説明

加工バリ取り方法及びベルト式加工バリ取り装置

【課題】ワークに発傷等を誘発することなく、加工バリ除去効率に優れた加工バリ取り方法及びベルト式の加工バリ取り装置を提供する。
【解決手段】ワーク搬送経路Lに沿って搬送される板状のワークWの表面Waに、ワーク搬送方向と交差する方向に延在する研磨ローラ32A及びテンションローラ38Aに巻き掛けられて循環走行する無端帯状の研磨ベルト41Aを、研磨ローラ32Aによって摺接させてワークWの加工バリWeを除去する際に、研磨ベルト41Aを研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿ってその研磨ローラ32Aの軸方向に往復動を付与する。搬送されるワークWの表面Wa側に突出する加工バリWeに対して研磨ベルト41Aが当たる方向が逐次多方向に変化し、加工バリWeが研磨ベルト41Aにより擦られてワークWから加工バリWeが確実に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工バリ取り方法及びベルト式加工バリ取り装置に関し、特に板状のワークの加工バリを除去する加工バリ取り方法及びベルト式加工バリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図18に模式的に示すように、アルミニウム合金板等の板材を切断機の可動刃101、いわゆるシャーにより切断すると、この切断されたワークとなる加工品Wの切断面Wcの端縁から表面Wa側や裏面Wb側に突出する加工バリWeが発生する。また、図19に模式的に示すように板材にドリル102等により穿孔すると、穿孔された加工品Wの孔Wdの端縁から表面Wa側や裏面Wb側に突出する加工バリWe、いわゆる孔バリが発生する。
【0003】
この加工品Wの切断面Wcや孔Wdの端縁に突出形成された加工バリWeは、加工品Wの品質低下を招くことから種々の方法で取り除かれる。この加工バリの除去には、例えば図20に模式的に示すようにベルトサンダ装置110が用いられる。このベルトサンダ装置110は、モータ111によって回転駆動される駆動ローラ112aと従動ローラ112bの間に無端帯状の研磨ベルト113が巻き掛けられる。この駆動ローラ112aと従動ローラ112bの回転駆動に伴って循環走行する研磨ベルト113に、加工品Wに突出形成された加工バリWeを押し当てて研削除去する。
【0004】
また、図21に示すように、加工品Wの切断面Wcの端縁に突出形成された加工バリWeや、図示を省略するが加工品Wの孔Wdの端縁に形成された加工バリWeをナイフ115による手作業で切削除去する。或いは、図22に示すようにV溝状の刃を有するスクレーパ116による手作業で加工品Wの切断面Wcの端縁に生じた加工バリWeを切削除去する。更に、図23に示すように回転するリューター117によって加工品Wの切断面Wcの端縁に形成された加工バリWeを研削除去する。更に、図24に示すように加工品Wの孔Wdの端縁に形成された加工バリWeを皿きり工具118によって研削除去することもある。
【0005】
一方、加工品Wに形成された加工バリを手作業によることなく自動的に除去するベルト式加工バリ取り装置がある。このベルト式加工バリ取り装置は、例えば図25に模式的に示すように、ワーク搬送用ベルトコンベヤ121と、このワーク搬送用ベルトコンベヤ121の上方に対向して研磨ベルト123がローラ124a、124b、124cに三角形の無端状に巻き掛けられた研削装置122とによって構成する。そして、加工品Wはワーク搬送用ベルトコンベヤ121上に載置されて搬送され、研削装置122の研磨ベルト123によって上面を研磨することで切断面Wcや孔Wdの端縁から突出する加工バリWeを除去する。
【0006】
また、特許文献1に開示の加工バリ取り装置は、図26に示すように、ワーク搬送用ベルトコンベヤ131の上方に、研磨ベルト133がローラ134a、134b、134cによって無端状に巻き掛けられた上面研削装置132が対向配置される。このワーク搬送用ベルトコンベヤ131の搬送方向下流側に順に、研磨ベルト136がローラ137a、137b、137cに無端状に巻き掛けられた下面研削装置135及びワーク搬出用ベルトコンベヤ139を配置し、更に下面研削装置135の上方にワーク押さえ用ベルトコンベヤ138を配置する。
【0007】
そして、加工品Wをワーク搬送用ベルトコンベヤ131で搬送し、上面研削装置132の研磨ベルト133によって上面、例えば表面Waが研磨されて表面Wa側に突出する加工バリを除去する。更にワーク押さえ用ベルトコンベヤ138によって搬送されながら下面研削装置135の研磨ベルト136によって裏面Wbが研磨されて裏面Wb側に突出する加工バリを除去する。加工バリが除去された加工品Wはワーク搬送用ベルトコンベヤ139によって搬出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平7−7847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらベルトサンダ装置、ナイフ、リューター、皿きり工具等による加工バリ取り作業は、作業者の手作業で行われることから、作業者の負担が大きく、また、切粉や粉塵の発生等により作業環境への影響が懸念される。
【0010】
また、ベルトサンダ装置による加工バリ取り作業にあたっては、研磨ベルトが加工品の加工バリの部分だけでなくその周辺部分にも当接して加工バリの周辺部分まで研削し、或いはナイフやスクレーパ、リューター、皿きり工具による加工バリ取り作業においても加工バリの部分だけでなく周辺部分まで研削して加工品の加工精度等の加工品質に影響を及ぼすおそれがある。また、皿きり工具等によって孔の端縁に形成された加工バリを除去する加工バリ取り作業をしたにもかかわらず、加工品の孔の端縁に加工バリが残存する場合には、孔の孔径より大径のドリル等でさらうことから、更に加工品の加工精度に影響を及ぼすこととなる。
【0011】
一方、ベルト式加工バリ取り装置にあっては、加工品をワーク搬送用ベルトコンベヤによって搬送しながら、研削装置の研磨ベルトによって研磨して加工バリを除去することから、加工バリ取り作業の自動化が得られ、作業者の負担が軽減できる。
