説明

加熱調理器具

【課題】 燃料を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができ、様々な調理が可能な加熱調理器具を提供する。
【解決手段】 加熱調理器具1は、筒状の本体1と、食材200を加熱するために本体2に着脱自在に差し込まれるプレート3とを備え、前記本体内側の側壁には前記プレート3を取付ける高さ位置を変更可能な差込段差部2cが設けられており、本体2の差込段差部2cの最下段とその一つ上の段とに、2枚の蓄熱性プレート31,32(3)が上下に重なり合って差し込まれており、熱源300として薪や炭等の燃料を燃やして火でプレート31を加熱し、熱伝導によってプレート32を加熱し、本体2内の食材200を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源によって加熱することで食材を調理する加熱調理器具に関し、特に、アウトドアでの調理に好適な加熱調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
アウトドアで調理するに際しては、オーブンや電子レンジ等の家庭用の電気調理器が使用できない場合がほとんどであるが、自然の中で薪や炭等の燃料を燃やして火で調理するところにアウトドアの良さがあるともいえる。しかし燃料を燃やして火で調理する場合の問題点としては、火加減が難しいことが挙げられる。特に、ピザ、パイ、パン、ケーキや、肉、魚などの食材(調理する食物)において同時に両面を焼いたり全体を加熱したい場合に、食材の表面を焦がさずに内部まで火が通るように加熱することは難しい。
【0003】
従来、アウトドアでの加熱調理器具として、例えば、特許文献1や特許文献2が開示され文献公知となっている。
【0004】
特許文献1には、鋳鉄製の筒状本体と、本体の上からその下部を嵌り込ませる羽根釜と、本体内側下方に設けられた第1支持爪に係止するロストル(火格子)とを備え、羽根釜でご飯を炊くことができ、また、前記羽根釜を外した後で前記本体を反転させて、本体内側中ほどに設けられた第2支持爪にロストル(火格子)を係止させ、前記第1支持爪にグリル(焼き網)を係止させてバーベキューができるとの記載がある。
【0005】
特許文献2には、側面に開口部を有する蓄熱性の鍋と、フランジを有する蓄熱性の蓋とを備え、ピザやパイ等を加熱調理することができるとの記載がある。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3065297号公報
【特許文献2】特開2006−102488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の加熱調理器は炊飯用の羽根釜を前提としており、特許文献2記載の加熱調理器はピザ等の焼き窯の代用品であるから、調理対象が限定される。また、上述のように、燃料を燃やして火で調理する場合の問題点として、火加減が難しいことが挙げられ、特に、生地を焦がさずに内部まで火が通るように加熱することは難しいが、特許文献1、2記載の調理器具ではこの点については考慮されておらず、加熱加減の調節が難しいことは依然として変わりない。
【0008】
そこで本発明の目的は、燃料を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができ、様々な調理が可能な加熱調理器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加熱調理器具は、筒状の本体と、食材を加熱するために本体に着脱自在に差し込まれるプレートとを備え、前記本体内側の側壁には前記プレートを取付ける高さ位置を変更可能な差込段差部が設けられており、差し込まれた前記プレートを熱源によって加熱することで食材を調理することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記筒状の本体内側の側壁に設けられた差込段差部に前記プレートをその取付け高さ位置を変更可能に差し込んで加熱する構成であるから、燃料を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができる。
【0011】
前記プレートは、食材を加熱するために前記本体に着脱自在に差し込まれる構成部材であり、その形状としては、例えば、板状や皿状等が挙げられる。また、前記プレートは、板状や皿状の構成部材の一部に穴を開けたり板状や皿状の一部を金網とすることができる。
【0012】
