説明

加速度センサ及び加速度センサの製造方法

【課題】 センサ基板に形成された空洞部内に、可撓性を有する支持梁で錘体を揺動可能に支持する加速度センサにおいて、空洞部を小さくしてセンサ基板全体を小さくすることにより、加速度センサを小型化する手段を提供する。
【解決手段】 空洞部が形成されてなるセンサ基板と、該センサ基板から突設されて空洞部内に錘体を支持する可撓性のある支持梁とを備え、支持梁に生じた歪量に基づいて錘体に加わった加速度を検出する加速度センサにおいて、支持梁が、空洞部内にセンサ基板の内側面と平行して延びるように設けられたことを特徴とする加速度センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に加わる加速度の大きさを検出するための加速度センサに関し、特に、可撓性を有する支持梁で錘体を支持し、支持梁に生じる歪量に基づいて加速度を検出する加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
物体に加わる加速度の大きさを検出するための加速度センサとしては、可撓性を有する支持梁で錘体を揺動可能に支持し、支持梁に生じた歪量を検出することで加わった加速度の大きさを測定するものが従来用いられている(例えば特許文献1参照)。図10は、従来例に係る加速度センサ70を示す概略斜視図である。図に示すように、加速度センサ70は、断面略矩形の空洞部71が形成されてなるセンサ基板72と、該センサ基板72から突設された可撓性を有する4本の支持梁73と、該4本の支持梁73で支持されることによって空洞部71の中央部に配置された錘体74と、各支持梁73に設けられたピエゾ抵抗素子を配線することで構成されるブリッジ回路(不図示)とを備えるものである。このような構成によれば、加速度センサ70に加速度が加わると、錘体74が揺動して各支持梁73に弾性変形が生じる。これにより、支持梁73に設けられたピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化し、ブリッジ回路から出力される出力電圧が変化する。この出力電圧の変化を検知することにより、錘体74に加わった加速度の大きさを検出することができる。
【0003】
また、加速度センサ70の製造方法、特に支持梁73上にピエゾ抵抗素子を形成する方法としては、従来以下の方法が用いられてきた。すなわち、まず、形成しようとするピエゾ抵抗素子の位置に応じてセンサ基板72にマスキング処理を施した後、エッチング処理を行う。これにより、図11に示すように、センサ基板72の最上層を形成する絶縁体層75は、マスクされていない部分に穴76が開き、その直下の層であるシリコン層77が露呈した状態となる。この状態において、ボロンイオン等の不純物をシリコン層77に拡散すると、シリコン層77に導電性が生じ、ピエゾ抵抗素子78が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−098323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の加速度センサ70では、図10に示すように、支持梁73の延びる方向がセンサ基板72の内側面79と直交する方向であるため、センサ基板72の内側面75と錘体74との間に、支持梁73の長さ分だけの距離を確保する必要があった。これにより、空洞部71部が大きくなりセンサ基板72全体としても大きくなる結果、加速度センサ70が大型化するという問題があった。
【0006】
