説明

加熱調理器

【課題】加熱調理器の自動調理における調理物の投入・裏返し検知において、従来は、調理物の投入・裏返しを調理容器の温度低下により検知していたにも関わらず、調理温度維持のための加熱による調理容器の温度上昇を制御していなかったため、調理物の投入・裏返しによる温度低下と加熱による温度上昇が同時に発生し、温度低下と温度上昇の効果が相殺された場合には、調理物の投入・裏返しを検知できない場合があった。
【解決手段】加熱手段と制御手段と温度検知手段とを備え、温度が目標温度範囲に収まるように制御手段が加熱を制御する加熱調理器であって、処理タイミング通知手段と処理実行検知手段を備え、目標温度維持制御が加熱量を段階的に変化させる制御であり、処理タイミングより前に低設定加熱時間帯が設けられており、制御手段がタイミングの通知から処理実行を検知するまで目標温度維持制御から離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、加熱調理部に配置された調理物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による調理物の加熱を制御する制御手段と、前記加熱調理部又は前記調理物の温度を検知する温度検知手段とを備え、前記制御手段が、加熱調理において、前記温度検知手段により検知される前記加熱調理部又は前記調理物の温度を目標温度範囲に収まるように前記加熱手段を制御する目標温度維持制御を行うように構成された加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器の一例が、特許文献1に示されている。
この特許文献1に開示の加熱調理器は、焼き物を調理する場合に、加熱調理部の温度を目標温度に維持する制御を実行し、調理物の片面を交互に加熱調理する。このそれぞれ片面の加熱調理時に、本願で言う制御手段による目標温度維持制御が実行される。
【0003】
このような目標温度維持制御の例を図10、図11に基づいて説明する。図10は、目標温度範囲が172℃〜180℃に設定されている場合の目標温度維持制御を示すフロー図であり、図11は、このような目標温度維持制御を行って加熱調理器が運転される場合の調理容器の温度変化を示す図面である。
【0004】
図10の目標温度維持制御では、調理容器の温度を検知し(ステップS1)、検知温度が目標温度範囲上限(180℃)より高い場合は火力を低設定とし(ステップS2、S3)、検知温度が目標温度範囲下限(172℃)より低い場合は火力を高設定とする(ステップS4、S5)。このような制御の反復により、調理容器の温度を所定の目標温度範囲近辺に保つ目標温度維持制御を実現する(ステップS1〜S5)。
【0005】
図11の「A」で示す領域が、図10に示す目標温度維持制御を行った場合で、調理物の裏返し等の熱低下要素がない場合の温度変化を示すものである。なお、火力の低設定及び高設定の例として、例えば火力を5段階に調整可能な場合に、低設定では第1段階の火力に、高設定では第4段階の火力に設定を行うことが考えられる。
【0006】
さて、調理の種類によっては調理物を裏返し、表面、裏面の両方を片面づつ加熱調理するものがある(両面調理)。先行技術では、このような裏返しを必要とする調理(両面調理)を半自動的に行うために、レシピカードに裏返しのタイミングを記憶させておき、裏返しタイミングの到来に伴って、その裏返しタイミングを報知し、調理物の裏返しを自動検知して、火力の調整を行うことが提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1の実施の形態4(図4)には、裏返しタイミングの報知に伴い、これまで実行していた目標温度維持制御(IIで示される領域)を停止し、一定の加熱状態を維持して(IIIの左側の領域)、裏返し検知とともに加熱を停止する(IIIの右側の領域)構成が開示されている。
【0008】
この実施の形態4では、裏返し検知を、温度検知素子3で温度低下を検知することで行うことが記載されており、図4において、一定の加熱状態を維持する領域(IIIの左側の領域)では、火力は目標温度維持制御実行時(IIで示される領域)の85%程度に調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−103288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような裏返し検知の形態を採用すると、以下の問題があることが判明した。すなわち、上記特許文献1に開示の形態では、目標温度維持制御を実行するステージ、一定の加熱状態を維持するステージ、加熱を停止するステージという3つのステージを必要とするため、裏返しを調理者に促し、裏返し検知を実行する制御が複雑となる。その結果、多種多様な調理対象に良好に対応し難い。
【0011】
また、特許文献1に記載の技術では、調理物の裏返しを調理容器の温度低下に基づいて検知しているにも関わらず、裏返し報知タイミングから検知までに火力が比較的高く維持しているため、裏返しによる温度低下と加熱による温度上昇とが同時に発生し、温度低下と温度上昇の効果が相殺された場合には、調理物の裏返しを検知できないことがあった。
【0012】
この状況を、目標温度維持制御を裏返し指示タイミング以降も実行した場合の温度変化を示す図11で説明すると、同図において「裏返し実行」と記載されているタイミング以降の時点においても、明確な温度低下が発生せず、裏返し検知を良好に行えない状況が発生していることが判る。
【0013】
同様に、調理物の投入の検知を行う場合についても、調理物の投入による温度低下と、加熱による温度上昇とが同時に発生した場合には、調理物の投入を検知できない場合があった。
【0014】
