説明

加熱調理器

【課題】 誘導加熱と高周波加熱とを併用した加熱調理器において、調理庫内への容器の出し入れを行い易くするとともに、調理途中の容器内の食品の撹拌や調味料の添加などの作業性も高める。
【解決手段】 縦開き式のドア4を全開にした状態で調理者が所定のキー入力操作を行うと、調理庫3の後方下部に配設されたトレイ搬送機構50の摺動体52が前方に移動し、その前端に設けられた当接片53がトレイ7の後端を押すことによりトレイ7を前方にスライド移動させる。最大移動位置を通過すると摺動体52は後退し、トレイ7はその前部が調理庫3の底面部3bから前方にせり出した位置に残る。加熱対象の容器90は前方にせり出したトレイ7の上に置けばよいから、調理庫3が邪魔になりにくく容器90の出し入れが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理庫内に収納された食品を加熱調理するために高周波加熱部と誘導加熱部とを併せ持つ複合型の加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジはマイクロ波により食品を直接高周波加熱するため、温め加熱などの高速調理には非常に効果を発揮するものの、食品に焦げ目を付けることができず、焦げ目付け調理には不向きであった。一方、近年普及が進んでいる誘導加熱(IH)調理器は誘導加熱により磁性金属製の鍋などを加熱して調理を行うため、焦げ目付け調理や煮炊き調理などに最適である。そこで、上記のような高周波加熱による加熱調理の欠点を補うために、誘導加熱調理を併用した複合型の加熱調理器が従来より知られている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の加熱調理器では、略箱形状の調理庫の底面の下方に誘導加熱コイルが配置され、該コイルから発生した磁束により調理庫底面上に載置された調理皿を誘導加熱することができるようになっている。他方、調理庫の側面の外方にはマグネトロンが配置され、該マグネトロンから発生したマイクロ波が調理庫側面に形成された給電口を経て調理庫内に供給され、それによって調理皿上に置かれた食品を高周波加熱することができるようになっている。
【0004】
この種の加熱調理器は、誘導加熱可能な構造の鍋やフライパンなどの容器内に収容された食品に対し、焦げ目付け調理や煮込み調理を行うのに好適である。こうした容器はそれ自体がかなり重い上に、加熱対象の内容物(食品)が収容された状態ではさらに一層重くなる。そのため、食品が収容された重い容器を箱形状の調理庫の内部に収納したり、逆にその容器を調理庫内から取り出したりするのは労力を要する作業である。
【0005】
また、こうした調理の場合、容器への内容物(食品)の焦げ付きを防止するために調理途中で内容物を撹拌したり裏返したり、或いは調味料などを添加したりする必要が生じることが多い。しかしながら、上記のような従来の加熱調理器はそうした調理に伴う各種作業の作業性があまり考慮されていないため、調理者が調理庫内の狭い空間に手を入れて作業を行ったり、或いは容器を一旦調理庫から取り出して作業を行ったりする必要がある。そのため、作業性が悪く、高温になっている容器に手が触れるおそれもある。或いは、容器を調理庫から一旦取り出すことによって食品の温度が下がり、調理時間が長引いたり食味を損なったりすることもある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−327260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のように高周波加熱と誘導加熱とを併用した加熱調理器に特有の課題を解決するために成されたものであり、その主な目的とするところは、調理庫の内部へ重い又は大きな被加熱物を出し入れする作業の労力を軽減することができるとともに、調理途中の食品の撹拌や調味料の添加などの作業を行い易くすることができる加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る加熱調理器は、外形を成す筐体と、該筐体の内部に設置され、被加熱物を出し入れするための前面開口を有する調理庫と、該調理庫の前面開口を閉塞することで該調理庫を略密閉するドアと、前記調理庫の内部に収容された被加熱物を高周波加熱するための高周波加熱手段と、前記調理庫内に収容された被加熱物を誘導加熱するために該調理庫の底面の下方に配設された誘導加熱コイルを含む誘導加熱手段と、を具備する加熱調理器において、
上に被加熱物を載置するために前記調理庫の底面上に配置され、前記誘導加熱コイルで発生した磁束を通過させる材料から成るトレイと、
前記ドアが開放された状態で、前記トレイを前記調理庫内部の所定の収納位置から少なくともその前部が調理庫の外側に出るまで前方にスライド移動させるトレイ搬送手段と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加熱調理器では、例えば調理対象の食品を収容した容器等の被加熱物を載置するためのトレイが調理庫の底面上に用意されている。このトレイは磁束を通過させる材料から成るため、誘導加熱コイルに加熱電流を供給することでトレイ上に載置された被加熱物(例えば磁性金属から成る容器)は良好に誘導加熱される。ドアを閉鎖した加熱調理時にはトレイは調理庫内の所定の収納位置にあるが、調理者がドアを開いて調理庫の前面開口を開放した状態でトレイ搬送手段が作動すると、トレイ搬送手段はトレイを前方にスライド移動させる。そして、少なくともトレイの前部が調理庫の前方外側に出るまでトレイを移動させた状態で停止させる。
【0010】
