出したループと、収縮性の管状のシース222の適用によるなどの任意の好適な手段によって、カテーテル本体202の遠位部212dに固定されているワイヤーの中間部分と、を形成することによって、形成されてもよい。一部の実施形態では、縫合糸ループ218もまた、環状の保持突出部208と同じ材料(例えば、ニッケル−チタンワイヤー)の部分から形成されて、保持突出部208と同様に縫合糸ループ218も単一の単体構成に形成されることができ、この単一の単体構成は、単一収縮性シース22などの単一アタッチメントによって、カテーテルシャフト202の遠位部212dに固定され得る。各保持突出部208の長さは、意図される埋め込み部位に基づいて決定される。例えば、リザーバ206が成人の前頭洞に埋め込まれる予定である用途では、保持突出部が完全に拘束から解かれて拡張したときに、少なくとも約8mm、典型的には約8mm〜約20mmの直径に広がるように、保持突出部は正反対に対向する方向に拡張してもよい。これにより、保持突出部は、前頭洞の内壁に摩擦により当接及び/又は係合するのが可能となり、保持突出部208の外方への付勢に打ち勝つような十分な抜き取り力が加えられるまで、リザーバ206が前頭洞から滑脱するのが防止される。他の実施形態と同様に、突出部18の長さ及び形状は、装置200の埋め込まれた部分が意図される埋め込み部位に最大限に保持されるのを確実にすると同時に、解剖学的構造にわずかな外傷を生じさせるように、具体的に寸法設定及び成形されてもよい。成人の前頭洞に配置するのを目的とした実施形態では、カテーテル本体202は、約200mm〜約500mmの範囲内の長さを有してもよい。図面に示される具体例では、カテーテル本体202の長さは290mmである。
【0039】
更に、図9に示される実施例において、スペーサ装置200は、装置の挿入及び適切な位置決めを容易にするために、直接可視化及び/又は内視鏡視覚化によって可視であるマーカーを含む。これらマーカーは、カテーテルシャフト202の近位部212pに形成された近位マーカー210(パッド印刷などによる)、及びカテーテルシャフトの遠位部に形成された内視鏡的遠位マーカー216を含む。更に、着色された、ないしは別の方法で視覚的に区別可能な切断領域214が、遠位カテーテルシャフト212dの埋め込み手順の間に切断されることが意図される部分に形成されてもよい。一部の実施形態において、この視覚的に区別可能な切断領域214は、鼻の粘液及び鼻腔内にあり得る任意の血液の自然なピンク色又は赤色との明瞭なコントラストを形成する、明るい青色又は任意のその他の色であってもよい。図に示される具体例では、視覚的に区別可能な切断領域の長さは約7.5cmである。図10A〜図10Eの手順実施例に関連して以下により詳細に説明されるように、マーカー210及び216は、保持突出部208がかかるガイドカテーテルの遠位端から外に出てきた時点を判定するために、ガイドカテーテルの他のマーカー又は構造的目印と組み合わされて用いられてもよい。
【0040】
上顎挿入ガイド
図3は、上顎洞の内壁に形成された開口部を介してスペーサ/スタイレットシステム10を挿入するのを容易にするための上顎挿入ガイド50の一実施形態を示す。ガイド50は、その近位端PEに近位ハブ54を有する細長いシャフト52と、まっすぐな近位部PPと、湾曲した遠位部DPと、を含む。任意の好適なシャフト構成体を使用することができる。この具体的な例では、シャフト52の近位部PPは、外管56と、内管58と、内管58の内壁に位置するインナーライナー59と、を備える。この例の外管56は、約0.3404cm(0.134インチ)の外径及び約85mmの長さを有するステンレス鋼ハイポチューブで形成されている。この例の内管58は、約0.2210cm(0.087インチ)の内径を有するナイロンチューブからなる。ライナー59は、薄いポリテトラフルオロエチレン(polytetrofluoroethylene)(PTFE)チューブからなる。シャフト52遠位部DPは、図のように、内管58及びライナー59の外管56の遠位端から突き出てこれを超える部分を含む。任意に、この遠位部DPの最遠位の3〜4mmは、装置の挿入中の組織の外傷又は磨耗を防止するために、内管58の材料よりも柔軟な材料(例えば、エラストマー又はヒドロゲル)で形成されてもよい。この非限定的な例では、シャフト52の遠位部DPは、約22mmの長さ、約0.2769cm(0.109インチ)の外径、及び約0.2210cm(0.087インチ)の内径を有する。曲率半径が約0.3〜約0.375である約90度〜約100度の湾曲部が、シャフト52の遠位部DPに形成される。内管58は、外管56の管腔を通って延在し、インナーライナー59の遠位部は、外管56の遠位端から突き出る。内管58の遠位端から突き出るこのインナーライナー59の遠位部は、曲がって所望の湾曲を形成する。この非限定的な例では、内管58の突き出ているインナーライナー59は、所望の曲線形状を維持するのに十分なだけ剛性であるが、使用中の解剖学的構造への不必要な外傷を防ぐ又は軽減するのに十分なだけ可撓性である。更に、インナーライナー59は、所定の位置に挿入及び動かし入れられているときに、ユーザーが隣接する鼻傍構造を意志的にずらすことができるように、十分に剛性である。
【0041】
ガイド装置50の使用中の位置決めを容易にするために、このガイド装置50上に1つ以上の放射線不透過性マーカー又は可視マーカーが提供されてもよい。上顎挿入プローブ:図4は、上顎洞の壁を貫通する開口部を形成するために使用することができる上顎挿入プローブ60の例を示している。このプローブ60は、近位端のハンドピース64と、遠位端の鋭い遠位先端68とを有する細長い剛性シャフト62を備えている。約90度〜約110度の湾曲66が、細長いシャフト62の遠位先端の近くに形成されている。
【0042】
前頭洞挿入ガイド:
図8A〜図8Cは、図9のスペーサ装置200と共に使用するように特別に設計された前頭洞挿入ガイド100の例を示す。このガイドは、シャフト102の近位端に翼付ルアーハブ104を有する、細長くて湾曲した管状カテーテル102を含む。ウィング104a、104bは、図8Cの端面図から分かるように、シャフト102が湾曲する方向に整列され得る。カテーテルシャフト102は、まっすぐな近位部106と、曲率半径が約90度の湾曲した遠位部108とを有する、透明又は半透明の管を備える。カテーテルシャフト102のまっすぐな近位部106は、金属製ハイポチューブなどの剛性管の一部によって囲まれており、それによりまっすぐな近位部106は湾曲した遠位部108よりも剛性になっている。第1の可視及び/又は放射線不透過性マーカー112は、ガイドカテーテル100の遠位部108上に、カテーテルシャフト102の遠位端から既知の距離(例えば、2.5cm)の位置に形成される。第2の可視及び/又は放射線不透過性マーカー114は、遠位端に形成される。このガイド100の長さ並びにマーカー112、114の位置決めは、このガイドを通して挿入されることになるスペーサカテーテル上の他のマーカーの長さ及び位置決めと揃えられてもよい。例えば、図9に示されるスペーサ装置200は、このガイド100に対して寸法設定及び構成されて、スペーサカテーテル200がガイド100の管腔を通って挿入されているときに、操作者に明確な目安を提供することができる。例えば、
・スペーサカテーテル200のマーカー210の遠位端Dがガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なるとき、スペーサカテーテル100の遠位端が、ガイド100の遠位端とぴったり重なっていることを示し、
・スペーサカテーテル200のマーカー210の近位端Pがガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なるとき、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを示し、及び
・スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216が、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112の下に、又は他の何らかの所定の位置関係で位置付けられるとき、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを示す。
【0043】
少なくとも一部の実施形態では、放射線不透過性(radipaque)ストライプ又はバンドなどの画像形成可能なマーカーを、これら可視マーカーに加えて又はその代用として使用することができる。
【0044】
更に、ガイド100の遠位部108が透明又は半透明である実施形態では、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112とスペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216とは別々の色であってもよく、スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216とガイド100の可視マーカー112とが互いに間接整列している(例えば、一方が他方の上に重なっている)ときに、これらの色は組み合わさって、第3の色を形成してもよい。例えば、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112は半透明の青であってもよく、スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216は黄色であってもよく、その結果、スペーサカテーテル200が、スペーサカテーテル200の黄色い内視鏡的マーカー216がガイド100の半透明の青いマーカー112の真下にきてこれと整列される位置まで進められると、これらの色の混合により緑色に見えることになり、それによって、マーカー112とマーカー216とが整列されて、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出てきたことを操作者に示す。
上顎洞炎の治療方法の実施例:
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(洞−鼻開口部を介したスペーサの配置)
図5A〜図5Gは、上顎洞MSの壁Wを通って開口部70を形成し、かつリザーバ14が上顎洞MS内にくるようにスペーサ装置11を埋め込むことによって、上顎洞炎を治療する方法の非限定的な例を示している。
【0046】
多くの対象において、上顎洞MSの内壁中部約3分の1は、下鼻道IMの外側壁としての機能も果たしている。この例では、上顎挿入プローブ60が鼻孔を介して挿入され、上顎挿入プローブ60の鋭い遠位先端68が、上顎洞壁Wを形成する下鼻道IMの外側面と接触する位置まで、上顎挿入プローブ60が下鼻道IMを通って進められる。任意に、必要であれば、下鼻甲介ITが中間に置かれてもよい。しかしながら、たいていの対象において、使用される装置は、下鼻甲介ITの貫通破壊又は中央化(Medialization)を必要とせずにこの手技を実施するように寸法設定される。
【0047】
次に、上顎挿入プローブ60の鋭い遠位先端68は、図5Aに示されるように上顎洞壁Wを通って押し込まれ、そうして壁Wを貫通する開口部70(図5B)を形成する。次に、図5Bに示されるように顎挿入プローブ60が除去される。その後、図5Cに見られるように、上顎送達ガイド50が下鼻道IMに挿入されて、遠位端DEが上顎洞MSの壁Wの開口部70内にある又は開口部70と整列する位置まで進められる。その後、図5Dに示されるように、スタイレットシャフト44が中に挿入されたスペーサ装置11は、リザーバ14及び保持部材18が洞腔に入るように、ガイド50を通して進められる。保持部材18がガイド60の管腔から外に現れると、保持部材18はそれらの展開位置まで外方に跳ね上がる。そのように展開されると、保持部材18は、開口部70の直径よりも大きな幅に広がり、それによってスペーサ装置11が上顎洞MSから滑脱するのを防止する。その後、スタイレットシャフト44は逆戻りし、スタイレット40が除去される。
【0048】
図5Fに見られるように、次に、注射器又はその他の注入装置がスペーサ装置11のルアーコネクタに取り付けられ、所望の物質をリザーバ14に注入するために使用されて、リザーバを拡張させる。場合によっては、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)が用いられてもよい。別の場合では、作用物質を含有する流体が注入されてもよく、それにより、作用物質はその後、所望の期間にわたりリザーバ14から上顎洞MSに流れていく。例えば、トリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液、USP(Kenalog(登録商標)−40、Bristol−Myers Squibb,Somerville,New Jersey)を送達するために使用する場合、リザーバ14は、約16mmの全長及び約13mmの作業長さ(即ち、円筒状の側壁14cの長さ)を有してもよく、3.0〜3.5mmである完全に拡張した直径まで拡張可能であってもよい。リザーバ14の側壁に約768個のレーザー切断された開口部31が形成されてもよく、かかる開口部31のそれぞれの直径は約40ミクロンである。この特定のリザーバの構造は、0.31〜0.35mLの40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液で充填された場合、1日当たり約100μgの用量のトリアムシノロンアセトニドを28日間にわたって上顎洞(MS)の中に送達する。
【0049】
図5Gに見られるように、所望の物質がリザーバに充填された後、近位シャフト部分12aは遠位シャフト部分12bから切断される、ないしは別の方法で切り離される。任意に、インプラントの位置決めを更に確実にするために、残っている遠位シャフト部分12bが、鼻の中の隣接する解剖学的構造に取り付けられてもよい。図5Gに示される非限定的な例では、これは、鼻中隔Sに縫合糸ループ20を縫合することによって達成される。
【0050】
装置12の埋め込まれた部分は、所定位置に所望の期間留まることができ、その後除去されることができる。例えば、長期にわたる上顎洞炎の治療目的でリザーバ14がステロイド及び/又は抗菌剤で充填される用途では、装置12の埋め込まれた部分は、作用物質がリザーバから出ていく状態で約14〜28日の間所定位置に留まるのが典型的には望ましい。一部の対象では、あらゆる作用物質が出て行ってリザーバ14から無くなった後も、スペーサ機能を遂行する(例えば、開口部70の開通性を維持する)ために、装置12の埋め込まれた部分を所定位置に留まらせてもよい。
【0051】
(実施例2)
(口の拡張を伴う又は伴わない上顎洞口を介したスペーサの配置)
本発明の別の実施形態では、図6に示されるように、スペーサ装置11は、自然口MOの拡張又は手術的矯正法を伴って又は伴わずに、上顎洞MSの上顎口MOを介して埋め込まれてもよい。
【0052】
各上顎洞は自然上顎洞口MOであり、自然上顎洞口MOを通って分泌物が上顎洞腔から鼻に流れ出る。この自然口は、軟組織(粘膜組織)で覆われた骨(この骨は通常は無傷で破壊されていない)の中の開口部によって形成される。一部の個体では、1つ以上の副口が存在している場合もある。上顎口の解剖学的位置のせいで、対象の頭部が直立しているときに、重力は通常、洞腔から粘液を排出させることはできない。したがって、洞腔から粘液を取り除くために、粘液の毛様体輸送が必要である。上顎洞腔は、通常、粘膜骨膜として知られる繊毛軟組織で覆われている。典型的には、洞腔底に由来する(originals)放射状又は星状のパターンの繊毛輸送粘液(cilia transport mucus)は、洞腔の前壁、内壁、後壁、外側壁、及び上部壁の上に放射状に広がり、かつ自然口(又は口)に集まる。粘液は、次に、自然口を通って鼻に流れ出る。更に、空気は、通常、この口を通って上顎洞腔に入る。自然口が閉塞する又は狭窄すると、粘液の正常な排液及び上顎洞腔の通気が損なわれ、結果として長期にわたる慢性副鼻腔炎が生じ得る。
【0053】
骨及び軟組織を切除して自然口を広げる洞手術が行われることがある。更に、上顎洞の自然口は、Balloon Sinuplasty(商標)(Acclarent,Inc.,Menlo Park,California)として知られる技術によって広げられることができ、この技術では、予備成形されたガイドカテーテルが鼻に挿入された後、バルーン拡張カテーテルがガイドカテーテルを通して前進される。バルーンカテーテルのバルーンは、上顎洞口内に位置付けられかつ膨らまされ、それによって自然口を拡張する。この拡張は、典型的には、上にある軟組織と共に口を画定する骨(即ち、無傷で破壊されていない骨)の破壊又はその他の移動を引き起こす。上顎口にバルーン拡張カテーテルを導入するために使用可能である上顎洞ガイドカテーテルは、Relieva(登録商標)洞ガイドカテーテル(Acclarent,Inc.,Menlo Park,California)として市販されている。こうした上顎ガイドカテーテルの構造及び形状に関する詳細、並びに上顎洞口のバルーン拡張に関する詳細は、上記で組み込まれた米国特許及び米国特許出願公開に見出される。この実施例で記載の通り、上顎洞ガイドカテーテルは、本発明のスペーサ装置11の上顎洞口を介した配置をガイドするためにも使用され得る。
【0054】
本発明のこの実施形態では、市販のタイプ及び前述のような上顎洞ガイドは、中鼻道MMの中に前進されて、上顎洞口の中に又は上顎洞口と整列して位置付けられる。任意に、バルーン拡張カテーテル(例えば、Relieva Solo Pro(商標)洞バルーンカテーテル、Acclarent,Inc.,Menlo Park,California)を上顎洞ガイドを通して前進させ、口の中に位置付け、口を拡張するために使用した後、上顎洞ガイドを適所に残した状態で除去してもよい。あるいは、場合によっては、上顎洞ガイドカテーテルの配置の前に上顎口を外科的に広げるために、外科手術が行われてきた。
【0055】
スタイレットシャフト44が中に挿入されているスペーサ装置11は、上顎洞ガイドカテーテルを通して前進させられ、そうしてリザーバ14及び保持部材18が上顎洞MSに入る。保持部材18がガイドカテーテルから外に出ると、保持部材18は展開位置へと外方に跳ね上がる。そのように展開されると、保持部材18は、自然口又は広げられた上顎口の直径よりも大きな幅に広がり、それによってスペーサ装置11が上顎洞MSから滑脱するのを防止する。その後、スタイレットシャフト44は逆戻りし、スタイレット40が除去される。次に、注射器又はその他の注入装置がスペーサ装置11のルアーコネクタに取り付けられ、所望の物質をリザーバ14に注入するために使用されて、図6に見られるようにリザーバを拡張させる。場合によっては、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)が用いられてもよい。別の場合では、作用物質を含有する流体が上述のように注入されてもよく、それにより、作用物質はその後、所望の期間にわたりリザーバ14から上顎洞MSに流れていく。
【0056】
所望の物質がリザーバ14に充填された後、スペーサ装置11の近位シャフト部分12aは遠位シャフト部分12bから切断される、ないしは別の方法で切り離される。任意に、インプラントの位置決めを更に確実にするために、残っている遠位シャフト部分12bが、鼻の中の隣接する解剖学的構造に取り付けられてもよい。図6に示される非限定的な例では、これは、鼻中隔Sに縫合糸ループ20を縫合することによって達成される。
【0057】
装置12の埋め込まれた部分は、所定位置に所望の期間留まることができ、その後除去されることができる。上で説明したように、長期にわたる上顎洞炎の治療目的でリザーバ14がステロイド及び/又は抗菌剤で充填される用途では、装置12の埋め込まれた部分は、作用物質がリザーバから出ていく状態で約14〜28日の間所定位置に留まるのが典型的には望ましい。一部の対象では、あらゆる作用物質が出て行ってリザーバ14から無くなった後も、スペーサ機能を遂行する(例えば、開口部70の開通性を維持する)ために、装置12の埋め込まれた部分を所定位置に留まらせてもよい。
【0058】
(実施例3)
(犬歯窩又は頬側窩の中の開口部を介したスペーサの配置)
口腔と上顎洞との間に開口部(例えば、穿刺路)を形成する技術が確立されている。典型的には、こうした技術は、犬歯窩又は頬側窩を通って上顎洞腔に入る開口部を形成することを含む。図7に示される例では、開口部は、歯Tの上方の犬歯窩CFを貫通して形成され、その中にスタイレットシャフト44が挿入されているスペーサ装置11は、リザーバ14及び保持部材18が洞腔に入るように、開口部を通って前進される。これは、まっすぐな剛性管などの管状ガイドを犬歯窩の開口部に挿入した後、スペーサ装置11/スタイレットシャフト44をこの管状ガイドを通して前進させることによって容易になり得る。保持部材18がガイド60の管腔から外に出ると、保持部材18はそれらの展開位置まで外方に跳ね上がる。そのように展開されると、保持部材18は、犬歯窩の開口部の直径よりも大きな幅に広がり、それによってスペーサ装置11が上顎洞MSから滑脱するのを防止する。その後、スタイレットシャフト44は逆戻りし、スタイレット40が除去される。
【0059】
次に、注射器又はその他の注入装置がスペーサ装置11のルアーコネクタに取り付けられ、所望の物質をリザーバ14に注入するために使用され、それによりリザーバを拡張させる。場合によっては、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)が用いられてもよい。別の場合では、作用物質を含有する流体が注入されてもよく、それにより、作用物質はその後、所望の期間にわたりリザーバ14から上顎洞MSに流れていく。例えば、トリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液、USP(Kenalog(登録商標)−40、Bristol−Myers Squibb,Somerville,New Jersey)を送達するために使用する場合、リザーバ14は、約16mmの全長及び約13mmの作業長さ(即ち、円筒状の側壁14cの長さ)を有してもよく、3.0〜3.5mmである完全に拡張した直径まで拡張可能であってもよい。リザーバ14の側壁に約768個のレーザー切断された開口部31が形成されてもよく、かかる開口部31のそれぞれの直径は約40ミクロンである。この特定のリザーバの構造は、0.31〜0.35mLの40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液で充填された場合、1日当たり約100μgの用量のトリアムシノロンアセトニドを28日間にわたって上顎洞(MS)の中に送達する。
【0060】
図7に見られるように、所望の物質がリザーバに充填された後、近位シャフト部分12aは遠位シャフト部分12bから切断される、ないしは別の方法で切り離される。任意に、インプラントの位置決めを更に確実にするために、残っている遠位シャフト部分12bは、鼻の中の隣接する解剖学的構造に取り付けられてもよい。図7に示される非限定的な例では、これは、歯Tの上方の頬粘膜に縫合糸ループ20を縫合することによって達成される。
【0061】
装置12の埋め込まれた部分は、所定位置に所望の期間留まってもよく、その後除去されてもよい。例えば、長期にわたる上顎洞炎の治療目的でリザーバ14がステロイド及び/又は抗菌剤で充填される用途では、装置12の埋め込まれた部分は、作用物質がリザーバから出ていく状態で約14〜28日の間所定位置に留まるのが典型的には望ましい。一部の対象では、あらゆる作用物質が出て行ってリザーバ14から無くなった後も、スペーサ機能を遂行する(例えば、開口部70の開通性を維持する)ために、装置12の埋め込まれた部分を所定位置に留まらせてもよい。
【0062】
前頭洞炎の治療方法の実施例:
(実施例4)
(前頭洞流出路を通したスペーサの配置)
図10A〜図10Eは、前頭洞FS内の副鼻腔炎を治療する目的で及び/又は前頭洞流出路FOTの開通性を維持するために、図8A〜図8Cの前頭洞ガイドカテーテル100を、図9〜図9Aのスペーサカテーテル200及び図2のスタイレット40と組み合わせて使用する方法の一例を示す。必ずしも全ての場合においてではないが、ある場合には、この方法は、前頭洞流出路の手術的矯正法又はバルーン拡張と併用して採用されてもよい。
【0063】
