説明

加工装置および薄膜試料の生産方法

【課題】高速かつ高精度なエッチングが可能な加工試料の加工装置および薄膜試料の生産方法の提供。
【解決手段】ホルダ50と、イオン銃20と、電子銃10とを備える。ホルダ50は、互いに略平行な表面および裏面を有すると共に、表面および裏面の距離として厚さが定義される加工試料を把持する。また、イオン銃20は、アルゴンイオンを放出し、ホルダ50に把持された加工試料の裏面に、アルゴンイオンを照射する。そして、電子銃10は、電子を放出し、ホルダ50に把持された加工試料の表面に電子を照射するように構成される。また、マイコン30は、電流検出器40が測定した透過電子の電流密度を基にして、イオン銃20が放出するアルゴンイオンの電流密度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物を薄膜化する加工装置および薄膜試料の生産方法に関する。特に、透過型電子顕微鏡用の薄膜試料を生産する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと呼ぶ(Transmission Electron Microscope)。)用の薄膜試料を生産する加工装置としては、イオンビームの照射によって加工対象の試料(以下、加工試料と言う)を加工する際に、電子も加工試料に照射するものが知られている。この種の従来装置は、加工試料の厚さ方向に平行に電子を照射し、加工試料が薄くなるにつれて増加する透過電子の量を計測することで、加工試料の厚さを推定するように構成されている。つまり、この種の装置では、上記推定によって、加工の進行具合を知ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この他、従来装置としては、イオンビームの照射によって絶縁性の加工試料を加工する際に、特許文献1と同様に、電子も加工試料に照射する加工装置が知られている。
絶縁性の加工試料に対して、イオン銃によって陽イオンのみを照射して加工試料をエッチングすると、陽イオンによって加工試料が正に帯電してしまい、陽イオンと加工試料とが電気的に反発してエッチングの効率が悪くなってしまい、エッチングにかかる時間が長くなってしまう。
【0004】
そこで、この加工装置は、電子銃によって電子を加工試料に照射して帯電を中和することで、エッチングの効率を悪くしないようにするように構成される。それと同時に、レーザ光を加工試料に対して透過させ、TEMでその加工試料が観察可能かをそのレーザの透過光の観察によって確かめながら加工するように構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、TEM観察用の薄膜試料作成を目的としたもの以外の加工装置としては、電気的に中性な原子によって加工対象を加工する装置が知られている(例えば、非特許文献1・2参照)。電気的に中性な原子は原子線と呼ばれる。また、原子線の照射は、原子線照射と呼ばれる。上記文献に記載された原子線照射による加工技術によれば、エッチングの速度は緩やかであるものの、加工の仕上がりをきれいにすることができる。従って、この技術によれば、精密なエッチングが可能である。
【特許文献1】特開平8−5528号公報
【特許文献2】特開平11−132920号公報
【非特許文献1】Michihiko Suhara、外3名、「アルゴン高速原子源の評価とガリウムインジウムリン/ガリウム砒素3重障壁共鳴トンネルダイオードのメサエッチングプロセスへの応用(Characterization of Argon Fast Atom Beam Source and Application to Mesa Etching Process for GaInP/GaAs Triple-Barrier Resonant Tunneling Diodes)」、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)、2006年、第45巻、6B号、p.5504-5508
【非特許文献2】Yasushi Toma、外6名、「接触、非接触マスクを用いたガラス材料の高速原子線エッチング(Fast Atom Beam Etching of Glass Materials with Contact and Non-Contact Masks)」、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)、1997年、第36巻、12B号、p.7655-7659
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2記載の技術では、陽イオンによって迅速なエッチングを実現できないという課題があった。理由は、陽イオンと電子とを加工試料の同じ面に照射するので、陽イオンが加工試料に照射される前に、陽イオンと電子とが結合して電気的に中性な原子になってしまうからである。即ち、特許文献1,2記載の技術では、陽イオンと電子との反応により陽イオンが原子に置換されてしまうので、エッチングの効率が悪かった。
【0007】
別の課題を述べる。上述したように、仕上げの工程においては、原子線照射によって加工するのが望ましい。なぜなら、エッチングの速度は遅いものの、加工がきれいに仕上がるからである。しかし、特許文献1,2の技術によっては、放出された陽イオンが、どの程度の割合で電気的に中性な原子に変化するのかを制御することができない。よって、仕上げの段階で、陽イオンが加工試料に照射されてしまうことも、十分に考えられる。即ち、特許文献1,2記載の技術では、加工をきれいに仕上げることも難しかった。