このように本発明に係る加熱調理器によれば、加熱対象の食品や内部に食品が収容された容器等の被加熱物を載置する位置を調理庫に対して相対的に前方にすることができるため、そうした被加熱物をトレイ上に置いたり逆に取り出したりする際に調理庫の天面や側面が邪魔になりにくく、そうした作業を容易に且つより少ない労力で以て行うことができる。
【0011】
また鍋等の容器の内部に収容された食品の加熱調理を行う場合、トレイが前方にスライド移動すると、トレイ上に載置された容器の上面開口の一部又は全部が調理庫の外側に露出する。そのため、該容器をトレイ上に載せたままで容器内の食品を撹拌したり調味料を添加したりするといった調理作業が容易に行え、そうした作業の終了後に迅速にトレイを元の収納位置に戻してドアを閉め、加熱調理を続行することができる。それにより、調理途中での各種作業が容易に且つ効率良く行えるとともに、食品がさめにくいので食味を良好に維持することができる。
【0012】
本発明に係る加熱調理器では、例えば調理者によるドアの開放操作と連動してトレイを前方にスライド移動させてもよいが、好ましい一態様として、前記トレイの前方へのスライド移動動作を指示するための操作手段と、該操作手段の操作に応じて前記トレイ搬送手段を作動させる制御手段と、をさらに備える構成とするとよい。
【0013】
この構成によれば、調理者がトレイ上に被加熱物を載置したいとき、被加熱物を取り出したいとき、或いは、撹拌、裏返し、調味料添加などの調理作業を行いたい等、必要なときに操作手段を操作してトレイを前方にスライド移動させることができる。したがって、不要なときにトレイが前方に飛び出して邪魔になることがない。
【0014】
なお、調理庫の底面とトレイの下面との間の摩擦が大きいと、トレイを前方にスライド移動させるためにより大きな力を要する。特にトレイ上に載置される被加熱物の重量が大きくなると、摩擦によりトレイが移動しにくくなる。そこで、トレイの前後方向の移動を円滑に行うために、前記調理庫の両側面内側に前記トレイを前後方向に移動自在に支持するガイドを備える構成とするとよい。
【0015】
ガイドはトレイとの接触部分の摩擦が小さいように、例えば摩擦係数の小さな合成樹脂などから成るものとするとよい。この構成では、トレイの下面は調理庫の底面に軽く接触していてもよいが、基本的にはその摩擦によってはトレイのスライド移動は妨げられず、トレイはガイドに沿って円滑に前後方向に移動する。それにより、トレイ搬送手段の駆動力をそれほど大きくしなくても、トレイを円滑にスライド移動させることができる。また、例えば調理者がトレイを手動で調理庫内に収納したり引き出したりする際にも、その労力を軽減することができる。
【0016】
前記トレイ搬送手段はトレイをスライド移動させることが可能な構成であれば様々な形態をとることができるが、本発明に係る加熱調理器の一態様として、前記トレイ搬送手段は、駆動源としてのモータ、前記トレイの後端部に当接して該トレイを後方から前方に押し出す押圧部と、前記モータの回転駆動力を前記押圧部の前後方向の直線往復運動に変換する駆動力変換手段と、を含む構成とすることができる。
【0017】
この構成では、トレイを前方にスライド移動させるためにトレイの後端部を後方から押せばよいだけであるので、トレイ搬送手段は簡単な構造となり、小型化、薄型化、軽量化を達成することができる。これにより、調理庫と筐体との間の空間での設置スペースが小さくて済む。また、空間に余裕のない調理庫の両側方や下方ではなく、比較的空間に余裕のある調理庫後方にトレイ搬送手段を配置することができる。また、構造が簡単であることにより、故障も少なく高い信頼性を確保することができる。
【0018】
また上記構成の一態様として、前記トレイ搬送手段にあって、前記押圧部は前記調理庫内で前後方向に往復移動可能であり、前記モータ及び前記駆動力変換手段は前記調理庫の後面と前記筐体の後面との間の空間に配置されている構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、調理庫内にモータや駆動力変換手段を構成する部材が存在しないので、こうした部材が高周波加熱や誘導加熱の妨害となることを回避できる。また、こうした部材がこぼれた食品などによって汚れることがないので、高い信頼性を長期間に亘って維持し易い。
【0020】
また、本発明に係る加熱調理器において、前記調理庫の前面開口はその上端部が下端部よりも後退するように傾斜状に形成されている構成とすることができる。
【0021】
この構成によれば、トレイを前方にスライド移動させた際にも調理庫の上部が後退している分だけトレイ上の容器の上面開口の露出面積が広くなる。換言すれば、トレイの前方へのスライド移動量が相対的に小さくても、容器上面開口の露出面積を広くとることができる。したがって、容器内を前方から覗き込み易く、調理途中の容器内の食品の状態を目視で確認し易くなる。また、容器内の食品を撹拌したり調味料などを添加したりする際に、調理庫の天面の前部が邪魔になりにくいので、そうした調理作業が一層行い易く、容器や調理庫内面に調理者の手が触れにくくなる。
【0022】
また本発明に係る加熱調理器において、前記ドアは縦開き式のドアであって、該ドアを全開したときに略鉛直上方を向く該ドアの内面と前記調理庫の底面とがほぼ面一の水平状態となる構成とすることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、縦開き式のドアを全開させると、手前側に倒れたドアの上面が調理庫の底面からほぼ水平に前方に延展する台となるので、前方にスライド移動させたトレイがそのドアの上面の上に載り、トレイを安定させることができる。
【0024】