図10Aに示されるように、最初に前頭洞ガイド100が、内視鏡(図示せず)と共に鼻に挿入される。ガイドカテーテル100の遠位端が前頭洞流出路に導入され、遠位端が前頭洞FSに入った位置までガイド100が前進される。ガイドカテーテル100の第1の可視及び/又は放射線不透過性マーカー112が、カテーテルシャフトの遠位端から既知の距離(例えば、2.5cm)にあるので、これを参照点として使用して、ガイド100が十分に遠くまで進められてガイド100の遠位端が前頭洞FSの中にある時を操作者が知るのを助けることができる。第1の可視及び/又は放射線不透過性マーカー112を見やすくするために、適切な角度(例えば、75度)を有する内視鏡を使用してもよい。手術中に当初異なる角度の内視鏡が使用される場合には、前頭骨ガイドカテーテル100の挿入時に、及びこの手術中の挿入時以降は、操作者が内視鏡を切り替える必要がある又は切り替えることが望ましい場合がある。図10Aは、単独で挿入されたガイドカテーテル100が示されているが、スタイレット40が、中に挿入されているスペーサカテーテル200が、ガイドカテーテル100の管腔に予め挿入されてもよいこと、及びガイドカテーテル100、スペーサカテーテル200、及びスタイレット40が組み合わされて挿入されてもよいことを理解されたい。そのような場合には、スタイレット40は、典型的にはスペーサカテーテル200に挿入され、その後、スペーサカテーテル/スタイレットの組み合わせが、スペーサカテーテル200の近位マーカー210の遠位端Dがガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なるまで、ガイドカテーテル100の管腔の中に前進され、この重なり合いにより、スペーサカテーテル100の遠位端がガイド100の遠位端とぴったり重なっていることが示され、ガイドカテーテル100、スペーサカテーテル200、及びスタイレット40が単一体として対象の鼻に挿入される間、かかる位置が維持される。
【0064】
スタイレット40が中に挿入されているスペーサカテーテル200は、次に、ガイドカテーテル100の管腔を通って進められる(この例は図10Bに示されている)。この工程の間、操作者は、スペーサカテーテル本体202がガイドカテーテル100の近位端に進んでいる最中に、スペーサカテーテル本体202上のマーキングをモニタすることができる。スペーサカテーテル200にスタイレット40を任意に予め挿入することに関して上述したように、スペーサカテーテル200の近位マーカー210の遠位端Dが、ガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なっている場合、これは、スペーサカテーテル100の遠位端がガイド100の遠位端とぴったり重なっていることを示す。その後、スペーサカテーテル200のマーカー210の近位端Pが、ガイドカテーテルハブ104の近位縁に到達すると、これは、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを示す。この時点で、スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216が、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112の下に(即ち、整列して)又は他の何らかの所定の位置関係で位置付けられ、これにより保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことが示されたという内視鏡的判断によって、操作者は、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを確認することができる。
【0065】
図10Cに見られるように、ガイドカテーテル100は、ガイドカテーテル100全体が対象の身体の外にある位置まで後退され、スタイレット40が除去される。スタイレット40及びガイドカテーテル100が近位側に引き抜かれている間に、展開した保持部材208は、圧縮されたリザーバ206が洞腔から滑脱するのを防止するために、前頭洞壁と係合又は当接する。その後、注射器240又はその他の注入装置が、スペーサカテーテル200の近位ハブ204に連結され、図1の実施形態に関して前述されたのと同じ方法で、所望の物質が、カテーテル202を通ってリザーバの中に導入される。
【0066】
所望の物質がリザーバ206に充填された後、操作者は、縫合糸ループ218を鼻中隔又はその他の解剖学的構造に取り付けるために、縫合糸Sを定置する。更に、操作者は、はさみ又は何らかの他の好適な切断装置を使用して、カテーテル本体202の視覚的に区別可能な切断領域214内を横に切断し、カテーテル200のそのような横切断部位に近い部分は除去される。このようにして、図10D及び図10Eに示されるように、物質が充填されたリザーバ206は、前頭洞FS内に埋め込まれたままとなる。この物質は、所望の期間にわたってリザーバ206から流出又は排出され、その後、装置は、上顎洞手術及び図1の実施形態に関して上述されたように、身体から取り除かれる。
【0067】
本明細書で用いられる用語「物質」は、任意の実現可能な薬物、プロドラッグ、タンパク質、遺伝子治療製剤、細胞、診断用薬、造影剤又はイメージング剤、生物学的製剤等を含んで広義に解釈されるべきである。そのような物質は、結合形態又は遊離形態、液体又は固体、コロイド又はその他の懸濁液、溶液であってもよく、ガス又はその他の流体若しくは非流体であってもよい。例えば、微生物感染を治療又は予防するのが望ましい用途では、送達される物質は、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫薬、抗真菌剤等)、コルチコステロイド又はその他の抗炎症剤(例えば、NSAID)、鬱血除去剤(例えば、血管収縮剤)、粘液希釈剤(例えば、去痰剤又は粘液溶解剤)、アレルギー反応を予防又は改善する剤(例えば、抗ヒスタミン剤、サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、IgE阻害剤、免疫賦活剤)、血管収縮剤を含有する又は含有しない麻酔剤(例えば、エピネフリンを含有する又は含有しないキシロカイン)、鎮痛剤、組織による粘液分泌を引き起こすアレルゲン又はその他の物質、出血を止めるための止血剤、抗増殖剤、細胞毒性薬(例えばアルコール)、タンパク分子、幹細胞、遺伝子又は遺伝子治療製剤、重要な治療作用又は治療剤をコードするDNA又はmRNAなどのタンパク質又は核酸を坦持するウイルス・ベクターなどの生物学的薬剤、焼灼剤(例えば硝酸銀)等の薬剤として許容される塩又は剤形を含むことができる。
【0068】
本明細書で使用することができる抗菌剤のいくつかの非限定的な例としては、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、オセルタミビル、ザナミビル、アミノグリコシド抗生物質(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、及びトブラマイシン)、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、アンフォテリシンB、アンピシリン、アンピシリン/スルバクタム、アトバクオン、アジスロマイシン、セファゾリン、セフェピム、セフォタキシム、セフォテタン、セフポドキシム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セファレキシン、クロラムフェニコール、クロトリマゾール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ダプソーン、ジクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、フォスカネット、ガンシクロビル、ガチフロキサシン(atifloxacin)、イミペネム/シラスタチン、イソニアジド、イトラコナゾール、ケトコナゾール、メトロニダゾール、ナフシリン、ナフシリン、ナイスタチン、ペニシリンGなどのペニシリン、ペンタミジン、ピペラシリン/タゾバクタム、リファンピン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、チカルシリン/クラブラン酸、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、バラシクロビル、バンコマイシン、マフェナイド、スルファジアジン銀、ムピロシン、ナイスタチン、トリアムシノロン/ナイスタチン、クロトリマゾール/ベタメタゾン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ブトコナゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、微生物を分裂させる又は無能にする洗剤様化学物質(detergent-like chemicals)(例えば、ノノキシノール−9、オクトキシノール−9、塩化ベンザルコニウム、メンフェゴール、及びN−ドコサノール(docasanol));標的細胞への微生物付着を阻害する及び/又は感染性病原体の侵入を防ぐ化学物質(例えば、PC−515(カラギーナン)、Pro−2000、及びデキストリン2サルフェートなどの硫酸化重合体及びスルホン化重合体);レトロウイルスが細胞内で複製するのを防止する抗レトロウイルス剤(例えば、PMPAゲル);「植物抗体」として知られている植物から遺伝子操作された抗ウイルス抗体などの、病原体に対抗する遺伝子操作された又は天然の抗体;組織の状態を変化させ、それを病原体に対して敵対させる薬剤(例えば、粘膜のpHを変化させる物質)(例えば、Buffer Gel及びAcidform);過酸化水素又は病原微生物を殺す、又はその成長を阻止する他の物質の生成を引き起こす非病原性、つまり「扱いやすい」微生物(例えば、乳酸菌);参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第6,716,813号(Linら)に記載されているもののような抗微生物タンパク質又はペプチド、あるいは抗菌性金属(例えば、コロイダルシルバー)が挙げられる。
【0069】
これに加えて又はこれに代えて、炎症を治療又は予防することが望ましい特定の用途では、本発明で送達される物質として、各種のステロイド又は他の抗炎症剤(例えば、非ステロイド系抗炎症剤、即ちNSAID)、鎮痛剤、又は解熱剤が含まれうる。例えば、ベクロメタゾン(Vancenase(登録商標)又はBeconase(登録商標))、フルニソリド(Nasalide(登録商標))、プロピオン酸(proprionate)フルチカゾン(Flonase(登録商標))、トリアムシノロンアセトニド(Nasacort(登録商標))、ブデソニド(Rhinocort Aqua(登録商標))、エタボン酸ロテプレドノール(loterednol)(Locort)、及びモメタゾン(Nasonex(登録商標))などの、経鼻投与によって以前に投与されてきたコルチコステロイドを使用することができる。上記のコルチコステロイドの他の塩の形態を使用することもできる。また、本発明において使用することが可能なステロイドの他の非限定的な例としては、これらに限定されるものではないが、アクロメタゾン、デソニド、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、フルオシノロン、フルランドレノリド、モメタゾン、プレドニカルベート、アムシノニド、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ハルシノニド、クロベタゾル、強化ベタメタゾン、ジフロラゾン、ハロベタゾル、プレドニゾン、デキサメタゾン、及びメチルプレドニソロンが挙げられる。使用することができる他の抗炎症剤、鎮痛剤、又は解熱剤としては、非選択性COX抑制剤(例えば、サリチル酸波生物、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサレート、ジフルニサル、スルファサラジン及びオルサラジン;アセトアミノフェン等のパラアミノフェノール派生物;インドメタシン及びスリンダク等のインドール酢酸及びインデン酢酸;トルメチン、ジコフェナク又はケトロラク等のヘテロアリール酢酸;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビブロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、及びオクサプロジン等のアリールプロピオン酸;メフェナム酸及びメロキシカム等のアントラニル酸(フエナメート);オキシカル(ピロキシカム、メロキシカム)及びナブメトン等のアルカノン等のエノール酸(Enolic acid))、並びに選択COX−2抑制剤(例えば、ロフェコキシブなどのジアリール置換フラノン;セレコキシブなどのジアリール置換ピラゾール;エトロダクなどのインドール酢酸;及びニメスライドなどのスルホンアニリド)が挙げられる。
【0070】
これに加えて、又はこれに代えて、アレルギー若しくは免疫反応及び/又は細胞増殖を治療又は予防することが望ましい場合などの一部の用途では、本発明において送達される物質には、a)ヒト化抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、組換え(遺伝子組換えによって生じる新たな細胞)アンタゴニスト、又は可溶性受容体などの各種のサイトカイン阻害物質、b)ザフィルルカスト、モンテルカスト及びジロートンなどの各種のロイコトリエン調節物質、c)オマリズマブ(rhu Mab−E25と以前は呼ばれていた抗IgEモノクローナル抗体)などの免疫グロブリンE(IgE)阻害剤及び分泌型白血球プロテアーゼ阻害剤、が含まれ得る。
【0071】
これに加えて、又はこれに代えて、粘膜組織を収縮させたり、充血を除去したり、又は止血を行うことが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、偽エフェドリン、キシロメタゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、エピネフリンを含むが、これらに限定されない充血除去又は止血を目的とした各種の血管収縮剤が含まれうる。
【0072】
これに加えて、又はこれに代えて、粘液の流れを促進することが望ましい場合などの一部の用途では、本発明において送達される物質には、アセチルシステイン(Mucomyst(商標)、Mucosil(商標))及びグアイフェネシンを含むが、これらに限定されない粘液又は粘液分泌物の粘性又は稠度を変更する各種の粘液溶解剤又は他の薬剤が含まれ得る。
【0073】
これに加えて、又はこれに代えて、ヒスタミンの放出を防止又は抑止することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、クロモリン(例えば、Nasal Chrom(登録商標))及びネドクロミルなどのヒスタミンの放出を防止する各種のマスト細胞安定化物質又は薬物が含まれ得る。
【0074】
これに加えて、又はこれに代えて、ヒスタミンの作用を防止又は阻害することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、アゼラスチン(例えば、Astylin(登録商標))、ジフェンヒドラミン、ロラチジンなどの各種の抗ヒスタミン剤が含まれ得る。
【0075】
これに加えて、又はこれに代えて、骨又は軟骨を溶解、分解、切断、破断若しくは再構成することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、骨及び/又は軟骨の強度を低下させるか改質することによって、骨又は軟骨を再構成、再成形、破断、又は除去する本発明の他の手技を容易とする物質が含まれ得る。このような薬剤の一例として、再構成又は改質しようとする骨の領域に隣接した物質送達インプラントで注入又は送達することが可能なEDTAなどのカルシウムキレート剤がある。別の例として、破骨細胞などの骨分解細胞からなる、あるいはこの細胞を含む製剤がある。他の例として、コラゲナーゼ(CGN)、トリプシン、トリプシン/EDTA、ヒアルロニダーゼ、及びトシルリシルクロロメタン(TLCM)などの、骨又は軟骨の成分を軟化又は分解することが可能な各種の物質の酵素が挙げられる。
【0076】
これに加えて、又はこれに代えて、特定の用途では、本発明において送達される物質には、イプラトロピウム(Atrovent Nasal(登録商標))などの鼻汁分泌を止める傾向を有する抗コリン作動薬を含むが、これらに限定されない鼻炎、鼻ポリープ、鼻の炎症、及び耳、鼻、咽喉の他の疾患を治療するために使用される他のクラスの物質、並びにここに列記されない他の薬剤が含まれ得る。
【0077】
これに加えて、又はこれに代えて、ポリープ又は浮腫組織から排液することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、フロセミドなどの局在又は局所作用性の利尿剤、及び/又は、塩化ナトリウムゲル又は組織から水分を抜く他の塩製剤などの高浸透圧剤、あるいは、粘液の浸透圧成分量を直接的又は間接的に変化させてより多くの水分を組織から脱出させることにより、ポリープをその部位で直接的に縮小させる物質が含まれ得る。
【0078】
これに加えて、又はこれに代えて、腫瘍又は癌病変を治療することが望ましい場合などの一部の用途では、本発明において送達される物質としては、抗腫瘍剤(例えば、癌化学療法剤、生物学的反応調節物質、血管新生阻害剤、ホルモン受容体遮断薬、凍結治療剤、又は新生組織形成又は腫瘍形成を破壊又は阻害する他の薬剤)を挙げることができ、例えば、癌細胞のDNAを攻撃することにより癌細胞を直接死滅させるアルキル化剤又は他の薬剤(例えば、シクロフォスファミド、イソホスファミドなど)、細胞のDNA修復に必要な変化を阻害することにより癌細胞を直接死滅させるニトロソウレア又は他の薬剤(例えば、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)など)、特定の細胞機能、通常はDNAの合成を妨害することにより癌細胞の増殖を阻害する代謝拮抗薬及び他の薬剤(例えば、6メルカプトプリン及び5フルオロウラシル(5FU)など)、DNAに結合するかあるいはDNAに入り込んでRNA合成を阻害することによって作用する抗腫瘍抗生物質及び他の化合物(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C及びブレオマイシンなど)、植物に由来する植物(ビンカ)アルカロイド及び他の抗腫瘍薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンなど)、ホルモン応答性癌の増殖に影響するステロイドホルモン、ホルモン阻害薬、ホルモン受容体アンタゴニスト及び他の薬剤(例えば、タモキシフェン、ヘルセプチン、アミノグルテサミド及びホルメスタンなどのアロマターゼ阻害剤、レトロゾール及びアナストラゾールなどのトリアゾール阻害剤、エクセメスタンなどのステロイド阻害剤など)、腫瘍の血管新生又は血管形成を阻害する抗血管新生タンパク質、小分子、遺伝子治療薬、及び/又は他の薬剤(例えば、meth−1、meth−2、サリドマイドなど)、ベバシズマブ(アバスチン)、スクアラミン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオザイム、AE−941(ネオバスタット)、CC−5013(レビミド)、medi−522(ビタキシン)、2−メトキシエストラジオール(2ME2、パンゼム)、カルボキシアミドトリアゾール(CAI)、コンブレタスタチンA4プロドラッグ(CA4P)SU11248、BMS−275291、COL−3、EMD 121974、IMC−1C11、IM862、TNP−470、セレコキシブ(セレブレックス)、ロフェコキシブ(ビオックス)、インターフェロンα、インターロイキン−12(IL−12)又は参照により本明細書に明確に組み入れるScience,Vol.289,1197〜1201ページ(2000年8月17日)において同定される全ての化合物、生物学的反応調節物質(例えば、インターフェロン、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、モノクローナル抗体、インターロイキン−2、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)など)、PGDF受容体アンタゴニスト、ヘルセプチン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、カルムスチン、クロラムブシル(cchlorambucil)、シタラビン、ダカルバジン、エトポシド、フルカルバジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトアジトロン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ストレプトシン、タキソール、タキソテール、これらの化合物の類似体/同種体及び誘導体、並びに、ここに列記されていない他の抗腫瘍剤が挙げられる。
【0079】
これに加えて、又はこれに代えて、新たな細胞を増殖させるかあるいは既存の細胞を改変することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、細胞(粘膜細胞、線維芽細胞、幹細胞、又は遺伝子操作された細胞など)、並びに、抗炎症物質をコードする遺伝子と一緒に注入されるプラスミド、アデノウイルスベクター、又はネイキッドDNA、mRNAなどの遺伝子及び遺伝子送達担体、更に、上述したように必要に応じて骨を改質又は軟化させる破骨細胞が含まれる。
【0080】
本明細書に開示される装置及び方法は、2種以上の物質の組み合わせを送達するために使用されてもよい。特定の一実施形態では、本明細書に開示される装置及び方法を使用して抗炎症剤(例えば、ステロイド又はNSAID)と粘膜溶解剤との組み合わせを送達することができる。
【0081】
本明細書に開示される装置及び方法を使用して、1種以上の物質を含むゲル又は粘稠液を送達することができる。このようなゲル又は粘性の液体は粘膜を被覆して粘膜に粘着し、これにより1種以上の物質を粘膜に徐々に送達することができる。一実施形態では、ゼラチン、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む可塑化炭化水素ゲルを、副鼻腔の粘膜などの粘膜に送達することができる。こうしたゲルを使用して粘膜に適当な物質を徐々に送達することができる。
【0082】
本明細書に記載される装置のリザーバ14は、各区画が特定の物質製剤を収容するように、任意に複数の区画を含んでもよい。このような複数の区画によって、複数の物質配合物が解剖学的構造に送達される前に混合されることが防止される。
【0083】
孔又は口を有する物質リザーバの1以上を適当な物質で充分に高い圧力で充填することにより、物質の一部を孔又は口から噴出させることもできる。この方法を用いて、物質の最初のボーラス量を周囲の解剖学的構造に送達することができる。
【0084】
本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、物質リザーバが解剖学的領域に導入された後に、適当な物質で充填することができる。また、本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、物質リザーバが解剖学的領域に導入される前に、適当な物質で充填することができる。また、本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、固体の凍結乾燥又は濃縮された物質で予め充填することもできる。固体の凍結乾燥又は濃縮された物質は、物質リザーバ内に溶媒を導入することによって活性型に変換される。これは、解剖学的領域に物質リザーバが導入される直前又は直後に行うことができる。また、本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、物質の不活性型で予め充填することもできる。こうした物質の不活性型は、物質リザーバ内に活性化物質を導入することによって活性型に変換される。これは、解剖学的領域に物質リザーバが導入される直前又は直後に行うことができる。
【0085】
前述の通り、物質送達スペーサ装置11の埋め込み可能部分は、装置のかかる埋め込み可能部分が体内に埋め込まれたときに通気孔及び/又は排液管の役割を果たすことができる、通しルーメンを含んでもよい。
【0086】
本明細書に開示される1以上の物質送達装置の最遠位端の領域が、非外傷性の先端部を有してもよい。このような非外傷性の先端部は、1つ以上の物質送達装置の最遠位端の領域によって解剖学的構造が損傷することを防止又は低減するために用いられる。
【0087】
本明細書に開示される1以上の物質送達装置の外表面が、生体物質によって外表面に外殻が形成されるリスクを低減又は防止するコーティングを有してもよい。一実施形態では、コーティングは水を吸収してゲルを形成する材料からなる。このような材料の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒアルロン酸などが挙げられる。
【0088】
本明細書で開示される物質送達装置の1つ以上は、物質リザーバに充填された物質の相当量が送達された後で再充填されることができる。例えば、一実施形態において、物質送達装置は、針及び注射器を使用してアクセス可能な近位再充填ポートを含んでもよい。そのようなポートは、針を介して再充填された後に自己密封することができる。一実施形態は把持部材を含んでもよく、医師は、ピンセット又は別の器具を使用して装置を把持し、この把持部材を使用して、再充填中の装置を保持することができる。
