助手席用エアバッグ
【課題】膨張完了直後の乗員拘束部における左右の拘束凸部の凹溝からの高さや突出形態を、安定させることができる助手席用エアバッグを提供すること。
【解決手段】助手席用エアバッグ15は、膨張完了時の後面側に乗員拘束部33を備える。乗員拘束部は、上下方向に延びるように左右に並設される拘束凸部34と、両拘束凸部の間で前方へ凹む凹溝35と、を備える。凹溝35のエアバッグの内周縁23の後部側26は、曲率を大きくして凹む大曲率部27と、大曲率部の上端から前方側に延びる天井側縁部28と、大曲率部の下端から前方側に延びる底側縁部29と、を備える。後部側内周縁26には、規制部材37が配設される。規制部材は、天井側縁部28と底側縁部29とを連結する第1テザー38と、第1テザーから延びて内周縁26に連結される第2テザー39と、を備える。第2テザーの両縁には、左右方向に貫通する連通用開口40,41が配設される。
【解決手段】助手席用エアバッグ15は、膨張完了時の後面側に乗員拘束部33を備える。乗員拘束部は、上下方向に延びるように左右に並設される拘束凸部34と、両拘束凸部の間で前方へ凹む凹溝35と、を備える。凹溝35のエアバッグの内周縁23の後部側26は、曲率を大きくして凹む大曲率部27と、大曲率部の上端から前方側に延びる天井側縁部28と、大曲率部の下端から前方側に延びる底側縁部29と、を備える。後部側内周縁26には、規制部材37が配設される。規制部材は、天井側縁部28と底側縁部29とを連結する第1テザー38と、第1テザーから延びて内周縁26に連結される第2テザー39と、を備える。第2テザーの両縁には、左右方向に貫通する連通用開口40,41が配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席前方のインストルメントパネルの上面側に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置のエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トップマウントタイプの助手席用エアバッグでは、車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、上方へ突出するとともに、インストルメントパネル上面とインストルメントパネル上方のウインドシールドとの間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張していた。また、この種の助手席用エアバッグは、展開膨張完了時の形状を前端側に頂部を設けた略四角錐形状とするとともに、後面側を略鉛直方向に沿って配置させて乗員を受け止める乗員拘束部とし、かつ、前部側の下面に膨張用ガスを流入させる流入用開口を設けて構成されていた。そして、乗員拘束部が、乗員の左右両肩を受け止め可能に、乗員拘束部の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部と、左右の拘束凸部の間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝と、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1〜3)。凹溝の底面は、乗員拘束部の左右の拘束凸部により乗員の左右の肩部や脇部付近を受け止めた後であって、乗員の前方移動速度を低減させた状態での乗員の頭部を受け止めるように、拘束凸部より前方側に凹んで形成されていた。
【0003】
このようなエアバッグの外周壁は、左右の側壁をそれぞれ構成する左外側パネル部及び右外側パネル部と、凹溝を間にする左右の拘束凸部の対向壁をそれぞれ構成する略C字形状の左内側パネル部及び右内側パネル部と、を備えて構成されていた。そして、左右の拘束凸部は、それぞれ、左外側パネル部と左内側パネル部との外周縁相互、及び、右外側パネル部と右内側パネル部との外周縁相互を、結合させて形成されていた。また、凹溝は、左内側パネル部と右内側パネル部との内周縁相互を、結合させて形成されていた。
【0004】
さらに、このようなエアバッグでは、凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側が、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部と、大曲率部におけるインストルメントパネルから離れた側の離隔側端から前方側に延びて膨張完了時に流入用開口の上方位置付近まで延びる天井側縁部と、大曲率部におけるインストルメントパネルに近い近接側端から前方側の流入用開口の前縁付近まで延びる底側縁部と、を備える構成となっていた。
【0005】
そしてさらに、凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側では、膨張完了時の大曲率部を間にする天井側縁部と底側縁部との離隔を規制可能な規制部材を配設させて構成されていた。ちなみに、エアバッグの展開膨張完了時、天井側縁部と底側縁部との距離が広がれば、大曲率部を間にする底側縁部側は、インストルメントパネルの上面から後面にかけて支持されており、天井側縁部側がインストルメントパネルから離れる上方側へ移動することとなって、拘束凸部からの凹溝の凹み量が小さくなり、この種のエアバッグにおける肩部を拘束した後にソフトに乗員頭部を拘束する態様を、確保し難くなってしまう。
【0006】
そして、従来の規制部材としては、天井側縁部側を底側縁部側に牽引するベルト状の一本のテザー(特許文献1,2参照)や、天井側縁部側から底側縁部側にわたる大曲率部の内周縁を塞ぐように配置される三日月状のテザー(縫代)(特許文献3参照)があった。
【特許文献1】特開2006−103670号公報
【特許文献2】特開2008−037358号公報
【特許文献3】特開2008−018936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の一本のベルト状のテザーでは、テザーの離隔側端と近接側端との両端部の間の大曲率部の部位自体が、凹溝の深さを浅くするように後方側へ突出する事態を抑制できず、凹溝の略全域を、拘束凸部から所定距離分凹ませる点に、改善の余地があった。
【0008】
また、従来の三日月状のテザーでは、左右の拘束凸部の展開膨張時の挙動に関し、改善の余地があった。すなわち、この種のエアバッグでは、流入用開口から流入する膨張用ガスは、大曲率部付近を流れの下流端とするように、凹溝の部位の内周縁で左右に分離されて、左右の拘束凸部の内周面側を前方側から後方側に向かうように流れ、その際、左右の拘束凸部に流入する膨張用ガスの流量に左右のバラツキがあれば、左右の拘束凸部の凹溝からの突出高さにバラツキを生じさせたり、左右の拘束凸部の突出方向を外側方向や内側方向に向かうようにバラツキを生じさせてしまい、その結果、エアバッグの膨張完了直後に前進移動してくる乗員の左右の肩部付近を、正対して受け止めることができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了直後の乗員拘束部における左右の拘束凸部の凹溝からの高さや突出形態を、安定させることができる助手席用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る助手席用エアバッグは、車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、上方へ突出するとともに、インストルメントパネル上面とインストルメントパネル上方のウインドシールドとの間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張し、展開膨張完了時の形状を前端側に頂部を設けた略四角錐形状とするとともに、後面側を略鉛直方向に沿って配置させて乗員を受け止める乗員拘束部とし、かつ、前部側の下面に膨張用ガスを流入させる流入用開口を設けて構成される助手席用エアバッグであり、
乗員拘束部が、乗員の左右両肩を受け止め可能に、乗員拘束部の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部と、左右の拘束凸部の間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝と、を備えて構成され、
エアバッグの外周壁が、左右の側壁をそれぞれ構成する左外側パネル部及び右外側パネル部と、凹溝を間にする左右の前記拘束凸部の対向壁をそれぞれ構成する略C字形状の左内側パネル部及び右内側パネル部と、を備えて構成され、
左右の拘束凸部が、それぞれ、左外側パネル部と左内側パネル部との外周縁相互、及び、右外側パネル部と右内側パネル部との外周縁相互を、結合させて形成され、
凹溝が、左内側パネル部と右内側パネル部との内周縁相互を、結合させて形成され、
凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側が、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部と、大曲率部におけるインストルメントパネルから離れた側の離隔側端から前方側に延びて膨張完了時に流入用開口の上方位置付近まで延びる天井側縁部と、大曲率部におけるインストルメントパネルに近い近接側端から前方側の流入用開口の前縁付近まで延びる底側縁部と、を備えて構成されるとともに、膨張完了時の大曲率部を間にする天井側縁部と底側縁部との離隔を規制可能な規制部材を配設させて構成されている助手席用エアバッグにおいて、
規制部材が、
大曲率部を間にする天井側縁部と底側縁部とを連結する第1テザーと、第1テザーから延びて第1テザーにおける天井側縁部と底側縁部とに連結された両端部の間における凹溝の部位のエアバッグの内周縁の後部側に連結される少なくとも一本の第2テザーと、を備えて構成されるとともに、
第2テザーの軸直交方向の両縁側に、左右方向に貫通する連通用開口を設けて、配設されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る助手席用エアバッグでは、凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側において、天井側縁部を底側縁部側に牽引可能な第1テザーの他に、少なくとも一本の第2テザーが配設されている。この第2テザーは、第1テザーから延びて、第1テザーの天井側縁部と底側縁部とに連結された両端部間における凹溝の部位のエアバッグの内周縁の後部側に連結されるものであり、大曲率部の部位が凹溝を浅くするように後方側へ突出することを防止できる。すなわち、第1テザーが、流入用開口より後部側のエリアにおける大曲率部を間にする天井側縁部を、インストルメントパネルの上面側に支持されている底側縁部から離れないように、位置規制し、また、第2テザーが、大曲率部の部位の突出を規制できるため、凹溝の略全域を、拘束凸部から所定距離分凹ませることができ、その結果、左右の拘束凸部の凹溝からの突出高さを安定させることができる。
【0012】
