説明

加熱硬化型導電性ペースト組成物

【課題】高い導電性を有する低コストの加熱硬化型導電性ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】(A)銀粉末と、(B)加熱硬化性成分と、(C)硬化剤とを含有し、(A)銀粉末が、(a1)フレーク状銀粉末と、(a2)球状銀粉末からなり、(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸を付着させており、かつ、固形分中における(A)銀粉末の比率が90〜95重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱硬化型導電性ペースト組成物に関し、より詳しくは、電極または電気配線の形成に使用される加熱硬化型導電性ペースト組成物であって、フィルム、基板、電子部品等の基材へ印刷し、得られた塗膜を加熱硬化させることにより、優れた導電性を備える電極または電気配線を形成することのできる加熱硬化型導電性ペースト組成物に関するものであり、具体的には太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、また、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極または電気配線用途に好適に用いられる加熱硬化型導電性ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストを、フィルムや基板や電子部品等の基材に塗布または印刷し、加熱して乾燥硬化させることにより、電極や電気配線等を形成するという方法は、従来から広く用いられている。しかし、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性ペーストを用いて形成される電極や配線パターン等には、より低抵抗であることが要求され、その要求は年々厳しくなっている。
【0003】
高温処理により特性が劣化するような電子部品等に導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、例えば、導電性ペーストを用いてアモルファスシリコン層を有する太陽電池の集電電極を形成する場合、銀などの導電性金属粉末とエポキシ樹脂またはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する導電性ペーストを電子部品等に印刷し、これを比較的低温で加熱硬化する方法が行われているが、ペーストの導電性が変換効率に与える影響が大きいことから、より変換効率を上げるために、より低抵抗であることが要求されている。
【0004】
また、アルミ箔のエッチングによる電極形成の代替で、導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、例えば、導電性ペーストを用いてプラスチックあるいは紙基板上にRFIDアンテナを形成する場合、アルミ箔並みの低コストや低抵抗が要求されるため、ペーストとしては低コストであり、且つ、より低抵抗であることが要求されている。
【0005】
このような要求に応えるべく、次に説明するような加熱硬化型導電性ペースト組成物が提案されている。
【0006】
すなわち、特許文献1には、金属粉末の表面に硬脂酸を3重量%以下付着させた粉末充填材、エポキシ樹脂、およびフェノールノボラック系硬化剤を主要成分とする導電性樹脂組成物が開示されている。また、その導電性樹脂組成物は、保存安定性が高く、短時間で硬化し、耐熱性、耐湿性、耐ヒートサイクル性、導電性および接合強度の優れた硬化物を与えることができると記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、脂肪酸および/または脂肪酸無水物で表面処理された導電性金属粉末と、アルカリ金属イオンと、熱硬化性樹脂を含むバインダー樹脂とを含み、アルカリ金属イオンの量が導電性金属粉末の量に対して10〜3000ppmである導電性ペーストが開示されており、その導電性ペーストによれば、導電性を向上できることが記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、熱硬化性樹脂と、導電性フィラーと、チキソトロピー付与剤とを含み、導電性フィラーは球状または略球状の粒子からなり、チキソトロピー付与剤は有機酸および有機オニウム酸よりなる群から選択され、チキソトロピー付与剤は平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態でペーストに含まれている導電性ペーストが開示されている。また、その導電性ペーストによれば、保存時における導電性フィラーの沈降を抑制できることと、使用時における液だれを抑制できることと、導電性を向上できることが記載されている。
【0009】
さらに、特許文献4には、銀粉末と樹脂バインダーおよび溶剤を少なくとも含有する導電性樹脂ペーストを用いる導電性部材の製造方法であって、導電性樹脂ペーストを固化させた後に、ハロゲン無機塩類を含有する水溶液と固化した導電性樹脂ペーストを接触させる処理方法等により後処理する、導電性部材の製造方法が開示されている。また、その方法により製造された導電性部材は導電性に優れていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−64484号公報
【特許文献2】特開2006−49148号公報
【特許文献3】特開2007−179772号公報
【特許文献4】特開2009−147121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載された導電性樹脂組成物は、エポキシ樹脂とノボラック系硬化剤の組み合わせを使用しているため、加熱硬化成分の体積収縮が少なく、ペースト中の銀粉末のような金属粉末同士の接触が充分でないので、比抵抗を低くすることができないという問題がある。
【0012】
また、特許文献2に記載された導電性ペーストは、その実施例で使用された導電性金属粉末はすべてフレーク状銀粉末であり、フレーク状銀粉末の製造工程は他の形状の銀粉末を製造する場合に比べて手間がかかるので製造コストが高いという欠点がある。また、実用上、アルカリ金属イオンの存在が嫌われる技術分野が多いので、故意に添加するのは好ましくない。さらに、その実施例の中で最も導電性が優れている実施例4の比抵抗も9.6μΩ・cmであり、充分に低いとは言えない。
【0013】
また、特許文献3に記載された導電性ペーストは、導電性フィラーが球状または略球状の粒子からなるため、ペースト中の銀粉末のような金属粉末同士の接触が充分でないので、比抵抗を低くすることができない。その実施例の中で最も導電性が優れている実施例4の比抵抗も1000μΩ・cmであり、低いとは言えない。
【0014】
さらに、特許文献4に記載された導電性部材は、後処理なしでは導電性が不十分である。また、後処理を行う場合、後処理溶液または後処理水溶液への浸漬が不向きな基板には適用できない。また、後処理が可能な場合であっても、後処理溶液または後処理水溶液へ浸漬した基板の乾燥が必要であり、製造工程が長くなる。さらに、導電性部材中に残存する水分やイオン性不純物が、その導電性部材を用いて形成された電極や配線パターンの電気的接続信頼性を低下させるという問題がある。
【0015】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い導電性を有する低コストの加熱硬化型導電性ペースト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物は、(A)銀粉末と、(B)加熱硬化性成分と、(C)硬化剤とを含有する加熱硬化型導電性ペースト組成物であって、(A)銀粉末が、(a1)フレーク状銀粉末と(a2)球状銀粉末からなり、(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸が付着されており、かつ、固形分中における(A)銀粉末の比率が90〜95重量%であることを特徴としている。
【0017】
(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の粉末の表面に付着させる多価カルボン酸の付着量は、(A)銀粉末重量に対して0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0018】
(a1)フレーク状銀粉末の平均粒径D50が2〜20μmであり、BET比表面積が0.1〜1m2/gであり、タップ密度が3〜7g/cm3であり、アスペクト比が5〜15であることが好ましい。
