説明

加工装置

【課題】加工装置1において、誤った部位に加工が施される虞を低減することにある。
【解決手段】加工装置1は、ワーク2を把持して加工位置へ移送する移送部4と、移送部4に一体的に組み込まれ、ワーク2の像を映す映出部と、映出部を介してワーク2を撮像する撮像部5と、撮像部5により得られた画像に基づき、移送部4によるワーク2の把持状態の修正を指令する制御部6とを備える。これにより、加工装置1は、ワーク2を把持した後に、ワーク2の把持状態の修正に用いる画像および画像データを取得する。このため、画像データを取得した後に、ワーク2に対して作業者による誤作業が行われる虞が極めて低くなる。また、移送部4と一体に組み込まれた映出部により像を映し出すことで、加工装置1は、ワーク2の把持状態を高精度に把握することができる。以上により、ワーク2に対し誤った側面にマーキングが施される虞を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物(以下、ワークと呼ぶ)を加工位置に移送して所定の加工を施す加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
〔従来の技術〕
従来より、多関節ロボット等の移送部によりワークを加工位置に移送して、所定の加工を施す加工装置が周知となっている。例えば、ワーク100にレーザマーキングを施す加工装置101は、図3に示すように、投入コンベア102により搬送されてきたワーク100を、回動自在に把持してインデックステーブル103へ移送する移送部104と、投入コンベア102上のワーク100の配置を読み取るワーク位置読取部105と、ワーク位置読取部105から得られた情報に基づき、移送部104によるワーク100の把持状態の修正を指令する制御部(図示せず)とを備える。
【0003】
そして、インデックステーブル103が180°回転することで、移送されたワーク100は、加工部106に対向して配置される。そして、加工部106からレーザ光が照射されて、ワーク100の表面にマーキングが施される。この加工装置101のようにワーク100の特定部位に対して加工を施す場合、加工部106に対するワーク100の位置決めが、極めて重要になる。つまり、加工部106に対するワーク100の位置決めが不正確であると、特定部位からずれた部位にマーキング等の加工が施されてしまう。
【0004】
そこで、加工装置101では、投入コンベア102により搬送されてきたワーク100の配置をワーク位置読取部105に読み取らせ、ワーク位置読取部105から得られた情報に基づき、移送部104によるワーク100の把持状態の修正を制御部に指令させる。これにより、加工部106に対するワーク100の位置決めが正確になされ、特定部位に加工が施される。
【0005】
〔従来技術の不具合〕
しかし、この加工装置101によれば、移送部104がワーク100を把持する前に、ワーク位置読取部105がワーク100の配置を読み取る。このため、ワーク位置読取部105による配置読取から移送部104による把持までの間に、作業者が誤ってワーク100の配置を変えたり、別のワーク100を投入したりする虞がある。そして、作業者が誤ってワーク100の配置を変えたり、別のワーク100を投入したりすると、特定部位とは異なる部位に加工が施されてしまう。
【0006】
なお、マーキング装置において、ワークの配置、姿勢等に対し、加工部(マーキング部)の各種作動条件を修正したり(例えば、特許文献1参照)、ワークの変位に加工部を追従させたりする技術(例えば、特許文献2参照)が考えられている。しかし、上記のような作業者による誤作業があると、これらの技術では修正不能な程度にまでワークの配置が変わり、コストの割に十分な効果が得られない虞がある。
【特許文献1】特開2002−316276号公報
【特許文献2】特開平7−108323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、加工装置において、誤った部位に加工が施される虞を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の加工装置は、ワークを把持して所定の位置へ移送する移送部と、移送部に一体的に組み込まれ、ワークの像を映す映出部と、映出部を介してワークを撮像する撮像部と、撮像部により得られた画像に基づき、移送部によるワークの把持状態の修正を指令する制御部とを備える。
これにより、加工装置は、ワークを把持した後に、ワークの把持状態の修正に用いる画像データ等の画像情報を取得する。このため、画像情報を取得した後に、ワークに対して誤作業が行われる虞が極めて低くなる。また、移送部と一体に組み込まれた映出部により像を映し出すことで、加工装置は、ワークの把持状態を高精度に把握することができる。以上により、ワークに対し誤った部位に加工が施される虞を低減することができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の加工装置は、撮像部の撮像範囲に、撮像時のワークの位置決めの指標となる基準部を備える。
これにより、ワークの把持状態をさらに高精度に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
最良の形態1の加工装置は、ワークを把持して所定の位置へ移送する移送部と、移送部に一体的に組み込まれ、ワークの像を映す映出部と、映出部を介してワークを撮像する撮像部と、撮像部により得られた画像に基づき、移送部によるワークの把持状態の修正を指令する制御部とを備える。
さらに、この加工装置は、撮像部の撮像範囲に、撮像時のワークの位置決めの指標となる基準部を備える。
【実施例1】
【0011】
〔実施例1の構成〕
実施例1の加工装置1の構成を図1および図2を用いて説明する。なお、実施例1の加工装置1は、被加工物(ワーク)2にレーザ光を照射してマーキングを施すレーザマーキング装置である。
【0012】
この加工装置1は、図1に示すように、コンベア3上に供給されたワーク2を把持して所定の加工位置へ移送する移送部4、移送部4により把持されたワーク2を撮像する撮像部5、撮像部5により得られた画像に基づき、移送部4によるワーク2の把持状態の修正を指令する制御部6、ワーク2にレーザ光を照射してマーキングを施す加工部7等を備える。