本願発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、調理物の投入及び裏返しをより確実に検出できる加熱調理器を提供する点にある。また、調理物の投入及び裏返しをより確実に検出できる構成を備えることで、自動調理における不適切な異常処理の実行を防止する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本願発明に係る加熱調理器の特徴構成は、加熱調理部に配置された調理物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による調理物の加熱を制御する制御手段と、前記加熱調理部又は前記調理物の温度を検知する温度検知手段とを備え、前記制御手段が、加熱調理において前記温度検知手段により検知される前記加熱調理部又は前記調理物の温度を目標温度範囲に収まるように前記加熱手段を制御する目標温度維持制御を行う加熱調理器であって、調理物に対して所定の処理を加熱調理部で実行するタイミングである処理タイミングを通知する処理タイミング通知手段と、前記温度検知手段により検知された前記加熱調理部又は前記調理物の温度の低下から前記所定の処理が実行されたことを検知する実行検知手段を備え、前記目標温度維持制御が、前記加熱手段による加熱において加熱量を段階的に変化させて前記加熱調理部又は前記調理物の温度を前記目標温度範囲に収める制御であり、前記処理タイミングより前に、前記加熱手段による加熱が低設定の加熱量である低設定加熱時間帯が設けられており、前記制御手段が、前記処理タイミングの通知もしくは前記通知の予め設定された所定時間前から、前記実行検知手段により前記所定の処理が実行されたことを検知するまで、前記目標温度維持制御から離脱する点にある。
【0016】
上記の特徴構成によれば、調理物に対して所定の処理(本願において所定の処理とは、具体的には調理物の投入、又は、調理物の裏返しを意味する)を実行する際、少なくとも処理タイミングの通知から前記所定の処理が実行されたことを検知するまで目標温度を維持するための制御(目標温度維持制御)から離脱し、加熱による温度の上昇を防ぐため、例えば、裏返し処理の実行による温度低下と、目標温度維持のための加熱による温度上昇の相殺を防ぐことができる。これにより、より確実に裏返し処理の実行を検知することが可能になる。また、所定の処理の実行を検知できないことに基づく不適切な異常処理の実行を防止することができる。
なお、目標温度維持制御の加熱による影響を避けるため、目標温度維持制御からの離脱を、処理タイミングの通知より早いタイミングに行うように構成してもよい。この構成によれば、調理において、基本的に目標温度維持制御を行うことを前提とする一方で、処理タイミングの通知もしくは前記通知の予め設定された所定時間前から実行検知手段により前記所定の処理が実行されたことを検知するまでの所定の間だけ目標温度維持制御から離脱して所定の処理を促し、当該処理が実行されたことを検知して目標温度維持制御を再開すればよいため、比較的簡略化された制御構造で所定の処理の実行を促し、検知することができる。
また、上記の特徴構成によれば、前記目標温度維持制御を加熱手段の加熱量の段階的な変化によって制御する。さらに、実行検知手段は加熱調理部又は調理物の温度の低下から前記所定の処理が実行されたことを検知するところ、前記処理タイミングより前に加熱手段による加熱が低設定の加熱量である低設定加熱時間帯が設けられているため、加熱手段による加熱による温度上昇の影響を避けることができ、温度低下の検知がより確実となる。
なお、このような構成を採用する場合に、加熱量の段階的な変化が可能な構成において、低設定の加熱量を最も低い加熱量とすることで、調理物の投入検知、裏返し検知における加熱の影響を最低限に抑制することができる。また、低設定の加熱量とは、例えば高設定の加熱量の半分以下の加熱量をいう。
【0017】
本願発明に係る加熱調理器の更なる特徴構成は、前記目標温度維持制御からの前記離脱が、前記加熱手段による加熱を低設定の加熱量を保持する形態で実行される点にある。
【0018】
上記の特徴構成によれば、目標温度維持制御からの離脱を加熱手段による加熱を低設定の加熱量を保持する形態で実行するため、目標温度維持制御からの離脱後に加熱調理部又は調理物の温度が極端に低下することを防止できる。
【0019】
本願発明に係る加熱調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記加熱手段を働かせて前記加熱調理部を予熱する予熱処理を実行するとともに、前記予熱処理の完了時に前記目標温度維持制御を実行する構成で、前記予熱処理の完了に伴って、前記調理物を前記加熱調理部に投入する投入タイミングを前記処理タイミング通知手段が通知する点にある。
【0020】
上記の特徴構成によれば、制御手段は、予熱処理の完了時に目標温度維持制御を実行するため、予熱処理後に加熱調理部の温度が目標温度範囲を逸脱することを避けることができる。また、予熱処理の完了に伴い、加熱調理器が調理者に調理物の投入タイミングであることを通知するため、調理に不慣れな調理者でも適切なタイミングで調理物を加熱調理器に投入することができる。
【0021】
本願発明に係る加熱調理器の更なる特徴構成は、前記予熱処理の完了が加熱調理部の温度若しくは加熱開始からの経過時間により判断される点にある。
【0022】
上記の特徴構成によれば、予熱処理の完了を加熱調理部の温度若しくは加熱開始からの経過時間という2つの尺度の一方又は両方で判断できるため、適切な尺度を用いて予熱処理の完了を判断することができる。
【0023】
本願発明に係る加熱調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記目標温度維持制御を実行して前記加熱調理部において調理物片面の加熱調理を実行する構成で、前記調理物片面の加熱調理の完了に伴って、前記調理物を裏返す裏返しタイミングを前記処理タイミング通知手段が通知する点にある。
【0024】
上記の特徴構成によれば、制御手段が調理物片面の加熱調理の完了に伴って調理物裏返しのタイミングであることを通知するため、裏返しの必要な両面調理において、調理に不慣れな調理者でも適切なタイミングで調理物を裏返すことができる。
