説明

加熱調理器

【課題】調理庫内に残留した臭気の除去を行うことができるとともに、効率的に臭い物質を分解することができ、臭い物質の脱着を起こりにくくすることが可能な加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器100は、調理される食材10を収容する調理庫2と、調理庫2の内壁面に形成された固体酸物質層21と、各イオン濃度が10000個/cm以上の正イオンと負イオンを含み、湿度が85%以上であるイオン含有空気を調理庫2の内部に導入するためのイオン含有空気導入手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には加熱調理器に関し、特定的には電子レンジ調理、グリル調理、オーブン調理等を行い、調理後の臭気を除去することが可能な加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子レンジ調理器やオーブン調理器等の加熱調理器では、調理中に食材から臭気が発生する。また、この臭気には、調理後、調理庫内に残留するものがある。調理後、臭気が調理庫内に残留すると、前の調理中に発生し、調理後に残留したある食材の臭気が次に調理する別の食材に付着するという問題、いわゆる、臭い移りが発生するという問題があった。特に、魚を調理した後では、長時間にわたって微量の臭気が調理庫内に残留し、次に調理するときに他の食材に魚臭の臭い移りが発生し、使用者に不快感を与えるという問題があった。
【0003】
図2は、従来の加熱調理器の概略的な構成を示す図である。
【0004】
図2に示すように、電子レンジ調理器、オーブン調理器等の加熱調理器200は、本体1の調理庫2内に、たとえば、魚等の食材10が載置される。食材10は、ヒータ等の加熱手段8によって加熱調理される。加熱調理後、外部から吸気ダクト9を通じて空気がファン等の送風手段6によって調理庫2内に送り込まれる。調理庫2内に送り込まれた空気によって、調理庫2内の空気が排気口7を通じて外部に排出される。
【0005】
上記の問題を解決するために、特開平7−42946号公報(特許文献1)には、臭気を除去する方法として、送風手段6によって調理庫2内に新鮮な空気を送り込み、調理庫2内の臭気を強制的に排気口7に送り出して、調理庫2内の臭気を除去するようにした方法が記載されている。この場合、臭気は、排気口(排気ダクト)7中に置かれて加熱された脱臭触媒により酸化分解され、無臭化された臭気が外部に放出されるようになっている。脱臭触媒としては、白金などの貴金属触媒をセラミックスハニカムやシリカペーパーコルゲートに担持させたもの等が用いられている。
【0006】
また、特開平7−42946号公報(特許文献1)には、調理庫2の内壁面に、マンガン系触媒とゼオライト系吸着剤とを含有する耐熱性シリコーン系塗膜層を形成し、加熱手段8によって加熱された調理庫2内の空気を循環させて、上記の触媒に接触させることにより、調理庫2内の臭気を除去するようにした方法が記載されている。
【0007】
また、特開平7−151333号公報(特許文献2)に記載の加熱調理器では、加熱手段8であるヒータの表面に脱臭コーティングが施されている。この場合、ヒータへの通電により、脱臭コーティングの脱臭機能が発揮され、臭気成分が分解されるようになる。これにより、調理庫2内に残留していた臭気の除去が行われ、臭気が除かれた調理庫2内の空気が排気口7を通じて外部に排出されるようになる。
【特許文献1】特開平7−42946号公報
【特許文献2】特開平7−151333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の触媒によって脱臭する方法においては、触媒活性を得るためには触媒を高温に加熱する必要がある。このため、電力消費量が高くなり、効率が悪いという欠点があった。
【0009】
また、触媒材料として白金、パラジウム、マンガンといった高価な材料を使用する必要がある。脱臭効果を高くするためには触媒材料の使用量を増やす必要があるため、コストが高くなるという問題があった。
【0010】
さらに、脱臭処理後、調理庫内の内壁面に付着していた臭い物質が脱着し、閉め切った調理庫内で臭いが増加してしまい、他の食品への臭い移りが発生するという問題があった。
【0011】
さらにまた、触媒とともにゼオライト系吸着剤等の多孔質吸着剤を用いる場合、吸着した物質が徐々に脱着しやすく、小さな調理庫内においては脱着による臭気の増加が臭い移りの原因として問題となる。
【0012】