【0019】
(a2)球状銀粉末の平均粒径D50が0.1〜5μmであり、BET比表面積が0.5〜1.7m2/gであり、タップ密度が2〜5g/cm3であり、凝集度(平均粒径D50/平均粒径DSEM)が2〜15であることが好ましい。
【0020】
(A)銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量がそれぞれ200ppm未満であることが好ましい。
【0021】
(B)加熱硬化性成分がエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0022】
本発明におけるエポキシ当量は、JIS−K−7236に従って求めることができる。エポキシ当量の単位は、[g/eq]である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物は、銀粉末の表面に多価カルボン酸を付着させることで、熱硬化時における近接する銀粉末間の体積収縮を促進し、銀粉末同士の接触性を高めることができるという効果がある。また、ペースト中に多価カルボン酸を含むことで、より少量でかかる効果が期待できるため、ペーストの保存安定性が改善されるという効果もある。また、固形分中における銀粉末の比率が90ないし95重量%であるから、導電性ペースト中の銀粉末の充填性を高めて、銀粉末同士の接触面積を大きくすることができる。従って、本発明の導電性ペーストを加熱硬化させることにより形成した電極や配線パターンの導電性を高めることができる。
【0024】
また、請求項3と4に記載のように、銀粉末の物性をより好ましい範囲に設定することにより、導電性ペースト中の銀粉末の充填性を高めることができる。この結果、導電性ペーストを加熱硬化させることにより形成した電極や配線パターンの導電性を一層高めることができる。
【0025】
また、請求項5に記載のように、(A)銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量をそれぞれ200ppm未満としたり、請求項6に記載のように、(B)加熱硬化性成分がエポキシ樹脂を含有することにより、電気的接続信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物の特性評価用印刷パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明する。
1.銀粉末
(A)銀粉末は、(a1)フレーク状銀粉末と(a2)球状銀粉末からなり、(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸を付着させることが好ましい。フレーク状とは、部分的に凹凸があり、変形が見られても、全体として見た場合に、平板または厚みの薄い直方体を含む意であり、薄片状および鱗片状を含む意である。球状とは、部分的に凹凸があり、変形が見られても、全体として見た場合に、直方体よりは立方体に近い立体形状を含む意であり、粒状を含む意である。
【0028】
銀粉末に付着させる多価カルボン酸は銀粉末表面に付着していれば良い。なお、付着というのは、吸着および/又は被覆されている状態を含む意である。
【0029】
銀粉末はペーストに導電性を付与するための必須成分であるから、導電性ペースト中に84.0重量%以上含有することが好ましい。一方、導電性ペースト中の銀粉末量が多くなりすぎると、ペースト化が困難になるという不都合が発生するので、導電性ペースト中の銀粉末量は95.0重量%以下であるのが好ましい。
【0030】
フレーク状銀粉末のみを使用した場合、銀粉末間の接触面積を大きくすることができるので、高い導電性を期待することができる。しかし、フレーク状銀粉末の製造過程で使用される滑剤による接着性の低下を避けることができない。また、フレーク状銀粉末の形状に起因して硬化物の厚みを大きくすることが困難で、配線パターンを形成した際に配線の抵抗値が期待したほど低くならないことがある。そこで、これらの欠点を改善するために、球状銀粉末を併用するのが好ましい。一方、球状銀粉末のみを使用した場合、フレーク状銀粉末に比して銀粉末間の接触面積が小さいため、比抵抗が上昇するという不都合がある。
【0031】
また、フレーク状銀粉末は、その製造過程に起因して、通常の球状銀粉末を製造するよりコストがかかるため、低コスト化の観点でもフレーク状銀粉末と球状銀粉末を併用するのが好ましい。
【0032】
球状銀粉末の製造方法としては、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、撹拌しながら還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後に、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥させ、得られた乾燥粉末を解砕、篩別することにより、球状銀粉末を製造できる。
【0033】
多価カルボン酸を表面に付着させた球状銀粉末を得るには、(1)銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、撹拌しながら還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後に、銀粒子含有スラリー溶液に多価カルボン酸を加え、更に、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥させ、得られた乾燥粉末を解砕、篩別することにより、多価カルボン酸を付着させた球状銀粉末を製造できる。(2)また、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、攪拌しながら還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後に、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥させ、得られた乾燥粉末を解砕、篩別することにより得られた球状銀粉末に多価カルボン酸を加えて乾式解砕することにより、多価カルボン酸を付着させた球状銀粉末を製造できる。この場合、多価カルボン酸を純水やアルコールに溶解させた上で球状銀粉末とともに解砕することもできる。(3)さらに、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、攪拌しながら還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後に、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥させ、得られた乾燥粉末を解砕、篩別することにより得られた球状銀粉末に多価カルボン酸と純水やアルコールを加えてスラリー状にした上で湿式解砕することにより、多価カルボン酸を付着させた球状銀粉末を製造できる。(4)また、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、攪拌しながら還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後に、ろ過、水洗、脱水した後に多価カルボン酸を加え、さらに、乾燥させ、得られた乾燥粉末を解砕、篩別することにより、多価カルボン酸を付着させた球状銀粉末を製造できる。この場合、球状銀粉末として未乾燥のものを用いれば、純水やアルコールを加えなくてもよい。銀粉末への多価カルボン酸の付着量を正確に管理するには、乾式解砕で銀粉末表面に多価カルボン酸を付着させるのが好ましい。
【0034】
また、球状銀粉末の分散性を改善するために、球状銀粉末表面に表面処理剤を付着させるのが好ましい。表面処理剤を付着させた球状銀粉末の製造方法としては、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、攪拌しながら還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後に、銀粒子含有スラリー溶液に表面処理剤を加え、更に、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥させ、得られた乾燥粉末を解砕、篩別することにより、表面処理剤を付着させた球状銀粉末を製造できる。さらに、この球状銀粉末を風力分級することにより銀粉末中の粗大粒子を取り除くこともできる。
【0035】