また、従来の加速度センサ70の製造方法によれば、支持梁73上にピエゾ抵抗素子78を形成する際に、シリコン層77への不純物の拡散度合いによって、形成されるピエゾ抵抗素子78の大きさが変化するため、その寸法を正確に出すのが難しいという問題があった。特に、横幅の狭い支持梁73上にその幅方向に隣接して複数のピエゾ抵抗素子78を形成する場合、ピエゾ抵抗素子78が本来の設計値より大きく形成されてしまうと、相隣接するピエゾ抵抗素子78同士が干渉し合って、出力電圧の変化を正確に検知することができない、という問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、センサ基板に形成された空洞部内に、可撓性を有する支持梁で錘体を揺動可能に支持する加速度センサにおいて、空洞部を小さくしてセンサ基板全体を小さくすることにより、加速度センサを小型化する手段、及びこの加速度センサの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1記載の加速度センサは、空洞部が形成されてなるセンサ基板と、該センサ基板から突設されて前記空洞部内に錘体を支持する可撓性のある支持梁とを備え、前記支持梁に生じた歪量に基づいて前記錘体に加わった加速度を検出する加速度センサにおいて、前記支持梁が、前記空洞部内に前記センサ基板の内側面と平行して延びるように設けられたものである。
【0009】
請求項2記載の加速度センサは、前記支持梁が、その長手方向中央部を前記センサ基板によって支持される一方、その長手方向両端部で前記錘体を支持することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の加速度センサは、前記錘体に加わった加速度を検出するためのブリッジ回路が、前記支持梁の長手方向中央部に設けられたピエゾ抵抗素子を含んでなるホイートストンブリッジ回路であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の加速度センサの製造方法は、錘体を支持する可撓性のある支持梁と、該支持梁上に設けられてその歪量を検出するピエゾ抵抗素子とを備え、支持梁に生じた歪量に基づいて前記錘体に加わった加速度を検出する加速度センサの製造方法において、半導体層と絶縁体層が積層されてなる前記支持梁に対し、その最上層である半導体層に不純物を拡散して導電性を生じさせる工程と、導電性を生じた前記半導体層の一部を切り出してピエゾ抵抗素子とする工程と、を含んでなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る加速度センサによれば、支持梁の延びる方向が、センサ基板の内側面と平行する方向なので、センサ基板の内側面と錘体との間に支持梁の長さ分だけの距離を確保する必要がない。従って、空洞部を小さくすることができ、センサ基板全体としても小さくすることができるので、加速度センサの小型化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る加速度センサによれば、支持梁が、その長手方向中央部をセンサ基板によって支持される一方、その長手方向両端部で錘体を支持するので、安定した錘体の支持が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る加速度センサの製造方法によれば、支持梁上にピエゾ抵抗素子を形成する際に、最上層であるシリコン層全体に不純物を拡散して導電性を生じさせた後、必要な大きさ分だけ切り出すことによってピエゾ抵抗素子を形成するので、設計値通りの正確な大きさのピエゾ抵抗素子を形成することができる。これにより、出力電圧の変化を正確に検知することができ、精度良い加速度測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例に係る加速度センサを図面に基づいて説明する。図1は、加速度センサ1の外観を示す概略斜視図である。加速度センサ1は、空洞部2が形成されてなるセンサ基板3と、該センサ基板3に支持されてその内側面3aと略平行する方向へ延びる4本の支持梁4と、該各支持梁4によって支持されることで空洞部2の中央位置に配置された錘体5と、各支持梁4上に形成されたピエゾ抵抗素子を配線することで構成されるブリッジ回路(不図示)と、を備えるものである。
【0016】
センサ基板3は、シリコン等の半導体とSiO等の絶縁層とが積層されてなる板状部材である。このセンサ基板3は、図1に示すように、肉厚の基台部6と、該基台部6上に設けられた肉薄の薄板部7とを備えるものである。ここで、図11は、図1におけるA−A断面を示す概略縦断面図であるが、基台部6と薄板部7には、その厚み方向を貫通して空洞部2がそれぞれ形成されている。尚、空洞部2の横断面形状は本実施例に限定されず、任意に設計変更が可能である。
