説明

加熱器並びにその中で使用する装飾用の炭及びその製法

【課題】 装飾用の炭とそれを使用した加熱器を得る。
【解決手段】本発明の加熱器は、加熱用容器11と、その容器の内部に設置された電気コンロ又はガスコンロ等の加熱手段12と、この加熱手段の上に置かれた装飾用の炭からなる。上から見たときに見えるのは装飾用の炭14であり、この炭は加熱手段12により加熱され、普通の炭のように赤々と発色するが、それ自身は発熱せず、形も崩れない。そのため、何回でも使用できるし、加熱が終わっても灰が残らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱器並びに装飾用の炭及びその製法に関する。本発明の装飾用の炭は、例えば、焼肉、焼鳥、炉端焼きなど客の目の前で加熱する形式のレストランで使用することができる。
【背景技術】
【0002】
この種のレストランでは、備長炭等の炭火焼きを採用しているところが多い。炭火焼きは、調理中の風情が楽しめるだけでなく、遠赤外線により肉や魚が中までほどよく加熱調理されるという長所がある。
【0003】
炭火焼き用の炭火コンロと炭火以外の熱源のコンロを併用した加熱器も例えば下記特許文献1において提案されている。
【特許文献1】特開2001−248843
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのようなレストランでは、毎日大量の炭灰が残り、その廃棄処理が問題となっている。
【0005】
本発明は、見かけは炭火焼きのように見えるが、実際は電気コンロ又はガスコンロによる加熱であり、従って、灰が残らないような加熱器を提供することを目的とする。本発明は、さらにその加熱器の中で使用する、装飾用であるが、遠赤外線を発するなどの実用面を兼ね備えた炭及びその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次のとおりである。
【0007】
(1)加熱用容器と、その容器の内部に設置された電気コンロ又はガスコンロ等の加熱手段と、この加熱手段の上に置かれた装飾用の炭からなる加熱器。
【0008】
(2)金属アルミニウム又は金属シリコンと、水和して硼酸を解離する硼砂、硼酸などの鉱酸化合物と、苛性カリ、苛性ソーダ又は苛性リチウムのアルカリ金属とを反応させるに際し、水中又は前記鉱酸化合物の溶液中で、前記金属固体と前記アルカリ金属との濃厚溶液反応を生ぜしめ、更に前記鉱酸化合物を反応せしめ、該反応熱を50℃以上100℃以内に制御すると共に、生成物の比重を1.1以上として造膜させた水性造膜性無機化合物を木材片又は竹片に含浸させ、加熱して炭化させることにより得られる装飾用の炭。
【0009】
(3)(a)金属アルミニウム又は金属シリコンと、水和して硼酸を解離する硼砂、硼酸などの鉱酸化合物と、苛性カリ、苛性ソーダ又は苛性リチウムのアルカリ金属とを反応させるに際し、水中又は前記鉱酸化合物の溶液中で、前記金属固体と前記アルカリ金属との濃厚溶液反応を生ぜしめ、更に前記鉱酸化合物を反応せしめ、該反応熱を50℃以上100℃以内に制御すると共に、生成物の比重を1.1以上として造膜させた水性造膜性無機化合物を用意する工程、(b)前記水性造膜性無機化合物の固形分を10−30%含有する水溶液の中に木材片又は竹片を浸漬し、20−90分間、5−30気圧/m2で加圧する工程、(c)前記木材片又は竹片を水溶液から取り出し、乾燥させる工程、(d)前記木材片又は竹片を加熱して炭化させる工程、を有することを特徴とする、装飾用の炭の製法。
【発明の効果】
【0010】
本発明による加熱器では、加熱は容器の内部に設置された電気コンロ又はガスコンロ等の加熱手段で行うが、上から見たときに見えるのは装飾用の炭である。この炭は加熱手段により加熱され、普通の炭のように赤々と発色するが、それ自身は発熱せず、形も崩れない。そのため、何回でも使用できるし、加熱が終わっても灰が残らない。従って、客の目からは通常の炭火焼きのように見えながら、炭灰の廃棄処理問題が解決された。
【0011】
