加硫缶
【課題】規模の大型化及びエネルギー損失の増大を避け、圧力容器内における温度分布を効率良く均一化することが可能な加硫缶を提供する。
【解決手段】円筒状の圧力容器内部の閉塞端側に設置された熱源及びファンと、圧力容器の延長方向に延長して内壁面円周上に配設され、ファンによって送風された空気を圧力容器の開閉端側で排出するダクトとを備え、ダクトの排出口に、内壁面の円周方向に対し、互いに異なる角度で同一円周方向に空気を排出する複数のプレートを圧力容器の円周方向に沿って設ける構成とした。
【解決手段】円筒状の圧力容器内部の閉塞端側に設置された熱源及びファンと、圧力容器の延長方向に延長して内壁面円周上に配設され、ファンによって送風された空気を圧力容器の開閉端側で排出するダクトとを備え、ダクトの排出口に、内壁面の円周方向に対し、互いに異なる角度で同一円周方向に空気を排出する複数のプレートを圧力容器の円周方向に沿って設ける構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを加硫成形する際に好適に用いられる加硫缶に関し、特に内部の温度分布を均一化することが可能な加硫缶に関する。
【背景技術】
【0002】
リトレッドタイヤと呼ばれるタイヤの製造方法の一工程として、タイヤの基礎となる台タイヤと、当該台タイヤの円周方向に貼着されるトレッドゴムとをエンベロープ内に収容し、エンベロープ内の圧力を減圧した状態で加硫缶内に投入することにより、台タイヤとトレッドゴムとの間に介在する接着層としてのクッションゴムを加硫し、両者を強固に一体化する加硫工程が存在することが知られている。
加硫工程において用いられる加硫缶は、エンベロープに収容された複数組のタイヤ(台タイヤ及びトレッドゴム)を格納可能な円筒状の圧力容器と、円筒状の圧力容器の延長方向一側部に設けられ、圧力容器内の空気を加熱する熱源と、当該熱源の近傍に配設され、熱源によって加熱された空気を循環させるファンと、圧力容器の延長方向他側部側に開閉自在に設けられた気密扉とを備える。
また、圧力容器の内壁面には、圧力容器の延長方向に沿って延長するダクトが配設され、熱源によって加熱された空気は、ファンによりダクト内に供給され、ダクト内を通る空気がファンとは反対側に設けられた気密扉側において排出される。
そして、気密扉側において排出された空気は、気密扉の壁面に衝突して圧力容器内をファン側に向かって流れ出し、圧力容器内に格納された複数組のタイヤを加熱しながら熱源に到達し、ファン及びダクトによって再び気密扉側から排出される。
つまり、加硫缶は、圧力容器内において加熱された空気を延長方向に向かって循環させることにより、内部に格納された複数組のタイヤを加熱する構成である。また、圧力容器内の圧力は、例えば6気圧から8気圧程度にまで加圧されており、格納された台タイヤ及びトレッドゴムは、エンベロープ内において加熱,加圧された状態で加硫が進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−88049号公報
【特許文献2】特表2008−500898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図13(a)に示す気流分布から明らかなように、従来の加硫缶では、気密扉側に排出された空気が圧力容器内をファン側に流れ込む過程において上昇気流となり易く、圧力容器上部では空気が活発に流動するものの、圧力容器下部では空気の滞留が生じ易くなってしまう。例えば、上昇気流の発生を抑制する方法の一つとして、気密扉側に排出された空気が、圧力容器内をファン側に流れるときの流速を速くする方法が考えられる。そこで、圧力容器内の流速を速くするために、ファンに大きな流量の送出を可能にする遠心ファンを適用し、気密扉側からファン側に流れる空気の流速を上げて、圧力容器内の空気の流れと温度分布に関する実験を行なった。その結果、図13(b)に示すように、気密扉に衝突した気流は、圧力容器下部を這うように進むことで、圧力容器下部における空気の停留を抑制し、圧力容器内の温度のバラツキに多少の改善が見られるものの、十分な効果を得られるものではなかった。
また、上昇気流の発生を抑制する他の方法として、単に気密扉側からファン側に流れる空気の流速を上げるのではなく、圧力容器内における空気の流れ方(気流)を変化させる方法も考えられる。例えば、ダクトの排出口から空気を圧力容器の内壁面に沿って同一円周方向に空気を排出させ、圧力容器内に旋回流を生じさせる方法である。この方法によれば、旋回流により圧力容器内の空気全体を気密扉側からファン側に移動させて、温度のバラツキを低減させることが期待できるが、単純にダクトから同一円周方向に向けて空気を排出させるだけでは、旋回流を十分に制御することができないため、期待するほどの十分な効果を得ることができない。
また、特許文献1には、温度分布を均一化するための設備として、成形物を格納する炉を二重構造とするとともに、炉内に複数の補助熱源を設け、さらに補助熱源の位置に対応するように炉内において回転する撹拌用のファンを設けることにより、炉内のガスを撹拌,混合し、炉内の温度差を均一化にする構造が開示されているが、当該設備は、従来の加硫缶と比して大型であって、さらに複数の動力源が必要であることからエネルギー損失が極めて大きくなるという問題がある。
また、特許文献2には、ダクトを開閉する複数のダクトバルブを設け、ダクトバルブを開閉動作させることにより炉内に乱流を発生させることが開示されているが、ダクトバルブを開閉させる駆動源や制御システムが別途必要となり、設備の大型化、エネルギー損失の増大といった問題点を避けることはできない。
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、規模の大型化及びエネルギー損失の増大を避け、圧力容器内における温度分布を効率良く均一化することが可能な加硫缶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための加硫缶に係る構成として、円筒状の圧力容器内部の一端側に設置された熱源及びファンと、圧力容器の延長方向に延長して内壁面円周上に配設され、ファンによって送風された空気を圧力容器の他端側で排出するダクトとを備え、ダクトの排出口に、内壁面の円周方向に対し、互いに異なる角度で同一円周方向に空気を排出する複数のプレートを圧力容器の円周方向に沿って設ける構成とした。
本構成によれば、熱源によって加熱され、ファン及び複数のダクトによって圧力容器の開閉端側に流れ込んだ空気が、ダクトの排出口に設けられた複数のプレートによって圧力容器の円周方向に向けて排出されるため、一端側から他端側へ流れ込む空気が圧力容器の円周方向に沿って旋回する旋回流となって圧力容器内全体に強制的な対流を生じさせ、圧力容器内の停留をなくすことができる。また、圧力容器内全体に強制的な対流が生じることにより、熱源によって加熱された空気が圧力容器内に行き渡るので、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。さらに、円周方向に対して異なる角度で排出する複数のプレートの向きを制御することにより、ダクトの排出口から排出される空気の広がりや向きを制御することができるので、旋回流の強さや大きさを制御することが可能となる。そして、強さや大きさが制御された旋回流により、圧力容器内全体に生じる強制的な対流を最適化し、圧力容器内の停留をなくすことで熱源によって加熱された空気を圧力容器内に行き渡らせることが可能となり、圧力容器内における温度分布を均一化することができる。よって、本発明の加硫缶で加硫されたタイヤは、圧力容器内部における位置に関わらず均一に加硫することができる。なお、旋回流の大きさとは、圧力容器内を螺旋状に流れる流れの幅である。
【0007】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、複数のプレートは、圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる曲率半径で湾曲し、ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従ってプレートの湾曲する曲率半径が漸次大きくなるように配設される構成とした。
本構成によれば、上記構成の効果に加え、複数のプレートがダクト内において一端側から他端側に向かって一方向に湾曲し、ダクトの円周方向に沿う一端側から他端側に向かって湾曲する角度が漸増することにより、ダクトの排出口から圧力容器の円周方向に向けて排出される空気は、ダクトの大きさよりも広がるように排出することが可能となり、圧力容器内に生じる旋回流の大きさを大きくすることができるので、大きな旋回流により効率良く圧力容器内全体に強制的な対流を生じさせて、圧力容器内の停留をなくし、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0008】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、複数のプレートは、圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる角度で内壁面近接方向に捻れ、ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従って捻れる角度が漸次大きくなるように配設される構成とした。
本構成によれば、上記構成の効果に加え、複数のプレートがダクト内において閉塞端側から開口端側に向かって内壁面近接方向に捻れ、ダクトの円周方向一端側から他端側に向かって捻れる角度が漸増することにより、ダクトの排出口から圧力容器の円周方向に向けて排出される空気は、内壁面方向に寄せられた状態で円周方向に排出されるため、排出口から排出する空気の流速を速くすることができるので、流れの強い旋回流を圧力容器内に生じさせることができる。つまり、強い旋回流により圧力容器内全体に強制的な対流を生じさせることが可能になるので、圧力容器内の停留がなくなり、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0009】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、ダクトは、圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設され、圧力容器の中心を挟んで対称の位置に、同一形状のプレートを各ダクトに設ける構成とした。
本構成によれば、上記効果に加え、ダクトが、圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設され、圧力容器の中心軸を挟んで対称の位置に、同一形状のプレートが同一円周方向に向けて設けられたことにより、2つのダクトから同一円周方向に沿った強力な強制的な対流である旋回流をより効率的に圧力容器内全体に生じさせることができるので、圧力容器内の停留領域がなくなり、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0010】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、ダクトの圧力容器の円周方向に沿う長さが、圧力容器の内周長の15%〜20%に設定される構成とした。
本構成によれば、上記構成による効果に加え、ダクトの圧力容器の円周方向に沿う長さが、圧力容器の内周長の15%〜20%に設定されることにより、一方のダクトから排出される空気と、他方のダクトから排出される空気とが互いに流れを妨げるように干渉することがなくなるので、強力な強制的な対流を効率良く圧力容器内全体に生じさせることができるので、圧力容器内の停留領域がなくなり、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0011】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、プレートは、10〜30cmの間隔でダクトに設けられる構成とした。
本構成によれば、上記構成による効果に加え、プレートは、10〜30cmの間隔でダクトに設けられることにより、より効率的に圧力容器内に旋回流を生じさせることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、プレートは、閉塞端側から開口端側に10cm〜30cmの長さに設定される構成とした。
本構成によれば、プレートが閉塞端側から開口端側に10cm〜30cmの長さに設定されることにより、ファンから送り出された空気の流速を損なうことなく排出できるので、必要かつ十分な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る加硫缶の内部構造を示す概略図である。
【図2】加硫缶の正面図である。
【図3】ダクトの排出口近傍を示す拡大斜視図である。
【図4】排出プレートの正面図及び側面図である。
【図5】ダクトに形成された部分ダクトから排出される空気の方向を示す図である。
【図6】ダクトから排出された空気が蓋体に衝突した後の流れを示す図である。
【図7】圧力容器内に発生する旋回流を模式的に示す図である。
【図8】従来の加硫缶及び本発明の加硫缶内部の温度変化を示すグラフである。
【図9】排出プレートの他の形態の正面図及び側面図である(実施形態2)。
【図10】ダクトから部分ダクトにより排出される空気の方向を示す図である(実施形態2)。
【図11】排出プレートの他の形態の正面図及び側面図である(実施形態3)。
【図12】ダクトから部分ダクトにより排出される空気の方向を示す図である(実施形態3)。
【図13】従来の加硫缶内部の気流分布、及び、温度分布を示す模式図である。
【図14】タイヤを示す分解斜視図及び幅方向断面図である。
【0014】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態1
図1は、本発明に係る加硫缶1の内部構造を示す概略図である。
同図において加硫缶1は、一端が閉塞した円筒状に形成され、内部に複数のタイヤ10を格納可能な圧力容器2と、圧力容器2の他端において開閉自在に設けられた気密扉3とを備える。
圧力容器2の周壁部は、内部に円周方向に沿って隙間なく配置された図外の断熱材等によるライニングが施されており、内部に複数のタイヤ10を格納,加硫可能な加硫領域R1が形成される。
【0016】
気密扉3は、圧力容器2の開口した端部において開閉自在に設けられる扉であって、円筒状の圧力容器2と同心に形成される。気密扉3は、周囲に配設された図外のシール材等を介して圧力容器2の開口部を閉塞し、圧力容器2内に供給される空気が外部に漏洩することを防止する。つまり、一端が閉塞した圧力容器2は、他端を気密扉3で閉じられることにより密閉空間として維持される。圧力容器2とともに密閉空間を形成する気密扉3の裏面側は、圧力容器2とは逆側に球面状に窪み、圧力容器2の中心軸と球面の中心とが同心となるように形成される。
【0017】
圧力容器2の下側半部には、圧力容器2の延長方向に沿って延長する床板4が敷設される。圧力容器2内への搬入に際しては、床板4上を走行可能な台車等を用いて複数のタイヤ10を気密扉3が設けられた開閉端側から閉塞端側へと搬入し、圧力容器2内に設けられた図外のフックに順に吊下げ、複数のタイヤ10を圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納する。
【0018】
