説明

加飾シート、熱成形体および加飾積層構造体

【課題】
深みのあるメタリック感に優れ、かつ熱成形性に優れる加飾シートを提供する。
【解決手段】
光輝材およびポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる光輝層(A)と、ポリプロピレン系樹脂からなり、前記光輝層とは異なるクリア層(B)とを含み、前記光輝層(A)およびクリア層(B)が隣接して積層されてなる加飾シートであって、前記光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂が、プロピレン/ブテン−1ランダム共重合体および/またはプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体である加飾シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート、熱成形体および加飾積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野や家電分野、更には日用品や建材分野において、ポリプロピレン系樹脂成形体の表面外観の質感をより向上させることが求められており、特に深みのあるメタリック感の付与が求められている。
メタリック感の付与された成形体としては、光輝材を含む加飾シートが表面に貼合されてなる成形体が知られている。このような成形体を製造する際に用いられる加飾シートとして、内層、中間層及び外層を有する積層フィルムであって、内層がプロピレン・エチレンランダム共重合体またはプロピレン単独重合体からなり、中間層がプロピレン・エチレンランダム共重合体またはプロピレン単独重合体と、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン、および着色剤を含有する積層フィルムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−30441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記の積層フィルムは、基材と貼合するため該フィルムを熱成形した場合に、得られる熱成形体に反り等の変形が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、深みのあるメタリック感に優れ、かつ熱成形性に優れる加飾シートを提供するものである。また本発明は、熱成形性に優れる加飾シートを熱成形して得られる外観良好な熱成形体、及び前記加飾シート又は熱成形体と基材とを一体的に貼合して得られる外観良好な加飾積層構造体を提供するものである。
【0006】
すなわち本発明は、光輝材およびポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる光輝層(A)と、ポリプロピレン系樹脂からなり、前記光輝層とは異なるクリア層(B)とを含み、前記光輝層(A)およびクリア層(B)が隣接して積層されてなる加飾シートであって、前記光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂が、プロピレン/ブテン−1ランダム共重合体および/またはプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体である加飾シートである。
また本発明は、前記加飾シートを熱成形することにより得られる熱成形体である。
さらに本発明は、前記加飾シートまたは熱成形体と、ポリプロピレン系樹脂(C)からなる基材とを一体的に貼合して得られる加飾積層構造体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加飾シートは、深みのあるメタリック感および熱成形性に優れるものである。また前記加飾シートを熱成形して得られる本発明の熱成形体、および前記加飾シートまたは熱成形体と基材とを一体的に貼合して得られる加飾積層構造体は、深みのあるメタリック感に優れ、外観良好なものである。
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の加飾シートは、光輝材およびポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる光輝層(A)を有する。光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン/ブテン−1ランダム共重合体および/またはプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体である。熱成形性および得られる加飾シートの剛性の観点から、光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂中のブテン−1由来の構成単位の含有量は、該樹脂の重量を100%としたとき、2〜35重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましい。光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン/ブテン−1ランダム共重合体とプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体との混合物であってもよく、ブテン−1含有量の異なるプロピレン/ブテン−1ランダム共重合体同士の混合物や、またはプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体同士の混合物であってもよい。
【0010】