【0008】
また、非特許文献1,2に記載された技術は、原子線照射によるエッチング技術であるので、この技術に基づいては、高精度なエッチングを実現することは可能である。しかし、加工初期におけるエッチングの効率が悪いといった課題があった。即ち、非特許文献1,2記載の技術では、高精度に加工対象を加工することはできるものの、仕上げ段階以前のエッチングによる加工効率が悪く、結果として、加工の工程に時間がかかるといった課題があった。
【0009】
以上に述べた理由によって、従来技術では、加工開始からTEMによる観察開始までの時間が長くなり、利用者は多大な時間と労力を要していた。
本発明は、こうした課題に鑑みなされたものであり、高速且つ高精度に加工対象物を薄膜化できる加工装置及び薄膜試料の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の加工装置は、ホルダと、イオン銃と、電子銃と、を備える。ホルダは、加工対象物を把持する。イオン銃は、所定の陽イオンを放出して、ホルダに把持された加工対象物に、陽イオンを照射する。電子銃は、電子を放出して、ホルダに把持された加工対象物に、電子を照射する。このようにして、この加工装置は、ホルダに把持された加工対象物の表面と裏面との間の距離である厚みを薄くする。
【0011】
そして、電子銃は、加工対象物の表面に電子を照射可能に配置される。また、イオン銃は、加工対象物の裏面に陽イオンを照射可能に配置される。このようにして、この加工装置は、陽イオンを加工対象物の裏面に照射し、電子を加工対象物の表面に照射して、ホルダに把持された加工対象物の厚みを薄く加工する構成にされている。
【0012】
このように構成された加工装置によれば、イオンと電子とが結合することは、イオンまたは電子が加工対象物を透過しない限り、起こらない。つまり、加工対象物が厚くて電子がほとんど透過できない状態においては、イオンと電子とが結合することは、ほとんどない。従って、この状態では、イオンによる高効率のエッチングが可能となる。
【0013】
一方で、加工対象物の薄膜化が進み、少数の電子が加工対象物を透過する状態においては、その加工対象物を透過した電子(以下、透過電子と呼ぶ。)とイオンとが結合して、電気的に中性な原子が生成され、原子線照射が行われる。
【0014】
ところで、上述したように、原子線照射は、エッチングを制御しやすく、仕上げ加工に向いているエッチングである。つまり、加工対象物の薄膜化が進み、仕上げ加工に移るのが望ましい状態になると、この加工装置によれば、自然と低効率のエッチングに移行する。従って、この加工装置によれば、高速且つ高精度に加工対象物を薄膜化できる。
【0015】
よって、この加工装置を、TEMによる観察に適した薄膜試料を生産するための装置として活用すれば、薄膜試料を綺麗に仕上げることができると共に、加工から観察までの時間を短くできる。
【0016】
また、請求項1の加工装置は、請求項2に記載のように構成されるとよい。請求項2の加工装置は、請求項1の構成に加え、電流検出器と、制御器と、を備える。電流検出器は、電子銃によって加工対象物の表面に照射され、表面から裏面へと透過した電子の電流密度を測定する。また、制御器は、電流検出器の測定結果に基づいて、イオン銃が放出する所定の陽イオンの電流密度を制御する。
【0017】
そもそも、透過電子の電流密度と加工対象物の厚さとには、負の相関関係がある。そこで、請求項2の構成によって、透過電流の電流密度が大きくなるにつれ、イオン銃が放出するイオンの電流密度を小さくするように制御することによって、粗加工から仕上げ加工に徐々に移ることが可能となる。
【0018】
また、加工対象物を把持するホルダと、所定の陽イオンを放出して、ホルダに把持された加工対象物に、陽イオンを照射するイオン銃と、電子を放出して、ホルダに把持された加工対象物に、電子を照射する電子銃と、を備えて、ホルダに把持された加工対象物の表面と裏面との間の距離である厚みを薄くする加工装置には、電子銃から放出され加工対象物を透過した電子が生成する像を、画像情報として出力する光学系を設けるとよい。
【0019】
このようにして光学系を設ければ、加工から観察及びその逆の手順に要する時間と労力を小さくできる(請求項3)。
例えば、薄膜化した加工対象物を、別の顕微鏡に移して、これを観察しなくても、薄膜化した加工対象物を観察することができて、便利である。また、薄膜化した試料が、レーザや電流検出器によってTEMによる観察に適した状態と判定されたにも関わらず、実際にTEMで、これを観察してみると所望の画像を観察できず、加工をやり直す、という事態に発展するのを予防できる。
【0020】
また、請求項3に記載の加工装置は、請求項4に記載のように構成されるとよい。請求項4に記載の加工装置は、請求項3に記載の構成において、電子銃が、ホルダに把持された加工対象物の表面に電子を照射するように配置され、さらに、イオン銃が、加工対象物の裏面に所定の陽イオンを照射可能に配置されたものである。
【0021】
このように構成されれば、請求項1に記載した加工装置が奏する効果を、請求項4に記載の加工装置においても奏することができる。