同時に、本発明の装飾用の炭を使用すれば、炭を買い足す必要はなくなるか、又は、その必要性が著しく減るので、経済的である。資源の有効利用にもつながり地球環境の保全に役立つ。
【0012】
さらに、装飾用の炭であっても遠赤外線は放射するので、肉や魚が中までほどよく加熱調理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の装飾用の炭は、木材片又は竹片に、ある種の化合物を含浸させる。その化合物は、金属アルミニウム又は金属シリコンと、水和して硼酸を解離する硼砂、硼酸などの鉱酸化合物と、苛性カリ、苛性ソーダ又は苛性リチウムのアルカリ金属とを反応させるに際し、水中又は前記鉱酸化合物の溶液中で、前記金属固体と前記アルカリ金属との濃厚溶液反応を生ぜしめ、更に前記鉱酸化合物を反応せしめ、該反応熱を50℃以上100℃以内に制御すると共に、生成物の比重を1.1以上として造膜させた水性造膜性無機化合物であり、その詳細は特公平7−14801号において開示されている。
【0014】
上記化合物の実例として、例えば、株式会社トラストライフ(金沢市)から市販されている「ファイアレスB」又は「ファイアレスS」を使用することができる。「ファイアレスB」はポリ硼酸ナトリウム(硼酸イオン重合体塩)を主成分とする水溶液である。「ファイアレスS」は珪酸ナトリウムを主成分とする水溶液である。
【0015】
装飾用の炭を製造するには、好ましくは、(a)「ファイアレスB」又は「ファイアレスS」の水溶液の中に木材片又は竹片を浸漬し、5−30気圧/m2(好ましくは15気圧/m2程度)で加圧し、(b)前記木材片又は竹片を水溶液から取り出し、乾燥させ、(c)前記木材片又は竹片を加熱して炭化させる。硼酸の結晶化を防ぐために、必要に応じて、加圧中に約30−80℃(好ましくは約40℃)に保つこともできる。
【0016】
装飾用の炭は薄いほど火の通りがよいので、木材片又は竹片は予め薄く加工しておくことが好ましい。その目的で、木材片は薄板としたり、多数の穴をあけたりすることができる。円筒状竹片はもともと中が空洞であるのでそのまま使用することができる。ただし、炭として使用するときには円筒状である必要はないので、薄片状に砕いて使用することもできる。
【実施例1】
【0017】
装飾用の木炭の製法
「ファイアレスB」溶液100gの中に10cm×10cm×1cmの檜板1枚を浸漬した。この板を入れた前記水溶液を加圧釜の中で40分間30−80℃に保つと共に、15気圧/m2に加圧して、「ファイアレスB」成分を木材に含浸させた。これを乾燥させた後、750℃前後で加熱すると、燃焼エネルギーが燃え尽きるが灰にはならず、炭化した。装飾用の炭として使用するには、火を通りやすくするために、加工前の木材をさらに薄くしたり、多数の穴をあけてもよい。
【実施例2】
【0018】
装飾用の竹炭の製法
「ファイアレスB」溶液100gの中に直径2cmの円筒状竹材10個を浸漬した。この板を入れた前記水溶液を加圧釜の中で40分間30−80℃に保つと共に、15気圧/m2に加圧して、「ファイアレスB」成分を竹材に含浸させた。これを乾燥させた後、750℃前後で加熱すると、燃焼エネルギーが燃え尽きるが灰にはならず、炭化した。竹は中が空洞なので元々薄く、装飾用の炭としたときも火が通りやすく赤く発色させるのに適している。
【実施例3】
【0019】
電気コンロ加熱器
図1は電気コンロ12と装飾用の炭を併用した加熱器10の断面図である。加熱用容器11と、その容器の内部に設置された電気コンロ12と、この電気コンロの上に置かれた装飾用の炭14を有する。装飾用の炭14としては実施例1及び2で製造されたものを使用した。さらに、電気コンロ12の上方に位置して装飾用の炭を乗せる第1金網13、装飾用の炭14の上方に位置して加熱用の肉や魚を載せる第2金網15を有する。
【0020】