前記本体と前記プレートの材質としては、燃料を燃やして火で調理する場合に必要な耐熱性を有し、調理する食材に応じて、適度な熱伝導性がある材質が選定される。前記本体は上下に貫通した筒状となっており、前記本体を上から見た形状としては、円、楕円、三角形、四角形、多角形等が挙げられる。前記プレートは、前記本体を上から見たときの内側形状と概ね一致する形状となっている。前記プレートは、1枚、または2枚以上使用される。
【0013】
前記プレートは、蓄熱性に優れたものが好ましい。ここで、蓄熱性とは、外部からの熱を蓄えることができて、ある程度の時間をかけて外部に熱を放出することができる性質をいい、熱容量が比較的大きなプレートのことである。より具体的には、アルミニウム、鉄、銅等の金属や、セラミックス、石、ガラス等やこれらの複合材料が挙げられる。
【0014】
食材の調理の仕方によっては、食材を前記プレートの上に直接載置する場合や、食材をトレーや内鍋に入れた状態で前記プレートの上に載置する場合や、食材を内鍋に入れた状態で前記プレートの上に隙間が開くように吊り下げる場合等がある。食材を前記プレートの上に直接載置し加熱する場合には、食材への熱伝導率が高くなる。例えば、食材を水に漬けて加熱調理する場合や蒸す場合等では、トレーや内鍋に入れた状態で調理することとなるが、トレーや内鍋を前記プレートの上に載置することで調理しやすくなり、内鍋を前記プレートの上に隙間が開くように吊り下げることで加熱力を抑えることができる。
【0015】
本発明は、前記プレートが重なり合って差し込まれるように前記本体の差込段差部が連続的に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記プレートが重なり合って差し込まれるように前記本体の差込段差部が連続的に設けられている構成であることで、加熱加減の調整のバリエーションが増える。つまり、複数の蓄熱性プレートが上下に重なり合って差し込まれることで、熱容量が増大し、食材を長時間加熱し続けることが容易となる。また、複数の蓄熱性プレートが加熱された状態で、最下段の蓄熱性プレートを取り外して食材の上方になるように前記本体に差し込めば、食材の上下の面を同時に加熱することができる。
【0017】
本発明は、前記プレートの外周側面には所定間隔で突起部が一体的に設けられており、かつ、前記本体の内周方向には前記突起部と対応する複数個所の位置に前記差込段差部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記プレートの外周側面には所定間隔で突起部が一体的に設けられており、かつ、前記本体の内周方向には前記突起部と対応する複数個所の位置に前記差込段差部が設けられている構成であることで、前記プレートと前記本体との接触面積が少なくなり、前記プレートを前記本体にスムーズに出し入れすることができる。
【0019】
本発明は、前記本体が円筒状であるとともに、前記プレートが前記本体に挿通可能な円板状であり、前記突起部が前記差込段差部に差し込まれて位置決めされることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、前記プレートの外周側面と前記本体の内周側面とに僅かな隙間を設けることができ、下からの加熱によって熱せられた空気を上に逃がし、前記本体の内部を素早く温めることができる。
【0021】
本発明は、前記差込段差部が前記本体の上下端部まで連続的に設けられている構成とすることができ、この構成によれば、前記本体の内容積を自在に変えることができ、多様な調理に対応させることができる。
【0022】
本発明によれば、外部加熱手段により加熱された前記プレートを前記筒状本体の任意の高さ位置に配することができるので、複数枚を同時に加熱したり、上方側からも加熱したりすることができる。また、例えば、前記プレートを筒状本体の上下端部で使用することで、大きな食材であっても全体的に加熱することができる。さらに、最上段の前記プレートの上に炭や焚き木を置いて、上下両方向からの外部加熱により内部の食材を加熱することも可能である。また、前記本体を上下対称形状にすることで、上下のいずれを下方にしても同じように使用することが可能となる。
【0023】
本発明は、前記本体の側面には開閉扉が配されており、前記差込段差部に差し込まれた前記プレートが前記開閉扉から外に引き出せることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、前記差込段差部に差し込まれた前記プレートを前記本体の側面に配された開閉扉から外に引き出す構成であるから、前記プレート上に食材を載せた状態でスムーズに安定して引き出すことが容易である。