【0017】
支持梁4は、図1に示すように、センサ基板3の内側面3aから所定距離だけ離間した内側に、該内側面3aと略平行する方向へ延びる4本の長手部材である。この4本の支持梁4は、可撓性を有し、その長手方向中央部がセンサ基板3に接続されて支持される一方、長手方向両端部が空洞部2内に立設された支持脚8によってそれぞれ下方から支持されている。本実施例では、センサ基板3を構成する薄板部7を一部切り出すことで支持梁4を形成している。より詳細には、図1に示すように、略矩形の薄板部7の各端縁から所定距離だけ内側に、平面視L字型のL字溝9(空洞部2)を相向かい合うようにして4個形成するとともに、各L字溝9から更に所定距離だけ内側に、平面視直線形状の直線溝10を各端縁と平行する方向へ4個形成している。これにより、各L字溝9と各直線溝10との間に形成される4つの長手部分を支持梁4として構成している。尚、支持梁4は、可撓性を有する長手部材であれば足り、センサ基板3とは別部材とすることももちろん可能である。また、支持梁4をセンサ基板3で支持する位置は、その長手方向中央部に限定されず、例えば、長手方向一端部をセンサ基板3で支持し、他端部を支持脚8で支持することも可能である。
【0018】
このように、本発明では、錘体5を支持するための各支持梁4を、センサ基板3の内側面3aと略平行する方向に延びるように設けたので、センサ基板3の内側面3aと錘体5との間に支持梁4の長手方向寸法分の距離を確保する必要がなく、支持梁4の幅寸法より若干大きい距離を確保すれば足りる。これにより、空洞部2を小さくすることができ、センサ基板3全体を小さくすることができるので、加速度センサ1の小型化が可能となる。具体的には、センサ基板3を平面視で約0.5mm四方の大きさとすることができる。
【0019】
錘体5は、支持梁4に加重を加えて弾性変形させる役割を果たすものである。この錘体5は、図1に示すように、4本の支持梁4で支持されることにより、空洞部2の中央位置に配置されている。本実施例では、支持梁4と同様に、センサ基板3の薄板部7を一部切り出すことで錘体5を形成している。より詳細には、図1に示すように、4つの直線溝10によって包囲され、四隅が各支持梁4の両端部に接続された略矩形の部分を錘体5として構成している。尚、錘体5は、一定の重みを有するものであれば足り、センサ基板3や支持梁4とは別部材とすることももちろん可能である。また、錘体5の材質や形状は本実施例に限定されず、適宜設計変更が可能である。
【0020】
ブリッジ回路は、図1には示していないが、支持梁4上に形成された複数のピエゾ抵抗素子を電気配線してなるものである。ここで、図2は、センサ基板3の大きさが平面視で約0.5mm四方である加速度センサ1Aを示す概略平面図である。図に示すように、センサ基板3の中心位置を原点として結晶方位<110>方向にX軸を、
【数1】

方向にY軸を有する座標系を定めた場合、X軸方向に延びる2本の支持梁4上には2個のピエゾ抵抗素子をそれぞれ形成し、Y軸方向に延びる2本の支持梁4上には4個のピエゾ抵抗素子がそれぞれ形成している。より詳細には、支持梁4Aの長手方向中央部すなわちセンサ基板3によって支持された位置には、Y軸方向の抵抗値変化を検出するRy1とRy3を形成し、支持梁4Bの長手方向中央部には、同じくY軸方向の抵抗値変化を検出するRy2とRy4を形成している。一方、支持梁4Cの長手方向中央部には、X軸方向の抵抗値変化を検出するRx1とRx3、及びZ軸方向の抵抗値変化を検出するRz1とRz3をそれぞれ形成している。また、支持梁4Dの長手方向中央部には、X軸方向の抵抗値変化を検出するRx2とRx4、及びZ軸方向の抵抗値変化を検出するRz2とRz4をそれぞれ形成している。
【0021】