なお、多孔質吸着剤で吸着した臭い成分をイオンによって分解させる場合、多孔質吸着剤の孔内の深い位置にイオンが到達しにくく、効率よく臭い成分を分解できないという問題がある。
【0013】
そこで、この発明の目的は、調理庫内に残留した臭気の除去を行うことができるとともに、効率的に臭い物質を分解することができ、臭い物質の脱着を起こりにくくすることが可能な加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に従った加熱調理器は、調理される食材を収容する調理庫と、調理庫の内壁面に形成された固体酸物質層と、各イオン濃度が10000個/cm以上の正イオンと負イオンを含み、湿度が85%以上であるイオン含有空気を調理庫の内部に導入するためのイオン含有空気導入手段とを備える。
【0015】
この発明の加熱調理器では、固体酸物質層が調理庫の内壁面に形成されているので、調理中に発生した塩基性の臭気物質を化学吸着させることができる。このため、調理臭として特に問題となる魚臭の臭気成分であるトリメチルアミンを固体酸物質層に強く吸着させることができる。
【0016】
そして、この発明の加熱調理器では、調理後、イオン含有空気導入手段によって、臭気成分を吸着させた調理庫の内部に、正負両方のイオンを含み、湿度が85%以上であるイオン含有空気を導入する。導入されたイオン含有空気に含まれている正負両方のイオンが臭い物質に作用することにより、臭い物質を分解させて除去することができる。このイオンの作用は、水分子の存在下で増大されるため、臭い物質を効果的に除去することができる。正負イオンが作用するメカニズムは完全に明らかにはなっていないが、正負イオンの作用によって、次の反応によりOHラジカルが生成し、臭い物質を酸化分解しているものと考えられる。
【0017】
(HO)+O(HO)→・OH+1/2O+(m+n)H
この反応におけるイオンは、水分子に囲まれたクラスターになっていると推定される。水分子によるクラスター化が進むことにより、イオンが長寿命化して安定する。これにより、臭い分子が効果的に分解するものと推定される。
【0018】
また、発明者らの検討結果から、イオンだけでなく、湿度が85%以上の高湿度空気により微量の水を空気に付加することによって、脱臭の効果が高くなることが判明している。これは、クラスター化によるイオンの安定化が原因の一つとして考えられる。
【0019】
さらに、本発明の加熱調理器では、臭気成分を吸着する物質として固体酸物質を使用しているため、固体酸物質は、一旦吸着した臭気成分を脱着しにくいという利点がある。また、固体酸物質は、表面が平滑であるため、イオンが作用しやすく、臭い物質を効率的に分解することができる。
【0020】
さらにまた、正イオンと負イオンの各イオン濃度が5000個/cm以下では脱臭速度が遅く、脱臭効果を十分に得ることができないが、各イオン濃度を10000個/cm以上にすることによって、効率よく脱臭することができる。
【0021】
以上のことから、本発明の加熱調理器では、調理庫内に残留した臭気の除去を行うことができるとともに、効率的に臭い物質を分解することができ、臭い物質の脱着を起こりにくくすることが可能となる。
【0022】
この発明の加熱調理器においては、固体酸物質層は、ケイ酸マグネシウムを含むことが好ましい。
【0023】
この場合、ケイ酸マグネシウムは材料として比較的安価であり、かつ、魚臭成分であるトリメチルアミンを吸着する能力に優れているので、電子レンジ調理器やオーブン調理器等の加熱調理器の内壁面の広い面積にケイ酸マグネシウムを塗布することによって、吸着効率の高い固体酸物質層を安価で形成することができる。
【0024】
また、この発明の加熱調理器においては、調理後の食材を調理庫内から取り出した後、イオン含有空気導入手段がイオン含有空気を調理庫の内部に自動的に導入することが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、調理臭が特に問題となる食材の調理を行った後、たとえば、魚の調理を行った後、イオン含有空気導入手段がイオン含有空気を調理庫の内部に自動的に導入するように加熱調理器を自動的に動作させることによって、使用者が調理後、脱臭操作を行う必要がなく、調理庫内を常に快適状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のようにこの発明によれば、調理庫内に残留した臭気の除去を行うことができるとともに、効率的に臭い物質を分解することができ、臭い物質の脱着を起こりにくくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の一つの実施の形態である加熱調理器の概略的な構成を示す図である。