【0025】
本発明は、前記差込段差部に着脱自在に差し込まれる円板状の蓋板を備え、前記蓋板は同心で複数の板が重なり合って構成され、それぞれの板には、熱せられた空気を逃がすための通気穴が同心で配されていることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、前記差込段差部に着脱自在に差し込まれる円板状の蓋板を備え、前記蓋板は同心で複数の板が重なり合って構成され、それぞれの板には、熱せられた空気を逃がすための通気穴が同心で配されている構成であることから、前記蓋板を構成する上板と下板との回動位置をずらして前記通気穴を塞いで熱せられた空気を前記本体内部に閉じ込めることができ、前記通気穴をすこしずつ開いて熱せられた空気を逃がす量を調節することが容易となる。例えば、前記蓋板を構成する上板と下板との回動位置をずらして前記差込段差部に着脱自在に差し込むことで、前記蓋板が前記本体の所定位置に位置決めされ、前記本体内の圧力が高くなった場合でも前記蓋板が上方向に外れ難くなり、加熱加圧調理ができる。また、例えば、前記下板と前記上板について、片面を凹ませて、その反対面を平らな面としておくことで、ひとつの蓋板で、これら凹ませた面同士を合わせ面として空気の断熱層を形成し、熱を逃がし難くさせる構成や、これら平らな面同士を合わせ面として接触面積を大きくして、伝熱し易くさせる構成を、食材に応じて使い分けることができる。
【0027】
本発明は、前記差込段差部に着脱自在に差し込まれる内鍋又はトレーのいずれかないしは両方を備えることが好ましい。本発明によれば、前記内鍋を備えることで、長時間の煮込み調理ができる。また、前記トレーを備えることで、食材が前記プレートに付着しないようにし易くなる。前記トレーの底面は平板でも良いし、溝や凹凸を設けても良いし、金網を形成しても良い。前記トレーの底面を金網とすることで、魚や肉等の食材の内部まで火が通るように加熱するとともに、食材の表面に焼き目を付けることができる。前記トレーとしては、単なる丸金網や四角形状の金網を使用することができる。
【0028】
本発明の加熱調理器具は、筒状の本体と、食材を加熱するために本体に着脱自在に差し込まれる有底筒状の内鍋とを備え、前記内鍋の外周側面の上方側には所定間隔で突起部が一体的に設けられており、かつ、前記本体内側の側壁には前記内鍋を取付ける高さ位置を変更可能な差込段差部が設けられており、差し込まれた前記内鍋を熱源によって加熱することで食材を調理することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、前記筒状の本体内側の側壁に設けられた差込段差部に前記内鍋をその取付け高さ位置を変更可能に差し込む構成であるから、燃料を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができる。 また、前記プレートを前記内鍋の下に配する構成とすれば、加熱量を一定として長時間加熱することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、前記筒状の本体内側の側壁に設けられた差込段差部に前記プレート又は前記内鍋のいずれかないしは両方をその取付け高さ位置を変更可能に差し込んで加熱する構成であるから、燃料を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができる。
【0031】
本発明によれば、複数の蓄熱性プレートが上下に重なり合って差し込まれることで、熱容量が増大し、食材を長時間加熱し続けることが容易となる。また、複数の蓄熱性プレートが加熱された状態で、最下段の蓄熱性プレートを取り外して食材の上方になるように前記本体に差し込めば、食材の上下の面を同時に加熱することができる。そして、外部加熱手段により加熱された前記プレートを前記筒状本体の任意の高さ位置に配することができるので、複数枚を同時に加熱したり、上方側からも加熱したりすることができる。また、例えば、前記プレートを筒状本体の上下端部で使用することで、大きな食材であっても全体的に加熱することができる。さらに、最上段の前記プレートの上に炭や焚き木を置いて、上下両方向からの外部加熱により内部の食材を加熱することも可能である。また、前記本体を上下対称形状にすることで、上下のいずれを下方にしても同じように使用することが可能となる。さらに、前記プレートを前記内鍋の下に配する構成とすれば、加熱量を一定として長時間加熱することができる。 本発明によって、燃料を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができ、様々な調理が可能な加熱調理器具が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態の加熱調理器具を正面側から示す斜視図である。