図3は、加速度センサ1Aのブリッジ回路の構成を説明するための説明図である。図3(a)は、加速度センサ1に加わったX軸方向への加速度を測定するためのX軸用ブリッジ回路11であって、可変抵抗としての4個のピエゾ抵抗素子Rx1,Rx2,Rx3,Rx4からなるいわゆるフルブリッジ回路である。このX軸用ブリッジ回路11では、ピエゾ抵抗素子Rx1とRx3とが対角位置に配置され、ピエゾ抵抗素子Rx2とRx4とが対角位置に配置されている。また、図3(b)は、加速度センサ1Aに加わったY軸方向への加速度を測定するためのY軸用ブリッジ回路12であって、可変抵抗としての4個のピエゾ抵抗素子Ry1,Ry2,Ry3,Ry4からなるいわゆるフルブリッジ回路である。このY軸用ブリッジ回路12では、ピエゾ抵抗素子Ry1とRy3とが対角位置に配置され、ピエゾ抵抗素子Ry2とRy4とが対角位置に配置されている。また、図3(c)は、加速度センサ1Aに加わったZ軸方向への加速度を測定するためのZ軸用ブリッジ回路13であって、可変抵抗としての4個のピエゾ抵抗素子Rz1,Rz2,Rz3,Rz4と固定抵抗としての2個の参照抵抗素子Rc,R’cとからなる、いわゆるハーフブリッジ回路である。このZ軸用ブリッジ回路13では、ピエゾ抵抗素子Rz1+Rz4とRz2+Rz3とが対角位置に配置され、参照抵抗素子RcとR’cとが対角位置に配置されている。
【0022】
このように、加速度センサ1Aでは、Z軸用ブリッジ回路13だけをハーフブリッジとして構成している。これは、加速度センサ1Aは、センサ基板3の大きさが約0.5mm四方と小さく、各支持梁4の幅寸法も小さいため、Z軸用ブリッジ回路13をフルブリッジ回路として構成しようとすると、その配線が複雑となって幅狭の各支持梁4上を引き回すのが困難だからである。従って、各支持梁4の長手方向中央部に4個のピエゾ抵抗素子を形成して、配線の簡略化が可能なハーフブリッジとしてZ軸用ブリッジ回路13を構成している。尚、X軸用ブリッジ回路11やY軸用ブリッジ回路12をハーフブリッジとして構成することも可能である。
【0023】
表1は、加速度センサ1Aに対し、X軸方向への加速度A、Y軸方向への加速度A、又はZ軸方向への加速度Aが加わった時の各ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化を示したものである。ここで、表1では、(+)はピエゾ抵抗素子の抵抗値が増加することを、(−)はピエゾ抵抗素子の抵抗値が減少することを、また(0)はピエゾ抵抗素子の抵抗値に変化がないことをそれぞれ示している。例えば、加速度センサ1AにX軸方向への加速度Aが加わった場合、4本の支持梁4は、図4に示すようにそれぞれ変形し、Y軸方向に延びる2本の支持梁4C,4Dのうち一方の支持梁4Cは長手方向中央部に引張り歪が生じ、他方の支持梁4Dは長手方向中央部に圧縮歪が発生した状態となる。これにより、表1の上から2行目に示すように、支持梁4Cの長手方向中央部に形成されたピエゾ抵抗素子Rx1とRx3は抵抗値が減少し、支持梁4Dの長手方向中央部に形成されたピエゾ抵抗素子Rx2とRx4は抵抗値が増加する。また、支持梁4Cの長手方向中央部に形成されたピエゾ抵抗素子Rz1とRz3は抵抗値が減少し、支持梁4Dの長手方向中央部に形成されたピエゾ抵抗素子Rz2とRz4は抵抗値が増加するため、表1に示すように、Rz1+Rz4の抵抗値は変化せず、またRz2+Rz3の抵抗値も変化しない。
【0024】
【表1】

【0025】
一方、加速度Aが加わった場合、図4に示すように、X軸方向に延びる2本の支持梁4A,4Bは、その長手方向中央部を挟んで一端側に引張り歪が、他端側に圧縮歪がそれぞれ発生した状態となる。これにより、表2の上から2行目に示すように、支持梁4及び支持梁4の長手方向中央部に形成されたピエゾ抵抗素子Ry1,Ry2,Ry3,及びRy4は、圧縮領域にあるピエゾ抵抗素子Ry1とRy2の抵抗値が増加し、引張り領域にあるピエゾ抵抗素子Ry3とRy4の抵抗値が減少する。
【0026】
【表2】

【0027】