また、第2テザーの軸直交方向の両縁側には、左右方向に貫通する連通用開口が設けられており、流入用開口から流入する膨張用ガスが、流れの下流端を大曲率部付近とするように、左右の拘束凸部の内周面側を前方側から後方側に向かうように流れる際、左右の拘束凸部に流入する流入量を不均等としても、左右の拘束凸部の膨張を略完了させる際には、流入量の不十分な側に、連通用開口を経て流入可能となるため、極力、左右の拘束凸部の膨張完了状態をバランス良く行うことが可能となり、膨張完了直後における左右の拘束凸部の凹溝からの突出高さや突出方向を相互に均等となるように安定させることができ、そのため、膨張完了直後の左右の拘束凸部に乗員が前進移動してきても、左右の拘束凸部が、乗員の左右の肩部付近を、円滑に、正対して受け止めることができる。
【0013】
さらに、第2テザー自体が、第1テザーから延びるものであり、第1テザーと第2テザーとを一体的に構成できて、第2テザーの第1テザーに対する結合作業を不要にすることも可能となる。
【0014】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグでは、膨張完了直後の乗員拘束部における左右の拘束凸部の凹溝からの高さや突出形態を、安定させることができ、さらに、極力、手間無く、第1,2テザーを配設することができる。
【0015】
また、第1,2テザーを備えた規制部材は、左内側パネル布や右内側パネル部と一体的に形成してもよいが、左内側パネル部や右内側パネル部と別体とした一つの可撓性を有したシート状のテザー部材から形成し、このテザー部材を、左内側パネル部と右内側パネル部との内周縁相互を縫合して結合させる際、共縫いして、配設してもよい。このような構成の場合には、従来構成の助手席用エアバッグに、テザー部材を配設させて、容易に、膨張完了直後の左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる。さらに、このような構成では、テザー部材として、エアバッグ自体の外周壁を構成する基布より伸び難い素材を、選択できて、この場合には、一層、膨張完了直後の左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる。
【0016】
この場合、テザー部材を、経糸と緯糸とを織って形成した織布から形成して、経糸若しくは緯糸の方向を、第1テザー若しくは第2テザーの少なくとも一方の軸方向に沿わせて、配設すれば、経糸や緯糸に沿った方向に軸方向を配置させたテザーの伸びが抑えられ、単に織布における糸目の配置の選択により、効率的に、凹溝の部位の内周縁の変形を防止できる(左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる)。
【0017】
さらにこの場合、テザー部材として、第1テザーにおける天井側縁部と底側縁部とに連結された両端部間の中央付近から第1テザーと直交するように第2テザーを突出させて構成し、織布の経糸若しくは横糸を、第1テザーと第2テザーとの軸方向に沿って配設すれば、第1,2テザーの伸びを共に抑制でき、さらに一層、効率的に、凹溝の部位の内周縁の変形を防止できて、左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ(以下、単にエアバッグと省略する)15は、図1に示すように、インストルメントパネル(以下、インパネとする)1の上面2側の内部に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置Mに使用されるものである。この助手席用エアバッグ装置Mは、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持するケース6と、エアバッグ15をケース6に取り付けるためのリテーナ11と、折り畳まれたエアバッグ15を覆うエアバッグカバー10と、を備えて構成されている。
【0019】
なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、車両の直進状態における車両の上下、前後、及び、左右の方向に一致するものである。
【0020】
エアバッグカバー10は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後二枚の扉部10a,10bをエアバッグ15に押されて開くように構成されている。また、エアバッグカバー10の扉部10a,10bの周囲には、ケース6に連結される連結壁部10cが、形成されている。
【0021】
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース6に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
【0022】
ケース6は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部6aと、底壁部6aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー10の連結壁部10cを係止する周壁部6bと、を備えて構成されている。ケース6には、底壁部6aの部位に、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0023】
なお、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配設される円環状のリテーナ11の複数のボルト11aが、エアバッグ15、ケース6の底壁部6a、及び、インフレーター8のフランジ部8c、を貫通して、ナット12止めされることにより、ケース6に取り付けられている。
【0024】
エアバッグ15は、バッグ本体16、バッグ本体16内に配設されるテザー部材37、及び、バッグ本体16内に配設される整流布43、を備えて構成されている。バッグ本体16は、図2〜5に示すように、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状の袋状とし、外周壁17を、上面16a側に配置されてバッグ本体16のウインドシールド4と接触するような上壁17a、下面16b側に配置されてインパネ1の上面2側や後面3に支持されるような下壁17b、左側面16cに配置される左側壁17c、右側面16dに配置される右側壁17d、及び、後面16e側に配置される後壁17eから構成されている。そして特に、実施形態のバッグ本体16は、後面16eを乗員を受け止める乗員拘束部33として、乗員拘束部33以外の残部の上面16a、下面16b、左側面16c、及び、右側面16dを、既述したように、インパネ1の上面2や後面3、あるいは、ウインドシールド4に接触させる車体側部18としている。また、実施形態のバッグ本体16の車体側部18の前部側の下面には、左右方向の中央付近に、膨張用ガスをバッグ本体16内に流入させるように円形に開口されて、開口周縁18aをケース6に取り付ける流入用開口19が、配設されて構成されている。
【0025】
流入用開口19の開口周縁18aには、リテーナ11のボルト11aを挿通させて、流入用開口19の開口周縁18aをケース6の底壁部6aに取り付けるための複数の取付孔20が、形成されている。また、バッグ本体16における左側壁17cと右側壁17dとには、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール31が、それぞれ、配設されている。
【0026】
乗員拘束部33は、図3〜5に示すように、バッグ本体16の膨張完了時に乗員の左右両肩を受け止め可能に、乗員拘束部33の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部34(34L,34R)と、左拘束凸部34L,右拘束凸部34R間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝35と、を備えて構成されている。凹溝35の底面35aは、乗員拘束部33の左拘束凸部34L,右拘束凸部34Rにより乗員の左右の肩部や脇部付近を受け止めた後であって、乗員の前方移動速度を低減させた状態の乗員の頭部を、受け止める部位となる。
【0027】
さらに、この凹溝35は、バッグ本体16の外周壁17を構成する略C字形状の左内側パネル部54と右内側パネル部55との内周縁54a,55a(図5,6参照)相互を結合した結合部位(実施形態の場合には縫合した縫合部位)46によって、形成されている。詳しくは、この凹溝35は、縫合部位46の外周縁の部位から形成されることとなる。
【0028】
なお、左内側パネル部54と右内側パネル部55とは、バッグ本体16の外周壁17における後壁17e、上壁17a、及び、下壁17bの左右方向の中央に配置されて、左拘束凸部34L,右拘束凸部34Rの対向壁を構成している。また、左拘束凸部34Lは、図5,6に示すように、バッグ本体16の左側壁17cを構成する左外側パネル部50と左内側パネル部54との外周縁50a,54b相互を結合した結合部位(実施形態の場合には縫合した縫合部位)45(45L)によって、形成されている。さらに、右拘束凸部34Rは、バッグ本体16の右側壁17dを構成する右外側パネル部51と右内側パネル部55との外周縁51a,55b相互を結合した結合部位(実施形態の場合には縫合した縫合部位)45(45R)によって、形成されている。
【0029】
凹溝35は、略C字形状(略三日月状)の左内側パネル部54と右内側パネル部55との外周縁54b,55bを拘束凸部34(34L,34R)に連結させた状態の内周縁54a,55a相互を結合して形成されており、凹溝35のバッグ本体16内の内周縁23側に、流入用開口19側に牽引するテザー等の牽引部材を設けなくとも、左内側パネル部54や右内側パネル部55自体で、左右の拘束凸部34(34L,34R)間に前方側へ凹む凹溝35を形成できる構造としている(図4参照)。
【0030】
そして、膨張完了時のバッグ本体16内の凹溝35の部位における内周縁23の内側には、図4に示すように、左右の拘束凸部34(34L,34R)間を連通する略楕円形の連通孔22が形成されることとなる。この連通孔22の内周縁23、換言すれば、凹溝35の部位の前後方向に沿うバッグ本体16の内周縁23は、流入用開口19の上方側の前方側となる前部側内周縁24と、流入用開口19の上方側の後方側となる後部側内周縁26と、から構成されている。後部側内周縁26は、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部27と、大曲率部27におけるインパネ1から離れた側の離隔側端(図例では上端)27aから前方側に延びて膨張完了時に流入用開口19の上方位置付近まで延びる天井側縁部28と、大曲率部27におけるインパネ1に近い近接側端(図例では下端)27bから前方側の流入用開口19の前縁付近まで延びる底側縁部29と、を備えて構成されている。第1実施形態の場合、図7に示すように、大曲率部27は、曲率半径(半径寸法)RBを小さくする円弧状とし(実施形態では約150mm)、天井側縁部28は、大曲率部27より曲率を小さくした円弧状、換言すれば、半径寸法RUを半径寸法RBより大きくした円弧状(実施形態では約500mm)に形成され、底側縁部29は、大曲率部27より曲率の小さな曲がりの少ない線状、実施形態の場合には、直線状、として形成されている。なお、内周縁23は、縫合部位46の内周縁側から形成されている。
【0031】
