説明

加熱器

液体を沸点まで加熱するための加熱器は、発熱素子(48;106)と、中を流れる液体を沸点未満の温度まで加熱するための、該発熱素子(48;106)によって加熱される第1の加熱領域(18、20;100)と、該液体を沸点まで加熱するための第2の加熱領域(22;102)とを含む。第2の領域は、加熱された水とは別に蒸気を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、例えば水を特に沸騰するまで加熱するための加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で消費するための湯または沸騰水を提供するいくつかの方法が知られている。従来は、例えば熱い飲み物をつくるためのある量の水を沸騰させるために電気ケトルまたは電気ポットが用いられている。
【0003】
最近になって、少量の湯を直ちに提供することを約束する製品が販売されている。これらは、まとまった量の水を均一に加熱するのではなく、片側に厚膜プリント素子を備えた狭い通路を水が通過するときに水を加熱するフロー加熱器に基づいている。しかしながら、このような技術には重大な欠点があり、その中でも最も重要なのは、以下に説明するように、水を沸騰させるために用いることができないことである。
【0004】
従来のケトルで水を沸騰させる際、水の大部分は実質的に同じ温度であり、その温度は加熱が進むにつれて徐々に上昇する。加熱される表面に近い境界層だけが、著しくより高温になる。熱は、伝導によって被加熱表面から境界層へ伝達され、最初は少なくとも対流によって境界層から大部分へ伝達される。表面温度の高い加熱器においては、境界層の水は、大部分の水が比較的低温のうちに100℃に達して沸騰し得る。蒸気の泡は、最初のうちは、より低温の大部分の水との接触により凝結し、崩壊する。
【0005】
加熱が続くと、蒸気の泡は、周囲の水よりも軽いため、加熱器表面から浮かび上がってくる。泡は、浮かび上がってくるときに、より低温の周囲の水へ熱を伝導し、その結果起こる凝結が最終的にそれらの泡を崩壊させる。しかしながら、水の大部分が沸騰温度に近づくと、浮かび上がってくる泡の十分な凝結を起こさせなくなり、これらの泡は表面へと浮かび上がり、逃げ出す。このことが、水が沸騰していることを示すと一般に考えられている。実際には、大部分の水の温度はこの段階では完全には100℃ではない。従来、家庭用のポットおよびケトルは、大部分の水である液体が100℃に極めて近い温度に均一に達することを可能にする「ぐらぐら沸き立つ状態」を数秒間維持する。だが、完全にそこまで到達することはなく、しかも、実際の沸点は大気圧および水中に溶解している物質の存在などの他の要因によって左右される。
【0006】
フロー加熱器は、それに比べると、要求に応じて水を加熱することと、所要量の水を提供するのに必要な間だけ動作させることとが可能であるという利点を有する。しかしながら、消費者は、事実上瞬時、つまり確実に数秒未満であるように思われる起動時間を期待する。小型の家庭用製品に関しては、電力量は、壁のコンセントから利用可能な電力量によって定められ(典型的には1500W〜3000W)、増やすことができない。定常状態条件下では、水の流量は熱力学の基本法則によって加熱器出力電力に合わせられる(3kWの加熱器については、およそ0.5リットル/分から1リットル/分までの流量によって沸点付近から約65℃までの温度範囲の水が提供される)。加熱器の種類と熱交換機構はほとんど影響しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
起動が非常に早いフロー加熱器を設計する場合、加熱器自体の熱質量とそれを加熱しなければならない温度とを最小化することが重要である。水と加熱器との接触面積を最大化することも重要である。これらの要件は、最近の先行技術においては、中間電気絶縁層を介してステンレス鋼製熱交換器に固着された厚膜加熱器を用いることによって対応されている。この熱交換器は、接触面積を最大化させるために、加熱器に対向する複雑な室(chamber)を備えるように設計される。しかしながら、本出願人は、加熱器表面の上の水流の分布に配慮しなければならないことに気付いた。該表面と接触する水のいずれかの部分を停滞させると、その部分はすぐに沸騰し、蒸気のポケットを生じさせる。蒸気のポケットは、もはや素子表面を冷却しなくなる。この影響により、該表面が急速に局所加熱され、通常は加熱器トラックと加熱器基板表面との間の絶縁に、不具合が生じる。したがって、これを回避するために、水を曲がりくねった狭い流路を流れさせて、停滞箇所を回避する。
【0008】
本出願人は、狭い水流路の使用に別の問題が生じることも分かった。水が加熱器の端に近づくと、最高温度、典型的には85℃になる。水流路は、小さいが、それでもなお境界層と大部分の水の流路とからなり、しばしば境界層の水が沸騰して蒸気の泡を生じさせる。この構成においては、蒸気の泡は、非常に小さい流路内に現れるため伝導および凝結によって熱を伝達できない。これは、その表面領域を周囲の水にさらすことができないためである。その代わり、膨張する泡はその前方にある残りの水を単に押しのける。流路に沿った通り道の例えば80%においてこの泡が発生すると、実際に流路の最後の20%にある水のすべてを激しく噴出させることが分かる。使用者の視点からの「噴き出し(spitting)」という望ましくない影響に加えて、加熱器の端部においてそれを覆う水が欠乏することは、しばしば早すぎる素子故障を招き得る。使用者に与える見掛けにもかかわらず、噴出する水の大半は沸点よりもかなり低い。
【0009】
局所的な高温点と噴き出しの問題は、フロー加熱器を用いて沸騰水を提供できないことを意味している。実際、目標とする水温が高温であればあるほど、これらの問題は大きくなる。したがって、実際には、フロー加熱器は、水を沸騰させないシャワー加熱器および給湯ディスペンサのような、沸点未満の温度の水を必要とする用途に制限されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の局面から見ると、本発明は、液体を沸点(boiling)まで加熱するための加熱器であって、発熱素子と、中を流れる液体を沸点未満の温度まで加熱するための、上記発熱素子によって加熱される第1の加熱領域と、上記液体を沸点まで加熱するための第2の加熱領域とを含み、該第2の領域は加熱された水とは別に蒸気を排出するための手段を有する加熱器を提供する。
【0011】
第2の局面から見ると、本発明は、中の液体を沸点未満の温度まで加熱するための被加熱流導管(heated flow conduit)と、上記液体を沸点まで加熱するための最終加熱室とを含むフロー加熱器であって、上記加熱室は蒸気を液体表面から逃がすための空間を液体表面上方に含むフロー加熱器を提供する。
【0012】
このため、当業者には、本発明によると、蒸気が加熱された水を追い出すことなく水の表面から出ることを可能にする第2の加熱領域または最終加熱室を設けることによって標準のフロー加熱器を改変できること、すなわち、噴き出しの現象が低減または回避されることが分かるであろう。また、蒸気が出ることが容易であることによって、加熱器表面が水に浸ったままとなり、局所的な高温点(hot spot)を回避することが可能になる。標準のフロー加熱器は、使用時には流れの方向に沿って温度勾配が存在していると考えることができる。本発明は、好適な実施形態において沸騰水をつくることを可能にするが、第2の領域内の水だけが沸騰する。つまりケトルなどの「バッチ式」加熱器の場合のように沸騰水をつくることが可能になるまでに加熱器の中身すべてを沸点まで加熱する必要がない。例えば、第1の領域で予め90℃まで加熱された20℃の低温水の平均温度は55℃にしかならない。
【0013】
本発明によると、第2の加熱領域または最終加熱室は、水が第1の領域(例えば、第1の領域は従来のフロー加熱器に類似したものである)から出て行く温度から沸騰するまで水を加熱し続ける。この目的のために別個の加熱器を設けてもよい。しかしながら、一組の好適な実施形態によると、第2の加熱領域または最終加熱室の中まで延びる単一の加熱器が設けられる。
【0014】
以下では第1の加熱領域と第2の加熱領域のそれぞれについてのみ言及する。しかしながら、これらの言及は、本発明の第2の局面により記載される被加熱流導管と最終加熱室のそれぞれに等しく当てはまることが理解されなければならない。これら後者2つの用語を省略するのは単に簡潔化のためであり、他の結論が引き出されるべきではない。
【0015】