【0089】
本明細書で開示される物質送達装置の1以上が、使用者が物質送達装置の位置を特定し、かつ/又は解剖学的構造を通じて物質送達装置を案内することを可能とする1以上のマーカーを含んでよい。例えば、物質送達装置は、使用者が解剖学的構造内への物質送達装置の挿入の深さを決定することを可能とする視覚的マーカーを含み得る。別の例では、物質送達装置は、使用者がレントゲン、MRIなどの画像診断技術を使用して物質送達装置の位置を特定し、かつ/又は物質送達装置を案内することを可能とする画像マーカーを含んでよい。
【0090】
上記の実施例では、リザーバに充填されてリザーバから排出される治療薬としてトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液(Kenalog(登録商標)40、Brystol−Myers Squibb Company,Princeton,New Jersey)が記載されているが、各種の他の治療薬をこのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液に加えて、又はその代わりに使用することができる。ステロイドを送達するために埋め込み式スペーサ装置11を使用することが望ましい特定の場合では、ステロイドは懸濁液ではなく、溶液として調製することができる。こうした場合には、ステロイドを適当な生体適合性の溶媒に溶解する。例えばシクロデキストリンは、少なくともある種のステロイドを溶解するのに適した溶媒として述べられている。Khomutov,S.M.,Dovbnya,D.V.and Donova,M.V.,Dissolution of a Mixture of Steroids in Cyclodextrin Solutions:a Model Description;Pharmaceutical Chemistry Journal;Vol.35,No.1i,pp.627〜629(November,2001)。
【0091】
場合によっては、本発明の装置を使用して、ステロイド又は他の物質を、点鼻薬又はスプレー(即ち、点鼻液)として鼻粘膜への経鼻投与用に市販されているかあるいはそれに適した製剤中で送達することができる。少なくとも一部の場合では、こうした点鼻液は、鼻分泌物に似ており、したがって正常な繊毛作用を妨害しないようなものとして調製される。このような点鼻液は等張液であり、pH 5.5〜6.5にわずかに緩衝されている。更に、点眼用製剤において使用されているものと同様の抗微生物防腐剤、及び必要に応じて適当な薬剤安定剤を製剤に加えてもよい。各種の市販の点鼻用製剤が知られており、例えば、抗生物質、ステロイド、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、及び臭化イプラトロピウム(ipitropium)を含んだものがある。
【0092】
可能かつ適当である場合に、本発明の装置によって送達される物質のいずれかを、所望により、リポソーム又はナノ粒子(例えば、ナノカプセル)の形態とすることができる。リポソームの形成及び使用は、当該技術分野では一般的に知られている。リポソームは、水性媒質中にリン脂質を分散させることによって、リン脂質が多重膜小胞(MLV)と呼ばれることもある多重膜の同心状の二重層小胞を自然に形成することによって形成される。MLVは通常直径25nm〜4μmである。MLVを超音波処理すると、MLVは、水溶液を含んだコアを有する直径約200〜500オングストロームの小さな単層ベシクル(SUV)を形成する。一般にリン脂質は水性媒質中に分散されると、水に対する脂質のモル比に応じてリポソーム以外の様々な構造を形成しうる。水に対する脂質のモル比が低いと、リポソームが形成される。リポソームの物理的特性は、pH、張性、及び2価のカチオンの有無に依存する。リポソームは、1)エンドサイトーシス(例えば、マクロファージ及び好中球などの細胞によるリポソームの食作用)、細胞表面への吸着、2)細胞表面の構成要素との相互作用、3)リポソームの脂質二重層が原形質膜に挿入されることによる細胞原形質膜との融合、又は4)リポソームの脂質の細胞膜又は細胞小器官の膜への移行(若しくはその逆)、などの異なる機構によって細胞と相互作用することができる。リポソームの配合が変わると、どの機構によってリポソームが副鼻腔、鼻粘膜などの細胞と相互作用するかは変わり得る。
【0093】
ナノ粒子は、外殻と、内部に所望の物質を入れることができる空間とからなる任意のナノ粒子である。ナノ粒子を形成するための方法は、当該技術分野では周知のものである。ポリマーナノカプセルは、特定の粒径及び形状のものを作製することができる。ポリマーナノカプセルは、厳密に規定された物理的及び化学的性質を有する単分散粒子として製造することが可能であり、したがって、副鼻腔、又は装置が埋め込まれる耳、鼻若しくは咽喉内の他の領域に存在するpH、粘液の流れ、又は他の条件などの特定の2分子誘発機構に応じた治療又は診断物質の放出を促進するように調整することができる。本発明ではナノカプセルを、特定の標的細胞(例えば、副鼻腔又は鼻腫瘍に関連する癌細胞、又は炎症状態に関連する細胞)と結合する特異的な化学受容体又は結合部位を有する「スマートドラッグ」として使用することができる。
【0094】
本発明を本発明の特定の実施例又は実施形態に照らして上記に述べたが、本発明が目的とする趣旨及び発明の範囲から逸脱することなくこれらの実施例及び実施形態に様々な追加、削除、変更及び改変を行うことが可能である点は認識されるであろう。例えば、ある実施形態又は実施例の任意の要素又は属性は、特別の定めのない限り、又はそうすることによって当該実施形態又は実施例がその目的とする使用に適さなくなる場合は除いて、別の実施形態又は実施例に組み込まれる、又は別の実施形態又は実施例と共に使用されることが可能である。また、方法又はプロセスの各工程が特定の順序で述べられているか又は列記されている場合、こうした各工程の順序は、特に断らない限り、あるいはそうすることによって当該方法又はプロセスがその目的において機能しないものとならない限りにおいて、変更することが可能である。全ての相応な追加、削除、改変及び変更は、述べられた実施例及び実施形態の均等物とみなし、以下の「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) ヒト又は動物対象における上顎洞の疾患を治療する方法であって、
前記上顎洞内への開口部を形成する工程と、
洞スペーサ装置を前記開口部を介して少なくともある程度まで前進させる工程と、
前記スペーサ装置の少なくとも一部を前記上顎洞内に保持するために、前記スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、
前記装置が収縮形状から拡張形状へと拡張するために、前記スペーサ装置の中に物質を導入する工程と、
前記導入された物質が前記スペーサ装置を出て前記疾患を治療するのを可能にするために、前記スペーサ装置を前記対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、を含む、上顎洞の疾患を治療する方法。
(2) 上顎洞内への開口部を形成する工程が、洞の壁を通して鼻腔と上顎洞との間に開口部を形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記開口部が、下鼻道又は中鼻道を通して前記上顎洞の中にペネトレータを挿入することによって形成される、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記ペネトレータが、貫通遠位端と、約80度〜約110度の湾曲部と、を有するシャフトを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記開口部が、前記上顎洞の中に下向きの角度で入るように形成される、実施態様1に記載の方法。
(6) 上顎洞内への開口部を形成する工程が、口腔と前記上顎洞との間に開口部を形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記開口部が犬歯窩を通って形成される、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記ペネトレータの位置決めを判定又は確認するために、画像誘導システムを使用することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 湾曲と、前記湾曲の方向を示すためのインジケータフラッグと、を有するペネトレータを使用して前記開口部を形成し、前記方法が、前記ペネトレータの湾曲の方向を判定又は確認するために前記インジケータフラッグを使用することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 管腔を有するペネトレータを使用して前記開口部を形成し、前記スペーサ装置を前進させることが、
ガイド部材を、前記ペネトレータの前記管腔を通し、前記開口部を通して、前記上顎洞の中に前進させる工程と、
前記スペーサ装置を前記ガイド部材を越えて前進させる工程と、を含む、実施態様1に記載の方法。
(11) 前記ガイド部材がガイドワイヤーを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記スペーサ装置を前進させることが、
管状ガイドを前記開口部に挿入する工程と、
前記スペーサ装置を前記管状ガイドを通して前進させる工程と、
前記スペーサ装置が前記開口部又は上顎洞内に位置付けられた状態のまま前記管状ガイドを除去する工程と、を含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記スペーサ装置が、中にスタイレットを収容することができる管腔を有する細長い部材を備え、前記スペーサ装置を前進させることが、
前記細長いシャフトの前記管腔に前記スタイレットを挿入する工程と、
前記スペーサ装置及びスタイレットを、前記開口部を介して挿入する工程と、
前記スタイレットを除去する工程と、を含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記保持部材が少なくとも1つの突出部を含み、前記方法が、
前記スペーサ装置の前記少なくとも一部が前記開口部を介して挿入されている間、前記少なくとも1つの突出部を収縮位置に維持する工程と、
前記少なくとも1つの突出部を拡張位置に移行させ、それによって前記少なくとも1つの突出部が、少なくとも1つの隣接する解剖学的構造と機械的に接触する工程と、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記少なくとも1つの突出部が、第1及び第2の横方向に対向する突出部を含み、前記第1及び第2の横方向に対向する突出部が、拡張位置にあるときに約14mm〜約20mmの直径に広がる、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記スペーサ装置をしっかりと固定することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(17) 前記スペーサ装置をしっかりと固定することが、前記スペーサ装置を組織に縫合することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記スペーサ装置の中央開口管腔を介して、前記上顎洞を通気すること及び前記上顎洞を排液させることの少なくとも一方を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(19) 前記物質が食塩水を含む、実施態様1に記載の方法。
(20) 前記物質が流体を含み、前記流体が、前記装置上の複数の孔を通って前記スペーサ装置から出て行く、実施態様1に記載の方法。
【0096】
(21) 前記物質が治療薬を含む、実施態様1に記載の方法。
(22) 前記治療薬がステロイドを含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記ステロイドがトリアムシノロンを含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記スペーサが、1日当たり約100マイクログラムの用量のトリアムシノロンが前記スペーサを出て行くように構成される、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記物質が、約14日〜約21日の間前記スペーサ装置から出続ける、実施態様1に記載の方法。
(26) ヒト又は動物対象において上顎洞又は前頭洞の疾患を治療するための方法であって、
上顎洞口又は前頭洞流出路を拡張する工程と、
リザーバを有する洞スペーサ装置を、前記上顎洞口又は前頭洞流出路を通して少なくともある程度まで前進させる工程と、
前記スペーサ装置の少なくとも一部を前記上顎洞内に保持するために、前記スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、
前記リザーバを収縮形状から拡張形状へと拡張するために、前記スペーサ装置の前記リザーバの中に物質を導入する工程と、
前記導入された物質が前記スペーサ装置を出て前記疾患を治療するのを可能にするために、前記スペーサ装置を前記対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、
を含む、上顎洞又は前頭洞の疾患を治療するための方法。
(27) 前記洞口又は前頭洞流出路を拡張する工程が、前記上顎洞口及び篩骨漏斗を拡張することを含む、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記上顎洞口及び篩骨漏斗を拡張することが、
前記上顎洞口及び篩骨漏斗内に拡張可能な拡張器を位置決めする工程と、
前記拡張器を拡張する工程と、を含む、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記拡張可能な拡張器がバルーンを含み、前記拡張器を拡張する前記工程が、前記バルーンを膨らますことを含む、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記前進工程が、
管状ガイドの遠位開口部が上顎洞又は前頭洞内にある位置まで、前記管状ガイドを挿入することと、
前記スペーサ装置の前記少なくとも1つの保持部材が、前記ガイドの前記遠位開口部から外に出てきて、上顎洞又は前頭洞腔内で展開する位置まで、前記洞スペーサ装置を前記管状ガイドを通して前進させることと、を含む、実施態様26に記載の方法。
(31) 前記スペーサ装置の前記少なくとも1つの保持部材が前記ガイドの前記遠位開口部から外に出た時点を判定するために、前記洞スペーサ装置上に形成された少なくとも1つの直接可視マーカーを直接的に視覚化する工程を更に含む、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記少なくとも1つの保持部材が前記ガイドの前記遠位開口部から外に出た時点を示す前記洞スペーサ装置上の内視鏡的可視マーカーを、内視鏡的に視覚化する工程を更に含む、実施態様30に記載の方法。
(33) 前記スペーサ装置の前記少なくとも1つの保持部材が前記ガイドの前記遠位開口部から外に出た時点を判定するために、前記洞スペーサ装置上の内視鏡的可視マーカーを内視鏡的に視覚化する前記工程が、前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上に形成された対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の位置まで前進した時点を内視鏡的に判定することを含む、実施態様32に記載の方法。
(34) 前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上に形成された対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の位置まで前進した時点を内視鏡的に判定する前記工程が、前記ガイド上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーと望ましい整列状態にある又はその上に重ね合わされた時点を判定することを含む、実施態様32に記載の方法。
(35) 前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、半透明又は透明、及び第1の色であり、
前記洞スペーサ上の前記内視鏡的可視マーカーが第2の色であり、
前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上に形成された対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の位置まで前進した時点を内視鏡的に判定する前記工程が、前記第1及び第2の色が混合されて、視覚的に区別可能な第3の色を形成し、それによって、前記ガイド上の前記半透明又は透明なマーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記対応するマーカーの上に重ね合わされたことを示す時点を、内視鏡的に判定することを含む、実施態様34に記載の方法。
(36) 上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステムであって、前記システムが、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
近位端、遠位端、及び前記細長いシャフトの前記管腔内へのスタイレットの挿入を可能にするように寸法設定された外径を有する前記スタイレットと、を含む、上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステム。
(37) 前記拡張可能なリザーバが、前記リザーバに導入された物質が前記リザーバを出て行けるように構成される、実施態様36に記載のシステム。
(38) 前記スタイレットが湾曲している、実施態様36に記載のシステム。
(39) 前記スタイレットの前記湾曲が、約90度〜約110度である、実施態様38に記載のシステム。
(40) 前記スタイレットが可鍛性である、実施態様36に記載のシステム。
【0097】
(41) 副鼻腔の疾患を治療するためのシステムであって、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
前記スペーサ装置が挿入可能である管腔を有する管状送達ガイドと、を含む、副鼻腔の疾患を治療するためのシステム。
(42) 前記管状送達ガイドが、近位部、及び前記近位部より可撓性の高い遠位部を有する、実施態様41に記載のシステム。
(43) 前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、前記近位部が可鍛性である、実施態様41に記載のシステム。
(44) 前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、該遠位部に湾曲が形成されている、実施態様41に記載のシステム。
(45) 前記湾曲が約80度〜約110度である、実施態様44に記載のシステム。
(46) 遠位端を有し、かつ前記細長いシャフトの前記管腔に挿入可能及び前記管腔から除去可能であるスタイレットと更に組み合わされる、実施態様41に記載のシステム。
(47) 前記管状送達ガイドが湾曲しており、前記スタイレットが、前記管状ガイドの前記湾曲を通って前進するのに十分なだけ可撓性である、実施態様46に記載のシステム。
(48) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、実施態様41に記載のシステム。
(49) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記リザーバ及び前記保持突出部が前記管状送達ガイドの前記遠位端から外へ出て前進した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、実施態様41に記載のシステム。
(50) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、実施態様41に記載のシステム。
(51) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、遠位端及び近位端を有する少なくとも1つの可視的にマークが付けられた部分を有し、前記洞スペーサ装置が前記ガイドの前記管腔の中に前進している間に、前記可視的にマークが付けられた部分の前記遠位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記洞スペーサ装置の前記遠位先端が前記ガイドの前記遠位端と水平になり、前記可視的にマークが付けられた部分の前記近位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出ているように、該可視的にマークが付けられた部分が前記管状送達ガイドに対して位置決めされかつ寸法設定される、実施態様41に記載のシステム。
(52) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが横に切断され得、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去され得、前記スペーサ装置が、前記洞スペーサ装置の前記シャフトが横に切断され、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去された後に、前記リザーバに充填された物質が前記リザーバから漏れ戻されるのを防止する少なくとも1つの弁部材を更に備える、実施態様41に記載のシステム。
(53) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、視覚的に区別可能な切断領域を有する、実施態様52に記載のシステム。
(54) 粘膜組織又は血液の色と対比させるために、前記視覚的に区別可能な切断領域が着色される、実施態様53に記載のシステム。
(55) 前記視覚的に区別可能な切断領域が青色である、実施態様54に記載のシステム。
(56) 内視鏡的可視マーカーが前記洞スペーサ装置上に形成され、対応する内視鏡的可視マーカーが前記ガイド上に形成され、前記洞スペーサ装置が前記ガイドを通って、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上の前記対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の空間的位置に到達した位置まで前進すると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出たことを示す、実施態様41に記載のシステム。
(57) 前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記所定の空間的位置に到達される、実施態様56に記載のシステム。
(58) 前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、透明又は半透明、及び第1の色であり、かつ
前記洞スペーサ上の前記内視鏡的可視マーカーが第2の色であり、
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記第1及び第2の色が混合して、視覚的に区別可能な第3の色を形成する、実施態様57に記載のシステム。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第12/639,919号(2009年12月16日出願)の優先権を主張し、該特許出願は同時係属中の米国特許出願第12/100,361号(2008年4月9日出願)の一部継続出願であり、該特許出願は米国仮特許出願第60/922,730号(2007年4月9日出願)の優先権を主張し、かつ該米国特許出願は米国特許出願第11/544,009号(2006年10月4日発行)(米国特許第7,419,497として発行)の一部継続出願であり、該米国特許出願は米国特許出願第11/234,395号(2005年9月23日出願)(米国特許第7,410,480号として発行)の一部継続出願であり、該米国特許出願は米国特許出願第10/829,917号(2004年4月21日出願)及び同第10/912,578号(2004年8月4日出願)(米国特許第7,361,168号として発行)の一部継続出願である。以上に列挙した各特許及び特許出願の完全な開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、一般に、医療装置及び方法に関し、より詳細には、上顎洞開口部の開通性を維持する及び/又は上顎洞の症状を治療するための物質を送達するための埋め込み型装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトでは、副鼻腔は、主として前頭骨、篩骨、蝶形骨及び上顎の洞腔である、数対の右及び左の洞腔(sinus cavities)を含む。これらのうち、上顎洞は最も大きく、副鼻腔感染症を最もよく発症する部位である。