【0025】
本願発明に係る加熱調理器の更なる特徴構成は、前記調理物片面の加熱調理の完了が、前記調理物片面の温度若しくは前記調理物片面の加熱開始からの経過時間により判断される点にある。
【0026】
上記の特徴構成によれば、調理物片面の加熱調理の完了を調理物片面の温度若しくは調理物片面の加熱開始からの経過時間という2つの尺度の一方又は両方で判断できるため、適切な尺度を用いて調理物片面の加熱調理の完了を判断することができる。
【0027】
本願発明に係る加熱調理器の更なる特徴構成は、調理メニューを入力する調理メニュー入力手段を備え、前記制御手段が、前記目標温度範囲を前記調理メニュー入力手段で入力された調理メニューに基づいて設定し、当該設定に基づいて、前記制御手段が前記調理物の加熱を制御する点にある。
【0028】
上記の特徴構成によれば、入力された調理メニューに基づいて加熱調理器が自動的に目標温度範囲を設定するため、調理者は、細かな調理設定を行う煩わしさや、調理温度を意識する煩わしさを感じることなく、希望メニューに即した適切な温度で調理を実行することができる。また、調理に不慣れな調理者や、調理者が不慣れな調理メニューでも、希望メニューを入力するだけで当該希望メニューに即した適切な調理を行える使い勝手のよい加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の実施形態に係るガスコンロの斜視図である。
【図2】本願発明の実施形態に係るガスコンロのブロック図である。
【図3】本願発明の実施形態に係るガスコンロの設定入力パネルの正面図である。
【図4】本願発明の実施形態に係るガスコンロにおけるマニュアル調理又は自動調理の決定の制御を示すフロー図である。
【図5】本願発明の実施形態に係るガスコンロにおける調理物投入検知を伴った目標温度維持制御を示すフロー図である。
【図6】本願発明の実施形態に係るガスコンロにおける調理物裏返し検知を伴った目標温度維持制御を示すフロー図である。
【図7】本願発明の実施形態に係るガスコンロでの自動調理において、調理物の裏返し検知を行った場合の調理容器温度の変化と火力調整の様子を示すグラフ図である。
【図8】本願発明の別実施形態に係るガスコンロにおける調理物投入検知を伴った目標温度維持制御を示すフロー図である。
【図9】本願発明の別実施形態に係るガスコンロにおける調理物裏返し検知を伴った目標温度維持制御を示すフロー図である。
【図10】従来のガスコンロでの自動調理における目標温度維持制御を示すフロー図である。
【図11】従来のガスコンロでの自動調理において、調理物の裏返し検知を行った場合の調理容器温度の変化と火力調整の様子を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本願発明に係る加熱調理器の実施形態を、グリル付きガスコンロに適用した場合について、図面に基づいて説明する。
【0031】
〔加熱調理器(コンロ)の構成〕
図1に示すように、本実施形態に係る加熱調理器は、加熱手段としての3つのコンロバーナ1a、1b、1c、及び、グリルバーナ2を備えたグリル部3からなるビルトインタイプのグリル付きガスコンロとして構成されている。また、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、トッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に鍋等を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。また、ガスコンロ前側面には各コンロバーナ1a、1b、1c及びグリルバーナ2の点火及び消火や火力調節を指令する手動操作部Sが設けられている。また、このガスコンロは、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された運転状態を制御する制御手段としての制御部Cが手動操作部Sにて指令された運転状態に基づいて、コンロバーナ1a、1b、1c及びグリルバーナ2を制御するように構成されている。また、ガスコンロ前側面には押し操作式の電源スイッチ9も設けられている。
【0032】
図2に示すように、3つのコンロバーナ1a、1b、1cの夫々には、点火手段としての点火器7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられている。また、3つのコンロバーナ1a、1b、1cの夫々には、五徳6にて載置支持された被加熱物(調理容器)の底面部に接触して被加熱物(調理容器)の温度を検出する温度検知手段である温度センサ10が設けられている。
【0033】
前記3つのコンロバーナ1a、1b、1c及びグリルバーナ2へのガス供給構成について説明すると、ガス供給路11には元電磁弁12が設けられ、ガス供給路11から、コンロバーナ用分岐路13a、13b、13c、グリルバーナ用分岐路13dの4系統に分岐しており、コンロバーナ用分岐路13a、13b、13c及びグリルバーナ用分岐路13dの夫々には、ステッピングモータの駆動により燃料ガスの流量を調整して加熱量を調整する流量制御弁14が備えられている。
【0034】
次に、前記手動操作部Sの構成について説明する。ガスコンロ前側面19には、手動操作部Sとして、コンロバーナ1a、1b、1cの夫々に対して、各別に操作対象とするコンロバーナを選択し、点火及び消火や火力調節を指令するための、コンロバーナ1a、1b、1cの夫々に対応した3つの火力調節ダイアル20と、コンロバーナ1a、1b、1cにおける調理の設定を入力するコンロ用設定入力パネル21と、グリルバーナ2に対して点火及び消火や火力調整を入力するためのグリル用設定入力パネル22とが設けられている。
【0035】