第1および第2の加熱領域間の移行の形態は本発明にとって本質的であるとは考えられず、いくつかの可能性が想定される。例えば、第1の加熱領域がその下流端において徐々に広がり、第2の加熱領域を形成してもよい。このような場合、第1および第2の加熱領域間の移行点は比較的任意に規定され得る。例えば、この移行は、加熱されている液体が流れる流路の寸法によって規定されてもよく、この流路の断面が拡大し始める点や、十分に拡大したときや、途中の点などである。あるいは、線流速による規定を想定してもよく、例えば、線流速が第1の領域における速度の半分まで低下した所である。機能的には、移行が起こるのは、蒸気の泡が残りの液体を移動させることなく液体表面から出ることができる時である。
【0016】
第1の領域においては、制御されるパラメータは水の速度であり(良好な熱伝達と速い速度および許容可能な水圧低下とのバランスをとる)、第2の領域においては、制御されるパラメータは水位であって、確実に加熱器が覆われるようにすることによる熱伝達と、確実に水位が可能な限り低くなるようにすることによる水量の最小化とのバランスをとる。第1および第2の領域において水量を最小化することにより、最短起動時間が維持される。
【0017】
本発明の第2の局面によると、被加熱流導管は、いくつかの方法で加熱され得る。一組の実施形態においては、本発明の第1の局面によるのと同様に、被加熱流導管はその中の液体を加熱するための電気発熱素子を備える。しかしながら、このことは必須ではない。代わりに、例えば、より高温の液体または気体を一方の側に通過させる熱交換器の他方の側によって提供されてもよい。
【0018】
第1の領域、または被加熱流導管が発熱素子を備える場合は被加熱流導管のための発熱素子は、任意の便利な形態を有し得る。一組の実施形態において、発熱素子は、第1の加熱領域を形成する流路または導管の外側に設けられる。該素子は、いわゆる厚膜プリント素子(thick film printed element)の形態をとってもよい。このような素子は、従来はプレーナ型(planar)であるが、非プレーナ型基板(non-planar substrate)で製造してもよい。あるいは、家庭用ケトル用のいわゆる床下加熱器に一般に見られるような中間の金属製熱拡散板を備えるかまたは備えない被覆抵抗発熱素子(sheathed resistance heating element)を含み得る。素子が流路の外側にあることの利点は、製造が比較的容易であることと、流路内に水が無い状態で素子が通電された場合に素子をオフにするために過熱保護を素子と熱的に密接させて設けることが可能になることである。
【0019】
別の一組の実施形態において、第1の加熱領域を形成する流路または導管内に浸漬素子が設けられる。したがって、好適な実施形態において、第1の加熱領域は、液体を加熱するための被覆発熱素子(sheathed heating element)が内部に配設された、液体を搬送するための流路を含む。この素子は、一組の好適な実施形態においては液体が素子の周囲全面にわたって素子と接触するように流路内部に配設されるが、流路の壁にまたは壁と接触して取り付けられてもよい。一組の好適な実施形態において、第1の加熱領域は、発熱素子の周りに好ましくは管状の被覆物(tubular jacket)を、素子と該被覆物との間を液体が流れることが可能なように含む。このことは、液体と加熱器表面との間で大きな表面接触面積を得るのに有益であり、また、1つの泡が流路の断面全体を占めるはずがないため、たとえ泡が形成されたとしても噴き出しの発生しやすさを最小化するのにも役立つ。通常動作時、すなわち大部分の水の温度が85℃または90℃を超えない状態では、泡が形成されると、残りの流れにおける水の速度が速くなり、熱伝達が向上し、泡が周囲方向に成長する可能性が最小化される。
【0020】
被覆物は、発熱素子と輪郭が一致していてもよい(例えば、発熱素子の断面が円形である場合は断面が円形である)が、このことは必須ではない。素子とその周りの液体とを収容するために内部に流路が形成されたブロックの形態であってもよい。
【0021】
被覆物には任意の適切な材料が用いられ得る。一組の好適な実施形態において、被覆物は、ステンレス鋼を含む。このことによって、加熱器全体の頑丈さが得られ、特に、例えば液体と接触せずに動作させられることによる過熱に対して確実に耐性を有する。被覆物は、理想的には熱質量が低くなければならず、つまり、ステンレス鋼製の被覆物の場合には、好適な実施形態において、比較的薄くなければならない。ステンレス鋼製または他の金属製の被覆物が設けられる場合、被覆物の厚さは0.7mm未満であることが好ましく、約0.5〜0.6mmであることがより好ましい。本出願人は、当該技術分野において一般的な知識に反して、実際は、上記に概略を述べたような薄いステンレス鋼製被覆物を備えた標準の被覆浸漬素子(sheathed immersed element)(例えば、35W/cm2で動作する直径6.6mmのもの)は、実際には典型的な対応する厚膜発熱素子構成よりも熱質量が低いことを見出した。
【0022】
このような構成は、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられ、そのため、さらなる局面から見ると、本発明は、液体を搬送する流路と、使用時に表面が少なくとも部分的に液体に囲まれるように上記流路内に配設された被覆発熱素子(sheathed heating element)とを含むフロー加熱器を提供する。
【0023】
上記発熱素子の表面はその周り全面にわたって液体に囲まれることが好ましい。このため、前述の局面によるフロー加熱器は、上記に概略を述べたような被覆物を含むことが好ましい。
【0024】
本発明の上記の局面のいずれにおいても、発熱素子の断面は円形であることが好ましい。流路または被覆物(または少なくともその内壁)の断面は円形であることが好ましい。発熱素子の断面が円形でない場合、被覆物または流路の断面(または少なくともその内壁)は同じ形状であることが好ましい。
【0025】
上記において発熱素子がその周り全面にわたって液体で囲まれている場合、素子と外側の管とを端部装着することによって、管同士が同心円状である関係を維持することができるが、いくつかの実施形態においては、素子と流路または被覆物との間に正確な間隔が維持されることを確実にするのに役立つようにそれらの間に離間手段を設けることが有利だと分かった。離間手段は、別個の、適切な耐熱性を有する同軸インサートによって提供され得る。しかしながら、より便利には、素子または被覆物の一方または両方に形成された適切な構成要素によって提供される。
【0026】
便利な一組の実施形態において、例えば、被覆物は、外側から見ると窪みがつけられ、素子と接触する凸部を形成して、素子の表面の大半の上を液体が流れることを依然として可能にしながら素子と被覆物の残りの部分との間の間隔を維持するようになっていてもよい。凸部は、長手方向において不連続であってもよいが、同様に、連続した長手方向リブの形態であって素子の周囲周りに分散された複数の不連続な流路を有効に形成していてもよい。当然ながら、凸部は、被覆物上に加えてまたはその代わりに、素子上にあってもよい。
【0027】
本発明によるフロー加熱器の動作を適切に制御可能なことが重要である。この一局面は、加熱器が誤って液体なしで動作させられたときに加熱器の深刻な過熱を防止することである。当然ながら、これを実施し得るいくつかの方法がある。特に便利な実施形態においては、被覆浸漬発熱素子(sheathed immersed heating element)が使用され、その一部が金属製の「ヘッド」プレートに固着されて、従来の浸漬ケトル素子に関してよく知られているのと全く同じ方法でホットリターン(hot return)を形成する。この利点は、従来の浸漬素子用制御装置、例えば本出願人の非常に評判が良く成功しているR7シリーズの制御装置を、素子の一次的および二次的な過熱保護の両方を得るために用いることが可能になることである。このような制御装置の詳細はGB−A−2181598に記載されている。さらに好ましくは、このような制御装置は、直接または間接的に素子への電気接触を提供するためにも用いられる。
【0028】
水が沸騰可能な第2の領域に過熱保護が設けられていることが有利である。これは、流路内に配設され液体によって囲まれた被覆発熱素子を含むフロー加熱器に空の状態でスイッチが入れられることによる過熱に対する保護(dry-switch-on overheat protection)を設けることの根本的な問題、つまり、流路の存在がセンサを素子と良好に熱接触させて設置することを物理的に妨げることに対処するものである。