上から見たときに見えるのは装飾用の炭であり、この炭は電気コンロにより加熱され、普通の炭のように赤々と発色するが、それ自身は発熱せず、形も崩れない。そのため、何回でも使用できるし、加熱が終わっても灰が残らない。従って、客の目からは通常の炭火焼きのように見えながら、炭灰の廃棄処理問題が解決された。なお、本発明の炭は装飾用ではあるが、遠赤外線は放射するので、肉や魚が中までほどよく加熱調理できた。
【実施例4】
【0021】
ガスコンロ加熱器
図2はガスコンロ12Aと装飾用の炭を併用した加熱器10Aの断面図である。加熱用容器と、その容器の内部に設置されたガスコンロ12Aと、このガスコンロの上に置かれた装飾用の炭14Aからなる。装飾用の炭14Aとしては実施例1及び2で製造されたものを使用した。さらに、ガスコンロ12Aの上方に位置して装飾用の炭14Aを乗せる第1金網13A、装飾用の炭14Aの上方に位置して加熱用の肉や魚を載せる第2金網15Aを有する。
【0022】
上から見たときに見えるのは装飾用の炭14Aであり、この炭はガスコンロ12Aにより加熱され、普通の炭のように赤々と発色するが、それ自身は発熱せず、形も崩れない。そのため、何回でも使用できるし、加熱が終わっても灰が残らない。従って、客の目からは通常の炭火焼きのように見えながら、炭灰の廃棄処理問題が解決された。なお、本発明の炭は装飾用ではあるが、遠赤外線は放射するので、肉や魚が中までほどよく加熱調理できた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電気コンロ12と装飾用の炭を併用した加熱器10の断面図である。
【図2】ガスコンロ12Aと装飾用の炭を併用した加熱器10Aの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10,10A 加熱器
11 加熱用容器
12 電気コンロ(加熱手段)
12A ガスコンロ(加熱手段)
13,13A 第1金網
14,14A 装飾用の炭
15,15A 第2金網


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用容器(11,11A)と、その容器の内部に設置された電気コンロ又はガスコンロ等の加熱手段(12,12A)と、この加熱手段の上に置かれた装飾用の炭(14,14A)からなる加熱器(10,10A)。
【請求項2】
金属アルミニウム又は金属シリコンと、水和して硼酸を解離する硼砂、硼酸などの鉱酸化合物と、苛性カリ、苛性ソーダ又は苛性リチウムのアルカリ金属とを反応させるに際し、水中又は前記鉱酸化合物の溶液中で、前記金属固体と前記アルカリ金属との濃厚溶液反応を生ぜしめ、更に前記鉱酸化合物を反応せしめ、該反応熱を50℃以上100℃以内に制御すると共に、生成物の比重を1.1以上として造膜させた水性造膜性無機化合物を木材片又は竹片に含浸させ、加熱して炭化させることにより得られる装飾用の炭(14,14A)。
【請求項3】
(a)金属アルミニウム又は金属シリコンと、水和して硼酸を解離する硼砂、硼酸などの鉱酸化合物と、苛性カリ、苛性ソーダ又は苛性リチウムのアルカリ金属とを反応させるに際し、水中又は前記鉱酸化合物の溶液中で、前記金属固体と前記アルカリ金属との濃厚溶液反応を生ぜしめ、更に前記鉱酸化合物を反応せしめ、該反応熱を50℃以上100℃以内に制御すると共に、生成物の比重を1.1以上として造膜させた水性造膜性無機化合物を用意する工程、
(b)前記水性造膜性無機化合物の固形分を10−30%含有する水溶液の中に木材片又は竹片を浸漬し、20−90分間、5−30気圧/m2で加圧する工程、
(c)前記木材片又は竹片を水溶液から取り出し、乾燥させる工程、
(d)前記木材片又は竹片を加熱して炭化させる工程、
を有することを特徴とする、装飾用の炭(14,14A)の製法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−292322(P2006−292322A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116818(P2005−116818)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】