図3にコンロ用設定パネルを示す。コンロ用設定入力パネル21は、押し操作式のスイッチとして構成され、押し操作する毎に、選択されたコンロバーナ1(1a、1b、1c)に点火を指令するオン状態と消火を指令するオフ状態とに切り換わる点消火スイッチ23、火力調節ダイアル20で操作対象として選択されたコンロバーナ1a、1b、1cの該当箇所が青色点滅し、かつ、燃焼中のコンロバーナ1a、1b、1cの該当箇所が青色点灯し、操作待ちの場合には状況に応じて青色または黄色点滅、異常終了した場合には赤色点灯、消火すると消灯するなどのように、該当箇所と点灯色と点灯の様子でコンロバーナの状態を表す状態表示ランプ24、加熱用のタイマー時間を増減設定するためのタイマー設定スイッチ25、設定されるタイマー時間を表示するタイマー表示部26、調理されるメニューの違いに応じて標準的な加熱量を切り替えるメニュー切替スイッチ27、火加減を調整する火加減調整スイッチ28、後述する自動加熱運転を取り消すための取消スイッチ29等が設けられている。前記メニュー切替スイッチ27により切り替えられるメニューとしては、調理物及び調理方法の違いに対応する「ムニエル」(高温、両面)、「野菜炒め」(高温、片面)、「ホットケーキ」(中温、両面)、「肉じゃが、シチュー」(中温、片面)、「再加熱」(低温、片面)があり、そのうち選択されたものをLEDランプにて示すメニュー表示部27aが設けられている。火加減は「弱め」「標準」「強め」の3段階に調節できるようになっており、そのうち選択されたものをLEDランプで示す火加減表示部28aが設けられている。そして、メニュー切替スイッチ27及び火加減調整スイッチ28が、複数の調理メニューのうち、調理物に応じた調理メニューを入力する調理メニュー入力手段Mを構成する。
【0036】
図1、図2に示したように、本実施形態に係るガスコンロには、コンロバーナ1a、1b、1cの夫々において、五徳6で載置支持された被加熱物の温度を検知する温度検知手段である温度センサ10が備えられている。そして、制御部Cが、加熱調理において、温度センサ10で検知される調理容器の温度が前記加熱調理における目標温度範囲の上限を超えて上昇した場合や目標温度範囲の下限を超えて低下した場合には前記目標温度範囲近辺になるようにコンロバーナ1(1a、1b、1c)の火力を制御する目標温度維持制御を実行し、調理物の投入や裏返しを検出するタイミングでは前記目標温度維持制御から離脱するように、コンロバーナ1の制御を行うように構成されている。
【0037】
〔加熱調理器(コンロ)の制御〕
以下では、図4〜図6のフロー図に基づいて、本実施形態に係るガスコンロにおけるマニュアル調理運転又は自動調理運転の決定、調理物投入検知、裏返し検知の制御を説明する。
【0038】
〔マニュアル調理運転又は自動調理運転の決定〕
図4は、本実施形態に係るガスコンロにおいて、マニュアル調理又は自動調理を決定する制御を示すフロー図である。本実施形態に係るガスコンロは、電源スイッチ9がオン操作されると、以降の使用者の操作に基づいて、調理をマニュアルと自動のいずれで行うかを決定する。
【0039】
図4に示すように、制御部Cは、電源スイッチ9がオン操作(ステップS10)された後に点火操作が行われることなく調理メニューの入力が行われ(ステップS20、S30)、その後点火操作が行われた場合は、自動調理運転を実行する(ステップS40、S100)。本実施形態に係るガスコンロは、自動調理運転を行う場合は、本願発明に係る目標温度維持制御からの離脱や再開(実行)を制御することで調理物の投入や裏返しの検知精度を上げつつ、従来技術と同様の自動調理を可能とする(後述する図5、図6)。
【0040】
一方で、本実施形態に係るガスコンロでは、自動調理運転を行わず、マニュアル調理運転を実行することもできる。調理メニュー入力を行うことなく点火操作が行った場合は、本実施形態に係るガスコンロは、マニュアル調理運転を実行する(ステップS20)。
【0041】
なお、調理メニュー及び火加減の入力は、調理メニュー入力手段Mである図3のコンロ用設定入力パネルのメニュー切替スイッチ27及び火加減調整スイッチ28の押下で行うことは先述の通りである。図3は、調理メニューとして「ホットケーキ」(中温、両面)、火加減として「標準」を選択した場合を示している。「強め」や「弱め」が選択された場合は、火力や加熱時間の調整により火加減の調整を行う。
【0042】
また、所定の待機時間(例えば3分)が経っても点火操作や調理メニュー・火加減入力操作が行われなかった場合は、入力が行われなかったことを知らせる通知音でブザーBZを鳴らした後、自動的にガスコンロの電源を切る(ステップS31、S41、S99)。
【0043】
〔目標温度を維持するための制御(目標温度維持制御)〕
続いて、図5に基づいて、ガスコンロの制御部Cが行う目標温度を維持するための制御(目標温度維持制御)を説明する。目標温度維持制御は、加熱調理時の調理温度を、調理に適した目標温度範囲近辺に保つための制御である。図5では、図の右側の2列の一部のフローが、目標温度維持制御を実行するフローに当たる(ステップS117〜S135)。
【0044】
目標温度維持制御に用いられる目標温度範囲は、調理メニュー入力手段Mで入力された調理メニューに基づいて、制御部Cにより設定される。例えば、図3のコンロ用設定パネルのメニュー切替スイッチ27により、調理メニューとして「ホットケーキ」(中温、両面)が選択された場合は、目標温度範囲は172℃〜180℃に設定される。一方、調理メニューとして「野菜炒め」(高温、片面)が選択された場合は、目標温度範囲は例えば220℃〜230℃に設定される。以下では調理メニューとして、「ホットケーキ」(目標温度範囲が172℃〜180℃)が選択された場合について説明する。
【0045】
本実施形態に係るガスコンロは、目標温度維持制御を行う場合、まず、温度センサ10により、調理容器の温度を検知する(ステップS117)。そして、制御部Cは、検知された調理容器の温度が目標温度範囲上限(180℃)より高い場合は、温度を下げるべく、該当箇所のコンロバーナ1の火力を低設定にする(ステップS120:Yes、S125)。なお、低設定の火力とは、例えば高設定の火力の半分以下の火力をいう。