【0012】
しかし、ベルト式加工バリ取り装置は、研削装置の研磨ベルトによって加工品に対して一方向に向かって研磨して加工バリを除去することから、加工バリの突出方向によっては除去されず残存することがある。これは、特に加工品にドリル等の回転工具により穿抗された孔の端縁に突出形成される加工バリ、即ち孔バリは突出方向が多様であり、一方向にのみ研磨する研磨ベルトでは除去しにくく残存することがある。これら残存する加工バリを手作業で除去するとから、加工コストの増大を招く要因となる。また、除去されずに残存する加工バリが、研削装置によって加工品の表面に押し付けられると、加工品の表面に傷が発生し、かつ押し潰された加工バリが加工品の表面に埋没して残存してその除去が困難になる。また、加工品から除去された加工バリがワーク搬送用ベルトコンベヤに付着すると、そのワーク搬送用ベルトコンベヤに付着した加工バリにより加工品の表面を傷付ける等加工品の品質低下を招く要因となる。
【0013】
かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、ワークに発傷等を誘発することなく、加工バリ除去効率に優れた加工バリ取り方法及びベルト式加工バリ取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する請求項1に記載の加工バリ取り方法の発明は、ワーク搬送経路に沿って搬送されるワークの表面に、該ワーク搬送方向と交差する面方向に回転中心軸線が延在する研磨ローラ及び該研磨ローラと対峙するテンションローラに巻き掛けられて循環走行する無端帯状の研磨ベルトを、該研磨ローラによって摺接させて該ワークの加工バリを除去する加工バリ取り方法において、上記研磨ベルトを上記研磨ローラの周面に沿って該研磨ローラの軸方向に往復動せしめることを特徴とする。
【0015】
これによると、搬送されるワークの表面に、ワークの搬送方向と交差する面方向に回転中心軸線が延在する研磨ローラ及びテンションローラに巻き掛けられて循環走行する研磨ベルトを研磨ローラによって摺接させて加工バリを除去するにあたり、研磨ベルトを研磨ローラの周面に沿って研磨ローラの軸方向に往復動をすることでワークの表面側に突出する加工バリに対して研磨ベルトが当たる方向が逐次変化する。これにより、移動するワークに突出する加工バリが研磨ベルトにより多方向から擦られてワークから分断して除去されてワークから加工バリが確実に除去される。また、ワークに残存する加工バリがなくなることから、従来、残存する加工バリの押圧により発傷していたワークの傷が抑制されて加工品の品質が向上する。
【0016】
上記課題を解決する請求項2に記載のベルト式加工バリ取り装置の発明は、ワーク搬送経路に沿ってワークを搬送するワーク搬送機構と、回転駆動手段により回転駆動されると共に周面が上記ワーク搬送経路に臨む研磨ローラ及び該研磨ローラと対峙するテンションローラに巻き掛けられた無端帯状の研磨ベルトを有する研磨機とを備え、ワーク搬送機構によって搬送されるワークの表面に上記研磨機の循環走行する研磨ベルトを研磨ローラによって摺接させて該ワークの加工バリを除去するベルト式加工バリ取り装置において、上記研磨ローラが上記ワーク搬送機構によるワーク搬送方向と交差する面方向に回転中心軸線が延在すると共に、研磨ベルトを研磨ローラの周面に沿って該研磨ローラの軸方向に往復動を付与する研磨ベルト往復動付与機構を備えたことを特徴とする。
【0017】
これによると、ワーク搬送機構によってワーク搬送経路に沿って搬送されるワークの表面に、ワークの搬送方向と交差する面方向に延在する研磨ローラ及びテンションローラに巻き掛けられて循環走行する研磨ベルトを研磨ローラによって摺接させて加工バリを除去するにあたり、研磨ベルトを研磨ベルト往復動機構により研磨ローラの周面に沿って研磨ローラの軸方向の往復動を付与することで、ワークの表面側に突出する加工バリに対して研磨ベルトが当たる方向が逐次変化する。これにより、ワーク搬送機構によってワーク搬送経路に沿って移動するワークに突出する加工バリが研磨ベルトにより多方向から擦られてワークから加工バリが確実に除去される。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2のベルト式加工バリ取り装置において、上記研磨ベルト往復動付与機構は、上記研磨ローラとテンションローラのいずれか一方のローラを他方のローラの回転中心軸線方向と平行な平面上で且つ各回転中心軸線を含む平面に垂直な面上で揺動させて上記研磨ベルトを研磨ローラの軸方向に往復動を付与することを特徴とする。
【0019】
これによると、研磨ローラ或いはテンションローラを他方のローラの回転中心軸線方向と平行な平面上で且つ各回転中心軸線を含む平面に垂直な面上で揺動させる簡単な構成で研磨ベルト往復動付与機構が構成できる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3のベルト式加工バリ取り装置において、上記研磨ベルトの往復移動端位置を検出するベルト位置検知センサを備え、該ベルト位置検知センサによる上記研磨ベルト位置検知に応じて上記研磨ベルト往復動付与機構の作動を制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0021】
これによると、ベルト位置検知センサにより研磨ベルトの往復移動端位置を検知し、その検知に応じて研磨ベルト往復動付与機構の作動を制御する制御部を備えることで、研磨ベルトの研磨ローラの軸方向への往復動が良好に制御できる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項のベルト式加工バリ取り装置において、上記ワーク搬送機構は、上下方向に延在する回転ローラが上記ワーク搬送経路に沿って対峙して列設され、該対峙して回転する各回転ローラと間に起立状態でワークを挟持しつつワーク搬送経路に沿って搬送することを特徴とする。
【0023】