ところで、TEMによる観察では、電子が放出されてから電子検出器によって検出されるまでの空間は、圧力が低く保たれるのが望ましい。しかし、イオン銃がイオンを放出すれば、当然、その空間の圧力は高くなってしまう。とりわけ、電子銃付近および電子検出器付近の圧力上昇が観察に与える影響は大きい。
【0022】
そこで、請求項3又は請求項4に記載の加工装置は、請求項5に記載のように構成されるとよい。請求項5に記載の加工装置は、請求項3又は請求項4に記載の構成に加えて、第一シャッタと、電子検出器と、第二シャッタと、ケースと、を備える。
【0023】
電子検出器は、電子銃によって加工対象物の表面に照射され、表面から裏面へと透過した電子を検出可能に構成されたものであり、上記光学系を構成する。また、ケースは、電子銃から放出されてから電子検出器に検出されるまでの電子の飛行経路を含む空間を、原子を透過させないように密封するものである。
【0024】
また、第一シャッタは、電子銃とホルダとの間に設けられ、ケース内の空間を仕切るものである。この他、第二シャッタは、ホルダと電子検出器との間に設けられ、ケース内の空間を仕切るものである。これら第一シャッタ及び第二シャッタは、電子銃から放出された電子を透過させる一方で、原子を透過させないように構成されている。
【0025】
このように構成された加工装置によれば、加工の過程で圧力が高くなる現象を、加工対象物の付近にとどめることができ、電子銃の付近、または、電子検出器の付近の圧力を、観察に適した圧力に保つことができる。
【0026】
また、請求項1から請求項5までに記載の加工装置は、請求項6に記載のように、所定の陽イオンとして、希ガス原子またはガリウム原子をイオンにしたものを放出する構成にされるとよい。つまり、従来の加工装置と同様に、イオン銃に適したイオンを使用できる。このようにすれば、安価に本発明の加工装置を構成できる。
【0027】
また、請求項1から請求項6までに記載の加工装置は、請求項7のように構成されるとよい。請求項7に記載の加工装置においては、ホルダが、把持した加工対象物の厚さ方向に平行な回転軸を中心に、把持した加工対象物を回転可能に構成されている。このように構成された加工装置によれば、偏りなく加工することができ、加工の仕上げをよりきれいにできる。
【0028】
また、請求項8は、薄膜試料の生産方法の発明に係るものである。この薄膜試料の生産方法は、加工対象物を薄く加工することで薄膜化する生産方法である。具体的には、加工対象物の表面に電子を照射すると共に、表面と対称的に位置する裏面に所定の陽イオンを照射することで、表面と裏面との距離としての加工対象物の厚さが薄くなるように加工する。従って、この生産方法によれば、請求項1の発明と同等な効果が得られる。
【0029】
また、請求項9の薄膜試料の生産方法は、加工対象物の表面に照射され、表面から裏面へと透過した電子の電流密度を測定し、測定結果に基づいて、放出される所定の陽イオンの電流密度を制御して、加工対象物を加工するものである。従って、この生産方法によれば、請求項2の発明と同様な効果が得られる。
【0030】
また、請求項8は、具体的に次のような方法であってもよい。一定の電流密度Sで電子を放出し、表面から裏面へと透過した電子の電流密度の値であるXの測定結果に基づいて、第一工程、第二工程および第三工程に分けて、所定の陽イオンの放出時の電流密度の値であるYを制御する薄膜試料の生産方法であって、r、V、R、S及びdは、0<r<V<R≦S、及び、R≦(U×d)を満たす正の定数であり、第一工程は、X<rにおいてY=Uとし、第二工程は、r≦X<VにおいてY=(U−X)とし、第三工程は、V≦X<RにおいてY=(X*d)とし、R≦Xになると第三工程を終え、Y=0として加工を終了することを特徴とする薄膜試料の生産方法。
【0031】
また、dは変数であってもよい。そして、Xを測定するときは、イオンの放出を中止するとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施例を、図面と共に説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本実施例の加工装置1の構成を示す図である。この加工装置1は、ケース5、電子銃10、イオン銃20、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと呼ぶ。)30、電流検出器40およびホルダ50を備える。
【0034】
加工試料は、厚さが数十μm程度になるように予め加工され、金属製の輪に、はめ込まれている。この厚さを、TEMによる観察に適した厚さ(100nm程度)に加工するのが、加工装置1の役割である。ここでは、加工試料の厚さ方向に直交する面であって、加工装置1によって加工される面を裏面と呼ぶ。そして、加工試料の厚さ方向に直交する面であって、加工装置1によって加工されない面を表面と呼ぶ。また、表面および裏面は、円形に予め加工されているものとする。
【0035】
ここから各構成要素について説明する。まず、ホルダ50は、この加工試料を把持可能に構成されている。具体的には、上述した、加工試料がはめ込まれた金属製の輪を外側から把持する構成にされている。また、ホルダ50は、加工試料を把持した状態で、加工試料を回転可能に構成されている。この回転機構は、既存の加工装置に備えられているので、図2を用いて、簡単に説明する。