そして、実施形態では、膨張完了時の大曲率部27を間にする天井側縁部28と底側縁部29との離隔を規制可能な規制部材として、可撓性を有したシート状のテザー部材37が配設されている。テザー部材37は、図4,7に示すように、バッグ本体16を形成するポリアミドやポリエステル等の合成繊維の糸を平織り等で織って形成した織布から形成されている。そして、テザー部材37は、大曲率部27を間にする天井側縁部28と底側縁部29とを連結する第1テザー38と、第1テザー38から延びて第1テザー38のインパネ1から離れた離隔側端(図例では上端)38aとインパネ1に近い近接側端(図例では下端)38bとの両端部間における後部側内周縁26に連結される一本の第2テザー39と、を備えて構成されている。
【0032】
実施形態の場合、図4,7に示すように、第1テザー38におけるインパネ1から離れた上端側の離隔側端38aとインパネ1に接近している下端側の近接側端38bとは、上下方向の中央の中間部38cの前後方向の幅寸法WMより、前後方向の幅寸法WU,WDを徐々に湾曲して広げるように、構成されている。さらに、離隔側端38aは、大曲率部27の離隔側端27a付近に侵入する状態として、天井側縁部28の後端28bから前端28a付近までの幅広いエリアで、天井側縁部28に結合され、また、近接側端38bも、大曲率部27の近接側端27b付近に侵入する状態として、底側縁部29の後端29bから前端29a付近までの幅広いエリアで、底側縁部29に結合されている。
【0033】
実施形態の場合、第2テザー39は、第1テザー38の上下方向に沿う軸方向(換言すれば離隔側端38aと近接側端38bとを結ぶ軸方向)VDに対して、その軸方向HDを直交させるように、第1テザー38の中間部38cに一体化された元部39a側から先端部39bを延ばして、先端部39bを、大曲率部27の両端部(離隔側端27a,近接側端27b)間の中間部27cに結合させている。
【0034】
また、テザー部材37は、織布からなるテザー用素材57の経糸VSと緯糸HSとの方向を、第1テザー38の軸方向VD若しくは第2テザー39の軸方向HDに沿わせて配置させて(図7参照)、左内側パネル部54と右内側パネル部55との内周縁54a,55a相互を結合させる縫合時に、補強布68,68とともに、共縫いされて、配設されている。
【0035】
そして、第2テザー39は、軸直交方向SDの両縁間の幅寸法WSが小さく、軸直交方向の両縁に、換言すれば、第1テザー38や後部側内周縁26の大曲率部27との間に、左右方向に貫通する連通用開口40,41を配設させるように、構成されている(図4,5参照)。
【0036】
整流布43は、図4に示すように、バッグ本体16内において、流入用開口19の上方側を覆うように配設されるとともに、流入用開口19から流入した膨張用ガスGを前後両側へ整流可能に、前後方向の両端を開口させた略筒形状とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、流入用開口19から流入した膨張用ガスGは、整流布43の前後の開口43a,43bから、バッグ本体16内に流入することとなる。また、整流布43には、前後両端の開口43a,43bよりも開口面積を小さくして、流入用開口19から流入した膨張用ガスを逃がし可能な貫通孔43cが、左右両側に開口されている。貫通孔43cは、流入用開口19から流入した膨張用ガスGの一部を逃がすことにより、整流布43の前後の開口43a,43bの方向を安定させるために、配設されている。
【0037】
実施形態の場合、整流布43は、図6に示す2枚の左右対称形として流入用開口19の部位で重なるような整流布用素材59(59L,59R)から、構成され、流入用開口19から離れた端部59a相互を結合させて、前後方向に軸方向を沿わせる筒状に形成されている。
【0038】
なお、バッグ本体16は、図6に示すように、第1基布48と二枚の第2基布53(53L,53R)、流入用開口19の周縁を補強する補強布61,62,63、ベントホール31の周縁を補強する補強布65、及び、連通孔22の内周縁23を補強する補強布68、から構成され、それぞれ、ポリアミドやポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。同様に、整流布43を形成する整流布用素材59(59L,59R)も、ポリアミドやポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。なお、図6に示す補強布66,66は、整流布43の各貫通孔43cの周縁を補強するものであり、こららの補強布66も、ポリアミドやポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。
【0039】
第1基布48は、流入用開口19の開口周縁18aを形成する略長方形板状の基部49の左右両側に、左外側パネル部50と右外側パネル部51とを一体化して連結した形状としている。二枚の第2基布53(53L,53R)は、それぞれ、左内側パネル部54と右内側パネル部55とを形成するものである。
【0040】
実施形態のエアバッグ15の製造について説明すれば、整流布用素材59L,59Rにおける貫通孔43cの周縁と、第1基布48におけるベントホール31の周縁と、には、予め、補強布65,66を縫着させておく。そしてまず、平らに展開した状態の第1基布48に、補強布62及び整流布用素材59L,59Rを順に重ね、補強布62の周縁となる位置において、縫合糸を利用して、補強布62及び整流布用素材59L,59Rを、第1基布48に縫着させる。その後、整流布用素材59Rの上に、補強布61,63を順に重ね、流入用開口19の開口周縁18aの部位と、補強布63の周縁付近の部位と、において、縫合糸を利用して、補強布61,62,63、及び、整流布用素材59L,59Rを、第1基布48に縫着させる。その後、孔明け加工により、流入用開口19及び取付孔20を形成する。次いで、整流布用素材59L,59Rにおける端部59a相互を縫着させて、整流布43を形成する。
【0041】
ついで、第2基布53L,53Rを相互に重ね、さらに、補強布68,68、及び、テザー用素材57、を重ね、補強布68とテザー用素材57との間に、第2基布53L,53R(左内側パネル部54と右内側パネル部55)の内周縁54a,55aを挟んで、凹溝35に沿うように、縫合部位46を形成する。ついで、第2基布53L,53Rを開き、第2基布53L、53Rの前端の縁部53a,53aを直線状にして、第1基布48の基部49の前端の縁部49aに縫着させ、また、第2基布53L,53Rの後端の縁部53b,53bを直線状にして、第1基布48の基部49の後端の縁部49bに縫着させる。さらに、基部49の左縁の前後の端縁49c,49dと、接近している左外側パネル部50の外周縁50aの前後の端縁50b,50cと、を相互に縫着するとともに、基部49の右縁の前後の端縁49c,49dと、右外側パネル部51の外周縁51aの前後の端縁51b,51cと、を相互に縫着する。そして、第1基布48の左外側パネル部50の外周縁50aにおける端縁50b,50c間の中央部50dと、第2基布53L(左内側パネル部54)の外周縁54bと、を相互に縫着して縫合部位45(45L)を形成し、また、第1基布48の右外側パネル部51の外周縁51aにおける端縁51b,51c間の中央部51dと、第2基布53R(右内側パネル部55)の外周縁55bと、を相互に縫着する縫合部位45(45R)を形成する。ついで、補強布61の前部側の左右両縁61a,61aを、縫合部位45L,45Rの近傍に、それぞれ、縫着させ(図2参照)、縁部の縫い代を外部に露出させないように、流入用開口19を利用して反転させれば、エアバッグ15を製造することができる。
【0042】
その後、各取付孔20からボルト11aを突出させるようにして、内部にリテーナ11を配設させた状態で、エアバッグ15を折り畳み、さらに、折り崩れしないように、折り畳んだエアバッグ15の周囲を、破断可能なラッピングシート13(図1参照)によりくるむ。そして、各ボルト11aをケース6の底壁部6aから突出させるようにして、折り畳んだエアバッグ15を、ケース6の底壁部6aに載置させる。ついで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部6aの下方からケース6内に挿入させるとともに、底壁部6aから下方に突出している各ボルト11aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト11aにナット12を締結させれば、ケース6の底壁部6aに対して、折り畳んだエアバッグ15とインフレーター8とを取り付けることができる。
【0043】
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー10の連結壁部10cに、ケース6の周壁部6bを係止させ、ケース6の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側の部位に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0044】
助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、膨張してラッピングシート13を破断するとともに、エアバッグカバー10の扉部10a,10bを図1の二点鎖線及び図8に示すように押して開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー10の扉部10a,10bが開いて形成された開口から、上方へ突出するとともに、インパネ1の上面2とインパネ1の上方のウインドシールド4との間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張して、図1の二点鎖線、及び、図8に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0045】
そして、実施形態のエアバッグ15では、凹溝35の部位の前後方向に沿うバッグ本体16の連通孔22の内周縁23の後部側、すなわち、後部側内周縁26、において、天井側縁部28を底側縁部29側に牽引可能な第1テザー38の他に、第2テザー39が配設されている。この第2テザー39は、第1テザー38から延びて第1テザー38の離隔側端27aと近接側端27bとの両端部間における後部側内周縁26に連結されており、大曲率部27の部位が凹溝35を浅くするように後方側へ突出することを防止できる。すなわち、第1テザー38が、流入用開口19より後部側のエリアにおける大曲率部27を間にする天井側縁部28を、インパネ1の上面2側に扉部10bを介在させて支持されている底側縁部29から離れないように、位置規制する。また、第2テザー39が、大曲率部27の部位の突出を規制できるため、凹溝35の略全域を、拘束凸部34から、所定距離DL分(図5参照)、凹ませることができ、その結果、左右の拘束凸部34の凹溝35からの突出高さPHを安定させることができる。
【0046】