【0029】
このような構成は、それ自体が新規性および進歩性を有するものであり、そのため、さらなる局面から見ると、本発明は、流路内に液体によって周囲が全面にわたって囲まれるように設けられた被覆発熱素子を有する第1の領域を含み、上記素子が上記液体を沸騰させる第2の領域の中まで延びるフロー加熱器であって、上記第2の領域内で上記素子と良好に熱接触する、上記素子の過熱を検出するための熱センサをさらに含む加熱器を提供する。
【0030】
この熱センサは、例えば、サーミスタや熱電対などの電子センサであってもよく、形状記憶金属アクチュエータやバイメタルアクチュエータのような熱機械センサであってもよい。熱センサは、直接に物理的に接触していてもよいが、上記良好な熱接触は、第2の領域の熱伝導性を有する壁を介して達成されることが好ましい。例えば前述の従来のヘッドとホットリターンとによる構成である。
【0031】
素子の熱センサと良好に熱接触する部分は、素子の残りの被加熱部分よりも高い位置にあることが好ましい。
【0032】
さらにまたはもしくは、加熱器内の液体または加熱器から出て行く液体の温度を計測することが望ましい場合がある。このことは、例えば、過熱の検出に役立ったり、加熱器を通過する水の流量を制御するためにフィードバック制御システムの一部として用いられたりし得る。沸騰水が要求される場合は、加熱器の正確な能力、設けられているポンプの性能、供給電圧、および流入する周囲の水の温度によって最適な流量が決定されるため、流量を制御できることは有利である。これらの要因のうち最初の2つは製造公差によって決まり、後の2つは使用時に変化し得る。
【0033】
また、本発明はフロー加熱器からの沸騰水の供給を有利に可能にするが、状況によっては、より低い温度の水を供給することや使用者が温度を変えられるようにすることが望ましい場合がある。実際に、一組の好適な実施形態においては、加熱器によって供給される液体の温度を制御するための手段が設けられる。
【0034】
本出願人は、液体の出力温度が加熱器の能力および流量の両方の関数であることが分かった。したがって、これらの2つのパラメータのいずれかを変化させればよい。一組の実施形態において、温度を制御するための手段は、加熱器を流れる液体の流量を変更するための手段を含む。例えば、典型的な3キロワットの発熱素子に関して、本出願人は、加熱器を流れる流量が1分当たり約520mlである場合、水を約100℃で供給できる(約17℃から始めるとすると)ことを発見した。流量をさらに約475mL/分まで減少させると、余分のエネルギーが水に与えられ、周囲の水に熱を伝導することなく出て行く蒸気によるエネルギー損失を補う。その結果、水の大部分が確実にその公称沸騰温度(典型的には100℃)になる、いわゆるぐらぐら沸き立つ状態になる。あるいは、流量を1分当たり900mlまで増加させると、水は約65℃の温度で供給される。
【0035】
液体が流れ始める(例えば、ポンプの起動または弁の開放によって)のは、発熱素子の通電直後であってもよい。しかしながら、好適な実施形態においては、加熱器は、発熱素子の通電に対して遅延間隔を置いてから水を流れ始めさせるように構成される。本出願人は、意図的な遅延を導入することによって、実質的にすべての液体が所望の温度で注出されること、すなわち、注出動作の開始時に最初に低温の液体が出てくるという事が起こらないことを確実にできることが分かった。この遅延は、一定であってもよいが、好ましくは、加熱器内に存在する液体の温度の関数として決定され、それにより、加熱器内の液体が温かければ、遅延が場合によってはゼロ(遅延なし)またはそれどころかマイナス(すなわち、例えば、システムが短い「休止」時間の後に再始動され、かつより低い所望温度が選択されていた場合、ポンプが加熱器よりも先に始動され得る)まで短縮されるようにする。
【0036】
同様に、発熱素子をオフにするのと同時に流れを止めてもよいが、一組の好適な実施形態においては、流れを止めるよりも先に発熱素子をオフにする。このことによって、素子および他の構成要素に蓄積された熱が部分的に回収されて水を加熱する。これは、よりエネルギー効率が優れているだけでなく、その後より低温の液体を注出するために加熱器をより早く使用できることを意味している。
【0037】
液体が注出される時間は、一定であってもよく、無期限、例えば、使用者がボタンを押している間中ずっとであってもよい。一組の好適な実施形態においては、液体は、使用者によって予め設定された時間にわたって注出される。この時間は、直接に設定されてもよいが、注出量制御装置を用いて設定されることが好ましく、その場合、注出時間も流量の関数となり、そしてこれは、先に説明したような注出温度の関数となるかもしれない。液体が所定時間にわたって注出されることは、上記で概略を述べたように蓄積された熱を回収するために注出動作の終わりにかけて発熱素子の温度を下げるかまたは切ることを可能にするのに有益である。
【0038】
本出願人は、液体の供給が沸点または沸点付近で行われる場合は、第2の領域の液体が乱流となって、多くの蒸気の泡を含むことになるので、液体の温度を正確に計測することが非常に難しいため、サーミスタのようなポイント温度センサでは得られる結果が不正確で変動の大きいものになりがちであることが分かった。しかしながら、本出願人は、液体の出力温度のはるかに正確で安定した測定を可能にする構成を考案した。
【0039】
本発明の好適な実施形態によると、液体の出力温度を測定するための温度感知手段が第1の加熱領域に設けられる。このため、これらの実施形態によると、液体の温度の計測は、液体の実際の出力温度を計測するのではなく、液体が最終的に注出される場所の上流で行われる。このことは、本出願人が第1の加熱領域内の既知の点における液体の温度と出力温度との間に強い相関関係があることに気付いたことによる。計測点の下流側の液体容量と発熱素子の加熱能力との両方が既知であるとすると、出力温度を計算することができる。第1の領域内で温度を計測することの利点は、その領域内では液体が沸騰していないかまたは実質的に沸騰していないため、はるかに正確な温度計測を行うことができることである。
【0040】
第2の領域における水の温度の正確な知識(例えば、第1の領域における温度を計測することによって得られた)は、いくつかの方法で装置の制御を可能にするのに有益である。まず、当然ながら、水の出力温度を変化させることを可能にする。しかしながら、装置の以前の動作によって生じた非平衡状態を考慮に入れることも可能にする。例えば、装置が沸騰水を注出するために用いられていて、その後で使用者がより低温の水を要求した場合は、液体を加熱器の通電よりも先に流れ始めさせてもよいし、それどころか、液体が冷めた程度によっては加熱器を通電させる必要が全くない場合すらある。
【0041】
第1の領域において温度を計測する場合、本出願人は、より確実な一ポイント温度計測を確実にするため、状況によっては流路または導管の長手方向軸の周りの渦流成分を促すことが望ましいことに気付いた。コスト上の理由から、多数のセンサを必要とするよりも温度を計測できる方が好ましい。一組の実施形態において、第1の領域を含む流路または導管は、流路内部の液体の混合を促進する所望の渦巻を提供し、ひいてはより均一な温度分布を得るために、流路または導管の中心軸からずれた方向に沿って液体を導入するように構成された導入口を含む。例えば、導入口は、流れの接線成分を有する液体を導入するように構成されていてもよい。
【0042】
別の、互いに相容れないものではない、一組の実施形態においては、第1の領域の流路または導管が、渦流を促進するように構成される。これを達成し得る考えられる方法は多くある。このような実施形態のうちの一部においては、流路の1つまたは複数の壁の内部表面に螺旋状の構成要素が設けられる。例えば、この表面に、渦流を促すリブ、溝、またはその他の凸部もしくは凹部のパターンが設けられてもよい。この構成要素は、内部表面の周囲を回って部分的に延びていても全面的に延びていてもよく、かつ、流路の長さの全体に延びていても一部に沿って延びていてもよい。この構成要素は、連続している必要がない。つまり、一連の隆起部または他の凸部を含み得る。
【0043】