これによると、上下方向に延在する各回転ローラとの間に起立状態でワークを挟持しつつワーク搬送経路に沿って搬送することから、ワークから分断された加工バリは下方に落下して研磨ベルトやワークに付着する加工バリや粉塵等が抑制され、加工バリや粉塵がワークに付着に起因するワークの発傷が防止或いは抑制される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、ワークの表面側に突出する加工バリに対して研磨ベルトが当たる方向が逐次変化して、ワークに突出する加工バリが研磨ベルトにより多方向から擦られて加工バリが確実に除去される。また、ワークに残存する加工バリがなくなり、加工バリによるワークへの発傷が抑制される
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態によるベルト式加工バリ取り装置の概要を示す全体斜視図である。
【図2】安全カバーを取り外した状態における側面図(図1のII矢視図)である。
【図3】バリ取り装置の平面図(図2のIII矢視図)である。
【図4】図3のIV矢視図である。
【図5】バリ取り装置の概要を模式的に示す斜視図である。
【図6】板厚調整機構を模式的に示す図である。
【図7】上流側研磨機を模式的に示す斜視図である。
【図8】図7のVIII矢視図である。
【図9】上流側研磨機の作動状態を示す図である。
【図10】図9のX矢視図である。
【図11】上流側研磨機の作動状態を示す図である。
【図12】図11のXII矢視図である。
【図13】エアブロウ装置の概略図である。
【図14】研磨機構の作用概要を示す図である。
【図15】研磨機構の作用概要を示す図である。
【図16】研磨機構の作用概要を示す比較参考図である。
【図17】加工品の概要を示す斜視図である。
【図18】切断機による板材の切断の概要を模式的に示す図である。
【図19】ドリルによる板材の穿孔の概要を模式的に示す図である。
【図20】従来のベルトサンダ装置による加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【図21】従来のナイフによる加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【図22】従来のスクレーパによる加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【図23】従来のリューターによる加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【図24】従来の皿きり工具による加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【図25】従来のベルト式の加工バリ取り装置による加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【図26】従来のベルト式加工バリ取り装置による加工バリ取りの概要を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による加工バリ取り方法及びベルト式加工バリ取り装置の一実施の形態を図1乃至図17を参照して説明する。
【0027】
本実施の形態における加工バリ取り方法及びベルト式加工バリ取り装置の説明に先立って、本実施の形態においてワークとなる加工バリを除去する加工品Wの一例を図17に示す斜視図を参照して説明する。図17に示す加工品Wは、アルミニウム合金板等の板状を切断及び穿孔した表面Wa及び裏面Wbを有する板状で、切断面Wc及び孔Wdの表面Wa側の端縁や裏面Wb側の端縁に加工バリWeが突出形成されている。
【0028】
図1は本実施の形態によるベルト式加工バリ取り装置1の概要を示す全体斜視図、図2は安全カバーを取り外した状態における側面図(図1のII矢視図)である。
【0029】
加工バリ取り装置1は、基台10と、この基台10に載置されるバリ取り装置20と、バリ取り装置20を覆う安全カバー50を備え、安全カバー50に開口するワーク投入口53から投入された加工品Wの加工バリWeをバリ取り装置20により除去し、加工バリWeが取り除かれた加工品Wをワーク搬出口から安全カバー50外に搬出する。この安全カバー50内においてバリ取り装置20によって加工品Wから除去された加工バリWeや粉塵等を集塵機60によって回収する。なお、以下説明の便宜上、安全カバー50のワーク投入口53から図示しないワーク搬出口に至る加工品Wが搬送される直線状の移動経路をワーク搬送経路Lと称する。
【0030】
これら加工バリ取り装置1を構成する基台10、バリ取り装置20、安全カバー50を順次説明する。
【0031】
基台10は、図1に示すように複数の支柱11と、各支柱11の下端に架設された下枠12と、各支柱11の上端間に架設された上枠13とを有するボックス枠状であって、下枠12上に矩形板状の下部支持部14が配設され、上枠13上に矩形板状に形成されたバリ取り装置20のベースとなるテーブル19が配設される。
【0032】
このテーブル19に隣接して安全カバー50の搬出口の下方に対応して緩やかに傾斜する矩形板状の加工品載置面15a及び加工品載置面15aの下流端縁に突出形成された加工品ストッパ15bからなる加工品搬出部15が配設される。また、テーブル19に隣接して作動スイッチ等の操作部を備えた操作ボックス16が配置される。下部支持部14には集塵機60及び操作ボックス16の作動部の操作に基づいて予め設定されたプログラムに従い各部の動作を制御する制御部を収容する制御盤17が配置される。
【0033】
次に、バリ取り装置20について図3乃至図12を参照して説明する。図3はバリ取り装置20の平面図である図2のIII矢視図、図4は図3のIV矢視図、図5はバリ取り装置の概要を模式的に示す斜視図である。
【0034】
バリ取り装置20は、後述する安全カバー50に開口する上下方向に長いスリット状のワーク投入口53から起立状態で投入された板状の加工品Wを、その起立状態を維持しつつワーク搬送経路Lに沿ってワーク投入口53側からワーク搬出口に向かってほぼ直線状に搬送するワーク搬送機構21、及びワーク搬送経路Lに隣接して配置される上流側研磨機31A及び下流側研磨機31Bの研磨機を備える。
【0035】