また、第2テザー39の軸直交方向(幅方向)SDの両縁には、左右方向に貫通する連通用開口40,41が設けられており、流入用開口19から流入する膨張用ガスGが、大曲率部27付近を流れの下流端とするように、整流布43の前側の開口43aを経て、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとの内周面側を前方側から後方側に向かうように流れる際、及び、整流布43の後側の開口43bを経て、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとの内周面側を下方側から上方側に向かうように流れる際、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとに流入する全体の流入量相互が不均等としても、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとが膨張を略完了させる際には、流入量の不十分な側に、連通用開口40,41を経て流入可能となるため、極力、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとの膨張完了状態をバランス良く行うことが可能となる。その結果、バッグ本体16では、膨張完了直後の左右の拘束凸部34(34L,34R)の凹溝35からの突出高さPHや突出方向を相互に均等となるように安定させることができ、そのため、膨張完了直後の左右の拘束凸部34(34L,34R)に対して乗員Pが前進移動してきても、左右の拘束凸部34(34L,34R)が、乗員Pの左右の肩部PS付近を、円滑に、正対して受け止めることができる(図8参照)。
【0047】
さらに、第2テザー39自体が、第1テザー38から延びるものであり、第1テザー38と第2テザー39とを一体的に構成できて、第2テザー39の第1テザーに対する結合作業を不要にすることも可能となる。
【0048】
したがって、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了直後の乗員拘束部33における左右の拘束凸部34(34L,34R)の凹溝35からの突出高さPHや突出形態を、安定させることができ、さらに、極力、手間無く、第1テザー38と第2テザー39とを配設することができる。
【0049】
なお、実施形態では、連通用開口40,41の実質的な合計の開口面積(内周縁23の内周側で開口している開口面積)OA(図4参照)は、約27cm2として、連通孔22を塞ぐように配設しているテザー部材37の実質的な閉塞面積(内周縁23から連通孔22を塞いでいる面積)SA(図4参照,実施形態では約230cm2)の約12%としている。このようなテザー部材37の閉塞面積SAに対する連通用開口40,41の開口面積OAの割合は、5〜50%、好ましくは10〜45%、とすることが望ましい。小さすぎれば、膨張用ガスGの連通状態を確保し難く、大きければ、各端部(第1テザー38の離隔側端38aや近接側端38b、第2テザー39の先端部39b)を含めた第1テザー38や第2テザー39の幅寸法を確保し難くなって、後部側内周縁26の形状規制効果を確保し難くなってしまうからである。勿論、膨張用ガスGの連通状態を確保できるように、連通用開口40,41の合計の開口面積(内周縁23の内周側で開口している開口面積)OAは、約27cm2以上とすることが望ましい。
【0050】
また、実施形態では、規制部材を、シート状の一枚のテザー部材37から構成した場合を示したが、複数のシート材から形成してもよく、例えば、第2テザー39を、別途、第1テザー38に縫合や接着を利用して結合させて、規制部材を構成してもよい。
【0051】
さらに、実施形態では、規制部材として、左内側パネル部54や右内側パネル部55と別体とした一つの可撓性を有したシート状のテザー部材37を使用したが、図9,10に示すエアバッグ15Aのように、第1テザー38Aと第2テザー39Aとを備えたテザー部材(規制部材)37Aを、左内側パネル布や右内側パネル部の少なくとも一方、図例の場合には、左内側パネル部54Aと、一体的に形成してもよい。但し、実施形態のように、左内側パネル部54や右内側パネル部55と別体としたテザー部材37から形成する場合には、テザー部材37を、左内側パネル部54と右内側パネル部55との内周縁54a,55a相互を縫合して結合させる際、共縫いして、簡便に配設することができる。そして、このような構成の場合には、従来構成の助手席用エアバッグ(バッグ本体16)に、テザー部材37を配設させて、容易に、膨張完了直後の左右の拘束凸部34(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる。さらに、このような構成では、テザー部材37として、エアバッグ自体(バッグ本体16自体)の外周壁17を構成する基布より伸び難い素材を、選択できて、この場合には、一層、左右の拘束凸部(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる。
【0052】
さらに、この場合、実施形態のように、テザー部材37を、経糸と緯糸とを織って形成した織布からなるテザー用素材57から形成して、経糸VS若しくは緯糸HSの方向を、第1テザー38若しくは第2テザー39の少なくとも一方の軸方向VD,HDに沿わせて、配設すれば、経糸VSや緯糸HSに沿った方向に軸方向VD,HDを配置させたテザーの伸びが抑えられ、単に織布における糸目の配置の選択により、効率的に、凹溝35の部位の内周縁23の変形を防止できる(左右の拘束凸部34(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる)。
【0053】
特に、実施形態の場合には、テザー部材37が、第1テザー38の離隔側端38aと近接側端38bとの両端部間の中央付近の中間部38cから第1テザー38の軸方向VDと直交する軸方向HDで、第2テザー39を後方側に突出させており、織布の経糸VS若しくは緯糸HSを、第1テザー38と第2テザー39との両者の軸方向VD,HDに沿って配設することができて、第1テザー38と第2テザー39との伸びを共に抑制でき、さらに一層、効率的に、凹溝35の部位の内周縁23の変形を防止できて、左右の拘束凸部34(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる。
【0054】
なお、上記の点を考慮しなければ、図11に示すエアバッグ15Bのテザー部材37Bのように、第2テザー39Bを、第1テザー38Bと直交交差しないように、配設してもよい。この場合、第2テザー39Bは、第1テザー38Aの中間部38cから延ばしてもよいし、第1テザー38Aの離隔側端38aや近接側端38bから延ばして、配設してもよい(図例では、近接側端38bから延ばしている)。
【0055】
また、図12に示すエアバッグ15Cのテザー部材37Cのように、左右方向に貫通する連通用開口42を軸直交方向SDの両縁に配設させていれば、第2テザー39Cは、元部39aを第1テザー38Cに配置させて、その第1テザー38Cから延びるように複数本(図例では二本)配設し、そして、各先端部39bを第1テザー38の離隔側端38aと近接側端38bとの間における後部側内周縁26に連結させてもよい。この場合のテザー部材としては、図12の括弧内に図示したように、各第2テザー39Dの両縁に連通用開口42を配設して、第2テザー39Dの先端部39b、及び、第1テザー38Dの離隔側端38aや近接側端38bを連続するように連ならせたような形状の一枚のテザー用素材57Dからなるテザー部材37D、を使用してもよい。
【0056】
さらに、実施形態のエアバッグ15では、連通孔22の後部側内周縁26が、インパネ2の上面2の上方側に位置するものを例示したが、図13に示すように、連通孔22Eの後部側内周縁26がインパネ2の後面3に接近するように後下方側に延びるようなエアバッグ15Eにも、規制部材(テザー部材)37Eを配設させてもよく、その場合には、連通用開口40,41を上下に並設させた実施形態と相違して、第2テザー39Eの軸直交方向SDの両縁に配置される連通用開口40E,41Eを、前後に並設させて、左右の拘束凸部34,34への膨張用ガスの流入量を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグを使用した助手席用エアバッグ装置の車両前後方向の断面図である。
【図2】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前方側から見た斜視図である。
【図3】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の後方側から見た斜視図である。
【図4】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図5】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の断面図であり、図4のV−V部位に対応する。
【図6】実施形態のエアバッグを構成する部材を示す平面図である。
【図7】実施形態のエアバッグを構成する部材であって、右内側パネル部、左内側パネル部、補強布、及び、テザー部材を縫合して平らに展開した平面図である。
【図8】実施形態のエアバッグの使用状態を説明する図であり、膨張が完了した状態を示す車両の側方から見た図である。
【図9】実施形態の変形例のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図10】図9に示すエアバッグに使用するテザー部材を一体化した右内側パネル部、左内側パネル部、及び、補強布を縫合して平らに展開した平面図である。
【図11】他の実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図12】さらに他の実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図13】さらに他の実施形態のエアバッグの使用状態を説明する図であり、膨張が完了した状態を示す車両の側方から見た図である。
【符号の説明】
【0058】
1…(インパネ)インストルメントパネル、
15,15A,15B,15C…エアバッグ、
17…外周壁、
19…流入用開口、
22…連通孔、
26…後部側内周縁、
27…大曲率部、
27a…(大曲率部の)離隔側端、
27b…(大曲率部の)近接側端、
28…天井側縁部、
29…底側縁部、
33…乗員拘束部、
34,34L,34R…拘束凸部、
35…凹溝、
37,37A,37B,37C,37D…(規制部材)テザー部材、
38,38A,38B,38C,38D…第1テザー、
38a…(第1テザーの)離隔側端、
38b…(第2テザーの)近接側端、
39,39A,39B,39C,39D…第2テザー、
40,41,42…連通用開口、
50…左外側パネル部、
50a…(左外側パネル部の)外周縁、
51…右外側パネル部、
51a…(右外側パネル部の)外周縁、
54…左内側パネル部、
54a…(左内側パネル部の)内周縁
54b…(左内側パネル部の)外周縁、
55…右内側パネル部、
55a…(右内側パネル部の)内周縁、
55b…(右内側パネル部の)外周縁、
VS…経糸、
