説明

加水分解抵抗性ポリエステル組成物

組成物が、ポリエステル、第1の改質剤、および第2の改質剤を含んでなるかまたはそれらから生成され、第1の改質剤は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と不相溶性であり、かつ酸含有ポリマーでも酸発生ポリマーでもないポリマーを含む。その組成物を含んでなるかまたはそれから生成される物品もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルと1つ以上の改質剤とを含んでなる組成物、および加水分解抵抗性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、脂肪族ポリエステルおよび半芳香族ポリエステルを包含する。ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(ヒドロキシ酪酸)などのポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)は、細菌発酵過程によって生成され、またはトウモロコシ、甜菜、または甘藷を含むがこれに限定されるものではない植物材料から単離されるような再生可能モノマーを含んでなる、脂肪族ポリエステルである。自動車用途、消費者製品、および使い捨て包装材料など、このようなバイオポリマーに対する需要または関心が高まりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
樹脂は、自動車部品、コンピュータハウジングまたはその他の電子部品、機械部品と、カップ、トレー、およびクラムシェルなどの包装物品と、ダッシュボードなどの自動車部品などの熱成形品または射出成形品のために使用できる。高温多湿条件下ではPHAは加水分解を被りやすく、それは物理的性質の劣化につながる。高温では、水または水蒸気はエステル結合を加水分解して、最初にカルボキシルおよびヒドロキシル末端基を形成する。ポリマー鎖末端の水酸基およびカルボキシル末端基は、さらなる加水分解を加速するかもしれない。この挙動はPHAの使用を制限する。このような条件下では、PHAの機械的および電気的特性は劣化する場合がある。これはコネクタおよび部品が高温多湿環境で使用される可能性が高い電子製品および自動車部品などの用途で使用される特定物品の製造にPHAを使用する場合、問題となり得る。したがって改善された加水分解安定性を有するPHAを含んでなる物品を製造する必要、または要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
組成物は、ポリエステル、第1の改質剤、および第2の改質剤を含んでなるか、本質的にそれらからなるか、それらからなるか、またはそれらから生成され、第1の改質剤が、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と不相溶性であり、かつ酸含有ポリマーでも酸発生ポリマーでもないポリマーを含むことができ、第2の改質剤が、ポリカルボジイミド、カルボジイミド、ジイミド化合物、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことができる。その組成物を含んでなるかまたはそれから生成される物品もまた提供される。
【0005】
本方法は、ポリエステルを第1の改質剤に接触させて混合物を生成するステップと、混合物を第2の改質剤と合わせて組成物を生成するステップと、組成物を物品に射出成形または熱成形してもよいステップとを含んでなり、第1の改質剤および第2の改質剤はそれぞれ上で開示されるとおりであり、各改質剤は、加水分解に対する物品の抵抗性をもたらし、またはポリエステルまたは物品の周囲の酸、周囲の湿度、または双方の含量を除去する量で存在する。
【0006】
本方法は、ポリエステルを第2の改質剤に接触させて混合物を生成するステップと、混合物を第1の改質剤と合わせて組成物を生成するステップと、組成物を物品に射出成形または熱成形してもよいステップとを含んでなり、第1の改質剤および第2の改質剤はそれぞれ上で開示されるとおりであり、各改質剤は、加水分解に対する物品の抵抗性をもたらし、またはポリエステルまたは物品の周囲の酸、周囲の湿度、または双方の含量を除去する量で存在する。
【0007】
本方法は、ポリエステルを押し出し機内の第1の位置で第1の改質剤に接触させて混合物を生成するステップと、第2の改質剤を第1の位置の下流の第2の位置に投入して組成物を生成するステップと、組成物を物品に射出成形または熱成形してもよいステップとを含んでなり、第1の改質剤および第2の改質剤はそれぞれ上で開示されるとおりであり、各改質剤は、加水分解に対する物品の抵抗性をもたらし、またはポリエステルまたは物品の周囲の酸、周囲の湿度、または双方の含量を除去する量で存在する。
【0008】
本方法は、第1の改質剤と第2の改質剤を合わせてマスターバッチ改質剤を生成するステップと、マスターバッチ改質剤またはその一部をポリエステルと合わせて組成物を生成するステップと、組成物を物品に射出成形または熱成形してもよいステップとを含んでなる。
【0009】
物品は、フィルムまたはシートであり得る。本方法は、フィルムまたはシートを第2の物品に射出成形または熱成形するステップをさらに含んでなることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
登録商標または商標は、大文字で表記する。
【0011】
ポリエステルは、芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、および脂肪族ポリエステルを包含する。半芳香族ポリエステルは、芳香族酸またはその塩またはそのエステルと、アルコールまたはそのエステル形成等価物との重縮合物を包含し、酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、スルホベンゼンジカルボン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。半芳香族ポリエステルの例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0012】