ここで、本実施形態に係る加硫缶1内に格納されるタイヤ10について概説する。図14は、加硫缶1によって加硫されるタイヤ10の一例としての未加硫のリトレッドタイヤを分解して示す斜視図及び幅方向断面図である。同図に示すように、タイヤ10は、土台となる台タイヤ11と、台タイヤ11の円周方向表面に貼着されるクッションゴム12、及び、クッションゴム12を介して台タイヤ11の円周方向表面に巻き付けられるトレッドゴム13とから構成される。
【0019】
台タイヤ11は、環状のスチールコード等の部材からなる一対のビード部11Aと、一対のビード部11Aを跨ぐようにトロイダル状に延長するサイド部11B及びクラウン部11Cを有する。クラウン部11Cの内部には、複数のベルトが半径方向に積層される。台タイヤ11は、例えば使用済みタイヤのトレッド部を切削(バフ掛け)することや、表面にトレッドパターンに対応する凹凸を備えていないモールドによって加硫することにより得ることができる。また、台タイヤ11の加硫度は、製品タイヤに要求される加硫度以下の半加硫の状態であってもよい。
【0020】
クッションゴム12は、台タイヤ11及びトレッドゴム13と略同様の組成からなる未加硫のゴムであって、加硫缶1によって加硫されることにより、台タイヤ11とトレッドゴム13とを一体化させる接着層として機能する。トレッドゴム13は、台タイヤ11の周長に対応する長さを有する帯状であって、台タイヤ11のクラウン部11C上に巻き付けられた状態で加硫されることにより、製品タイヤのトレッド部となる部材である。帯状のトレッドゴム13は、例えば一方の金型に所望のトレッドパターンに対応する凹凸が形成されたプレス型の加硫装置にて加硫することにより得ることができる。
【0021】
また、プレス型の加硫装置によって得られた帯状のトレッドゴム13は、台タイヤ11のクッションゴム12が貼着された円周方向表面に沿って巻き付けられ、端部同士が接合されることにより台タイヤ11と予備的に一体化される。
なお、トレッドゴム13の成形装置は、プレス型に限られるものではなく、例えば円環状のトレッドゴム13を成形可能な専用のモールドによって加硫成形してもよい。当該専用のモールドによって成形された円環状のトレッドゴム13を台タイヤ11に巻き付けるためには、図外の拡径装置によってトレッドゴム13を拡径しつつ、トレッドゴム13を台タイヤ11の外周側に配置し、再び元の外径に縮径することにより行われる。また、トレッドゴム13の加硫度は、台タイヤ11と同様に、製品タイヤに要求される加硫度以下の半加硫の状態であってもよい。
【0022】
上述の構成を備えるタイヤ10は、エンベロープと呼ばれる図外の袋体に収容され、圧力容器2内に吊り下げられる。エンベロープ内の圧力は大気圧以下に減圧されており、エンベロープの内表面はトレッドゴム13の外表面に密着する。つまり、タイヤ10がエンベロープ内に収容されると、トレッドゴム13は、台タイヤ11の円周方向表面に対して押し付けられた状態のまま維持される。
なお、加硫缶1の圧力容器2内に格納されるタイヤ10の一例として、加硫済みの台タイヤ11、及び、加硫済みのトレッドゴム13とを備えるリトレッドタイヤについて説明したが、加硫缶1に格納されるタイヤ10は、上記構成に限られるものではなく、成形過程に加硫を工程を含むものであれば如何なるタイヤであってもよい。
【0023】
図1に戻り、再び圧力容器2の構造について説明する。
圧力容器2内の閉塞端側には、空気供給領域R2が形成される。空気供給領域R2は、加硫領域R1を仕切る隔壁7によって形成された領域であって、当該領域内には、加硫領域R1内の空気を加熱しつつ循環させる熱源5及びファン6が設置される。
【0024】
熱源5は、隔壁7内の中央に配置される。熱源5は、例えば電気的に加熱されるヒータであって、ヒータに供給する電力を制御することにより所定温度に発熱する。
ファン6は、熱源5よりも閉塞端側に配置され、モータ6Aとモータ6Aの駆動により回転する回転翼6Bとにより構成される。ファン6は、モータ6Aを駆動することにより回転翼6Bが回転し、加硫領域R1内の空気を空気供給領域R2内に取り込みながら熱源5によって加熱するとともに、空気供給領域R2内の空気を圧縮して、気密扉3側で開口する後述のダクト8の排出口9Bに空気を送出する。
つまり、ファン6が駆動することにより加硫領域R1側から空気供給領域R2側に流入する空気を熱源5によって加熱しながら空気供給領域R2の気圧を高めることにより、空気供給領域R2内に設けられた複数のダクト8の取り込み口9Aに空気を流入させて、気密扉3側で開口するダクト8の排出口9Bから加熱された空気を排出する構成である。
【0025】
図1に示すように、ダクト8は、圧力容器2の内周壁面2Aの延長方向に沿って空気供給領域R2から加硫領域R1を経て気密扉3側へと延長する配管である。本実施例におけるダクト8は、図2の加硫缶1の正面図に示すように、圧力容器2の内周壁面2Aに対して2箇所配設される(以下、ダクト8A,8Bとする)。なお、ダクト8A;8Bは、同一寸法であるものとする。
一方のダクト8Aと他方のダクト8Bとは、圧力容器2の内周壁面2Aの円周方向において互いに相対峙するように均等な間隔をもって水平位置に配設される。具体的には、加硫缶中心Oを通る水平面が、ダクト8A及びダクト8Bの中央を通るように配設される。
ダクト8A;8Bは、圧力容器2の延長方向に沿って延長する断面矩形の管体であって、熱源5によって加熱された空気を排出する排出口9Bが気密扉3側において開口する。
つまり、圧力容器2の閉塞端側に位置する熱源5及びファン6によって加熱,送出された空気は、ダクト8A;8Bを通って開閉端側に位置する気密扉3に向けて排出される。
【0026】
図3は、気密扉3に向けて空気を排出するダクト8A;8Bの排出口9B近傍を示す拡大斜視図である。以下、図2及び図3を用いて説明する。
図3に示すように、ダクト8A;8Bは、圧力容器2の内周壁面2Aから相対峙して立ち上がる一対の板片21;21と、一対の板片21;21と連接し、圧力容器2の内周壁面2Aと対向する導風板22とで管体を形成する。
板片21;21は、互いに所定距離離間して設けられ、圧力容器2の内周壁面2Aから加硫缶中心Oに向けて同一の長さで延長する。板片21;21の離間する距離Nは、少なくとも内周壁面2Aの円周長Mの25%よりも小さい距離で離間するように設定される。好ましくは、板片21;21の離間する距離Nは、内周壁面2Aの円周長Mの15〜20%の範囲で離間するように設けるとよい。
なお、板片21;21は、加硫缶中心O方向に延長するとしたが、内周壁面2Aから水平方向に延長するように設けてもよい。
【0027】
導風板22は、例えば、圧力容器2の内周壁面2Aに沿って湾曲し、板片21;21と連接する。なお、加硫缶1により加硫するタイヤ10の直径が略同一寸法のときには、導風板22をタイヤ10の外周面の曲率に対応するように形成してもよい。但し、導風板22とタイヤ外周面との距離が所定距離以下になると、開閉端側に排出された空気が閉塞端側に流れる妨げとなり、タイヤを均一に加硫できなく虞があるため、導風板22とタイヤ外周面との距離Sが所定距離以下にならないように、板片21,21の長さを調整することが好ましい。
【0028】
ダクト8A;8Bの排出口9Bには、内周壁面2Aの円周方向に沿って複数の排出プレートがそれぞれ設けられる。本実施形態では、排出プレートは、ダクト8A,8Bそれぞれに31乃至35の5つが設けられるものとして説明する。なお、排出プレートの数量は、前記枚数に限らず、適宜設定すればよい。
【0029】
図4(a)は、排出プレート31乃至35の正面図、図4(b)は、排出プレート31乃至35の側面図である。
排出プレート31乃至35は、所定形状に成形される板体であって、それぞれ形状が異なるように形成される。具体的には、図4(a),(b)に示すように、排出プレート31乃至35は、延長方向に沿ってそれぞれ異なる曲率で一方向に湾曲するように形成される。例えば、排出プレート31の湾曲する曲率が1番小さく、次に排出プレート32の曲率が2番目に小さく、次に排出プレート33の曲率が3番目に小さく、次に排出プレート34の曲率が4番目に小さく、次に排出プレート35の曲率が5番目に小さい。換言すると、排出プレート31,排出プレート32,排出プレート32,排出プレート33,排出プレート34,排出プレート35の順に湾曲する曲率が大きくなるように設定される。排出プレート31乃至35の長さは、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの直線長さLが10cm〜30cmとなるように設定される(図4参照)。排出プレート31乃至35の長さを10cm〜30cmとすることで、必要かつ十分な効果を得ることができる。即ち、排出プレート31乃至35の長さを10cmよりも短くした場合、排出口9Bから排出される空気を十分に方向付けることができない。また、排出プレート31乃至35の長さを30cmよりも長くしても、排出口9Bから排出される空気の方向付けに変化は見られない。さらに、ダクト8A,8B内に排出プレート31乃至35を取り付けるときのスペース的な問題や取り付けにかかる手間も増えてしまうため、長さを10cm〜30cmに設定することが好ましい。
なお、排出プレート31乃至35の湾曲は、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまで一律の曲率半径によって形成しても良く、また、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの途中において、局所的に湾曲するように形成してもよい。
【0030】
図2,図3に戻り排出プレート31乃至35について説明する。
排出プレート31乃至35は、各ダクト8A,8Bにおいて、圧力容器2の内周壁面2Aとダクト8の導風板22との間に図外の締結手段を介して、或いは、溶接により固定され、先端部31A乃至35Aが排出口9Bと略同一位置で終端する。
排出プレート31乃至35は、各ダクト8A;8Bにおいて、円周方向に沿って所定の間隔をもって配設される。例えば、排出プレート31乃至35は、排出プレート31乃至35の後端部31B乃至35Bが、加硫缶中心Oから放射状に延長する仮想の放射線と一致する位置に、円周方向に沿って均等な間隔で配置される。
各ダクト8A,8Bにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する方向が同一円周方向を向き、各ダクト8A,8Bにおける円周方向の一端側から他端側に向かうに従って、湾曲する曲率が大きくなるように設けられる。
【0031】
具体的には、一方のダクト8Aにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する方向が下向きとなるように設けられ、曲率の最も小さい排出プレート31が最も上に配設され、その下に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35、排出プレート35の順に上から下に向かって曲率が漸次大きくなるように配設される。他方のダクト8Bにおいて、排出プレート31乃至35は湾曲する方向が上向きとなるように設けられ、曲率の最も小さい排出プレート31が最も下に配設され、その上に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35、排出プレート35の順に下から上に向かって曲率が漸次大きくなるように配設される。
【0032】
よって、各ダクト8A,8Bに配設された各排出プレート31乃至35は、湾曲する方向を同一円周方向に向けて、加硫缶中心Oを挟んで互いに対向する位置に同一形状のものが設けられる。換言すれば、ダクト8Aに設けられた排出プレート31乃至35を加硫缶中心O周りに180°回転させてダクト8Bに設けた状態となる。
【0033】
排出プレート31乃至35が、ダクト8A,8Bに設けられたことにより排出口9Bには排出プレート31乃至35によって区画される部分ダクトA乃至Fが形成される。
ダクト8Aにおいて、部分ダクトAは、排出プレート31と内周壁面2Aと板片21と導風板22とで形成され、部分ダクトBは、排出プレート31と排出プレート32と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトCは、排出プレート32と排出プレート33と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトDは、排出プレート33と排出プレート34と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトEは、排出プレート34と排出プレート35と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトFは、排出プレート35と板片21と内周壁面2Aと導風板22とで形成される。
【0034】
また、ダクト8Bにおいて、部分ダクトAは、排出プレート31と内周壁面2Aと板片21と導風板22とで形成され、部分ダクトBは、排出プレート31と排出プレート32と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトCは、排出プレート32と排出プレート33と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトDは、排出プレート33と排出プレート34と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトEは、排出プレート34と排出プレート35と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトFは、排出プレート35と板片21と内周壁面2Aと導風板22とで形成される。
【0035】
図5(a)は、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図、図5(b)は、ダクト8Bに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図である。
図5(a)に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出される空気はダクト8Aの延長方向に対してやや下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトBから排出される空気は部分ダクトAから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトCから排出される空気は部分ダクトBから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトDから排出される空気は部分ダクトCから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトEから排出された空気は部分ダクトDから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトFから排出された空気は部分ダクトEから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出される。つまり、ダクト8Aを通過した空気は、部分ダクトA乃至Fにより、ダクト8Aの延長方向とは異なる方向に、互いに異なる角度で内周壁面2Aに沿って同一円周方向に排出される。
【0036】