このような各ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化によれば、図3(a)に示すX軸用ブリッジ回路11では、ピエゾ抵抗素子Rx1とRx3の抵抗値が減少し、ピエゾ抵抗素子Rx2とRx4の抵抗値が増加するため、X軸用ブリッジ回路11のバランスが崩れ、不平衡電圧として出力電圧を検出する。一方、図3(b)に示すY軸用ブリッジ回路12では、ピエゾ抵抗素子Ry1とRy2の抵抗値が減少し、ピエゾ抵抗素子Ry3とRy4の抵抗値が増加するため、Y軸用ブリッジ回路12全体としてのバランスは崩れず、出力電圧は検出しない。また、図3(c)に示すZ軸用ブリッジ回路13では、前述のようにRz1+Rz4の抵抗値は変化せず、またRz2+Rz3の抵抗値も変化しないため、Z軸用ブリッジ回路13のバランスは崩れず、出力電圧は検出しない。これにより、加速度センサ1Aに対し、X軸方向への加速度Aが加わったことが検出される。また、これと同様に、Y軸方向への加速度AやZ軸方向への加速度Aが加わった場合には、Y軸用ブリッジ回路12やZ軸用ブリッジ回路13のバランスが崩れて出力電圧を検出することにより、加速度AyやAzが検出される。
【0028】
次に、図5は、センサ基板3の大きさが平面視で約1.0mm四方である加速度センサ1Bを示す概略平面図である。図に示すように、センサ基板3の中心位置を原点として結晶方位<110>方向にX軸を、
【数1】

方向にY軸を有する座標系を定めた場合、X軸方向に延びる2本の支持梁4A,4B上には2個のピエゾ抵抗素子をそれぞれ形成し、Y軸方向に延びる2本の支持梁4C,4D上には6個のピエゾ抵抗素子をそれぞれ形成している。より詳細には、支持梁4Aの長手方向両端部には、Y軸方向の抵抗値変化を検出するRy1とRy3を形成し、支持梁4Bの長手方向両端部には、同じくY軸方向の抵抗値変化を検出するRy2とRy4を形成している。一方、支持梁4Cの長手方向両端部には、X軸方向の抵抗値変化を検出するRx1とRx3、及びZ軸方向の抵抗値変化を検出するRz1とRz4をそれぞれ形成し、長手方向中央部には、Z軸方向の抵抗値変化を検出するRz2とRz3をそれぞれ形成している。また、支持梁4Dの長手方向両端部には、X軸方向の抵抗値変化を検出するRx2とRx4、及びZ軸方向の抵抗値変化を検出するR’z1とR’z4をそれぞれ形成し、長手方向中央部には、Z軸方向の抵抗値変化を検出するR’z2とR’z3をそれぞれ形成している。
【0029】
図6は、加速度センサ1Bのブリッジ回路の構成を説明するための説明図であって、Z軸方向への加速度を測定するためのZ軸用ブリッジ回路14を示している。尚、加速度センサ1Bでは、X軸方向への加速度を測定するためのX軸用ブリッジ回路11と、Y軸方向への加速度を測定するためのY軸用ブリッジ回路12については、加速度センサ1Aと同じ構成を有しているため、図示を省略し加速度センサ1Aと同じ符号を用いる。Z軸用ブリッジ回路14は、図6に示すように、可変抵抗としての8個のピエゾ抵抗素子Rz1,Rz2,Rz3,Rz4,R’z1,R’z2,R’z3,R’z4からなるいわゆるフルブリッジ回路であって、ピエゾ抵抗素子Rz1+R’z1とピエゾ抵抗素子Rz4+R’z4とが対角位置に配置される一方、ピエゾ抵抗素子Rz2+R’z2とRz3+R’z3とが対角位置に配置されている。このようにZ軸用ブリッジ回路14をフルブリッジ回路として構成したのは、加速度センサ1Bでは、センサ基板3が大きく各支持梁4も幅広であるため、支持梁4上に複雑な配線を引き回すことが可能だからである。これにより、加速度センサ1Bは、加速度センサ1Aと比較して、センサ基板3が大型化する反面、Z軸方向の加速度に対して約2倍の感度が得られるという利点がある。
【0030】
表3は、加速度センサ1Bに対し、X軸方向への加速度A、Y軸方向への加速度A、又はZ軸方向への加速度Aが加わった時の各ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化を示したものである。例えば、加速度センサ1BにZ軸方向への加速度Azが加わった場合、4本の支持梁4は、図7に示すようにそれぞれ変形し、4本の支持梁4A,4B,4C,4D全てがその長手方向中央部に引張り歪が生じ、長手方向両端部に圧縮歪が発生した状態となる。これにより、表3の最下行に示すように、支持梁4Cの長手方向両端部に形成されたピエゾ抵抗素子Rx1とRx3の抵抗値が増加し、支持梁4Dの長手方向両端部に形成されたピエゾ抵抗素子Rx2とRx4も抵抗値が増加する。また、同様に、支持梁4Aの長手方向両端部に形成されたピエゾ抵抗素子Ry1とRy3の抵抗値が増加し、支持梁4Bの長手方向両端部に形成されたピエゾ抵抗素子Ry2とRy4も抵抗値が増加する。