【0036】
図2(a)は、上述したホルダ50の回転機構の詳細を示した上面図である。ホルダ50は、モータ51、ベルト53、ギヤ55、回転ステージ57を備える。モータ51は、所定の回転速度で定常回転し、回転運動をベルト53に伝達する。そして、ベルト53は、その回転運動をギヤ55に伝達する。そうすると、ギヤ55に係合した加工試料を把持する回転ステージが回転することになる。
【0037】
また、図2(b)は、回転ステージ57のA−A断面を示した図である。回転軸が加工試料の中心と一致するように、回転ステージ57は構成されている。このように加工試料を回転させながら加工することで、偏りなく加工でき、仕上がりがきれいになる。
【0038】
図1に戻る。電子銃10は、既知のイオンミリング装置等で用いられる熱電子型のものであり、加工試料の表面に電子を照射可能な位置に配置されている。具体的に、電子銃10は、加工試料がホルダ50に把持された状態において、加工試料の厚さ方向と照射する電子の進行方向とがほぼ平行になるように、設けられている。
【0039】
また、イオン銃20は、既知のイオンミリング装置等で用いられる周知のものであり、加工試料の裏面に対して所定の角度からアルゴンイオンを放出する。また、マイコン30から送られる指令に基づいて、放出するアルゴンの電流密度を制御可能に構成されている。
【0040】
また、ケース5は、放出される電子およびアルゴンイオンの飛行経路を覆って密封する構成にされている。このケース5内部の気圧は、予め低くされている。その目的は二つある。一つは、電子銃10から放出された電子ビームと、イオン銃20から放出されるアルゴンとが、加工試料に適切に照射されるようにすることである。もう一つは、電流検出器40が透過電子を捕捉可能なようにすることである。
【0041】
電流検出器40は、電子銃から照射され加工試料を透過してきた電子を捕え、捕えた電子の電流密度を計測する。そして、その情報をマイコン30に送信するように構成されている。
【0042】
マイコン30は、CPU・ROM・RAM等を備える周知のものである。そして、電流検出器40から送られてくる電流密度の情報に基づいて、イオン銃20が放出するアルゴンイオンの電流密度を制御する。この制御の詳細については、図4を用いて後述する。
【0043】
ここから、加工装置1によって加工試料の厚さが薄く加工される過程で、どのような現象が起こるのかを、図3を用いて説明する。図3(a)は、加工試料全体を上から見た図およびF−F(円の中心を通る直線)断面図である。また、図3(b)、図3(c)及び図3(d)は、F−F断面図の中央部付近の拡大図である。ここでは、図3(b)から順に、図3(c)、図3(d)となるにつれて、加工が進んでいくものとする。
【0044】
図3(b)は、加工が始められて間もなく、加工試料が厚いときの状態を表している。因みに加工試料は、裏面が中央部に向かってくぼむように、予め加工されている。
この状態では、電子は加工試料を透過することがほとんどできない。つまり、アルゴンイオンと電子とが結合して原子線に変化することはほとんどないので原子線照射が起こらず、従来のようにエッチングの効率は悪くならない。
【0045】
また、加工試料が絶縁体の場合においても、表面に照射される電子によって、加工試料は電気的に中性に保たれるので、加工試料とアルゴンイオンとが電気的に反発することもない。因みに、加工試料が導電体であれば、表面に電子が照射されなくても帯電することはないので、もともと問題ない。
【0046】
そして加工が進み、加工試料が薄くなると、図3(c)に示すような状態になる。この状態においては、透過電子が徐々に多くなってくる。しかし、この状態になり始めたときは、TEMで観察するには加工試料が厚く、さらに薄く加工する必要がある。
【0047】
そしてこの状態において、透過電子は二つの働きをする。一つは、アルゴンイオンと結合することで、アルゴンイオンを原子線に変化させることである。上述したように、この結合が起こると原子線照射になる。そして、原子線照射は、エッチングの効率は悪いものの、きれいに加工を仕上げることができる。
【0048】
つまり、加工試料が厚いときは、アルゴンイオンによって高効率のエッチング、つまり粗加工をする。そして、TEMの観察用に適した厚さに近づいてくると、自然に、原子線による低効率のエッチング(原子線照射)、つまり仕上げ加工の状態になる。
【0049】
そして、さらに加工を進めると、図3(d)に示すように、加工試料の中央部に穴が開く。上述したように、加工試料は、中央部に向かってくぼむように予め加工されている。従って、穴が開けば、その穴の近傍に、TEMによる観察に適した厚さを発見できる。従って、穴が開いた時点で、加工を終える。そして、この状態の加工試料を薄膜試料とする。
【0050】
このようにして原子線照射によって仕上げ加工を行えば、いくつかのメリットが得られる。それは、厚さの制御の精度が向上する、加工試料の損傷を低減できる、厚さが均一に仕上がる、などである。以上に説明したように、粗加工から仕上げ加工に移りたいときに、自然に、そうなることが本発明の優れた効果である。
【0051】