フレーク状銀粉末は、球状銀粉末を元粉として、この元粉に機械的処理を施すことにより製造することができる。元粉の粒径や凝集度は目的に応じて適宜選択することができ、湿式還元法やアトマイズ法など、公知の手法で得られた球状銀粉を元粉とすることができる。また、元粉に機械的処理を施す方法としては、アトライタやビーズミルを用いた湿式粉砕法、ボールミルや振動ミル等を用いた乾式粉砕法などがあり、公知の手法によりフレーク状銀粉末を製造できる。
【0036】
多価カルボン酸を表面に付着させたフレーク状銀粉末を得るには、球状銀粉末と多価カルボン酸を共存させた状態で機械的処理を施してフレーク化する方法、公知の方法でフレーク状銀粉末を得た後、そのフレーク状銀粉末と多価カルボン酸を乾式解砕する方法などを挙げることができる。
【0037】
銀粉末の表面に付着させる多価カルボン酸の付着量は、銀粉末重量に対して0.01〜1重量%が好ましく、0.01〜0.3重量%がより好ましく、さらに好ましくは、0.01〜0.1重量%である。多価カルボン酸の付着量が0.01重量%より少ないと導電性の改善効果が少なく、1重量%を超えるとペーストの保存安定性が劣り、ペーストの粘度上昇等の不都合が生じる。
【0038】
多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、およびクエン酸からなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
【0039】
固形分中における銀粉末の比率は、90〜95重量%であるのが好ましく、92〜95重量%がより好ましく、更に好ましくは固形分中における銀粉末の比率は93〜95重量%である。固形分中における銀粉末の比率が90重量%未満である場合、銀粉末の接触面積が小さく(銀粉末同士の接触が不十分であることにより)、導電性が不充分となる。一方、固形分中における銀粉末の比率が95重量%より多くなると、樹脂による銀粉末の均一な分散ができずに、基材に一様に印刷または塗布できる粘度とはならず、カスレたり、不均一な導体が形成される。なお、ここで言う固形分(特許請求の範囲に記載の固形分を含む)とは、(A)銀粉末と(B)加熱硬化性成分の合計である。
【0040】
上記球状銀粉末の製造方法におけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを挙げることができ、錯化剤としてはアンモニア水、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの中で、銀粉末に含まれるアルカリ金属イオン量を低く抑えるためには、アンモニア水を使用するのが好ましい。
【0041】
上記球状銀粉末の製造方法における還元剤としては、アスコルビン酸、亜硫酸塩、アルカノールアミン、過酸化水素水、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、グリオキサール、酒石酸、次亜りん酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、ピロガロール、ぶどう糖、没食子酸、ホルマリン、無水亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどを使用することができる。これらの中で、アスコルビン酸、アルカノールアミン、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンからなる群から選ばれる1種以上を使用するのが好ましい。
【0042】
上記球状銀粉末の製造方法における表面処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エマルション、脂肪酸アミド、界面活性剤、有機金属、アゾール構造を有する化合物および保護コロイドからなる群から選ばれる1種以上を使用するのが好ましい。脂肪酸の例としては、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、エライジン酸などを挙げることができる。また、脂肪酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの金属と脂肪酸が塩を形成したものを挙げることができる。また、脂肪酸エマルションの例としては、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を用いて脂肪酸または脂肪酸塩をエマルション化したものを挙げることができる。また、脂肪酸アミドの例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミドなどを挙げることができる。また、界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩のような陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤などを挙げることができる。また、有機金属の例として、アセチルアセトントリブトキシジルコニウム、クエン酸マグネシウム、ジエチル亜鉛、ジブチルスズオキサイド、ジメチル亜鉛、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリエチルインジウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジイウム、トリメチルガリウム、モノブチルスズオキサイド、テトライソシアネートシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、ポリメトキシシロキサン、モノメチルトリイソシアネートシラン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを挙げることができる。また、アゾール構造を有する化合物の例として、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、1 H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H −1,2,4 −トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、1,2 ,3−オキサジアゾール、 1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チ アジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1 H−1,2,3,4−テトラゾール、 1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,4−チアトリアゾール、2H−1 ,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾールおよびベンゾトリアゾールとこれらの塩などを挙げることができる。また、保護コロイドの例として、ゼラチン、アルブミン、アラビアゴム、プロタルビン酸、リサルビン酸などを挙げることができる。
【0043】
フレーク状銀粉末および球状銀粉末の重量混合比率は、両者の合計が100重量部で、フレーク状銀粉末が20〜80重量部、球状銀粉末が80〜20重量部であるのが好ましく、より好ましくはフレーク状銀粉末が40〜60重量部、球状銀粉末が60〜40重量部である。フレーク状銀粉末または球状銀粉末のいずれか一方が80重量部を超える場合または20重量部を下回る場合、両者を併用したことによる導電性を向上させる効果が十分に得られず、また、フィルム、基板、電子部品等の基材への優れた接着性が得られなくなるので好ましくない。
【0044】
フレーク状銀粉末の平均粒径D50が2〜20μmであり、BET比表面積が0.1〜1m2/gであり、タップ密度が3〜7g/cm3であり、アスペクト比が5〜15であることが好ましく、球状銀粉末の平均粒径D50が0.1〜5μmであり、BET比表面積が0.5〜1.7m2/gであり、タップ密度が2〜5g/cm3であり、凝集度(平均粒径D50/平均粒径DSEM)が2〜15であることが好ましい。
【0045】
本発明において、粉末の平均粒径D50とは、レーザー回折法で粉末の粒度分布を測定した場合における累積50質量%の粒径をいう。また、平均粒径DSEMとは、走査型電子顕微鏡による観察画像から得られる一次粒子の平均粒径をいう。凝集度は、平均粒径D50を平均粒径DSMEで除したものである。
【0046】
フレーク状銀粉末の平均粒径D50は2〜20μmが好ましく、2〜12μmがより好ましく、更に好ましくは7〜10μmである。フレーク状銀粉末の平均粒径D50が2μmより小さいと、銀粉末間の接触界面の抵抗が大きく、十分な導電性が得られない。一方、フレーク状銀粉末の平均粒径D50が20μmより大きいと、銀粉末間の接触界面の抵抗は小さくなるが、メッシュスクリーンを用いて導体パターンを印刷する場合、スクリーンの目詰まりが起こったり、微細配線の形成が困難となるので好ましくない。