光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂中のブテン−1またはエチレン由来の構成単位含有量は、赤外線吸光分光法により、ブテンー1に由来する側鎖エチル基に基づく吸収ピークと、エチレンに由来するメチレンの横ゆれ振動に基づく吸収ピークから求めることができる。このポリプロピレン系樹脂中のブテン−1またはエチレン由来の構成単位含有量は、たとえば文献「高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店発行、日本分析化学会編、第2章、第2.3節(第606〜619頁)、1995年」などに記載された方法で測定することができる。
【0011】
光輝層(A)に含まれる光輝材としては、金属粉顔料、パール顔料、ガラスフレーク等が例示される。金属粉顔料としてはアルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス等の金属粉が挙げられ、パール顔料としては、パールエッセンス、天然マイカ、合成マイカ等が挙げられる。
本発明の加飾シートに、より深みのあるメタリック感を付与するためには、光輝材として金属粉を使用することが好ましく、フレーク状のアルミニウムを使用することがより好ましい。金属粉の粒径は3μm〜200μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましい。
【0012】
光輝層(A)における光輝材の含有量は、光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましく、0.3〜3重量部であることが更に好ましい。光輝層(A)は、上記光輝材のほかにメタリック感を必要以上に低下させない限りにおいて公知の有機顔料や無機顔料、その他の添加剤を含有してもよい。
【0013】
光輝層(A)を構成する光輝材およびポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物は、JIS K6758に従い測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であることが成形性の観点から好ましく、1〜50g/10分であることがより好ましく、3〜30g/10分であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の加飾シートは、ポリプロピレン系樹脂からなり、前記光輝層とは異なるクリア層(B)を含む。クリア層(B)は、光輝材を含まない層である。クリア層(B)に含まれるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、エチレン及び炭素原子数4〜12のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとのランダムまたはブロック共重合体が挙げられる。クリア層(B)は、1種類のポリプロピレン系樹脂から構成されていてもよく、2種類以上のポリプロピレン系樹脂から構成されていてもよい。また、光輝層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂と同じ樹脂であってもよい。
【0015】
前記エチレン及び炭素原子数4〜12のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体の具体例としては、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体などが挙げられる。
【0016】
クリア層(B)に含まれるポリプロピレン系樹脂が、エチレン及び炭素原子数4〜12のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体である場合には、プロピレンから誘導される繰り返し単位を、該共重合体100重量%中に50重量%以上含む共重合体を用いる。クリア層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂は、より深みのあるメタリック感が得られることから、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
【0017】
光輝層(A)やクリア層(B)には、本発明の目的を損なわない範囲で、熱可塑性エラストマーが含有されていてもよい。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィンを主成分とする無定型ランダムな弾性共重合体であって、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン共重合体などが挙げられる。また、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物等のスチレン系エラストマー、これらの混合物などのスチレン系性エラストマーなども挙げられ、これらは用途に応じて適宜添加される。
【0018】
また光輝層(A)やクリア層(B)には、公知の添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、有機リン酸系、ソルビトール系化合物等の結晶核剤;エルカ酸アミド等の滑剤;フェノール系、有機ホスファイト系、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の熱安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;オキシド系、ハイドロタルサイト系等の分解剤;ヒドラジン系、アミン系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機充填剤;タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ウォラストナイト、硫酸バリウム、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム等の無機充填;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤などが挙げられる。
【0019】