【0004】
上顎洞は、鼻管の両側の眼窩の下で頬骨の後方に位置している。通常、各上顎洞は、開口部である自然口を有しており、この開口部を通って、粘液が洞腔から出て鼻管の中に入り、かつ空気が洞腔に入る。上顎洞の自然口が、微生物感染、長期にわたるアレルギー性炎、又は解剖学的変形(例えば、鼻中隔彎曲)によって閉塞すると、粘液の流出及び空気の流入が損なわれ、それによって上顎洞炎として知られている病状を発生させる場合がある。それほど多くはないが、各上顎洞の真下に位置する上顎臼歯又は小臼歯に影響を及ぼす歯の疾病が、上顎洞炎を引き起こす場合がある。
【0005】
前頭洞は、前額部の両側に眼窩と隣接して又はその上方に存在する。右及び左前頭洞は洞中隔によって分割されている。各前頭洞は、洞底の後内側面に形成される自然開口部(即ち、口(ostium))を有する。ほとんどの患者では、前頭陥凹として知られる狭い解剖学的副室が、前頭洞口と鼻腔との間に延びている。前頭陥凹は、粘膜組織で覆われた骨構造である。前頭陥凹の前縁は、鼻堤細胞の後壁によって形成され、前頭陥凹の内側面は、篩及び篩板の外側板に関連している。粘液は、通常、前頭陥凹を通って前頭洞口から流れ出て鼻腔に流れ込む。口及び前頭陥凹は、組み合わされて前頭洞流出路(FOT:frontal outflow tract)と呼ばれることもある。多くの個体において、FOTは比較的長い通路である。急性前頭洞炎を患う患者では、FOTが炎症を起こして閉塞される場合あり、それによって、前頭洞腔からの自然排出が妨げられて、前頭洞腔及び関連する篩骨蜂巣内で感染性微生物が繁殖可能となる。急性前頭洞炎は、時として頭蓋内の合併症及び/又は眼の合併症を伴う。前頭洞炎が原因であることが知られている眼の合併症としては、血栓症、静脈血栓症、蜂巣炎(cellulites)、及び眼窩内膿瘍が挙げられる。ポット腫脹性腫瘍として知られる眼窩内膿瘍の一種は、前頭骨を超えて腫れた多量の軟組織を伴う。前頭洞炎に伴う頭蓋内合併症としては、髄膜炎、脳膿瘍、硬膜外蓄膿、硬膜下膿瘍、及び脳蓄膿症(cerebral empyema)が挙げられる。
【0006】
上顎洞又は前頭洞炎を、薬物療法(例えば、抗生物質、充血除去剤、及びステロイドのスプレー式点鼻薬)で成功裏に治療することができない場合、外科手術又はカテーテルを使用したインターベンションが行われることがある。副鼻腔炎の治療に対する外科的アプローチとしては、内視鏡下機能的副鼻腔手術(FESS:functional edoscopic sinus surgery)があり、その場合、洞の排液及び通気を改善するために、内視鏡及び種々の外科用器具が鼻孔を通して挿入され、骨及び軟組織を切断及び/又は除去するのに使用される。近年、カテーテルを使用したアプローチは、典型的なFESS手術における骨及び軟組織の切断及び除去の代用として開発されてきた。こうしたカテーテルを使用したアプローチでは、バルーンカテーテルのバルーンなどの拡張器が、副鼻腔の自然口又は流出路にうまく動かし入れられて、自然口を拡張するために使用される。上顎洞炎の治療に用いることができるこのようなカテーテルを使用した手技及び関連装置の例は、これらの全開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、米国特許第7,316,168号;同第7,500,971号;同第7,419,497号;同第7,462,175号;及び同第7,410,408号;及び米国特許出願公開第2006/0004286号;同第2006/0063973号;同第2006/0210605号;同第2007/0129751号;同第2007/0135789号;同第2007/0167682号;同第2007/0208252号;同第2007/0208301号;同第2007/0293727号;同第2008/0097154号;同第2008/0097239号;同第2008/0097295号;同第2008/0097514号;同第2008/0097515号;同第2008/0097516号;同第2008/0103361号;同第2008/0103521号;同第2008/0119693号;同第2008/0125626号;同第2008/0154250号;同第2008/0195041号;同第2008/0228085号;同第2008/0234720号;同第2008/0187098号;同第2008/0275483号;同第2008/0281156号;同第2009/0030274号;同第2009/0093823号;及び同第2009/0187089号に記載されている。
【0007】
外科手術又は前述のタイプのカテーテルを使用したインターベンションの代用として、又はこれらと併用して、特定の副鼻腔の中に薬物又は治療薬を送達するための種々の装置及び方法が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2004/0116958A1(Gopferichら)は、生分解性又は生物分解性でないポリマーで形成され、かつコルチコステロイド又は抗増殖剤などの作用物質で充填された管状スペーサを記述している。前頭洞に開窓を形成する外科手術を行った後、スペーサ(space)がかかる開窓の中に入れられ、次いで、作用物質がスペーサから排出される。更に、Tarasov D Iらの「Application of Drugs Based on Polymers in the Treatment of Acute and Chronic Maxillary Sinusitis」(Vestn Otorinolaringol.1978;6:45〜47)は、副鼻腔炎の治療を目的とした上顎洞腔の中への薬物の直接送達を報告している。更に、Deutschmann Rらの「A Contribution to the Topical Treatment of [Maxillary] Sinusitis Preliminary Communication」(Stomat.1976;DDR26:585〜92)は、上顎洞炎の治療を目的として、薬物(即ち、クロラムフェニコール)と混合した水溶性ゼラチンの上顎洞腔内への滴下注入を記述している。このゼラチン/薬物製剤は比較的短期作用であったので、著者は、治療効果を得るためには、2〜3日おきにこれを滴下注入する必要があると報告した。副鼻洞腔の中に薬物を徐々に送達するための装置及び方法は、米国特許第3,948,254号(Zafferoni);同第5,512,055号(Dombら);同第7,361,168号(Makowerら);同第7,410,480号(Muniら);及び同第7,419,497号(Muniら);並びに米国特許出願公開第2003/0185872A2号(Kochinke);同第2005/0245906A1号(Makowerら);同第2005/0043706(Eatonら);同第2006/0106361A1号(Muniら);同第2007/0005094(Eatonら)号;同第2008/0015540号(Muniら);同第2008/0287908号(Muniら);同第2008/0319424号(Muniら);同第2009/0028923号(Muniら);同第2009/0017090号(Arensdorfら);同第2009/0047326号(Eatonら);同第2009/0156980号(Eatonら)、及び同第2009/0227945号(Eatonら)、並びにPCT国際特許出願公開WO92/15286(Shikani)にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上顎洞又は前頭洞の排液及び/若しくは通気を改善することができる、並びに/又は上顎洞又は前頭洞の中に治療剤を送達することができる新しい装置及び方法を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、ヒト又は動物対象における上顎洞の疾患を治療する方法は、上顎洞内への開口部を形成する工程と、洞スペーサ装置を開口部を介して少なくともある程度まで前進させる工程と、スペーサ装置の少なくとも一部を上顎洞内に保持するために、スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、装置が収縮形状から拡張形状へと拡張するために、スペーサ装置の中に物質を導入する工程と、導入された物質がスペーサ装置を出て疾患を治療するのを可能にするために、スペーサ装置を対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、を含む。この方法の一部の実施形態において、上顎洞内への開口部は、洞の壁を貫通して鼻腔と上顎洞との間に形成される開口部であり得る。かかる開口部は、下鼻道又は中鼻道を通してペネトレータを挿入し、ペネトレータを使用して上顎洞の隣接壁を貫通させるなどによることを含む、任意の好適な手段によって形成され得る。この方法の他の実施形態において、上顎洞内への開口部は、口腔と上顎洞との間の開口部(例えば、頬側窩又は犬歯窩を貫通して形成された開口部)であり得る。この方法の一部の実施形態では、スペーサ装置が開口部を通して設置された後に、スペーサ装置が重力によって滑るのを防止するために、開口部は下向きの角度で形成され得る。
【0010】
本発明の別の態様において、上顎洞の壁を貫通する開口部を形成するのに使用可能であるペネトレータは、貫通遠位端と、シャフトに形成された約80度〜約110度の湾曲と、を有するシャフトを含んでもよい。一部の実施形態において、ペネトレータは、画像誘導システムと併用して使用され得るように、センサー、反射器、又は他の装置を備えてもよく、開口部の形成は、画像誘導手技として行われてもよい。一部の実施形態において、ペネトレータは、ペネトレータシャフトの湾曲の方向を示すために、ペネトレータの近位端上又はペネトレータの近位端近くにインジケータフラッグを有してもよく、それにより、操作者はフラッグを使用して、ペネトレータが対象の身体に挿入される間にペネトレータの湾曲の方向を判定又は確認することができる。
【0011】
一部の実施形態において、ペネトレータは管腔を有し得る。ペネトレータを使用して上顎洞の壁を貫通した後、装置又は物質は、ペネトレータの管腔を通して送達され得る。例えば、ガイド部材(例えばガイドワイヤー)は、ペネトレータの管腔を通り、開口部を介して、上顎洞の中に前進させられてもよい。その後、スペーサ装置はこのガイド部材を越えて前進させられてもよい。
【0012】
本発明の別の態様において、開口部内へのスペーサの配置を容易にするために、管状ガイド装置が使用され得る。そうした管状ガイド装置は、シャフトの遠位部に形成された約80度〜約110度、典型的には約90度〜約100度の湾曲を有する管状シャフトを備え得る。ペネトレータを使用して開口部が形成された後、ペネトレータは除去されることができ、次に、管状ガイドは、その遠位端が開口部内にある又は開口部と整列する位置まで進められることができる。次に、スペーサ装置は管状ガイドを通って進められることができ、スペーサ装置が開口部又は上顎洞内に位置付けられた状態のまま管状ガイドが除去されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様において、スペーサ装置は、中にスタイレットを挿入することができる管腔を有する細長い部材を備え得る。スタイレットは、細長いシャフトの管腔に挿入されることができ、中にスタイレットが位置決めされたスペーサは、次に、開口部を介して進められ得る。その後、スタイレットは除去されることができる。スタイレットは、近位端と、遠位端と、近位端上のハブ(例えば、ルアーハブ)とを有する細長いシャフトを備え得る。スタイレットのシャフトの直径は、連続的に先細であってもよく、又は、近位端から遠位端に向けて徐々に小さくなる直径の一連の領域を含んでもよい。
【0014】
一部の実施形態において、スペーサは、細長いシャフトと拡張可能なリザーバ(例えば、バルーン)とを備えて得る。拡張可能なリザーバは、リザーバが上顎洞に埋め込まれる間に、リザーバに導入された物質がリザーバから排出される(又は「出る」)ように構成され得る。このタイプのスペーサ装置の例としては、Acclarent,Inc.(Menlo Park,California)から市販されているRelieva Stratus(商標)Microflowスペーサ、並びに、それらの全開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、米国特許第7,361,168号;同第7,410,480号、及び同第7,419,497号、並びに米国特許出願第12/100,361号及び同第12/341,602号に記載されているものが挙げられる。
【0015】
スペーサ装置のリザーバは、上顎洞壁に形成された開口部を介する送達を目的として、最初は比較的小さな断面輪郭を有し得る。その後、流体(例えば、生理食塩水)及び/又は作用物質(例えば、薬物、生物学的物質、若しくは他の治療剤)がリザーバに導入されることができ、リザーバをその場で拡張させる。少なくとも一部の実施形態において、リザーバは、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張するように構成されてもよい。リザーバの透過性は、物質がリザーバを出るのに望ましい速度及び時間に応じて様々であり得る。例えば、一部の実施形態において、リザーバは、物質が約14日〜約21日の間リザーバから出続けるように構成され得る。
【0016】
スペーサ装置は、少なくとも1つの位置保持部材を更に備えてもよく、この位置保持部材は、展開された後、隣接する解剖学的構造に当接、係合、又は結合して、リザーバを上顎洞内の位置に実質的に維持する。一部の実施形態では、位置保持部材は、縫合又はその他の連結装置(例えば、ステープル、クリップ等)によって装置を隣接する解剖学的構造に取り付けるための、縫合糸受け部材(例えば、ループ、スロット、バー等)を含み得る。これに加えて、又はこれに代えて、位置保持部材が隣接する解剖学的構造に当接又は係合(例えば、摩擦係合又は加圧力)し、それによって装置が所望の埋め込み部位に実質的に保持されるように、位置保持部材は、装置から突き出る1つ以上の突出部(例えば、アーム)を含み得る。スペーサ装置の少なくとも一部が開口部を介して挿入されている間、そのような突出部は収縮位置に維持されることができ、その後、そのような突出部は拡張位置へと移行させられて、突出部は少なくとも1つの隣接する解剖学的構造と機械的に接触する。一部の実施形態では、そのような突出部は、第1及び第2の横方向に対向する突出部(例えば、ワイヤーループ又はウィング)を含んでもよく、該突出部は、拡張位置にあるときに、約14mm〜約20mmの直径に広がる。
【0017】
本発明の別の態様において、ヒト又は動物対象における上顎洞の疾患を治療するための方法は、上顎洞口を拡張する工程と、洞スペーサ装置(上記に要約されたようなスペーサ装置等)を、上顎洞口を介して少なくともある程度まで前進させる工程と、スペーサ装置の少なくとも一部を上顎洞内に保持するために、スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、装置を収縮形状から拡張形状へと拡張するために、スペーサ装置に物質を導入する工程と、導入された物質がスペーサ装置を出て疾患を治療するのを可能にするために、スペーサ装置を対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、を含む。篩骨漏斗の拡張を含み得る上顎洞口の拡張は、拡張可能な拡張器(例えば、バルーン)を上顎洞口内に位置決めし、その後拡張器を拡張することによって行われてもよい。この拡張で用いることができる拡張装置及び方法の具体例としては、Acclarent,Inc.(Menlo Park,California)から市販の、Relieva(登録商標)洞ガイドカテーテル、Relieva(登録商標)洞バルーンカテーテル、及びRelieva Solo Pro(商標)洞バルーンカテーテル、並びに上記で組み込まれた米国特許及び米国特許出願公開に記載されている装置が挙げられる。
【0018】
更に本発明によると、前述の特性を有する装置、システム、及び方法が提供され、この特性は、前頭洞流出路の開通性の維持、並びに/又は前頭洞及び/若しくは前頭洞流出路への治療剤の送達を目的として具体的に設計される。
【0019】
種々の実施形態の更なる態様及び詳細が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】スペーサ装置とスタイレットとを組み合わせて含む物質送達システムの一実施形態の側面図。
【図1B】装置の拡張可能なリザーバに物質を注入している間の、図1Aのスペーサ装置の遠位端の断面図。
【図1C】装置の拡張可能なリザーバが物質で充填された後の、図1Aのスペーサ装置の遠位端の断面図。
【図2】図1Aのスタイレットの側面図。
【図3】図1Aのシステムと併用して使用可能なガイドカテーテルの側断面図。
【図4】種々の実施形態による方法を実施する際に使用可能な上顎挿入プローブ装置の側面図。
【図5A】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5B】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5C】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5D】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5E】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5F】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図5G】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の一実施形態における工程。
【図6】上顎洞の口を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の別の実施形態を示す、上顎洞口の断面図。
【図7】洞腔と鼻腔との間の上顎洞の壁に形成された開口部を介してスペーサ装置が埋め込まれる方法の別の実施形態を示す、上顎洞口の断面図。
【図8A】本発明の前頭洞ガイドカテーテルの側面図。
【図8B】図8Aの前頭洞ガイドカテーテルの上面図。
【図8C】図8Aの前頭洞ガイドカテーテルの近位端図。
【図9】本発明のスペーサ/物質送達装置の別の実施形態の側面図。
【図9A】図9の領域9Aの拡大図。
【図10A】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10B】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10C】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10D】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【図10E】前頭洞炎を治療する及び/又は前頭洞流出路の開通性を維持するために、図9のスペーサ/物質送達装置を使用する方法の一実施形態の工程。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明、及びこれが参照する添付図面は、本発明の実施例又は実施形態の、必ずしも全てではないが一部のものを説明することを目的とするものである。記載される実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本明細書の発明を実施するための形態の内容及び添付図面は、本発明の範囲をいかなる形でも限定するものではない。
【0022】
スペーサ/スタイレットシステム:
図1Aを参照すると、一実施形態において、上顎洞を治療するためのシステム10は、埋め込み可能なスペーサ装置11とスタイレット40の組み合わせを含むことができる。(図1Aではスタイレット40のハブ42だけが可視であるが、図2に更なる詳細が提供されている。)システム10の一部の実施形態は、上顎挿入ガイド50(図3)及び/又は上顎挿入プローブ60(図4)を更に含んでもよい。
【0023】
一実施形態において、スペーサ装置11は、近位シャフト部分12aと遠位シャフト部分12bとを含む細長い軟性カテーテルシャフト12を備え、近位シャフト部分12aと遠位シャフト部分12bとは、分離マーカー15の位置又はシャフト12に沿った他の場所で互いに切り離されることができる。近位側シャフト部分12a及び遠位シャフト部分12bは、同じ又は異なる材料で形成されてよく、同じ又は異なる寸法(例えば、直径、壁厚など)を有してよい。例えば、一部の実施形態において、近位シャフト部分12aは、ポリアミドなどの好適な生体適合性材料で作製されてもよい。一部の実施形態では、遠位シャフト部分12bを、ナイロンなどのより可撓性の高い生体適合性材料で形成することができる。管腔13は、シャフト部分12a、12bを通って連続して延び、その遠位端にはプラグ23が装着される。プラグ23は、管の閉鎖端部、エンドキャップ、管腔13の端部内の塊状物、又は他の任意の好適な流れ遮断部材といった、任意の好適な閉鎖部材を含み得る。図面に示される具体例では、プラグ23は、管腔13の遠位端の内部に配置された生体適合性のポリマー接着剤からなるものである。
【0024】
拡張可能なリザーバ14は、収縮形状で遠位シャフト部分12bの遠位端近くに装着される。リザーバ14の詳細は図1B及び図1Cに見られる。図のように、この実施形態では、リザーバ14は、開口部31が形成された円筒状の側壁を有するバルーンからなるものである。リザーバ14は任意の好適な生体適合性材料で形成されてもよく、一部の実施形態では、ナイロン12などの非柔軟性又は半柔軟性の材料で形成されたバルーン備えてもよい。リザーバ14の寸法、リザーバの数(例えば2個以上)、並びに開口部31の数及びサイズは、意図される埋め込み部位並びに/又は送達される物質の有効性、粘度(又は粒径)及び/若しくは他の性質に基づいて様々であり得る。例えば、篩骨洞炎を治療するために、篩骨洞切開チャネルに通されて、篩骨蜂巣内に配置されることが意図されているスペーサ装置11の実施形態では、リザーバ14は、約0.5cm〜約3.5cm、典型的には約2cmの長さ、及び完全に拡張された場合に、約0.1cm〜約0.5cm、典型的には約0.3cmの直径を有し得る。種々の実施形態において、リザーバ14は、約50〜約5000個の開口部を有することができ、各開口部は、約5ミクロン〜約80ミクロンの直径を有し得る。一実施形態において、例えば、リザーバ14は、リザーバ14の側壁に形成された、直径約20ミクロンの約2200個のレーザー切断された開口部31を備える。開口部31は、リザーバ14に沿って1つの列から次の列へと互い違いにされることができ、リザーバ14の傾斜した又はテーパの部分にも開口部が存在し得る。
【0025】
種々の実施形態において、所望の治療薬又は薬物を所望の速度で所望の期間にわたって送達するために、リザーバ14を使用することができる。例えば、一実施形態では、リザーバ14を使用して、40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液、USP(Kenalog(登録商標)−40、Bristol−Myers Squibb,Somerville,New Jersey)を約0.10mL送達することができる。1日当たり約100μgのトリアムシノロンが14日にわたってこの実施形態のリザーバ14を出て行くことになる。
【0026】
微生物感染の治療のために使用する場合、リザーバ14を使用して、好適な抗菌剤(例えば、抗生物質又は抗真菌剤)を、単独で又はコルチコステロイドなどの消炎剤と組み合わせて送達することができる。例えば、真菌性上顎洞炎を患う患者の場合、このリザーバ14を使用して、PfizerよりAmphocin(登録商標)抗真菌剤として販売されている、0.3〜1.5mg/kgのリポソーム又は非リポソームアンフォテリシンBなどの抗真菌剤を送達することができる。全身投与されたアンフォテリシンは、典型的には、血流から粘膜を通過する分配(逆もまた同様)が限られている。この物質送達スペーサ装置11を用いれば、アンフォテリシンが有害な真菌が存在する粘膜内に局所的に放出されることができ、薬物が繊毛作用によって副鼻腔に分配される際に、薬物の治療上の有効濃度が粘液中で維持され得る。しかしながら、相当量のアンフォテリシンが副鼻腔粘膜から実質的に吸収されないため、腎毒性などのアンフォテリシンの望ましくない全身作用の可能性が回避される。更に、このリザーバ14は、溶液のみならず懸濁液を周囲の解剖学的構造に送達することが可能である。このことは、多くのステロイドが懸濁液として提供されることから、ステロイドの送達に特に有用である。
【0027】
また、リザーバ14は、拡張後に空間を占拠する装置(例えば、ステント)としての機能を果たすことができ、隣接する解剖学的構造にそれ自体が摩擦係合して、所望の埋め込み部位にある程度の保持力を提供することができる。リザーバ14のこうした側面は、リザーバ14上に表面突起を設けることによって更に促進することができる。空間占拠機能を実行することだけが意図される用途では、リザーバ14は、活性治療薬を含有する溶液又は懸濁液でなく、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)で充填されてもよい。