また、図5(b)に示すように、ダクト8Bの部分ダクトAから排出される空気は、ダクト8Aの延長方向に対してやや上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトBから排出される空気は、部分ダクトAから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトCから排出される空気は、部分ダクトBから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトDから排出される空気は、部分ダクトCから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトEから排出された空気は、部分ダクトDから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトFから排出された空気は、部分ダクトEから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出される。つまり、ダクト8Bを通過した空気は、部分ダクトA乃至Fにより、ダクト8Bの延長方向とは異なる方向に、互いに異なる角度で内周壁面2Aに沿って同一円周方向に排出される。
よって、ダクト8A及びダクト8Bに形成された部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れは、加硫缶中心O周りの一方向の流れとなる。
【0037】
図6は、ダクト8A及びダクト8Bから排出された空気が気密扉3の裏面3Aに衝突したときの流れを示す図である。同図において、実線で示す矢印は、ダクト8Aから排出された空気の流れを示し、破線で示す矢印は、ダクト8Bから排出された空気の流れを示す。
図6に示すように、ダクト8A,8Bの排出プレート31乃至35によって、異なる方向に方向付けされて排出された空気は、それぞれ、気密扉3の裏面3Aに衝突し、裏面3Aを横切るように流れる。詳細には、ダクト8Aの部分ダクトAから排出された空気は、気密扉3の裏面3Aにおいて気密扉3の中心よりもやや下側を横切るように流れ、部分ダクトBから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトAから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトCから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトBから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトDから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトCから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトEから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトDから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトFから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトEから排出された空気の流れよりも下側を流れる。
【0038】
また、ダクト8Bから排出された空気は、気密扉3の裏面3Aにおいて気密扉3の中心よりもやや上側をダクト8Aから排出された空気とは逆向きに横切るように流れ、部分ダクトAから排出された空気が裏面3Aの中心よりもやや上側を横切るように流れ、部分ダクトBから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトAから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトCから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトBから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトDから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトCから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトEから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトDから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトFから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトEから排出された空気の流れよりも上側を流れる。
つまり、ダクト8Aから排出される空気に対して、ダクト8Bから排出される空気を逆向きに排出させることで、ダクト8A及びダクト8Bから排出された空気は、圧力容器2の内周面において同一円周方向に流れることになる。よって、ダクト8A及びダクト8Bから排出された空気は、気密扉3の裏面3Aに衝突し、裏面3Aを横切るように流れた後に、圧力容器2内における旋回流F1,F2となって開閉端側から閉塞端側に流れることになる(図7参照)。
【0039】
以上、説明したように、ダクト8A,8Bを圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設し、各ダクト8A,8Bに異なる角度で湾曲する排出プレート31乃至35の湾曲する方向を同一円周方向となるように設けるとともに、各ダクト8A,8Bにおいて、排出プレート31乃至35の湾曲する曲率が一方向に向けて漸次大きくなるように設けられたことにより、ダクト8A,8Bの各排出口9Bから吹き出される空気の流れは、図5,図6に示すように流れ、圧力容器2内全体に亘るに旋回流F1,F2を発生させることができる。また、ダクト8A;8Bの円周方向に沿う長さXを内周壁面2Aの円周長Lの25%以下としたことで、図6に示すように、ダクト8Aから排出された空気とダクト8Bから排出された空気とが互いに干渉することが防止され、効率良く旋回流を生じさせることができる。
【0040】
図7は、圧力容器2内に発生する旋回流を模式的に示す図である。同図において、実線は、ダクト8Aからの空気の流れを示し、破線は、ダクト8Bからの空気の流れを示している。
同図に示すように、ダクト8A;8Bの排出プレート31乃至35を通過し、部分ダクトA乃至Fから異なる角度で排出された空気は、内周壁面2Aを円周方向に沿いながら、それぞれ気密扉3に衝突し、気密扉3の裏面3Aに沿って横切るように流れる。そして、気密扉3の裏面3Aを流れた空気は、内周壁面2Aに対してそれぞれ異なる角度で傾斜した状態で流れることで、内周壁面2Aの円周方向に沿うような回転する流れを生じさせる。さらに、回転する空気は、気密扉3側から閉塞端側に内周壁面2Aに沿って円を描くように螺旋状に流れて、圧力容器2内における旋回流となって、隔壁7に設けられた熱源5を通過して空気供給領域R2に取り込まれることになる。
【0041】
具体的には、ダクト8Aの排出プレート31乃至35によって方向付けされた状態で排出された空気は、内周壁面2Aに沿って下向きに異なる角度で流れて図7に示す一方の旋回流F1となり、ダクト8Bの排出プレート20から排出された空気が内周壁面2Aに沿って上向きに流れて図7に示す他方の旋回流F2となる。また、ダクト8A;8Bが、互いに対向して均等に設けられているため、旋回流F1,F2は互いに半周期ずれた流れとなる。
一方の旋回流F1は、同図に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出された流れF1A、部分ダクトBから排出された流れF1B、部分ダクトCから排出された流れF1C、部分ダクトDから排出された流れF1D、部分ダクトEから排出された流れF1E、部分ダクトFから排出された流れF1Fによって形成される。また、他方の旋回流F2は、ダクト8Bの部分ダクトAから排出された流れF2A、部分ダクトBから排出された流れF2B、部分ダクトCから排出された流れF2C、部分ダクトDから排出された流れF2D、部分ダクトEから排出された流れF2E、部分ダクトFから排出された流れF2Fによって形成される。つまり、部分ダクトA乃至Fを構成する排出プレート31乃至35の湾曲する曲率を変化させることで、流れF1Aから流れF1Fまでの旋回流F1の幅W、及び、流れF2Aから流れF2Fまでの旋回流F2の幅Wを制御することができる。よって、旋回流F1の流れF1Fと旋回流F2の流れF2Aとの距離が近づくように排出プレート31乃至35の湾曲する曲率を変化させることにより、加硫領域R1内の全体に亘る旋回流F1,F2を生じさせることが可能となる。
【0042】
図8(a)は従来の加硫缶内部の温度変化を示すグラフを示し、図8(b)は本発明の加硫缶1の温度変化を示すグラフを示す。図8(a)は従来の加硫缶の加硫領域内下部(図7のP1;Q1に相当する位置)における気密扉3側の温度及び空気供給領域R2側の温度の時間変化を示したグラフである。また、図8(b)は、図8(a)で温度を測定した同一の位置P1;Q1の温度変化と、位置P1;Q1に対向する上部の位置P2;Q2とにおけるの温度の時間変化を示したグラフである(図7参照)。
【0043】
従来の加硫缶では、図8(a)に示すように、気密扉3側下部の位置P1の温度が空気供給領域側下部の位置Q1の温度に比べて急速に上昇し、加硫缶内の温度が一定となるまでに、約20℃の温度差が生じた状態で加熱されている。そして、位置P1の温度と位置Q1の温度とが最高温度に到達するまでにおよそ20分の差が生じている。
一方、本実施形態に係る加硫缶1では、図8(b)に示すように、気密扉3側上部及び下部の位置P1;P2の温度と、空気供給領域R2側上部及び下部の位置Q1;Q2の温度とが60℃近傍まで略同一の温度勾配で上昇した後に、気密扉3側の位置P1;位置P2の温度と、空気供給領域R2側の位置Q1;位置Q2との間に温度に差が生じるものの、再び略同一の温度勾配で上昇している。
【0044】
同図から明らかなように、気密扉3側の位置P1;P2の温度と、空気供給領域R2側の位置Q1;Q2との間の温度差は約3℃程度のもので、従来の加硫缶で生じる温度差に比べて非常に小さなものとなる。つまり、本発明の加硫缶1は、ダクト8A,8Bに複数の異なる角度で湾曲する排出プレート31乃至35を湾曲する曲率が漸次大きくなるように設けて加硫領域R1内全体に亘る旋回流F1,F2を発生させて、ファン6によって加熱された空気を循環させることにより、圧力容器2内を略均一に温度上昇させることが可能となる。
つまり、本発明の加硫缶1では、圧力容器2内の温度が延長方向においてほぼ均一に温度上昇するので、圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納された複数のタイヤ10の加硫において、タイヤ10が格納される位置に関わらず均一な温度上昇により加硫することができる。さらに、圧力容器2の上部、下部についても均一に温度上昇するので、個々のタイヤに対しても円周方向から均一な温度上昇により均一に加熱することができ、タイヤ全体を均一に加硫することができる。
【0045】
実施形態2
実施形態1では複数の排出プレート31乃至35を異なる曲率で湾曲するように形成したが、実施形態2では排出プレート31乃至35を後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で捻れるように形成した点で実施形態1と異なる。
【0046】
図9(a)は、実施形態2に係る排出プレート31乃至35の正面図、図9(b)は、実施形態2に係る排出プレート31乃至35の側面図である。
以下、同図を用いて本実施形態について説明する。なお、実施形態1と同一構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。なお、各ダクト8A;8Bの構成及び各排出プレート31乃至35が設けられる間隔は、実施形態1と同じものとして説明する。
【0047】
実施形態2における排出プレート31乃至35は、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって、それぞれ異なる角度で内周壁面近接方向に捻れる。本実施形態では、ダクトAに排出プレート31乃至35が配設された状態において排出プレート31乃至35を正面視したときに、先端部31A乃至35Aの導風板22側が先端部31A乃至35Aの内周壁面2側に対して右回りに回転して内周壁面2Aに近接するように捻れているものとして説明する(図9)。排出プレート31乃至35は、排出プレート31の捩れる角度が1番小さく、次に排出プレート32の捩れる角度が2番目に小さく、次に排出プレート33の捩れる角度が3番目に小さく、次に排出プレート34の捩れる角度が4番目に小さく、次に排出プレート35の捩れる角度が5番目に小さく形成される。換言すると、排出プレート31,排出プレート32,排出プレート32,排出プレート33,排出プレート34,排出プレート35の順に捩れる角度が大きくなるように設定される。また、排出プレート31乃至35は、各ダクト8A,8Bの円周方向において一端側から他端側に向かうに従って捻れる角度が漸次大きくなるように配設される。なお、排出プレート31乃至35の長さは、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの直線長さLが10cm〜30cmとなるように設定される。
【0048】
具体的には、一方のダクト8Aにおいて、捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も上に、その下に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に上から下に向かって捩れる角度が漸次大きくなるように配設される。
また、他方のダクト8Bにおいて、排出プレート31乃至35は、先導風板22側の先端部31A乃至35Aが右回りに内周壁面2Aに近接するように設けられ、捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も下に、その上に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に下から上に向かって捻れる角度が漸次大きくなるように配設される。
よって、ダクト8A,8Bの排出口には、排出プレート31乃至35で区画される部分ダクトA乃至Fが形成される。
【0049】
図10は、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図である。同図に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の先端部31Aの捻れにより内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿ってやや下向きに排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31の先端部31A及び排出プレート32の先端部32Aの捻れにより部分ダクトAから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32の先端部32A及び排出プレート33の先端部33Aの捻れにより部分ダクトBから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33の先端部33A及び排出プレート34の先端部34Aの捻れにより部分ダクトCから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34の先端部34A及び排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトDから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトEから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。