【0046】
一方、調理容器の温度が目標温度範囲下限(172℃)より低い場合は、温度を上げるべく、該当箇所のコンロバーナ1の火力を高設定にする(ステップS130:Yes、S135)。また、調理容器の温度が目標温度範囲内(172〜180℃)の場合は何もしない(ステップS120:No、S130:No)。
【0047】
本実施形態に係るガスコンロは、上記制御の反復により、目標温度維持制御を実現する(ステップS117〜S135)。なお、この目標温度維持制御は、本実施形態に係る裏返し検知に係る図6においても、同様の制御により実現される(ステップS217〜S235)。
【0048】
〔所定の処理の実行検知〕
以下、調理物の投入検知及び調理物の裏返し検知(所定の処理の実行検知)について、図5、図6に基づいて説明する。
【0049】
図5、図6では、図の左側のフローが、本願独特の調理物の投入検知あるいは調理物の裏返し検知を実行するフローに当たる(ステップS140〜S170、S240〜S270)。これらのフローから判明するように、本願の調理物投入検知、調理物裏返し検知は、火力を低設定、高設定の間で切換え制御することにより調理温度を目標温度範囲の近辺に制御する目標温度維持制御(ステップS117〜S135、S217〜S235)から、所定のタイミングで離脱することにより実行される(ステップS111:Yes、S115:Yes、もしくはステップS211:Yes、S215:Yes、)。
【0050】
ここで、調理物の投入検知、あるいは裏返し検知は、調理メニュー入力手段Mで入力された調理メニューの各々に対して予め記憶されている加熱温度パターン(予熱、調理物加熱を含む)、投入指示タイミング、裏返し指示タイミング等の調理情報に基づいて実行する。
【0051】
投入に関しては、調理メニュー入力手段Mで入力された調理メニューの各々に対して調理物の投入を指示するタイミングが記憶されているとともに、上記の目標温度維持制御から離脱するタイミングが前記調理物投入指示前の所定時間として記憶されている。また、投入が行われたかどうかを判断するための調理物投入指示からの待機時間及びその待機時間内にどの温度まで低下したかによって投入を判定するための投入検知温度が記憶されている。そして、待機時間内に投入検知温度以下に温度が低下した場合には調理物が投入されたと判定し、待機時間内に投入検知温度以下に温度が低下しなかった場合には調理物が投入されなかったと判定する。
【0052】
裏返しに関してもほぼ同様である。調理メニュー入力手段Mで入力された調理メニューの各々に対して調理物の裏返しを指示するタイミングが記憶されているとともに、上記の目標温度維持制御から離脱するタイミングが前記調理裏返し指示前の所定時間として記憶されている。また、裏返しが行われたかどうかを判断するための調理物裏返し指示からの待機時間及びその待機時間内にどの温度まで低下したかによって裏返しを判定するための裏返し検知温度が記憶されている。そして、待機時間内に裏返し検知温度以下に温度が低下した場合には調理物が裏返されたと判定し、待機時間内に投入検知温度以下に温度が低下しなかった場合には調理物が裏返されなかったと判定する。
【0053】
〔調理物の投入検知〕
まず、図5に基づいて、本実施形態に係るガスコンロにおける調理物の投入検知の制御を説明する。
【0054】
先の図4で説明した操作により自動調理運転を行うことが決定されると(ステップS100)、制御部Cは、本願にいう目標温度維持制御を実行し、目標温度範囲に従い温度制御を行う(ステップS117〜S135)。この温度制御は、予熱、本加熱において同様である。ガスコンロは該当箇所のコンロバーナ1により加熱することで、調理容器(加熱調理部)の予熱を開始する。
【0055】
調理物の投入検知では、制御部Cは火力が低設定か及び自動調理開始からの経過時間が調理物の投入を指示するタイミングから所定時間前以降かを監視し、これらの条件が満たされるまで目標温度維持制御を反復実行する(ステップS111、S115、ステップS117〜S135)。制御部Cは、このような目標温度維持制御の実行中は、調理容器の温度検知を実行し(ステップS117)、その結果に基づいて、検知された調理容器温度と目標温度範囲との関係から火力を調整することで、調理容器温度を目標温度範囲の近辺に保つ目標温度維持制御を実現する(ステップS120〜S135)。
【0056】
そして、火力が低設定の場合において(ステップS111:Yes)、調理物の投入指示、検知が必要なタイミングに到達すると(自動調理開始からの経過時間が調理物の投入を指示するタイミングから所定時間前以降)、制御部Cは目標温度維持制御から離脱する(ステップS115:Yes)。
【0057】
一方、火力が低設定でない場合には、調理物の投入指示・検知は行わず、目標温度維持制御を継続する(ステップS111:No、ステップS120〜S135)。この場合、火力は高設定なので、調理容器温度はやがて目標温度範囲上限(180℃)に到達し、その後、目標温度維持制御により火力が低設定に変更される(ステップS120:Yes、S125)。このように火力が低設定の場合に所定のタイミングに到達すれば、本願発明に係る加熱調理器は目標温度維持制御を離脱し、調理物の投入指示・検知を行う(ステップS115:Yes、ステップS140以降)。このような制御を行うことで、調理物の投入指示・検知を行う段階では、火力は低設定であることが保証される。そして、このような制御により、調理物の投入指示・検知を行う処理タイミングより前に前記加熱手段による加熱が低設定の加熱量である低設定加熱時間帯が設けられるため、加熱手段による加熱による温度上昇の影響を避け、調理物の投入(温度低下)をより確実に検知することができる。
【0058】
目標温度維持制御から離脱した後は(ステップS115:Yes)、調理物の投入を指示するタイミングに到達しているか否かを判定し(ステップS140)、所定のタイミングに達すると、調理物の投入を指示する(ステップS145)。調理物の投入の指示は、例えば所定の調理物投入タイミング通知音でブザーBZを鳴らして通知するとともに、該当するコンロバーナ1の状態表示ランプ24を青色点滅させて行う。
