説明

加熱体

【課題】保護層の表面が平坦な加熱体を提供する。
【解決手段】本発明によって提供される加熱体Aは、基板1と、基板1上に形成されており、互いの幅方向に離間する1対の帯状部2a,2bを有する抵抗体層2と、抵抗体層2を覆う保護層4と、を備えた加熱体Aであって、1対の帯状部2a,2bの間に、基板1と保護層4に挟まれる絶縁層5が形成されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタやファックスなどに組み込まれ、トナーを記録紙に熱定着させるために記録紙を加熱する場合などに用いられる加熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような加熱体としては、たとえば、特許文献1に記載されているものがあり、図3には、このような加熱体の断面図を示している。加熱体Xは、セラミック等の耐熱絶縁性の基板91と、図3の紙面垂直方向に延びており、基板91上に形成された抵抗体層92と、抵抗体層92を覆う保護層94とを備えている。抵抗体層92は、所定の間隔を隔てて図中の左右方向に離間するように配置された帯状部92a,92bを備えている。帯状部92a,92bはそれぞれ電源に連結され、通電することで発熱する。加熱体Xは、帯状部92a,92bが互いに離されて設置されているのでより均一に発熱することができる。
【0003】
しかしながら、このような加熱体Xにおいては、帯状部92a,92bの間が凹んでいるので、その上に形成される保護層94に凹部95が形成されてしまっていた。このように保護層94に凹部95が形成されていると、加熱体Xをプリンタやファックスなどに組み込んだときに、他の部品と密接しにくくなり熱伝達が妨げられる問題があった。また、保護層94と他の部品との接触面積が減少するので、加熱体Xの静電耐圧が低下してしまっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−135927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、熱伝達効率および静電耐圧を向上させた加熱体の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される加熱体は、基板と、上記基板上に形成されており、互いの幅方向に離間する1対の帯状部を有する抵抗体層と、上記抵抗体層を覆う保護層と、を備えた加熱体であって、上記1対の帯状部の間に、上記基板と上記保護層とに挟まれる絶縁層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、上記1対の帯状部の間を上記絶縁層が埋めているので、その上に形成される上記保護層に生じる凹みを軽減することができる。したがって、この加熱体をプリンタやファックスなどに組み込む際に、他の実装部品とより密接させやすくなり、組み立てやすくなる。さらに、上記保護層表面がよりなだらかになるので、静電気が貯まりにくくなり、上記加熱体の静電耐圧は向上し、静電気による誤作動が起こりにくくなる。
【0008】
好ましい実施の形態においては、上記絶縁層の厚みは、上記抵抗体層の厚み以上である。このような構成によれば、上記保護層の表面に凹みが生じず、平坦にすることができる。
【0009】
さらに、好ましい実施の形態においては、上記絶縁層が、結晶化ガラスで形成されている。一般的に、結晶化ガラスは耐熱性に優れているので、上記絶縁層は、発熱する上記抵抗体層に挟まれて加熱されても大きく熱膨張して上記抵抗体層を傷つけることがない。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
図1には、本発明に係る加熱体の実施形態の一例を斜視図で示している。図2は図1のII-II線に沿う断面図である。本実施形態の加熱体Aは、基板1と、抵抗体層2と、電極3a,3bと、保護層4と、絶縁層5とを備えている。なお、図1および図2において、加熱体Aの幅方向をx方向とし、長手方向をy方向とし、高さ方向をz方向とする。
【0013】
基板1は、たとえば、アルミナセラミックによって、x方向を幅方向とし、z方向を高さ方向とし、y方向を長手方向とする長矩形状に形成された絶縁性基板である。この基板1の表面または裏面には図示しない温度センサが設置されており、この温度センサによって加熱体Aの表面温度を監視することができる。
【0014】