PHAは良く知られている脂肪族ポリエステルであり、例示のために使用するが、本発明の範囲を限定するものではないと解釈される。PHAは、2〜15、2〜10、2〜7、または2〜5個の炭素原子を有する、1つ以上のヒドロキシアルカン酸から誘導される反復単位を含んでなるポリマーを含むことができる。例としては、グリコール酸、乳酸(2−ヒドルキシプロパン酸)、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ポリマーの例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、およびポリ(ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、または望ましくは非晶質でない2つ以上のPHAポリマーの混合物(例えばPHBとPCLの混合物)を含むそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。立体異性体、およびその混合物またはブロック共重合体中の組み合わせもまた挙げられる。
【0013】
PHAは、バルク重合によって生成され、またはヒドロキシアルカン酸の脱水重縮合、ポリグリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合を通じて、または対応するラクトンまたは環式二量体エステルなどの環式誘導体の開環重合によって合成できる。例えば、米国特許第2668162号明細書、米国特許第3297033号明細書、特開平03−502115A号公報、特開平07−26001A号公報、および特開平07−53684A号公報を参照されたい。
【0014】
PHAはまた、ポリヒドロキシ酪酸−ヒドロキシ吉草酸共重合体、およびグリコール酸と乳酸の共重合体などの2つ以上のPHAを含んでなる、共重合体を包含する。共重合体は、ポリヒドロキシアルカン酸または誘導体と、1つ以上の環式エステルおよび/または二量体環式エステルとの共重合によって生成できる。このようなコモノマーとしては、グリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、グリコール酸の二量体環式エステル、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−プロパン酸の環式エステル、β−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ酪酸の環式エステル、δ−バレロラクトン、5−ヒドロキシ−ペンタン酸の環式エステル、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸の環式エステルと、2−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、4−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3,3,5−トリメチル−6−ヒドロキシヘキサン酸などのそのメチル置換誘導体のラクトン、12−ヒドロキシドデカン酸の環式エステル、および2−p−ジオキサノン、2−(2−ヒドロキシエチル)−グリコール酸の環式エステル、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0015】
PHAは、1つ以上のPHAモノマーまたは誘導体と、コハク酸、アジピン酸、およびテレフタル酸、およびエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールなどの脂肪族および芳香族二酸およびジオールモノマーを含むその他のコモノマーとの共重合体もまた包含する。約100種の異なるコモノマーが、PHAポリマーに組み込まれている。一般に、組み込まれる共重合体のコモノマーのモル数がより大きいほど、得られる共重合体は結晶化しにくい。
【0016】
PHAポリマーおよび共重合体はまた、生物によって作られてもよく、または植物材料から単離されてもよい。例えば共重合体ポリ(3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒドロキシ吉草酸)が、細菌ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)の発酵によって生成されている。アゾトバクター(Azotobacter)、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosterone)、および遺伝子改変大腸菌(E.coli)およびクレブシエラ(Klebsiella)を含む様々な細菌を使用して、その他のPHAタイプの発酵および回収法もまた開発されている。米国特許第6323010号明細書は、遺伝子改変生物から調製された、いくつかのPHA共重合体を開示する。
【0017】
ポリ(グリコール酸)はグリコリドの開環重合によって合成でき、ポリグリコリドと称されることもある。
【0018】
PLAは、3000〜1000000、10000〜700000、または20000〜300000の数平均分子量を有する、乳酸またはその誘導体(それらの混合物)から誘導される、少なくとも50モル%(どのような条件であっても50%のコモノマーは、結晶化する可能性が最も少ない共重合体組成物を与える)の反復単位を含有する、ポリ(乳酸)ホモポリマーおよび乳酸とその他のモノマーとの共重合体を包含する。PLAは、乳酸またはその誘導体から誘導される(例えばそれからできている)少なくとも70モル%の反復単位を含有してもよい。PLAホモポリマーおよび共重合体のための乳酸モノマーは、d−乳酸、l−乳酸、またはそれらの組み合わせから誘導できる。2つ以上のPLAポリマーの組み合わせが使用できる。PLAは、「ラクチド」と称されることが多い、乳酸の二量体環式エステルの触媒性開環重合によって生成されてもよい。その結果、PLAはまた「ポリラクチド」とも称される。
【0019】
PLAはまた、乳酸またはラクチドの特別なクラスの共重合体、および異なる立体異性体の混合物も包含する。d−乳酸またはd−ラクチドから重合されたPLA、およびl−乳酸またはl−ラクチドから重合されたPLAの溶融ブレンドは、2つの立体的に純粋なPLA間で比率50/50の立体錯体を与えることができる。立体錯体の結晶それ自体は、2つのPLA成分のどちらよりもはるかに高い融点を有する。同様に立体ブロックPLAは、低分子量立体錯体PLAから固相重合できる。
【0020】