【図2】上記実施形態の加熱調理器具を正面側から見た断面図である。
【図3】上記実施形態の加熱調理器具の本体を正面側から見た図であり、開閉扉を開いた状態を示す図である。
【図4】上記実施形態の加熱調理器具の本体を示す平面図である。
【図5】上記実施形態の加熱調理器具のプレートを示す斜視図である。
【図6】上記実施形態の加熱調理器具のプレートを示す平面図である。
【図7】上記実施形態の加熱調理器具のプレートの他の例を示す斜視図である。
【図8】上記実施形態の加熱調理器具の蓋板を示す斜視図である。
【図9】上記実施形態の加熱調理器具の蓋板を示す平面図である。
【図10】上記蓋板の下板を45度回転させた状態を示す平面図である。
【図11】上記実施形態の加熱調理器具の使用態様を正面側から見た断面図である。
【図12】上記実施形態の加熱調理器具の使用態様において最下段のプレートの取付け高さ位置を変更した状態を正面側から見た断面図である。
【図13】上記実施形態の加熱調理器具の使用態様の他の例を正面側から見た断面図である。
【図14】上記第1の実施形態の加熱調理器具の使用態様の他の例に用いられる内鍋を示す斜視図である。
【図15】上記実施形態の加熱調理器具の使用態様の他の例を正面側から見た断面図である。
【図16】上記第1の実施形態の加熱調理器具の使用態様の他の例に用いられるトレーを示す斜視図であり、(a)は金網が形成された網皿であり、(b)は金網のない皿である。
【図17】本発明を適用した第2の実施形態の加熱調理器具の使用態様を正面側から見た断面図である。
【図18】上記第2の実施形態の加熱調理器具の使用態様に用いられる内鍋を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の加熱調理器具1を正面側から示す斜視図である。図2は、上記実施形態の加熱調理器具1を正面側から見た断面図である。図1や図2に示す例は、アウトドアで使用される加熱調理器具1であり、円筒状の本体2と、食材を加熱するために本体に着脱自在に差し込まれるプレート3と、円板状の蓋板4と、取っ手5とを備え、前記本体2の内側の側壁には前記プレート3を取付ける高さ位置を変更可能な差込段差部2cが設けられており、差し込まれたプレート3を、薪や炭等の燃料を燃やして加熱することで食材を調理する構成となっている。
【0034】
図3は、上記実施形態の加熱調理器具1の本体2を正面側から見た図であり、開閉扉7を左右に開いた状態を示す図である。本実施形態では、開閉扉7を開くことによって、前記差込段差部2cに差し込まれた前記プレート3が外に引き出せる構成となっており、また、前記プレート3を差込段差部2cに差し込んで取付ける構成となっている。
【0035】
図4は、上記実施形態の加熱調理器具1の本体2を示す平面図である。本実施形態では、前記本体2は上下に貫通した円筒状となっており、上から見たときに、前記差込段差部2cが本体内側の左側、奥側、右側の3個所に所定間隔で一体的に配されている。前記本体2を上下対称形状にすることで、上下のいずれを下方にしても同じように使用することが可能な構成となっている。前記段差部2cは、上下方向に凸部2aと凹部2bが交互に連続的に配されて棚状に構成されており(図3)、図7に示す円板形状のプレート3の外周を差込段差部2cの凹部2bに水平方向にスライドさせて差し込むか、又は、図6に示す円板形状のプレート3の外周の突起部3aを差込段差部2cの凹部2bに水平方向にスライドさせて差し込む構成となっている(図2)。前記段差部2cは、プレート3が高さ方向に位置決めできて支えられる構成となっていればよいことから、前記段差部2cの配置構成としては、上記以外に、例えば左右2個所に配する構成や、例えば左側、奥側、右側、手前側の4個所に所定間隔で一体的に配される構成としても良い。また前記段差部2cは、前記本体2の内周全域に対して、ある程度の上下長さで上下方向に凸部2aと凹部2bが交互に連続的に配されて棚状に構成されていればよく、筒状本体2の上下端部まで段差部2cが形成されていない場合もある。
【0036】