HS…緯糸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席前方のインストルメントパネルの上面側に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置のエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トップマウントタイプの助手席用エアバッグでは、車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、上方へ突出するとともに、インストルメントパネル上面とインストルメントパネル上方のウインドシールドとの間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張していた。また、この種の助手席用エアバッグは、展開膨張完了時の形状を前端側に頂部を設けた略四角錐形状とするとともに、後面側を略鉛直方向に沿って配置させて乗員を受け止める乗員拘束部とし、かつ、前部側の下面に膨張用ガスを流入させる流入用開口を設けて構成されていた。そして、乗員拘束部が、乗員の左右両肩を受け止め可能に、乗員拘束部の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部と、左右の拘束凸部の間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝と、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1〜3)。凹溝の底面は、乗員拘束部の左右の拘束凸部により乗員の左右の肩部や脇部付近を受け止めた後であって、乗員の前方移動速度を低減させた状態での乗員の頭部を受け止めるように、拘束凸部より前方側に凹んで形成されていた。
【0003】
このようなエアバッグの外周壁は、左右の側壁をそれぞれ構成する左外側パネル部及び右外側パネル部と、凹溝を間にする左右の拘束凸部の対向壁をそれぞれ構成する略C字形状の左内側パネル部及び右内側パネル部と、を備えて構成されていた。そして、左右の拘束凸部は、それぞれ、左外側パネル部と左内側パネル部との外周縁相互、及び、右外側パネル部と右内側パネル部との外周縁相互を、結合させて形成されていた。また、凹溝は、左内側パネル部と右内側パネル部との内周縁相互を、結合させて形成されていた。
【0004】
さらに、このようなエアバッグでは、凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側が、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部と、大曲率部におけるインストルメントパネルから離れた側の離隔側端から前方側に延びて膨張完了時に流入用開口の上方位置付近まで延びる天井側縁部と、大曲率部におけるインストルメントパネルに近い近接側端から前方側の流入用開口の前縁付近まで延びる底側縁部と、を備える構成となっていた。
【0005】
そしてさらに、凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側では、膨張完了時の大曲率部を間にする天井側縁部と底側縁部との離隔を規制可能な規制部材を配設させて構成されていた。ちなみに、エアバッグの展開膨張完了時、天井側縁部と底側縁部との距離が広がれば、大曲率部を間にする底側縁部側は、インストルメントパネルの上面から後面にかけて支持されており、天井側縁部側がインストルメントパネルから離れる上方側へ移動することとなって、拘束凸部からの凹溝の凹み量が小さくなり、この種のエアバッグにおける肩部を拘束した後にソフトに乗員頭部を拘束する態様を、確保し難くなってしまう。
【0006】
そして、従来の規制部材としては、天井側縁部側を底側縁部側に牽引するベルト状の一本のテザー(特許文献1,2参照)や、天井側縁部側から底側縁部側にわたる大曲率部の内周縁を塞ぐように配置される三日月状のテザー(縫代)(特許文献3参照)があった。
【特許文献1】特開2006−103670号公報
【特許文献2】特開2008−037358号公報
【特許文献3】特開2008−018936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の一本のベルト状のテザーでは、テザーの離隔側端と近接側端との両端部の間の大曲率部の部位自体が、凹溝の深さを浅くするように後方側へ突出する事態を抑制できず、凹溝の略全域を、拘束凸部から所定距離分凹ませる点に、改善の余地があった。
【0008】
また、従来の三日月状のテザーでは、左右の拘束凸部の展開膨張時の挙動に関し、改善の余地があった。すなわち、この種のエアバッグでは、流入用開口から流入する膨張用ガスは、大曲率部付近を流れの下流端とするように、凹溝の部位の内周縁で左右に分離されて、左右の拘束凸部の内周面側を前方側から後方側に向かうように流れ、その際、左右の拘束凸部に流入する膨張用ガスの流量に左右のバラツキがあれば、左右の拘束凸部の凹溝からの突出高さにバラツキを生じさせたり、左右の拘束凸部の突出方向を外側方向や内側方向に向かうようにバラツキを生じさせてしまい、その結果、エアバッグの膨張完了直後に前進移動してくる乗員の左右の肩部付近を、正対して受け止めることができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了直後の乗員拘束部における左右の拘束凸部の凹溝からの高さや突出形態を、安定させることができる助手席用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る助手席用エアバッグは、車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、上方へ突出するとともに、インストルメントパネル上面とインストルメントパネル上方のウインドシールドとの間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張し、展開膨張完了時の形状を前端側に頂部を設けた略四角錐形状とするとともに、後面側を略鉛直方向に沿って配置させて乗員を受け止める乗員拘束部とし、かつ、前部側の下面に膨張用ガスを流入させる流入用開口を設けて構成される助手席用エアバッグであり、
乗員拘束部が、乗員の左右両肩を受け止め可能に、乗員拘束部の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部と、左右の拘束凸部の間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝と、を備えて構成され、
エアバッグの外周壁が、左右の側壁をそれぞれ構成する左外側パネル部及び右外側パネル部と、凹溝を間にする左右の前記拘束凸部の対向壁をそれぞれ構成する略C字形状の左内側パネル部及び右内側パネル部と、を備えて構成され、
左右の拘束凸部が、それぞれ、左外側パネル部と左内側パネル部との外周縁相互、及び、右外側パネル部と右内側パネル部との外周縁相互を、結合させて形成され、
凹溝が、左内側パネル部と右内側パネル部との内周縁相互を、結合させて形成され、
凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側が、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部と、大曲率部におけるインストルメントパネルから離れた側の離隔側端から前方側に延びて膨張完了時に流入用開口の上方位置付近まで延びる天井側縁部と、大曲率部におけるインストルメントパネルに近い近接側端から前方側の流入用開口の前縁付近まで延びる底側縁部と、を備えて構成されるとともに、膨張完了時の大曲率部を間にする天井側縁部と底側縁部との離隔を規制可能な規制部材を配設させて構成されている助手席用エアバッグにおいて、
規制部材が、
大曲率部を間にする天井側縁部と底側縁部とを連結する第1テザーと、第1テザーから延びて第1テザーにおける天井側縁部と底側縁部とに連結された両端部の間における凹溝の部位のエアバッグの内周縁の後部側に連結される少なくとも一本の第2テザーと、を備えて構成されるとともに、
第2テザーの軸直交方向の両縁側に、左右方向に貫通する連通用開口を設けて、配設されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る助手席用エアバッグでは、凹溝の部位の前後方向に沿うエアバッグの内周縁の後部側において、天井側縁部を底側縁部側に牽引可能な第1テザーの他に、少なくとも一本の第2テザーが配設されている。この第2テザーは、第1テザーから延びて、第1テザーの天井側縁部と底側縁部とに連結された両端部間における凹溝の部位のエアバッグの内周縁の後部側に連結されるものであり、大曲率部の部位が凹溝を浅くするように後方側へ突出することを防止できる。すなわち、第1テザーが、流入用開口より後部側のエリアにおける大曲率部を間にする天井側縁部を、インストルメントパネルの上面側に支持されている底側縁部から離れないように、位置規制し、また、第2テザーが、大曲率部の部位の突出を規制できるため、凹溝の略全域を、拘束凸部から所定距離分凹ませることができ、その結果、左右の拘束凸部の凹溝からの突出高さを安定させることができる。
【0012】
また、第2テザーの軸直交方向の両縁側には、左右方向に貫通する連通用開口が設けられており、流入用開口から流入する膨張用ガスが、流れの下流端を大曲率部付近とするように、左右の拘束凸部の内周面側を前方側から後方側に向かうように流れる際、左右の拘束凸部に流入する流入量を不均等としても、左右の拘束凸部の膨張を略完了させる際には、流入量の不十分な側に、連通用開口を経て流入可能となるため、極力、左右の拘束凸部の膨張完了状態をバランス良く行うことが可能となり、膨張完了直後における左右の拘束凸部の凹溝からの突出高さや突出方向を相互に均等となるように安定させることができ、そのため、膨張完了直後の左右の拘束凸部に乗員が前進移動してきても、左右の拘束凸部が、乗員の左右の肩部付近を、円滑に、正対して受け止めることができる。
【0013】
さらに、第2テザー自体が、第1テザーから延びるものであり、第1テザーと第2テザーとを一体的に構成できて、第2テザーの第1テザーに対する結合作業を不要にすることも可能となる。
【0014】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグでは、膨張完了直後の乗員拘束部における左右の拘束凸部の凹溝からの高さや突出形態を、安定させることができ、さらに、極力、手間無く、第1,2テザーを配設することができる。
【0015】
また、第1,2テザーを備えた規制部材は、左内側パネル布や右内側パネル部と一体的に形成してもよいが、左内側パネル部や右内側パネル部と別体とした一つの可撓性を有したシート状のテザー部材から形成し、このテザー部材を、左内側パネル部と右内側パネル部との内周縁相互を縫合して結合させる際、共縫いして、配設してもよい。このような構成の場合には、従来構成の助手席用エアバッグに、テザー部材を配設させて、容易に、膨張完了直後の左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる。さらに、このような構成では、テザー部材として、エアバッグ自体の外周壁を構成する基布より伸び難い素材を、選択できて、この場合には、一層、膨張完了直後の左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる。
【0016】
この場合、テザー部材を、経糸と緯糸とを織って形成した織布から形成して、経糸若しくは緯糸の方向を、第1テザー若しくは第2テザーの少なくとも一方の軸方向に沿わせて、配設すれば、経糸や緯糸に沿った方向に軸方向を配置させたテザーの伸びが抑えられ、単に織布における糸目の配置の選択により、効率的に、凹溝の部位の内周縁の変形を防止できる(左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる)。