乳酸の共重合体は、典型的に上述のような乳酸、ラクチド、または別の乳酸誘導体と、1つ以上の環式エステルおよび/または二量体環式エステルとの触媒性共重合によって調製される。
【0021】
組成物は、組成物総重量を基準にして約0.01〜約40、約0.05〜約30、約0.1〜約20、約0.5〜約5%、約0.2〜約10、または約5〜約10%の第1の改質剤、約0.01〜約40、約0.05〜約30、約0.1〜約20、約0.2〜約10、または約0.5〜約5%、または約0.5〜約3%の第2の改質剤を含んでなってもよい。
【0022】
第1の改質剤は、PHA(例えばPLA)と不相溶性であり、かつ酸含有ポリマーでも、酸発生ポリマーでも、またはそれらの組み合わせでもない任意のポリマーであり得る。PLAと相溶性のポリ(メタクリル酸メチル)などのポリマーは所望されない。「不相溶性」という用語は、当業者に公知の意味を有する。例えばGrant & Hackh’s Chemical Dictionary(1987年)は、「不相溶性」を「化学的、物理的、生理学的理由から、どちらかの性質または効果が変化することなしに他方と混合できない物質に適用される」と定義する。2つ以上のポリマーに適用される場合、それは「非混和性」または「二相」と同義であり得る。PHAの場合、二相間に剪断応力が存在して第2の改質剤をより良く分散するように、PHAおよび第1の改質剤を有して、二相構造を形成することが望まれる。
【0023】
第1のポリマーは、エチレン共重合体、コア−シェルポリマー、コポリエーテルエステル、エポキシ化油、アクリロニトリルスチレン共重合体、スチレン含有ポリマー、芳香族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ポリオレフィン、またはそれらの2つ以上の組み合わせである第1の改質剤を含むことができ;コポリエーテルエステルは、エステル結合を通じて頭尾結合するポリエーテルセグメント単位および短鎖エステル単位を含む非常に多数の反復長鎖エステルを含んでなり;エチレン共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニル、(メタ)アクリレート、エポキシ含有(メタ)アクリレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせから誘導される反復単位を含んでなり;エチレン共重合体は、エチレンおよびコモノマーから誘導される反復単位を含んでなってもよく、コモノマーは式、CH2=C(R1)CO22の1つ以上のオレフィンまたは一酸化炭素、および式、CH2=C(R3)CO24を有する1つ以上の任意のエポキシ含有コモノマーを含み、式中、R1は水素または炭素原子1〜8個のアルキル基であり、R2はメチル、エチル、またはブチルなどの炭素原子1〜8個のアルキル基であり、R3は水素またはメチルなどの炭素原子1〜6個のアルキル基であり、R4はグリシジルである。エチレンから誘導される反復単位は、共重合体重量を基準にして、約20、40または50%〜約80、90または95%を構成してもよい。コモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリレート、CO、またはそれらの2つ以上の組み合わせであることができ、存在する場合、共重合体重量を基準にして、約3、15または20%〜約35、40または70%を構成してもよい。エポキシ含有コモノマーの例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メチルアクリル酸グリシジル、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。エポキシ含有コモノマーから誘導される反復単位は、約0.5、2、または3%〜約17、20、または25%を構成してもよい。n−アクリル酸ブチル、tert−アクリル酸ブチル、iso−アクリル酸ブチル、およびsec−アクリル酸ブチルの1つ以上を使用してもよい。
【0024】
エチレン共重合体の例としては、エチレンとアクリル酸メチル、エチレンとアクリル酸エチル、エチレンとメタクリレート、エチレンとアクリル酸ブチル、エチレンとメタクリル酸グリシジル、およびエチレンとアクリル酸ブチルとメタクリル酸グリシジル、またはそれらの2つ以上の組み合わせから誘導されるものが挙げられる。
【0025】
コア/シェルポリマーは、ビニル芳香族コモノマーを含んでなっても含まなくてもよく;コアは、ポリアクリル酸アルキルを含んでなってもよく架橋されていてもよい、1つ以上のエラストマーを含んでなり;シェルはポリメタクリル酸メチルを含んでもよくエポキシ、カルボン酸、またはアミンはじめとする官能基を含有してもよい非エラストマーポリマーを含んでなる。コア−シェルポリマーは、米国特許第4180529号明細書で述べられているタイプの多段階逐次重合技術によって調製される多層で構成されてもよい。各連続段階は、先に重合された段階の存在下で重合される。したがって各層は直前段階上の層として重合される。
【0026】
コポリエーテルエステルは、エステル結合を通じて頭尾結合する、非常に多数の反復長鎖エステル単位および短鎖エステル単位を有する1つ以上の共重合体を含む。長鎖エステル単位は−OGO−C(O)RC(O)−の反復単位含んでなり、短鎖エステル単位は−OGO−C(O)RC(O)−の反復単位を含んでなる。Gは、約400〜約6000、または好ましくは約400〜約3000の数平均分子量を有するポリ(酸化アルキレン)グリコールからの末端水酸基の除去後に残る、二価のラジカルである。Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る、二価のラジカルである。Dは、約250未満の分子量を有するジオールからの水酸基の除去後に残る、二価のラジカルである。
【0027】
コポリエーテルエステルは、約15〜約99重量%の短鎖エステル単位、およびポリエーテルセグメント単位を含む約1〜約85重量%の長鎖エステル、または約25〜約90重量%の短鎖エステル単位、および約10〜約75重量%の長鎖エステル単位を含有してもよい。
【0028】
コポリエーテルエステルは、その開示を参照によって本明細書に援用する、米国特許第3651014号明細書、米国特許第3766146号明細書、および米国特許第3763109号明細書を含む米国特許で開示される。市販されるコポリエーテルエステルは、E.I.du Pont de Nemours & Company(DuPont)からのHYTREL(登録商標)である。その他としては、オランダのDSMからのARNITEL(登録商標)、および米国のTiconaからのRITEFLEX(登録商標)が挙げられる。