【0028】
リザーバ14は、空の(例えば、収縮している又は圧縮されている)ときに直径が比較的小さいという利点も有しているので、容易に挿入又は取り出されることができる。リザーバ14が非柔軟性又は半柔軟性の材料で形成される実施形態では、リザーバ14は充填過程で大きく弾性変形することはないため、開口部31から所望の物質を放出させるためにその内容物に圧力を作用させることはない。むしろ、リザーバ14内の物質は、重力により、又は副鼻腔内の線毛作用によって継続的に移動させられている粘膜と接触することにより、開口部31から送出される。この非加圧式送達によって、所望の物質を数日間にわたって徐々に放出させることができる。
【0029】
特定の他の実施形態では、リザーバ14は小さな開口部31を有する柔軟又は弾性材料で形成することができるため、バルーン14を形成する材料は、開口部31から物質が出て行くにしたがって収縮し、これによりバルーン内部の圧力が維持される。一実施形態において、例えば、リザーバ14は、直径3.0〜3.5mm×長さ13mmであってもよい。リザーバ14は、ナイロン12で作製されてもよい。この実施形態では、リザーバ14の側壁には、約768個のレーザー切断された開口部31が形成されている。レーザー切断された開口部31のそれぞれの直径は、30ミクロンである。シャフト12の遠位端は、Dymax 204CTH接着剤を使用して、図のように塞がれている。シャフト12の遠位部は、外径約0.0711cm(0.028インチ)、内径約0.0508cm(0.020インチ)、及び長さ約17mmのナイロン12で形成されてもよい。エラストマースリーブ弁26は、長さ3mmのC−flex医療グレードTPE管で作製される。この管は、約0.0559cm(0.022インチ)の内径及び約0.0127cm(0.005インチ)の壁厚を有してもよい。遠位の放射線不透過性マーカー24及び近位の放射線不透過性マーカー22は、外径が約0.0864cm(0.034インチ)及び内径が約0.0762cm(0.030インチ)であるプラチナ−イリジウム合金のリングで作製されてもよい。シャフト12近位部は、外径約0.1570cm(0.0618インチ)、内径約0.1321cm(0.052インチ)、及び長さ約20cmのポリイミド管で作製され得る。一実施形態において、ハブ54(図3参照)は、Qosina(Edgewood,NY)部品番号41519により製造された透明ポリカーボネート製の雌ルアーハブである。一実施形態において、各保持ウィング18は、0.0218cm(0.0086インチ)の直径を有するNitinolワイヤーのベントループで作製される。保持ウィングは、装置の長手方向軸から80°〜90°で配向される。ニチノールワイヤーループを520℃で20分熱処理して、20℃のAfを生成する。物質送達装置11のこうした設計は、1日当たり約100μgのKenalog(登録商標)−40を14日にわたって送達する。
【0030】
一実施形態において、リザーバ14の外面は、生分解性マトリックス中に1種以上の治療剤を含有する破壊可能なコーティングでコーティングされてもよい。リザーバ14が充填されると、リザーバ14は拡張する。この拡張は破壊可能なコーティングを破壊し、その結果、コーティング片が周囲の解剖学的構造の中に入り、コーティング片はその後、治療剤を解剖学的構造の中に放出することになる。破壊可能なコーティングは、例えば、ゼラチン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、又は高分子量のポリエチレングリコール(PEG)などで形成され得る。このような破壊可能なコーティングは、典型的には、水性の環境中に溶解する。
【0031】
図1B及び図1Cを再度参照すると、一実施形態は、リザーバ14の充填を容易にするための開口28をカテーテルシャフト12の中に有する。弁26により、物質(又は物質の成分)はカテーテルシャフト12の管腔13からリザーバ14内に流入することができるが(図1Cを参照)、リザーバ14から管腔13内へと大きく逆流することはない(図1Bを参照)。弁26は、任意の好適な形式の逆止弁からなるものでよい。図に示される特定の実施形態では、弁28は、C−flex(登録商標)熱可塑性エラストマー(Consolidated Polymer Technologies,Inc.,Clearwater,Florida)で作製されたエラストマースリーブ弁からなる。
【0032】
一部の実施形態では、リザーバ14の近位端及び遠位端に印を付けるために、放射線不透過性マーカー22及び24が遠位カテーテルシャフト部分12bに取り付けられる。放射線不透過性マーカー22、24は、隣接する材料及び組織よりも明らかに放射線不透過性である材料で形成されるのが好ましい。この特定の非限定的な例では、マーカー22、24は、プラチナ−イリジウム合金で形成される。
【0033】
図1Aを再度参照すると、スペーサ装置11は、対象の身体の所望の位置に装置を保持するための位置保持部材を組み込んでもよい。図示されている非限定的な例では、位置保持部材は、縫合糸ループ20(例えば、小穴)並びに複数の突出部18(例えば、保持ウィング)を含む。縫合糸ループ20及び突出部18は、収縮されることができるように、柔軟な材料、可撓性材料、弾力材、弾性材料、又は超弾性材料(例えばニッケル−チタン合金(Nitinol)など)で形成され得る。突出部18は、図1Aに見られるように展開(例えば、外方に突出している)位置に付勢されていてもよいが、非展開(例えば、収縮している)形状に圧縮又は屈曲されている場合があり、この非展開形状では、突出部18は、カテーテルシャフト12の外表面と実質的に平行でありかつこれに隣接している。このようにして、以下により完全に記載されるように、これら突出部18は、スペーサ装置11の挿入及び位置決めの間、非展開位置に拘束されていてもよく、その後この拘束は取り除かれ(例えば、装置の遠位部が、ガイドカテーテル又はその他の管状送達ガイドの遠位端(disatl end)から外に出てきたときに)、突出部18がそれらの展開位置に跳ね上がる、ないしは別の方法で展開位置を呈することが可能となり、この展開位置において、突出部18は隣接する解剖学的構造と当接又は係合(例えば、摩擦係合)することになる。
【0034】
図に示される具体例では、突出部18はリザーバ14に近接して位置決めされており、正反対に対向する保持ウィングを形成するために曲げられた、直径0.0218cm(0.0086インチ)のワイヤー(例えば、ニッケル−チタンワイヤー)の2つのループの形態である。突出部18は、リザーバより遠位に、又は近位及び遠位の両方に位置決めされることも可能である。突出部18がニチノールの場合、冷却流体又は温流体を使用して、これらを「より柔軟な」状態に変化させることができる。各突出部18の長さは、意図された埋め込み部位に基づいて決定される。例えば、装置が幅約12mm未満の開口部を介して挿入される用途では、突出部18は、展開位置にあるときに約14mm〜約20mmの直径に広がるように寸法設定されてもよく、そうして、突出部18の付勢に打ち勝つような十分な抜き取り力が加えられるまで、開口部からスペーサ装置11が滑脱するのを防止する。突出部18の長さ及び形状はまた、スペーサ装置11が意図される埋め込み部位に最大限に保持されるのを確実にすると同時に、解剖学的構造にわずかな外傷を生じさせるように設計されてもよい。図の実施例では、突出部18を形成するワイヤーループ及び縫合糸ループ20は、ワイヤーをシャフトの周囲に巻き付け、シアノアクリレート、エポキシ、又は紫外線硬化性接着剤などの好適な接着剤を用いてワイヤーをシャフトに固定することにより、及び/又はポリマースリーブ又は熱収縮性部材をワイヤーのシャフト12の周囲に巻き付けられた部分の周囲に取り付けることによって、シャフト12の外表面に対して取り付けることができる。
【0035】
位置保持部材は、一実施形態では、ニチノールワイヤーで製造された小さな保持ウィングを備え、この保持ウィングは洞腔の内部で外方に跳ね上がるが、所望のときに装置を外して取り出すことができるように、比較的弱いバネ力を有する。有利に、スペーサ装置11は、外科手術環境ではなく、診療所で取り出されることができる。
【0036】
任意に、可撓性遠位部材17(図1A)は、シャフト12bの遠位端の延長であってもよく、又はシャフト12bの遠位端から延出してもよい。この任意の遠位部材17は、約1cm〜約5cmの長さを有してもよく、対象とする開口部を介したスペーサ装置11の通過を容易にすることができる。遠位部17が十分な長さのものである実施形態では、遠位部17は、スペーサ装置11が埋め込まれるときに洞腔内でらせん状又は回旋状になっていてもよく、したがって、スペーサ装置11が埋め込まれている間にスペーサ装置11が滑脱又は移動するのを防止する追加の手段として機能することができる。
【0037】
図2は、スタイレット40の詳細を示している。スタイレット40は、細長いシャフト44と、シャフト44の近位端にあるハブ部材42とを備える。シャフト44は、以下により完全に記載されるように、スペーサ装置11の管腔13の中に前進して、スペーサ装置11の挿入を容易にするように寸法設定される。スタイレットシャフト44は、任意の好適な材料で形成されることができ、かつ任意の好適な構造であることができる。この具体的な例では、シャフト44は、一連の領域44a、44b、44c、44d、44eに対して機械加工されたニッケル−チタン合金ワイヤーで形成されることができ、この一連の領域の直径は次第に小さくなっており、それにより、シャフト44の遠位部に、近位部よりも高い柔軟性がもたらされる。図に示される具体例では、シャフト44は、近位シャフト領域44aの直径約0.0838cm(0.033インチ)から、遠位シャフト領域44eの遠位端での直径約0.0254cm(0.010インチ)まで段階的に減少する。近位ハブ部材42は、スタイレット40がスペーサ装置11の中に完全に挿入されると、スペーサ装置11の近位ルアーコネクタ16と当接する又は中に固定されるように構成される。スタイレットシャフト44の長さは、ハブ42がスペーサ装置11の近位ルアーコネクタ16内にしっかり固定されると、スタイレットシャフト44の遠位端がプラグ部材23の近位面と接触する、又はその近くに位置付けられるような長さであってもよい。このようにして、スタイレットシャフト44は、挿入中に細長いスペーサ12の全て又はほぼ全てを占めることになる。
【0038】
図9及び図9Aは、例えば、前頭洞炎の治療する及び/又は外科手術若しくはバルーン拡張の後に前頭洞流出路の開通性の維持するために使用可能である、スペーサ装置200の別の実施形態を示す。この装置200は、細長い軟性カテーテルシャフト202と、カテーテルシャフト202の近位端にある翼付ハブ204と、カテーテルシャフト202の遠位端又はその近くにあるリザーバ206と、保持突出部208(例えば、拘束されていないと外方に跳ね上がるループ又はウィング)と、縫合糸ループ218とを備える。翼付ハブ204及びリザーバ206は、図1A〜図1Cの実施形態に関連して前述した翼付ハブ16及びリザーバ14と実質的に同じ構造のものであってもよい。カテーテルシャフト202の近位部212pは、カテーテルシャフト202の管腔を通過する物質の可視化を可能にするために、透明又は半透明の材料で形成されてもよい。縫合糸ループ218及び保持突出部208は、収縮されることができるように、柔軟な材料、可撓性材料、弾力材、弾性材料、又はニッケル−チタン合金(ニチノール)などの超弾性材料で形成され得る。保持突出部208は、図9に見られるように展開(例えば、外方に突出)位置に付勢されることができるが、ガイドカテーテル管腔を通って挿入されている間は、典型的には、非展開(例えば、収縮している)形状に拘束されており、この非展開形状では、保持突出部208は、カテーテルシャフト202の遠位部212dの外表面と実質的に平行でありかつこれに隣接している。図9Aの拡大図に見られるように、この実施例では、両方の保持突出部208は一体構造とされており、直径0.0218cm(.0086インチ)の材料(例えば、ニッケル−チタンワイヤー)の単一部位を輪にして、保持突出部208を含む2つの突出したループと、収縮性の管状のシース222の適用によるなどの任意の好適な手段によって、カテーテル本体202の遠位部212dに固定されているワイヤーの中間部分と、を形成することによって、形成されてもよい。一部の実施形態では、縫合糸ループ218もまた、環状の保持突出部208と同じ材料(例えば、ニッケル−チタンワイヤー)の部分から形成されて、保持突出部208と同様に縫合糸ループ218も単一の単体構成に形成されることができ、この単一の単体構成は、単一収縮性シース22などの単一アタッチメントによって、カテーテルシャフト202の遠位部212dに固定され得る。各保持突出部208の長さは、意図される埋め込み部位に基づいて決定される。例えば、リザーバ206が成人の前頭洞に埋め込まれる予定である用途では、保持突出部が完全に拘束から解かれて拡張したときに、少なくとも約8mm、典型的には約8mm〜約20mmの直径に広がるように、保持突出部は正反対に対向する方向に拡張してもよい。これにより、保持突出部は、前頭洞の内壁に摩擦により当接及び/又は係合するのが可能となり、保持突出部208の外方への付勢に打ち勝つような十分な抜き取り力が加えられるまで、リザーバ206が前頭洞から滑脱するのが防止される。他の実施形態と同様に、突出部18の長さ及び形状は、装置200の埋め込まれた部分が意図される埋め込み部位に最大限に保持されるのを確実にすると同時に、解剖学的構造にわずかな外傷を生じさせるように、具体的に寸法設定及び成形されてもよい。成人の前頭洞に配置するのを目的とした実施形態では、カテーテル本体202は、約200mm〜約500mmの範囲内の長さを有してもよい。図面に示される具体例では、カテーテル本体202の長さは290mmである。
【0039】
更に、図9に示される実施例において、スペーサ装置200は、装置の挿入及び適切な位置決めを容易にするために、直接可視化及び/又は内視鏡視覚化によって可視であるマーカーを含む。これらマーカーは、カテーテルシャフト202の近位部212pに形成された近位マーカー210(パッド印刷などによる)、及びカテーテルシャフトの遠位部に形成された内視鏡的遠位マーカー216を含む。更に、着色された、ないしは別の方法で視覚的に区別可能な切断領域214が、遠位カテーテルシャフト212dの埋め込み手順の間に切断されることが意図される部分に形成されてもよい。一部の実施形態において、この視覚的に区別可能な切断領域214は、鼻の粘液及び鼻腔内にあり得る任意の血液の自然なピンク色又は赤色との明瞭なコントラストを形成する、明るい青色又は任意のその他の色であってもよい。図に示される具体例では、視覚的に区別可能な切断領域の長さは約7.5cmである。図10A〜図10Eの手順実施例に関連して以下により詳細に説明されるように、マーカー210及び216は、保持突出部208がかかるガイドカテーテルの遠位端から外に出てきた時点を判定するために、ガイドカテーテルの他のマーカー又は構造的目印と組み合わされて用いられてもよい。
【0040】
上顎挿入ガイド
図3は、上顎洞の内壁に形成された開口部を介してスペーサ/スタイレットシステム10を挿入するのを容易にするための上顎挿入ガイド50の一実施形態を示す。ガイド50は、その近位端PEに近位ハブ54を有する細長いシャフト52と、まっすぐな近位部PPと、湾曲した遠位部DPと、を含む。任意の好適なシャフト構成体を使用することができる。この具体的な例では、シャフト52の近位部PPは、外管56と、内管58と、内管58の内壁に位置するインナーライナー59と、を備える。この例の外管56は、約0.3404cm(0.134インチ)の外径及び約85mmの長さを有するステンレス鋼ハイポチューブで形成されている。この例の内管58は、約0.2210cm(0.087インチ)の内径を有するナイロンチューブからなる。ライナー59は、薄いポリテトラフルオロエチレン(polytetrofluoroethylene)(PTFE)チューブからなる。シャフト52遠位部DPは、図のように、内管58及びライナー59の外管56の遠位端から突き出てこれを超える部分を含む。任意に、この遠位部DPの最遠位の3〜4mmは、装置の挿入中の組織の外傷又は磨耗を防止するために、内管58の材料よりも柔軟な材料(例えば、エラストマー又はヒドロゲル)で形成されてもよい。この非限定的な例では、シャフト52の遠位部DPは、約22mmの長さ、約0.2769cm(0.109インチ)の外径、及び約0.2210cm(0.087インチ)の内径を有する。曲率半径が約0.3〜約0.375である約90度〜約100度の湾曲部が、シャフト52の遠位部DPに形成される。内管58は、外管56の管腔を通って延在し、インナーライナー59の遠位部は、外管56の遠位端から突き出る。内管58の遠位端から突き出るこのインナーライナー59の遠位部は、曲がって所望の湾曲を形成する。この非限定的な例では、内管58の突き出ているインナーライナー59は、所望の曲線形状を維持するのに十分なだけ剛性であるが、使用中の解剖学的構造への不必要な外傷を防ぐ又は軽減するのに十分なだけ可撓性である。更に、インナーライナー59は、所定の位置に挿入及び動かし入れられているときに、ユーザーが隣接する鼻傍構造を意志的にずらすことができるように、十分に剛性である。
【0041】
ガイド装置50の使用中の位置決めを容易にするために、このガイド装置50上に1つ以上の放射線不透過性マーカー又は可視マーカーが提供されてもよい。上顎挿入プローブ:図4は、上顎洞の壁を貫通する開口部を形成するために使用することができる上顎挿入プローブ60の例を示している。このプローブ60は、近位端のハンドピース64と、遠位端の鋭い遠位先端68とを有する細長い剛性シャフト62を備えている。約90度〜約110度の湾曲66が、細長いシャフト62の遠位先端の近くに形成されている。
【0042】
前頭洞挿入ガイド:
図8A〜図8Cは、図9のスペーサ装置200と共に使用するように特別に設計された前頭洞挿入ガイド100の例を示す。このガイドは、シャフト102の近位端に翼付ルアーハブ104を有する、細長くて湾曲した管状カテーテル102を含む。ウィング104a、104bは、図8Cの端面図から分かるように、シャフト102が湾曲する方向に整列され得る。カテーテルシャフト102は、まっすぐな近位部106と、曲率半径が約90度の湾曲した遠位部108とを有する、透明又は半透明の管を備える。カテーテルシャフト102のまっすぐな近位部106は、金属製ハイポチューブなどの剛性管の一部によって囲まれており、それによりまっすぐな近位部106は湾曲した遠位部108よりも剛性になっている。第1の可視及び/又は放射線不透過性マーカー112は、ガイドカテーテル100の遠位部108上に、カテーテルシャフト102の遠位端から既知の距離(例えば、2.5cm)の位置に形成される。第2の可視及び/又は放射線不透過性マーカー114は、遠位端に形成される。このガイド100の長さ並びにマーカー112、114の位置決めは、このガイドを通して挿入されることになるスペーサカテーテル上の他のマーカーの長さ及び位置決めと揃えられてもよい。例えば、図9に示されるスペーサ装置200は、このガイド100に対して寸法設定及び構成されて、スペーサカテーテル200がガイド100の管腔を通って挿入されているときに、操作者に明確な目安を提供することができる。例えば、
・スペーサカテーテル200のマーカー210の遠位端Dがガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なるとき、スペーサカテーテル100の遠位端が、ガイド100の遠位端とぴったり重なっていることを示し、
・スペーサカテーテル200のマーカー210の近位端Pがガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なるとき、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを示し、及び
・スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216が、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112の下に、又は他の何らかの所定の位置関係で位置付けられるとき、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを示す。
【0043】
少なくとも一部の実施形態では、放射線不透過性(radipaque)ストライプ又はバンドなどの画像形成可能なマーカーを、これら可視マーカーに加えて又はその代用として使用することができる。
【0044】
更に、ガイド100の遠位部108が透明又は半透明である実施形態では、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112とスペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216とは別々の色であってもよく、スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216とガイド100の可視マーカー112とが互いに間接整列している(例えば、一方が他方の上に重なっている)ときに、これらの色は組み合わさって、第3の色を形成してもよい。例えば、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112は半透明の青であってもよく、スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216は黄色であってもよく、その結果、スペーサカテーテル200が、スペーサカテーテル200の黄色い内視鏡的マーカー216がガイド100の半透明の青いマーカー112の真下にきてこれと整列される位置まで進められると、これらの色の混合により緑色に見えることになり、それによって、マーカー112とマーカー216とが整列されて、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出てきたことを操作者に示す。
上顎洞炎の治療方法の実施例:
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(洞−鼻開口部を介したスペーサの配置)
図5A〜図5Gは、上顎洞MSの壁Wを通って開口部70を形成し、かつリザーバ14が上顎洞MS内にくるようにスペーサ装置11を埋め込むことによって、上顎洞炎を治療する方法の非限定的な例を示している。
【0046】
多くの対象において、上顎洞MSの内壁中部約3分の1は、下鼻道IMの外側壁としての機能も果たしている。この例では、上顎挿入プローブ60が鼻孔を介して挿入され、上顎挿入プローブ60の鋭い遠位先端68が、上顎洞壁Wを形成する下鼻道IMの外側面と接触する位置まで、上顎挿入プローブ60が下鼻道IMを通って進められる。任意に、必要であれば、下鼻甲介ITが中間に置かれてもよい。しかしながら、たいていの対象において、使用される装置は、下鼻甲介ITの貫通破壊又は中央化(Medialization)を必要とせずにこの手技を実施するように寸法設定される。
【0047】
次に、上顎挿入プローブ60の鋭い遠位先端68は、図5Aに示されるように上顎洞壁Wを通って押し込まれ、そうして壁Wを貫通する開口部70(図5B)を形成する。次に、図5Bに示されるように顎挿入プローブ60が除去される。その後、図5Cに見られるように、上顎送達ガイド50が下鼻道IMに挿入されて、遠位端DEが上顎洞MSの壁Wの開口部70内にある又は開口部70と整列する位置まで進められる。その後、図5Dに示されるように、スタイレットシャフト44が中に挿入されたスペーサ装置11は、リザーバ14及び保持部材18が洞腔に入るように、ガイド50を通して進められる。保持部材18がガイド60の管腔から外に現れると、保持部材18はそれらの展開位置まで外方に跳ね上がる。そのように展開されると、保持部材18は、開口部70の直径よりも大きな幅に広がり、それによってスペーサ装置11が上顎洞MSから滑脱するのを防止する。その後、スタイレットシャフト44は逆戻りし、スタイレット40が除去される。
【0048】