【0029】
図1に示すように、電子レンジ調理器、オーブン調理器等の加熱調理器100は、本体1の調理庫2内に、たとえば、調理される食材10として魚等が収容される。食材10は、ヒータ等の加熱手段8によって加熱調理される。加熱調理後、外部から吸気ダクト9を通じて空気がファン等の送風手段6によって調理庫2内に送り込まれる。調理庫2内に送り込まれた空気によって、調理庫2内の空気が排気口7を通じて外部に排出される。
【0030】
この発明の加熱調理器100では、調理庫2の内壁面に固体酸物質層21が形成されている。
【0031】
また、イオン含有空気を調理庫2の内部に導入するためのイオン含有空気導入手段が吸気ダクト9に設けられている。イオン含有空気導入手段は、送風手段6と、送風手段6によって外部から吸気ダクト9に送り込まれる空気に微量の水分を加える加湿手段と、微量の水分が加えられた空気に正イオンと負イオンを含ませるために正イオンと負イオンを発生させるイオン発生素子3とから構成される。加湿手段は、水50を貯めるための水タンク5と、水タンク5内の水50に一部が浸漬されたフィルタ4とから構成される。イオン発生素子3は、金属針の先端に高電圧を印加することによりイオンを発生させるものであり、吸気ダクト9から調理庫2内への空気導入経路内に設置される。
【0032】
このように構成されたイオン含有空気導入手段を用いることにより、加熱調理後、送風手段6によって外部から新鮮な空気を吸気ダクト9に送り込むことができる。そして、吸気ダクト9に送り込まれた空気が加湿手段のフィルタ4を通過することにより、たとえば、湿度が85%以上の高湿度の空気になる。この高湿度の空気がイオン発生素子3の近傍に送られることにより、イオン発生素子3から発生した正イオンと負イオンが高湿度空気に含まれる。イオン含有空気は調理庫2の内部に導入される。
【0033】
以上のように構成された加熱調理器100では、固体酸物質層21が調理庫2の内壁面に形成されているので、調理中に発生した塩基性の臭気物質を化学吸着させることができる。このため、調理臭として特に問題となる魚臭の臭気成分であるトリメチルアミンを固体酸物質層21に強く吸着させることができる。
【0034】
そして、この発明の加熱調理器100では、調理後、臭気成分を吸着させた調理庫2の内部に、イオン含有空気導入手段によって、正負両方のイオンを含み、湿度が85%以上であるイオン含有空気を導入する。導入されたイオン含有空気に含まれている正負両方のイオンが臭い物質に作用することにより、臭い物質を分解させて除去することができる。このイオンの作用は、水分子の存在下で増大されるため、臭い物質を効果的に除去することができる。正負イオンが作用するメカニズムは完全に明らかにはなっていないが、正負イオンの作用によって、次の反応によりOHラジカルが生成し、臭い物質を酸化分解しているものと考えられる。
【0035】
(HO)+O(HO)→・OH+1/2O+(m+n)H
この反応におけるイオンは、水分子に囲まれたクラスターになっていると推定される。水分子によるクラスター化が進むことにより、イオンが長寿命化して安定する。これにより、臭い分子が効果的に分解するものと推定される。
【0036】
また、発明者らの検討結果から、イオンだけでなく、湿度が85%以上の高湿度空気により微量の水を空気に付加することによって、脱臭の効果が高くなることが判明している。これは、クラスター化によるイオンの安定化が原因の一つとして考えられる。
【0037】
さらに、本発明の加熱調理器100では、臭気成分を吸着する物質として固体酸物質を使用しているため、固体酸物質は、一旦吸着した臭気成分を脱着しにくいという利点がある。また、固体酸物質は、表面が平滑であるため、イオンが作用しやすく、臭い物質を効率的に分解することができる。
【0038】
さらにまた、正イオンと負イオンの各イオン濃度が5000個/cm以下では脱臭速度が遅く、脱臭効果を十分に得ることができないが、各イオン濃度を10000個/cm以上にすることによって、効率よく脱臭することができる。
【0039】
以上のことから、本発明の加熱調理器100では、調理庫2内に残留した臭気の除去を行うことができるとともに、効率的に臭い物質を分解することができ、臭い物質の脱着を起こりにくくすることが可能となる。
【0040】
この発明の一つの実施の形態である加熱調理器100においては、固体酸物質層21はケイ酸マグネシウムを含む。ケイ酸マグネシウムは材料として比較的安価であり、かつ、魚臭成分であるトリメチルアミンを吸着する能力に優れているので、電子レンジ調理器やオーブン調理器等の加熱調理器100の内壁面の広い面積にケイ酸マグネシウムを塗布することによって、吸着効率の高い固体酸物質層を安価で形成することができる。