【0029】
エポキシ化油は1つ以上の内部オキシラン基を含有してもよく、いくらかの不飽和を含有してもよいが、必ずしもそうであるとは限らず、オキシラン基は油分子の終端または末端炭素原子に結合していない。エポキシ化油は、野菜などの植物、動物、または石油から誘導されてもよく、リノレン酸、オレイン酸、およびリノール酸不飽和酸のグリセリドであるアマニ油、および飽和脂肪酸などの様々な脂肪酸のグリセリドを含んでもよい。脂肪酸は、約10〜約35個の炭素原子を含有してもよい。
【0030】
スチレン含有ポリマーとしては、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水素化イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−水素化ブタジエン−スチレン共重合体、スチレンブロック共重合体、ポリスチレンが挙げられる。このような全てのスチレン含有ポリマーは当業者に良く知られており、ここでは簡潔さのためにその説明を省略する。例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン、またはABSは、ポリブタジエンの存在下でスチレンとアクリロニトリルとを重合することで作られるターポリマーである。比率は、15〜35%のアクリロニトリル、5〜30%のブタジエン、および40〜60%のスチレンで変動できる。結果は、ポリ(スチレンアクリロニトリル)のより短い鎖と交差するポリブタジエンの長鎖である。ABSは、−25〜60℃で使用できる。
【0031】
EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)は良く知られているエラストマーであり、したがってその説明は省く。
【0032】
ポリオレフィンは、直鎖高密度PEまたはポリプロピレンなどの良く知られているポリエチレン(PE)を含む。エチレンと、プロピレン、ブテン、オクテン、およびDow Chemical(Midland,Michigan)からのENGAGE(登録商標)などを含むが、これに限定されるものではない、その他の不飽和オレフィンモノマーとを共重合することによって、同様のエチレンベースの軟質ポリオレフィンを調製して使用できる。
【0033】
その他の適切な第1の改質剤としては、上で開示される周知の芳香族ポリエステルまたは脂肪族−芳香族ポリエステルが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0034】
カルボジイミドは官能基(N=C=N)n(nは約1または約2〜約20に及ぶ数である)を含んでなり、加水分解して尿素を形成できる。カルボジイミド官能基を含有する化合物は脱水剤であり、アミドまたはエステル形成に向けてカルボン酸を活性化するのに使用されることが多い。カルボジイミドの例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。カルボジイミドは当業者に良く知られており、尿素の脱水によって、またはチオ尿素から、または開示全体を参照によって本明細書に援用する米国特許第7129190号明細書で開示される方法によって形成できる。
【0035】
カルボジイミド化合物としては、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、米国特許第4965302号明細書で開示されるもののいずれか1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。カルボジイミド化合物は、約70℃以上の温度で有機リン化合物または有機金属化合物を触媒として、様々な種類のポリイソシアネートに脱カルボキシル化縮合反応を施して、または当業者に知られている任意の方法によって生成されてもよい。例えば、米国特許第7129190号明細書、米国特許第4965302号明細書、およびBull.Soc.Chim.France,727〜732頁(1951年)を参照されたい。市販されるカルボジイミドとしては、米国のRhein Chemie CorporationからのSTABAXOL(登録商標)、および日清紡績からのCARBODILITE(登録商標)が挙げられる。
【0036】
PHA組成物は、可塑剤、安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填材、難燃剤、潤滑剤、補強材、加工助剤、ブロッキング防止剤、剥離剤、および/またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む1つ以上の追加的添加剤を含んでなることができる。補強材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、雲母、珪灰石、雲母、天然繊維、合成樹脂繊維、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0037】
これらの添加剤の1つ以上が、0.01〜50重量%、0.01〜7重量%、または0.01〜5重量%で組成物中に存在してもよい。例えば組成物は、約0.5〜約5%の可塑剤、約0.1〜約5%の抗酸化剤および安定剤、0.05〜0.5%のワックス、約3〜約20%の天然繊維などのその他の固体添加剤、約0.5〜約10%のナノ複合材料、および/または約1〜約20重量%の難燃剤を含有してもよい。適切なその他の固体添加剤の例としては、酸化チタンなどの顔料、炭素、黒鉛、1種以上のシリケート、または遷移金属酸化物が挙げられる。
【0038】
PHA組成物は、1つ以上の上で開示される強化繊維、またはポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン共重合体、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む、ポリオレフィンなどの追加的ポリマーをさらに含んでなってもよい。ポリエチレンおよびポリプロピレンは、任意の既知のホモポリマーおよび共重合体を含むことができる。PHA組成物を多層構造中で使用する場合、追加的ポリマーはまた、PHA層にラミネートされる別の層であり得る。