図5は、上記実施形態の加熱調理器具1のプレート3を示す斜視図である。図6は、上記実施形態の加熱調理器具1のプレート3を示す平面図である。本実施形態では、円板状のプレート3を上から見たときに、外周方向に突出した突起部3aが左側、奥側、右側、手前側の4個所に所定間隔で一体的に配されている。本実施形態によれば、プレート3の外周側面には所定間隔で突起部3aが一体的に設けられており、かつ、本体2の内周方向には突起部3aと対応する複数個所の位置に差込段差部2cが設けられている構成である(図4では、左側、奥側、右側の3個所に差込段差部2cが設けられている)。そして、プレート3の突起部3aが差込段差部2cの凹部2bに差し込まれる構成となっており、この構成によって、プレート3と本体2との接触面積が少なくなり、プレート3を本体2にスムーズに出し入れすることができる。前記プレート3の外周と前記本体2の内周とには僅かな隙間があり、下からの熱を上に少し逃がすことで、本体2の内部を素早く温めることができる。図7は、上記実施形態の加熱調理器具1のプレート3の他の例を示す斜視図であり、この場合は、円板状プレート3自体が、差込段差部2cの凹部2bに差し込まれる構成となっている。
【0037】
前記本体2と前記プレート3の材質としては、燃料を燃やして火で調理する場合に必要な耐熱性を有し、調理する食材に応じて、適度な熱伝導性がある材質が選定され、蓄熱性に優れたものが好ましい。より、具体的には、アルミニウム、鉄、銅等の金属や、セラミックス、石、ガラス等やこれらの複合材料が挙げられる。
【0038】
前記本体2の両方の側面には、取っ手5を係止するための突出部8が本体2の上端側、真ん中、下端側の3個所に、それぞれ配されている(図1、図2)。前記取っ手5は、コの字状を呈し、そのコの字状の両端の腕部の下端側には係止部52が設けられており、腕部の中ほどに係止部53が設けられている(図1、図2)。取っ手5は、その下端側の係止部52を前記本体2の中ほどの突出部8の下側から引っ掛けて係止し、回動させて、腕部の中ほどの係止部53を前記本体2の上端側の突出部8の奥側から引っ掛けて係止する構成となっている。そして、前記本体2をさらに回動させることで、本体2を反転させて、腕部の中ほどの係止部53を本体2の下端側の突出部8の手前側から引っ掛けて係止することもできる。本実施形態によれば、下から加熱したり、上から加熱したり、その加熱位置を変更することができる。なお、取っ手5は、上記実施の形態に限られず、例えば、係止部53を省いた取っ手5を前記本体2の上端側の突出部8の下側から引っ掛けて係止する構成としてもよい。
【0039】
図8は、上記実施形態の加熱調理器具1の蓋板4を示す斜視図である。本実施形態では、前記差込段差部2cに着脱自在に差し込まれる円板状の蓋板4となっており、蓋板4は同心で2つの板41と42とが重なり合って構成される。前記蓋板4を構成する上板41は下板42よりも一回り小さく設定されている。前記上板41には、熱せられた空気を逃がすための通気穴412が中心点対称で複数配されており(図9では通気穴412が4つ配されている)、前記下板42には、熱せられた空気を逃がすための通気穴422が中心点対称で複数配されており(図9では通気穴422が4つ配されている)、これら通気穴412,422が同心で位置がずれるように配されている。
【0040】
図9は、上記実施形態の加熱調理器具1の蓋板4を示す平面図である。前記上板41の側面には、前記段差部2cを通過可能とする切り欠き411が所定間隔で形成されており(図9では左側、奥側、右側の3個所に切り欠き411が形成されている)、前記下板42の側面には、前記段差部2cを通過可能とする切り欠き421が所定間隔で形成されており(図9では左側、奥側、右側の3個所に切り欠き421が形成されている)、切り欠き421は切り欠き411よりも深い切り欠きとなっており、これら切り欠き411,421が同心で配されている。上板41の上面には、コの字状のガイド棒44が取付けられており、下板42の中央に取付けられたT字形状の持ち手43を回動自在にガイドしている。図8,図9に示す例では、ガイド棒44を持ちながら、持ち手43を45度回動させると、通気穴412と通気穴422の位置が一致して貫通穴となり、それと同時に、下板42の切り欠き421の一部が上板41の外周で覆われることとなる(図10)。また、前記持ち手43の回動角度を45度から少しずらした角度とすることで、通気穴412と通気穴422の重なり合う位置をずらすことができ、上記貫通穴の大きさを微調整することができる。前記蓋板4を、図9に示すように切り欠き411と421の位置を一致させて前記本体2の上から挿入し、図10に示すように切り欠き411と421の位置を異ならせて前記本体2の差込段差部2cに取付ける(図2)。