抵抗体層2は、基板1の表面に形成されており、1対の帯状部2a,2bを有している。帯状部2aと帯状部2bとは、x方向に沿って一定の間隔を隔てて並列しており、いずれもy方向に沿って延びている。帯状部2aは、基板1の一端から他端まで延びており、他端において帯状部2bと連結されている。帯状部2bは、基板1の他端から一端に向かって延びており、帯状部2aよりは短く形成されている。この抵抗体層2は、たとえば銀・パラジウムペースト、あるいは酸化ルテニウムペーストなどの抵抗体ペーストを印刷し、焼成することによって形成することができる。
【0015】
電極3aは、帯状部2aの一端と連結されており、一方、電極3bは、帯状部2bの一端に連結されている。電極3a,3bは、外部の配線に接続されており、抵抗体層2に電力を供給し、発熱させるために用いられる。この電極3a,3bに流される電力は、上記温度センサによって検知される加熱体Aの表面温度が適正な値になるように、図示しない制御装置によって調整されている。
【0016】
保護層4は、電極3a,3bを外部に露出させ、抵抗体層2を覆うように形成されている。この保護層4は、たとえば、ガラスフリットと酸化アルミニウム粉末からなるガラスペーストを印刷し、焼成することで形成される。
【0017】
絶縁層5は、図2に示すように、基板1表面上の帯状部2aと帯状部2bとに挟まれた領域に、帯状部2a,2bと同じ高さになるように形成されている。また、y方向において、絶縁層5は、帯状部2bと同程度の長さに延びている。なお、帯状部2bより長く延び、帯状部2aと同程度の長さに延びていても構わない。この絶縁層5は、抵抗体層2を形成してから保護層4を形成するまでの間に、結晶化ガラスを主成分とするガラスペースを印刷し、焼成することで形成される。
【0018】
次に、加熱体Aの作用について説明する。
【0019】
このような構成の加熱体Aは、帯状部2aと帯状部2bとの間において、基板1表面上ではなく、絶縁層5の上に保護層4が形成されている。絶縁層5は帯状部2a,2bと同じ高さに形成されているので、保護層4の表面は平坦となる。この加熱体Aは、たとえばプリンタやファックスなどに組み込まれて用いられ、その際、保護層4の表面が平坦だと、加熱体Aの表面とその他の部品とをより密接させやすくなり、その接触面積も大きくなる。したがって、加熱体Aの熱伝達効率および静電耐圧は向上する。
【0020】
また、この加熱体Aの絶縁層5は、耐熱性に優れた結晶化ガラスを主成分としているので、保護層4を焼成する際や、加熱体Aの駆動時に帯状部2a,2bを発熱させた際に、熱膨張して帯状部2a,2bを傷つけたり、変形させたりしにくくなっている。したがって、絶縁層5を設けることで、加熱体Aが故障しやすくなることもない。
【0021】
本発明に係る加熱体は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る加熱体の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、帯状部の数が3本以上である場合にも、それぞれの帯状部と帯状部との間に絶縁層を設けることで本発明を実施可能である。また、絶縁層の高さと抵抗体層の高さとが多少ずれていても、本発明の効果を得ることは可能である。さらに、上述した実施形態では、帯状部2a,2bは直線的に延びているが、帯状部が蛇行していてもよく、帯状部同士の間隔が一定でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る加熱体の斜視図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】従来の加熱体の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
A 加熱体
1 基板
2 抵抗体層
2a,2b 帯状部
3a,3b 電極
4 保護層
5 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、上記基板上に形成されており、互いの幅方向に離間する1対の帯状部を有する抵抗体層と、上記抵抗体層を覆う保護層と、を備えた加熱体であって、
上記1対の帯状部の間に、上記基板と上記保護層とに挟まれる絶縁層が形成されていることを特徴とする加熱体。
【請求項2】
上記絶縁層の厚みは、上記抵抗体層の厚み以上である請求項1に記載の加熱体。
【請求項3】
上記絶縁層が、結晶化ガラスで形成されている、請求項1または2に記載の加熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−181833(P2008−181833A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15981(P2007−15981)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】