【0059】
そして、制御部Cは、調理物投入指示後、当該投入指示からの経過時間を監視するとともに、予め設定されている投入検知温度以上の温度低下が所定の時間内に発生するかどうかを監視する(ステップS150、S155、S160)。すなわち、制御部Cは、調理物投入指示から待機時間(3分)の間に調理容器温度が5秒前よりも4℃以上低下した場合に、急速な温度低下が発生したとして、調理物の投入が行われたと判断する(ステップS165)。
調理物の投入を確認し、自動調理を開始する際は、制御部Cは、ブザーBZで調理物投入検知音を鳴らして報知するとともに、該当するコンロバーナ1の状態表示ランプ24を数回青色点滅させた後、青色点灯させる。これにより使用者は、加熱調理器が調理物の投入を検知したことを確認できる。
【0060】
上記から判明するように、本願発明では、調理物投入検知において、制御部Cによる制御は目標温度維持制御から離脱しており、また、火力が低設定となっているため、目標温度維持制御による加熱の影響を最小限に抑えた状態で、投入検知(調理容器温度の低下の監視)を行うことができる。
【0061】
なお、調理物の投入の検知後は、制御部Cは投入以降の自動調理に移行する(ステップS200)。すなわち、入力された調理メニューに従って、以降の自動調理を実行する。
【0062】
一方、所定の待機時間(例えば3分)を経過しても調理物の投入が検知されない場合(ステップS150:Yes)は、ガスコンロは自動調理を停止し、該当するコンロバーナ1の消火処理を実行後、異常終了を通知する所定の通知音でブザーBZを鳴らすとともに、該当するコンロバーナ1の状態表示ランプ24を数回赤色点滅させ、その後、自動調理運転を終了する(ステップS157)。自動調理の異常終了後は、電源がオフにされるまで、異常終了したコンロバーナ1の状態表示ランプ24を赤色点灯させておく。
【0063】
なお、ここでいう「所定の待機時間」は3分、5分という一定値としてもよいし、調理メニュー入力手段Mから入力された調理メニューにより定まる値としてもよい。また、投入検知温度は、調理メニューにより定まる値としてもよい。
【0064】
〔調理物の裏返し検知〕
続いて、図6に基づいて、本実施形態に係るガスコンロにおける調理物の裏返し検知の制御を説明する。図6に示すフローは、基本的に先に説明した図5のフローと同様である。
【0065】
調理物の投入の確認後、制御部Cは目標温度維持制御を再開し、目標温度範囲に従った温度制御を行う。そして、制御部Cは、目標温度維持制御を行いながら、火力が低設定かつ自動調理開始からの経過時間が調理物裏返しを指示するタイミングから所定時間前以降かを監視する(ステップS211、S215)。制御部Cは、当該タイミングに到達するまで、目標温度維持制御を反復実行する(ステップS215:No、ステップS217〜235)。
【0066】
制御部Cは、火力が低設定かつ自動調理開始からの経過時間が調理物裏返しを指示するタイミングから所定時間前以降になると、目標温度維持制御から離脱する(ステップS211:Yes、ステップS215:Yes)。制御部Cは離脱状態において火力を低設定のまま維持する。
【0067】
目標温度維持制御からの離脱後、制御部Cは、調理物の裏返しを指示するタイミングに達しているか否かを判定し(ステップS240)、裏返しタイミングに到達すると、調理物の裏返しを指示する(ステップS245)。調理物の裏返しの指示は、例えば所定の調理物裏返しタイミング通知音でブザーBZを鳴らして通知するとともに、該当するコンロバーナ1の状態表示ランプ24を青色点滅させて行う。
【0068】
そして、制御部Cは、調理物裏返し指示からの経過時間を監視するとともに、予め決定されている裏返し検知温度以上の温度低下が所定の時間内に発生するかどうかを監視する(ステップS250、S255、S260)。
【0069】
制御部Cは、例えば調理物裏返し指示から待機時間(3分)の間に調理容器温度が5秒前よりも4℃以上低下した場合に、急速な温度低下が発生したとして、調理物の裏返しが行われたと判断する(ステップS265)。
【0070】
調理物の裏返しを確認し、自動調理を開始する際は、制御部Cは、ブザーBZで調理物裏返し検知音を鳴らして報知するとともに、該当するコンロバーナ1の状態表示ランプ24を数回青色点滅させた後、青色点灯させる。これにより使用者は、加熱調理器が調理物の投入を検知したことを確認できる。
【0071】
上記から判明するように、本願発明では、調理物裏返し検知において、制御部Cによる制御は目標温度維持制御から離脱している。そして、このような制御を行うことで、調理物の投入指示・検知を行う処理タイミングより前に前記加熱手段による加熱が低設定の加熱量である低設定加熱時間帯が設けられるため、加熱手段による加熱による温度上昇の影響を避け、調理物の裏返し(温度低下)をより確実に検知することができる。
【0072】
調理物の裏返しを検知すると、制御部Cはその後、調理物裏返し以降の自動調理に移行する。すなわち、入力された調理メニューに従って、裏返し以降の自動調理を実行する。
【0073】
一方、所定の待機時間(例えば3分)を経過しても調理物の裏返しが検知されない場合(ステップS250:No)は、ガスコンロは自動調理を停止し、該当するコンロバーナ1の消火処理を実行後、異常終了を通知する所定の通知音でブザーBZを鳴らすとともに、該当するコンロバーナ1の状態表示ランプ24を数回赤色点滅させ、その後、自動調理運転を終了する(ステップS257)。自動調理の異常終了後は、電源がオフにされるまで、異常終了したコンロバーナ1の状態表示ランプ24を赤色点灯させておく。
【0074】
なお、ここでいう「所定の待機時間」は3分、5分という一定値としてもよいし、調理メニュー入力手段Mから入力された調理メニューにより定まる値としてもよい。また、裏返し検知温度は、調理メニューにより定まる値としてもよい。