さらにまた、本発明に係る加熱調理器では、前記ドアが全開状態であることを検知する開放検知手段を備え、前記制御手段は、前記開放検知手段により前記ドアが全開状態であると検知されたときに前記トレイ搬送手段によるトレイの前方移動動作を許可する構成とすることが好ましい。
【0025】
この構成では、ドアが完全に開放されていない状態で例えば調理者が上記操作手段を誤って操作したときに、制御手段は、開放検知手段の検知信号によりドアが全開状態でないことを認識し、操作手段の操作を無視してトレイ搬送手段によるトレイの前方移動動作を許可しない。それにより、ドアに阻止されてトレイが前方にスライド移動し得ない状態でトレイ搬送手段が作動することが回避されるので、トレイ搬送手段に無理な負荷が掛かって破損に至ったり、トレイがドアに接触してトレイやドアが破損したりすることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例である加熱調理器について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本実施例の加熱調理器においてドアを閉鎖した状態の外観斜視図、図2は本実施例の加熱調理器においてドアを全開した状態(食品を収容した容器有り)での外観斜視図、図3はドアを全開した状態(食品を収容した容器無し)での正面図(a)及び右側面図(b)、図4は筐体の一部である外装カバーを取り外した状態の外観斜視図、図5はドアを全開にした状態での調理庫内部の様子を示す要部の上面透視図、図6はドアを閉鎖した状態での要部の右側面縦断面図、図7はトレイのせり出し動作を説明するための要部の右側面縦断面図である。
【0028】
図1〜図3に示すように、この加熱調理器1は外形を形成する前面が傾斜した箱形状の筐体2を有し、筐体2の内部には前面が開放された調理庫3が形成されている。即ち、調理庫3の前面開口はその上端部が下端部よりも後退した傾斜状になっており、この調理庫3の前面開口は、前方下部に左右方向に延伸する水平軸を中心に回動自在である縦開き式のドア4により開閉される。ドア4の中央には調理庫3内部を透視可能な耐熱ガラス製の窓4aが設けられている。また、筐体2の前面上部でドア4の閉鎖時にも隠れない位置には、複数の操作キーが配置されたキー入力部5aとセグメントLCDなどによる表示部5bとを有する操作パネル5が左右に細長く配設されており、調理者はキー入力部5aで各種の加熱調理条件や運転開始・停止などを指示し、表示部5bにはそうした加熱調理条件や運転残り時間などが表示されるようになっている。
【0029】
なお、操作パネル5はその一部又は全ての機能をドア4の前面に配置してもよい。但し、ドア4を開放するとドア4前面は調理者から見えなくなるため、ドア4開放時にも必要となる可能性のある機能については筐体2の前面上部に設け、ドア4開放時に不要な又は重要でない機能についてはドア4前面に設けるとよい。例えば、ドア4開放時にも表示が見えるように表示部5bは筐体2の前面上部に配置し、後述する誘導加熱のための操作キーもドア4ではなく筐体2の前面上部に配置するとよい。一方、高周波加熱やヒータ加熱のための操作キーはドア4を閉めた状態で操作されるようにドア4に設けるとよい。
【0030】
図4に示すように、筐体2を構成する外装カバーの内部には、天面部3a、底面部3b、左側面部3c、右側面部3d、前面部3e、後面部3fから成る調理庫3が設置され、この調理庫3内に収容された被加熱物を加熱調理するための後述する各加熱ユニットや電気回路等は、調理庫3の外側、つまり調理庫3を構成する上記各部と筐体2との間の空間に配置されている。
【0031】
左側面部3c及び右側面部3dの下部には調理庫3の内方に突出して略L字状のトレイガイド11が左右一対に形成され、その上には2段のレール12、13が同様に左右一対に形成されている。トレイガイド11は、主として高周波加熱と誘導加熱の併用による加熱調理のために、被加熱物である食品が収容され、少なくとも底部が誘導加熱可能な鉄やステンレスなどの磁性金属で形成された容器90を上に載置する角皿状のトレイ7を前後に摺動自在に保持するためのものであり、トレイ7を良好に摺動させるために摩擦係数の小さなポリフェニレンサルファイド(PPS)やテフロン(登録商標)などの樹脂が使用されている。トレイ7は後述の誘導加熱のために磁束を通過させる材料であって、且つマイクロ波により加熱されにくいように低損失の誘電体材料から構成され、ここでは耐熱セラミックガラス製である。また、レール12、13は主としてオーブン調理用などの焼皿やグリル皿を調理庫3内に架設するためのものである。
【0032】
図5に示すようにトレイ7が調理庫3内に適切に収容された状態では、トレイ7の左右両縁部に延設されたフランジ7aはトレイガイド11の上に載っており、このトレイガイド11に沿って前後に円滑に移動可能となっている。このトレイ7の上へ重量物である容器90を置き易いように、また調理中に一旦加熱を中断して容器90内の食品の状態を見たり調味料等を添加したり或いは撹拌したりし易いように、トレイ7を自動的に前方にせり出させるためのトレイ搬送機構50が本発明におけるトレイ搬送手段として調理庫3の後面部3fの下部後方に設けられているが、これについては後で詳述する。なお、図5では容器90に隠れて見えないが、トレイ7の上面には鍋等の容器を置く適切な位置を示す目印として円形状のマーキング7bが施されており、そのマーキング7bに合わせて容器を載置したときに最も適切な誘導加熱が行われるようになっている。したがって、以下の説明では、原則として容器90はこのマーキング7bに従ってトレイ7上に置かれる場合を想定する。
【0033】