【0041】
また、この発明の加熱調理器100においては、調理後の食材10を調理庫2内から取り出した後、イオン含有空気導入手段がイオン含有空気を調理庫2の内部に自動的に導入するように構成してもよい。
【0042】
このようにすることにより、調理臭が特に問題となる食材の調理を行った後、たとえば、魚の調理を行った後、イオン含有空気導入手段がイオン含有空気を調理庫2の内部に自動的に導入するように加熱調理器100を自動的に動作させることによって、使用者が調理後、脱臭操作を行う必要がなく、調理庫2内を常に快適状態に保つことができる。
【実施例】
【0043】
以下、この発明の加熱調理器の実施例と比較例について比較試験を行った結果について説明する。
【0044】
(実施例1)
内壁面に固体酸物質層21としてケイ酸マグネシウム膜をコーティングした加熱調理器100(図1)の一例であるオーブン電子レンジ(容量26L)の調理庫2内に、トリメチルアミンを1μL入れたガラス容器を設置した。30分後、ガラス容器を調理庫2の内部から取り出し、調理庫2の扉を1分間開放した。扉を閉じた後、各イオン濃度が10000個/cmの正イオンと負イオンを含み、相対湿度が85%RHの高湿度空気を80L/分で吸気ダクト9から調理庫2内に送風手段6により30分間導入した。高湿度空気は、一方端を水50に浸して湿らせたフィルタ4に空気を通過させることにより発生させた。高湿度空気には、金属針先端に高電圧を印加することによりイオンを発生させるイオン発生素子3を吸気ダクト9から調理庫2内への導入経路内に設置することによって、正イオンと負イオンを含ませた。得られたイオン含有高湿度空気を調理庫2内に導入した。なお、導入された空気は、排気口7より自然排出させた。
【0045】
(比較例1)
内壁面に固体酸物質層21としてケイ酸マグネシウム膜をコーティングした加熱調理器100(図1)の一例であるオーブン電子レンジ(容量26L)の調理庫2内に、トリメチルアミンを1μL入れたガラス容器を設置した。30分後、ガラス容器を調理庫2の内部から取り出し、調理庫2の扉を1分間開放した。扉を閉じた後、各イオン濃度が5000個/cmの正イオンと負イオンを含み、相対湿度が88%RHの高湿度空気を80L/分で吸気ダクト9から調理庫2内に送風手段6により30分間導入した。高湿度空気は、一方端を水50に浸して湿らせたフィルタ4に空気を通過させることにより発生させた。高湿度空気には、金属針先端に高電圧を印加することによりイオンを発生させるイオン発生素子3を吸気ダクト9から調理庫2内への導入経路内に設置することによって、正イオンと負イオンを含ませた。得られたイオン含有高湿度空気を調理庫2内に導入した。なお、導入された空気は、排気口7より自然排出させた。
【0046】
(比較例2)
内壁面に固体酸物質層の代わりに4フッ化系フッ素樹脂をコーティングした加熱調理器100(図1)の一例であるオーブン電子レンジ(容量26L)の調理庫2内に、トリメチルアミンを1μL入れたガラス容器を設置した。30分後、ガラス容器を調理庫2の内部から取り出し、調理庫2の扉を1分間開放した。扉を閉じた後、各イオン濃度が10000個/cmの正イオンと負イオンを含み、相対湿度が88%RHの高湿度空気を80L/分で吸気ダクト9から調理庫2内に送風手段6により30分間導入した。高湿度空気は、一方端を水50に浸して湿らせたフィルタ4に空気を通過することにより発生させた。高湿度空気には、金属針先端に高電圧を印加することによりイオンを発生させるイオン発生素子3を吸気ダクト9から調理庫2内への導入経路内に設置することによって、正イオンと負イオンを含ませた。得られたイオン含有高湿度空気を調理庫2内に導入した。なお、導入された空気は、排気口7より自然排出させた。
【0047】
(比較例3)
内壁面に固体酸物質層21としてケイ酸マグネシウム膜をコーティングした加熱調理器100(図1)の一例であるオーブン電子レンジ(容量26L)の調理庫2内に、トリメチルアミンを1μL入れたガラス容器を設置した。30分後、ガラス容器を調理庫2の内部から取り出し、調理庫2の扉を1分間開放した。扉を閉じた後、各イオン濃度が10000個/cmの正イオンと負イオンを含み、相対湿度が50%RHの空気を80L/分で吸気ダクト9から調理庫2内に送風手段6により30分間導入した。水タンク5とフィルタ4とからなる加湿手段は用いなかった。空気には、金属針先端に高電圧を印加することによりイオンを発生させるイオン発生素子3を吸気ダクト9から調理庫2内への導入経路内に設置することによって、正イオンと負イオンを含ませた。得られたイオン含有高湿度空気を調理庫2内に導入した。なお、導入された空気は、排気口7より自然排出させた。