また、透過電子のもう一つの働きは、電流検出器40によって検出されることである。上述したように、電流検出器40は、透過電子を捕えて電流密度を計測し、その情報をマイコン30に送る。そして、マイコン30は、その情報に基づいて、イオン銃20が放出するアルゴンイオンの電流密度を制御する。次に、この制御について図4を用いて説明する。
【0052】
図4は、マイコン30が備えるCPUが主体となって実行する、イオン銃制御処理を表すフローチャートである。この処理は、電流検出器40が検出する電子の電流密度(以下、電子電流密度と言う。)に基づいて、三つの工程に分けて、イオン銃20が放出するアルゴンイオンの電流密度(以下、アルゴン電流密度と言う。)を制御するものである。
【0053】
詳細な説明の前に、三つの工程の概要を説明しておく。第一工程は、粗加工であり、アルゴン電流密度を大きな値で一定に保ち、アルゴンイオンを加工試料に照射する工程である。そして、第二工程は、粗加工から仕上げ加工への遷移段階においてする工程であり、徐々にアルゴン電流密度を下げて、加工試料を加工する工程である。このようすると、エッチングの効率が徐々に落ちていく。
【0054】
そして、第三工程は、仕上げ加工の工程である。第三工程では、放出したイオンのほとんどが原子線に変換されて、加工が原子線照射になるように、アルゴン電流密度を制御する。そして、電子電流密度が所定の値Rになると加工試料に穴が開いたとみなし、アルゴンイオンの放出を止めて(第三工程を終えて)、加工を終了する。
【0055】
また、以下で使用する記号について、ここで予め簡単に述べておく。設計者によって定められる定数は、d、r、R、S、Δt及びΔTである。そして次元は、dが無次元数、r、R及びSが電流密度、Δt及びΔTが時間である。また、0<d<1、0<r<S/2<R<S、及び、Δt≪ΔTの関係が成り立つ。また、測定値は、電子電流密度Xである。この他、アルゴン電流密度Yは、マイコン30が制御する値である。
【0056】
また、電子銃が放出する電子の電流密度は、常に、値Sに保たれているものとする。また、この処理は、課題を解決するための手段で説明した請求項8の変形例において、U=2V=Sとしたものである。
<第一工程>
イオン銃制御処理が開始されると、まず、マイコン30は、第一工程を行う。具体的には、アルゴン電流密度Yを値Sに設定する(S110)。次に、電子電流密度Xを電流検出器40から取得する(S120)。そして、S120にて取得した電子電流密度Xついて、r≦Xか否かを判断する(S130)。そして、S120にて取得した電子電流密度Xについて、r≦Xでないと判断すると(S130:No)、S120に戻る。
<第二工程>
一方、S120にて取得した電子電流密度Xについて、r≦Xであると判断すると(S130:Yes)、マイコン30は、第二工程に移る。具体的には、まず、所定時間Δt、アルゴン電流密度Yが零になるように設定する。つまり、アルゴンイオンの放出を止める。そして、アルゴンイオンの放出を停止している期間の電子電流密度Xの平均値E(X)を、電流検出器40から取得する(S140)。そして、S140で取得した平均値E(X)について、S/2≦E(X)であるか否かを判断する(S150)。
【0057】
そして、S140で取得したE(X)について、S/2≦E(X)でないと判断すると(S150:No)、アルゴン電流密度YをS−E(X)に設定して(S160)、ΔTが経過後、S150に戻る。
【0058】
ちなみに、Δt及びΔTは、加工の開始から終了までの時間に対して十分に小さい値である。また、S140で取得した平均値E(X)の具体例は、図5においては、値a及び値bとして表されている。
<第三工程>
一方、S140で取得したE(X)について、S/2≦E(X)であると判断すると(S150:Yes)、第三工程に移る。具体的には、まず、ΔTの間、アルゴン電流密度の値Yを、E(X)*d(*は乗算記号である)に設定する(S170)。そして、S170を開始してからΔTが経過すると、アルゴンイオンの放出を止めさせると共に、その間の電子電流密度Xの平均値E(X)を、電流検出器40から取得する(S180)。
【0059】
そして、S180で取得したE(X)について、R≦E(X)であるかを判断する(S190)。Rの値は、Sよりもわずかに小さい値である。そして、S180で取得したE(X)について、R≦E(X)でないと判断すると(S190:No)、S170に戻る。一方、S180取得したE(X)について、R≦E(X)であると判断すると(S190:Yes)、アルゴン電流密度Yを零に設定して(S195)、イオン銃制御処理を終える。
【0060】
このイオン銃制御処理によって加工試料を加工すると、図5のようなグラフが得られる。図5は、アルゴン電流密度Y及び電子電流密度Xと、加工時間との関係示した折れ線グラフである。太線が電子電流密度Xの変化、細線がアルゴン電流密度Yの変化を表す。
【0061】
また、課題を解決する手段で述べたように、dを変数としてもよい。ところで、dを変数とする目的は、第三工程において、イオンエッチングではなく原子線照射による加工を、より確実に担保することにある。この目的を達成するには、S170の処理において、S170の各処理時における電子電流密度Xの最大値X´が、X´<X*(1−d)の不等式を満たす必要がある。図5においては、各X´はg1〜g4として、各X*(1−d)はG1〜G4として表されている。
【0062】