【0050】
また、ダクト8Bの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の先端部31Aの捻れにより内周壁面2Aに押し付けられように、内周壁面2Aに沿ってやや上向きに排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31の先端部31A及び排出プレート32の先端部32Aの捻れにより部分ダクトAから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32の先端部32A及び排出プレート33の先端部33Aの捻れにより部分ダクトBから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33の先端部33A及び排出プレート34の先端部34Aの捻れにより部分ダクトCから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34の先端部34A及び排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトDから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトEから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。
【0051】
つまり、ダクト8Bを通過した空気は、排出口9Bの複数の排出プレート31乃至35によって形成される複数の部分ダクトA乃至Fにより円周方向に対して異なる方向に排出され、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れと、ダクト8Bに形成される部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れとは、加硫缶中心O周りの点対称の流れとなる。
【0052】
本実施形態のように、排出プレート31乃至35を構成しても、圧力容器2内全体に亘るに旋回流F1,F2を発生させることができる。
即ち、排出プレート31乃至35を後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって、それぞれ異なる角度で内周面近接方向に捻り、各ダクト8A,8Bの円周方向に沿って捻れる角度が漸次大きくなるように配置することにより、各ダクト8A,8Bに形成される部分ダクトA乃至Fから排出された空気は、図5に示すように内周壁面2Aに沿って円周方向に対して異なる角度及び異なる強さで流れ、図6に示すように気密扉3の裏面3Aを横切るように流れることで、図7に示すような圧力容器2内全体に亘る旋回流F1,F2を発生させることができる。
よって、圧力容器2内の温度が延長方向において略均一に温度上昇させることができるので、圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納された複数のタイヤ10の加硫において、タイヤ10が格納される位置に関わらず均一な温度上昇により加硫することができる。さらに、圧力容器2の上部、下部についても均一に温度上昇するので、個々のタイヤに対しても円周方向から均一な温度上昇により均一に加熱することができ、タイヤ全体を均一に加硫することができる。
【0053】
実施形態3
実施形態1では複数の排出プレート31乃至35を異なる曲率で延長方向に沿って湾曲するように形成し、実施形態2では排出プレート31乃至35を後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で捻れるように形成したが、本実施形態では、複数の排出プレート31乃至35を異なる曲率で延長方向に沿って湾曲するように形成するとともに、延長方向の後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で捻れるように形成した点で実施形態1及び実施形態2と異なる。
【0054】
図11(a)は、実施形態3に係る排出プレート31乃至35の正面図、図11(b)は、実施形態3に係る排出プレート31乃至35の側面図である。以下、同図を用いて本実施形態について説明する。なお、実施形態1と同一構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。なお、各ダクト8A;8Bの構成及び各排出プレート31乃至35が離間する間隔は、実施形態1と同じものとして説明する。
【0055】
実施形態3における排出プレート31乃至35は、延長方向に沿ってそれぞれ異なる曲率で一方向に湾曲し、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で内周壁面近接方向に捩れる。なお、排出プレート31乃至35の捻れる方向については、ダクトAに排出プレート31乃至35が配設された状態において排出プレート31乃至35を正面視したときに、先端部31A乃至35Aの導風板22側が先端部31A乃至35Aの内周壁面2側に対して右回りに回転して内周壁面2Aに近接するように捻れているものとして説明する(図11)。
例えば、排出プレート31乃至35は、排出プレート31の湾曲する曲率及び捩れる角度が1番小さく、次に排出プレート32の曲率及び捩れる角度が2番目に小さく、次に排出プレート33の曲率及び捩れる角度が3番目に小さく、次に排出プレート34の曲率及び捩れる角度が4番目に小さく、次に排出プレート35の曲率及び捩れる角度が5番目に小さい。換言すると、排出プレート31,排出プレート32,排出プレート32,排出プレート33,排出プレート34,排出プレート35の順に湾曲する曲率及び捩れる角度が大きくなるように設定される。なお、排出プレート31乃至35は、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの直線長さが10cm〜30cmとなるように設定される。
【0056】
具体的には、一方のダクト8Aにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する曲率が下向きに設けられ、湾曲する曲率及び捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も上に配設され、その下に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に上から下に向かって、湾曲する曲率及び捩れる角度が漸次大きくなるように配設される。
また、他方のダクト8Bにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する方向が上向きに設けられ、湾曲する曲率及び捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も下に配設され、その上に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に下から上に向かって、湾曲する曲率及び捩れる角度が漸次大きくなるように配設される。
よって、ダクト8A,8Bの排出口には、排出プレート31乃至35に区画される部分ダクトA乃至Fが形成される。
【0057】
図12は、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図である。同図に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の湾曲に加え、先端部31Aの捻れにより、ダクト8Aの延長方向に対してやや下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31及び32の湾曲に加え、先端部31A及び32Aの捻れにより、部分ダクトAから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32及び33の湾曲に加え、先端部32A及び33Aの捻れにより、部分ダクトBから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33及び34の湾曲に加え、先端部33A及び34Aの捻れにより、部分ダクトCから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34及び35の湾曲に加え、先端部34A及び35Aの捻れにより、部分ダクトDから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の湾曲に加え、先端部35Aの捻れにより、部分ダクトEから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。
つまり、ダクト8Aを通過した空気は、排出口9Bの複数の排出プレート31乃至35によって形成される複数の部分ダクトA乃至Gにより円周方向に対して異なる方向に排出される。
【0058】
また、ダクト8Bの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の湾曲に加え、先端部31Aの捻れにより、ダクト8Aの延長方向に対してやや上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31及び32の湾曲に加え、先端部31A及び32Aの捻れにより、部分ダクトAから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32及び33の湾曲に加え、先端部32A及び33Aの捻れにより、部分ダクトBから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33及び34の湾曲に加え、先端部33A及び34Aの捻れにより、部分ダクトCから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34及び35の湾曲に加え、先端部34A及び35Aの捻れにより、部分ダクトDから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の湾曲に加え、先端部35Aの捻れにより、部分ダクトEから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。
つまり、ダクト8Bを通過した空気は、排出口9Bの複数の排出プレート31乃至35によって形成される複数の部分ダクトA乃至Fにより円周方向に対して異なる方向に排出され、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れと加硫缶中心O周りに点対称の流れ、換言すれば、一方向の大きな流れを形成する。
【0059】
本実施形態のように、排出プレート31乃至35を構成しても、圧力容器2内全体に亘るに旋回流F1,F2を発生させることができる。
即ち、排出プレート31乃至35を延長方向に沿ってそれぞれ異なる曲率で一方向に湾曲し、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で内周壁面近接方向に捩れるように構成し、各ダクト8A,8Bにおいて、円周方向に沿って湾曲する方向、及び捻れる方向を同一方向とし、さらに、排出プレート31乃至35の円周方向に沿って湾曲する角度及び捻れる角度を漸次大きくなるように配置することにより、各ダクト8A,8Bに形成される部分ダクトA乃至Fから排出された空気は、図5に示すように内周壁面2Aに沿って円周方向に対して異なる角度及び異なる強さで流れ、図6に示すように気密扉3の裏面3Aを横切るように流れることで、図7に示すような圧力容器2内全体に亘る旋回流F1,F2を発生させることができる。
よって、圧力容器2内の温度が延長方向において略均一に温度上昇させることができるので、圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納された複数のタイヤ10の加硫において、タイヤ10が格納される位置に関わらず均一な温度上昇により加硫することができる。さらに、圧力容器2の上部、下部についても均一に温度上昇するので、個々のタイヤに対しても円周方向から均一な温度上昇により均一に加熱することができ、タイヤ全体を均一に加硫することができる。
【0060】
以上、実施形態1乃至実施形態3で説明したように、一対のダクト8A;8Bを加硫缶の水平位置に配置し、各ダクト8A;8Bにおいて同一円周方向に異なる角度で空気を排出するように複数の排出プレートをダクト8A;8Bにそれぞれ設けることで、圧力容器内全体に亘る旋回流を生じさせることが可能となり、圧力容器内の温度上昇を略均一にすることができる。よって、圧力容器内に格納されるタイヤ10の位置に関わらず均一な加硫をすることができる。
【0061】
なお、排出プレート31乃至35を湾曲させるとして説明したが、排出プレート31乃至35をそれぞれ異なる角度で折り曲げるように形成し、ダクト8A,8Bに設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態1乃至実施形態3で説明した加硫缶1の構成は、一例であって、上記構成とは異なる構成であってもよい。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1 加硫缶、2 圧力容器、2A 内周壁面、3 気密扉、4 床板、5 熱源、
6 ファン、6A モータ、6B 回転翼、7 隔壁、8;8A;8B ダクト、
9A 取り込み口、9B 排出口、10 タイヤ、21 板片、22 導風板、
31乃至35 排出プレート、
F1;F2 旋回流、R1 加硫領域、R2 空気供給領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを加硫成形する際に好適に用いられる加硫缶に関し、特に内部の温度分布を均一化することが可能な加硫缶に関する。
【背景技術】
【0002】
リトレッドタイヤと呼ばれるタイヤの製造方法の一工程として、タイヤの基礎となる台タイヤと、当該台タイヤの円周方向に貼着されるトレッドゴムとをエンベロープ内に収容し、エンベロープ内の圧力を減圧した状態で加硫缶内に投入することにより、台タイヤとトレッドゴムとの間に介在する接着層としてのクッションゴムを加硫し、両者を強固に一体化する加硫工程が存在することが知られている。
加硫工程において用いられる加硫缶は、エンベロープに収容された複数組のタイヤ(台タイヤ及びトレッドゴム)を格納可能な円筒状の圧力容器と、円筒状の圧力容器の延長方向一側部に設けられ、圧力容器内の空気を加熱する熱源と、当該熱源の近傍に配設され、熱源によって加熱された空気を循環させるファンと、圧力容器の延長方向他側部側に開閉自在に設けられた気密扉とを備える。
また、圧力容器の内壁面には、圧力容器の延長方向に沿って延長するダクトが配設され、熱源によって加熱された空気は、ファンによりダクト内に供給され、ダクト内を通る空気がファンとは反対側に設けられた気密扉側において排出される。
そして、気密扉側において排出された空気は、気密扉の壁面に衝突して圧力容器内をファン側に向かって流れ出し、圧力容器内に格納された複数組のタイヤを加熱しながら熱源に到達し、ファン及びダクトによって再び気密扉側から排出される。