【0041】
本実施形態によれば、前記蓋板4を構成する上板41と下板42との回動位置をずらして前記通気穴412,422を塞いで熱せられた空気を本体2の内部に閉じ込めることができ、これら通気穴412,422が重なって出来る通気穴をすこしずつ開いて熱せられた空気を逃がす量を調節することが容易となる。そして、前記蓋板4を構成する上板41と下板42との回動位置をずらして前記差込段差部2cに着脱自在に差し込むことで、前記蓋板が前記本体の所定位置に位置決めされ、前記本体2内の圧力が高くなった場合でも蓋板4が上方向に外れ難くなり、加熱加圧調理ができる。本発明の実施形態は、上述の実施形態に限られず、例えば、前記下板42と前記上板41について、片面を凹ませて、その反対面を平らな面としておくことで、ひとつの蓋板4で、これら凹ませた面同士を合わせ面として空気の断熱層を形成し、熱を逃がし難くさせる構成や、これら平らな面同士を合わせ面として接触面積を大きくして、伝熱し易くさせる構成を、食材に応じて使い分ける構成としてもよい。
【0042】
(実施例1)
図11は、上記実施形態の加熱調理器具1の使用態様を正面側から見た断面図である。図11に示す例では、本体2の差込段差部2cの最下段とその一つ上の段とに、2枚の蓄熱性プレート31,32(3)が上下に重なり合って差し込まれており、熱源300として薪や炭等の燃料を燃やして火でプレート31を加熱し、熱伝導によってプレート32を加熱し、本体2内の食材200を加熱する。本実施例によれば、プレート3を複数重なり合って差し込むことで、プレート3の熱容量が増大するので、食材200を長時間加熱し続けることが容易となる。本実施例によれば、例えば、肉や魚を焦がさずに適度な温度で長時間加熱することが可能となる。
【0043】
また、図12に示すように、複数の蓄熱性プレート31,32(3)が加熱された状態で、最下段の蓄熱性プレート31を取り外して食材200の上方になるように本体2の差込段差部2cに差し込めば、食材200の上下の面を同時に加熱することができる。さらに、最上段の前記プレート31の上に炭や焚き木を置いて、上下両方向からの外部加熱により内部の食材200を加熱することも可能である。本実施例によれば、例えば、ピザ、パイ、パン、ケーキ等の両面を適度な温度で加熱することが可能となる。
【0044】
(実施例2)
図13は、上記実施形態の加熱調理器具1の使用態様の他の例を正面側から見た断面図である。実施例2では、図14に示すような浅底の内鍋9を使用する。前記内鍋9は、その外周側面の上方側には所定間隔で突起部9aが一体的に設けられており(図14)、前記プレート3の上方に前記内鍋9が差し込まれる構成となっている(図13)。図13に示す例では、本体2の差込段差部2cの最下段とその一つ上の段とに、2枚の蓄熱性プレート31,32(3)が上下に重なり合って差し込まれており、薪や炭等の燃料300を燃やして火でプレート31を加熱し、熱伝導によってプレート32を加熱し、本体2内の食材200を加熱する。本実施例によれば、プレート3を複数重なり合って差し込むことで、プレート3の熱容量が増大するので、食材200を長時間加熱し続けることが容易となる。本実施例によれば、例えば、長時間の煮込み調理ができる。
【0045】
(実施例3)
図15は、上記実施形態の加熱調理器具1の使用態様の他の例を正面側から見た断面図である。実施例3では、図16(a)(b)に示すようなトレー19を使用する。図16(a)に示すトレー19は、底面19dに金網が形成された網皿となっており、その外周側面には所定間隔で突起部9aが一体的に設けられており、前記プレート3の上方に前記トレー19が差し込まれる構成となっている(図15)。本実施例によれば、例えば、魚や肉等の食材の内部まで火が通るように加熱するとともに、食材の表面に焼き目を付けることができる。なお、前記トレー19は、図16(a)に示す網皿に限られず、単なる丸金網を使用することができる。また、図16(b)に示すような網のない皿状のトレー19とし、その外周側面に所定間隔で突起部9aを一体的に設ける構成とする場合もある。
【0046】
(第2の実施形態)