図5Fに見られるように、次に、注射器又はその他の注入装置がスペーサ装置11のルアーコネクタに取り付けられ、所望の物質をリザーバ14に注入するために使用されて、リザーバを拡張させる。場合によっては、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)が用いられてもよい。別の場合では、作用物質を含有する流体が注入されてもよく、それにより、作用物質はその後、所望の期間にわたりリザーバ14から上顎洞MSに流れていく。例えば、トリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液、USP(Kenalog(登録商標)−40、Bristol−Myers Squibb,Somerville,New Jersey)を送達するために使用する場合、リザーバ14は、約16mmの全長及び約13mmの作業長さ(即ち、円筒状の側壁14cの長さ)を有してもよく、3.0〜3.5mmである完全に拡張した直径まで拡張可能であってもよい。リザーバ14の側壁に約768個のレーザー切断された開口部31が形成されてもよく、かかる開口部31のそれぞれの直径は約40ミクロンである。この特定のリザーバの構造は、0.31〜0.35mLの40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液で充填された場合、1日当たり約100μgの用量のトリアムシノロンアセトニドを28日間にわたって上顎洞(MS)の中に送達する。
【0049】
図5Gに見られるように、所望の物質がリザーバに充填された後、近位シャフト部分12aは遠位シャフト部分12bから切断される、ないしは別の方法で切り離される。任意に、インプラントの位置決めを更に確実にするために、残っている遠位シャフト部分12bが、鼻の中の隣接する解剖学的構造に取り付けられてもよい。図5Gに示される非限定的な例では、これは、鼻中隔Sに縫合糸ループ20を縫合することによって達成される。
【0050】
装置12の埋め込まれた部分は、所定位置に所望の期間留まることができ、その後除去されることができる。例えば、長期にわたる上顎洞炎の治療目的でリザーバ14がステロイド及び/又は抗菌剤で充填される用途では、装置12の埋め込まれた部分は、作用物質がリザーバから出ていく状態で約14〜28日の間所定位置に留まるのが典型的には望ましい。一部の対象では、あらゆる作用物質が出て行ってリザーバ14から無くなった後も、スペーサ機能を遂行する(例えば、開口部70の開通性を維持する)ために、装置12の埋め込まれた部分を所定位置に留まらせてもよい。
【0051】
(実施例2)
(口の拡張を伴う又は伴わない上顎洞口を介したスペーサの配置)
本発明の別の実施形態では、図6に示されるように、スペーサ装置11は、自然口MOの拡張又は手術的矯正法を伴って又は伴わずに、上顎洞MSの上顎口MOを介して埋め込まれてもよい。
【0052】
各上顎洞は自然上顎洞口MOであり、自然上顎洞口MOを通って分泌物が上顎洞腔から鼻に流れ出る。この自然口は、軟組織(粘膜組織)で覆われた骨(この骨は通常は無傷で破壊されていない)の中の開口部によって形成される。一部の個体では、1つ以上の副口が存在している場合もある。上顎口の解剖学的位置のせいで、対象の頭部が直立しているときに、重力は通常、洞腔から粘液を排出させることはできない。したがって、洞腔から粘液を取り除くために、粘液の毛様体輸送が必要である。上顎洞腔は、通常、粘膜骨膜として知られる繊毛軟組織で覆われている。典型的には、洞腔底に由来する(originals)放射状又は星状のパターンの繊毛輸送粘液(cilia transport mucus)は、洞腔の前壁、内壁、後壁、外側壁、及び上部壁の上に放射状に広がり、かつ自然口(又は口)に集まる。粘液は、次に、自然口を通って鼻に流れ出る。更に、空気は、通常、この口を通って上顎洞腔に入る。自然口が閉塞する又は狭窄すると、粘液の正常な排液及び上顎洞腔の通気が損なわれ、結果として長期にわたる慢性副鼻腔炎が生じ得る。
【0053】
骨及び軟組織を切除して自然口を広げる洞手術が行われることがある。更に、上顎洞の自然口は、Balloon Sinuplasty(商標)(Acclarent,Inc.,Menlo Park,California)として知られる技術によって広げられることができ、この技術では、予備成形されたガイドカテーテルが鼻に挿入された後、バルーン拡張カテーテルがガイドカテーテルを通して前進される。バルーンカテーテルのバルーンは、上顎洞口内に位置付けられかつ膨らまされ、それによって自然口を拡張する。この拡張は、典型的には、上にある軟組織と共に口を画定する骨(即ち、無傷で破壊されていない骨)の破壊又はその他の移動を引き起こす。上顎口にバルーン拡張カテーテルを導入するために使用可能である上顎洞ガイドカテーテルは、Relieva(登録商標)洞ガイドカテーテル(Acclarent,Inc.,Menlo Park,California)として市販されている。こうした上顎ガイドカテーテルの構造及び形状に関する詳細、並びに上顎洞口のバルーン拡張に関する詳細は、上記で組み込まれた米国特許及び米国特許出願公開に見出される。この実施例で記載の通り、上顎洞ガイドカテーテルは、本発明のスペーサ装置11の上顎洞口を介した配置をガイドするためにも使用され得る。
【0054】
本発明のこの実施形態では、市販のタイプ及び前述のような上顎洞ガイドは、中鼻道MMの中に前進されて、上顎洞口の中に又は上顎洞口と整列して位置付けられる。任意に、バルーン拡張カテーテル(例えば、Relieva Solo Pro(商標)洞バルーンカテーテル、Acclarent,Inc.,Menlo Park,California)を上顎洞ガイドを通して前進させ、口の中に位置付け、口を拡張するために使用した後、上顎洞ガイドを適所に残した状態で除去してもよい。あるいは、場合によっては、上顎洞ガイドカテーテルの配置の前に上顎口を外科的に広げるために、外科手術が行われてきた。
【0055】
スタイレットシャフト44が中に挿入されているスペーサ装置11は、上顎洞ガイドカテーテルを通して前進させられ、そうしてリザーバ14及び保持部材18が上顎洞MSに入る。保持部材18がガイドカテーテルから外に出ると、保持部材18は展開位置へと外方に跳ね上がる。そのように展開されると、保持部材18は、自然口又は広げられた上顎口の直径よりも大きな幅に広がり、それによってスペーサ装置11が上顎洞MSから滑脱するのを防止する。その後、スタイレットシャフト44は逆戻りし、スタイレット40が除去される。次に、注射器又はその他の注入装置がスペーサ装置11のルアーコネクタに取り付けられ、所望の物質をリザーバ14に注入するために使用されて、図6に見られるようにリザーバを拡張させる。場合によっては、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)が用いられてもよい。別の場合では、作用物質を含有する流体が上述のように注入されてもよく、それにより、作用物質はその後、所望の期間にわたりリザーバ14から上顎洞MSに流れていく。
【0056】
所望の物質がリザーバ14に充填された後、スペーサ装置11の近位シャフト部分12aは遠位シャフト部分12bから切断される、ないしは別の方法で切り離される。任意に、インプラントの位置決めを更に確実にするために、残っている遠位シャフト部分12bが、鼻の中の隣接する解剖学的構造に取り付けられてもよい。図6に示される非限定的な例では、これは、鼻中隔Sに縫合糸ループ20を縫合することによって達成される。
【0057】
装置12の埋め込まれた部分は、所定位置に所望の期間留まることができ、その後除去されることができる。上で説明したように、長期にわたる上顎洞炎の治療目的でリザーバ14がステロイド及び/又は抗菌剤で充填される用途では、装置12の埋め込まれた部分は、作用物質がリザーバから出ていく状態で約14〜28日の間所定位置に留まるのが典型的には望ましい。一部の対象では、あらゆる作用物質が出て行ってリザーバ14から無くなった後も、スペーサ機能を遂行する(例えば、開口部70の開通性を維持する)ために、装置12の埋め込まれた部分を所定位置に留まらせてもよい。
【0058】
(実施例3)
(犬歯窩又は頬側窩の中の開口部を介したスペーサの配置)
口腔と上顎洞との間に開口部(例えば、穿刺路)を形成する技術が確立されている。典型的には、こうした技術は、犬歯窩又は頬側窩を通って上顎洞腔に入る開口部を形成することを含む。図7に示される例では、開口部は、歯Tの上方の犬歯窩CFを貫通して形成され、その中にスタイレットシャフト44が挿入されているスペーサ装置11は、リザーバ14及び保持部材18が洞腔に入るように、開口部を通って前進される。これは、まっすぐな剛性管などの管状ガイドを犬歯窩の開口部に挿入した後、スペーサ装置11/スタイレットシャフト44をこの管状ガイドを通して前進させることによって容易になり得る。保持部材18がガイド60の管腔から外に出ると、保持部材18はそれらの展開位置まで外方に跳ね上がる。そのように展開されると、保持部材18は、犬歯窩の開口部の直径よりも大きな幅に広がり、それによってスペーサ装置11が上顎洞MSから滑脱するのを防止する。その後、スタイレットシャフト44は逆戻りし、スタイレット40が除去される。
【0059】
次に、注射器又はその他の注入装置がスペーサ装置11のルアーコネクタに取り付けられ、所望の物質をリザーバ14に注入するために使用され、それによりリザーバを拡張させる。場合によっては、生物学的に不活性な流体(例えば、食塩水)が用いられてもよい。別の場合では、作用物質を含有する流体が注入されてもよく、それにより、作用物質はその後、所望の期間にわたりリザーバ14から上顎洞MSに流れていく。例えば、トリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液、USP(Kenalog(登録商標)−40、Bristol−Myers Squibb,Somerville,New Jersey)を送達するために使用する場合、リザーバ14は、約16mmの全長及び約13mmの作業長さ(即ち、円筒状の側壁14cの長さ)を有してもよく、3.0〜3.5mmである完全に拡張した直径まで拡張可能であってもよい。リザーバ14の側壁に約768個のレーザー切断された開口部31が形成されてもよく、かかる開口部31のそれぞれの直径は約40ミクロンである。この特定のリザーバの構造は、0.31〜0.35mLの40mg/mLのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液で充填された場合、1日当たり約100μgの用量のトリアムシノロンアセトニドを28日間にわたって上顎洞(MS)の中に送達する。
【0060】
図7に見られるように、所望の物質がリザーバに充填された後、近位シャフト部分12aは遠位シャフト部分12bから切断される、ないしは別の方法で切り離される。任意に、インプラントの位置決めを更に確実にするために、残っている遠位シャフト部分12bは、鼻の中の隣接する解剖学的構造に取り付けられてもよい。図7に示される非限定的な例では、これは、歯Tの上方の頬粘膜に縫合糸ループ20を縫合することによって達成される。
【0061】
装置12の埋め込まれた部分は、所定位置に所望の期間留まってもよく、その後除去されてもよい。例えば、長期にわたる上顎洞炎の治療目的でリザーバ14がステロイド及び/又は抗菌剤で充填される用途では、装置12の埋め込まれた部分は、作用物質がリザーバから出ていく状態で約14〜28日の間所定位置に留まるのが典型的には望ましい。一部の対象では、あらゆる作用物質が出て行ってリザーバ14から無くなった後も、スペーサ機能を遂行する(例えば、開口部70の開通性を維持する)ために、装置12の埋め込まれた部分を所定位置に留まらせてもよい。
【0062】
前頭洞炎の治療方法の実施例:
(実施例4)
(前頭洞流出路を通したスペーサの配置)
図10A〜図10Eは、前頭洞FS内の副鼻腔炎を治療する目的で及び/又は前頭洞流出路FOTの開通性を維持するために、図8A〜図8Cの前頭洞ガイドカテーテル100を、図9〜図9Aのスペーサカテーテル200及び図2のスタイレット40と組み合わせて使用する方法の一例を示す。必ずしも全ての場合においてではないが、ある場合には、この方法は、前頭洞流出路の手術的矯正法又はバルーン拡張と併用して採用されてもよい。
【0063】
図10Aに示されるように、最初に前頭洞ガイド100が、内視鏡(図示せず)と共に鼻に挿入される。ガイドカテーテル100の遠位端が前頭洞流出路に導入され、遠位端が前頭洞FSに入った位置までガイド100が前進される。ガイドカテーテル100の第1の可視及び/又は放射線不透過性マーカー112が、カテーテルシャフトの遠位端から既知の距離(例えば、2.5cm)にあるので、これを参照点として使用して、ガイド100が十分に遠くまで進められてガイド100の遠位端が前頭洞FSの中にある時を操作者が知るのを助けることができる。第1の可視及び/又は放射線不透過性マーカー112を見やすくするために、適切な角度(例えば、75度)を有する内視鏡を使用してもよい。手術中に当初異なる角度の内視鏡が使用される場合には、前頭骨ガイドカテーテル100の挿入時に、及びこの手術中の挿入時以降は、操作者が内視鏡を切り替える必要がある又は切り替えることが望ましい場合がある。図10Aは、単独で挿入されたガイドカテーテル100が示されているが、スタイレット40が、中に挿入されているスペーサカテーテル200が、ガイドカテーテル100の管腔に予め挿入されてもよいこと、及びガイドカテーテル100、スペーサカテーテル200、及びスタイレット40が組み合わされて挿入されてもよいことを理解されたい。そのような場合には、スタイレット40は、典型的にはスペーサカテーテル200に挿入され、その後、スペーサカテーテル/スタイレットの組み合わせが、スペーサカテーテル200の近位マーカー210の遠位端Dがガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なるまで、ガイドカテーテル100の管腔の中に前進され、この重なり合いにより、スペーサカテーテル100の遠位端がガイド100の遠位端とぴったり重なっていることが示され、ガイドカテーテル100、スペーサカテーテル200、及びスタイレット40が単一体として対象の鼻に挿入される間、かかる位置が維持される。
【0064】
スタイレット40が中に挿入されているスペーサカテーテル200は、次に、ガイドカテーテル100の管腔を通って進められる(この例は図10Bに示されている)。この工程の間、操作者は、スペーサカテーテル本体202がガイドカテーテル100の近位端に進んでいる最中に、スペーサカテーテル本体202上のマーキングをモニタすることができる。スペーサカテーテル200にスタイレット40を任意に予め挿入することに関して上述したように、スペーサカテーテル200の近位マーカー210の遠位端Dが、ガイドカテーテルハブ104の近位縁とぴったり重なっている場合、これは、スペーサカテーテル100の遠位端がガイド100の遠位端とぴったり重なっていることを示す。その後、スペーサカテーテル200のマーカー210の近位端Pが、ガイドカテーテルハブ104の近位縁に到達すると、これは、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを示す。この時点で、スペーサカテーテル200の内視鏡的マーカー216が、ガイド100の内視鏡的可視マーカー112の下に(即ち、整列して)又は他の何らかの所定の位置関係で位置付けられ、これにより保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことが示されたという内視鏡的判断によって、操作者は、保持部材208がガイド100の遠位端から外に出たことを確認することができる。
【0065】
図10Cに見られるように、ガイドカテーテル100は、ガイドカテーテル100全体が対象の身体の外にある位置まで後退され、スタイレット40が除去される。スタイレット40及びガイドカテーテル100が近位側に引き抜かれている間に、展開した保持部材208は、圧縮されたリザーバ206が洞腔から滑脱するのを防止するために、前頭洞壁と係合又は当接する。その後、注射器240又はその他の注入装置が、スペーサカテーテル200の近位ハブ204に連結され、図1の実施形態に関して前述されたのと同じ方法で、所望の物質が、カテーテル202を通ってリザーバの中に導入される。
【0066】
所望の物質がリザーバ206に充填された後、操作者は、縫合糸ループ218を鼻中隔又はその他の解剖学的構造に取り付けるために、縫合糸Sを定置する。更に、操作者は、はさみ又は何らかの他の好適な切断装置を使用して、カテーテル本体202の視覚的に区別可能な切断領域214内を横に切断し、カテーテル200のそのような横切断部位に近い部分は除去される。このようにして、図10D及び図10Eに示されるように、物質が充填されたリザーバ206は、前頭洞FS内に埋め込まれたままとなる。この物質は、所望の期間にわたってリザーバ206から流出又は排出され、その後、装置は、上顎洞手術及び図1の実施形態に関して上述されたように、身体から取り除かれる。
【0067】
本明細書で用いられる用語「物質」は、任意の実現可能な薬物、プロドラッグ、タンパク質、遺伝子治療製剤、細胞、診断用薬、造影剤又はイメージング剤、生物学的製剤等を含んで広義に解釈されるべきである。そのような物質は、結合形態又は遊離形態、液体又は固体、コロイド又はその他の懸濁液、溶液であってもよく、ガス又はその他の流体若しくは非流体であってもよい。例えば、微生物感染を治療又は予防するのが望ましい用途では、送達される物質は、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫薬、抗真菌剤等)、コルチコステロイド又はその他の抗炎症剤(例えば、NSAID)、鬱血除去剤(例えば、血管収縮剤)、粘液希釈剤(例えば、去痰剤又は粘液溶解剤)、アレルギー反応を予防又は改善する剤(例えば、抗ヒスタミン剤、サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、IgE阻害剤、免疫賦活剤)、血管収縮剤を含有する又は含有しない麻酔剤(例えば、エピネフリンを含有する又は含有しないキシロカイン)、鎮痛剤、組織による粘液分泌を引き起こすアレルゲン又はその他の物質、出血を止めるための止血剤、抗増殖剤、細胞毒性薬(例えばアルコール)、タンパク分子、幹細胞、遺伝子又は遺伝子治療製剤、重要な治療作用又は治療剤をコードするDNA又はmRNAなどのタンパク質又は核酸を坦持するウイルス・ベクターなどの生物学的薬剤、焼灼剤(例えば硝酸銀)等の薬剤として許容される塩又は剤形を含むことができる。
【0068】
本明細書で使用することができる抗菌剤のいくつかの非限定的な例としては、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、オセルタミビル、ザナミビル、アミノグリコシド抗生物質(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、及びトブラマイシン)、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、アンフォテリシンB、アンピシリン、アンピシリン/スルバクタム、アトバクオン、アジスロマイシン、セファゾリン、セフェピム、セフォタキシム、セフォテタン、セフポドキシム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セファレキシン、クロラムフェニコール、クロトリマゾール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ダプソーン、ジクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、フォスカネット、ガンシクロビル、ガチフロキサシン(atifloxacin)、イミペネム/シラスタチン、イソニアジド、イトラコナゾール、ケトコナゾール、メトロニダゾール、ナフシリン、ナフシリン、ナイスタチン、ペニシリンGなどのペニシリン、ペンタミジン、ピペラシリン/タゾバクタム、リファンピン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、チカルシリン/クラブラン酸、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、バラシクロビル、バンコマイシン、マフェナイド、スルファジアジン銀、ムピロシン、ナイスタチン、トリアムシノロン/ナイスタチン、クロトリマゾール/ベタメタゾン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ブトコナゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、微生物を分裂させる又は無能にする洗剤様化学物質(detergent-like chemicals)(例えば、ノノキシノール−9、オクトキシノール−9、塩化ベンザルコニウム、メンフェゴール、及びN−ドコサノール(docasanol));標的細胞への微生物付着を阻害する及び/又は感染性病原体の侵入を防ぐ化学物質(例えば、PC−515(カラギーナン)、Pro−2000、及びデキストリン2サルフェートなどの硫酸化重合体及びスルホン化重合体);レトロウイルスが細胞内で複製するのを防止する抗レトロウイルス剤(例えば、PMPAゲル);「植物抗体」として知られている植物から遺伝子操作された抗ウイルス抗体などの、病原体に対抗する遺伝子操作された又は天然の抗体;組織の状態を変化させ、それを病原体に対して敵対させる薬剤(例えば、粘膜のpHを変化させる物質)(例えば、Buffer Gel及びAcidform);過酸化水素又は病原微生物を殺す、又はその成長を阻止する他の物質の生成を引き起こす非病原性、つまり「扱いやすい」微生物(例えば、乳酸菌);参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第6,716,813号(Linら)に記載されているもののような抗微生物タンパク質又はペプチド、あるいは抗菌性金属(例えば、コロイダルシルバー)が挙げられる。
【0069】
これに加えて又はこれに代えて、炎症を治療又は予防することが望ましい特定の用途では、本発明で送達される物質として、各種のステロイド又は他の抗炎症剤(例えば、非ステロイド系抗炎症剤、即ちNSAID)、鎮痛剤、又は解熱剤が含まれうる。例えば、ベクロメタゾン(Vancenase(登録商標)又はBeconase(登録商標))、フルニソリド(Nasalide(登録商標))、プロピオン酸(proprionate)フルチカゾン(Flonase(登録商標))、トリアムシノロンアセトニド(Nasacort(登録商標))、ブデソニド(Rhinocort Aqua(登録商標))、エタボン酸ロテプレドノール(loterednol)(Locort)、及びモメタゾン(Nasonex(登録商標))などの、経鼻投与によって以前に投与されてきたコルチコステロイドを使用することができる。上記のコルチコステロイドの他の塩の形態を使用することもできる。また、本発明において使用することが可能なステロイドの他の非限定的な例としては、これらに限定されるものではないが、アクロメタゾン、デソニド、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、フルオシノロン、フルランドレノリド、モメタゾン、プレドニカルベート、アムシノニド、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ハルシノニド、クロベタゾル、強化ベタメタゾン、ジフロラゾン、ハロベタゾル、プレドニゾン、デキサメタゾン、及びメチルプレドニソロンが挙げられる。使用することができる他の抗炎症剤、鎮痛剤、又は解熱剤としては、非選択性COX抑制剤(例えば、サリチル酸波生物、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサレート、ジフルニサル、スルファサラジン及びオルサラジン;アセトアミノフェン等のパラアミノフェノール派生物;インドメタシン及びスリンダク等のインドール酢酸及びインデン酢酸;トルメチン、ジコフェナク又はケトロラク等のヘテロアリール酢酸;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビブロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、及びオクサプロジン等のアリールプロピオン酸;メフェナム酸及びメロキシカム等のアントラニル酸(フエナメート);オキシカル(ピロキシカム、メロキシカム)及びナブメトン等のアルカノン等のエノール酸(Enolic acid))、並びに選択COX−2抑制剤(例えば、ロフェコキシブなどのジアリール置換フラノン;セレコキシブなどのジアリール置換ピラゾール;エトロダクなどのインドール酢酸;及びニメスライドなどのスルホンアニリド)が挙げられる。
【0070】
これに加えて、又はこれに代えて、アレルギー若しくは免疫反応及び/又は細胞増殖を治療又は予防することが望ましい場合などの一部の用途では、本発明において送達される物質には、a)ヒト化抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、組換え(遺伝子組換えによって生じる新たな細胞)アンタゴニスト、又は可溶性受容体などの各種のサイトカイン阻害物質、b)ザフィルルカスト、モンテルカスト及びジロートンなどの各種のロイコトリエン調節物質、c)オマリズマブ(rhu Mab−E25と以前は呼ばれていた抗IgEモノクローナル抗体)などの免疫グロブリンE(IgE)阻害剤及び分泌型白血球プロテアーゼ阻害剤、が含まれ得る。
【0071】