【0047】
球状銀粉末の平均粒径D50は0.1〜5μmが好ましく、1〜5μmがより好ましく、更に好ましくは1〜3μmである。球状銀粉末の平均粒径D50が0.1μmより小さいと、高粘度化によりペースト化が困難となるので好ましくない。一方、球状銀粉末の平均粒径D50が5μmより大きいと、フレーク状銀粉末の場合と同様に、メッシュスクリーンを用いて導体パターンを印刷する場合、スクリーンの目詰まりが起こったり、微細配線の形成が困難となるので好ましくない。
【0048】
フレーク状銀粉末のBET比表面積は0.1〜1m2/gが好ましく、0.2〜0.8m2/gがより好ましく、更に好ましくは0.2〜0.5m2/gである。フレーク状銀粉末のBET比表面積が0.1m2/gより小さいと、フレーク厚みが厚く、粒子形状が球形に近くなるため、銀粉末同士の接触面積が小さくなり、十分な導電性が得られない。一方、フレーク状銀粉末のBET比表面積が1m2/gを超える場合、銀粉末同士の接触面積は大きくなるが、ペースト粘度が高くなるため、高充填化、すなわちペースト中の銀粉末の含有量を上げることができなくなり、十分な導電性が得られない。
【0049】
球状銀粉末のBET比表面積は0.5〜1.7m2/gが好ましく、0.6〜1.6m2/gがより好ましく、更に好ましくは0.9〜1.6m2/gである。球状銀粉末のBET比表面積が0.5m2/gより小さいと銀粉末同士の接触面積が小さく、十分な導電性が得られない。一方、球状銀粉末のBET比表面積が1.7m2/gを超える場合、銀粉末同士の接触面積は大きくなるが、ペースト粘度が高くなるため、高充填化、すなわちペースト中の銀粉末の含有量を上げることができなくなり、十分な導電性が得られない。
【0050】
フレーク状銀粉末のタップ密度は3〜7g/cm3が好ましく、3〜6g/cm3がより好ましく、更に好ましくは3.5〜5.5g/cm3である。フレーク状銀粉末のタップ密度が3g/cm3未満では銀粉末が嵩高くなり、高充填化、すなわちペースト中の銀粉末の含有量を上げることができなくなり、十分な導電性が得られない。一方、タップ密度が7g/cm3を超えるフレーク状銀粉末を工業的に得ることは困難である。
【0051】
球状銀粉末のタップ密度は2〜5g/cm3が好ましく、3〜5g/cm3がより好ましく、更に好ましくは3〜4g/cm3である。球状銀粉末のタップ密度が2g/cm3未満では銀粉末が嵩高くなり、高充填化、すなわちペースト中の銀粉末の含有量を上げることができなくなり、十分な導電性が得られない。一方、タップ密度が5g/cm3を超える球状銀粉末は銀粉末の分散が良好であり、銀粉末間に樹脂成分が回りこみ易いため、銀粉末同士の接触界面の抵抗が大きく、十分な導電性が得られない。
【0052】
フレーク状銀粉末のアスペクト比は5〜15が好ましく、6〜12がより好ましく、更に好ましくは6〜10である。フレーク状銀粉末のアスペクト比が5未満の場合、フレーク化が不十分なため銀粉末同士の接触面積が小さく、十分な導電性が得られない。一方、フレーク状銀粉末のアスペクト比が15を超える場合、銀粉末同士の接触面積は大きくなるが、高充填化、すなわちペースト中の銀粉末の含有量を上げることができなくなり、十分な導電性が得られない。
【0053】
球状銀粉末の凝集度(平均粒径D50/平均粒径DSEM)は2〜15であることが好ましく、3〜11が好ましく、更に好ましは3〜7.5である。凝集度が2より小さくなると、銀粉末の分散が良好であり、銀粉末間に樹脂成分が回りこみ易いため、銀粉末同士の接触界面の抵抗が大きく、十分な導電性が得られない。一方、凝集度が15より大きくなると、銀粉末が嵩高くなり、高充填化、すなわちペースト中の銀粉末の含有量を上げることができなくなり、十分な導電性が得られない。
【0054】
銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量がそれぞれ200ppm未満であることが好ましく、100ppm未満であることがより好ましく、更に好ましくは10ppm未満である。銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量がそれぞれ200ppmを超えると、電子部品の電気特性や電気的接続信頼性に問題が生じやすくなる。その点で、銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量は低いほどよく、理想的には全く含まれないことであるが、実用的には、銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量がそれぞれ10ppm未満であれば、全く問題はない。
【0055】
本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物には、必要に応じて、フレーク状銀粉末および球状銀粉末以外の銀粉末、例えば、樹脂状銀粉末や、銀以外の導電性粉末、例えば、銅粉末や銀被覆銅粉末、銀被覆ニッケル粉末等を加えることも可能である。
(2)加熱硬化性成分
本発明に用いる加熱硬化性成分としては、エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくは、エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を併用するのがよい。
【0056】
加熱硬化性成分は加熱硬化型導電性ペースト組成物を得るための必須成分であるから、導電性ペースト中に4.0重量%以上含有することが好ましい。一方、導電性ペースト中の加熱硬化性成分量が多くなりすぎると、導電性が悪化するという不都合が発生するので、導電性ペースト中の加熱硬化性成分量は9.0重量%以下であるのが好ましい。
【0057】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ樹脂であれば、一般に用いられているものが使用可能である。例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン等の多価フェノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシル化合物とエピクロルヒドリンまたは2−メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族および脂環式エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。これらの中でグリシジル型のエポキシ樹脂を好ましく使用することができ、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させたグリシジル型のエポキシ樹脂も好ましく使用できる。エポキシ当量は100〜1000が好ましく、100〜400がより好ましく、更に好ましくは100〜200である。エポキシ当量が100未満であると、塗膜の耐熱性や耐久性等が不充分となり、エポキシ当量が1000を超えるとペーストのチクソトロピー性が低下するため、印刷性が悪化する。
【0058】
エポキシ樹脂と併用するブロック化ポリイソシアネート化合物に用いられるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートを挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物のうち、その成分中に3核体以上のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含むと、より低抵抗となるので好ましい。また、ポリイソシアネートとポリオールを公知の方法により反応させて合成した末端イソシアネート基含有化合物も、本発明におけるポリイソシアネート化合物として用いることができる。この場合のポリオールについては特に限定はなく、一般的なポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等が使用できる。ポリイソシアネート化合物のブロック化剤についても特に限定はなく、イミダゾール類、フェノール類、オキシム類等を使用することができる。
【0059】