【0048】
実施例1と比較例1〜3において、各処理を行った直後に扉を開け、調理庫2内の残留臭気について、人間が感じる臭いの有無で評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、実施例1と比較例2の試験方法では、残留臭気がなかった。
【0051】
さらに、残留臭気がなかった実施例1と比較例2の試験後、それぞれ扉を閉めた状態で放置し、3時間後、調理庫2内の残留臭気について、人間が感じる臭いの有無で再度評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表1に示すように、正イオンと負イオンの各イオン濃度が5000個/cmの比較例1と、加湿を行わなかった比較例3においては、試験後、臭気の残留が認められた。また、比較例2では、正イオンと負イオンの各イオン濃度が10000個/cmである高湿度空気を導入することにより、表1に示すように試験直後では残留臭気がなかったが、固体酸物質層のコーティングを行っていないので、表2に示すように試験後、放置すると、時間が経過することにより調理庫2内に臭気が発生することが認められた。
【0054】
これに対して、調理庫2の内壁面に固体酸物質層21を形成し、正イオンと負イオンの各イオン濃度が10000個/cmの高湿度空気を調理庫2内に導入した実施例1においては、試験直後と放置後の両方において、臭気の残留は認められなかった。
【0055】
以上の試験結果から、本発明による電子レンジ調理器やオーブン調理器等の加熱調理器100においては、調理庫2の内壁面に固体酸物質層21を形成し、調理庫2内に正負両方のイオンを含む高湿度空気を導入することによって、調理庫2内の臭気を除去することができる。また、臭気成分を調理庫2の内壁面に化学吸着させるので、脱着による臭気の発生が起こらず、ある食材の調理によって発生する臭いが、次に調理される他の食材に付着するという臭い移りが発生しない。
【0056】
また、従来の加熱調理器のように臭気を除去するために高価な触媒等を使用しないので、高級機種にのみ採用されていたクリーニング機能(庫内脱臭機能)を安価な普及機にまで採用することが可能となり、使用者に有利な加熱調理器を提供することができる。
【0057】
なお、本発明の加熱調理器の構成は、電子レンジ調理機能、オーブン機能、グリル調理機能、蒸気調理機能等の少なくともいずれかの機能を有する加熱調理器に適用することができ、上記の調理機能を2つ以上備えた加熱調理器にも適用することができる。
【0058】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一つの実施の形態である加熱調理器の概略的な構成を示す図である。
【図2】従来の加熱調理器の概略的な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1:本体、2:調理庫、3:イオン発生素子、4:フィルタ、5:水タンク、6:送風手段、7:排気口、8:加熱手段、9:吸気ダクト、10:食材、50:水、100:加熱調理器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理される食材を収容する調理庫と、
前記調理庫の内壁面に形成された固体酸物質層と、
各イオン濃度が10000個/cm以上の正イオンと負イオンを含み、湿度が85%以上であるイオン含有空気を前記調理庫の内部に導入するためのイオン含有空気導入手段とを備えた、加熱調理器。
【請求項2】
前記固体酸物質層は、ケイ酸マグネシウムを含む、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
調理後の食材を前記調理庫内から取り出した後、前記イオン含有空気導入手段がイオン含有空気を前記調理庫の内部に自動的に導入する、請求項1または請求項2に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−276021(P2009−276021A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129528(P2008−129528)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】