【0017】
さらにこの場合、テザー部材として、第1テザーにおける天井側縁部と底側縁部とに連結された両端部間の中央付近から第1テザーと直交するように第2テザーを突出させて構成し、織布の経糸若しくは横糸を、第1テザーと第2テザーとの軸方向に沿って配設すれば、第1,2テザーの伸びを共に抑制でき、さらに一層、効率的に、凹溝の部位の内周縁の変形を防止できて、左右の拘束凸部における凹溝からの突出高さや突出形態を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ(以下、単にエアバッグと省略する)15は、図1に示すように、インストルメントパネル(以下、インパネとする)1の上面2側の内部に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置Mに使用されるものである。この助手席用エアバッグ装置Mは、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持するケース6と、エアバッグ15をケース6に取り付けるためのリテーナ11と、折り畳まれたエアバッグ15を覆うエアバッグカバー10と、を備えて構成されている。
【0019】
なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、車両の直進状態における車両の上下、前後、及び、左右の方向に一致するものである。
【0020】
エアバッグカバー10は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後二枚の扉部10a,10bをエアバッグ15に押されて開くように構成されている。また、エアバッグカバー10の扉部10a,10bの周囲には、ケース6に連結される連結壁部10cが、形成されている。
【0021】
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース6に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
【0022】
ケース6は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部6aと、底壁部6aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー10の連結壁部10cを係止する周壁部6bと、を備えて構成されている。ケース6には、底壁部6aの部位に、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0023】
なお、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配設される円環状のリテーナ11の複数のボルト11aが、エアバッグ15、ケース6の底壁部6a、及び、インフレーター8のフランジ部8c、を貫通して、ナット12止めされることにより、ケース6に取り付けられている。
【0024】
エアバッグ15は、バッグ本体16、バッグ本体16内に配設されるテザー部材37、及び、バッグ本体16内に配設される整流布43、を備えて構成されている。バッグ本体16は、図2〜5に示すように、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状の袋状とし、外周壁17を、上面16a側に配置されてバッグ本体16のウインドシールド4と接触するような上壁17a、下面16b側に配置されてインパネ1の上面2側や後面3に支持されるような下壁17b、左側面16cに配置される左側壁17c、右側面16dに配置される右側壁17d、及び、後面16e側に配置される後壁17eから構成されている。そして特に、実施形態のバッグ本体16は、後面16eを乗員を受け止める乗員拘束部33として、乗員拘束部33以外の残部の上面16a、下面16b、左側面16c、及び、右側面16dを、既述したように、インパネ1の上面2や後面3、あるいは、ウインドシールド4に接触させる車体側部18としている。また、実施形態のバッグ本体16の車体側部18の前部側の下面には、左右方向の中央付近に、膨張用ガスをバッグ本体16内に流入させるように円形に開口されて、開口周縁18aをケース6に取り付ける流入用開口19が、配設されて構成されている。
【0025】
流入用開口19の開口周縁18aには、リテーナ11のボルト11aを挿通させて、流入用開口19の開口周縁18aをケース6の底壁部6aに取り付けるための複数の取付孔20が、形成されている。また、バッグ本体16における左側壁17cと右側壁17dとには、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール31が、それぞれ、配設されている。
【0026】
乗員拘束部33は、図3〜5に示すように、バッグ本体16の膨張完了時に乗員の左右両肩を受け止め可能に、乗員拘束部33の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部34(34L,34R)と、左拘束凸部34L,右拘束凸部34R間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝35と、を備えて構成されている。凹溝35の底面35aは、乗員拘束部33の左拘束凸部34L,右拘束凸部34Rにより乗員の左右の肩部や脇部付近を受け止めた後であって、乗員の前方移動速度を低減させた状態の乗員の頭部を、受け止める部位となる。
【0027】
さらに、この凹溝35は、バッグ本体16の外周壁17を構成する略C字形状の左内側パネル部54と右内側パネル部55との内周縁54a,55a(図5,6参照)相互を結合した結合部位(実施形態の場合には縫合した縫合部位)46によって、形成されている。詳しくは、この凹溝35は、縫合部位46の外周縁の部位から形成されることとなる。
【0028】
なお、左内側パネル部54と右内側パネル部55とは、バッグ本体16の外周壁17における後壁17e、上壁17a、及び、下壁17bの左右方向の中央に配置されて、左拘束凸部34L,右拘束凸部34Rの対向壁を構成している。また、左拘束凸部34Lは、図5,6に示すように、バッグ本体16の左側壁17cを構成する左外側パネル部50と左内側パネル部54との外周縁50a,54b相互を結合した結合部位(実施形態の場合には縫合した縫合部位)45(45L)によって、形成されている。さらに、右拘束凸部34Rは、バッグ本体16の右側壁17dを構成する右外側パネル部51と右内側パネル部55との外周縁51a,55b相互を結合した結合部位(実施形態の場合には縫合した縫合部位)45(45R)によって、形成されている。
【0029】
凹溝35は、略C字形状(略三日月状)の左内側パネル部54と右内側パネル部55との外周縁54b,55bを拘束凸部34(34L,34R)に連結させた状態の内周縁54a,55a相互を結合して形成されており、凹溝35のバッグ本体16内の内周縁23側に、流入用開口19側に牽引するテザー等の牽引部材を設けなくとも、左内側パネル部54や右内側パネル部55自体で、左右の拘束凸部34(34L,34R)間に前方側へ凹む凹溝35を形成できる構造としている(図4参照)。
【0030】
そして、膨張完了時のバッグ本体16内の凹溝35の部位における内周縁23の内側には、図4に示すように、左右の拘束凸部34(34L,34R)間を連通する略楕円形の連通孔22が形成されることとなる。この連通孔22の内周縁23、換言すれば、凹溝35の部位の前後方向に沿うバッグ本体16の内周縁23は、流入用開口19の上方側の前方側となる前部側内周縁24と、流入用開口19の上方側の後方側となる後部側内周縁26と、から構成されている。後部側内周縁26は、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部27と、大曲率部27におけるインパネ1から離れた側の離隔側端(図例では上端)27aから前方側に延びて膨張完了時に流入用開口19の上方位置付近まで延びる天井側縁部28と、大曲率部27におけるインパネ1に近い近接側端(図例では下端)27bから前方側の流入用開口19の前縁付近まで延びる底側縁部29と、を備えて構成されている。第1実施形態の場合、図7に示すように、大曲率部27は、曲率半径(半径寸法)RBを小さくする円弧状とし(実施形態では約150mm)、天井側縁部28は、大曲率部27より曲率を小さくした円弧状、換言すれば、半径寸法RUを半径寸法RBより大きくした円弧状(実施形態では約500mm)に形成され、底側縁部29は、大曲率部27より曲率の小さな曲がりの少ない線状、実施形態の場合には、直線状、として形成されている。なお、内周縁23は、縫合部位46の内周縁側から形成されている。
【0031】
そして、実施形態では、膨張完了時の大曲率部27を間にする天井側縁部28と底側縁部29との離隔を規制可能な規制部材として、可撓性を有したシート状のテザー部材37が配設されている。テザー部材37は、図4,7に示すように、バッグ本体16を形成するポリアミドやポリエステル等の合成繊維の糸を平織り等で織って形成した織布から形成されている。そして、テザー部材37は、大曲率部27を間にする天井側縁部28と底側縁部29とを連結する第1テザー38と、第1テザー38から延びて第1テザー38のインパネ1から離れた離隔側端(図例では上端)38aとインパネ1に近い近接側端(図例では下端)38bとの両端部間における後部側内周縁26に連結される一本の第2テザー39と、を備えて構成されている。
【0032】
実施形態の場合、図4,7に示すように、第1テザー38におけるインパネ1から離れた上端側の離隔側端38aとインパネ1に接近している下端側の近接側端38bとは、上下方向の中央の中間部38cの前後方向の幅寸法WMより、前後方向の幅寸法WU,WDを徐々に湾曲して広げるように、構成されている。さらに、離隔側端38aは、大曲率部27の離隔側端27a付近に侵入する状態として、天井側縁部28の後端28bから前端28a付近までの幅広いエリアで、天井側縁部28に結合され、また、近接側端38bも、大曲率部27の近接側端27b付近に侵入する状態として、底側縁部29の後端29bから前端29a付近までの幅広いエリアで、底側縁部29に結合されている。
【0033】
実施形態の場合、第2テザー39は、第1テザー38の上下方向に沿う軸方向(換言すれば離隔側端38aと近接側端38bとを結ぶ軸方向)VDに対して、その軸方向HDを直交させるように、第1テザー38の中間部38cに一体化された元部39a側から先端部39bを延ばして、先端部39bを、大曲率部27の両端部(離隔側端27a,近接側端27b)間の中間部27cに結合させている。
【0034】
また、テザー部材37は、織布からなるテザー用素材57の経糸VSと緯糸HSとの方向を、第1テザー38の軸方向VD若しくは第2テザー39の軸方向HDに沿わせて配置させて(図7参照)、左内側パネル部54と右内側パネル部55との内周縁54a,55a相互を結合させる縫合時に、補強布68,68とともに、共縫いされて、配設されている。
【0035】
そして、第2テザー39は、軸直交方向SDの両縁間の幅寸法WSが小さく、軸直交方向の両縁に、換言すれば、第1テザー38や後部側内周縁26の大曲率部27との間に、左右方向に貫通する連通用開口40,41を配設させるように、構成されている(図4,5参照)。