ワーク搬送機構21は、図3及び図4に示すようにテーブル19に支持部材を介在して支持された矩形平板状の下板23A及び上板24Aを備えた上流側搬送機構支持部22Aと、この上流側搬送機構支持部22Aに隣接して同様に矩形平板状の下板23B及び上板24Bを備えた下流側搬送機構支持部22Bを有する。
【0036】
上流側搬送機構支持部22Aの下板23Aと上板24Aとの間に上下方向に回転中心軸線が延在する複数の回転ローラ25aがワーク投入口53側からワーク搬出口方向にワーク搬送経路Lに沿って列設される。この複数の回転ローラ25aからなる上流固定側回転ローラ列に対峙して、複数の回転ローラ26aからなる上流可動側回転ローラ列が板厚調整機構27Aを介して上流固定側回転ローラ列に接離する方向A、Bに移動可能に支持される。これら各回転ローラ25a、26aは図示しないモータ等によって回転駆動される。
【0037】
板厚調整機構27Aは、図4に示すと共に図6に模式的に示すように下板23Aに沿って上流固定側回転ローラ列に対して接離方向A、Bに移動可能に設けられるローラ支持部材28Aと、ローラ支持部材28Aに取り付けられて傾斜するスライド面29aを有するスライダ29Aと、上板24Aに送りねじ機構等によって回転自在でかつこの回転に伴って昇降可能に支持されたロッド30Aと、ロッド30Aの下端に回転可能に支持されてスライド面29aに摺接するスライド面29bを有するスライダ29Bを有する。ローラ支持部材28Aは列設された回転ローラ25aを有する上流固定側ローラ列から回転ローラ26aを有する上流可動側ローラ列が離れる離反方向B、即ちスライダ29Aのスライド面29aとスライダ28Aのスライド面29bが圧接する方向に付勢手段となるスプリング28aによって常時付勢されている。
【0038】
ロッド30Aの上端に設けられた回転ノブ30Aaを回転操作することでロッド30Aが昇降し、ロッド30Aの昇降に伴って互いに摺接するスライダ29Bとスライダ29Aによるカム機構により、可動側ローラ支持部材28Aに取り付けられた上流可動側回転ローラ列が上流固定側回転ローラ列に接近方向A或いは離反方向Bに移動して回転ローラ26aと回転ローラ25aとの間隙、即ち離間距離が調整される。
【0039】
同様に、下流側搬送機構支持部22Bの下板23Bと上板24Bとの間に上下方向に回転中心軸線が延在する複数の回転ローラ25bがワーク投入口53側からワーク搬出口方向にワーク搬送経路Lに沿って列設される。この回転ローラ25bからなる下流固定側回転ローラ列は上流可動側回転列に対してほぼ連続して列設される。
【0040】
この複数の回転ローラ25bからなる下流固定側回転ローラ列に対向して複数の回転ローラ26bからなる下流可動側回転ローラ列26Bが板厚調整機構27Bを介して接離する方向に移動可能に支持される。この回転ローラ26bからなる下流可動側回転ロール列は上流固定側回転ロール列に対してほぼ連続して列設される。板厚調整機構27Bは板厚調整機構27Aと同様の構成であり、説明を省略するがロッド30Bの先端に設けられた回転ノブ30Baの回転操作に伴って下流可動側回転ローラ列が下流固定側回転ローラ列に接近方向或いは離反方向に移動して回転ローラ26bと回転ローラ25bとの間隙が調整される。これら各回転ローラ25b、26bは図示しないモータ等によって回転駆動される。
【0041】
このように構成されたワーク搬送機構21は、加工品Wの板厚に応じて回転ノブ30Aaの回転操作により板厚調整機構27Aを介して上流固定回転ロール列の各回転ロール25aと上流可動回転ロール列の各回転ロール26aとの間隙が調整される。同様に、回転ノブ30Baの回転操作により板厚調整機構27Bを介して下流固定回転ロール列の各回転ロール25bと下流可動回転ロール列の各回転ロール26bとの間隙が調整される。そして、安全カバー50のワーク投入口53から投入された加工品Wを、対向して回転駆動される上流固定回転ロール列の各回転ロール25aと上流可動回転ロール列の各回転ロール26aとの間、及び下流固定側回転ロール列の各回転ロール25bと下流可動側回転ロール列の各回転ロール26bとの間で起立状態に挟持しつつ、ワーク搬送経路Lに沿ってワーク投入口53側からワーク搬出口側に順次搬送する。
【0042】
上流側研磨機31Aは、図5及び図7に模式的に示し、かつ図8に図7におけるVIII矢視図を示すように、上流固定側回転ローラ列の隣接する回転ローラ25aの間においてワーク搬送経路Lに周面32Aaが臨む円柱状の研磨ローラ32Aと、研磨ローラ32Aと対峙すると共にテンションローラ揺動アクチュエータ40Aによって揺動するテンションローラ38Aを有する研磨ベルト往復動付与機構35Aと、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられる無端帯状の研磨ベルト41Aを備える。
【0043】
研磨ローラ32Aは、加工品Wの搬送方向、即ちワーク搬送経路Lと交差する面方向に回転中心軸線が延在、本実施の形態においては上下に延在して下端及び上端の両端がそれぞれ下板23A及び上板24Aに回転自在に支持された回転軸32Acを有し、下板23Aの下面に支持されたモータ33Aによって回転駆動される。
【0044】
一方、研磨ベルト往復動付与機構35Aは、下板23Aに下端が支持されて研磨ローラ32Aと対向して立設する支柱36Aと、支柱36Aの上部に研磨ローラ32Aから接離する水平方向に延在する回転軸37Aaを介して中央部が揺動自在に支持されて上下方向に延在すると共に上端及び下端に軸支部37Ab、37Acが形成されたコ字状のテンションローラ保持具37Aとを有し、支持部37Abと37Acとの間に円柱状のテンションローラ38Aが回転自在に支持される。
【0045】
このテンションローラ38Aは、テンションローラ保持具37Aを回転軸37Aaを中心に揺動付与機構39Aによって揺動付与される。揺動付与機構39Aは、下板23Aに配設されたリニアモータ或いは油圧シリンダ等のテンションローラ揺動アクチュエータ40Aと、テンションローラ揺動アクチュエータ40Aの往復動する出力軸とテンションローラ保持具37Aの下端を揺動可能に連結する連結ロッド40Aaを有し、テンションローラ揺動アクチュエータ40Aによる連結ロッド40Aaの往復動によってテンションローラ保持具37Aが回転軸37Aaを中心に揺動する。これにより、テンションローラ38Aは回転中心軸線が研磨ローラ32Aの回転中心軸線と平行な平面上で且つ各回転中心軸線を含む平面に垂直な面上で揺動する。