流路が、その内部に浸漬素子を備える場合は、螺旋状の構成要素を追加的または代替的に当該素子の外側表面に設けてもよい。別の方法は、これもやはり上記に挙げた選択肢と互いに相容れないものではないが、独立した流れ整形素子(flow shaping element)を流路に導入することである。特に便利な一組の実施形態において、このような流れ整形素子は、流路内に浸漬された被覆発熱素子に巻き付けられたワイヤ(wire)を含む。これは、製造費の節約になるだけでなく、組立が比較的簡単でもある。同様の代わりの方法は、製造時に素子が挿入される間は素子に巻き付けられ、その後、伸長して流路の壁の内側表面に当たるように解放される弾性コイルを含むかもしれない。どちらの場合にも、ワイヤの太さは、素子表面と流路の壁との間の隙間の幅よりも小さいことが好ましい。言い換えれば、ワイヤは、別々の個々の螺旋状流路を規定するのではなく、液体の境界層の渦運動を生じさせることによってただ単に渦流を促すだけである。いくつかの実施形態において、ワイヤの太さは、上記隙間の幅の3分の1未満である。
【0044】
本発明のすべての局面によると、液体の貯蔵器を出口の上方に配置して弁または栓を用いることによって達成される静水圧によって、液体を流れるよう駆動してもよい。しかしながら、好ましくは、液体をフロー加熱器を流れるよう駆動するためのポンプが設けられる。任意の適切なポンプを用いてよいが、一組の好適な実施形態において、ポンプは、遠心ポンプを含む。これらは、いくつかの公知の装置において用いられている往復ポンプよりも小型で静音性がよい。典型的には電気引き込み線から得られるAC電源によって駆動される往復ポンプがこれまで用いられているのは、それらが圧力低下の変動を比較的許容する、つまり、広範囲の圧力に対して出力流量が実質的に一定のままであるためであると考えられる。それに対して、遠心ポンプに関しては、流量が圧力低下によって大きく左右される。静的貯蔵器によって供給される独立型の給湯ディスペンサのような用途においては、導入口圧力、ひいては出力流量が貯蔵器内の水位によって変わるため、このことが問題になる。この問題は、ポンプの速度を調節するための一種のフィードバック制御によって対応可能である。しかしながら、本出願人は、好適なように、水貯蔵器を有する機器に特に応用可能なさらなる構成を考案した。
【0045】
このため、一組の好適な実施形態によると、上記に説明した種類の加熱器と、加熱器に液体を供給するためのポンプと、液体を蓄えるための貯蔵器とを含む機器であって、上記貯蔵器と上記ポンプとの間の中間保持室と、上記貯蔵器から該保持室を所定のレベルまで満たすための手段とをさらに含む機器が提供される。
【0046】
このような実施形態によると、ポンプは、液体水を貯蔵器から直接汲み出すのではなく、中間保持室から汲み出す。中間保持室が所定のレベルまで満たされているため、ポンプ導入口における圧力水頭(pressure head)は既知であり、したがって、ポンプ速度、流量などの計算に織り込むことができる。注出の際に中間保持室内の水位が減少し得るとしても、圧力変化の範囲は小さくなる。
【0047】
この構成の別の利点は、液体が貯蔵器から出て行くのが望ましい速度よりも速い速度で液体をポンプによって汲み出すことが可能なことを意味していることである。このことは、貯蔵器からの出口において水フィルタカートリッジが使用される場合に特に関係がある。それは、例えば本出願人のAqua Optima(登録商標)フィルタのように、これらのフィルタカートリッジが、通過する流量をわざと絞るときに最も有効であることが多いためである。例えば、Aqua Optimaフィルタを通過する典型的な流量は約400mL/分であるが、上述のように、状況によっては900mL/分までの流量が望ましいことがある。
【0048】
このような構成は、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられるため、さらなる局面から見ると、本発明は、フロー加熱器と、該加熱器に液体を供給するためのポンプと、液体を蓄えるための貯蔵器とを含む、加熱された液体を提供するための機器であって、上記貯蔵器から所定のレベルまで満たされるように構成された、上記貯蔵器と上記ポンプとの間の中間保持室をさらに含む機器を提供する。
【0049】
好ましくは、上記貯蔵器は、上記中間保持室よりも高い位置にあって、重力によって上記貯蔵器を満たす。好ましくは、上記中間保持室の容量は貯蔵器の容量よりも小さい。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記所定のレベルは満杯である。すなわち、中間保持室が単に容量いっぱいまで満たされることである。他の実施形態において、上記所定のレベルは、中間保持室が部分的にだけ満たされることに相当する。中間保持室を所定のレベルにまでだけ部分的に満たすいくつかの方法が電子レベルセンサまたはフロート弁を含めて想定可能である。一組の好適な実施形態において、中間保持室を満たすための手段は、貯蔵器内の液体の上方の密閉されたエアスペースと連通し、かつ保持室内の上記所定のレベルまで延びる通気管を含み、貯蔵器は、貯蔵器内の液体の上方の空気が該通気管以外によって出て行くのを防ぐために封止されている。このような構成によって、保持室は、通気管を通じて空気を移動させ、液位が通気管の下部に達するまで満たされることになる。その時点で、空気が中間保持室に流入できなくなり、貯蔵器内に、液体がそれ以上貯蔵器から中間保持室へ流れるのを防止する部分真空が生じる。
【0051】
ここまでフロー加熱器に関して本発明を説明してきたが、本出願人は、液体を沸騰させるために用いることができる第2の領域が沸点未満の温度の液体をつくる他の形態の加熱器に追加されるものとしても有益であり得ることをさらに認識した。このため、さらなる局面から見ると、本発明は、液体を加熱するための装置であって、中の液体を沸点未満の温度まで加熱するための第1の加熱領域と、該液体を沸点まで加熱するための最終加熱室とを含み、該加熱室が、蒸気を液体表面から逃がすための空間を液体表面上方に含む装置を提供する。
【0052】
本発明による第2の領域から加熱された液体を注出するための考えられる構成は多くある。1つの可能性は、第2の領域/沸騰室から水を流出させるための簡単な弁または栓である。このような構成の問題は、このような弁または栓による流出量を、ポンプからの流入量と厳密に調和させなければならないことである。例えば、流出流量が導入流量よりわずかでも多ければ(または、流出開始が早過ぎたならば)、加熱器が空になる。流出流量がわずかに少なければ、流出室が溢れるか、または、水位が上昇するにつれて、当該室内での沸騰の影響により水が噴き出す。これは、表面で生じた蒸気の泡が今度は水の中を垂直に移動しなければならないので、水滴を同伴し、高速で表面まで運ぶために発生する。ポンプによる流入は、上述のように不規則な時間に開始および停止し得、かつ、すべての入力変数、つまり所望の出口温度、導入口の水温、圧力変動、およびいかなる閉ループ制御システムにおいても発生し得る固有振動に応じて絶えず変化している。流出制御の難しさは、起動時にシステムを意図された作動レベルまで満たすのに十分な水が入るほどの時間まで流出を防止する必要があることによってさらに増大する。
【0053】
したがって、一組の好適な実施形態においては、液体が所定のレベルに達すると自動的に液体を流出させるための手段が設けられる。このことは、ある一定の量の液体がとどめておかれることを確実にし、したがって、確実に、加熱器表面が過熱するのを防止するのに十分に覆われているようにすることができる。このような機能は、電子的に達成してもよく、フロートを用いて達成してもよいが、堰(weir)が設けられ、第2の領域/沸騰室内の水位が所定の高さ(堰の高さによって決まる)を超えると液体が堰を越えて当該領域/室から流出するようになっていることが好ましい。
【0054】
本出願人は、この構成によって、加熱器の表面が比較的大きくても液体によって比較的薄く覆われたままにすることができ、過熱を回避することができることがさらに分かった。
【0055】
本発明のすべての実施形態において、加熱室から出て行く加熱されたかまたは沸騰している液体を、例えば注ぎ口を通じて直接使用者の入れ物に注出してもよく、さらに処理を行うために機器の別の部分に送ってもよい。
【0056】