本発明の加飾シートの厚みは、メタリック感および熱成形性の観点から、通常50〜2000μmであり、好ましくは100〜1000μmである。光輝層(A)の厚みは、加飾シートの全厚み中60〜80%であることが好ましい。
【0020】
本発明の加飾シートは、光輝層(A)とクリア層(B)を少なくとも1層ずつ含み、該光輝層(A)とクリア層(B)とが隣接して積層されてなる。本発明の加飾シートの層構成は、光輝層(A)の両側にクリア層(B)が積層された3層構成であることが好ましい。本発明の加飾シートまたは該加飾シートを用いて得られる熱成形体は、後述するように基材と貼合して加飾積層構造体とすることができる。加飾シートまたは熱成形体の光輝層(A)と基材樹脂とが直接接するように前記基材樹脂を供給すると、光輝層(A)が部分的に薄くなることがある。前記したような光輝層(A)の両側にクリア層(B)が積層されてなる3層構成の加飾シートまたは該加飾シートを熱成形して得られる熱成形体を用いて得られる加飾積層構造体は、光輝層(A)の厚みが不均一になるおそれがなく、メタリック感に優れたものとなる。また本発明の加飾シートは、光輝層(A)、クリア層(B)以外の層を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の加飾シートの製造方法としては、光輝層(A)とクリア層(B)とを共押出する方法や、あらかじめ製膜した一方の層の片方の面の上に、溶融した他の層を構成する材料を圧着する方法や、あらかじめ製膜した各層を、接着剤等を用いてラミネートするなどの方法が挙げられる。加飾シートを製造するための装置としては、公知の共押出Tダイ加工機や、公知の押出ラミネート加工装置を例示することができる。生産性の観点から、本発明の加飾シートはTダイ加工機を用いて共押出しにより製造することが好ましい。
【0022】
光輝層(A)およびクリア層(B)を共押出しにより製造する場合、クリア層(B)を成形するための押出機の温度は通常190〜280℃であり、クリア層(B)に含まれるポリプロピレン系樹脂がプロピレン単独共重合体である場合には、200〜240℃であることが好ましい。光輝層(A)を成形するための押出機の温度は、通常180〜270℃であり、190〜230℃であることが好ましい。
【0023】
ダイより押出された溶融状の加飾シートを冷却する方法としては、1本の冷却ロールに接触させる方法、複数の冷却ロールで狭圧して冷却する方法等が挙げられる。得られる加飾シートの平滑性の観点から、溶融状の加飾シートを、両面から複数のロールにより狭圧して冷却する方法が好ましい。複数のロールを用いて溶融状の加飾シートを冷却する方法としては、冷却ロールと、ロールの表面が弾性変形可能な金属薄膜からなる金属製弾性外筒を具えてなる薄膜シート成形用ロールとで溶融状の加飾シートを狭圧し冷却する方法や、冷却ロールと、複数の誘導ロールにより回転する金属ベルトとを用いて溶融状の加飾シートを狭圧し冷却する方法などが挙げられる。溶融状の加飾シートを狭圧するロールの温度は通常30℃〜100℃であり、35℃〜80℃であることが好ましい。
【0024】
本発明の加飾シートに光沢を付加する場合には、加飾シートの意匠面、すなわち製品として使用する際に人目に触れる面に鏡面状の冷却ロールを面転写して鏡面加工を施す方法が好適に用いられる。
【0025】
さらに本発明の加飾シートは、加飾シート表面に特定の凹凸形状を有していてもよい。このような加飾シートは、冷却ロールの凹凸形状を面転写してマット加工を施すことにより製造することができ、該凹凸形状としては梨地調、獣皮調、ヘアライン調、カーボン調などが例示される。
【0026】
本発明の加飾シートは、製膜後、熱処理してもよい。熱処理の方法としては、熱ロールで加熱する方法、加熱炉や遠赤外線ヒータにより加熱する方法、熱風を吹き付ける方法等が挙げられる。好ましくは、熱ロールで加熱する方法、または遠赤外線ヒータにより加熱する方法である。熱処理条件は加飾シートの樹脂組成や構成により異なるが、例えば加飾シートの表面温度を130℃〜166℃、好ましくは135℃〜165℃とし、1秒間〜300秒間、好ましくは1秒間〜120秒間熱処理することができる。なお前記の熱処理時間は、加飾シートの表面温度が所定温度に達してからの加熱時間であり、熱ロールを用いる場合は加飾シートの表面温度が所定温度に達した後に熱ロールに接している時間であり、加熱炉を用いる場合は、加飾シートの表面温度が所定温度に達した後に加熱炉内でエージングする時間である。熱処理された加飾シートは、傷付き性に優れるものとなる。
【0027】
本発明の加飾シートは、最表層が公知の熱可塑性樹脂、2液硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、紫外線または電子線硬化型などのハードコート組成物によるハードコート層であってもよい。ハードコート層を構成する材料としては、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリレート系樹脂等が挙げられる。ハードコート層を設ける場合には、リサイクル性の観点から、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。
【0028】
本発明の加飾シートは熱成形性に優れるものである。本発明の加飾シートを熱成形することにより、深みのあるメタリック感に優れ、かつ外観良好な熱成形体が得られる。また本発明の加飾シートや熱成形体を、クリア層(B)が意匠面となるように、ポリプロピレン系樹脂からなる基材と貼合成形することで、深みのあるメタリック感に優れ、かつ外観良好な加飾積層構造体を得ることができる。基材を構成するポリプロピレン系樹脂は特に限定されるものではなく、クリア層(B)に含まれるポリプロピレン系樹脂として例示したものを使用することができる。基材には、ポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー、添加剤が配合されていてもよい。