【0031】
【表3】

【0032】
一方、支持梁4Cの長手方向両端部に形成されたRz1とRz4の抵抗値が増加し、長手方向中央部に形成されたRz2とRz3の抵抗値が減少する。また、同様に、支持梁4Dの長手方向両端部に形成されたR’z1とR’z4の抵抗値が増加し、長手方向中央部に形成されたR’z2とR’z3の抵抗値が減少する。これにより、表4の最下行に示すように、Rz1+R’z1及びRz4+R’z4の抵抗値がそれぞれ増加する一方、Rz2+R’z2及びRz3+R’z3の抵抗値がそれぞれ減少する。
【0033】
【表4】

【0034】
このような各ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化によれば、図3(a)に示すX軸用ブリッジ回路11では、ピエゾ抵抗素子Rx1とRx3の抵抗値が増加するものの、ピエゾ抵抗素子Rx2とRx4も抵抗値が増加するため、X軸用ブリッジ回路11全体としてのバランスは崩れず、出力電圧は検出しない。また、これと同様に、図3(b)に示すY軸用ブリッジ回路12でも、ピエゾ抵抗素子Ry1とRy3の抵抗値が増加するものの、ピエゾ抵抗素子Ry2とRy4も抵抗値が増加するため、Y軸用ブリッジ回路12全体としてのバランスは崩れず、出力電圧は検出しない。一方、図6に示すZ軸用ブリッジ回路14では、前述のようにRz1+R’z1及びRz4+R’z4の抵抗値がそれぞれ増加し、Rz2+R’z2及びRz3+R’z3の抵抗値がそれぞれ減少するため、Z軸用ブリッジ回路14のバランスが崩れ、不平衡電圧として出力電圧を検出する。これにより、加速度センサ1Bに対し、Z軸方向への加速度Aが加わったことが検出される。また、これと同様に、X軸方向への加速度AやY軸方向への加速度Aが加わった場合には、X軸用ブリッジ回路11やY軸用ブリッジ回路12のバランスが崩れて出力電圧を検出することにより、加速度AやAが検出される。
【0035】
次に、本発明に係る加速度センサ1の製造方法、特に、各支持梁4上にピエゾ抵抗素子を形成する方法について図8及び図9に基づいて説明する。本発明では、前述のように、センサ基板3を一部切り出すことによって各支持梁4を形成しているが、このセンサ基板3として、いわゆる多層SOIウエハを用いている。この多層SOIウエハは、半導体であるシリコンと絶縁体であるSiOとが積層されてなるものであって、具体的には、図8(a)に示すように、第1半導体層15を最下層として、第1絶縁体層16、第2半導体層17、第2絶縁体層18、第3半導体層19の順に積層されている。
【0036】
まず、この多層SOIウエハに対し、その最上層である第3半導体層19全体に渡ってボロンイオン等の不純物を拡散する。これにより、図8(b)に示すように、第3半導体層19全体が改質されて導電性が生じる。そして、図9(a)に示すように、第3半導体層19における所望の位置を所望の形状に切り出すことにより、ピエゾ抵抗素子20を形成する。そして、図9(b)に示すように、形成された各ピエゾ抵抗素子20を適宜配線してブリッジ回路21を構成する。その後、図9(c)に示すように、センサ基板3の裏側からエッチング加工して空洞部2を形成することにより、各支持梁4や、図1に示す錘体5をそれぞれ形成する。そして、図に詳細は示さないが、センサ基板3を封止用ケース体で覆うパッケージング工程等を経て、加速度センサ1が完成する。
【0037】