本発明の様々な局面によると、蒸気を、加熱された液体とは別に第2の領域または沸騰室から排出する。蒸気は、通常の使用では使用者から離れた機器の部分から出て行くように向けられることが好ましいが、直接に大気中に逃がされてもよい。例えば、機器の後方へ逃がされてもよい。他の実施形態において、蒸気を適切なトラップまたは雫受け(drip tray)などに捕らえ、凝結させてもよい。これは、特別な雫受けであってもよく、または、より便利には、注ぎ口の下に雫受けが用いられてもよい。これらの場合のすべてにおいて、本発明のいくつかの実施形態では、第2の領域/沸騰室と大気との間の蒸気通路は、使用時にその両端に0.1〜1バール、好ましくは0.2バール〜0.5バールの圧力差を生じさせるように、十分に制限されていることが好ましい。第2の領域/沸騰室が使用時に大気と比較してわずかに加圧されるようにすることによって、水または他の液体の沸騰温度がわずかに上昇し、使用者の入れ物に実際に入る液体の温度を上げるのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0057】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を単なる例示として説明する。添付図面において、
図1は、本発明を具体化する沸騰水注出装置の斜視図であり、
図2は、上記装置の主な構成要素を示す上記装置の部分切欠図であり、
図3は、水貯蔵器および他の構成要素の断面図であり、
図4は、水導入口端部ブロックおよびフロー加熱器パイプの横断面図であり、
図5は、フロー加熱器の1つの内部を示す縦断面図であり、
図6は、素子ヘッドおよび制御ユニットの正面から見た分解図であり、
図7は、素子ヘッドおよび制御ユニットの背面から見た分解図であり、
図8は、分かりやすくするために素子ヘッドを取り除いた状態の沸騰室の図であり、
図9は、沸騰室の変形例の図8と同様の図であり、
図10は、本発明の別の実施形態による素子および被覆物の模式部分平面図および拡大断面図であり、
図11は、本発明のさらなる実施形態の導入口マニホルド構成の拡大図であり、
図12は、本発明のさらなる実施形態で用いるための発熱素子の単独図(isolated view)であり、
図13は、図12の素子を用いた実施形態の加熱管を非常に大きく拡大した断面図であり、
図14および図15は、本発明による別のフロー加熱器の斜視図であり、
図16は、図14および図15の加熱器の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、熱い飲み物をつくるためのカップ2に要求に応じて沸騰水を注出するために用いることができる本発明の一実施形態を示す。つまみ4を回すことによって水の温度を調節することもできる。注出温度は、65℃からちょうど沸点まで、そして沸点を超えて、より多くのエネルギーが水に与えられて全体積が十分に沸騰していることを確実にする「ぐらぐら沸き立つ状態」まで変化させることができる。水の注出量は、第2のつまみ(図示せず)によって制御される。さらに見えているのは、蒸気出口6である。装置の本体の上部に、使用者が時々満たさなければならない水タンク8がある。
【0059】
図2は、上記装置の主な内部構成要素のうちのいくつかを示し、他の部分は分かりやすくするために省略されている。同図からは、水タンク8を見ることができ、そこから下方に延びているのは、低電圧の遠心ポンプ12の導入口側に接続された出口パイプ10である。ポンプ12の出口側は、以下に図4および図5を参照しながらより詳細に説明するように、入って来る水を2つの平行なフロー加熱器部分18、20に分配する水分配プレナムブロック16に管14を介して接続される。
【0060】
フロー加熱器部分18、20の下流端に沸騰プール22がある。これは、略円形のステンレス鋼製素子ヘッド54(図3および図5〜図7参照)に嵌合された深絞り加工されたステンレス鋼製カップ23によって形成されている。沸騰プール22は、加熱された水を使用者のカップ2に注出するための、該沸騰プールから下向きに突出する注ぎ出し口24を有する。
【0061】
フロー加熱器部分18、20の少なくとも一方は、サーミスタを収容するために、沸騰プールの近くで外部ケーシングの側面に開けられた小孔70を有する。あるいは、サーミスタはケーシングの外側に置かれてもよい。
【0062】
図3の断面図は、水タンク8の内部を示す。この図から、水タンク8の基部が、水フィルタ、例えば本出願人のAqua Optima水フィルタを受け入れるように設計された円形開口26を有していることが分かる。このフィルタは、参照符号28で示された構成要素によって非常に模式的に表されている。水フィルタ28は、制限された出口開口(典型的には、4mm程度)を有し、これは、このことに関連して、開口が非常に小さいためフィルタ内に水があるときは空気をフィルタに入らせないというさらなるメリットを有する。そうでなければ、空気の泡がフィルタおよび貯蔵器に入り込み、水を連続的に流れさせてしまう。水フィルタ28の下部は、さらなる、中間保持室30の中に受け入れられ、この室の中央に、この室をポンプ12に接続するパイプ10に接続された出口がある。
【0063】
垂直な管32が、保持室30の上部から主な水タンク8の中へ延びており、水タンク8の最上部の窪んだ部分34のちょうど内側で終端している。これは、保持室30と水タンク8との間で圧力を同等にすることを可能にする。
【0064】
図4は、分配プレナムブロック16と2つの平行なフロー加熱器18、20とを通る横断面図を示す。ポンプ(ここでは図示せず)の出口側は、管14を介して分配ブロック16内の垂直導入口流路36と接続している。これは、ブロック内部で2つの横方向に延びる管38と接続し、これらの管は、当該横管38に対して直角を成す、より大きい内径の円形断面の対応する円筒形室40、42の中に通じている。円筒形室40、42は、それぞれ、2つのフロー加熱器部分18、20の端部を受け入れる。ここで分かるように、フロー加熱器部分18、20のそれぞれは、外部被覆物44、46と、図示はしないがステンレス鋼製ケーシングと酸化マグネシウム絶縁粉末に包み込まれたコイル抵抗ワイヤとを含む1本の被覆浸漬型発熱素子48とを含んでいる。浸漬素子のコールドテール(cold tail)50、52は、分配プレナムブロック16の後部に設けられた孔から出ている。
【0065】
2つのフロー加熱器スリーブ44、46は、対応する発熱素子48よりも直径が広く、そのため、これらの間には、対応する環状流路が、フロー加熱器部分18、20のそれぞれについて規定される。この断面図から分かり得るように、スリーブ44、46は、ブロック16内の円形流路40、42の先端と封止接続するが、それらの流路において上記横流路38と合流する点の手前で止まり、それによって、フロー加熱器18、20のそれぞれの上記環状流路は、分配ブロック16内部に形成された円筒形室40、42に開いており、一方で、被覆素子48は、ブロックを貫通して延び、それに対して封止されている。この結果、ブロック導入口36から横流路38および円筒形室40、42を介して2つのフロー加熱器18、20の内部環状流路までの流体通路が存在している。
【0066】
図5は、フロー加熱器18、20の全体を示す。同図から、各外部スリーブ44、46が他端において沸騰室22に封着されていることが分かる。発熱素子48は沸騰室22に入り込み、丸く曲げられて、それぞれが2つのフロー加熱器18、20の一部を形成する2つの細長いアームを形成している。このことは、図6および図8により分かりやすく示されている。
【0067】
図5および図6から分かるように、素子48の曲がり部分は、従来の浸漬素子ケトルに見られるような素子ヘッドプレートによく似た浸漬素子ヘッドプレート54にろう付けされている。この構成は、ホットリターンとして知られており、図7から分かるように、ヘッドプレート54の反対側は、標準の浸漬素子制御ユニット58のスナップ動作式バイメタルアクチュエータ57を受け入れるために半円形の窪み56が形成されている。図7は、二次的なレベルの過熱保護を提供するための制御ユニット58のナイロン温度ヒューズ59が当たる、ホットリターンから延伸する銅片60も示している。あるいは、当該技術分野においてこれもやはり周知であるように、ニッケルめっきされた銅浸漬素子ヘッドにおいては、銅片は不要である。
【0068】
図7を見ると、素子のコールドテール50、52は、浸漬ケトル素子に関して従来そうであるように素子ヘッド54から突出するのではなく、分配プレナムブロック16(図7では分かりやすくするために省略されている)から突出していることが当業者には理解されるであろう。その代わりに、2つのダミーコールドテール部品62、64が素子ヘッド54から突出し、制御ユニット58と電気的に接触し、そして更に、フライングリード(flying lead)(図示せず)によって本物のコールドテール50、52に接続される。このことによって、標準生産の制御ユニット58を改造することなく使用することが可能になり、新しい専用の制御ユニットを設計および製造しなければならないことに比べてかなりの費用節約になる。素子ヘッドは、制御ユニット58用の3つの装着スタッド66を備えている。
【0069】