これに加えて、又はこれに代えて、粘膜組織を収縮させたり、充血を除去したり、又は止血を行うことが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、偽エフェドリン、キシロメタゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、エピネフリンを含むが、これらに限定されない充血除去又は止血を目的とした各種の血管収縮剤が含まれうる。
【0072】
これに加えて、又はこれに代えて、粘液の流れを促進することが望ましい場合などの一部の用途では、本発明において送達される物質には、アセチルシステイン(Mucomyst(商標)、Mucosil(商標))及びグアイフェネシンを含むが、これらに限定されない粘液又は粘液分泌物の粘性又は稠度を変更する各種の粘液溶解剤又は他の薬剤が含まれ得る。
【0073】
これに加えて、又はこれに代えて、ヒスタミンの放出を防止又は抑止することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、クロモリン(例えば、Nasal Chrom(登録商標))及びネドクロミルなどのヒスタミンの放出を防止する各種のマスト細胞安定化物質又は薬物が含まれ得る。
【0074】
これに加えて、又はこれに代えて、ヒスタミンの作用を防止又は阻害することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、アゼラスチン(例えば、Astylin(登録商標))、ジフェンヒドラミン、ロラチジンなどの各種の抗ヒスタミン剤が含まれ得る。
【0075】
これに加えて、又はこれに代えて、骨又は軟骨を溶解、分解、切断、破断若しくは再構成することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、骨及び/又は軟骨の強度を低下させるか改質することによって、骨又は軟骨を再構成、再成形、破断、又は除去する本発明の他の手技を容易とする物質が含まれ得る。このような薬剤の一例として、再構成又は改質しようとする骨の領域に隣接した物質送達インプラントで注入又は送達することが可能なEDTAなどのカルシウムキレート剤がある。別の例として、破骨細胞などの骨分解細胞からなる、あるいはこの細胞を含む製剤がある。他の例として、コラゲナーゼ(CGN)、トリプシン、トリプシン/EDTA、ヒアルロニダーゼ、及びトシルリシルクロロメタン(TLCM)などの、骨又は軟骨の成分を軟化又は分解することが可能な各種の物質の酵素が挙げられる。
【0076】
これに加えて、又はこれに代えて、特定の用途では、本発明において送達される物質には、イプラトロピウム(Atrovent Nasal(登録商標))などの鼻汁分泌を止める傾向を有する抗コリン作動薬を含むが、これらに限定されない鼻炎、鼻ポリープ、鼻の炎症、及び耳、鼻、咽喉の他の疾患を治療するために使用される他のクラスの物質、並びにここに列記されない他の薬剤が含まれ得る。
【0077】
これに加えて、又はこれに代えて、ポリープ又は浮腫組織から排液することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、フロセミドなどの局在又は局所作用性の利尿剤、及び/又は、塩化ナトリウムゲル又は組織から水分を抜く他の塩製剤などの高浸透圧剤、あるいは、粘液の浸透圧成分量を直接的又は間接的に変化させてより多くの水分を組織から脱出させることにより、ポリープをその部位で直接的に縮小させる物質が含まれ得る。
【0078】
これに加えて、又はこれに代えて、腫瘍又は癌病変を治療することが望ましい場合などの一部の用途では、本発明において送達される物質としては、抗腫瘍剤(例えば、癌化学療法剤、生物学的反応調節物質、血管新生阻害剤、ホルモン受容体遮断薬、凍結治療剤、又は新生組織形成又は腫瘍形成を破壊又は阻害する他の薬剤)を挙げることができ、例えば、癌細胞のDNAを攻撃することにより癌細胞を直接死滅させるアルキル化剤又は他の薬剤(例えば、シクロフォスファミド、イソホスファミドなど)、細胞のDNA修復に必要な変化を阻害することにより癌細胞を直接死滅させるニトロソウレア又は他の薬剤(例えば、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)など)、特定の細胞機能、通常はDNAの合成を妨害することにより癌細胞の増殖を阻害する代謝拮抗薬及び他の薬剤(例えば、6メルカプトプリン及び5フルオロウラシル(5FU)など)、DNAに結合するかあるいはDNAに入り込んでRNA合成を阻害することによって作用する抗腫瘍抗生物質及び他の化合物(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C及びブレオマイシンなど)、植物に由来する植物(ビンカ)アルカロイド及び他の抗腫瘍薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンなど)、ホルモン応答性癌の増殖に影響するステロイドホルモン、ホルモン阻害薬、ホルモン受容体アンタゴニスト及び他の薬剤(例えば、タモキシフェン、ヘルセプチン、アミノグルテサミド及びホルメスタンなどのアロマターゼ阻害剤、レトロゾール及びアナストラゾールなどのトリアゾール阻害剤、エクセメスタンなどのステロイド阻害剤など)、腫瘍の血管新生又は血管形成を阻害する抗血管新生タンパク質、小分子、遺伝子治療薬、及び/又は他の薬剤(例えば、meth−1、meth−2、サリドマイドなど)、ベバシズマブ(アバスチン)、スクアラミン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオザイム、AE−941(ネオバスタット)、CC−5013(レビミド)、medi−522(ビタキシン)、2−メトキシエストラジオール(2ME2、パンゼム)、カルボキシアミドトリアゾール(CAI)、コンブレタスタチンA4プロドラッグ(CA4P)SU11248、BMS−275291、COL−3、EMD 121974、IMC−1C11、IM862、TNP−470、セレコキシブ(セレブレックス)、ロフェコキシブ(ビオックス)、インターフェロンα、インターロイキン−12(IL−12)又は参照により本明細書に明確に組み入れるScience,Vol.289,1197〜1201ページ(2000年8月17日)において同定される全ての化合物、生物学的反応調節物質(例えば、インターフェロン、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、モノクローナル抗体、インターロイキン−2、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)など)、PGDF受容体アンタゴニスト、ヘルセプチン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、カルムスチン、クロラムブシル(cchlorambucil)、シタラビン、ダカルバジン、エトポシド、フルカルバジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトアジトロン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ストレプトシン、タキソール、タキソテール、これらの化合物の類似体/同種体及び誘導体、並びに、ここに列記されていない他の抗腫瘍剤が挙げられる。
【0079】
これに加えて、又はこれに代えて、新たな細胞を増殖させるかあるいは既存の細胞を改変することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、細胞(粘膜細胞、線維芽細胞、幹細胞、又は遺伝子操作された細胞など)、並びに、抗炎症物質をコードする遺伝子と一緒に注入されるプラスミド、アデノウイルスベクター、又はネイキッドDNA、mRNAなどの遺伝子及び遺伝子送達担体、更に、上述したように必要に応じて骨を改質又は軟化させる破骨細胞が含まれる。
【0080】
本明細書に開示される装置及び方法は、2種以上の物質の組み合わせを送達するために使用されてもよい。特定の一実施形態では、本明細書に開示される装置及び方法を使用して抗炎症剤(例えば、ステロイド又はNSAID)と粘膜溶解剤との組み合わせを送達することができる。
【0081】
本明細書に開示される装置及び方法を使用して、1種以上の物質を含むゲル又は粘稠液を送達することができる。このようなゲル又は粘性の液体は粘膜を被覆して粘膜に粘着し、これにより1種以上の物質を粘膜に徐々に送達することができる。一実施形態では、ゼラチン、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む可塑化炭化水素ゲルを、副鼻腔の粘膜などの粘膜に送達することができる。こうしたゲルを使用して粘膜に適当な物質を徐々に送達することができる。
【0082】
本明細書に記載される装置のリザーバ14は、各区画が特定の物質製剤を収容するように、任意に複数の区画を含んでもよい。このような複数の区画によって、複数の物質配合物が解剖学的構造に送達される前に混合されることが防止される。
【0083】
孔又は口を有する物質リザーバの1以上を適当な物質で充分に高い圧力で充填することにより、物質の一部を孔又は口から噴出させることもできる。この方法を用いて、物質の最初のボーラス量を周囲の解剖学的構造に送達することができる。
【0084】
本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、物質リザーバが解剖学的領域に導入された後に、適当な物質で充填することができる。また、本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、物質リザーバが解剖学的領域に導入される前に、適当な物質で充填することができる。また、本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、固体の凍結乾燥又は濃縮された物質で予め充填することもできる。固体の凍結乾燥又は濃縮された物質は、物質リザーバ内に溶媒を導入することによって活性型に変換される。これは、解剖学的領域に物質リザーバが導入される直前又は直後に行うことができる。また、本明細書に開示される物質リザーバの1以上を、物質の不活性型で予め充填することもできる。こうした物質の不活性型は、物質リザーバ内に活性化物質を導入することによって活性型に変換される。これは、解剖学的領域に物質リザーバが導入される直前又は直後に行うことができる。
【0085】
前述の通り、物質送達スペーサ装置11の埋め込み可能部分は、装置のかかる埋め込み可能部分が体内に埋め込まれたときに通気孔及び/又は排液管の役割を果たすことができる、通しルーメンを含んでもよい。
【0086】
本明細書に開示される1以上の物質送達装置の最遠位端の領域が、非外傷性の先端部を有してもよい。このような非外傷性の先端部は、1つ以上の物質送達装置の最遠位端の領域によって解剖学的構造が損傷することを防止又は低減するために用いられる。
【0087】
本明細書に開示される1以上の物質送達装置の外表面が、生体物質によって外表面に外殻が形成されるリスクを低減又は防止するコーティングを有してもよい。一実施形態では、コーティングは水を吸収してゲルを形成する材料からなる。このような材料の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒアルロン酸などが挙げられる。
【0088】
本明細書で開示される物質送達装置の1つ以上は、物質リザーバに充填された物質の相当量が送達された後で再充填されることができる。例えば、一実施形態において、物質送達装置は、針及び注射器を使用してアクセス可能な近位再充填ポートを含んでもよい。そのようなポートは、針を介して再充填された後に自己密封することができる。一実施形態は把持部材を含んでもよく、医師は、ピンセット又は別の器具を使用して装置を把持し、この把持部材を使用して、再充填中の装置を保持することができる。
【0089】
本明細書で開示される物質送達装置の1以上が、使用者が物質送達装置の位置を特定し、かつ/又は解剖学的構造を通じて物質送達装置を案内することを可能とする1以上のマーカーを含んでよい。例えば、物質送達装置は、使用者が解剖学的構造内への物質送達装置の挿入の深さを決定することを可能とする視覚的マーカーを含み得る。別の例では、物質送達装置は、使用者がレントゲン、MRIなどの画像診断技術を使用して物質送達装置の位置を特定し、かつ/又は物質送達装置を案内することを可能とする画像マーカーを含んでよい。
【0090】
上記の実施例では、リザーバに充填されてリザーバから排出される治療薬としてトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液(Kenalog(登録商標)40、Brystol−Myers Squibb Company,Princeton,New Jersey)が記載されているが、各種の他の治療薬をこのトリアムシノロンアセトニドの注射用懸濁液に加えて、又はその代わりに使用することができる。ステロイドを送達するために埋め込み式スペーサ装置11を使用することが望ましい特定の場合では、ステロイドは懸濁液ではなく、溶液として調製することができる。こうした場合には、ステロイドを適当な生体適合性の溶媒に溶解する。例えばシクロデキストリンは、少なくともある種のステロイドを溶解するのに適した溶媒として述べられている。Khomutov,S.M.,Dovbnya,D.V.and Donova,M.V.,Dissolution of a Mixture of Steroids in Cyclodextrin Solutions:a Model Description;Pharmaceutical Chemistry Journal;Vol.35,No.1i,pp.627〜629(November,2001)。
【0091】
場合によっては、本発明の装置を使用して、ステロイド又は他の物質を、点鼻薬又はスプレー(即ち、点鼻液)として鼻粘膜への経鼻投与用に市販されているかあるいはそれに適した製剤中で送達することができる。少なくとも一部の場合では、こうした点鼻液は、鼻分泌物に似ており、したがって正常な繊毛作用を妨害しないようなものとして調製される。このような点鼻液は等張液であり、pH 5.5〜6.5にわずかに緩衝されている。更に、点眼用製剤において使用されているものと同様の抗微生物防腐剤、及び必要に応じて適当な薬剤安定剤を製剤に加えてもよい。各種の市販の点鼻用製剤が知られており、例えば、抗生物質、ステロイド、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、及び臭化イプラトロピウム(ipitropium)を含んだものがある。
【0092】
可能かつ適当である場合に、本発明の装置によって送達される物質のいずれかを、所望により、リポソーム又はナノ粒子(例えば、ナノカプセル)の形態とすることができる。リポソームの形成及び使用は、当該技術分野では一般的に知られている。リポソームは、水性媒質中にリン脂質を分散させることによって、リン脂質が多重膜小胞(MLV)と呼ばれることもある多重膜の同心状の二重層小胞を自然に形成することによって形成される。MLVは通常直径25nm〜4μmである。MLVを超音波処理すると、MLVは、水溶液を含んだコアを有する直径約200〜500オングストロームの小さな単層ベシクル(SUV)を形成する。一般にリン脂質は水性媒質中に分散されると、水に対する脂質のモル比に応じてリポソーム以外の様々な構造を形成しうる。水に対する脂質のモル比が低いと、リポソームが形成される。リポソームの物理的特性は、pH、張性、及び2価のカチオンの有無に依存する。リポソームは、1)エンドサイトーシス(例えば、マクロファージ及び好中球などの細胞によるリポソームの食作用)、細胞表面への吸着、2)細胞表面の構成要素との相互作用、3)リポソームの脂質二重層が原形質膜に挿入されることによる細胞原形質膜との融合、又は4)リポソームの脂質の細胞膜又は細胞小器官の膜への移行(若しくはその逆)、などの異なる機構によって細胞と相互作用することができる。リポソームの配合が変わると、どの機構によってリポソームが副鼻腔、鼻粘膜などの細胞と相互作用するかは変わり得る。
【0093】
ナノ粒子は、外殻と、内部に所望の物質を入れることができる空間とからなる任意のナノ粒子である。ナノ粒子を形成するための方法は、当該技術分野では周知のものである。ポリマーナノカプセルは、特定の粒径及び形状のものを作製することができる。ポリマーナノカプセルは、厳密に規定された物理的及び化学的性質を有する単分散粒子として製造することが可能であり、したがって、副鼻腔、又は装置が埋め込まれる耳、鼻若しくは咽喉内の他の領域に存在するpH、粘液の流れ、又は他の条件などの特定の2分子誘発機構に応じた治療又は診断物質の放出を促進するように調整することができる。本発明ではナノカプセルを、特定の標的細胞(例えば、副鼻腔又は鼻腫瘍に関連する癌細胞、又は炎症状態に関連する細胞)と結合する特異的な化学受容体又は結合部位を有する「スマートドラッグ」として使用することができる。
【0094】
本発明を本発明の特定の実施例又は実施形態に照らして上記に述べたが、本発明が目的とする趣旨及び発明の範囲から逸脱することなくこれらの実施例及び実施形態に様々な追加、削除、変更及び改変を行うことが可能である点は認識されるであろう。例えば、ある実施形態又は実施例の任意の要素又は属性は、特別の定めのない限り、又はそうすることによって当該実施形態又は実施例がその目的とする使用に適さなくなる場合は除いて、別の実施形態又は実施例に組み込まれる、又は別の実施形態又は実施例と共に使用されることが可能である。また、方法又はプロセスの各工程が特定の順序で述べられているか又は列記されている場合、こうした各工程の順序は、特に断らない限り、あるいはそうすることによって当該方法又はプロセスがその目的において機能しないものとならない限りにおいて、変更することが可能である。全ての相応な追加、削除、改変及び変更は、述べられた実施例及び実施形態の均等物とみなし、以下の「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) ヒト又は動物対象における上顎洞の疾患を治療する方法であって、
前記上顎洞内への開口部を形成する工程と、
洞スペーサ装置を前記開口部を介して少なくともある程度まで前進させる工程と、
前記スペーサ装置の少なくとも一部を前記上顎洞内に保持するために、前記スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、
前記装置が収縮形状から拡張形状へと拡張するために、前記スペーサ装置の中に物質を導入する工程と、
前記導入された物質が前記スペーサ装置を出て前記疾患を治療するのを可能にするために、前記スペーサ装置を前記対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、を含む、上顎洞の疾患を治療する方法。
(2) 上顎洞内への開口部を形成する工程が、洞の壁を通して鼻腔と上顎洞との間に開口部を形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記開口部が、下鼻道又は中鼻道を通して前記上顎洞の中にペネトレータを挿入することによって形成される、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記ペネトレータが、貫通遠位端と、約80度〜約110度の湾曲部と、を有するシャフトを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記開口部が、前記上顎洞の中に下向きの角度で入るように形成される、実施態様1に記載の方法。
(6) 上顎洞内への開口部を形成する工程が、口腔と前記上顎洞との間に開口部を形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記開口部が犬歯窩を通って形成される、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記ペネトレータの位置決めを判定又は確認するために、画像誘導システムを使用することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 湾曲と、前記湾曲の方向を示すためのインジケータフラッグと、を有するペネトレータを使用して前記開口部を形成し、前記方法が、前記ペネトレータの湾曲の方向を判定又は確認するために前記インジケータフラッグを使用することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 管腔を有するペネトレータを使用して前記開口部を形成し、前記スペーサ装置を前進させることが、
ガイド部材を、前記ペネトレータの前記管腔を通し、前記開口部を通して、前記上顎洞の中に前進させる工程と、
前記スペーサ装置を前記ガイド部材を越えて前進させる工程と、を含む、実施態様1に記載の方法。
(11) 前記ガイド部材がガイドワイヤーを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記スペーサ装置を前進させることが、
管状ガイドを前記開口部に挿入する工程と、
前記スペーサ装置を前記管状ガイドを通して前進させる工程と、
前記スペーサ装置が前記開口部又は上顎洞内に位置付けられた状態のまま前記管状ガイドを除去する工程と、を含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記スペーサ装置が、中にスタイレットを収容することができる管腔を有する細長い部材を備え、前記スペーサ装置を前進させることが、
前記細長いシャフトの前記管腔に前記スタイレットを挿入する工程と、
前記スペーサ装置及びスタイレットを、前記開口部を介して挿入する工程と、
前記スタイレットを除去する工程と、を含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記保持部材が少なくとも1つの突出部を含み、前記方法が、
前記スペーサ装置の前記少なくとも一部が前記開口部を介して挿入されている間、前記少なくとも1つの突出部を収縮位置に維持する工程と、
前記少なくとも1つの突出部を拡張位置に移行させ、それによって前記少なくとも1つの突出部が、少なくとも1つの隣接する解剖学的構造と機械的に接触する工程と、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記少なくとも1つの突出部が、第1及び第2の横方向に対向する突出部を含み、前記第1及び第2の横方向に対向する突出部が、拡張位置にあるときに約14mm〜約20mmの直径に広がる、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記スペーサ装置をしっかりと固定することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(17) 前記スペーサ装置をしっかりと固定することが、前記スペーサ装置を組織に縫合することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記スペーサ装置の中央開口管腔を介して、前記上顎洞を通気すること及び前記上顎洞を排液させることの少なくとも一方を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(19) 前記物質が食塩水を含む、実施態様1に記載の方法。
(20) 前記物質が流体を含み、前記流体が、前記装置上の複数の孔を通って前記スペーサ装置から出て行く、実施態様1に記載の方法。
【0096】
(21) 前記物質が治療薬を含む、実施態様1に記載の方法。
(22) 前記治療薬がステロイドを含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記ステロイドがトリアムシノロンを含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記スペーサが、1日当たり約100マイクログラムの用量のトリアムシノロンが前記スペーサを出て行くように構成される、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記物質が、約14日〜約21日の間前記スペーサ装置から出続ける、実施態様1に記載の方法。
(26) ヒト又は動物対象において上顎洞又は前頭洞の疾患を治療するための方法であって、
上顎洞口又は前頭洞流出路を拡張する工程と、
リザーバを有する洞スペーサ装置を、前記上顎洞口又は前頭洞流出路を通して少なくともある程度まで前進させる工程と、
前記スペーサ装置の少なくとも一部を前記上顎洞内に保持するために、前記スペーサ装置の少なくとも1つの保持部材を展開する工程と、
前記リザーバを収縮形状から拡張形状へと拡張するために、前記スペーサ装置の前記リザーバの中に物質を導入する工程と、
前記導入された物質が前記スペーサ装置を出て前記疾患を治療するのを可能にするために、前記スペーサ装置を前記対象の中に1日〜60日にわたって放置する工程と、
を含む、上顎洞又は前頭洞の疾患を治療するための方法。