【0075】
〔本願発明の効果〕
以下では、図7(本願発明:目標温度維持制御を離脱する例)、図11(従来技術:目標温度維持制御を常時実行する例)を比較し、本願発明の効果を説明する。
【0076】
図7、図11は、調理メニューを「ホットケーキ」とした場合に、本願発明の実施形態に係るガスコンロ(加熱調理器)で自動調理を行った場合の調理容器温度の変化と火力調整の様子を示すグラフ図である。図7、図11では、先述した調理物の投入検知は行っておらず、予熱後、調理物を投入し、一方の面を加熱した後、本願にいう調理物の裏返し検知を行う場合の例を示すものである。
【0077】
図7、図11では、調理メニューを「ホットケーキ」としているため、目標温度範囲は172℃〜180℃に設定されている。また、調理メニュー「ホットケーキ」の裏返し指示のタイミングは7分であり、図7では、目標温度維持制御による加熱の影響を抑えるべく、当該制御を裏返し指示の30秒前のタイミングで離脱するように設定されている。
【0078】
制御部Cは、調理を開始した当初において、調理容器が目標温度範囲上限の180℃に達するまでは火力を高設定として、調理容器温度を上げるように制御している(0分〜3.2分)。
【0079】
一方、加熱により調理容器温度が上昇し、目標温度範囲上限の180℃に達すると(3.2分)、過熱を避けるべく、制御部Cは火力を低設定にして、調理容器温度を下げる(3.2分〜3.6分)。その後、火力の低設定により調理容器温度が低下し、目標温度範囲下限の172℃より低くなると(3.6分)、その時点で火力を高設定にして、加熱により調理容器温度を再び目標温度範囲上限の180℃に近づけている(3.6分〜4.2分)。
以降、同様の制御を繰り返している。
【0080】
ここで、図11に示す従来技術のガスコンロでは、本願発明と異なり、調理物の裏返し検知の前後で目標温度維持制御からの離脱を行わないため、調理物の裏返しの検知が困難になる場合がある。
【0081】
すなわち、図11では、7分の時点で調理物の裏返しが行われたが、直前の6.5分の時点において、調理容器温度が目標温度範囲下限の172℃より低下したため、目標温度の維持を目的として、火力を高設定に切替えている(6.5分〜7分)。そのため、本来は調理物の裏返しにより低下すべきである7分の時点の調理容器温度が、高設定された火力での加熱による温度上昇と相殺し、温度低下の判別、ひいては、調理物の裏返しの判別が困難となっている。
【0082】
このように、目標温度維持制御を常時実行する従来技術では、目標温度維持のための加熱による温度上昇と調理物投入による温度低下とが相殺し、調理物の裏返しを判別できなくなることがあった。また、調理物の裏返しを判別できないことにより、不適切な異常処理を実行してしまう可能性があった。このような課題の解決を図ったのが本願発明である。
【0083】
図7においても、調理物の裏返し指示タイミング(7分)から30秒前の6.5分以前は、図11の場合と同様の目標温度維持制御を行っている。
【0084】
すなわち、図7においても、当初は火力を高設定にして調理容器温度を上げ(0分〜3.2分)、調理容器温度が目標温度範囲上限の180℃に達したところで火力を低設定することで調理容器温度の過熱を避け(3.2分〜3.6分)、目標温度範囲下限の172℃より低くなった場合には、再び火力を高設定にすることで調理容器温度を上昇させる(3.6分〜4.2分)という制御を繰り返している(0分〜6.5分)。このように、目標温度維持制御から離脱する6.5分(調理物の裏返し指示タイミング(7分)から30秒前)までの制御は、図11(従来技術:目標温度維持制御を常時実行する例)と同様である。
【0085】
しかし、目標温度維持制御から離脱して以降、調理物の裏返しが検知されるまでの間は(約6.5分〜7分)、図7(本願発明:目標温度維持制御を離脱する例)と図11(従来技術:目標温度維持制御を常時実行する例)で制御が異なる。
【0086】
すなわち、本実施形態に係るガスコンロの制御の様子を示す図7(本願発明:目標温度維持制御を離脱する例)では、調理物の裏返しを確実に検知するため、所定のタイミング以降は、裏返しを検知するまで目標温度維持制御を離脱している(約6.5分〜7分)。具体的には、図7において、目標温度維持制御を離脱した6.5分以降で調理容器温度が目標温度範囲(172〜180℃)未満に低下しているが、目標温度維持制御から離脱しているため、制御部Cは火力を低設定に保ち、高設定(加熱)への切換えを行っていない。
【0087】
これにより、調理物の裏返しが行われた場合には、調理容器温度が大きく低下していることが確認できるため、本実施形態に係るガスコンロは、調理物の裏返しを確実に検知することができる構成となっている(約7分)。
【0088】
また、調理物の裏返しを検知した後は、目標温度維持制御を再開し、それまでに低下した調理容器温度を上昇させるべく、ガスコンロの火力を高設定に切替えている(7分〜8分)。すなわち、裏返しを検知した後は目標温度維持制御を再開し、従来技術と同じ制御を行っている(7分以降)。これにより、本実施形態に係るガスコンロは、裏返しの検知後は調理容器温度を目標温度範囲近辺に保つことができるため、従来技術と同様の自動調理を行うことができる構成となっている。
【0089】
なお、上述の図表等で例示した数値は例示にすぎず、本願発明はこれらの数値により限定されるものではない。
【0090】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0091】