図3及び図5に示すように、調理庫3の底面部3bの寸法は奥行き:Ld、横幅:Lwであり、高さはLhである。特に底面部3bの横幅Lwは奥行きLdよりも大きく形成されている。これは、図5に示すように容器90として両手鍋を使用したときに、その両手鍋の把手90a、90bが両側面部3c、3dとの間に十分な間隙La、Lbを有するように考慮された結果であり、それによって両手鍋をトレイ7上に載置する際又は逆に取り出す際に調理者が鍋の両把手90a、90bを余裕を以て掴めるようになっている。もちろん、トレイ7の上面に形成される上記マーキング7bも、上述のように容器90の両把手90a、90bの側方の間隙La、Lbが十分に確保できるような位置に施されており、典型的には、その位置はトレイ7の中央付近である。
【0034】
また、調理庫3の前面開口が傾斜状に形成されている理由の1つも上記と同じ理由である。即ち、このように前面部3eを傾斜させたことにより、図7(a)に示すように、調理庫3の前面開口の上縁部(天面部3aの前縁部)の位置Pbは調理庫3の前面開口の下縁部(底面部3bの前縁部)の位置Paよりも距離Dだけ後退している。この位置Pbは、容器90が載置されたトレイ7がその搬送範囲の最前部までせり出した状態において、前後方向に容器90の略中央部とほぼ一致する又はそれよりも後部側の位置になるように決められており、距離Dは位置Pbと容器90とが上記位置関係を満たすようになっている。こうした構成により、ドア4を開放しない状態でも窓4aを通して、トレイ7上に載置された容器90の上面が斜め上部前方から覗き込み易くなっている。また、図7(a)に示すように調理庫3内にトレイ7が収納された状態でも、容器90内の食品を調理者が撹拌したり調味料を加えたりする際の作業が行い易くなっている。
【0035】
さらにまた、図7(b)に示すようにトレイ7が前方にせり出した状態では、容器90の上面の半分程度以上が上から覗けるようになっている。それによって、調理者が容器90内の食品の調理状態を一層確認し易く、撹拌や調味料の添加などの作業も一層行い易い。またこの状態では、容器90の把手90a、90bが前面開口の近傍に位置しているか、或いは場合によっては前面開口から把手90a、90bの一部又は全部が外側に出ているので、調理者が両手鍋の把手90a、90bを持って容器90を調理庫3内に出し入れする作業も非常に容易である。
【0036】
この加熱調理器1では、誘導加熱、高周波加熱、及びヒータ加熱(オーブン加熱又はグリル加熱と呼ぶ場合もあるが本明細書ではヒータ加熱と呼称する)の3種類の異なる方式による加熱調理を行うために、それぞれに独立した加熱ユニットが設けられている。即ち、図6に示すように、調理庫3の底面部3bの下方であってその略中央には、トレイ7上に載置された容器90を誘導加熱するための誘導加熱ユニット20が設けられている。また、調理庫3の後面部3fの後方には、調理庫3内に収容された食品をヒータ加熱するためのヒータ加熱ユニット40が設けられている。さらに、調理庫3の後面部3f後方の左上部及び天面部3a上方には、調理庫3内に収容された(例えば容器90内の)食品を電子レンジ調理するための高周波加熱ユニット30が設けられている。
【0037】
図14は本実施例の加熱調理器1の電気系のブロック構成図である。本発明における制御手段としての制御部70はマイクロコンピュータを中心に構成されており、インバータ駆動部71を介して、上記誘導加熱ユニット20に含まれるインバータ回路73を駆動しインバータ回路73の構成の一部となる誘導加熱コイル24に高周波電流を流すとともに、インバータ回路74を駆動して駆動電力を上記高周波加熱ユニット30に含まれるマグネトロン31に供給して駆動する。また、制御部70は負荷駆動部72を介して、高周波加熱ユニット30に含まれるアンテナ駆動モータ35、ヒータ加熱ユニット40に含まれるヒータ43及びファンモータ45、さらにはトレイ搬送機構50に含まれるトレイ搬送モータ57のほか、後述する吸気ダクト9に空気を送り込むための冷却用ブロアモータ77の動作を制御する。
【0038】
また、制御部70には、キー入力部5aよりキー入力信号が、本発明における開閉検知手段に相当するドアスイッチ75よりドア4の開閉状態を認識するドア開放検知信号が、温度センサ76より調理庫3内の温度検知信号が、トレイ搬送機構50に含まれるトレイ搬送位置検知スイッチ(マイクロスイッチ)60より位置検知信号がそれぞれ入力され、さらには表示部5bに対し運転コースの設定情報や運転状況などについての表示制御信号を出力して表示を行わせる。制御部70は運転プログラムが格納されたROMを備えており、この運転プログラムをCPU上で実行する過程で、上記のような各種の入力信号により調理者の操作や本機器の動作状態を監視しながら上記各部の動作を制御する。
【0039】
次に、上記3つの加熱ユニットのうち、まず誘導加熱ユニット20について図8及び図9によりその構成と動作を詳述する。図8(a)は本実施例の加熱調理器1の正面縦断面図、図8(b)は図8(a)中のA部の拡大図、図9は誘導加熱ユニット20の主要部の分解構造図である。
【0040】
図9に示すように、調理庫3の底面部3bは、略中央に八角形状に絞り加工で形成した凹部201が形成され、その中央が大きく円形状に開口した開口部202を有するステンレス(SUS304)製の主底板200と、所定径の小孔204が多数形成された同じくステンレス(SUS304)製のパンチング板203とから成り、両者はスポット溶接等の溶着によって一体化されている。上記パンチング板203は、凹部201に嵌め込まれる載置台21と下部に設けられたグラスウールから成る円板状の断熱材22で挟持される。載置台21はトレイ7と同様に、誘導加熱のために磁束を通過させるものである必要があり、高周波加熱されにくいように低損失の誘電体材料である必要がある。また、耐熱性も必要である。そこで、ここでは載置台21は結晶ガラスから構成されている。