図17は、本発明を適用した第2の実施形態の加熱調理器具1を正面側から示す斜視図である。第2の実施形態では、図18に示すような深底の内鍋9を使用する。ここで、同一の符号は同じ機能を指しており、その説明を適宜省略する。本実施形態では、前記筒状の本体2の内側の側壁に設けられた差込段差部2cに前記内鍋9をその取付け高さ位置を変更可能に差し込む構成であるから、燃料300を燃やして火で調理する場合など外部加熱手段に加熱加減を調整する手段がないとしても、加熱加減を調節することができる。図17に示す例では、前記プレート3は使用せず、燃料300を燃やして内鍋9を、直接加熱する構成となっている。また、最上段の前記蓋板4の上に炭や焚き木を置いて、上下両方向からの外部加熱により内部の食材200を加熱することも可能である。本実施形態によれば、例えば、ビーフシチューやカレー等の加圧加熱調理が可能となる。
【0047】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では円筒状の本体2としたが、これに限定されず、本体2を上から見た形状としては、楕円、三角形、四角形、多角形等とすることができる。また上述の実施形態では円板状プレート3としたが、前記プレート3は、食材を加熱するために本体2に着脱自在に差し込まれる構成部材であり、その形状としては、板状に限定されず、皿状としてもよい。そして上述の実施形態では開閉扉7の内側には差し込み段差部2cがない例で説明したが、開閉扉7の内側に差し込み段差部2cを配置する構成としても良い。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 加熱調理器具、
2 本体、
2c 差込段差部、
3、31、32 プレート、
4 蓋板、
5 取っ手、
7 開閉扉、
9 内鍋、
19 トレー(網皿)、
200 食材、
300 熱源(燃料)、
412 通気穴、
3a、9a 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体と、食材を加熱するために本体に着脱自在に差し込まれるプレートとを備え、前記本体内側の側壁には前記プレートを取付ける高さ位置を変更可能な差込段差部が設けられており、差し込まれた前記プレートを熱源によって加熱することで食材を調理することを特徴とする加熱調理器具。
【請求項2】
前記プレートが重なり合って差し込まれるように前記本体の差込段差部が連続的に設けられていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器具。
【請求項3】
前記プレートの外周側面には所定間隔で突起部が一体的に設けられており、かつ、前記本体の内周方向には前記突起部と対応する複数個所の位置に前記差込段差部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の加熱調理器具。
【請求項4】
前記本体が円筒状であるとともに、前記プレートが前記本体に挿通可能な円板状であり、前記突起部が前記差込段差部に差し込まれて位置決めされることを特徴とする請求項3記載の加熱調理器具。
【請求項5】
前記差込段差部に着脱自在に差し込まれる円板状の蓋板を備え、前記蓋板は同心で複数の板が重なり合って構成され、それぞれの板には、熱せられた空気を逃がすための通気穴が同心で配されていることを特徴とする請求項4記載の加熱調理器具。
【請求項6】
前記本体の側面には開閉扉が配されており、前記差込段差部に差し込まれた前記プレートが前記開閉扉から外に引き出せることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の加熱調理器具。
【請求項7】
前記差込段差部に着脱自在に差し込まれる内鍋又はトレーのいずれかないしは両方を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の加熱調理器具。
【請求項8】
筒状の本体と、食材を加熱するために本体に着脱自在に差し込まれる有底筒状の内鍋とを備え、前記内鍋の外周側面の上方側には所定間隔で突起部が一体的に設けられており、かつ、前記本体内側の側壁には前記内鍋を取付ける高さ位置を変更可能な差込段差部が設けられており、差し込まれた前記内鍋を熱源によって加熱することで食材を調理することを特徴とする加熱調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−94471(P2013−94471A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240813(P2011−240813)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(511266438)
【Fターム(参考)】