熱硬化性成分としてエポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を用いる場合、エポキシ当量が100〜1000のエポキシ樹脂と、ブロック化ポリイソシアネート化合物の重量混合比率は、両者の合計を100重量部とすると、エポキシ樹脂成分が30重量部でブロック化ポリイソシアネート化合物成分が70重量部である比率から、エポキシ樹脂成分が90重量部でブロック化ポリイソシアネート化合物成分が10重量部である比率の範囲に含まれるものが好ましい。エポキシ樹脂成分が30重量部未満であると(ブロック化ポリイソシアネート化合物成分が70重量部を超えると)、得られる硬化膜の強度と接着性が低下するので好ましくない。一方、エポキシ樹脂成分が90重量部を超えると(ブロック化ポリイソシアネート化合物成分が10重量部未満であると)、ブロック化ポリイソシアネート化合物の熱硬化時の硬化収縮による銀粉末間の接触を促進させる効果が小さくなり、導電性が低下するので好ましくない。
(3)硬化剤
硬化剤としては、イミダゾール類、フッ化ホウ素を含むルイス酸及びそれらの錯体または塩、アミンアダクト、3級アミン、ジシアンジアミド等が使用可能である。イミダゾール類としてはイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾールを挙げることができる。フッ化ホウ素を含むルイス酸及びそれらの錯体または塩としては、3フッ化ホウ素エチルエーテル、3フッ化ホウ素フェノール、3フッ化ホウ素ピペリジン、酢酸3フッ化ホウ素、3フッ化ホウ素トリエタノールアミン、3フッ化ホウ素モノエチルアミン、3フッ化ホウ素モノエタノールアミンを挙げることができる。アミンアダクトとしては、味の素ファインテクノ社から市販されているアミキュアシリーズや富士化成工業社から市販されているフジキュアシリーズを挙げることができる。3級アミンとしてはジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノエチルアミン、メチルジデエシルアミン、メチルジオレイルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセンを挙げることができる。
【0060】
硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるための必須成分であるから、導電性ペースト中に0.05重量%以上含有することが好ましい。一方、導電性ペースト中の硬化剤量が多くなりすぎると、ペースト粘度が高くなるという不都合が発生するので、導電性ペースト中の硬化剤量は1.0重量%以下であるのが好ましい。
【0061】
硬化剤添加量はエポキシ樹脂100重量部に対して3〜30重量部であり、3〜15重量部が好ましく、より好ましくは3〜10重量部である。硬化剤添加量がエポキシ樹脂100重量部に対して3重量部未満であると樹脂の硬化が不十分となり、良好な導電性が得られない。一方、30重量部を超えると、ペースト粘度が高くなり、また、製造コストが高くなるので好ましくない。
(4)溶剤
溶剤としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、及びそれらの酢酸エステル、DBE、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのエステル類、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、テルピネオールとその酢酸エステル、水添ターピネオール及びその酢酸エステル、γ−ブチロラクトン、リモネン等を例示することができる。スクリーン印刷で電極形成を行う場合には版乾きの問題が生じ易いので、ペースト中に含まれる溶剤の少なくとも半分以上は沸点が200℃以上の高沸点溶剤を用いるのが好ましい。好ましい高沸点溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、テルピネオールなどを挙げることができる。
【0062】
本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物中の溶剤量は0.95ないし6.0重量%の範囲であるのが好ましい。溶剤量が0.95重量%未満である場合、ペースト化が困難になる。一方、溶剤量が6.0重量%を超えると、印刷後の電極あるいは配線パターンに、にじみが生じ易く、また、導電性が低下するので好ましくない。
(5)電極または配線パターンの形成
本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物を、フィルムや基板や電子部品等の基材上に塗布または印刷した後、該導電性ペースト組成物を150〜250℃の温度範囲で加熱硬化させることにより電極または配線パターンを形成することが好ましい。150℃より低温の場合は硬化が不充分であり、250℃より高温の場合は樹脂の分解や基材からの電極の剥離が起こるので好ましくない。
【実施例】
【0063】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、本
発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
(1)多価カルボン酸を表面に付着させた球状銀粉末の製造
《製造例1》
銀濃度7重量%の硝酸銀水溶液を3000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を30℃に調整し、30℃に調整した硝酸銀水溶液に13重量%に調製した水酸化ナトリウム水溶液1500gを10分間かけて加え、酸化銀含有スラリーを生成した。得られた酸化銀含有スラリーを攪拌しながら、ホルマリン(ホルムアルデヒドの37重量%水溶液)150gを15分間かけて添加することにより銀粒子を析出させた。上記ホルマリン添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてオレイン酸を0.2g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別した。さらに、この篩別後の銀粉末に対して0.01重量%のマロン酸を添加し、再度カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、マロン酸を付着させた球状銀粉末を205g得た。
【0064】
この銀粉末および下記のように得た銀粉末について、以下に説明する方法により、平均粒径D50、最大粒径Dmax、平均粒径DSEM、BET比表面積、タップ密度および銀粉末に含まれるナトリウムイオン量とカリウムイオン量を測定した。
(平均粒径D50および最大粒径Dmaxの測定)
レーザー回折法による平均粒径D50(累積50質量%粒径)および最大粒径Dmaxは、銀粉末試料0.3gを50mlビーカーに秤量し、イソプロピルアルコール30mLに加えた後、超音波洗浄器(アズワン社製USM−1)により5分間分散させ、マイクロトラック粒度分布測定装置(ハネウエル−日機装社製のマクロトラック粒度分布測定装置9320−HRA X−100)を使用して測定した。
(平均粒径DSEMの測定)
銀粉末を走査型電子顕微鏡(日本電子社製のJSM−5500)により観察して、2万倍に拡大した画像から100個の銀粒子を無作為に選択して、その粒径(画像上の長径)を計測し、100個の銀粒子の粒径を個数平均することにより平均粒径DSEMを得た。
(BET比表面積の測定)
BET比表面積は、銀粉末試料1gをモノソーブ(カウンタクローム社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定した。なお、当該BET比表面積測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間とした。
(タップ密度の測定)
タップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学社製のカサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀粉末試料15gを計量して20mLの試験管に入れ、落差20mmで1000回タッピングし、次の式によりタップ密度を求めた。
【0065】
タップ密度=試料重量(15g)/タッピング後の試料容積(cm3
(ナトリウムイオン量とカリウムイオン量の測定)
銀粉末に含まれるナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、銀粉末試料1gを硝酸に溶解し、純水を添加して希釈した後、原子吸光法により求めた。
【0066】
上記のようにして得られた球状銀粉末1の平均粒径D50は4.4μm、最大粒径Dmaxは26.2μm、平均粒径DSEMは0.42μm、BET比表面積は0.94m2/g、タップ密度は2.9g/cm3、ナトリウムイオン量は70ppm、カリウムイオン量は10ppm未満であった。