【0029】
本発明の加飾積層構造体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、以下(1)〜(4)の工程を含む製造方法が挙げられる。
(1)加飾シートを加熱軟化する工程。
(2)工程(1)で得られる軟化した加飾シートを、熱成形用の型で熱成形し、熱成形体を得る工程。
(3)工程(2)で得られる熱成形体を、成形用金型のキャビティ内にセットする工程。
(4)熱成形体をセットした金型キャビティ内に、溶融状の基材用ポリプロピレン系樹脂を注入し、注入された樹脂(基材)と熱成形体とを貼合する工程。
【0030】
工程(2)における熱成形法としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などが挙げられる。該工程(2)では、加飾シートの温度は通常(加飾シートの融点−20℃)以上、かつ(加飾シートの融点+10℃)以下とする。好ましくは、(加飾シートの融点−15℃)以上、かつ(加飾シートの融点+5℃)以下であり、より好ましくは、(加飾シートの融点−15℃)以上、かつ加飾シートの融点以下である。なお、ここで「加飾シートの融点」とは、対象の加飾シートを構成する各樹脂の融点のうち、最も高い温度とする。
【0031】
工程(2)において、加飾シートを熱成形型に接触させて形状を付与した後、急冷することが好ましい。加飾シートを成形する際に用いる熱成形型の温度を10〜50℃、好ましくは20〜30℃とすることにより、形状を付与した加飾シートを急冷することができる。また、一つの型のみで加飾シートを熱成形する場合には、型と接触しない加飾シートの面を低温の流体で冷却することが好ましい。
【0032】
工程(4)で溶融状の基材用ポリプロピレン系樹脂を注入し、熱成形体と貼合する方法としては、射出成形法、射出発泡成形法、射出圧縮成形法および射出プレス成形法を例示することができる。この工程において注入される樹脂の温度は通常、融点以上、好ましくは200℃以上である。この工程における金型の温度は通常、20〜60℃であり、好ましくは30〜40℃である。金型の表面は平滑であってもよく、シボ加工されていてもよい。
また、工程(1)〜(4)の工程を連続して実施できるような装置や手法、例えばサーモジェクト法により、加飾積層構造体を製造することもできる。
【0033】
本発明の加飾積層構造体は、深みのあるメタリック感に優れ、かつ外観良好であり、センタークラスターのような自動車部品(内装部品や外装部品)や、家電部品、日用品、建材等の用途に好適である。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
[評価方法]
(1)MFRの測定
JIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgfなる条件で測定した。
(2)ポリプロピレン系樹脂中のブテン−1由来の構成単位含有量の測定
測定するポリプロピレン系樹脂をプレスして厚み0.1mmのフィルムを作製した。赤外線分光計を用いて前記フィルムの赤外線吸収スペクトルを測定し、ブテン−1由来の構成単位含有量を算定した。
【0036】
(3)加飾シートの評価
加飾シートを、以下に示した基準で目視により評価した。
<メタリック感>
○:深みのあるメタリック感に優れる
×:曇り、白化によりメタリック感が劣る
<深み感>
○:深みがあり、立体的に観察される
×:深みが無く、平面的に観察される
(4)熱成形体の反り量の測定
加飾シートを熱成形して得られた熱成形体を、水平面に設置し、図2に示す位置の近傍で熱成形体端部の浮いた高さを測定し、その最大値を熱成形体の反り量とした。
(5)加飾積層構造体の外観の評価
加飾積層構造体を、以下に示した基準で目視により評価した。
○:積層構造体の表面にシワ等が無く、深みのあるメタリック感
△:積層構造体の表面にシワ等は無いが、深みのあるメタリック感に劣る
×:積層構造体の表面にシワがあり、メタリック感もおとる
【0037】
[実施例1]
(1)加飾シートの成形
光輝層(A)を構成する材料として、プロピレン/ブテン−1ランダム共重合体(MFR=8.0g/10分、ブテン−1単位含有量25重量%)100重量部、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(旭電化工業(株)製、アデカスタブNA−21)0.3重量部、エルカ酸アミド(日本精化(株)社製、ニュートロンS)0.3重量部、平均粒径30μmのアルミフレーク(東洋アルミ(株)社製)1.0重量部からなるポリプロピレン系樹脂組成物を用いた。
クリア層(B)を構成する材料として、プロピレン単独重合体(MFR=8.0g/10分)100重量部、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(旭電化工業(株)製、アデカスタブNA−21)0.3重量部、エルカ酸アミド(日本精化(株)社製、ニュートロンS)0.3重量部からなるポリプロピレン系樹脂を用いた。
上記した光輝層(A)用材料であるポリプロピレン系樹脂組成物およびクリア層(B)用材料であるポリプロピレン系樹脂を、Tダイフィルム成形機(ダイ幅600mm)にて共押出し成形し、シリンダー温度230℃、引き取り速度5.4m/min、冷却ロール(鏡面)温度20℃、フレックスロール(住友重機械モダン(株)社製)温度20℃の条件で、クリア層(B)/光輝層(A)/クリア層(B)の構成の加飾シートを製膜した。各層の厚さはそれぞれ100μm/300μm/100μmであり、加飾シート全体の厚みは500μmであった。
【0038】
(2)熱成形
得られた加飾シートを、遠赤外線ヒータ温度400℃、ヒータとシートとの間の距離135mm、加熱時間20秒の条件で加熱後、図1に示す形状の熱成形用金型の表面(金型温度30℃)に接触させ、熱成形(真空成形)を実施した。
【0039】
(3)貼合成形