【0039】
ポリエステルまたはPHA組成物は、当業者に知られている任意の手段によって生成できる。
【0040】
例えば一軸または二軸スクリュー押し出し機、ブレンダー、Buss混練機、二重らせんAtlanticミキサー、バンバリーミキサー、ロールミキサーなどの溶融ミキサーを使用し、混合して実質的に分散させるかまたは均質にして、PHA組成物を得るなどの当業者に知られている任意の方法によって、PHAを最初に第1の改質剤と混合して、混合物を生成してもよい。混合はまた、周囲圧力または0〜約60MPaまたは0〜約34MPaの範囲において、約100℃〜約400℃、約170℃〜約300℃、または特に約180℃〜約230℃である、PHA軟化点を超えてPHA重合温度未満の範囲の溶融混合温度を含むことができる。一軸押し出し機、逆回転二軸押し出し機、ロール製粉機、双葉二軸押し出し機、スクリュー先端混合トーピード付き単軸押し出し機などの任意の適切な装置が、溶融混合のために使用できる。代案としては構成物質の一部を溶融ミキサー内で混合し、引き続いて残りの構成物質を添加して、肉眼で見て実質的に分散するまでまたは均質になるまでさらに溶融混合できる。
【0041】
第1の混合物は、上で開示されるように第2の改質剤と合わせて組成物を生成でき、異なる押し出し機内で実施できる。組成物は、物品に射出成形または熱成形できる。
【0042】
代案としては、PHAを最初に第2の改質剤と混合して第1の混合物を生成でき、第1の改質剤との混合がそれに続き、組成物が生成される。
【0043】
また代案としては、上で開示されるように、PHAを押し出し機内の第1の位置で第1の(または第2の)改質剤と混合して混合物を生成できる。第1の位置は、押し出し機の供給ホッパーまたは第1のバレルまたは第1の供給ポートであり得る。その後、第2の改質剤(または第1の混合物が第2の改質剤を含む場合は第1の改質剤)を押し出し機の異なる位置であるが、第1の位置の下流で、合わせ、添加し、または注入できる。工程は反復でき、または2つ以上の第1の位置および2つ以上の第2の位置を含むことができる。
【0044】
PHA、第1の改質剤、および第2の改質剤を一度に合わせてPHA組成物を生成する一段階工程は、あまり望ましくない。
【0045】
改質剤のそれぞれは、PHA組成物またはそれからの物品に加水分解に対する抵抗性を与え、または組成物または物品の周囲の酸、周囲の湿度、または双方の含量を除去するのに十分な量で存在する。それらはまた、強化または流動学的改変などのその他の有用な機能性を最終組成物に提供してもよい。
【0046】
全ての組み合わせは、上で開示されるような当業者に知られている任意の手段による、単なる混合によって実施できる。
【0047】
組成物が生成した後、溶融成形機に供給するために、それをペレットまたはその他の粒子に成形(切断)してもよい。
【0048】
溶融成形は、射出成形、熱成形、または押出し、またはこれらの方法の任意の組み合わせなどの熱可塑性物質のための常法によって実施できる。例えば可塑剤および潤滑剤(離型剤)などの成分のいくつかを押し出し機内の1つ以上の下流点で添加して、充填材などの固形分摩滅を低下させ、および/または分散を改善し、および/または熱的に比較的不安定な成分の熱履歴を低下させ、および/または揮発性成分の蒸発による損失を低下させてもよい。
【0049】
組成物は、キャストフィルムまたはシートを調製するスロットダイ、または吹込フィルムまたはシートを調製する環状ダイのどちらかを通した押出しと、それに続く熱成形によってフィルムまたはシートに成形してもよく、それは融成物から延伸されるかまたは組成物加工後段階で延伸される。
【0050】
フィルムは、PHA組成物の単層(単層シート)であってもよく、またはPHA組成物の層と、異なる材料を含んでなる少なくとも1つの追加的層とを含んでなる、多層フィルムまたはシートであってもよい。
【0051】
包装用途のためには、多層フィルムは、最外側の構造または酷使層と、内側または内部バリア層と、包装の意図される内容物に接触してそれに適合し、あらゆる必要なシールを形成できる最内側層とを包含する3層以上を含んでもよい。その他の層もまた存在して接着剤層の役割をし、これらの層相互の結合を助けてもよい。各層の厚さは、約10〜約200μmで変動できる。
【0052】
多層フィルムは、例えば同時押し出しなどの当業者に良く知られている任意の方法によって生成でき、1つ以上のその他の層または基材上にラミネートできる。その他の適切な加工技術は、例えば吹込フィルム(同時)押出しおよび押出しコーティングである。
【0053】
フィルムを使用して、容器、パウチおよびリディング、バルーン、ラベル、開封明示シール帯などの包装材料、またはフィラメント、テープ、およびストラップなどの工学製品を調製できる。またフィルムを幅の狭いテープに裂いてさらに延伸し、繊維を提供してもよい。
【0054】
フィルムまたはシートは、物品にさらに熱成形してもよい。型は、当業者に知られている任意の型であり得る。例えば型はアルミニウムからできており、型内部から型上部を覆う加熱されたPHAシートまで真空状態にすることで、伸長のために使用できる。
【0055】
組成物はまた、射出成形、押出し成形、吹込成形、および熱成形などの任意の適切な溶融加工技術を使用して、造形品に成形してもよい。
【0056】
物品の例としては、自動車部品、電気または電子部品またはコネクタ、力学的機械部品、部品ハウジング、トレー、カップ、キャップ、ボウル、蓋、ノブ、ボタン、クラムシェル、異形押し出し物品、カートン、圧搾性チューブ、容器の構成部品、または使い捨て食器などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
組成物を含んでなる個々の構成部品は、PHAの融点(またはPHAが非晶質であればガラス転移温度)を超えて組成物を加熱し、次にそれらを融点未満に冷却して組成物を凝固させ、成形部品を形成して作られてもよい。好ましくは、部品は、融点より少なくとも50℃低く冷却され、より好ましくは融点より少なくとも100℃低く冷却される。通常、最終的に組成物は、最も典型的には15〜45℃の周囲温度に冷却される。
【0058】
組成物は、1つ以上の別のポリマーおよび/または粘土、天然繊維、ガラス繊維、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの充填材をさらに含んでなってもよい。