【0046】
これら研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aとの間に無端帯状の研磨ベルト41Aが巻き掛けられる。この研磨ベルト41Aは無端帯状の基材布を裏地とし、表面に例えば♯600番〜♯800番の砥粒が付着される。
【0047】
また、下板23Aには、後述する昇降移動する研磨ベルト41Aが予め設定された下降端位置及び上昇端位置に移動したことを検知するベルト位置検知センサ42Aが設けられる。このベルト位置検知センサ42Aによる研磨ベルト41Aの下降端位置検知及び上昇端位置の検知に基づき、制御部によって作動制御されるテンションローラ揺動アクチュエータ40Aにより連結ロッド40Aaを牽引或いは送り出す往復動によりテンションローラ保持具37Aが揺動する。
【0048】
このように構成された上流側研磨機31Aは、図7及び図8に示すように離間して対峙する研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに研磨ベルト41Aが張力、即ちテンションが付与された状態で巻き掛けられる。モータ33Aによって研磨ローラ32Aが回転付与されると、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41Aが循環走行する。なお、矢印Rは研磨ローラ32Aの回転方向を示し、矢印Fは研磨ベルト41Aの走行方向を示す。
【0049】
この研磨ローラ32Aが回転し研磨ベルト41が循環している状態で、図9に上流側研磨機31Aを模式的に示し、かつ図10に図9のX矢視図を示すようにテンションローラ揺動アクチュエータ40Aによってテンションローラ保持具37Aの下端を矢印C1方向に押動すると、テンションローラ保持具37Aが回転軸37Aaを中心に矢印C2方向に揺動してテンションローラ保持具37Aの傾斜に伴ってテンションローラ38Aが傾斜する。この傾斜するテンションローラ38Aによって研磨ローラ32Aに対する研磨ベルト41Aの走行上流側が下流側に比較して上方となり、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41が循環走行しつつ研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿ってワーク搬送方向Lと直交す研磨ローラ32Aの軸方向上方側、即ち矢印C3方向に誘導される。
【0050】
また、研磨ベルト41Aが予め設定された上方端位置まで移動すると、その上端移動位置に移動した研磨ベルト41Aをベルト検知センサ42Aが検知し、その検知に基づきテンションローラ揺動アクチュエータ40Aによってテンションローラ保持具37Aの下端を矢印D1方向に牽引する。これにより図11の上流研磨機31Aを模式的に示し、かつ図12に図11のXII矢視図を示すようにテンションローラ保持具37Aが回転軸37Aaを中心に矢印D2方向に揺動してテンションローラ保持具37Aの傾斜に伴ってテンションローラ38Aが傾斜する。この傾斜するテンションローラ38Aによって研磨ローラ32Aに対する研磨ベルト41Aの走行上流側が下流側に比較して下側となり、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41Aが走行しつつ研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿って矢印D3で示すワーク搬送方向Lと直交す研磨ローラ32Aの軸方向下方側、即ち矢印D3方向に誘導される。
【0051】
研磨ベルト41Aが予め設定された下方端位置まで移動すると、その下端移動位置に移動した研磨ベルト41Aをベルト位置検知センサ42Aが検知し、その検知に基づきテンションローラ揺動アクチュエータ40Aによってテンションローラ保持具37Aの下端を押動し、再び図9及び図10に示すようにテンションローラ保持具37Aを傾斜させ、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41Aが循環走行しつつ研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿って上方に誘導される。この研磨ベルト41Aの研磨ローラ32Aの軸方向へ往復動は、ベルト位置検知センサ42Aにより研磨ベルト41Aの往復移動端位置を検知し、その検知に応じて研磨ベルト往復動付与機構35Aの作動を制御する制御部を備えることで良好に制御できる。
【0052】
この動作が繰り返されて、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41Aが循環走行しつつ研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿ってワーク搬送方向と直交する研磨ローラ32Aの軸方向に周期的に移動する。
【0053】
下流側研磨機31Bは、図3及び図5に模式的に示すように、下流固定側回転ローラ列の隣接する回転ローラ25bの間に上下方向に延在してワーク搬送経路Lに周面32Baが臨む円柱状の研磨ローラ32Bと、テンションローラ揺動アクチュエータによって揺動するテンションローラ38Bを有する研磨ベルト往復動付与機構と、これら離間して対峙する研磨ローラ32Bとテンションローラ38Bに巻き掛けられる無端帯状の研磨ベルト41Bを備え、研磨ローラ32Bとテンションローラ38Bに巻き掛けられた研磨ベルト41Bが走行しつつ研磨ローラ32Bの周面32Baに沿ってワーク搬送方向と直交する研磨ローラ32Bの軸方向に周期的に往復移動する。なお、この下流側研磨機31Bは、上流側研磨機31Aと同様に構成されることから詳細な説明を省略する。
【0054】