(1)図5、図6に示す調理物投入検知及び裏返し検知では、加熱手段による加熱による温度上昇の影響を避けるため、火力が低設定であることを条件として調理物投入指示タイミング若しくは調理物裏返し指示タイミングから所定時間前以降であることを確認し、目標温度維持制御を離脱したが(ステップS111:Yes−S115:Yes、S211:Yes−S215:Yes)、別実施形態として図8、図9のように、火力が低設定であるかどうかは確認せず(図5、図6のステップS111、S211にあたる確認は行わず)、調理物投入指示タイミングもしくは調理物裏返し指示タイミングから所定時間前以降であれば目標温度維持制御を離脱し(ステップS115:Yes、S215:Yes)、火力を低設定にした上で(ステップS180、S280)調理物投入検知及び裏返し検知を行う(ステップS140〜S165、S240〜S265)構成としてもよい。このような構成でも、調理物投入指示タイミング若しくは調理物裏返し指示タイミングから所定時間前以降は火力が低設定であることが保証され、低設定加熱時間帯が確保されるため、加熱手段による加熱による温度上昇の影響を避け、調理物の投入及び裏返し(温度低下)を確実に検知することができる。
【0092】
(2)調理容器温度が調理物の投入や裏返しに適した温度の下限である投入下限温度や裏返し下限温度より低下した場合には、自動的に調理を停止、あるいは、調理は継続したまま使用者に通知するように構成してもよい。もしくは、使用者への通知後の所定時間内に使用者による調理操作が行われなかった場合や、下限温度より更に低い動作停止温度を下回った場合には、自動調理を停止させる構成としてもよい。
【0093】
(3)上記実施形態では、自動運転開始指令手段としてメニュー切替スイッチ、火加減調整スイッチ及び点消火スイッチを夫々兼用する構成としたが、このような構成に代えて、自動運転を開始指令する専用の操作スイッチを設けるものでもよい。
【0094】
(4)上記実施形態では、ビルトイン形式のガスコンロに備えられたガス燃焼式のコンロを例示したが、このような構成に限らず、テーブル式コンロに備えられたコンロであってもよく、また、グリルを組み込んだコンロに限らず、コンロ単体として構成されるものであってもよい。また、加熱手段はガス燃焼式に限らず、電気ヒータや電磁式加熱手段を用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1、1a、1b、1c 加熱手段(コンロバーナ)
10 温度検知手段(温度センサ)
27 調理メニュー入力手段(メニュー切替スイッチ)
28 調理メニュー入力手段(火加減調整スイッチ)
C 制御手段(制御部)
BZ 投入タイミング通知手段、裏返しタイミング通知手段(ブザー)
M 調理メニュー入力手段(メニュー切替スイッチ27、火加減調整スイッチ28)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理部に配置された調理物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段による調理物の加熱を制御する制御手段と、
前記加熱調理部又は前記調理物の温度を検知する温度検知手段とを備え、
前記制御手段が、加熱調理において前記温度検知手段により検知される前記加熱調理部又は前記調理物の温度を目標温度範囲に収まるように前記加熱手段を制御する目標温度維持制御を行う加熱調理器であって、
調理物に対して所定の処理を加熱調理部で実行するタイミングである処理タイミングを通知する処理タイミング通知手段と、
前記温度検知手段により検知された前記加熱調理部又は前記調理物の温度の低下から前記所定の処理が実行されたことを検知する実行検知手段を備え、
前記目標温度維持制御が、前記加熱手段による加熱において加熱量を段階的に変化させて前記加熱調理部又は前記調理物の温度を前記目標温度範囲に収める制御であり、
前記処理タイミングより前に、前記加熱手段による加熱が低設定の加熱量である低設定加熱時間帯が設けられており、
前記制御手段が、前記処理タイミングの通知もしくは前記通知の予め設定された所定時間前から、前記実行検知手段により前記所定の処理が実行されたことを検知するまで、前記目標温度維持制御から離脱する加熱調理器。
【請求項2】
前記目標温度維持制御からの前記離脱が、前記加熱手段による加熱を低設定の加熱量を保持する形態で実行される請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御手段が、前記加熱手段を働かせて前記加熱調理部を予熱する予熱処理を実行するとともに、前記予熱処理の完了時に前記目標温度維持制御を実行する構成で、
前記予熱処理の完了に伴って、前記調理物を前記加熱調理部に投入する投入タイミングを前記処理タイミング通知手段が通知する請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記予熱処理の完了が、加熱調理部の温度若しくは加熱開始からの経過時間により判断される請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御手段が、前記目標温度維持制御を実行して前記加熱調理部において調理物片面の加熱調理を実行する構成で、
前記調理物片面の加熱調理の完了に伴って、前記調理物を裏返す裏返しタイミングを前記処理タイミング通知手段が通知する請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記調理物片面の加熱調理の完了が、前記調理物片面の温度若しくは前記調理物片面の加熱開始からの経過時間により判断される請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
調理メニューを入力する調理メニュー入力手段を備え、
前記制御手段が、前記目標温度範囲を前記調理メニュー入力手段で入力された入力調理メニューに基づいて設定し、当該設定に基づいて、前記制御手段が前記調理物の加熱を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−189013(P2011−189013A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58170(P2010−58170)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】