【0013】
ここで、ワーク2は、例えば、燃料噴射ノズルのボディのように、略円柱状の部材である。そして、ワーク2は、図2(b)に示すように、円状の上面において、軸心部で開口する大径穴11と、大径穴11を中心として等角度間隔に開口する小径穴12とを有する。そして、小径穴12の1つと軸対称の側面が、マーキングを施すべき加工面13となる。
【0014】
移送部4は、周知の多関節ロボットであり、図2(a)に示すように、その先端部は、ワーク2をチャックして回動自在に把持する把持部15をなす。ここで、把持部15は、例えば電動モータ(図示せず)のようなアクチュエータによりトルクを付与されて回動する。そして、この電動モータが制御部6からの指令に応じて作動することで、把持部15が回動しワーク2の把持状態が変更される。これにより、移送部4は、ワーク2を加工位置に移送するとともに、加工面13を加工部7に対向配置させることができる。
【0015】
また、移送部4の先端には、ワーク2の像を映す映出部16が、移送部4に一体的に組み込まれている。この映出部16は、鏡面17によりワーク2の上面を映し出すものである。ここで、鏡面17は、把持されたワーク2の上面に対し、45°の角度をなすように取り付けられ、内部通路18を介してワーク2の上面を映し出す。そして、映し出されたワーク2の上面の像は、内部通路19を介して撮像部5により撮像される。
【0016】
撮像部5は、周知のカメラである。この撮像部5の撮像範囲には、図1に示すように撮像時のワーク2の位置決めの指標となる基準部22が設けられている。この基準部22は、ワーク2の大径部24と略同一径の基準ピンである。そして、基準部22にワーク2を同軸的に配置した状態で撮像が行われる。
【0017】
制御部6は、撮像部5により得られた画像を処理してデータ化する画像処理部26、画像処理部26により得られた画像データに基づき移送部4に指令を行う指令部27等により構成されている。指令部27は、画像処理部26から得られた画像データに基づき、加工面13が加工部7に対向配置した状態(目標把持状態)と、現在の把持状態との差を把握する。
【0018】
そして、この差に応じて、指令部27は、把持部15の回動角度、電動モータへの通電期間等の必要な指令値を算出するとともに、これらの指令値に基づき電動モータを作動させるための指令信号を合成して出力する。ここで、制御部6は、指令信号の入力を受けて電源(図示せず)から電動モータへの給電を行う駆動回路を有し、制御部6は、指令部27により指令信号を合成して駆動回路に出力することで、ワーク2の把持状態の修正を指令し、ワーク2の把持状態を目標把持状態に略一致させる。
【0019】
〔実施例1の作用〕
実施例1の加工装置1の作用を説明する。
まず、所定数のワーク2を載せたパレット29が、コンベア3により搬送され所定のワーク取出位置に到達する。このワーク取出位置において、ワーク2が、把持部15により把持されてパレット29から取り出される。取り出されたワーク2は、基準部22に向けて移送され、基準部22と同軸的に配置される。そして、基準部22と同軸的に配置された状態で、撮像部5によるワーク2の撮像が行われる。
【0020】
そして、撮像部5により取得した画像に基づき画像データが得られるとともに、この画像データに基づき、目標把持状態と現在の把持状態との差が把握される。そして、この差に応じて、ワーク2の把持状態の修正が指令され、ワーク2の把持状態が目標把持状態に略一致する。これにより、ワーク2が加工位置に移送された際に、加工面13が加工部7に対向して配置される。そして、加工面13にレーザ光が照射され、マーキングが施される。
【0021】
〔実施例1の効果〕
実施例1の加工装置1は、ワーク2を把持して加工位置へ移送する移送部4と、移送部4に一体的に組み込まれ、ワーク2の像を映す映出部16と、映出部16を介してワーク2を撮像する撮像部5と、撮像部5により得られた画像に基づき、移送部4によるワーク2の把持状態の修正を指令する制御部6とを備える。
これにより、加工装置1は、ワーク2を把持した後に、ワーク2の把持状態の修正に用いる画像および画像データを取得する。このため、画像データを取得した後に、ワーク2に対して作業者による誤作業が行われる虞が極めて低くなる。また、移送部4と一体に組み込まれた映出部16により像を映し出すことで、加工装置1は、ワーク2の把持状態を高精度に把握することができる。以上により、ワーク2に対し誤った側面にマーキングが施される虞を低減することができる。
【0022】
また、加工装置1は、撮像部5の撮像範囲に、撮像時のワーク2の位置決めの指標となる基準部22を備える。
これにより、ワーク2の把持状態をさらに高精度に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】加工装置の構成図である(実施例1)。
【図2】(a)はワークの把持状態を示す説明図であり、(b)はワークの平面図である(実施例1)。
【図3】加工装置の構成図である(従来例)
【符号の説明】
【0024】
1 加工装置
2 ワーク(被加工物)
4 移送部
5 撮像部
6 制御部
16 映出部
22 基準部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を把持して所定の位置へ移送する移送部と、
この移送部に一体的に組み込まれ、前記被加工物の像を映す映出部と、
この映出部を介して前記被加工物を撮像する撮像部と、
この撮像部により得られた画像に基づき、前記移送部による前記被加工物の把持状態の修正を指令する制御部とを備えた加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置において、
前記撮像部の撮像範囲に、撮像時の前記被加工物の位置決めの指標となる基準部を備えることを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−72845(P2007−72845A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260362(P2005−260362)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】