得られた熱成形体を射出成形用金型(図1の形状に合致するもの)にセットしたのち、溶融状の基材用樹脂を金型内に射出して熱成形体と貼合成形し、加飾積層構造体を得た。貼合成形時のその他の条件は以下の通りである。
射出成形機:日精樹脂製射出成形機 FS160S25ASEN
成形温度:230℃
金型:成形体外寸190mm×220mm×3mmt、深さ30mm、ファンゲート。
金型温度:30℃
基材用樹脂:プロピレン/エチレンブロック共重合体50重量%、プロピレン単独重合体15重量%、エチレン/オクテン共重合体ゴム14重量%、平均粒子径2.5μmのタルク21重量%の混合物100重量部と、該混合物100重量部に対し、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム0.2重量部を配合したものを、ヘンシェルミキサーおよびタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS 30BW−2V型)にて押出量30kg/hr、スクリュー回転数900rpm、ベント吸引下で溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=30g/10分)を得た。前記ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部と、該ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対し、カーボンブラックマスターバッチ(住化カラー(株)社製 SPPM865)1重量部を配合したものを基材用樹脂とした。
【0040】
得られた加飾シート、熱成形体、および加飾積層構造体について、外観と反り量を評価した。評価結果を表1に示した。
【0041】
[実施例2]
光輝層(A)用材料のポリプロピレン系樹脂をプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体(MFR=6.0g/10分、ブテン−1由来の構成単位含有量3.6重量%、エチレン由来の構成単位含有量4.0重量%)とした以外は実施例1と同様にして加飾シート、熱成形体、および加飾積層構造体を作製し、外観と反り量を評価した。評価結果を表1に示した。
【0042】
[比較例1]
光輝層(A)用材料のポリプロピレン系樹脂をプロピレン単独重合体(MFR=8.0g/10分、ブテン−1由来の構成単位含有量0重量%)とした以外は実施例1と同様に加飾シート、熱成形体、および加飾積層構造体を作製し、外観と反り量を評価した。評価結果を表1に示した。
【0043】
[比較例2]
光輝層(A)のみを押出し成形し、光輝層(A)の厚みを500μmとした以外は実施例1と同様に加飾シート、熱成形体、および加飾積層構造体を作製し、外観と反り量を評価した。評価結果を表1に示した。
【0044】
[比較例3]
光輝層(A)用材料のポリプロピレン系樹脂をプロピレン/エチレンブロック共独重合体(MFR=8.0g/10分、ブテン−1由来の構成単位含有量0重量%)とした以外は実施例1と同様に加飾シート、熱成形体、および加飾積層構造体を作成し、外観と反り量を評価した。評価結果を表1に示した。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例で作製した熱成形体および加飾積層構造体の概略図
【図2】実施例における熱成形体の反り量の測定位置を示す概略図
【符号の説明】
【0047】
1:熱成形体または加飾積層構造体
2:熱成形体の反り量の測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝材およびポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる光輝層(A)と、ポリプロピレン系樹脂からなり、前記光輝層とは異なるクリア層(B)とを含み、前記光輝層(A)およびクリア層(B)が隣接して積層されてなる加飾シートであって、前記光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂が、プロピレン/ブテン−1ランダム共重合体および/またはプロピレン/エチレン/ブテン−1ランダム共重合体である加飾シート。
【請求項2】
前記光輝層(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂中のブテン−1由来の構成単位含有量が、該ポリプロピレン系樹脂の重量を100%としたとき、2〜35重量%である請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記クリア層(B)に含まれるポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合体である請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
光輝材が、金属粉である請求項1〜3いずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シートを熱成形することにより得られる熱成形体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シートまたは請求項5に記載の熱成形体と、ポリプロピレン系樹脂(C)からなる基材とを貼合して得られる加飾積層構造体。
【請求項7】
自動車部品である請求項6に記載の加飾積層構造体。
【請求項8】
家電部品である請求項6に記載の加飾積層構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−321124(P2006−321124A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146378(P2005−146378)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】