【0059】
以下の実施例は例示的であり、本発明の範囲を限定するものとは解釈されない。
【実施例】
【0060】
材料
PLA3001Dペレットは、NatureWorks LLC(Minnetonka,MN USA)から購入した。
【0061】
エチレンアクリル酸ブチルメタクリル酸グリシジル共重合体(EBAGMA)であるELVALOY(登録商標)EP4934−9は、DuPontから得た(28重量%のアクリル酸ブチルおよび12重量%のメタクリル酸グリシジル)。
【0062】
エチレンアクリル酸メチル(EMA)は、ELVALOY(登録商標)AC1224(24重量%アクリル酸メチル)としてDuPontから得た。
【0063】
IRGANOX(登録商標)1010は、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY USA)から得た抗酸化剤であった。
【0064】
Wax OPは、Clariant Corp(Muttenz,Switzerland)によって製造される潤滑剤であった。
【0065】
STABAXOL(登録商標)Pは、Rhein Chemie Corporation(Mannheim、Germany)から得たポリカルボジイミドであった。
【0066】
HYTREL(登録商標)4056は、DuPontからの、融点150℃および名目上デュロメーターD硬度40Dのコポリエーテルエステルエラストマーであった。
【0067】
ECOFLEX F BX7011は、BASF(Ludwigshafen,Germany)から得たポリエステルであった。
【0068】
KRATON D1107は、Kraton Polymers(Houston,TX,USA)から得たスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体であった。
【0069】
ALATHON L5845は、LyondellBasell Industries(Houston,TX,USA)から得た高密度ポリエチレンであった。
【0070】
MARLEX HGX 030は、Phillips Sumika Polypropylene Company(The Woodlands,TX)から得たポリプロピレンホモポリマーであった。
【0071】
SANは、Aldrichからの重量平均分子量165,000および25重量%のアクリロニトリルのスチレンアクリロニトリル共重合体であった。
【0072】
MAGNUM 941は、Dow Chemical(St.Louis,MO,USA)から得たアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体であった。
【0073】
PMMAは、Scientific Polymer Products(Ontario,NY,USA)からの平均分子量35,000のポリ(メタクリル酸メチル)であった。
【0074】
KRATON FG 1910は、無水マレイン酸がゴム中央ブロック上にグラフトされている、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体であった。これは、Kraton Polymers(Houston,TX,USA)から得た。
【0075】
SURLYN 9910は、DuPontからのエチレンメタクリル酸共重合体の亜鉛イオノマーであった。
【0076】
PARALOID EXL 3330は、Rohm−Haas(Philadelphia,PA,USA)からのペレット化アクリル酸ブチルベースのコアシェル共重合体であった。
【0077】
方法
押出しに先だって、および成形に先だって、全てのポリエステル樹脂を90℃で12時間乾燥させた。その他の材料は、特に断りのない限り、受領された状態で使用した。
【0078】
ポリマー組成物を30mm Coperion二軸押し出し機(Coperion Inc.,Ramsey,NJ)内で調合して調製した。特に断りのない限り、全ての成分は押し出し機の後部供給口(バレル1)を通じて添加した。2回添加加工法では、STABAXOL(登録商標)Pを(9個のバレル中の)バレル5内に側方供給した。バレル温度を170〜190℃に設定し、組成物および押し出し機速度とスクリューrpm次第で190〜225℃の融解温度をもたらした。
【0079】
得られた組成物は、4mmのISO多目的バーに成形した。試験片を使用して、23℃乾燥状態で成形されたそのままのサンプルの機械的特性を測定した。以下の試験手順を使用した。
【0080】
引張り強さおよび破断点伸び:分速50mmの伸張速度におけるISO 527−1/2。
【0081】
PCT試験:試験バーはまた、121℃、2.01×105Pa、100%相対湿度のオートクレーブ内で3、10、および20時間で条件付けされた。条件付けされた試験バーの機械的特性を測定し、結果を条件付けされていないバーの特性と比較した。条件付けされたバーの機械的特性と、物理的特性の保持百分率とを表に示す。物理的性質の保持が大きいほど、より良い加水分解抵抗性を示唆する。
【0082】
表1は8つの実施例の組成物を示し、表2は6つの比較例を示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
表3および4は、それぞれ表1および2の実施例の物理的性質を示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3の結果は、プレッシャークッカー内での20時間の老化後に、カルボジイミドおよびEBAGMAの双方(実施例1)、カルボジイミドおよびEMAの双方(実施例2)、およびカルボジイミドおよびKRATON D 1107の双方(実施例3)を含んでなるPLA組成物が、それぞれ85%、78%、および78%の初期引張り強さ、ならびにそれぞれ36%、40%、および66%の初期伸び率を保持したことを示す。
【0088】
【表4】

【0089】
表4は、比較例3を除く全ての比較例が、それらの初期引張り強さおよび伸び率を失ったことを示す。カルボジイミドおよびEBAGMAの双方を含有する実施例1は、比較例1(カルボジイミドのみ)または比較例2(EBAGMAのみ)よりも高い保持を有した。結果は、カルボジイミドおよびEBAGMAの相乗効果を実証する。
【0090】
別の実験で、いくつかの加工条件を使用して表5に示すような組成物を作った。
【0091】
【表5】