沸騰室22の内部は、素子ヘッド54が取り除かれた図8から最もよく分かる。同図からは、室22が、その内部容積は2つのダミーコールドテール62、64と、素子48の曲がり部分と、注ぎ出し口24と連通している中心穴68を有する垂直突起ボス66とによって限定されているが、大まかには背低幅広の円筒形状であることが分かる。ボス66の高さは、素子管48の最上部と略同じ高さであるか、またはわずかに素子管の最上部の高さである。メニスカス深さを考慮すると、このことによって素子48が確実にちょうど水に覆われたままとなり、そのため、通常使用時の過熱が防止される。沸騰室22を形成するカップ23の上面壁部には孔72が形成され、機器の上面にある蒸気出口6と連通する蒸気出口となっている。
【0070】
本実施形態の変形例を図9に示す。この実施形態においては、追加のU字型バッフル69が、ボス66の上方に、開放端を環状加熱流路20の端部から離れる方へ向けて設けられている。このことによって、流路から出て来る水が直接に出口68を流れることが防止され、それにより、水が沸点まで適切に加熱されることが確実になる。
【0071】
以下、本装置の動作について説明する。まず、使用者は、水タンク8を取り外し、逆さまにし、水フィルタ28を取り外し、蛇口から満たすことによって、水タンクに水を満たす。次いで、フィルタ28を元に戻し、タンクを再度逆さまにし、装置に戻す。水はすぐに、公知のように水フィルタからの制限された出口によって決まる流量で水フィルタ28を通り始める。水がフィルタ28を通るにつれて、その水が接続パイプ10、次いで、下側の保持室30を満たし始め、空気を通気管32を通じて水タンク8の封止された上端部空間へ移動させる。保持室30内の水位が通気管32の下部に達すると、当該室から空気を追い出すことができなくなるため、水の流れが止まる。
【0072】
使用者は、水を注出したいときは、第1のつまみ4で必要な温度を設定し、その後、第2のつまみ(図示せず)を「オフ」位置から必要な量まで回す。まず、制御回路(図示せず)が発熱素子48を起動する。1秒か2秒(加熱器内に既に存在している水の温度によって決まる)の遅延の後で、ポンプ12が動作し、下側の室30からパイプ10および14を通じて分配プレナムブロック16内へ水を汲み出す。他の実施形態において、ポンプを加熱器よりも先に始動させてもよい。
【0073】
水がプレナムブロック内の流路38を流れるにつれて、左右の流路間で流れが均衡する。これらの流路38の内径は、この部分での圧力低下が当該水力学系の残りの部分のすべてよりも大きくなるように選択される。このことは、下流の環状流路18、20に正確な流れを維持する上で非常に重要である。例えば、流路の一方18、20に軽微な狭窄が生じ、他方には生じなかった場合、流量への影響はほとんどない。これは、支配的な圧力低下がプレナム流路38で生じるものであるためである。およそ10:1の圧力低下比率であれば所要の効果が得られる。例えば、管状加熱器18、20の圧力低下が40mmの水頭と同等である場合、プレナム流路38の圧力低下は400mmの水頭と同等である。
【0074】
水が分配ブロック16に汲み出されると、その水はこのブロックおよび以降の2つのフロー加熱器18、20のそれぞれの発熱素子48とそれに対応するステンレス鋼製の外側被覆物44、46との間の環状流路を通って汲み出される。このことによって、水は流れて行くにつれて急速に加熱され、分配ブロック16内の周囲温度(20℃程度)からフロー加熱器18、20の下流端における約85℃になる。
【0075】
水の温度は、沸騰室22の近くでフロー加熱器18、20の側面に開けられた孔70の中に突出するサーミスタによって監視される。水が沸騰しておらず、したがって重大な量の蒸気の泡を含んでいないため、温度を正確かつ確実に監視することができる。
【0076】
次いで、水はフロー加熱器18、20から出て沸騰室22の内部に入り、当該沸騰室を満たし始め、それにより、沸騰室内に突出した素子48の湾曲部分を覆う。発熱素子48の湾曲部が沸騰室内の水を加熱し続け、今度はかなりの数の泡を発生させ、これらの泡は沸騰室内に溜まった水の表面を突破して蒸気として出る。しかしながら、この蒸気は沸騰室の上面にある蒸気出口72によって容易に出て行くことができる。
【0077】
特に図8を参照すると、沸騰室22内の水位が上昇して突起ボス66の最上部の高さと同じになり、それを超えると、開口68および注ぎ出し口24を通じて使用者のカップ2内へ流れ出始めることが分かる。汲み出される流量と素子48の能力とは、水が開口68および注ぎ口24を通じて沸騰室から出て行く時までに有効に沸騰しているように合わせられる。これは、確実にぐらぐら沸き立つ状態にして水の真の温度が沸点に極めて近くなるようにするために水温を100℃まで上昇させるのに理論的に必要とされるエネルギーと比較して、エネルギー入力の「過剰な余裕(over-allowance)」を含む。ボス66の高さは、流量に関わらず素子48が確実に水で覆われたままであるように選択される。
【0078】
沸騰水は注出され続け、使用者によって設定された量が注出される。その時点で、ポンプ12がオフにされる。装置のエネルギー効率を高めるために、発熱素子48はポンプがオフにされるよりも約2秒先にオフにされる。素子および他の構成要素には、確実に水を沸騰させ続けるのに十分なエネルギーが蓄えられている。
【0079】
図3に戻ると、水が汲み出される中間保持室30によって、水をフィルタ28を通過する流量よりも高い流量で汲み出すことが可能であることが理解されるであろう。当該中間保持室30の容量は、ポンプが動いている間に補充される程度を考慮して、流量が低くなり過ぎ(すなわち、フィルタを通過する流量によって限定される)、そのために素子48の過熱を防止するために装置をオフにすることが必要になる前に大型の通常のマグに水を満たすことができるように設計される。一例を挙げると、65℃の250mLの水(大型のマグに相当)を注出するのに15秒かかるとすると、その間に典型的なAqua Optimaフィルタを流れるのは100mLだけである。しかしながら、たった150mLの中間保持室を設けることによって、この大型のマグを素子の過熱を招くことなく安全に満たすことができる。
【0080】
中間保持室30は、ポンプ12に入る水の水頭圧(head of pressure of water)が少なくとも初めは分かっていることを意味すること、つまり、比較的安価で静音な遠心ポンプを用いたとしても既知の流量を達成できるということも理解されるであろう。当然ながら、当該中間保持室がタンク8からの水で再び満たされたら、注出を再開できる。
【0081】
万一水タンク8が空になった場合、発熱素子48の過熱が始まる。しかしながら、このことは、開口70からフロー加熱器18、20内へ突出する温度センサによって感知できる。バックアップとして、制御ユニット58上のバイメタルアクチュエータが素子48の過熱を感知し、スナップ動作で逆の方へ曲がり、それにより、周知の方法で制御ユニット内の一組の接点を開にする。二次的なバックアップ保護は、これもやはり当該技術分野において非常によく知られているように、制御ユニット58の温度ヒューズによって提供される。素子は、空焚きまたは空の状態でスイッチが入れられた場合に、ヘッド53にろう付けされたホットリターン部分が確実に最初に乾くように構成される。このことは、第1の加熱器の2つの管18、20内の流れがいかなる悪条件下でも確実に均衡するようにし(先に説明したように)、かつ、素子48とそれを囲む管18、20とをやや傾斜させることによって確実にホットリターンが素子48の残りの部分よりもやや高い位置にあるようにすることによって、達成することができる。これにはさらなるメリットがあり、つまり、空の状態からの起動時に、管18、20が自由通気することが確実になり、かつ、流れる水が最初の空気を容易に押し進め、エアロックを生じさせずに沸騰室22内へ押し出すことができることが確実になる。
【0082】
もしも使用者がより低温の水を注出したい場合は、使用者は機器の上面にあるつまみ4を用いてより低い温度を設定すればよく、それにより、ポンプ12がより高速で動作し、したがって、水がより高い流量で装置を流れることになり、そのことは、水が注出されるまでに加熱される温度が低くなることを意味する。ここでもまた、ポンプに入る水の水頭圧が分かっていることにより、所与の速度に対して達成される実際の流量を計算することが可能になり、それゆえ、注出される水の温度を計算することができる。開口70内に突出する温度センサは、注ぎ出し口24を通じて注出されている水の温度を、温度センサの上流側の発熱素子48の割合とそれに対応する温度センサの下流側の素子48、すなわち沸騰室内の湾曲部分の割合との知識から予測することを可能にする。このセンサは、使用者が要求した水の温度を考慮して、装置内に存在する(例えば、以前の動作の結果として)水の周囲温度に応じて、ポンプを動作させることと素子48をオンにすることとの間に相対遅延を導入するために用いることもできる。