この不等式について説明する。仮に、放出された全てのアルゴンイオンが透過電子と結合して原子線に変化したのであれば、この不等式は必ず満たされる。逆に、この不等式が満たされないということは、アルゴンイオンが加工試料に照射されている可能性が大であることを示す。従って、S170の処理におけるdを、この不等式を満たす最大の値とする変数としてもよい。
【0063】
但し、dを変化させても、この不等式が満たされるようになるという理論的根拠はない。その場合は、電子銃10、イオン銃20及びホルダ50のアライメントがずれていることが、この不等式が満たされない理由であるという可能性が考えられる。
【0064】
従って、その場合は、マイコン30が備える画像表示装置や音声出力装置(図示せず)によって、この不等式が満たされていないことをユーザに警告してもよい。また、電子銃10、イオン銃20及びホルダ50は、自身のアライメントを調整可能なアクチュエータを備えるように構成されると共に、マイコン30が、この不等式が満たされるように、そのアクチュエータを制御するようにしてもよい。
【0065】
以上に説明したように、加工試料が厚いときには粗加工をして、薄くなってくると徐々に仕上げ加工に移ることができ、加工時間の短縮ときれいな仕上げを両立できる。
【実施例2】
【0066】
図6に、TEM一体型加工装置200を示す。このTEM一体型加工装置200は加工装置1とは異なり、TEMとしての光学系を備える。この構成によって、加工の進行具合を随時、TEMで確認できる。それに加えて、加工後に他の装置に薄膜試料を移すことなく、直ぐに観察ができる。
【0067】
まず、構成要素を説明する。TEM一体型加工装置200は、ケース205、電子銃210、イオン銃220、イオン銃用集束レンズ225、集束レンズ231、シャッタ290、ホルダ250、対物レンズ233、シャッタ295、投影レンズ237及び蛍光板240、CCDカメラ243及びモニタ246を備える。
【0068】
ここから各構成要素について説明する。まず、ホルダ250は、上述した実施例1と同様に、加工試料を把持可能に構成されている。また、ホルダ250は、加工試料を把持した状態で、加工試料を回転可能に構成されている。この回転機構は、既存の加工装置に備えられているので、図7を用いて、簡単に説明する。
【0069】
図7(a)は、上述したホルダ250の回転機構の詳細を示した上面図である。ホルダ250は、モータ251、ベルト253、ギヤ255、回転ステージ257を備える。また、この回転機構は、実施例1で説明したものと異なり、回転ステージが−90°〜90°の範囲で回転するように構成されている。
【0070】
詳述すると、モータ251は、回転ステージ257が−90°〜90°の範囲で回転するように、回転方向を変えながら回転し、その回転運動をベルト253に伝達するように構成されている。一方、ベルト253は、その回転運動をギヤ255に伝達する。加工試料を把持する回転ステージ257は、ギヤ255に係合しており、ベルト253の回転運動をギヤ255を介して受けて、−90°〜90°の範囲で回転する。
【0071】
図7(b)は、回転ステージ257が−90°の状態、図7(c)は、回転ステージ257が90°の状態を表す。つまり、図7(a)→図7(b)→図7(a)→図7(c)→図7(a)、という順に移り変わるように回転ステージ257は、回転運動を行うことになる。
【0072】
また、図7(d)は、回転ステージ257のB−B断面を示した図である。回転軸が加工試料の中心と一致するように、回転ステージ257は構成されている。このように加工試料を回転させながら加工することで、偏りなく加工でき、仕上がりがきれいになる。また、本実施例で、回転ステージが−90°〜90°の範囲で回転するように構成される理由は、既知の集束イオンビームを採用して、加工試料の横半分だけを加工するためである。
【0073】
また、ケース205は、電子ビームと集束イオンビームの飛行経路を覆って密封する構成にされており、ケース205の内部の気圧は、予め低くされている。その目的は二つある。一つは、電子銃210から放出された電子ビームと、イオン銃220から放出される集束イオンビームとが、加工試料に適切に照射されるようにすることである。もう一つは、加工試料を透過した電子ビームによって蛍光板240が適切に蛍光を発するようにすることである。
【0074】
また、イオン銃220は、集束イオンビームとして、所定の角度から加工試料の裏面に向けてガリウムイオンを放出する。そして、イオン銃用集束レンズ225は、放出されたガリウムイオンを、加工試料の裏面に向けて集束させる。このようにして、加工試料の裏面が加工される。
【0075】
また、電子銃210は、TEM等で用いられる既知の電界放出型のものであり、電子ビームを放出し、ホルダ250に把持された加工試料の表面に電子を照射可能に構成されている。
【0076】
また、集束レンズ231は、電子銃210と加工試料との間に設けられる電子レンズである。この集束レンズ231は、電子ビームを加工試料に向けて集束させることで、ホルダ250に把持された加工試料の厚さ方向と、照射される電子の進行方向とをほぼ平行にするように構成されている。そして、対物レンズ233は、加工試料の表面と裏面との両方を覆うようにして、集束レンズ231と投影レンズ237の間に設けられている。そして、電子ビームの経路に磁場を発生させることで、ローレンツ力によって電子ビームの経路を曲げ、電子ビームを加工試料に向けて集束させるように構成されている。