つまり、加硫缶は、圧力容器内において加熱された空気を延長方向に向かって循環させることにより、内部に格納された複数組のタイヤを加熱する構成である。また、圧力容器内の圧力は、例えば6気圧から8気圧程度にまで加圧されており、格納された台タイヤ及びトレッドゴムは、エンベロープ内において加熱,加圧された状態で加硫が進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−88049号公報
【特許文献2】特表2008−500898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図13(a)に示す気流分布から明らかなように、従来の加硫缶では、気密扉側に排出された空気が圧力容器内をファン側に流れ込む過程において上昇気流となり易く、圧力容器上部では空気が活発に流動するものの、圧力容器下部では空気の滞留が生じ易くなってしまう。例えば、上昇気流の発生を抑制する方法の一つとして、気密扉側に排出された空気が、圧力容器内をファン側に流れるときの流速を速くする方法が考えられる。そこで、圧力容器内の流速を速くするために、ファンに大きな流量の送出を可能にする遠心ファンを適用し、気密扉側からファン側に流れる空気の流速を上げて、圧力容器内の空気の流れと温度分布に関する実験を行なった。その結果、図13(b)に示すように、気密扉に衝突した気流は、圧力容器下部を這うように進むことで、圧力容器下部における空気の停留を抑制し、圧力容器内の温度のバラツキに多少の改善が見られるものの、十分な効果を得られるものではなかった。
また、上昇気流の発生を抑制する他の方法として、単に気密扉側からファン側に流れる空気の流速を上げるのではなく、圧力容器内における空気の流れ方(気流)を変化させる方法も考えられる。例えば、ダクトの排出口から空気を圧力容器の内壁面に沿って同一円周方向に空気を排出させ、圧力容器内に旋回流を生じさせる方法である。この方法によれば、旋回流により圧力容器内の空気全体を気密扉側からファン側に移動させて、温度のバラツキを低減させることが期待できるが、単純にダクトから同一円周方向に向けて空気を排出させるだけでは、旋回流を十分に制御することができないため、期待するほどの十分な効果を得ることができない。
また、特許文献1には、温度分布を均一化するための設備として、成形物を格納する炉を二重構造とするとともに、炉内に複数の補助熱源を設け、さらに補助熱源の位置に対応するように炉内において回転する撹拌用のファンを設けることにより、炉内のガスを撹拌,混合し、炉内の温度差を均一化にする構造が開示されているが、当該設備は、従来の加硫缶と比して大型であって、さらに複数の動力源が必要であることからエネルギー損失が極めて大きくなるという問題がある。
また、特許文献2には、ダクトを開閉する複数のダクトバルブを設け、ダクトバルブを開閉動作させることにより炉内に乱流を発生させることが開示されているが、ダクトバルブを開閉させる駆動源や制御システムが別途必要となり、設備の大型化、エネルギー損失の増大といった問題点を避けることはできない。
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、規模の大型化及びエネルギー損失の増大を避け、圧力容器内における温度分布を効率良く均一化することが可能な加硫缶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための加硫缶に係る構成として、円筒状の圧力容器内部の一端側に設置された熱源及びファンと、圧力容器の延長方向に延長して内壁面円周上に配設され、ファンによって送風された空気を圧力容器の他端側で排出するダクトとを備え、ダクトの排出口に、内壁面の円周方向に対し、互いに異なる角度で同一円周方向に空気を排出する複数のプレートを圧力容器の円周方向に沿って設ける構成とした。
本構成によれば、熱源によって加熱され、ファン及び複数のダクトによって圧力容器の開閉端側に流れ込んだ空気が、ダクトの排出口に設けられた複数のプレートによって圧力容器の円周方向に向けて排出されるため、一端側から他端側へ流れ込む空気が圧力容器の円周方向に沿って旋回する旋回流となって圧力容器内全体に強制的な対流を生じさせ、圧力容器内の停留をなくすことができる。また、圧力容器内全体に強制的な対流が生じることにより、熱源によって加熱された空気が圧力容器内に行き渡るので、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。さらに、円周方向に対して異なる角度で排出する複数のプレートの向きを制御することにより、ダクトの排出口から排出される空気の広がりや向きを制御することができるので、旋回流の強さや大きさを制御することが可能となる。そして、強さや大きさが制御された旋回流により、圧力容器内全体に生じる強制的な対流を最適化し、圧力容器内の停留をなくすことで熱源によって加熱された空気を圧力容器内に行き渡らせることが可能となり、圧力容器内における温度分布を均一化することができる。よって、本発明の加硫缶で加硫されたタイヤは、圧力容器内部における位置に関わらず均一に加硫することができる。なお、旋回流の大きさとは、圧力容器内を螺旋状に流れる流れの幅である。
【0007】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、複数のプレートは、圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる曲率半径で湾曲し、ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従ってプレートの湾曲する曲率半径が漸次大きくなるように配設される構成とした。
本構成によれば、上記構成の効果に加え、複数のプレートがダクト内において一端側から他端側に向かって一方向に湾曲し、ダクトの円周方向に沿う一端側から他端側に向かって湾曲する角度が漸増することにより、ダクトの排出口から圧力容器の円周方向に向けて排出される空気は、ダクトの大きさよりも広がるように排出することが可能となり、圧力容器内に生じる旋回流の大きさを大きくすることができるので、大きな旋回流により効率良く圧力容器内全体に強制的な対流を生じさせて、圧力容器内の停留をなくし、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0008】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、複数のプレートは、圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる角度で内壁面近接方向に捻れ、ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従って捻れる角度が漸次大きくなるように配設される構成とした。
本構成によれば、上記構成の効果に加え、複数のプレートがダクト内において閉塞端側から開口端側に向かって内壁面近接方向に捻れ、ダクトの円周方向一端側から他端側に向かって捻れる角度が漸増することにより、ダクトの排出口から圧力容器の円周方向に向けて排出される空気は、内壁面方向に寄せられた状態で円周方向に排出されるため、排出口から排出する空気の流速を速くすることができるので、流れの強い旋回流を圧力容器内に生じさせることができる。つまり、強い旋回流により圧力容器内全体に強制的な対流を生じさせることが可能になるので、圧力容器内の停留がなくなり、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0009】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、ダクトは、圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設され、圧力容器の中心を挟んで対称の位置に、同一形状のプレートを各ダクトに設ける構成とした。
本構成によれば、上記効果に加え、ダクトが、圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設され、圧力容器の中心軸を挟んで対称の位置に、同一形状のプレートが同一円周方向に向けて設けられたことにより、2つのダクトから同一円周方向に沿った強力な強制的な対流である旋回流をより効率的に圧力容器内全体に生じさせることができるので、圧力容器内の停留領域がなくなり、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0010】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、ダクトの圧力容器の円周方向に沿う長さが、圧力容器の内周長の15%〜20%に設定される構成とした。
本構成によれば、上記構成による効果に加え、ダクトの圧力容器の円周方向に沿う長さが、圧力容器の内周長の15%〜20%に設定されることにより、一方のダクトから排出される空気と、他方のダクトから排出される空気とが互いに流れを妨げるように干渉することがなくなるので、強力な強制的な対流を効率良く圧力容器内全体に生じさせることができるので、圧力容器内の停留領域がなくなり、圧力容器内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0011】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、プレートは、10〜30cmの間隔でダクトに設けられる構成とした。
本構成によれば、上記構成による効果に加え、プレートは、10〜30cmの間隔でダクトに設けられることにより、より効率的に圧力容器内に旋回流を生じさせることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するための加硫缶に係る他の構成として、プレートは、閉塞端側から開口端側に10cm〜30cmの長さに設定される構成とした。
本構成によれば、プレートが閉塞端側から開口端側に10cm〜30cmの長さに設定されることにより、ファンから送り出された空気の流速を損なうことなく排出できるので、必要かつ十分な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る加硫缶の内部構造を示す概略図である。
【図2】加硫缶の正面図である。
【図3】ダクトの排出口近傍を示す拡大斜視図である。
【図4】排出プレートの正面図及び側面図である。
【図5】ダクトに形成された部分ダクトから排出される空気の方向を示す図である。
【図6】ダクトから排出された空気が蓋体に衝突した後の流れを示す図である。
【図7】圧力容器内に発生する旋回流を模式的に示す図である。
【図8】従来の加硫缶及び本発明の加硫缶内部の温度変化を示すグラフである。
【図9】排出プレートの他の形態の正面図及び側面図である(実施形態2)。
【図10】ダクトから部分ダクトにより排出される空気の方向を示す図である(実施形態2)。
【図11】排出プレートの他の形態の正面図及び側面図である(実施形態3)。
【図12】ダクトから部分ダクトにより排出される空気の方向を示す図である(実施形態3)。
【図13】従来の加硫缶内部の気流分布、及び、温度分布を示す模式図である。
【図14】タイヤを示す分解斜視図及び幅方向断面図である。
【0014】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態1
図1は、本発明に係る加硫缶1の内部構造を示す概略図である。
同図において加硫缶1は、一端が閉塞した円筒状に形成され、内部に複数のタイヤ10を格納可能な圧力容器2と、圧力容器2の他端において開閉自在に設けられた気密扉3とを備える。
圧力容器2の周壁部は、内部に円周方向に沿って隙間なく配置された図外の断熱材等によるライニングが施されており、内部に複数のタイヤ10を格納,加硫可能な加硫領域R1が形成される。
【0016】
気密扉3は、圧力容器2の開口した端部において開閉自在に設けられる扉であって、円筒状の圧力容器2と同心に形成される。気密扉3は、周囲に配設された図外のシール材等を介して圧力容器2の開口部を閉塞し、圧力容器2内に供給される空気が外部に漏洩することを防止する。つまり、一端が閉塞した圧力容器2は、他端を気密扉3で閉じられることにより密閉空間として維持される。圧力容器2とともに密閉空間を形成する気密扉3の裏面側は、圧力容器2とは逆側に球面状に窪み、圧力容器2の中心軸と球面の中心とが同心となるように形成される。
【0017】
圧力容器2の下側半部には、圧力容器2の延長方向に沿って延長する床板4が敷設される。圧力容器2内への搬入に際しては、床板4上を走行可能な台車等を用いて複数のタイヤ10を気密扉3が設けられた開閉端側から閉塞端側へと搬入し、圧力容器2内に設けられた図外のフックに順に吊下げ、複数のタイヤ10を圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納する。
【0018】
ここで、本実施形態に係る加硫缶1内に格納されるタイヤ10について概説する。図14は、加硫缶1によって加硫されるタイヤ10の一例としての未加硫のリトレッドタイヤを分解して示す斜視図及び幅方向断面図である。同図に示すように、タイヤ10は、土台となる台タイヤ11と、台タイヤ11の円周方向表面に貼着されるクッションゴム12、及び、クッションゴム12を介して台タイヤ11の円周方向表面に巻き付けられるトレッドゴム13とから構成される。
【0019】
台タイヤ11は、環状のスチールコード等の部材からなる一対のビード部11Aと、一対のビード部11Aを跨ぐようにトロイダル状に延長するサイド部11B及びクラウン部11Cを有する。クラウン部11Cの内部には、複数のベルトが半径方向に積層される。台タイヤ11は、例えば使用済みタイヤのトレッド部を切削(バフ掛け)することや、表面にトレッドパターンに対応する凹凸を備えていないモールドによって加硫することにより得ることができる。また、台タイヤ11の加硫度は、製品タイヤに要求される加硫度以下の半加硫の状態であってもよい。
【0020】
クッションゴム12は、台タイヤ11及びトレッドゴム13と略同様の組成からなる未加硫のゴムであって、加硫缶1によって加硫されることにより、台タイヤ11とトレッドゴム13とを一体化させる接着層として機能する。トレッドゴム13は、台タイヤ11の周長に対応する長さを有する帯状であって、台タイヤ11のクラウン部11C上に巻き付けられた状態で加硫されることにより、製品タイヤのトレッド部となる部材である。帯状のトレッドゴム13は、例えば一方の金型に所望のトレッドパターンに対応する凹凸が形成されたプレス型の加硫装置にて加硫することにより得ることができる。
【0021】
また、プレス型の加硫装置によって得られた帯状のトレッドゴム13は、台タイヤ11のクッションゴム12が貼着された円周方向表面に沿って巻き付けられ、端部同士が接合されることにより台タイヤ11と予備的に一体化される。
なお、トレッドゴム13の成形装置は、プレス型に限られるものではなく、例えば円環状のトレッドゴム13を成形可能な専用のモールドによって加硫成形してもよい。当該専用のモールドによって成形された円環状のトレッドゴム13を台タイヤ11に巻き付けるためには、図外の拡径装置によってトレッドゴム13を拡径しつつ、トレッドゴム13を台タイヤ11の外周側に配置し、再び元の外径に縮径することにより行われる。また、トレッドゴム13の加硫度は、台タイヤ11と同様に、製品タイヤに要求される加硫度以下の半加硫の状態であってもよい。
【0022】