安全カバー50は、図1に示すようにテーブル19に設置されたバリ取り装置20を覆う側面51A、51B、51C、51D及び上面52を有してテーブル19側となる下方が開放されたボックス状であって、上面52は開閉可能な扉52A、52Bによって構成される。この扉52A、52Bに形成された開口から搬送機構21の回転ノブ30Aa、30Baが取り付けられたロッド30A、30Bの上端が貫通して突出している。
【0055】
ワーク搬送機構21のワーク搬送経路Lの上流端に対向する側壁51Aには上下方向に長いスリット状のワーク投入口53が開口し、該ワーク投入口53から起立状態で加工品Wを投入することで、安全カバー50内の搬送機構21の上流固定側回転ローラ列の回転ローラ25aと上流可動側回転ローラ列の回転ローラ26aとの間に起立状態で加工品Wが投入される。
【0056】
ワーク搬送機構21におけるワーク搬送経路Lの下流端に対向する側壁51Cには図示しない上下方向に長いスリット状のワーク搬出口が開口し、ワーク搬送機構21の下流固定側回転ローラ列の回転ローラ25bと下流可動側回転ローラ列の回転ローラ26bによって搬送される加工品Wがワーク搬出口から加工品搬出部15の加工品載置面15a上に搬出される。
【0057】
また、図13に示すように、上流側研磨機31Aに隣接して上流側研磨機31Aの研磨ベルト41Aにエアを吹き付けるエアブロウ装置55Aが配置される。このエアブロウ装置55Aからエアブロウによって研磨ベルト41Aに付着した粉塵等を除去して研磨ベルト41Aに発生する目詰まり等を防止或いは抑制する。同様に、研磨ローラ32Aの回転軸32Acにエアを吹き付けるエアノズル56Aが配置され、研磨ローラ32Aの回転軸32Acに粉塵等が付着して研磨ローラ32Aの回転を妨げる事態の発生を防止する。
【0058】
同様に、下流側研磨機31Bの研磨ベルト41Bを吹き付けてエアブロウするエアブロウ装置55B及び研磨ローラ32Bの回転軸にエアを吹き付けるエアノズル56Bが配置される。更に安全カバー50に開口して安全カバー50内の粉塵等を吸引して集塵機60に導く集塵用エア配管59が設けられる。
【0059】
なお、上流側研磨機31Aにおける研磨ローラ32Aの回転軸32Acにエアを吹き付けるエアノズル56Aと、下流側研磨機31Bの研磨ローラ32Bの回転軸32Bcにエアを吹き付けるエアノズル56A、56Bを対向配置し、これらエアノズル56A、56Bからそれぞれ噴出されるエアを衝突させて粉塵を舞上げ、集塵用エア配管59から効率的に集塵機50に吸引するようにすることが好ましい。また、エアブロア装置55A、55B及びエアノズル56A、56Bから噴出するエアによって安全カバー50内に対流を生成して、安全カバー50内に局部的に粉塵等が滞留するのを抑制し、エア配管59から効率的に集塵機60に吸引するようにすることが好ましい。
【0060】
次に、このように構成された加工バリ取り装置1の作動及び作用を説明する。
【0061】
加工品Wの加工バリ取り作業にあたり、予め加工品Wの板厚に応じて搬送機構21のロッド30Aに設けられた回転ノブ30Aaを回転操作し、ロッド30Aを昇降して板厚調整機構27Aのカムスライダ29A、29Bによるカム機構によりローラ支持部28Aに取り付けられた複数の回転ローラ26aからなる上流可動側ローラ列を上流固定側回転列に接離する方向A或いはBに移動して回転ローラ25aと26aとの間隙、即ち離間距離を調整する。同様に回転ノブ30Baを回転操作して複数の回転ローラ26bからなる下流可動側ローラ列を下流固定側回転列25Bに接離方向に移動して各回転ローラ25bと26bとの間隙を調整して準備する。
【0062】
しかる後、操作ボックス16の作動スイッチ等を操作し、制御装置によりバリ取り装置20の搬送機構21、上流側研磨機31A、下流側研削機31B及び集塵機60等を作動させる。
【0063】
即ち、ワーク搬送機機構21の上流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25a、上流可動側回転ローラ列の各回転ローラ26aがモータにより回転駆動され、同様に下流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25b、下流可動側回転ローラ列の各回転ローラ26bがモータにより回転駆動される。
【0064】
上流側研磨機31Aは、モータ33Aにより研磨ローラ32Aが回転すると共にテンションローラアクチュエータ40Aによりテンションローラ保持具37Aの揺動が繰り返される。これにより、研磨ローラ37Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41Aが循環走行しつつ研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿って周期的に上下方向に移動する。同様に、下流側研磨機31Bにおける研磨ローラ32Bとテンションローラ38Bに巻き掛けられた研磨ベルト41Bが循環走行しつつ研磨ローラ32Bの周面32Baに沿って周期的に上下方向に移動する。
【0065】
また、安全カバー50内においてエアブロア装置55A、55Bからそれぞれ上流側研磨機31Aの研磨ベルト41A、下流側研磨機31Bの研磨ベルト41Bにエアを吹き付け、かつエアノズル56A、56Bから各研磨ローラ32A、32Bの回転軸32Ac、32Bcに吹き付ける。また、集塵用エア配管59を介して安全カバー50内の粉塵等を吸引する。
【0066】
この各部の作動状態を維持した状態で、安全カバー50のワーク投入口53から加工バリ取り処理を施すべき加工品Wを起立状態で投入する。ワーク投入口53から投入された加工品Wは図5に模式的に示すように、対峙して回転する上流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25aと上流側可動側回転ローラ列の各回転ローラ26aに起立状態で挟持されてワーク搬送経路Lに沿って順次上流側から下流方向に搬送される。更に連続して対峙して回転する下流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25bと下流側可動側回転ローラ列の各回転ローラ26bに挟持されてワーク搬送経路Lに沿って順次上流側から下流方向に搬送される。