【0077】
また、投影レンズ237は、加工試料と蛍光板240の間に設けられた電子レンズである。即ち、加工試料を透過した電子ビームは、対物レンズ233および投影レンズ237によって、蛍光板240に向けて拡大される。そして、蛍光板240は、投影レンズ237を透過した電子ビームが照射されると蛍光像を形成する。そして、本実施例のTEM一体型加工装置200では、この蛍光像をCCDカメラ243で捉えて、モニタ246に画像情報として送る。モニタ246は、その画像情報を表示する。
【0078】
また、シャッタ290及びシャッタ295は、既存のものであり、ベリリウム、炭素、ポリイミドなどから作られている。即ち、シャッタ290及びシャッタ295は、電子ビームを透過させる一方で、原子は透過させないように構成されている。
【0079】
具体的に、シャッタ290は、集束レンズ231と対物レンズ233の間に設けられており、電子銃210のある上層空間と、イオン銃220及びホルダ235のある中層空間とを仕切り、夫々を独立した空間として分離する構成にされている。また、シャッタ295は、対物レンズ233と投影レンズ237の間に設けられており、イオン銃220及びホルダ235のある中層空間と蛍光板240のある下層空間とを仕切り、夫々を独立した空間として分離する構成にされている。本実施例では、このようにTEM一体型加工装置200を構成することで、イオン銃220によるガリウムイオンの放出によってケース205内の気圧が上昇する部位を、両シャッタ290,295間(中層空間)にとどめるようにしている。これによって、本実施例では、電子銃210及び蛍光板240の周辺を、TEMの観察に適した気圧に保つことができる。
【0080】
図8に、TEM一体型加工装置200によって加工試料が加工される様子を示す。図8(a)は、加工試料全体を上から見た図およびM−M(円の中心を通る直線)断面図である。また、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は、M−M断面図の中央部付近の拡大図である。ここでは、図8(b)から順に、図8(c)、図8(d)となるにつれて、加工が進んでいくものとする。
【0081】
図8(b)は、加工が始められて間もなく、加工試料が厚いときの状態を表している。この状態では、電子は加工試料を透過することがほとんどできない。つまり、ガリウムイオンと電子とが結合して原子線に変化することはほとんどないので原子線照射が起こらず、従来のようにエッチングの効率は悪くならない。
【0082】
そして加工が進み、加工試料が薄くなると、図8(c)に示すような状態になる。この状態においては、透過電子が徐々に多くなってくる。しかし、この状態になり始めたときは、TEMで観察するには加工試料が厚く、さらに薄く加工する必要がある。この状態において、透過電子は、ガリウムイオンと結合することで、ガリウムイオンを原子線に変化させる。この現象によって、本実施例では、きれいに加工を仕上げることができる。
【0083】
そして、さらに加工を進めると、図8(d)に示す状態になる。この状態になると、加工試料が、TEMによる観察に適した厚さになり、その観察が可能になる。そして、観察が可能になったことを光学系を用いて確認して、加工を終える。
【0084】
以上に説明したように、本実施例における加工装置においては、TEMの光学系が装置内に設けられているので、作業者は、加工装置を操作して、加工試料を加工しながら、又は加工終了後すぐに、薄膜試料を観察することができる。従って、本実施例によれば、加工開始から観察までの時間を短縮でき、便利である。
【0085】
また、本実施例によれば、実施例1の加工装置と同様に、電子を加工試料の表面に、イオンを加工試料の裏面に、それぞれ照射するので、加工時間の短縮と、きれいな仕上げを両立できる。
【0086】
因みに、「特許請求の範囲」に記載の電子検出器は、実施例2に記載の蛍光板240に対応する。但し、この電子検出器は、蛍光板でなくても、透過電子の像を観察可能であれば、他の光学機器でも構わない。また、イオン銃20及びイオン銃220が放出するイオンは、ガリウムイオン、又は、ガリウム若しくはその他の希ガス原子を陽イオンにしたものであっても構わない。また、その他の陽イオンであっても、加工後の用途に支障がなければ、構わない。また、加工の目的は、TEM観察用の薄膜試料の生産でなくても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明が適用された加工装置1の概略構成を示す図である。
【図2】回転範囲が−180°〜180°のホルダ回転機構の概略構成を表す上面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図3】試料の加工態様を表す説明図である。
【図4】イオン銃制御処理を表すフローチャートである。
【図5】透過電子の電流密度およびイオン銃が放出するイオンの電流密度と、加工時間との関係を表すグラフである。
【図6】本発明が適用されたTEM一体型加工装置200の概略構成を示す図である。
【図7】回転範囲が−90°〜90°のホルダ回転機構の概略構成を表す上面図(a)及びB−B断面図(d)である。