(27) 前記洞口又は前頭洞流出路を拡張する工程が、前記上顎洞口及び篩骨漏斗を拡張することを含む、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記上顎洞口及び篩骨漏斗を拡張することが、
前記上顎洞口及び篩骨漏斗内に拡張可能な拡張器を位置決めする工程と、
前記拡張器を拡張する工程と、を含む、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記拡張可能な拡張器がバルーンを含み、前記拡張器を拡張する前記工程が、前記バルーンを膨らますことを含む、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記前進工程が、
管状ガイドの遠位開口部が上顎洞又は前頭洞内にある位置まで、前記管状ガイドを挿入することと、
前記スペーサ装置の前記少なくとも1つの保持部材が、前記ガイドの前記遠位開口部から外に出てきて、上顎洞又は前頭洞腔内で展開する位置まで、前記洞スペーサ装置を前記管状ガイドを通して前進させることと、を含む、実施態様26に記載の方法。
(31) 前記スペーサ装置の前記少なくとも1つの保持部材が前記ガイドの前記遠位開口部から外に出た時点を判定するために、前記洞スペーサ装置上に形成された少なくとも1つの直接可視マーカーを直接的に視覚化する工程を更に含む、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記少なくとも1つの保持部材が前記ガイドの前記遠位開口部から外に出た時点を示す前記洞スペーサ装置上の内視鏡的可視マーカーを、内視鏡的に視覚化する工程を更に含む、実施態様30に記載の方法。
(33) 前記スペーサ装置の前記少なくとも1つの保持部材が前記ガイドの前記遠位開口部から外に出た時点を判定するために、前記洞スペーサ装置上の内視鏡的可視マーカーを内視鏡的に視覚化する前記工程が、前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上に形成された対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の位置まで前進した時点を内視鏡的に判定することを含む、実施態様32に記載の方法。
(34) 前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上に形成された対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の位置まで前進した時点を内視鏡的に判定する前記工程が、前記ガイド上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーと望ましい整列状態にある又はその上に重ね合わされた時点を判定することを含む、実施態様32に記載の方法。
(35) 前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、半透明又は透明、及び第1の色であり、
前記洞スペーサ上の前記内視鏡的可視マーカーが第2の色であり、
前記洞スペーサ装置上に形成された前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上に形成された対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の位置まで前進した時点を内視鏡的に判定する前記工程が、前記第1及び第2の色が混合されて、視覚的に区別可能な第3の色を形成し、それによって、前記ガイド上の前記半透明又は透明なマーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記対応するマーカーの上に重ね合わされたことを示す時点を、内視鏡的に判定することを含む、実施態様34に記載の方法。
(36) 上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステムであって、前記システムが、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
近位端、遠位端、及び前記細長いシャフトの前記管腔内へのスタイレットの挿入を可能にするように寸法設定された外径を有する前記スタイレットと、を含む、上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステム。
(37) 前記拡張可能なリザーバが、前記リザーバに導入された物質が前記リザーバを出て行けるように構成される、実施態様36に記載のシステム。
(38) 前記スタイレットが湾曲している、実施態様36に記載のシステム。
(39) 前記スタイレットの前記湾曲が、約90度〜約110度である、実施態様38に記載のシステム。
(40) 前記スタイレットが可鍛性である、実施態様36に記載のシステム。
【0097】
(41) 副鼻腔の疾患を治療するためのシステムであって、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
前記スペーサ装置が挿入可能である管腔を有する管状送達ガイドと、を含む、副鼻腔の疾患を治療するためのシステム。
(42) 前記管状送達ガイドが、近位部、及び前記近位部より可撓性の高い遠位部を有する、実施態様41に記載のシステム。
(43) 前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、前記近位部が可鍛性である、実施態様41に記載のシステム。
(44) 前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、該遠位部に湾曲が形成されている、実施態様41に記載のシステム。
(45) 前記湾曲が約80度〜約110度である、実施態様44に記載のシステム。
(46) 遠位端を有し、かつ前記細長いシャフトの前記管腔に挿入可能及び前記管腔から除去可能であるスタイレットと更に組み合わされる、実施態様41に記載のシステム。
(47) 前記管状送達ガイドが湾曲しており、前記スタイレットが、前記管状ガイドの前記湾曲を通って前進するのに十分なだけ可撓性である、実施態様46に記載のシステム。
(48) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、実施態様41に記載のシステム。
(49) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記リザーバ及び前記保持突出部が前記管状送達ガイドの前記遠位端から外へ出て前進した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、実施態様41に記載のシステム。
(50) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、実施態様41に記載のシステム。
(51) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、遠位端及び近位端を有する少なくとも1つの可視的にマークが付けられた部分を有し、前記洞スペーサ装置が前記ガイドの前記管腔の中に前進している間に、前記可視的にマークが付けられた部分の前記遠位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記洞スペーサ装置の前記遠位先端が前記ガイドの前記遠位端と水平になり、前記可視的にマークが付けられた部分の前記近位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出ているように、該可視的にマークが付けられた部分が前記管状送達ガイドに対して位置決めされかつ寸法設定される、実施態様41に記載のシステム。
(52) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが横に切断され得、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去され得、前記スペーサ装置が、前記洞スペーサ装置の前記シャフトが横に切断され、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去された後に、前記リザーバに充填された物質が前記リザーバから漏れ戻されるのを防止する少なくとも1つの弁部材を更に備える、実施態様41に記載のシステム。
(53) 前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、視覚的に区別可能な切断領域を有する、実施態様52に記載のシステム。
(54) 粘膜組織又は血液の色と対比させるために、前記視覚的に区別可能な切断領域が着色される、実施態様53に記載のシステム。
(55) 前記視覚的に区別可能な切断領域が青色である、実施態様54に記載のシステム。
(56) 内視鏡的可視マーカーが前記洞スペーサ装置上に形成され、対応する内視鏡的可視マーカーが前記ガイド上に形成され、前記洞スペーサ装置が前記ガイドを通って、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上の前記対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の空間的位置に到達した位置まで前進すると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出たことを示す、実施態様41に記載のシステム。
(57) 前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記所定の空間的位置に到達される、実施態様56に記載のシステム。
(58) 前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、透明又は半透明、及び第1の色であり、かつ
前記洞スペーサ上の前記内視鏡的可視マーカーが第2の色であり、
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記第1及び第2の色が混合して、視覚的に区別可能な第3の色を形成する、実施態様57に記載のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステムであって、前記システムが、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
近位端、遠位端、及び前記細長いシャフトの前記管腔内へのスタイレットの挿入を可能にするように寸法設定された外径を有する前記スタイレットと、を含む、上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステム。
【請求項2】
前記拡張可能なリザーバが、前記リザーバに導入された物質が前記リザーバを出て行けるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スタイレットが湾曲している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記スタイレットの前記湾曲が、約90度〜約110度である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記スタイレットが可鍛性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
副鼻腔の疾患を治療するためのシステムであって、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
前記スペーサ装置が挿入可能である管腔を有する管状送達ガイドと、を含む、副鼻腔の疾患を治療するためのシステム。
【請求項7】
前記管状送達ガイドが、近位部、及び前記近位部より可撓性の高い遠位部を有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、前記近位部が可鍛性である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、該遠位部に湾曲が形成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記湾曲が約80度〜約110度である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
遠位端を有し、かつ前記細長いシャフトの前記管腔に挿入可能及び前記管腔から除去可能であるスタイレットと更に組み合わされる、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記管状送達ガイドが湾曲しており、前記スタイレットが、前記管状ガイドの前記湾曲を通って前進するのに十分なだけ可撓性である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記リザーバ及び前記保持突出部が前記管状送達ガイドの前記遠位端から外へ出て前進した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項16】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、遠位端及び近位端を有する少なくとも1つの可視的にマークが付けられた部分を有し、前記洞スペーサ装置が前記ガイドの前記管腔の中に前進している間に、前記可視的にマークが付けられた部分の前記遠位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記洞スペーサ装置の前記遠位先端が前記ガイドの前記遠位端と水平になり、前記可視的にマークが付けられた部分の前記近位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出ているように、該可視的にマークが付けられた部分が前記管状送達ガイドに対して位置決めされかつ寸法設定される、請求項6に記載のシステム。
【請求項17】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが横に切断され得、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去され得、前記スペーサ装置が、前記洞スペーサ装置の前記シャフトが横に切断され、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去された後に、前記リザーバに充填された物質が前記リザーバから漏れ戻されるのを防止する少なくとも1つの弁部材を更に備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項18】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、視覚的に区別可能な切断領域を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
粘膜組織又は血液の色と対比させるために、前記視覚的に区別可能な切断領域が着色される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記視覚的に区別可能な切断領域が青色である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
内視鏡的可視マーカーが前記洞スペーサ装置上に形成され、対応する内視鏡的可視マーカーが前記ガイド上に形成され、前記洞スペーサ装置が前記ガイドを通って、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上の前記対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の空間的位置に到達した位置まで前進すると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出たことを示す、請求項6に記載のシステム。
【請求項22】
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記所定の空間的位置に到達される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、透明又は半透明、及び第1の色であり、かつ
前記洞スペーサ上の前記内視鏡的可視マーカーが第2の色であり、
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記第1及び第2の色が混合して、視覚的に区別可能な第3の色を形成する、請求項22に記載のシステム。
【請求項1】
上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステムであって、前記システムが、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
近位端、遠位端、及び前記細長いシャフトの前記管腔内へのスタイレットの挿入を可能にするように寸法設定された外径を有する前記スタイレットと、を含む、上顎洞の疾患の治療に使用可能なシステム。
【請求項2】
前記拡張可能なリザーバが、前記リザーバに導入された物質が前記リザーバを出て行けるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スタイレットが湾曲している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記スタイレットの前記湾曲が、約90度〜約110度である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記スタイレットが可鍛性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
副鼻腔の疾患を治療するためのシステムであって、
洞スペーサ装置であって、
管腔、近位端、及び遠位端を有する細長いシャフトと、
物質が、前記細長いシャフトの前記管腔を通って拡張可能なリザーバの中に導入されることができ、それによって前記リザーバを、直径約3mm〜約8mm及び長さ約1mm〜約100mmに拡張させるように、前記細長いシャフトの前記遠位端に取り付けられる前記拡張可能なリザーバと、
前記拡張可能なリザーバの近位に位置決めされ、かつ最初は収縮形状で配置可能であり、その後拡張形状に移行可能である保持突出部であって、約14mm〜約20mmの直径に広がる保持突出部と、を備える洞スペーサ装置と、
前記スペーサ装置が挿入可能である管腔を有する管状送達ガイドと、を含む、副鼻腔の疾患を治療するためのシステム。
【請求項7】
前記管状送達ガイドが、近位部、及び前記近位部より可撓性の高い遠位部を有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、前記近位部が可鍛性である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記管状送達ガイドが近位部及び遠位部を有し、該遠位部に湾曲が形成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記湾曲が約80度〜約110度である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
遠位端を有し、かつ前記細長いシャフトの前記管腔に挿入可能及び前記管腔から除去可能であるスタイレットと更に組み合わされる、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記管状送達ガイドが湾曲しており、前記スタイレットが、前記管状ガイドの前記湾曲を通って前進するのに十分なだけ可撓性である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記リザーバ及び前記保持突出部が前記管状送達ガイドの前記遠位端から外へ出て前進した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、前記細長いスペーサ装置の前記遠位端が前記管状送達ガイドの前記遠位端に到達した時点を示す少なくとも1つの可視マークを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項16】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、遠位端及び近位端を有する少なくとも1つの可視的にマークが付けられた部分を有し、前記洞スペーサ装置が前記ガイドの前記管腔の中に前進している間に、前記可視的にマークが付けられた部分の前記遠位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記洞スペーサ装置の前記遠位先端が前記ガイドの前記遠位端と水平になり、前記可視的にマークが付けられた部分の前記近位端が前記ガイドの前記近位端と水平になると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出ているように、該可視的にマークが付けられた部分が前記管状送達ガイドに対して位置決めされかつ寸法設定される、請求項6に記載のシステム。
【請求項17】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが横に切断され得、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去され得、前記スペーサ装置が、前記洞スペーサ装置の前記シャフトが横に切断され、かつ前記装置の前記横切断部位に近接した部分が除去された後に、前記リザーバに充填された物質が前記リザーバから漏れ戻されるのを防止する少なくとも1つの弁部材を更に備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項18】
前記洞スペーサ装置の前記細長いシャフトが、視覚的に区別可能な切断領域を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
粘膜組織又は血液の色と対比させるために、前記視覚的に区別可能な切断領域が着色される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記視覚的に区別可能な切断領域が青色である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
内視鏡的可視マーカーが前記洞スペーサ装置上に形成され、対応する内視鏡的可視マーカーが前記ガイド上に形成され、前記洞スペーサ装置が前記ガイドを通って、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記ガイド上の前記対応する内視鏡的可視マーカーに対して所定の空間的位置に到達した位置まで前進すると、前記保持突出部が前記ガイドの前記遠位端から外に出たことを示す、請求項6に記載のシステム。
【請求項22】
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記所定の空間的位置に到達される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、透明又は半透明、及び第1の色であり、かつ
前記洞スペーサ上の前記内視鏡的可視マーカーが第2の色であり、
前記ガイド上の前記内視鏡的可視マーカーが、前記洞スペーサ装置上の前記内視鏡的可視マーカー上に重ね合わされたときに、前記第1及び第2の色が混合して、視覚的に区別可能な第3の色を形成する、請求項22に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図9A】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図9A】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【公表番号】特表2013−514829(P2013−514829A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544859(P2012−544859)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060898
【国際公開番号】WO2011/084655
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(506353574)アクラレント インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060898
【国際公開番号】WO2011/084655
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(506353574)アクラレント インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】
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