このような加速度センサ1の製造方法によれば、第3半導体層19全体に導電性を生じさせた後に、所望の位置を所望の大きさだけ切り出すことによってピエゾ抵抗素子20を形成するので、設計値通り正確な寸法のピエゾ抵抗素子20を形成することができる。これにより、本発明のように、加速度センサ1の小型化に伴って、幅寸法の小さい支持梁4上にその幅方向に向かって複数のピエゾ抵抗素子20を列設する場合に、設計値より大きく形成されることに起因して生じる隣接するピエゾ抵抗素子20同士の干渉を防止することができる。更に、このような製造方法によれば、第2絶縁体層18の上にピエゾ抵抗素子20が形成されるので、半導体層の内部にピエゾ抵抗素子20を形成する場合と比較して、前記パッケージング工程において支持梁4に作用する機械的な応力や熱的な応力がピエゾ抵抗素子20に与える影響を低減することができる。これにより、より正確な加速度測定が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る加速度センサの製造方法は、センサ基板の内側面と直交する方向に支持梁が延びる加速度センサにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に係る加速度センサ1の外観を示す概略斜視図。
【図2】センサ基板3が平面視で約0.5mm四方の加速度センサ1Aを示す概略平面図。
【図3】加速度センサ1Aのブリッジ回路の構成を説明するための説明図。
【図4】加速度センサ1AにX軸方向への加速度Axが加わった時の4本の支持梁4の変形状態を示す模式図。
【図5】センサ基板3が平面視で約1.0mm四方の加速度センサ1Bを示す概略平面図。
【図6】加速度センサ1Bのブリッジ回路の構成を説明するための説明図。
【図7】加速度センサ1BにZ軸方向への加速度Azが加わった時の4本の支持梁4の変形状態を示す模式図。
【図8】本発明の実施例に係る加速度センサ1の製造方法を説明するための概略縦断面図。
【図9】本発明の実施例に係る加速度センサ1の製造方法を説明するための概略縦断面図。
【図10】従来例に係る加速度センサ70を示す概略斜視図。
【図11】従来例に係る加速度センサの製造方法を説明するための概略縦断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 加速度センサ
2 空洞部
3 センサ基板
3a 内側面(センサ基板)
4 支持梁
5 錘体
13 Z軸用ブリッジ回路
19 第3半導体層
20 ピエゾ抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部が形成されてなるセンサ基板と、該センサ基板から突設されて前記空洞部内に錘体を支持する可撓性のある支持梁とを備え、前記支持梁に生じた歪量に基づいて前記錘体に加わった加速度を検出する加速度センサにおいて、
前記支持梁が、前記空洞部内に前記センサ基板の内側面と平行して延びるように設けられたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
前記支持梁が、その長手方向中央部を前記センサ基板によって支持される一方、その長手方向両端部で前記錘体を支持することを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記錘体に加わった加速度を検出するためのブリッジ回路が、前記支持梁の長手方向中央部に設けられたピエゾ抵抗素子を含んでなるホイートストンブリッジ回路であることを特徴とする請求項2に記載の加速度センサ。
【請求項4】
錘体を支持する可撓性のある支持梁と、該支持梁上に設けられてその歪量を検出するピエゾ抵抗素子とを備え、支持梁に生じた歪量に基づいて前記錘体に加わった加速度を検出する加速度センサの製造方法において、
半導体層と絶縁体層が積層されてなる前記支持梁に対し、その最上層である半導体層に不純物を拡散して導電性を生じさせる工程と、導電性を生じた前記半導体層の一部を切り出してピエゾ抵抗素子とする工程と、を含んでなることを特徴とする加速度センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−333665(P2007−333665A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168391(P2006−168391)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】