【0083】
このため、上記の実施形態は、フロー加熱器のメリット、すなわち、制御可能な量の水を要求に応じて注出することが可能であることを提供するが、沸騰水を提供することが可能であるという重大な利点も有することが分かるであろう。沸騰室と、蒸気出口72を通じて水出口68、24から蒸気を分離することとは、これを可能にするための鍵であり、噴き出しと素子上の局所的な高温点とを防止する。
【0084】
図10に移ると、従来の構造の被覆発熱素子80のアセンブリの2つの図を示しており、この発熱素子は、薄いステンレス鋼製の被覆物82の内部に、素子80の外側表面と被覆物82の内側表面との間を水が流れることが可能なように配設されている。この点では、前述の実施形態、特にその図4および図5を参照しながら上記に説明した構成と類似している。しかしながら、本実施形態においては、ステンレス鋼製被覆物に、長手方向および周方向の両方において離間された一連の窪み84が形成されており、被覆物82の直径を被覆素子80の表面に接触するのに十分なほど局所的に減少させる凸部を内側表面に生じさせている。このことによって、素子80が被覆物82内の中心に同軸状に配設された状態が維持される。水は依然として実質的に素子80の周囲全面にわたって流れることができるため、窪み84は素子80と被覆物82との間の水の流れに深刻な影響を与えない。
【0085】
本実施形態の一変形例において、窪み84を長手方向において結合させて、連続した凹部を形成してもよく、やはり素子80を中心に位置させる働きをする対応する連続リブが内側表面に生じる。この変形例では、水の流れ用の別個の流路がそれぞれのリブの間に規定される。当然ながら、凹部/凸部の数および分布は重要ではない。また、凸部をさらにまたは代わりに素子の表面に設けてもよい。これらの構成要素は、本発明の他の実施形態に適用され得る。
【0086】
図11は、前述の図面において示した実施形態に対する一変形例を示し、外部被覆物44、46のそれぞれとU字型浸漬素子48との間に形成された環状流路への水導入口のための構成が若干異なっている。図4に示したような分配プレナムブロック16の代わりに、本実施形態は、水を各導入口継輪92、94へ送る2つの分岐管88、90のそれぞれと連通する共通の導入口86を含む導入口マニホルド構成を有する。見てとれるように、継輪94は、一端でフロー加熱器部分の各外側スリーブ44、46との封止接続を提供し、他端で被覆発熱素子48の表面に対して封止接続を提供する。これは、素子コールドテール50、52が素子48の内部を十分な距離まで延び、加熱器表面の導入口封止材と接触する部分が加熱されることがないように、構成され得る。
【0087】
分岐流路88、90が導入口継輪92、94のそれぞれとその中心軸からずれた方向で連結していることにさらに気付かれるであろう。この効果は、水が導入口継輪92、94に入り、スリーブ44、46によって規定された環状流路へと流れ込むときに、中心に位置する素子48を回る運動成分が与えられる、すなわち、水が前進速度成分だけでなく渦運動の成分を有するということである。この流れパターンは管に沿って続くため、渦運動が継続し、管内部の水の混合を助け、したがって、さらに管に沿ってより均一な温度分布を促進し、正確な温度計測が容易になる。
【0088】
図12〜図14は、加熱器の別の実施形態を図示しており、該加熱器は、該フロー加熱器の環状流路内部の水の渦動を促すように設計されている。図12は、単独図において、前述の実施形態と同様の被覆発熱素子48’を示す。この特定の実施形態において提示される違いは、素子の2つのアームのそれぞれが、螺旋状にきつく巻き付けられた細いワイヤ96、98を有している点である。これは、使用時に水が流れる環状流路が形成されるように、製造中に、素子48’のアームをそれぞれのスリーブ44、46(例えば、図4参照)に挿入する前に実施される。ワイヤ96、98は、特定の用途に適するように材料、寸法、およびピッチが選択され得るが、直径が例えば0.6mmのステンレス鋼製であることが便利である。しかしながら、図13からは、この特定の実施形態において、少なくとも素子48に巻き付けられたワイヤ96は、素子48と外側スリーブ44との間に形成された環状流路を完全に塞いでしまうほど太くはないこと気付かれるであろう。例えば、流路の高さの半分未満、例えば流路の高さの約3分の1であり得る。使用時に、ワイヤ96、98の存在によって、それぞれの流路内部の水の渦運動が促され、このことが、上記に説明したようにより均一な周方向の温度分布を与えて温度計測を容易にすることが分かった。必須ではないが、図12および図13の実施形態で示した構成を図11に示した導入口マニホルド構成と併用してもよい。
【0089】
以下、本発明のさらなる実施形態について、図14〜図16を参照しながら説明する。まず図14に移ると、本実施形態は、大まかには、略S字形の従来のフロー加熱器部分100と、当該フロー加熱器部分100の下流端にある沸騰プール構成102とを含む。
【0090】
今度は図15をさらに参照すると、フロー加熱器部分100は、被覆発熱素子106が下にろう付けされた略矩形断面の管104を含むことが分かるであろう。水管104と素子106とは、上記の略S字形となるように曲がる際、互いにぴったりと一致する。アルミニウム製熱拡散板108が発熱素子106の下面に、その長さの様々な部分に沿って、ろう付けされる。熱拡散板108は、その下面に、熱機械的過熱保護制御ユニット112を熱拡散板108と良好に熱接触させて装着することを可能にする3つの装着ボス110(そのうちの2つだけが見えている)を備える。これらの図に示した制御素子112は、本出願人のU11制御装置であり、該装置は一対のスナップ動作式バイメタルアクチュエータを含み、それらは万一過熱が検出された場合にはそれぞれに対応する一組の接点を開にして素子106への電力を遮断するために個別に動作可能である。当然ながら、熱機械的および/または電子的な他の多くの制御構成をこの目的のために採用し得る。
【0091】
今度は図16に移ると、本図に示す断面図からは、沸騰プール102の詳細がより明瞭に分かり得る。分かりやすくするために、沸騰プール102の蓋も省略している。
【0092】
図16は、分かりやすくするために蓋が取り除かれた沸騰プール102の断面図を示す。沸騰プールの上流端において、水管104および発熱素子106のために封止された入口が設けられている。本図から分かり得るように、水管104は沸騰プール102のすぐ内側で終端し、その一方で、素子106は沸騰プール102の長さ全体にわたって延び、他端から別の封止された開口を介して突出している。このことによって、他方のコールドテール114に電気的接続をすることが可能になる。
【0093】
沸騰プール102は全体的に細長い矩形の形状を有し、その内側にある素子106の部分が下部を占めているが、水はその周囲を全面的に通ることができる、ということが分かるであろう。沸騰プール側壁のうちの1つの上部に開けられた開口は、蒸気を使用者から離れた所で大気中に排出したり、適切なトラップまたは雫受けなどに捕らえて凝結させたりすることを可能にする蒸気通気孔116に通じている。沸騰プール102の下流端付近に、垂直に上がって沸騰プールに入り込み、素子106の高さのすぐ上の高さまで延びる湯出口管118がある。湯出口118は、素子106のわきへずらされ、垂直壁の適切な横拡張部分に収容されている。
【0094】
本発明の本実施形態の動作は、前述のものと同様である。最初に、制御ユニット112への接続部(図示せず)を介してコールドテール107、114に電力を印加することによって、発熱素子106が通電される。水も、ポンプによって貯蔵器から(どちらも図示せず)水流路管104の上流端へ汲み出される。前述の実施形態との関連で説明したように、水の汲み出しは、適宜、素子の通電と同時に、通電前に、または通電後に開始し得る。水は、管104を流れるにつれて素子106によって加熱され、約85℃の温度で沸騰プール102に出て来る。沸騰プール102内の水は素子106によって加熱され続け、その際、局所的な沸騰が素子表面で起こり、水の激しい動きを生じさせ、大きな蒸気の泡が発生する。しかしながら、この蒸気は、蒸気通気孔116を通じて容易に出て行くことができる。だが、沸騰プール102内の蒸気圧を大気圧よりも少し上、例えば0.25〜0.5バールだけ上昇させ得るように蒸気通気孔116の下流の曲がりくねった蒸気通路が設けられることもある。このことは、水の出口温度が極限まで上がるように、水が沸騰する温度をわずかに上昇させる。