*F=83%EBAGMA/16.7%STABAXOL(登録商標)P/0.3%IRGANOX(登録商標)1010マスターバッチ、およびG=HYTREL 10MS(HYTREL 4056/20%STABAXOL Pマスターバッチ)。
**表中の数字は各構成要素の重量部である。
***(加工法1)1段階1回添加押出しであり、全ての構成要素を押し出し機に同時に添加した。
****(加工法2)2段階押出しであり、EBAGMAおよびPLA3001Dならびに添加剤を押し出し機内で最初に混合して混合物を生成し、STABAXOL(登録商標)Pと混合物との第2の押出しがそれに続いた。
*****(加工法3)2段階押出しであり、STABAXOL(登録商標)PおよびPLA3001Dならびに添加剤を押し出し機内で最初に混合して混合物を生成し、EBAGMAと混合物との第2の押出しがそれに続いた。
******(加工法4)9個のバレルがある長い押し出し機を使用した1段階2回添加押出しであり、EBAGMAおよびPLA3001Dならびに添加剤をバレル1内で最初に混合し、STABAXOL(登録商標)Pをバレル5に添加した。
【0092】
表6は、加工条件を変化させることで、PLA組成物の特性に影響を与えられることを示す。例えば20時間のPCT後、1段階1添加工程(実施例9)で作られたPLA組成物は、その初期引張り強さおよび伸び率を全て失い、好ましくなかった。その他の加工法(実施例10〜14)によって調製されたPLA組成物は、20時間のPCT試験後に初期引張り強さおよび伸び率のいくらかを保持した。表6はまた、マスターバッチ(実験13および14)から作られたPLA組成物が引張り強さの最良の保持を有したことを示す。電子顕微鏡検査結果は、改質剤の分散が、異なる加工法によって作られたサンプル毎に変動することを明らかにした。改善された分散は即時の酸除去を促進し、恐らくは組成物またはそれから作られた物品の疎水性を増強する。したがって加水分解抵抗性は、使用加工条件によって影響を受ける場合がある。
【0093】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)、第1の改質剤、および第2の改質剤を含んでなるかまたはそれらから生成される組成物であって、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、2〜10個の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸から誘導される反復単位を含んでなり、
前記第1の改質剤が、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と不相溶性であり、かつ酸含有ポリマーでも酸発生ポリマーでもないポリマーであり、
前記第2の改質剤が、ポリカルボジイミド、カルボジイミド、ジイミド化合物、またはそれらの組み合わせを含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸を含むヒドロキシアルカン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせから誘導される反復単位を含んでなり、
第2の改質剤がポリカルボジイミドまたはカルボジイミドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、5個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸から誘導される反復単位を含んでなり、
前記第1の改質剤が、エチレン共重合体、コア−シェルポリマー、コポリエーテルエステル、エポキシ化油、アクリロニトリルスチレン共重合体、スチレン含有ポリマー、芳香族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ポリオレフィン、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、
前記エチレン共重合体が、エチレンおよび酢酸ビニル、(メタ)アクリレート、エポキシ含有(メタ)アクリレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせから誘導される反復単位を含んでなり、
前記コポリエーテルエステルが、エステル結合を通じて頭尾結合するポリエーテルセグメント単位および短鎖エステル単位を含む非常に多数の反復長鎖エステルを含んでなり、
前記第2の改質剤が、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むポリカルボジイミドまたはカルボジイミドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルカン酸が、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ−酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ−吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、
前記エチレン共重合体が、エチレンおよび1つ以上のコモノマーから誘導される反復単位を含んでなり、
前記コモノマーが、CH2=C(R1)CO22、一酸化炭素、またはエポキシ含有コモノマーCH2=C(R3)CO24を含み、
1が水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、
2が1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、
3が水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
4がグリシジルであり、
前記コモノマーが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリレート、CO、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、グリシジルアクリル酸メチル、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシ−酪酸)、ポリ(ヒドロキシ酪酸−吉草酸)共重合体、グリコール酸乳酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸−ヒドロキシ吉草酸共重合体、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、