《製造例2》
マロン酸を添加しなかった以外は製造例1と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末206gを得た。得られた球状銀粉末2の平均粒径D50は6.3μm、最大粒径Dmaxは26.2μm、平均粒径DSEMは0.40μm、BET比表面積は1.04m2/g、タップ密度は2.1g/cm3、ナトリウムイオン量は70ppm、カリウムイオン量は10ppm未満であった。
《製造例3》
銀濃度7重量%の硝酸銀水溶液を3000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を30℃に調整し、30℃に調整した硝酸銀水溶液に13重量%に調製した水酸化ナトリウム水溶液1500gを10分間かけて加え、酸化銀含有スラリーを生成した。得られた酸化銀含有スラリーを攪拌しながら、ホルマリン150gを15分間かけて添加することにより銀粒子を析出させた。その後、銀粒子を析出させた液を、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別した。さらに、この篩別後の銀粉末に対して0.1重量%のアゼライン酸を添加し、再度カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、アゼライン酸を付着させた球状銀粉末を205g得た。
【0067】
上記のようにして得られた球状銀粉末3の平均粒径D50は4.1μm、最大粒径Dmaxは22.0μm、平均粒径DSEMは0.54μm、BET比表面積は0.64m2/g、タップ密度は3.0g/cm3、ナトリウムイオン量は50ppm、カリウムイオン量は10ppm未満であった。
《製造例4》
アゼライン酸を添加しなかった以外は製造例3と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末207gを得た。得られた球状銀粉末4の平均粒径D50は14.1μm、最大粒径Dmaxは62.2μm、平均粒径DSEMは0.51μm、BET比表面積は0.75m2/g、タップ密度は1.2g/cm3、ナトリウムイオン量は50ppm、カリウムイオン量は10ppm未満であった。
《製造例5》
銀濃度4重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を18℃に調整し、18℃に調整した硝酸銀水溶液に25重量%に調製したアンモニア水300gを3秒間で加え、銀のアンミン錯体水溶液を生成した。この銀のアンミン錯体水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した銀のアンミン錯体水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン一水和物の80重量%水溶液30gを2秒間で添加することにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン一水和物溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてオレイン酸を0.3g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別した。さらに、この篩別後の銀粉末に対して0.05重量%のアジピン酸を添加し、再度カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、アジピン酸を付着させた球状銀粉末を78g得た。
【0068】
上記のようにして得られた球状銀粉末5の平均粒径D50は2.1μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.33μm、BET比表面積は1.05m2/g、タップ密度は3.2g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例6》
アジピン酸を添加しなかった以外は製造例5と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末77gを得た。得られた球状銀粉末6の平均粒径D50は2.2μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.34μm、BET比表面積は0.99m2/g、タップ密度は3.3g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例7》
銀濃度2重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を18℃に調整し、18℃に調整した硝酸銀水溶液に25重量%に調製したアンモニア水150gを2秒間で加え、銀のアンミン錯体水溶液を生成した。この銀のアンミン錯体水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した銀のアンミン錯体水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン一水和物の80重量%水溶液15gを1秒間で添加することにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン一水和物溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてオレイン酸を0.2g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別した。さらに、この篩別後の銀粉末に対して0.08重量%のグルタル酸を添加し、再度カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、グルタル酸を付着させた球状銀粉末を38g得た。
【0069】
上記のようにして得られた球状銀粉末7の平均粒径D50は1.2μm、最大粒径Dmaxは6.5μm、平均粒径DSEMは0.35μm、BET比表面積は0.98m2/g、タップ密度は4.0g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例8》
オレイン酸をステアリン酸に、グルタル酸をピメリン酸に変更した以外は製造例7と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末38gを得た。得られた球状銀粉末8の平均粒径D50は1.8μm、最大粒径Dmaxは7.8μm、平均粒径DSEMは0.37μm、BET比表面積は1.01m2/g、タップ密度は3.9g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例9》
オレイン酸をパルミチン酸に、グルタル酸をスベリン酸に変更した以外は製造例7と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末39gを得た。得られた球状銀粉末9の平均粒径D50は1.7μm、最大粒径Dmaxは7.8μm、平均粒径DSEMは0.32μm、BET比表面積は1.00m2/g、タップ密度は3.6g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例10》
銀濃度4重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を18℃に調整し、18℃に調整した硝酸銀水溶液に25重量%に調製したアンモニア水300gを3秒間で加え、銀のアンミン錯体水溶液を生成した。この銀のアンミン錯体水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した銀のアンミン錯体水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン一水和物の80重量%水溶液30gを2秒間で添加することにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン一水和物溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてベンゾトリアゾールを0.3g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別した。さらに、この篩別後の銀粉末に対して0.15重量%のコハク酸を添加し、再度カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、コハク酸を付着させた球状銀粉末を39g得た。