【0095】
沸騰プール内の水は、湯出口管118の最上部の高さに達すると、当該管を自由に流れ落ちて、機器の注ぎ口(図示せず)から使用者の入れ物の中へ流れ出る。したがって、沸騰プールの内部にある出口管118の垂直壁が、沸騰プールの内部に最低限の水位を維持するために堰として働くことが分かるであろう。この最低限の水位は、素子106の最上部より上であるため、通常動作において素子106が水で覆われたままであって過熱する可能性がないことが確実になり得る。しかしながら、万一貯蔵器の水がなくなった場合または水が入っていない状態で機器がオンにされた場合は、素子106の温度が急激に上昇する。この急な温度上昇は、アルミニウム製熱拡散板108によって制御ユニット112のバイメタルアクチュエータに伝えられて、バイメタルアクチュエータを動作させ、それにより、それぞれの接点を開にし、素子106への電力供給を遮断する。このため、危険な過熱および/または損傷が防止される。素子106の沸騰プール内の部分は熱拡散板108と直接に熱接触していないことに気付かれるであろう。このことは、機器の貯蔵器内の水がなくなった状況において明白な利点を有する。これは、そのような状況においては、管104に固着された素子がまず過熱し始めるが、素子106の沸騰プール内の部分は、出口パイプ118によって形成された堰によって保持された最低限の水の溜まりに浸漬されたままであるからである。よって、このような状況においても、素子への電力がすぐに遮断され、過熱が防止され得る。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を沸点まで加熱するための加熱器であって、発熱素子と、中を流れる液体を沸点未満の温度まで加熱するための、前記発熱素子によって加熱される第1の加熱領域と、前記液体を沸点まで加熱するための第2の加熱領域とを含み、前記第2の領域は、加熱された水とは別に蒸気を排出するための手段を有する加熱器。
【請求項2】
前記発熱素子が前記第2の加熱領域または最終加熱室の中まで延びている、請求項1に記載の加熱器。
【請求項3】
前記発熱素子が、被覆抵抗発熱素子(sheathed resistance heating element)を含む、請求項1または2に記載の加熱器。
【請求項4】
前記発熱素子が、前記第1の加熱領域を形成する流路の外側に設けられている、請求項1、2、または3に記載の加熱器。
【請求項5】
前記第1の加熱領域が、液体を加熱するための被覆発熱素子(sheathed heating element)が内部に配設された、液体を搬送するための流路を含む、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項6】
前記発熱素子が、その周囲全面にわたって液体が接触するように前記流路内部に配設されている、請求項5に記載の加熱器。
【請求項7】
前記第1の加熱領域が、前記発熱素子の周りに管状の被覆物を含み、前記被覆物は液体が前記素子と前記被覆物との間を流れることができるように前記流路を形成する、請求項6に記載の加熱器。
【請求項8】
前記被覆物が、好ましくは厚さ0.7mm未満であるステンレス鋼を含む、請求項7に記載の加熱器。
【請求項9】
前記発熱素子の一部が、金属製のヘッドプレートに固着されてホットリターン(hot return)を形成する、請求項5から7のいずれかに記載の加熱器。
【請求項10】
前記第1の領域が流路を含み、前記流路は液体を前記流路の中心軸からずれた方向に沿って導入するように構成された導入口を有する、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項11】
前記第1の領域が、渦流を促進するように構成された流路を含む、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項12】
前記流路内に浸漬された被覆発熱素子(sheathed heating element)に巻き付けられたワイヤを含む、請求項11に記載の加熱器。
【請求項13】
中の液体を沸点未満の温度まで加熱するための被加熱流導管と、前記液体を沸点まで加熱するための最終加熱室とを含むフロー加熱器であって、前記加熱室は、蒸気を液体表面から逃がすための空間を液体表面上方に含む、フロー加熱器。
【請求項14】
前記被加熱流導管が、熱交換器の片側を含む、請求項13に記載の加熱器。
【請求項15】
前記被加熱流導管が、電気発熱素子を含む、請求項13に記載の加熱器。
【請求項16】
前記発熱素子が、前記最終加熱室の中まで延びている、請求項15に記載の加熱器。
【請求項17】
前記発熱素子が、前記導管の外側に設けられている、請求項15に記載の加熱器。
【請求項18】
前記加熱器によって供給される液体の温度を制御するための手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項19】
前記温度を制御するための手段が、前記加熱器を流れる液体の流量を変更するための手段を含む、請求項18に記載の加熱器。
【請求項20】
前記発熱素子の通電に対して遅延間隔を置いてから水を流れさせるように構成された、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項21】
前記加熱器を流れる液体の流れが止められる前に前記発熱素子がオフにされるように構成された、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項22】
使用者によって予め設定された時間にわたって液体を注出するように構成された、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項23】
前記予め設定された時間が、注出量制御装置によって設定される、請求項22に記載の加熱器。
【請求項24】
前記第1の加熱領域または導管内に、液体の出力温度を決定するための温度感知手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項25】
液体を前記フロー加熱器を流れるよう駆動するためのポンプを含む、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項26】
前記第2の領域または沸騰室内の液体が所定のレベルに達すると、前記第2の領域または沸騰室から自動的に液体を流出させるための手段を含む、先行する請求項のいずれかに記載の加熱器。
【請求項27】
堰を含み、前記堰は前記第2の領域または沸騰室内の水位が所定の高さを超えると液体が前記堰を越えて前記第2の領域または沸騰室から流出するように構成された、請求項26に記載の加熱器。
【請求項28】
先行する請求項のいずれかに記載の加熱器を含む、加熱された水を要求に応じて提供するための機器。
【請求項29】
前記第2の領域または沸騰室と大気との間に蒸気通路を提供するように構成され、前記蒸気通路は使用時に0.1〜1バール、好ましくは0.2バール〜0.5バールの圧力差を生じさせるように十分に制限されている、請求項28に記載の機器。
【請求項30】
液体を搬送する流路と、使用時に表面が少なくとも部分的に液体に囲まれるように前記流路内に配設された被覆発熱素子(sheathed heating element)とを含むフロー加熱器。
【請求項31】
使用時に前記発熱素子の表面が周囲の全面にわたって液体に囲まれる、請求項30に記載の加熱器。
【請求項32】
前記流路が、前記発熱素子の周りに管状の被覆物を含み、前記素子と前記被覆物との間を液体が流れることができるようになっている、請求項30または31に記載の加熱器。

【公表番号】特表2012−527282(P2012−527282A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511341(P2012−511341)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001020
【国際公開番号】WO2010/106349
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(503052542)ストリックス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】