【0036】
整流布43は、図4に示すように、バッグ本体16内において、流入用開口19の上方側を覆うように配設されるとともに、流入用開口19から流入した膨張用ガスGを前後両側へ整流可能に、前後方向の両端を開口させた略筒形状とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、流入用開口19から流入した膨張用ガスGは、整流布43の前後の開口43a,43bから、バッグ本体16内に流入することとなる。また、整流布43には、前後両端の開口43a,43bよりも開口面積を小さくして、流入用開口19から流入した膨張用ガスを逃がし可能な貫通孔43cが、左右両側に開口されている。貫通孔43cは、流入用開口19から流入した膨張用ガスGの一部を逃がすことにより、整流布43の前後の開口43a,43bの方向を安定させるために、配設されている。
【0037】
実施形態の場合、整流布43は、図6に示す2枚の左右対称形として流入用開口19の部位で重なるような整流布用素材59(59L,59R)から、構成され、流入用開口19から離れた端部59a相互を結合させて、前後方向に軸方向を沿わせる筒状に形成されている。
【0038】
なお、バッグ本体16は、図6に示すように、第1基布48と二枚の第2基布53(53L,53R)、流入用開口19の周縁を補強する補強布61,62,63、ベントホール31の周縁を補強する補強布65、及び、連通孔22の内周縁23を補強する補強布68、から構成され、それぞれ、ポリアミドやポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。同様に、整流布43を形成する整流布用素材59(59L,59R)も、ポリアミドやポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。なお、図6に示す補強布66,66は、整流布43の各貫通孔43cの周縁を補強するものであり、こららの補強布66も、ポリアミドやポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。
【0039】
第1基布48は、流入用開口19の開口周縁18aを形成する略長方形板状の基部49の左右両側に、左外側パネル部50と右外側パネル部51とを一体化して連結した形状としている。二枚の第2基布53(53L,53R)は、それぞれ、左内側パネル部54と右内側パネル部55とを形成するものである。
【0040】
実施形態のエアバッグ15の製造について説明すれば、整流布用素材59L,59Rにおける貫通孔43cの周縁と、第1基布48におけるベントホール31の周縁と、には、予め、補強布65,66を縫着させておく。そしてまず、平らに展開した状態の第1基布48に、補強布62及び整流布用素材59L,59Rを順に重ね、補強布62の周縁となる位置において、縫合糸を利用して、補強布62及び整流布用素材59L,59Rを、第1基布48に縫着させる。その後、整流布用素材59Rの上に、補強布61,63を順に重ね、流入用開口19の開口周縁18aの部位と、補強布63の周縁付近の部位と、において、縫合糸を利用して、補強布61,62,63、及び、整流布用素材59L,59Rを、第1基布48に縫着させる。その後、孔明け加工により、流入用開口19及び取付孔20を形成する。次いで、整流布用素材59L,59Rにおける端部59a相互を縫着させて、整流布43を形成する。
【0041】
ついで、第2基布53L,53Rを相互に重ね、さらに、補強布68,68、及び、テザー用素材57、を重ね、補強布68とテザー用素材57との間に、第2基布53L,53R(左内側パネル部54と右内側パネル部55)の内周縁54a,55aを挟んで、凹溝35に沿うように、縫合部位46を形成する。ついで、第2基布53L,53Rを開き、第2基布53L、53Rの前端の縁部53a,53aを直線状にして、第1基布48の基部49の前端の縁部49aに縫着させ、また、第2基布53L,53Rの後端の縁部53b,53bを直線状にして、第1基布48の基部49の後端の縁部49bに縫着させる。さらに、基部49の左縁の前後の端縁49c,49dと、接近している左外側パネル部50の外周縁50aの前後の端縁50b,50cと、を相互に縫着するとともに、基部49の右縁の前後の端縁49c,49dと、右外側パネル部51の外周縁51aの前後の端縁51b,51cと、を相互に縫着する。そして、第1基布48の左外側パネル部50の外周縁50aにおける端縁50b,50c間の中央部50dと、第2基布53L(左内側パネル部54)の外周縁54bと、を相互に縫着して縫合部位45(45L)を形成し、また、第1基布48の右外側パネル部51の外周縁51aにおける端縁51b,51c間の中央部51dと、第2基布53R(右内側パネル部55)の外周縁55bと、を相互に縫着する縫合部位45(45R)を形成する。ついで、補強布61の前部側の左右両縁61a,61aを、縫合部位45L,45Rの近傍に、それぞれ、縫着させ(図2参照)、縁部の縫い代を外部に露出させないように、流入用開口19を利用して反転させれば、エアバッグ15を製造することができる。
【0042】
その後、各取付孔20からボルト11aを突出させるようにして、内部にリテーナ11を配設させた状態で、エアバッグ15を折り畳み、さらに、折り崩れしないように、折り畳んだエアバッグ15の周囲を、破断可能なラッピングシート13(図1参照)によりくるむ。そして、各ボルト11aをケース6の底壁部6aから突出させるようにして、折り畳んだエアバッグ15を、ケース6の底壁部6aに載置させる。ついで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部6aの下方からケース6内に挿入させるとともに、底壁部6aから下方に突出している各ボルト11aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト11aにナット12を締結させれば、ケース6の底壁部6aに対して、折り畳んだエアバッグ15とインフレーター8とを取り付けることができる。
【0043】
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー10の連結壁部10cに、ケース6の周壁部6bを係止させ、ケース6の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側の部位に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0044】
助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、膨張してラッピングシート13を破断するとともに、エアバッグカバー10の扉部10a,10bを図1の二点鎖線及び図8に示すように押して開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー10の扉部10a,10bが開いて形成された開口から、上方へ突出するとともに、インパネ1の上面2とインパネ1の上方のウインドシールド4との間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張して、図1の二点鎖線、及び、図8に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0045】
そして、実施形態のエアバッグ15では、凹溝35の部位の前後方向に沿うバッグ本体16の連通孔22の内周縁23の後部側、すなわち、後部側内周縁26、において、天井側縁部28を底側縁部29側に牽引可能な第1テザー38の他に、第2テザー39が配設されている。この第2テザー39は、第1テザー38から延びて第1テザー38の離隔側端27aと近接側端27bとの両端部間における後部側内周縁26に連結されており、大曲率部27の部位が凹溝35を浅くするように後方側へ突出することを防止できる。すなわち、第1テザー38が、流入用開口19より後部側のエリアにおける大曲率部27を間にする天井側縁部28を、インパネ1の上面2側に扉部10bを介在させて支持されている底側縁部29から離れないように、位置規制する。また、第2テザー39が、大曲率部27の部位の突出を規制できるため、凹溝35の略全域を、拘束凸部34から、所定距離DL分(図5参照)、凹ませることができ、その結果、左右の拘束凸部34の凹溝35からの突出高さPHを安定させることができる。
【0046】
また、第2テザー39の軸直交方向(幅方向)SDの両縁には、左右方向に貫通する連通用開口40,41が設けられており、流入用開口19から流入する膨張用ガスGが、大曲率部27付近を流れの下流端とするように、整流布43の前側の開口43aを経て、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとの内周面側を前方側から後方側に向かうように流れる際、及び、整流布43の後側の開口43bを経て、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとの内周面側を下方側から上方側に向かうように流れる際、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとに流入する全体の流入量相互が不均等としても、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとが膨張を略完了させる際には、流入量の不十分な側に、連通用開口40,41を経て流入可能となるため、極力、左拘束凸部34Lと右拘束凸部34Rとの膨張完了状態をバランス良く行うことが可能となる。その結果、バッグ本体16では、膨張完了直後の左右の拘束凸部34(34L,34R)の凹溝35からの突出高さPHや突出方向を相互に均等となるように安定させることができ、そのため、膨張完了直後の左右の拘束凸部34(34L,34R)に対して乗員Pが前進移動してきても、左右の拘束凸部34(34L,34R)が、乗員Pの左右の肩部PS付近を、円滑に、正対して受け止めることができる(図8参照)。
【0047】
さらに、第2テザー39自体が、第1テザー38から延びるものであり、第1テザー38と第2テザー39とを一体的に構成できて、第2テザー39の第1テザーに対する結合作業を不要にすることも可能となる。
【0048】
したがって、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了直後の乗員拘束部33における左右の拘束凸部34(34L,34R)の凹溝35からの突出高さPHや突出形態を、安定させることができ、さらに、極力、手間無く、第1テザー38と第2テザー39とを配設することができる。
【0049】
なお、実施形態では、連通用開口40,41の実質的な合計の開口面積(内周縁23の内周側で開口している開口面積)OA(図4参照)は、約27cm2として、連通孔22を塞ぐように配設しているテザー部材37の実質的な閉塞面積(内周縁23から連通孔22を塞いでいる面積)SA(図4参照,実施形態では約230cm2)の約12%としている。このようなテザー部材37の閉塞面積SAに対する連通用開口40,41の開口面積OAの割合は、5〜50%、好ましくは10〜45%、とすることが望ましい。小さすぎれば、膨張用ガスGの連通状態を確保し難く、大きければ、各端部(第1テザー38の離隔側端38aや近接側端38b、第2テザー39の先端部39b)を含めた第1テザー38や第2テザー39の幅寸法を確保し難くなって、後部側内周縁26の形状規制効果を確保し難くなってしまうからである。勿論、膨張用ガスGの連通状態を確保できるように、連通用開口40,41の合計の開口面積(内周縁23の内周側で開口している開口面積)OAは、約27cm2以上とすることが望ましい。