【0067】
この加工品Wが、図5及び図14に示すように上流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25aと上流側可動側回転ローラ列の各回転ローラ26aに起立状態で挟持さて搬送される際に、加工品Wの一方の面、例えば表面Waがその搬送方向前端から搬送方向後端に亘って連続的に上流側研磨機31Aの研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられて循環走行しつつ研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿って周期的に上下方向に移動すると共に研磨ローラ32Aの周面32Aaに支持された研磨ベルト41Aが摺接する。
【0068】
この搬送される加工品Wの表面Waに、周期的に上下移動しつつ走行する研磨ベルト41Aの砥粒が摺接する方向の一例を図15に模式的に示す。図15に示すように、加工品Wの搬送方向Lに対して、研磨ローラ32Aの周面32Aaに沿って周期的に上下方向に移動すると共に研磨ローラ32Aの周面32Aaに支持された研磨ベルト41Aの砥粒は、矢印で示すように周期的に上下往復動して研磨ベルト41の砥粒が表面Waに摺接する方向が逐次多方向変化する。
【0069】
この周期的に上下方向に往復動しつつ研磨ローラ32Aの周方向に走行する研磨ベルト41Aによって、加工品Wの切断面Wcの端縁から表面Wa側に突出する加工バリWeに対して研磨ベルト41Aの砥粒、いわゆる研磨ベルト41Aの目の当たる方向が逐次多方向変化する。これにより、移動する加工品Wの切断面Wcの端縁から表面Wa側に突出する加工バリWeが研磨ベルト41Aの砥粒により擦られて加工品Wから分断して除去され、かつ除去されずに残った加工バリWeには他の方向から研磨ベルト41Aの砥粒に擦られて加工品Wから分断して除去され、更に除去されずに残った加工バリWeには更に他の方向から研磨ベルト41Aの砥粒に擦られて加工品Wから分断されて完全に除去される。
【0070】
同様に、加工品Wの孔Wdの端縁から表面Wa側に突出する加工バリWeが研磨ベルト41Aの砥粒により擦られて加工品Wから分断して除去され、かつ除去されずに残った加工バリWeには他の方向から研磨ベルト41Aの砥粒に擦られて加工品Wから分断して除去され、更に除去されずに残った加工バリWeには更に他の方向から研磨ベルト41Aの砥粒に擦られて加工品Wから分断されて完全に除去される。即ち、移動する加工品Wの表面Wa側に突出する加工バリWeが研磨ベルト41Aにより多方向から擦られて加工バリWeが加工品Wから分断して除去される。
【0071】
一方、研磨ベルト41Aによって加工品Wから分断された加工バリWeは下方に落下して加工品Wへの付着が抑制され、研磨ベルト41Aに付着した加工バリWe及び粉塵等は、エアブロウ装置から吹き付けられるエアによって研磨ベルト41Aから除去されて研磨ベルト41Aの目詰まりが防止乃至抑制される。また、研磨ベルト41Aに付着した加工バリWeによって加工品Wを傷付ける不具合が防止或いは抑制される。
【0072】
なお、仮に上流側研磨機31Aが揺動付与機構39Aを具備することなく、研磨ローラ32Aとテンションローラ38Aに巻き掛けられた研磨ベルト41Aが研磨ローラ32Aの周面32Aaに対して上下方向に移動しない場合には、図16に図15と対応する比較参考図に示すように、加工品Wの搬送方向Lに対して、研磨ローラ32Aの周面32Aaに支持された研磨ベルト41Aの砥粒は、矢印で示すように搬送方向に沿った直線状で、研磨ベルト41の砥粒が表面Waに一方方向に直線状で摺接し、移動する加工品Wの切断面Wcの端縁から表面Wa側に突出する切断加工バリWeや孔バリWfに研磨ベルト41Aの砥粒により一方方向からのみ擦られて加工バリWeが加工品Wから分断されずに残存することが懸念される。この残存する加工バリWeが研磨ベルト41Aによって加工品Wの表面Waに押しつけられて表面Waに傷が発生し、かつ押し潰された切断加工バリWeが加工品Wに残存してその除去が困難になる等加工品Wの品質低下を招く要因となる。
【0073】
この上流側研磨機31Aにより表面Wa側に突出した加工バリWeが除去された加工品Wは、対峙して回転する上流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25aと上流側可動側回転ローラ列の各回転ローラ26aに及び下流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25bと下流側可動側回転ローラ列の各回転ローラ26bに挟持されてワーク搬送経路Lに沿って順次上流側から下流方向に搬送される。
【0074】
この加工品Wが、下流固定側回転ローラ列の各回転ローラ25bと下流側可動側回転ローラ列の各回転ローラ26bに起立状態で挟持されて搬送される際に、加工品Wの裏面Wbが下流側研磨機31Bの研磨ローラ32Bとテンションローラ38Bに巻き掛けられて循環走行しつつ研磨ローラ32Bの周面32Baに沿ってワーク搬送方向と直交する上下方向に周期的に移動すると共に研磨ローラ32Bの周面32Baに支持された研磨ベルト41Bが摺接する。
【0075】
この周期的に上下方向に移動しつつ摩擦ローラ32bの周方向に走行する研磨ベルト41Bによって、加工品Wの切断面Wc及び孔Wdの端縁から裏面Wb側に突出する加工バリWeに対して研磨ベルト41Bの砥粒が当たる方向が逐次多方向に変化する。これにより、移動する加工品Wの切断面Wc及び孔Wdの端縁から裏面Wb側に突出する加工バリWeが研磨ベルト41Bの砥粒により擦られて加工品Wから分断して除去され、かつ除去されずに残った加工バリWeには他の方向から研磨ベルト41Bの砥粒に擦られて加工品Wから分断して除去され、加工品Wから分断されて完全に除去される。
【0076】
また、この下流研磨機31による加工バリの除去においても、上流側研磨機31Aと同様に、研磨ベルト41Bによって加工品Wから分断された切断加工バリWeは下方に落下して加工品Wや研磨ベルト41Bへの付着が抑制され、研磨ベルト41Bに付着した加工バリWe及び粉塵等は、エアブロウ装置から吹き付けられるエアによって除去されて研磨ベルト41Bの目詰まりが防止乃至抑制される。