【0070】
上記のようにして得られた球状銀粉末10の平均粒径D50は1.7μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.35μm、BET比表面積は1.49m2/g、タップ密度は3.1g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例11》
コハク酸を添加しなかった以外は製造例10と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末37gを得た。得られた球状銀粉末11の平均粒径D50は2.3μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.36μm、BET比表面積は1.40m2/g、タップ密度は3.1g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例12》
コハク酸をセバシン酸に変更した以外は製造例10と同様の操作を行うことにより、球状銀粉末38gを得た。得られた球状銀粉末12の平均粒径D50は2.2μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.33μm、BET比表面積は1.45m2/g、タップ密度は3.0g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例13》
銀濃度4重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を18℃に調整し、18℃に調整した硝酸銀水溶液に25重量%に調製したアンモニア水300gを3秒間で加え、銀のアンミン錯体水溶液を生成した。この銀のアンミン錯体水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した銀のアンミン錯体水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン一水和物の80重量%水溶液30gを2秒間で添加することにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン一水和物溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてベンゾトリアゾールナトリウム溶液(固形分40重量%)を0.5g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別した。さらに、この篩別後の銀粉末に対して0.2重量%のドデカン二酸を添加し、再度カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、ドデカン二酸を付着させた球状銀粉末を37g得た。
【0071】
上記のようにして得られた球状銀粉末13の平均粒径D50は2.4μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.32μm、BET比表面積は1.52m2/g、タップ密度は3.2g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例14》
銀濃度4重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を18℃に調整し、18℃に調整した硝酸銀水溶液に25重量%に調製したアンモニア水300gを3秒間で加え、銀のアンミン錯体水溶液を生成した。この銀のアンミン錯体水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した銀のアンミン錯体水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン一水和物の80重量%水溶液30gを2秒間で添加することにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン一水和物溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてオレイン酸を0.3g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、硝酸銀水溶液に含まれる銀量の0.05重量%のアジピン酸を添加し、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、アジピン酸を付着させた球状銀粉末を37g得た。
【0072】
上記のようにして得られた球状銀粉末14の平均粒径D50は2.5μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.35μm、BET比表面積は0.96m2/g、タップ密度は3.3g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《製造例15》
銀濃度4重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を18℃に調整し、18℃に調整した硝酸銀水溶液に25重量%に調製したアンモニア水300gを3秒間で加え、銀のアンミン錯体水溶液を生成した。この銀のアンミン錯体水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した銀のアンミン錯体水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン一水和物の80重量%水溶液30gを2秒間で添加することにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン一水和物溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤(表面処理剤)としてベンゾトリアゾールを0.3g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、硝酸銀水溶液に含まれる銀量の0.05重量%のコハク酸を添加し、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末をカッターミル(図示せず)により解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、コハク酸を付着させた球状銀粉末を37g得た。
【0073】
上記のようにして得られた球状銀粉末15の平均粒径D50は2.1μm、最大粒径Dmaxは9.3μm、平均粒径DSEMは0.36μm、BET比表面積は1.55m2/g、タップ密度は3.1g/cm3、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
(2)フレーク状銀粉末の製造
《フレーク状銀粉末1》
銀濃度8重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した硝酸銀水溶液に20重量%に調製したL−アスコルビン酸の水溶液1500gを10秒間かけて攪拌しながら加えることにより銀粒子を析出させた。L−アスコルビン酸の水溶液添加終了の5秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤としてステアリン酸を0.3g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末100gと1/16インチの直径のステンレスボール1000gとをボールミル(図示せず)に入れ、20時間かけて粉砕、篩別することにより、フレーク状銀粉末1を96g得た。得られたフレーク状銀粉末1の平均粒径D50は8.1μm、BET比表面積は0.29m2/g、タップ密度は4.7g/cm3、アスペクト比は9.8、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
【0074】
なお、このフレーク状銀粉末1および後記するフレーク状銀粉末2ないし5の平均粒径D50、BET比表面積、タップ密度および銀粉末に含まれるナトリウムイオン量とカリウムイオン量は上記方法により測定し、アスペクト比については以下に説明するような方法で測定した。
(アスペクト比の測定)
フレーク状銀粉末を走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−5500)により観察して、2000倍に拡大した画像から、10個の銀粉末を無作為に選択して、その粒径(外接円の直径)を計測し、個数平均することにより長辺を求めた。また、同様に2000倍に拡大した画像から、10個の銀粉末を無作為に選択して、その厚みを計測し、個数平均することにより厚みを求めた。このようにして求めた長辺を厚みで除することによりアスペクト比を求めた。