上述の構成を備えるタイヤ10は、エンベロープと呼ばれる図外の袋体に収容され、圧力容器2内に吊り下げられる。エンベロープ内の圧力は大気圧以下に減圧されており、エンベロープの内表面はトレッドゴム13の外表面に密着する。つまり、タイヤ10がエンベロープ内に収容されると、トレッドゴム13は、台タイヤ11の円周方向表面に対して押し付けられた状態のまま維持される。
なお、加硫缶1の圧力容器2内に格納されるタイヤ10の一例として、加硫済みの台タイヤ11、及び、加硫済みのトレッドゴム13とを備えるリトレッドタイヤについて説明したが、加硫缶1に格納されるタイヤ10は、上記構成に限られるものではなく、成形過程に加硫を工程を含むものであれば如何なるタイヤであってもよい。
【0023】
図1に戻り、再び圧力容器2の構造について説明する。
圧力容器2内の閉塞端側には、空気供給領域R2が形成される。空気供給領域R2は、加硫領域R1を仕切る隔壁7によって形成された領域であって、当該領域内には、加硫領域R1内の空気を加熱しつつ循環させる熱源5及びファン6が設置される。
【0024】
熱源5は、隔壁7内の中央に配置される。熱源5は、例えば電気的に加熱されるヒータであって、ヒータに供給する電力を制御することにより所定温度に発熱する。
ファン6は、熱源5よりも閉塞端側に配置され、モータ6Aとモータ6Aの駆動により回転する回転翼6Bとにより構成される。ファン6は、モータ6Aを駆動することにより回転翼6Bが回転し、加硫領域R1内の空気を空気供給領域R2内に取り込みながら熱源5によって加熱するとともに、空気供給領域R2内の空気を圧縮して、気密扉3側で開口する後述のダクト8の排出口9Bに空気を送出する。
つまり、ファン6が駆動することにより加硫領域R1側から空気供給領域R2側に流入する空気を熱源5によって加熱しながら空気供給領域R2の気圧を高めることにより、空気供給領域R2内に設けられた複数のダクト8の取り込み口9Aに空気を流入させて、気密扉3側で開口するダクト8の排出口9Bから加熱された空気を排出する構成である。
【0025】
図1に示すように、ダクト8は、圧力容器2の内周壁面2Aの延長方向に沿って空気供給領域R2から加硫領域R1を経て気密扉3側へと延長する配管である。本実施例におけるダクト8は、図2の加硫缶1の正面図に示すように、圧力容器2の内周壁面2Aに対して2箇所配設される(以下、ダクト8A,8Bとする)。なお、ダクト8A;8Bは、同一寸法であるものとする。
一方のダクト8Aと他方のダクト8Bとは、圧力容器2の内周壁面2Aの円周方向において互いに相対峙するように均等な間隔をもって水平位置に配設される。具体的には、加硫缶中心Oを通る水平面が、ダクト8A及びダクト8Bの中央を通るように配設される。
ダクト8A;8Bは、圧力容器2の延長方向に沿って延長する断面矩形の管体であって、熱源5によって加熱された空気を排出する排出口9Bが気密扉3側において開口する。
つまり、圧力容器2の閉塞端側に位置する熱源5及びファン6によって加熱,送出された空気は、ダクト8A;8Bを通って開閉端側に位置する気密扉3に向けて排出される。
【0026】
図3は、気密扉3に向けて空気を排出するダクト8A;8Bの排出口9B近傍を示す拡大斜視図である。以下、図2及び図3を用いて説明する。
図3に示すように、ダクト8A;8Bは、圧力容器2の内周壁面2Aから相対峙して立ち上がる一対の板片21;21と、一対の板片21;21と連接し、圧力容器2の内周壁面2Aと対向する導風板22とで管体を形成する。
板片21;21は、互いに所定距離離間して設けられ、圧力容器2の内周壁面2Aから加硫缶中心Oに向けて同一の長さで延長する。板片21;21の離間する距離Nは、少なくとも内周壁面2Aの円周長Mの25%よりも小さい距離で離間するように設定される。好ましくは、板片21;21の離間する距離Nは、内周壁面2Aの円周長Mの15〜20%の範囲で離間するように設けるとよい。
なお、板片21;21は、加硫缶中心O方向に延長するとしたが、内周壁面2Aから水平方向に延長するように設けてもよい。
【0027】
導風板22は、例えば、圧力容器2の内周壁面2Aに沿って湾曲し、板片21;21と連接する。なお、加硫缶1により加硫するタイヤ10の直径が略同一寸法のときには、導風板22をタイヤ10の外周面の曲率に対応するように形成してもよい。但し、導風板22とタイヤ外周面との距離が所定距離以下になると、開閉端側に排出された空気が閉塞端側に流れる妨げとなり、タイヤを均一に加硫できなく虞があるため、導風板22とタイヤ外周面との距離Sが所定距離以下にならないように、板片21,21の長さを調整することが好ましい。
【0028】
ダクト8A;8Bの排出口9Bには、内周壁面2Aの円周方向に沿って複数の排出プレートがそれぞれ設けられる。本実施形態では、排出プレートは、ダクト8A,8Bそれぞれに31乃至35の5つが設けられるものとして説明する。なお、排出プレートの数量は、前記枚数に限らず、適宜設定すればよい。
【0029】
図4(a)は、排出プレート31乃至35の正面図、図4(b)は、排出プレート31乃至35の側面図である。
排出プレート31乃至35は、所定形状に成形される板体であって、それぞれ形状が異なるように形成される。具体的には、図4(a),(b)に示すように、排出プレート31乃至35は、延長方向に沿ってそれぞれ異なる曲率で一方向に湾曲するように形成される。例えば、排出プレート31の湾曲する曲率が1番小さく、次に排出プレート32の曲率が2番目に小さく、次に排出プレート33の曲率が3番目に小さく、次に排出プレート34の曲率が4番目に小さく、次に排出プレート35の曲率が5番目に小さい。換言すると、排出プレート31,排出プレート32,排出プレート32,排出プレート33,排出プレート34,排出プレート35の順に湾曲する曲率が大きくなるように設定される。排出プレート31乃至35の長さは、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの直線長さLが10cm〜30cmとなるように設定される(図4参照)。排出プレート31乃至35の長さを10cm〜30cmとすることで、必要かつ十分な効果を得ることができる。即ち、排出プレート31乃至35の長さを10cmよりも短くした場合、排出口9Bから排出される空気を十分に方向付けることができない。また、排出プレート31乃至35の長さを30cmよりも長くしても、排出口9Bから排出される空気の方向付けに変化は見られない。さらに、ダクト8A,8B内に排出プレート31乃至35を取り付けるときのスペース的な問題や取り付けにかかる手間も増えてしまうため、長さを10cm〜30cmに設定することが好ましい。
なお、排出プレート31乃至35の湾曲は、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまで一律の曲率半径によって形成しても良く、また、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの途中において、局所的に湾曲するように形成してもよい。
【0030】
図2,図3に戻り排出プレート31乃至35について説明する。
排出プレート31乃至35は、各ダクト8A,8Bにおいて、圧力容器2の内周壁面2Aとダクト8の導風板22との間に図外の締結手段を介して、或いは、溶接により固定され、先端部31A乃至35Aが排出口9Bと略同一位置で終端する。
排出プレート31乃至35は、各ダクト8A;8Bにおいて、円周方向に沿って所定の間隔をもって配設される。例えば、排出プレート31乃至35は、排出プレート31乃至35の後端部31B乃至35Bが、加硫缶中心Oから放射状に延長する仮想の放射線と一致する位置に、円周方向に沿って均等な間隔で配置される。
各ダクト8A,8Bにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する方向が同一円周方向を向き、各ダクト8A,8Bにおける円周方向の一端側から他端側に向かうに従って、湾曲する曲率が大きくなるように設けられる。
【0031】
具体的には、一方のダクト8Aにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する方向が下向きとなるように設けられ、曲率の最も小さい排出プレート31が最も上に配設され、その下に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35、排出プレート35の順に上から下に向かって曲率が漸次大きくなるように配設される。他方のダクト8Bにおいて、排出プレート31乃至35は湾曲する方向が上向きとなるように設けられ、曲率の最も小さい排出プレート31が最も下に配設され、その上に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35、排出プレート35の順に下から上に向かって曲率が漸次大きくなるように配設される。
【0032】
よって、各ダクト8A,8Bに配設された各排出プレート31乃至35は、湾曲する方向を同一円周方向に向けて、加硫缶中心Oを挟んで互いに対向する位置に同一形状のものが設けられる。換言すれば、ダクト8Aに設けられた排出プレート31乃至35を加硫缶中心O周りに180°回転させてダクト8Bに設けた状態となる。
【0033】
排出プレート31乃至35が、ダクト8A,8Bに設けられたことにより排出口9Bには排出プレート31乃至35によって区画される部分ダクトA乃至Fが形成される。
ダクト8Aにおいて、部分ダクトAは、排出プレート31と内周壁面2Aと板片21と導風板22とで形成され、部分ダクトBは、排出プレート31と排出プレート32と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトCは、排出プレート32と排出プレート33と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトDは、排出プレート33と排出プレート34と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトEは、排出プレート34と排出プレート35と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトFは、排出プレート35と板片21と内周壁面2Aと導風板22とで形成される。
【0034】
また、ダクト8Bにおいて、部分ダクトAは、排出プレート31と内周壁面2Aと板片21と導風板22とで形成され、部分ダクトBは、排出プレート31と排出プレート32と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトCは、排出プレート32と排出プレート33と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトDは、排出プレート33と排出プレート34と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトEは、排出プレート34と排出プレート35と内周壁面2Aと導風板22とで形成され、部分ダクトFは、排出プレート35と板片21と内周壁面2Aと導風板22とで形成される。
【0035】
図5(a)は、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図、図5(b)は、ダクト8Bに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図である。
図5(a)に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出される空気はダクト8Aの延長方向に対してやや下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトBから排出される空気は部分ダクトAから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトCから排出される空気は部分ダクトBから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトDから排出される空気は部分ダクトCから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトEから排出された空気は部分ダクトDから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトFから排出された空気は部分ダクトEから排出された空気よりも下向きに内周壁面2Aに沿って排出される。つまり、ダクト8Aを通過した空気は、部分ダクトA乃至Fにより、ダクト8Aの延長方向とは異なる方向に、互いに異なる角度で内周壁面2Aに沿って同一円周方向に排出される。
【0036】
また、図5(b)に示すように、ダクト8Bの部分ダクトAから排出される空気は、ダクト8Aの延長方向に対してやや上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトBから排出される空気は、部分ダクトAから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトCから排出される空気は、部分ダクトBから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトDから排出される空気は、部分ダクトCから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトEから排出された空気は、部分ダクトDから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出され、部分ダクトFから排出された空気は、部分ダクトEから排出された空気よりも上向きに内周壁面2Aに沿って排出される。つまり、ダクト8Bを通過した空気は、部分ダクトA乃至Fにより、ダクト8Bの延長方向とは異なる方向に、互いに異なる角度で内周壁面2Aに沿って同一円周方向に排出される。
よって、ダクト8A及びダクト8Bに形成された部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れは、加硫缶中心O周りの一方向の流れとなる。
【0037】
図6は、ダクト8A及びダクト8Bから排出された空気が気密扉3の裏面3Aに衝突したときの流れを示す図である。同図において、実線で示す矢印は、ダクト8Aから排出された空気の流れを示し、破線で示す矢印は、ダクト8Bから排出された空気の流れを示す。
図6に示すように、ダクト8A,8Bの排出プレート31乃至35によって、異なる方向に方向付けされて排出された空気は、それぞれ、気密扉3の裏面3Aに衝突し、裏面3Aを横切るように流れる。詳細には、ダクト8Aの部分ダクトAから排出された空気は、気密扉3の裏面3Aにおいて気密扉3の中心よりもやや下側を横切るように流れ、部分ダクトBから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトAから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトCから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトBから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトDから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトCから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトEから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトDから排出された空気の流れよりも下側を流れ、部分ダクトFから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトEから排出された空気の流れよりも下側を流れる。