【0041】
載置台21の周縁部と凹部201の内壁との間には隙間があるが、この隙間はシリコーン樹脂26により充填されており、それによって調理庫3の底面はほぼ平坦化されている。また、この隙間を緊密に塞ぐことで、食品の残滓やゴミなどが隙間に入り込むことを防止できる。
【0042】
断熱材22の下方には、薄いマイカシート等の絶縁板23を挟んで平板渦巻き状に巻回されて成る誘導加熱コイル24が配設されている。断熱材22、絶縁板23、及び誘導加熱コイル24は、主底板200の下面にネジ等で固定されるポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン(ポリカABS、PC/ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、フェノール樹脂などの合成樹脂製のホルダ25により、下方から主底板200の下面に押し付けられるように保持されている。
【0043】
この実施例では主底板200の板厚は0.5mmであり大きな重量の容器が載せられても十分な強度を有する。一方、パンチング板203の板厚は主底板200の板厚よりも薄い0.1mmであって主底板200と比べると強度的に劣る。しかしながら、パンチング板203は、ホルダ25により、誘導加熱コイル24及び断熱材22を介して下方から押し付けるように保持されているので、載置台21と断熱材22とで挟持された状態となっており補強がなされている。また、このようにして誘導加熱コイル24を固定することにより、底面部3bと誘導加熱コイル24との高さ方向の離間距離の個体差を少なくすることができる。
【0044】
パンチング板203はその下方の誘導加熱コイル24から発生する磁束を通過させる一方、後述するように調理庫3内に供給されるマイクロ波を阻止する機能を有する。このような磁束の通過効率の条件は、主としてパンチング板203の開口率と板厚とによって決まり、一方、マイクロ波の通過阻止条件は、主としてパンチング板203の小孔204の径と板厚とによって決まる。したがって、こうした要素を適宜に設定する必要がある。ここでは、1.4mm径の小孔を1.7mm間隔で設けたものを使用している。但し、板厚が薄い条件の下では必ずしも小孔が形成されていなくても、磁束は通過し得る。
【0045】
図13は、金属製の薄板を介して誘導加熱を行う場合について、その薄板の板厚、小孔の開口率、及び金属薄板無しで誘導加熱を行うときの電力に対する金属薄板を介して誘導加熱を行うときの電力の比、即ち電力比の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。この図では、電力比が1.0が損失が無い状態を示す。具体的には、例えば本実施例のように板厚が0.1mmである場合、開口率が50%であれば電力損失は10%だけであり、開口が全くない場合でも電力損失は18%程度である。板厚を0.05mmまで薄くすることが可能であれば開口が無くても電力損失は10%程度に抑えられる。もちろん、板厚を薄くするほど強度が落ちるから、こうした条件も加味して適当な板厚、開口率(小孔のサイズと間隔)を決めればよい。
【0046】
上記構成の誘導加熱ユニット20において、制御部70の制御の下に動作するインバータ駆動部71によりインバータ回路73から誘導加熱コイル24に高周波電流が流されると交番磁束が発生し、その磁束はパンチング板203及び載置台21を通過して調理庫3内に侵入し、さらにトレイ7を通過して少なくとも底部が磁性金属で形成された容器90の底部を横切る。その誘導作用によって容器90の底部に渦電流を誘起させ、ジュール熱により該容器90を加熱し、その容器90内に収容されている調理対象の食品を加熱する。このとき、容器90の熱は載置台21及びパンチング板203に伝わるがその下方の断熱材22により遮断されるため、伝導してきた熱によって誘導加熱コイル24が高温になることを防止することができる。また、容器90の加熱出力は容器90底面と誘導加熱コイル24との距離にも依存するが、上述したように誘導加熱コイル24がホルダ25により底面部3bに対して固定されていることで上記距離の個体差が小さく、振動等によっても変動しないので安定した誘導加熱を行うことができる。
【0047】
このようにして、トレイ7に載置された容器90内の食品を誘導加熱により調理することができる。このときには、誘導加熱の対象は容器90であって厳密に言えば被加熱物は容器90であるが、容器90内に収容された食品は間接的に加熱されるため、この食品が被加熱物であるとみなすことができる。この誘導加熱では容器90自体が高温になるので、例えば容器90に接触した肉、魚などの食品に焦げ目を付けた焦げ目調理を行うことができる。
【0048】
なお、前述の誘導加熱コイル24は、図7(a)に示すように調理庫3内にトレイ7が収納された状態で、トレイ7に設けられたマーキング7bの下方に位置するように、調理庫の底面部3b下方に誘導加熱ユニット20の一部として配置されている。即ち、円形状のマーキング7bは調理者がトレイ7上に容器90を載置するための指標であると同時に、調理庫3内にトレイ7が収納された状態では誘導加熱コイル24の位置を示し、誘導加熱コイル24と同心円状のものとなる。また、前述のようにマーキング7bはトレイ7の幅、つまりは底面部3bの幅のほぼ中央に設けられているから、誘導加熱コイル24も底面部3bの幅のほぼ中央に位置し、誘導加熱コイル24により最良に誘導加熱されるように置かれた容器90の把手90a、90bの両端と両側面部3c、3dとの間の距離La、Lbはそれぞれ十分に確保されることになる。