【0077】
これら上流側研磨機31A及び下流側研磨機31Bによって表面Wa及び裏面Wb側に突出する加工バリWeが除去された加工品Wは、回転する下流固定側回転ローラ列25Bの各回転ローラ25bと下流側可動側回転ローラ列26Bの各回転ローラ26bに挟持されてワーク搬送経路Lに沿って搬送されて安全カバー50に開口するワーク搬出口から加工品搬出部15上に搬出されて回収される。しかる後、順次ワーク搬出口53から加工品Wを投入することで、加工品Wの表面Wa及び裏面Wbに突出する加工バリWeが除去され、加工バリWeが除去された加工品Wはワーク搬出口から加工品搬出部15上に搬出されて回収される。
【0078】
一方、エアノズル56A、56Bにより安全カバー50内の粉塵を舞上げ、かつエアブロア装置55A、55B及びエアノズル56A、56Bから噴出するエアによって安全カバー50内に対流を生成して安全カバー50内に局部的に粉塵等が滞留するのを抑制し、エア配管59から効率的に集塵機60に吸引することで、安全カバー50内の加工バリや粉塵が減少し、これら安全カバー50内で加工品Wに加工バリや粉塵が付着することがなくなり、加工品Wの品質が向上すると共に、バリ取り装置20に付着する加工バリや粉塵が減少してバリ取り装置20の摩耗等が抑制されて耐久性の向上が得られる。
【0079】
従って、本実施の形態によると、安全カバー50に開口するワーク投入孔53から板状の加工品Wを投入する簡単な作業によって、加工品Wの表面Wa及び裏面Wbに突出する加工バリが連続的に除去され、作業者の作業の簡素化が得られ、作業負担が大幅に軽減されると共に加工品Wの加工バリ取り作業効率が向上する。
【0080】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態ではテンションローラ38A、38Bを研磨ローラ32A、32Bの回転軸方向と平行な平面上で且つ各回転中心軸線を含む平面に垂直な面上で揺動運動させて研磨ベルト41A、41Bを研磨ローラ32A、32Bの回転軸方向に往復移動するように構成したが、テンションローラ38A、38Bを揺動させることなく、研磨ローラ32A、32Bをテンションローラ38A、38Bの回転軸方向と平行な平面上で且つ各回転中心軸線を含む平面に垂直な面上で揺動運動することで研磨ベルト41A、41Bを研磨ローラ32A、32Bの回転軸方向に往復移動するように構成することもできる。また、加工品Wの表面Wa或いは裏面Wbの一方面側に突出する加工バリを除去する場合には、下流側研磨機31Bを省略して構成の簡素化を図ることもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 加工バリ取り装置
17 制御盤
20 バリ取り装置
21 ワーク搬送機構
25a 回転ローラ
26a 回転ローラ
25b 回転ローラ
26b 回転ローラ
31A 上流側研磨機
31B 下流側研磨機
32A、32B 研磨ローラ
32Aa、32Ba 周面
32Ac 回転軸
35A 研磨ベルト往復動付与機構
38A、38B テンションローラ
39A 揺動付与機構
41A、41B 研磨ベルト
42A ベルト位置検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送経路に沿って搬送されるワークの表面に、該ワーク搬送方向と交差する面方向に回転中心軸線が延在する研磨ローラ及び該研磨ローラと対峙するテンションローラに巻き掛けられて循環走行する無端帯状の研磨ベルトを、該研磨ローラによって摺接させて該ワークの加工バリを除去する加工バリ取り方法において、
上記研磨ベルトを上記研磨ローラの周面に沿って該研磨ローラの軸方向に往復動せしめることを特徴とする加工バリ取り方法。
【請求項2】
ワーク搬送経路に沿ってワークを搬送するワーク搬送機構と、回転駆動手段により回転駆動されると共に周面が上記ワーク搬送経路に臨む研磨ローラ及び該研磨ローラと対峙するテンションローラに巻き掛けられた無端帯状の研磨ベルトを有する研磨機とを備え、ワーク搬送機構によって搬送されるワークの表面に上記研磨機の循環走行する研磨ベルトを研磨ローラによって摺接させて該ワークの加工バリを除去するベルト式加工バリ取り装置において、
上記研磨ローラが上記ワーク搬送機構によるワーク搬送方向と交差する面方向に回転中心軸線が延在すると共に、研磨ベルトを研磨ローラの周面に沿って該研磨ローラの軸方向に往復動を付与する研磨ベルト往復動付与機構を備えたことを特徴とするベルト式加工バリ取り装置。
【請求項3】
上記研磨ベルト往復動付与機構は、上記研磨ローラとテンションローラのいずれか一方のローラを他方のローラの回転中心軸線方向と平行な平面上で且つ各回転中心軸線を含む平面に垂直な面上で揺動させて上記研磨ベルトを研磨ローラの軸方向に往復動を付与することを特徴とする請求項2に記載のベルト式加工バリ取り装置。
【請求項4】
上記研磨ベルトの往復移動端位置を検出するベルト位置検知センサを備え、
該ベルト位置検知センサによる上記研磨ベルト位置検知に応じて上記研磨ベルト往復動付与機構の作動を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載のベルト式加工バリ取り装置。
【請求項5】
上記ワーク搬送機構は、
上下方向に延在する回転ローラが上記ワーク搬送経路に沿って対峙して列設され、該対峙して回転する各回転ローラと間に起立状態でワークを挟持しつつワーク搬送経路に沿って搬送することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のベルト式加工バリ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−31330(P2011−31330A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178725(P2009−178725)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】