【0038】
また、ダクト8Bから排出された空気は、気密扉3の裏面3Aにおいて気密扉3の中心よりもやや上側をダクト8Aから排出された空気とは逆向きに横切るように流れ、部分ダクトAから排出された空気が裏面3Aの中心よりもやや上側を横切るように流れ、部分ダクトBから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトAから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトCから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトBから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトDから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトCから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトEから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトDから排出された空気の流れよりも上側を流れ、部分ダクトFから排出された空気が裏面3Aにおいて部分ダクトEから排出された空気の流れよりも上側を流れる。
つまり、ダクト8Aから排出される空気に対して、ダクト8Bから排出される空気を逆向きに排出させることで、ダクト8A及びダクト8Bから排出された空気は、圧力容器2の内周面において同一円周方向に流れることになる。よって、ダクト8A及びダクト8Bから排出された空気は、気密扉3の裏面3Aに衝突し、裏面3Aを横切るように流れた後に、圧力容器2内における旋回流F1,F2となって開閉端側から閉塞端側に流れることになる(図7参照)。
【0039】
以上、説明したように、ダクト8A,8Bを圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設し、各ダクト8A,8Bに異なる角度で湾曲する排出プレート31乃至35の湾曲する方向を同一円周方向となるように設けるとともに、各ダクト8A,8Bにおいて、排出プレート31乃至35の湾曲する曲率が一方向に向けて漸次大きくなるように設けられたことにより、ダクト8A,8Bの各排出口9Bから吹き出される空気の流れは、図5,図6に示すように流れ、圧力容器2内全体に亘るに旋回流F1,F2を発生させることができる。また、ダクト8A;8Bの円周方向に沿う長さXを内周壁面2Aの円周長Lの25%以下としたことで、図6に示すように、ダクト8Aから排出された空気とダクト8Bから排出された空気とが互いに干渉することが防止され、効率良く旋回流を生じさせることができる。
【0040】
図7は、圧力容器2内に発生する旋回流を模式的に示す図である。同図において、実線は、ダクト8Aからの空気の流れを示し、破線は、ダクト8Bからの空気の流れを示している。
同図に示すように、ダクト8A;8Bの排出プレート31乃至35を通過し、部分ダクトA乃至Fから異なる角度で排出された空気は、内周壁面2Aを円周方向に沿いながら、それぞれ気密扉3に衝突し、気密扉3の裏面3Aに沿って横切るように流れる。そして、気密扉3の裏面3Aを流れた空気は、内周壁面2Aに対してそれぞれ異なる角度で傾斜した状態で流れることで、内周壁面2Aの円周方向に沿うような回転する流れを生じさせる。さらに、回転する空気は、気密扉3側から閉塞端側に内周壁面2Aに沿って円を描くように螺旋状に流れて、圧力容器2内における旋回流となって、隔壁7に設けられた熱源5を通過して空気供給領域R2に取り込まれることになる。
【0041】
具体的には、ダクト8Aの排出プレート31乃至35によって方向付けされた状態で排出された空気は、内周壁面2Aに沿って下向きに異なる角度で流れて図7に示す一方の旋回流F1となり、ダクト8Bの排出プレート20から排出された空気が内周壁面2Aに沿って上向きに流れて図7に示す他方の旋回流F2となる。また、ダクト8A;8Bが、互いに対向して均等に設けられているため、旋回流F1,F2は互いに半周期ずれた流れとなる。
一方の旋回流F1は、同図に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出された流れF1A、部分ダクトBから排出された流れF1B、部分ダクトCから排出された流れF1C、部分ダクトDから排出された流れF1D、部分ダクトEから排出された流れF1E、部分ダクトFから排出された流れF1Fによって形成される。また、他方の旋回流F2は、ダクト8Bの部分ダクトAから排出された流れF2A、部分ダクトBから排出された流れF2B、部分ダクトCから排出された流れF2C、部分ダクトDから排出された流れF2D、部分ダクトEから排出された流れF2E、部分ダクトFから排出された流れF2Fによって形成される。つまり、部分ダクトA乃至Fを構成する排出プレート31乃至35の湾曲する曲率を変化させることで、流れF1Aから流れF1Fまでの旋回流F1の幅W、及び、流れF2Aから流れF2Fまでの旋回流F2の幅Wを制御することができる。よって、旋回流F1の流れF1Fと旋回流F2の流れF2Aとの距離が近づくように排出プレート31乃至35の湾曲する曲率を変化させることにより、加硫領域R1内の全体に亘る旋回流F1,F2を生じさせることが可能となる。
【0042】
図8(a)は従来の加硫缶内部の温度変化を示すグラフを示し、図8(b)は本発明の加硫缶1の温度変化を示すグラフを示す。図8(a)は従来の加硫缶の加硫領域内下部(図7のP1;Q1に相当する位置)における気密扉3側の温度及び空気供給領域R2側の温度の時間変化を示したグラフである。また、図8(b)は、図8(a)で温度を測定した同一の位置P1;Q1の温度変化と、位置P1;Q1に対向する上部の位置P2;Q2とにおけるの温度の時間変化を示したグラフである(図7参照)。
【0043】
従来の加硫缶では、図8(a)に示すように、気密扉3側下部の位置P1の温度が空気供給領域側下部の位置Q1の温度に比べて急速に上昇し、加硫缶内の温度が一定となるまでに、約20℃の温度差が生じた状態で加熱されている。そして、位置P1の温度と位置Q1の温度とが最高温度に到達するまでにおよそ20分の差が生じている。
一方、本実施形態に係る加硫缶1では、図8(b)に示すように、気密扉3側上部及び下部の位置P1;P2の温度と、空気供給領域R2側上部及び下部の位置Q1;Q2の温度とが60℃近傍まで略同一の温度勾配で上昇した後に、気密扉3側の位置P1;位置P2の温度と、空気供給領域R2側の位置Q1;位置Q2との間に温度に差が生じるものの、再び略同一の温度勾配で上昇している。
【0044】
同図から明らかなように、気密扉3側の位置P1;P2の温度と、空気供給領域R2側の位置Q1;Q2との間の温度差は約3℃程度のもので、従来の加硫缶で生じる温度差に比べて非常に小さなものとなる。つまり、本発明の加硫缶1は、ダクト8A,8Bに複数の異なる角度で湾曲する排出プレート31乃至35を湾曲する曲率が漸次大きくなるように設けて加硫領域R1内全体に亘る旋回流F1,F2を発生させて、ファン6によって加熱された空気を循環させることにより、圧力容器2内を略均一に温度上昇させることが可能となる。
つまり、本発明の加硫缶1では、圧力容器2内の温度が延長方向においてほぼ均一に温度上昇するので、圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納された複数のタイヤ10の加硫において、タイヤ10が格納される位置に関わらず均一な温度上昇により加硫することができる。さらに、圧力容器2の上部、下部についても均一に温度上昇するので、個々のタイヤに対しても円周方向から均一な温度上昇により均一に加熱することができ、タイヤ全体を均一に加硫することができる。
【0045】
実施形態2
実施形態1では複数の排出プレート31乃至35を異なる曲率で湾曲するように形成したが、実施形態2では排出プレート31乃至35を後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で捻れるように形成した点で実施形態1と異なる。
【0046】
図9(a)は、実施形態2に係る排出プレート31乃至35の正面図、図9(b)は、実施形態2に係る排出プレート31乃至35の側面図である。
以下、同図を用いて本実施形態について説明する。なお、実施形態1と同一構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。なお、各ダクト8A;8Bの構成及び各排出プレート31乃至35が設けられる間隔は、実施形態1と同じものとして説明する。
【0047】
実施形態2における排出プレート31乃至35は、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって、それぞれ異なる角度で内周壁面近接方向に捻れる。本実施形態では、ダクトAに排出プレート31乃至35が配設された状態において排出プレート31乃至35を正面視したときに、先端部31A乃至35Aの導風板22側が先端部31A乃至35Aの内周壁面2側に対して右回りに回転して内周壁面2Aに近接するように捻れているものとして説明する(図9)。排出プレート31乃至35は、排出プレート31の捩れる角度が1番小さく、次に排出プレート32の捩れる角度が2番目に小さく、次に排出プレート33の捩れる角度が3番目に小さく、次に排出プレート34の捩れる角度が4番目に小さく、次に排出プレート35の捩れる角度が5番目に小さく形成される。換言すると、排出プレート31,排出プレート32,排出プレート32,排出プレート33,排出プレート34,排出プレート35の順に捩れる角度が大きくなるように設定される。また、排出プレート31乃至35は、各ダクト8A,8Bの円周方向において一端側から他端側に向かうに従って捻れる角度が漸次大きくなるように配設される。なお、排出プレート31乃至35の長さは、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの直線長さLが10cm〜30cmとなるように設定される。
【0048】
具体的には、一方のダクト8Aにおいて、捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も上に、その下に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に上から下に向かって捩れる角度が漸次大きくなるように配設される。
また、他方のダクト8Bにおいて、排出プレート31乃至35は、先導風板22側の先端部31A乃至35Aが右回りに内周壁面2Aに近接するように設けられ、捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も下に、その上に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に下から上に向かって捻れる角度が漸次大きくなるように配設される。
よって、ダクト8A,8Bの排出口には、排出プレート31乃至35で区画される部分ダクトA乃至Fが形成される。
【0049】
図10は、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図である。同図に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の先端部31Aの捻れにより内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿ってやや下向きに排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31の先端部31A及び排出プレート32の先端部32Aの捻れにより部分ダクトAから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32の先端部32A及び排出プレート33の先端部33Aの捻れにより部分ダクトBから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33の先端部33A及び排出プレート34の先端部34Aの捻れにより部分ダクトCから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34の先端部34A及び排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトDから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトEから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って下向きに排出される。
【0050】
また、ダクト8Bの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の先端部31Aの捻れにより内周壁面2Aに押し付けられように、内周壁面2Aに沿ってやや上向きに排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31の先端部31A及び排出プレート32の先端部32Aの捻れにより部分ダクトAから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32の先端部32A及び排出プレート33の先端部33Aの捻れにより部分ダクトBから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33の先端部33A及び排出プレート34の先端部34Aの捻れにより部分ダクトCから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34の先端部34A及び排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトDから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の先端部35Aの捻れにより部分ダクトEから排出された空気よりも強く内周壁面2Aに押し付けられるように、内周壁面2Aに沿って上向きに排出される。
【0051】
つまり、ダクト8Bを通過した空気は、排出口9Bの複数の排出プレート31乃至35によって形成される複数の部分ダクトA乃至Fにより円周方向に対して異なる方向に排出され、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れと、ダクト8Bに形成される部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れとは、加硫缶中心O周りの点対称の流れとなる。
【0052】
本実施形態のように、排出プレート31乃至35を構成しても、圧力容器2内全体に亘るに旋回流F1,F2を発生させることができる。