【0049】
次に高周波加熱ユニット30について、図4及び図6によりその構成と動作を詳述する。調理庫3の後面部3fの後方左上部の空間にはマグネトロン31が取り付けられ、調理庫3の天面部3aの上方にはそのマグネトロン31から前方に向かい途中で右方に屈曲されて天面部3aの略中央まで延伸する導波管32が配設されている。調理庫3の天面部3aにはマイクロ波拡散室33が形成されており、導波管32の末端はマイクロ波拡散室33の上部にまで延設され、この導波管32内部とマイクロ波拡散室33内部とを隔てるマイクロ波拡散室33の上壁面には給電口としての貫通孔32aが穿設されている。マイクロ波拡散室33内には、鉛直方向に延伸する金属製円筒形状のアンテナ軸34aの下部に固定された、水平方向に延伸する金属製板状の放射アンテナ34が配置されている。上記貫通孔32aには中央に貫通口を有する軸受け32bが装着されており、放射アンテナ34のアンテナ軸34aは軸受け32bの貫通口に回転自在に挿通されている。このような構成により、放射アンテナ34はアンテナ軸34aを中心に、マイクロ波拡散室33内で回転自在となっている。
【0050】
貫通孔32a付近であって導波管32の上部にはモータ軸35aを有するアンテナ駆動モータ35が設置されている。このモータ軸35aは導波管32の上壁面を上部から下方に貫通し、導波管32内で放射アンテナ34のアンテナ軸34aと接続されている。これにより、アンテナ駆動モータ35の回転駆動力をモータ軸35a、アンテナ軸34aを経て放射アンテナ34に伝達している。また、マグネトロン31から導波管32内を通って案内されて来たマイクロ波は導波管32内に露出しているアンテナ軸34aを介することで貫通孔32aを通過して放射アンテナ34に伝播され、放射アンテナ34から調理庫3内に放射される。このとき、アンテナ駆動モータ35により放射アンテナ34を回転させるので、放射アンテナ34はマイクロ波を拡散しながら様々な方向に向けて放射することになる。
【0051】
高周波加熱の際には、制御部70の制御の下にインバータ駆動部71によりインバータ回路74が駆動されマグネトロン31に駆動電力が供給されるとともに負荷駆動部72を介してアンテナ駆動モータ35が作動される。マグネトロン31が駆動されると、マグネトロン31から発生したマイクロ波は上述したように導波管32内を通ってマイクロ波拡散室33に至り、アンテナ駆動モータ35により回転駆動される放射アンテナ34により拡散されつつ調理庫3内に放出される。即ち、マイクロ波は調理庫3の天面のマイクロ波拡散室33から降り注ぐように様々な方向に向かって放出され、さらに調理庫3の側面や後面或いはドア4の内面などに当たって反射する。したがって、調理庫3内に収容されている食品を満遍なく加熱することができる。
【0052】
特に、図6に示すように底の深い容器90内に収容されている食品を高周波加熱する場合でも、マイクロ波の給電口が天面部3aに形成されていることによってマイクロ波が容器90によって邪魔されにくく、容器90内の食品に当たって被加熱物である該食品を効率良く加熱することができる。また、このとき上述したようにマイクロ波は底面部3bのパンチング板203を通過しないので、マイクロ波が調理庫3から漏洩することを防止することができる。
【0053】
次にヒータ加熱ユニット40について図5及び図6によりその構成と動作を詳述する。調理庫3の後面部3fの裏側には深皿状に凹んだヒータ室41が形成され、ヒータ室41の後方にはファンモータ45が設置されている。ファンモータ45の前後方向に延伸する回転軸はヒータ室41の後壁を貫通し、その前端にファン42が固定されている。ファン42の外周側には該ファン42を取り囲むようにシーズヒータであるヒータ43が設けられ、駆動電流がこのヒータ43に供給されることにより加熱される。ファン42は多数の翼体を所定角度間隔で円盤体に取り付けた構造を有しており、所定方向に回転すると中央前方から吸い込んだ空気を翼体の外周側へ送り出すような構造となっている。ヒータ室41前方の後面部3fには、ファン42の内周側に多数の吸気孔14が形成され、ヒータ43の前方には多数の熱風送給孔15が形成されている。この吸気孔14及び熱風送給孔15もマイクロ波の通過を阻止するような寸法に設定されていることは当然である。
【0054】
ヒータ加熱の際には、制御部70の制御の下に負荷駆動部72を介してヒータ43に加熱電流が供給されるとともにファンモータ45が作動される。ファンモータ45によりファン42が回転駆動されると、吸気孔14を通して調理庫3内の空気をヒータ室41内に吸い込み、外周側に送り出す。外周側には加熱されたヒータ43が存在するから、送られた空気はヒータ43との熱交換によって加熱され、熱風送給孔15を通して調理庫3内へと戻る。このようにファン42の作用により、調理庫3内とヒータ室41との間で空気を循環させることにより、調理庫3内の空気の温度を200℃以上もの高温にまで上昇させ、調理庫3内に収容されている被加熱物である食品をオーブン・グリル調理することができる。
【0055】
また、上記のような加熱調理の際には食品から蒸気が発生し、この蒸気でドア4の窓4aが曇って調理中に調理庫3内を透視しにくくなるので、この発生した蒸気を調理庫3内から外部に排出する必要がある。そのために、調理庫3の左側面部3cの上部には多数の空気取り込み孔8が形成されており、左側面部3cの外側に配設された吸気ダクト9を通して調理庫3の後部から導入された空気がこの空気取り込み孔8を経て調理庫3内部に送り込まれる。なお、図5、図6には現れていないが後面部3fの後方には冷却用ブロアモータ77により駆動されるブロアが設けられ、筐体2の後方から吸い込んだ外気が電気回路やマグネトロン31を冷却するために使用された後、集められて吸気ダクト9に送り込まれるように構成されている。一方、調理庫3の右側面部3dには多数の排気孔10が形成されており、調理庫3内の空気は排気孔10を経て、右側面部3dの外側に配設された図示しない排気ダクトを通して機外へと排出される。