前記第1の改質剤が、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリレート共重合体、エチレンアクリル酸ブチル共重合体、エチレンメタクリル酸グリシジル共重合体、エチレンアクリル酸ブチルメタクリル酸グリシジル共重合体、スチレンブロック共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水素化イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−水素化ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、半芳香族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル、ポリオレフィン、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がポリ(乳酸)であり、前記第2の改質剤がポリカルボジイミドまたはカルボジイミドである、請求項1、2、3、4、または5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の改質剤が、スチレンブロック共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、エチレンn−アクリル酸ブチルメタクリル酸グリシジル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンおよびアクリル酸メチル共重合体、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)、第1の改質剤、および第2の改質剤を合わせて組成物を生成するステップを含み、前記組成物を物品に射出成形または熱成形するステップを含んでもよい方法であって、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)、前記第1の改質剤、および前記第2の改質剤が、それぞれ請求項1、2、3、4、5、6、または7において特徴付けられるとおりであり、
各改質剤が前記物品に加水分解に対する抵抗性をもたらし、または前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)または前記物品の周囲の酸、周囲の湿度、または双方の含量を除去する量で存在し、
(1)前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を前記第1の改質剤に接触させて混合物を生成し、前記混合物を前記第2の改質剤と合わせて前記組成物を生成するステップ、または
(2)前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を前記第2の改質剤に接触させて混合物を生成し、前記混合物を前記第1の改質剤と合わせて前記組成物を生成するステップ、または
(3)前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を押し出し機内の第1の位置で前記第1の改質剤に接触させて第1の混合物を生成するステップと、前記第2の改質剤を前記第1の位置の下流の第2の位置に投入して生成するステップと、前記第2の改質剤を前記第1の混合物と合わせて前記組成物を生成するステップ、または
(4)第1の改質剤および第2の改質剤を合わせてマスターバッチ改質剤を生成するステップと、前記マスターバッチ改質剤またはその一部を前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と合わせて前記組成物を生成するステップ
を含んでなる、方法。
【請求項9】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が前記ポリ(乳酸)を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を前記第1の改質剤に接触させて混合物を生成するステップと、前記混合物を前記第2の改質剤と合わせて前記組成物を生成するステップとを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を前記第2の改質剤に接触させて混合物を生成するステップと、前記混合物を前記第1の改質剤と合わせて前記組成物を生成するステップとを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を押し出機し内の第1の位置で前記第1の改質剤に接触させて第1の混合物を生成するステップと、前記第2の改質剤を前記第1の位置の下流の第2の位置で投入して生成するステップと、前記第2の改質剤を前記第1の混合物と合わせて前記組成物を生成するステップとを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の改質剤と前記第2の改質剤を合わせてマスターバッチ改質剤を生成するステップと、前記マスターバッチ改質剤またはその一部をポリ(ヒドロキシアルカン酸)と合わせて前記組成物を生成するステップとを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物を含んでなるかまたはそれから生成される物品であって、自動車部品、自動車内部電気および電子部品、機械部品、包装物品、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み、前記組成物が請求項1、2、3、4、5、6、または7で特徴付けられるとおりである、物品。

【公表番号】特表2011−523422(P2011−523422A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542356(P2010−542356)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/030511
【国際公開番号】WO2009/089398
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】