即ち、排出プレート31乃至35を後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって、それぞれ異なる角度で内周面近接方向に捻り、各ダクト8A,8Bの円周方向に沿って捻れる角度が漸次大きくなるように配置することにより、各ダクト8A,8Bに形成される部分ダクトA乃至Fから排出された空気は、図5に示すように内周壁面2Aに沿って円周方向に対して異なる角度及び異なる強さで流れ、図6に示すように気密扉3の裏面3Aを横切るように流れることで、図7に示すような圧力容器2内全体に亘る旋回流F1,F2を発生させることができる。
よって、圧力容器2内の温度が延長方向において略均一に温度上昇させることができるので、圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納された複数のタイヤ10の加硫において、タイヤ10が格納される位置に関わらず均一な温度上昇により加硫することができる。さらに、圧力容器2の上部、下部についても均一に温度上昇するので、個々のタイヤに対しても円周方向から均一な温度上昇により均一に加熱することができ、タイヤ全体を均一に加硫することができる。
【0053】
実施形態3
実施形態1では複数の排出プレート31乃至35を異なる曲率で延長方向に沿って湾曲するように形成し、実施形態2では排出プレート31乃至35を後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で捻れるように形成したが、本実施形態では、複数の排出プレート31乃至35を異なる曲率で延長方向に沿って湾曲するように形成するとともに、延長方向の後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で捻れるように形成した点で実施形態1及び実施形態2と異なる。
【0054】
図11(a)は、実施形態3に係る排出プレート31乃至35の正面図、図11(b)は、実施形態3に係る排出プレート31乃至35の側面図である。以下、同図を用いて本実施形態について説明する。なお、実施形態1と同一構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。なお、各ダクト8A;8Bの構成及び各排出プレート31乃至35が離間する間隔は、実施形態1と同じものとして説明する。
【0055】
実施形態3における排出プレート31乃至35は、延長方向に沿ってそれぞれ異なる曲率で一方向に湾曲し、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で内周壁面近接方向に捩れる。なお、排出プレート31乃至35の捻れる方向については、ダクトAに排出プレート31乃至35が配設された状態において排出プレート31乃至35を正面視したときに、先端部31A乃至35Aの導風板22側が先端部31A乃至35Aの内周壁面2側に対して右回りに回転して内周壁面2Aに近接するように捻れているものとして説明する(図11)。
例えば、排出プレート31乃至35は、排出プレート31の湾曲する曲率及び捩れる角度が1番小さく、次に排出プレート32の曲率及び捩れる角度が2番目に小さく、次に排出プレート33の曲率及び捩れる角度が3番目に小さく、次に排出プレート34の曲率及び捩れる角度が4番目に小さく、次に排出プレート35の曲率及び捩れる角度が5番目に小さい。換言すると、排出プレート31,排出プレート32,排出プレート32,排出プレート33,排出プレート34,排出プレート35の順に湾曲する曲率及び捩れる角度が大きくなるように設定される。なお、排出プレート31乃至35は、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aまでの直線長さが10cm〜30cmとなるように設定される。
【0056】
具体的には、一方のダクト8Aにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する曲率が下向きに設けられ、湾曲する曲率及び捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も上に配設され、その下に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に上から下に向かって、湾曲する曲率及び捩れる角度が漸次大きくなるように配設される。
また、他方のダクト8Bにおいて、排出プレート31乃至35は、湾曲する方向が上向きに設けられ、湾曲する曲率及び捩れる角度の最も小さい排出プレート31が最も下に配設され、その上に排出プレート32、排出プレート33、排出プレート34、排出プレート35の順に下から上に向かって、湾曲する曲率及び捩れる角度が漸次大きくなるように配設される。
よって、ダクト8A,8Bの排出口には、排出プレート31乃至35に区画される部分ダクトA乃至Fが形成される。
【0057】
図12は、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fにより排出される空気の方向を示す図である。同図に示すように、ダクト8Aの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の湾曲に加え、先端部31Aの捻れにより、ダクト8Aの延長方向に対してやや下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31及び32の湾曲に加え、先端部31A及び32Aの捻れにより、部分ダクトAから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32及び33の湾曲に加え、先端部32A及び33Aの捻れにより、部分ダクトBから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33及び34の湾曲に加え、先端部33A及び34Aの捻れにより、部分ダクトCから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34及び35の湾曲に加え、先端部34A及び35Aの捻れにより、部分ダクトDから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の湾曲に加え、先端部35Aの捻れにより、部分ダクトEから排出される空気よりも下向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。
つまり、ダクト8Aを通過した空気は、排出口9Bの複数の排出プレート31乃至35によって形成される複数の部分ダクトA乃至Gにより円周方向に対して異なる方向に排出される。
【0058】
また、ダクト8Bの部分ダクトAから排出される空気は、排出プレート31の湾曲に加え、先端部31Aの捻れにより、ダクト8Aの延長方向に対してやや上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトBから排出される空気は、排出プレート31及び32の湾曲に加え、先端部31A及び32Aの捻れにより、部分ダクトAから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトCから排出される空気は、排出プレート32及び33の湾曲に加え、先端部32A及び33Aの捻れにより、部分ダクトBから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトDから排出される空気は、排出プレート33及び34の湾曲に加え、先端部33A及び34Aの捻れにより、部分ダクトCから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトEから排出される空気は、排出プレート34及び35の湾曲に加え、先端部34A及び35Aの捻れにより、部分ダクトDから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。また、部分ダクトFから排出される空気は、排出プレート35の湾曲に加え、先端部35Aの捻れにより、部分ダクトEから排出される空気よりも上向き、かつ、内周壁面2Aに押し付けられるように排出される。
つまり、ダクト8Bを通過した空気は、排出口9Bの複数の排出プレート31乃至35によって形成される複数の部分ダクトA乃至Fにより円周方向に対して異なる方向に排出され、ダクト8Aに形成された部分ダクトA乃至Fから排出される空気の流れと加硫缶中心O周りに点対称の流れ、換言すれば、一方向の大きな流れを形成する。
【0059】
本実施形態のように、排出プレート31乃至35を構成しても、圧力容器2内全体に亘るに旋回流F1,F2を発生させることができる。
即ち、排出プレート31乃至35を延長方向に沿ってそれぞれ異なる曲率で一方向に湾曲し、後端部31B乃至35Bから先端部31A乃至35Aに向かって一方向に異なる角度で内周壁面近接方向に捩れるように構成し、各ダクト8A,8Bにおいて、円周方向に沿って湾曲する方向、及び捻れる方向を同一方向とし、さらに、排出プレート31乃至35の円周方向に沿って湾曲する角度及び捻れる角度を漸次大きくなるように配置することにより、各ダクト8A,8Bに形成される部分ダクトA乃至Fから排出された空気は、図5に示すように内周壁面2Aに沿って円周方向に対して異なる角度及び異なる強さで流れ、図6に示すように気密扉3の裏面3Aを横切るように流れることで、図7に示すような圧力容器2内全体に亘る旋回流F1,F2を発生させることができる。
よって、圧力容器2内の温度が延長方向において略均一に温度上昇させることができるので、圧力容器2の延長方向に沿って並べて格納された複数のタイヤ10の加硫において、タイヤ10が格納される位置に関わらず均一な温度上昇により加硫することができる。さらに、圧力容器2の上部、下部についても均一に温度上昇するので、個々のタイヤに対しても円周方向から均一な温度上昇により均一に加熱することができ、タイヤ全体を均一に加硫することができる。
【0060】
以上、実施形態1乃至実施形態3で説明したように、一対のダクト8A;8Bを加硫缶の水平位置に配置し、各ダクト8A;8Bにおいて同一円周方向に異なる角度で空気を排出するように複数の排出プレートをダクト8A;8Bにそれぞれ設けることで、圧力容器内全体に亘る旋回流を生じさせることが可能となり、圧力容器内の温度上昇を略均一にすることができる。よって、圧力容器内に格納されるタイヤ10の位置に関わらず均一な加硫をすることができる。
【0061】
なお、排出プレート31乃至35を湾曲させるとして説明したが、排出プレート31乃至35をそれぞれ異なる角度で折り曲げるように形成し、ダクト8A,8Bに設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態1乃至実施形態3で説明した加硫缶1の構成は、一例であって、上記構成とは異なる構成であってもよい。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1 加硫缶、2 圧力容器、2A 内周壁面、3 気密扉、4 床板、5 熱源、
6 ファン、6A モータ、6B 回転翼、7 隔壁、8;8A;8B ダクト、
9A 取り込み口、9B 排出口、10 タイヤ、21 板片、22 導風板、
31乃至35 排出プレート、
F1;F2 旋回流、R1 加硫領域、R2 空気供給領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の圧力容器内部の一端側に設置された熱源及びファンと、
前記圧力容器の延長方向に延長して内壁面円周上に配設され、前記ファンによって送風された空気を圧力容器の他端側で排出するダクトと、
を備え、
前記ダクトの排出口に、前記内壁面の円周方向に対し、互いに異なる角度で同一円周方向に前記空気を排出する複数のプレートを前記圧力容器の円周方向に沿って設けた加硫缶。
【請求項2】
前記複数のプレートは、前記圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる曲率半径で湾曲し、
前記ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従って前記プレートの湾曲する曲率半径が漸次大きくなるように配設される請求項1記載の加硫缶。
【請求項3】
前記複数のプレートは、前記圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる角度で内壁面近接方向に捻れ、
前記ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従って捻れる角度が漸次大きくなるように配設される請求項1又は請求項2記載の加硫缶。
【請求項4】
前記ダクトは、前記圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設され、前記圧力容器の中心を挟んで対称の位置に、同一形状のプレートが各ダクトに設けられる請求項1乃至請求項3いずれか記載の加硫缶。
【請求項5】
前記ダクトは、前記圧力容器の円周方向に沿って、前記圧力容器の内周長の15%〜20%の長さを有する請求項1乃至請求項4いずれか記載の加硫缶。
【請求項6】
前記プレートは、10〜30cmの間隔で前記ダクトに設けられる請求項1乃至請求項5いずれか記載の加硫缶。
【請求項7】
前記プレートは、前記圧力容器の一端側から他端側に10cm〜30cmの長さを有する請求項1乃至請求項6いずれか記載の加硫缶。
【請求項1】
円筒状の圧力容器内部の一端側に設置された熱源及びファンと、
前記圧力容器の延長方向に延長して内壁面円周上に配設され、前記ファンによって送風された空気を圧力容器の他端側で排出するダクトと、
を備え、
前記ダクトの排出口に、前記内壁面の円周方向に対し、互いに異なる角度で同一円周方向に前記空気を排出する複数のプレートを前記圧力容器の円周方向に沿って設けた加硫缶。
【請求項2】
前記複数のプレートは、前記圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる曲率半径で湾曲し、
前記ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従って前記プレートの湾曲する曲率半径が漸次大きくなるように配設される請求項1記載の加硫缶。
【請求項3】
前記複数のプレートは、前記圧力容器の一端側から他端側に向かって異なる角度で内壁面近接方向に捻れ、
前記ダクトにおける円周方向一端側から他端側に向かうに従って捻れる角度が漸次大きくなるように配設される請求項1又は請求項2記載の加硫缶。
【請求項4】
前記ダクトは、前記圧力容器の内壁面円周上の水平位置に互いに対向して配設され、前記圧力容器の中心を挟んで対称の位置に、同一形状のプレートが各ダクトに設けられる請求項1乃至請求項3いずれか記載の加硫缶。
【請求項5】
前記ダクトは、前記圧力容器の円周方向に沿って、前記圧力容器の内周長の15%〜20%の長さを有する請求項1乃至請求項4いずれか記載の加硫缶。
【請求項6】
前記プレートは、10〜30cmの間隔で前記ダクトに設けられる請求項1乃至請求項5いずれか記載の加硫缶。
【請求項7】
前記プレートは、前記圧力容器の一端側から他端側に10cm〜30cmの長さを有する請求項1乃至請求項6いずれか記載の加硫缶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−91209(P2013−91209A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233886(P2011−233886)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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