【0056】
本実施例の加熱調理器1では、特に誘導加熱による調理を行うため、容器90内に収容されている食品の撹拌する等、調理中に使用者が食品に対して作業を行う機会が多い。こうした作業を容易に行えるようにするため、及び容器90の出し入れを容易に行えるようにするために、ドア4を全開した状態で調理者がキー入力部5aで本発明における操作手段に相当する所定の入力キーの操作を行うと、トレイ搬送機構50の動作によりトレイ7が自動的に前方にせり出して来るようになっている。このトレイ搬送機構50の構成及び動作について、図7に加えて、図10、図11及び図12により説明する。図10はトレイ7が最大限前方にせり出した状態のドア4、トレイ7、トレイ搬送機構50を示す要部の上面図、図11は図10の状態を右斜め上方から見たときの展開図、図12はトレイ搬送機構50の外観斜視図である。
【0057】
トレイ搬送機構50は、金属製のベース51と、トレイ7の後部に当接してこれを前方に押し出す当接片53を有するコ字状の摺動体52と、摺動体52を前後方向に移動可能に保持するガイド54と、一端が垂直軸55に回動自在に接続され他端がガイド54の後端に水平方向に所定範囲で移動可能に接続されたアーム56と、駆動源であるトレイ搬送モータ57と、トレイ搬送モータ57により一方向に回転駆動される回動体58と、その回動体58の駆動力を上記アーム56に伝える連結体59と、摺動体52の位置を検知するためのマイクロスイッチであるトレイ搬送位置検知スイッチ60と、を備える。
【0058】
図7(a)に示すようにトレイ7が最大限、調理庫3内部に押し込まれた状態で、制御部70の制御の下に負荷駆動部72を介してトレイ搬送モータ57が駆動されると、回動体58が所定方向に回動し始め、連結体59を介して摺動体52は前方に牽引される。摺動体52の移動方向はガイド54により前後方向にのみ規制されているので、摺動体52は前方に直進し、その移動に伴って前端の当接片53はトレイ7の後部を押し、トレイ7は調理庫3内から水平前方にスライド移動することでせり出してゆく。回動体58が約1/2周すると、今度は連結体59を介して摺動体52は後方に押される。したがって、トレイ7を最大限押し出した位置に残したまま、摺動体52は後退する。トレイ7が最大限押し出された状態が図7(b)に示す状態であり、トレイ7の前部は調理庫3内から前方に突出している。このとき、鉛直上方を向いたドア4の内面と調理庫3の底面部3b上面とはほぼ面一の水平面を形成しているので、前方に突出したトレイ7はドア4の内面の上に載り、安定した水平状態を維持し得る。
【0059】
上述のように、ここでは摺動体52が本発明における押圧部であり、連結体59、アーム56、ガイド54は、回動体52の回転運動を摺動体52の直線往復運動に変換する駆動力変換手段である。そして、回動体58が略1回転すると、回動体58の突片がトレイ搬送位置検知スイッチ60の可動片を押圧し、スイッチ60がオンしたことを検知した制御部70が負荷駆動部72を介してトレイ搬送モータ57への通電を遮断する。これにより、摺動体52は元の位置、つまり調理庫3内の所定位置に収納された状態で停止する。このトレイ搬送機構50はトレイ7を前方にスライド移動させるだけの機能を有し、トレイ7を後方に牽引する機能は持たないため、図7(b)に示すように前方にせり出した状態にあるトレイ7を調理庫3内に押し入れる動作は調理者が手動で行う。もちろん、こうした後方へのスライド移動動作も自動で行えるような構成としてもよい。
【0060】
上記のようなトレイ搬送機構50は小型、特に薄型であるため、調理庫3の後面部3fと筐体2の後面の間の下部の空間に適切に収納される。また、構造が簡単であるため、故障も少なく高い信頼性を有する。
【0061】
なお、ドア4が全開状態でないときにトレイ7が前方にせり出すと、ドア4にトレイ7が接触してトレイ搬送モータ57に無理な負荷が掛かって故障したり、或いはドア4やトレイ7が破損したりするおそれがある。そこで、本実施例の加熱調理器1では、制御部70はドアスイッチ75によりドア4の開閉状態を監視し、ドアスイッチ75からの検知信号によりドア4が全開していると判断したときにのみ、トレイ7を前方にせり出させるための入力キーの受け付けを許可し、実際にトレイ搬送モータ57を動作させるようにしている。これにより、ドア4が閉鎖していたり半開き状態であったりするときに調理者が誤ってトレイ7を前方にスライド移動させる指示を行っても、トレイ7は全く移動せず、上述したような不具合が生じることを防止できる。
【0062】
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、修正又は追加などを行っても本発明に包含されることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例による加熱調理器においてドアを閉鎖した状態の外観斜視図。
【図2】本実施例の加熱調理器においてドアを全開した状態(食品を収容した容器有り)での外観斜視図。
【図3】本実施例の加熱調理器においてドアを全開した状態(食品を収容した容器無し)での正面図(a)及び右側面図(b)。
【図4】本実施例の加熱調理器において筐体の一部である外装カバーを取り外した状態の外観斜視図。