《フレーク状銀粉末2》
上記のようにして得られたフレーク状銀粉末1に対して0.1重量%のアジピン酸を添加し、カッターミルにより解砕し、篩目150μmの振動篩で篩別することにより、アジピン酸を付着させたフレーク状銀粉末2を97g得た。得られたフレーク状銀粉末2の平均粒径D50は8.3μm、BET比表面積は0.27m2/g、タップ密度は4.5g/cm3、アスペクト比は9.4、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《フレーク状銀粉末3》
銀濃度8重量%の硝酸銀水溶液を2000g秤量し、この硝酸銀水溶液の温度を20℃に調整し、20℃に調整した硝酸銀水溶液にヒドラジン−水和物の水溶液100gを5秒間かけて攪拌しながら加えることにより銀粒子を析出させた。ヒドラジン−水和物の水溶液添加終了の3秒後に、上記の銀粒子含有スラリーに分散剤としてオレイン酸を0.5g添加し、ブフナーロート(図示せず)により、ろ過、水洗、脱水した後、真空乾燥機(図示せず)により70℃で20時間乾燥させた。得られた乾燥粉末100gと1/16インチの直径のステンレスボール1000gとをボールミル(図示せず)に入れ、20時間かけて粉砕、篩別することにより、フレーク状銀粉末3を97g得た。得られたフレーク状銀粉末3の平均粒径D50は5.5μm、BET比表面積は0.44m2/g、タップ密度は5.1g/cm3、アスペクト比は6.5、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《フレーク状銀粉末4》
真空乾燥機による乾燥温度を80℃とした以外はフレーク状銀粉末1の製造の場合と同様の操作を行うことにより、フレーク状銀粉末4を95g得た。得られたフレーク状銀粉末4の平均粒径D50は11.9μm、BET比表面積は0.25m2/g、タップ密度は3.5g/cm3、アスペクト比は11.2、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
《フレーク状銀粉末5》
オレイン酸添加量を1.0gとした以外はフレーク状銀粉末3の製造の場合と同様の操作を行うことにより、フレーク状銀粉末5を95g得た。得られたフレーク状銀粉末5の平均粒径D50は2.7μm、BET比表面積は0.78m2/g、タップ密度は5.4g/cm3、アスペクト比は7.6、ナトリウムイオン量とカリウムイオン量は、ともに10ppm未満であった。
(3)加熱硬化型導電性ペースト組成物の作製
(A)銀粉末、(B)加熱硬化性成分、(C)硬化剤および(D)溶剤を下記の表1と表2と表3に示す割合(重量部)で配合し、3本ロールミルで混練してペースト化することにより、実施例1〜15および比較例1〜4の加熱硬化型導電性ペースト組成物を得た。
【0075】
次いで、これらの加熱硬化型導電性ペースト組成物の比抵抗を以下に説明する方法で測定した。
【0076】
すなわち、表1と表2と表3の配合により得られた各実施例および比較例のペーストを用いて、以下のようにして比抵抗の測定用サンプルを作製した。アルミナ基板上に、表1と表2と表3の各配合の導電性ペーストを用いて、図1に示すように、アスペクト比75のパターン1と、5つの2mm×2mmの大きさのパッド2を印刷した。図1において、3と4は正方形の枕電極で、枕電極3から枕電極4に至る線長は37.5mmで、その線幅Lは一定で500μm、線間隔S1は500μm、線間隔S2は750μmである。従って、アスペクト比は、37.5mm/0.5mm=75となる。
【0077】
次に、アルミナ基板を180℃ の熱風乾燥機中で60分間加熱し、導電性ペーストを硬化させた。このようにして、比抵抗の測定用サンプルを得た。
【0078】
そして、パターン1の膜厚を表面粗さ計(東京精密社製サーフコム)で測定し、電気抵抗をデジタルマルチメータ(アドバンテスト社製R6551)で測定し、それら膜厚と電気抵抗とアスペクト比に基づいて比抵抗を算出した。比抵抗が高いと、同じ配線抵抗を得るために膜厚を厚くする必要があり、使用するペーストの量も多く必要になるので、比抵抗は、より低い方が好ましい。比抵抗としては、10μΩ・cm以下が好ましく、9μΩ・cm以下がより好ましく、更に好ましくは8μΩ・cm以下である。この比抵抗の数値を表1と表2と表3に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
表4はフレーク状銀粉末の性状、表1と表2と表3のペースト組成物の作製に使用した物質の商品名または化合物名を示す。
(5)特性の評価結果
比較例1ないし4は多価カルボン酸を付着させていない球状銀粉末とフレーク状銀粉末を使用しているため、いずれも比抵抗が高い。
【0084】
一方、実施例1〜15は、(A)銀粉末と、(B)加熱硬化性成分と、(C)硬化剤とを含有し、(A)銀粉末が、(a1)フレーク状銀粉末と(a2)球状銀粉末からなり、(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸が付着されており、かつ、固形分中における(A)銀粉末の比率が90〜95重量%であるから、高い導電性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の加熱硬化型導電性ペースト組成物は、150〜250℃の温度範囲の加熱により、優れた導電性を備える電極または電気配線を形成することができるため、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極や、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極または電気配線用途に好適である。
【符号の説明】
【0086】
1 印刷パターン
2 パッド
3 枕電極
4 枕電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銀粉末と、(B)加熱硬化性成分と、(C)硬化剤とを含有する加熱硬化型導電性ペースト組成物であって、(A)銀粉末が、(a1)フレーク状銀粉末と(a2)球状銀粉末からなり、(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸が付着されており、かつ、固形分中における(A)銀粉末の比率が90〜95重量%であることを特徴とする加熱硬化型導電性ペースト組成物。
【請求項2】
(a1)フレーク状銀粉末および(a2)球状銀粉末の少なくともいずれか一方の粉末の表面に付着させる多価カルボン酸の付着量は、(A)銀粉末重量に対して0.01〜1重量%であることを特徴とする請求項1記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
【請求項3】
(a1)フレーク状銀粉末の平均粒径D50が2〜20μmであり、BET比表面積が0.1〜1m2/gであり、タップ密度が3〜7g/cm3であり、アスペクト比が5〜15であることを特徴とする請求項1または2記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
【請求項4】
(a2)球状銀粉末の平均粒径D50が0.1〜5μmであり、BET比表面積が0.5〜1.7m2/gであり、タップ密度が2〜5g/cm3であり、凝集度(平均粒径D50/平均粒径DSEM)が2〜15であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
【請求項5】
(A)銀粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量がそれぞれ200ppm未満であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
【請求項6】
(B)加熱硬化性成分がエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−100573(P2011−100573A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253170(P2009−253170)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(397059571)京都エレックス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】