【図8】試料の加工態様を表す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1…加工装置、5・205…ケース、10・210…電子銃、20・220…イオン銃、30…マイコン、40…電流検出器、50・250…ホルダ、51・251…モータ、53・253…ベルト、55・255…ギヤ、57・257…回転ステージ、200…TEM一体型加工装置、225…イオン銃用集束レンズ、231…集束レンズ、233…対物レンズ、237…投影レンズ、240…蛍光板、243…CCDカメラ、246…モニタ、290・295…シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を把持するホルダと、
所定の陽イオンを放出して、前記ホルダに把持された前記加工対象物に、前記陽イオンを照射するイオン銃と、
電子を放出して、前記ホルダに把持された前記加工対象物に、電子を照射する電子銃と、
を備えて、前記ホルダに把持された前記加工対象物の表面と裏面との間の距離である厚みを薄くする加工装置であって、
前記電子銃は、前記加工対象物の表面に電子を照射可能に配置され、
前記イオン銃は、前記加工対象物の裏面に前記陽イオンを照射可能に配置され、
前記陽イオンを前記加工対象物の裏面に照射し、電子を前記加工対象物の表面に照射して、前記ホルダに把持された加工対象物の厚みを薄く加工する構成にされている
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記電子銃によって前記表面に照射され、前記表面から前記裏面へと透過した電子の電流密度を測定する電流検出器と、
前記電流検出器の測定結果に基づいて、前記イオン銃が放出する前記陽イオンの電流密度を制御する制御器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
加工対象物を把持するホルダと、
所定の陽イオンを放出して、前記ホルダに把持された前記加工対象物に、前記陽イオンを照射するイオン銃と、
電子を放出して、前記ホルダに把持された前記加工対象物に、電子を照射する電子銃と、
を備えて、前記ホルダに把持された前記加工対象物の表面と裏面との間の距離である厚みを薄くする加工装置であって、
前記電子銃から放出され前記加工対象物を透過した電子が生成する像を、画像情報として出力する光学系
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項4】
前記電子銃は、前記加工対象物の表面に電子を照射可能に配置され、
前記イオン銃は、前記加工対象物の裏面に前記陽イオンを照射可能に配置され、
電子を前記加工対象物の表面に照射し、前記陽イオンを前記加工対象物の裏面に照射して、前記ホルダに把持された加工対象物の厚みを薄く加工する構成にされている
ことを特徴とする請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記電子銃によって前記加工対象物の表面に照射され、前記表面から前記裏面へと透過した電子を検出可能に構成された、前記光学系を構成する電子検出器と、
前記電子銃から電子検出器までの電子の飛行経路を含む空間を、原子が透過しないように密封するケースと、
前記電子銃と前記ホルダとの間に設けられ、前記ケース内の空間を仕切る第一シャッタと、
前記ホルダと前記電子検出器との間に設けられ、前記ケース内の空間を仕切る第二シャッタと、
を備え、
前記第一シャッタ及び前記第二シャッタは、前記電子銃から放出された電子を透過させる一方で、原子を透過させない構成にされている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の加工装置。
【請求項6】
前記イオン銃は、前記陽イオンとして、希ガス原子またはガリウム原子を陽イオンにしたものを放出する
ことを特徴とする請求項1から請求項5までに記載の加工装置。
【請求項7】
前記ホルダは、把持した前記加工対象物の厚さ方向に平行な回転軸を中心に、前記把持した加工対象物を回転可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6までに記載の加工装置。
【請求項8】
加工対象物を加工して、薄膜化することで薄膜試料を生産する、薄膜試料の生産方法であって、
前記加工対象物の表面に電子を照射すると共に、前記表面とは対称的に位置する前記加工対象の試料の裏面に所定の陽イオンを照射することで、前記加工対象の前記表面と前記裏面との距離である厚みを薄くするように、前記加工対象の試料を加工し、前記薄膜試料を生産する
ことを特徴とする薄膜試料の生産方法。
【請求項9】
前記加工対象の試料の表面に照射されて、前記表面から前記裏面へと透過した電子の電流密度を測定し、前記測定結果に基づき、前記放出される所定の陽イオンの電流密度を制御して、前記加工対象物を加工する
ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜試料の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−175046(P2009−175046A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15286(P2008−15286)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】