【図5】本実施例の加熱調理器においてドアを全開にした状態の要部の上面透視図。
【図6】本実施例の加熱調理器においてドアを閉鎖した状態の要部の右側面縦断面図。
【図7】本実施例の加熱調理器においてトレイのせり出し動作を説明するための要部の右側面縦断面図。
【図8】本実施例の加熱調理器の正面縦断面図(a)及び(a)中のA部の拡大図(b)。
【図9】本実施例の加熱調理器における誘導加熱ユニットの主要部の分解構造図。
【図10】本実施例の加熱調理器においてトレイが最大限前方にせり出した状態のドア、トレイ、トレイ搬送機構を示す要部の上面図。
【図11】図10の状態を右斜め上方から見たときの展開図。
【図12】本実施例の加熱調理器におけるトレイ搬送機構の外観斜視図。
【図13】金属製の薄板を介して誘導加熱を行う場合について、薄板の板厚、小孔の開口率、及び電力比の関係をシミュレーションした結果を示すグラフ。
【図14】本実施例の加熱調理器の電気系のブロック構成図。
【符号の説明】
【0064】
2…筐体
3…調理庫
3a…天面部
3b…底面部
3c…左側面部
3d…右側面部
3e…前面部
3f…後面部
4…ドア
4a…窓
5…操作パネル
5a…キー入力部
5b…表示部
7…トレイ
7a…フランジ
7b…マーキング
8…吸気孔
9…吸気ダクト
10…排気孔
11…トレイガイド
12、13…レール
14…吸気孔
15…熱風送給孔
20…誘導加熱ユニット
21…載置台
22…断熱材
23…絶縁板
24…誘導加熱コイル
25…ホルダ
26…シリコーン樹脂
200…主底板
201…凹部
202…開口部
203…パンチング板
204…小孔
30…高周波加熱ユニット
31…マグネトロン
32…導波管
32a…貫通孔
32b…軸受け
33…マイクロ波拡散室
34…放射アンテナ
34a…アンテナ軸
35…アンテナ駆動モータ
35a…モータ軸
40…ヒータ加熱ユニット
41…ヒータ室
42…ファン
43…シーズ線ヒータ
45…ファンモータ
50…トレイ搬送機構
51…ベース
52…摺動体
53…当接片
54…ガイド
55…垂直軸
56…アーム
57…トレイ搬送モータ
58…回動体
59…連結体
60…トレイ搬送位置検知スイッチ
70…制御部
71…インバータ駆動部
72…負荷駆動部
73、74…インバータ回路
75…ドアスイッチ
76…温度センサ
77…冷却用ブロアモータ
90…容器(食品が収容された容器)
90a、90b…把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形を成す筐体と、該筐体の内部に設置され、被加熱物を出し入れするための前面開口を有する調理庫と、該調理庫の前面開口を閉塞することで該調理庫を略密閉するドアと、前記調理庫の内部に収容された被加熱物を高周波加熱するための高周波加熱手段と、前記調理庫内に収容された被加熱物を誘導加熱するために該調理庫の底面の下方に配設された誘導加熱コイルを含む誘導加熱手段と、を具備する加熱調理器において、
上に被加熱物を載置するために前記調理庫の底面上に配置され、前記誘導加熱コイルで発生した磁束を通過させる材料から成るトレイと、
前記ドアが開放された状態で、前記トレイを前記調理庫内部の所定の収納位置から少なくともその前部が調理庫の外側に出るまで前方にスライド移動させるトレイ搬送手段と、
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記トレイの前方へのスライド移動動作を指示するための操作手段と、該操作手段の操作に応じて前記トレイ搬送手段を作動させる制御手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記調理庫の両側面内側に前記トレイを前後方向に移動自在に支持するガイドを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記トレイ搬送手段は、駆動源としてのモータ、前記トレイの後端部に当接して該トレイを後方から前方に押し出す押圧部と、前記モータの回転駆動力を前記押圧部の前後方向の直線往復運動に変換する駆動力変換手段と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記トレイ搬送手段にあって、前記押圧部は前記調理庫内で前後方向に往復移動可能であり、前記モータ及び前記駆動力変換手段は前記調理庫の後面と前記筐体の後面との間の空間に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記調理庫の前面開口はその上端部が下端部よりも後退するように傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記ドアは縦開き式のドアであって、該ドアを全開したときに略鉛直上方を向く該ドアの内面と前記調理庫の底面とがほぼ面一の水平状態となることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記ドアが全開状態であることを検知する開放検知手段を備え、前記制御手段は、前記開放検知手段により前記ドアが全開状態であると検知されたときに前記トレイ搬送手段によるトレイの前方移動動作を許可することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−207873(P2006−207873A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17772(P2005−17772)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】