【0050】
また、実施形態では、規制部材を、シート状の一枚のテザー部材37から構成した場合を示したが、複数のシート材から形成してもよく、例えば、第2テザー39を、別途、第1テザー38に縫合や接着を利用して結合させて、規制部材を構成してもよい。
【0051】
さらに、実施形態では、規制部材として、左内側パネル部54や右内側パネル部55と別体とした一つの可撓性を有したシート状のテザー部材37を使用したが、図9,10に示すエアバッグ15Aのように、第1テザー38Aと第2テザー39Aとを備えたテザー部材(規制部材)37Aを、左内側パネル布や右内側パネル部の少なくとも一方、図例の場合には、左内側パネル部54Aと、一体的に形成してもよい。但し、実施形態のように、左内側パネル部54や右内側パネル部55と別体としたテザー部材37から形成する場合には、テザー部材37を、左内側パネル部54と右内側パネル部55との内周縁54a,55a相互を縫合して結合させる際、共縫いして、簡便に配設することができる。そして、このような構成の場合には、従来構成の助手席用エアバッグ(バッグ本体16)に、テザー部材37を配設させて、容易に、膨張完了直後の左右の拘束凸部34(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる。さらに、このような構成では、テザー部材37として、エアバッグ自体(バッグ本体16自体)の外周壁17を構成する基布より伸び難い素材を、選択できて、この場合には、一層、左右の拘束凸部(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる。
【0052】
さらに、この場合、実施形態のように、テザー部材37を、経糸と緯糸とを織って形成した織布からなるテザー用素材57から形成して、経糸VS若しくは緯糸HSの方向を、第1テザー38若しくは第2テザー39の少なくとも一方の軸方向VD,HDに沿わせて、配設すれば、経糸VSや緯糸HSに沿った方向に軸方向VD,HDを配置させたテザーの伸びが抑えられ、単に織布における糸目の配置の選択により、効率的に、凹溝35の部位の内周縁23の変形を防止できる(左右の拘束凸部34(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる)。
【0053】
特に、実施形態の場合には、テザー部材37が、第1テザー38の離隔側端38aと近接側端38bとの両端部間の中央付近の中間部38cから第1テザー38の軸方向VDと直交する軸方向HDで、第2テザー39を後方側に突出させており、織布の経糸VS若しくは緯糸HSを、第1テザー38と第2テザー39との両者の軸方向VD,HDに沿って配設することができて、第1テザー38と第2テザー39との伸びを共に抑制でき、さらに一層、効率的に、凹溝35の部位の内周縁23の変形を防止できて、左右の拘束凸部34(34L,34R)における凹溝35からの突出高さPHや突出形態を安定させることができる。
【0054】
なお、上記の点を考慮しなければ、図11に示すエアバッグ15Bのテザー部材37Bのように、第2テザー39Bを、第1テザー38Bと直交交差しないように、配設してもよい。この場合、第2テザー39Bは、第1テザー38Aの中間部38cから延ばしてもよいし、第1テザー38Aの離隔側端38aや近接側端38bから延ばして、配設してもよい(図例では、近接側端38bから延ばしている)。
【0055】
また、図12に示すエアバッグ15Cのテザー部材37Cのように、左右方向に貫通する連通用開口42を軸直交方向SDの両縁に配設させていれば、第2テザー39Cは、元部39aを第1テザー38Cに配置させて、その第1テザー38Cから延びるように複数本(図例では二本)配設し、そして、各先端部39bを第1テザー38の離隔側端38aと近接側端38bとの間における後部側内周縁26に連結させてもよい。この場合のテザー部材としては、図12の括弧内に図示したように、各第2テザー39Dの両縁に連通用開口42を配設して、第2テザー39Dの先端部39b、及び、第1テザー38Dの離隔側端38aや近接側端38bを連続するように連ならせたような形状の一枚のテザー用素材57Dからなるテザー部材37D、を使用してもよい。
【0056】
さらに、実施形態のエアバッグ15では、連通孔22の後部側内周縁26が、インパネ2の上面2の上方側に位置するものを例示したが、図13に示すように、連通孔22Eの後部側内周縁26がインパネ2の後面3に接近するように後下方側に延びるようなエアバッグ15Eにも、規制部材(テザー部材)37Eを配設させてもよく、その場合には、連通用開口40,41を上下に並設させた実施形態と相違して、第2テザー39Eの軸直交方向SDの両縁に配置される連通用開口40E,41Eを、前後に並設させて、左右の拘束凸部34,34への膨張用ガスの流入量を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグを使用した助手席用エアバッグ装置の車両前後方向の断面図である。
【図2】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前方側から見た斜視図である。
【図3】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の後方側から見た斜視図である。
【図4】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図5】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の断面図であり、図4のV−V部位に対応する。
【図6】実施形態のエアバッグを構成する部材を示す平面図である。
【図7】実施形態のエアバッグを構成する部材であって、右内側パネル部、左内側パネル部、補強布、及び、テザー部材を縫合して平らに展開した平面図である。
【図8】実施形態のエアバッグの使用状態を説明する図であり、膨張が完了した状態を示す車両の側方から見た図である。
【図9】実施形態の変形例のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図10】図9に示すエアバッグに使用するテザー部材を一体化した右内側パネル部、左内側パネル部、及び、補強布を縫合して平らに展開した平面図である。
【図11】他の実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図12】さらに他の実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の前後方向に沿った断面図である。
【図13】さらに他の実施形態のエアバッグの使用状態を説明する図であり、膨張が完了した状態を示す車両の側方から見た図である。
【符号の説明】
【0058】
1…(インパネ)インストルメントパネル、
15,15A,15B,15C…エアバッグ、
17…外周壁、
19…流入用開口、
22…連通孔、
26…後部側内周縁、
27…大曲率部、
27a…(大曲率部の)離隔側端、
27b…(大曲率部の)近接側端、
28…天井側縁部、
29…底側縁部、
33…乗員拘束部、
34,34L,34R…拘束凸部、
35…凹溝、
37,37A,37B,37C,37D…(規制部材)テザー部材、
38,38A,38B,38C,38D…第1テザー、
38a…(第1テザーの)離隔側端、
38b…(第2テザーの)近接側端、
39,39A,39B,39C,39D…第2テザー、
40,41,42…連通用開口、
50…左外側パネル部、
50a…(左外側パネル部の)外周縁、
51…右外側パネル部、
51a…(右外側パネル部の)外周縁、
54…左内側パネル部、
54a…(左内側パネル部の)内周縁
54b…(左内側パネル部の)外周縁、
55…右内側パネル部、
55a…(右内側パネル部の)内周縁、
55b…(右内側パネル部の)外周縁、
VS…経糸、
HS…緯糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、上方へ突出するとともに、前記インストルメントパネル上面と前記インストルメントパネル上方のウインドシールドとの間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張し、展開膨張完了時の形状を前端側に頂部を設けた略四角錐形状とするとともに、後面側を略鉛直方向に沿って配置させて乗員を受け止める乗員拘束部とし、かつ、前部側の下面に膨張用ガスを流入させる流入用開口を設けて構成される助手席用エアバッグであり、
前記乗員拘束部が、乗員の左右両肩を受け止め可能に、前記乗員拘束部の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部と、左右の前記拘束凸部の間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝と、を備えて構成され、
前記エアバッグの外周壁が、左右の側壁をそれぞれ構成する左外側パネル部及び右外側パネル部と、前記凹溝を間にする左右の前記拘束凸部の対向壁をそれぞれ構成する略C字形状の左内側パネル部及び右内側パネル部と、を備えて構成され、
左右の前記拘束凸部が、それぞれ、前記左外側パネル部と前記左内側パネル部との外周縁相互、及び、前記右外側パネル部と前記右内側パネル部との外周縁相互を、結合させて形成され、
前記凹溝が、前記左内側パネル部と前記右内側パネル部との内周縁相互を、結合させて形成され、
前記凹溝の部位の前後方向に沿う前記エアバッグの内周縁の後部側が、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部と、該大曲率部における前記インストルメントパネルから離れた側の離隔側端から前方側に延びて膨張完了時に前記流入用開口の上方位置付近まで延びる天井側縁部と、該大曲率部における前記インストルメントパネルに近い近接側端から前方側の前記流入用開口の前縁付近まで延びる底側縁部と、を備えて構成されるとともに、膨張完了時の前記大曲率部を間にする前記天井側縁部と前記底側縁部との離隔を規制可能な規制部材を配設させて構成されている助手席用エアバッグにおいて、
前記規制部材が、
前記大曲率部を間にする前記天井側縁部と前記底側縁部とを連結する第1テザーと、該第1テザーから延びて前記第1テザーにおける前記天井側縁部と前記底側縁部とに連結された両端部の間における前記凹溝の部位の前記エアバッグの内周縁の後部側に連結される少なくとも一本の第2テザーと、を備えて構成されるとともに、
該第2テザーの軸直交方向の両縁側に、左右方向に貫通する連通用開口を設けて、配設されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項2】
前記規制部材が、前記左内側パネル部及び前記右内側パネル部と別体とした一つの可撓性を有したシート状のテザー部材から形成され、
前記左内側パネル部と前記右内側パネル部との内周縁相互が、縫合により結合され、
前記テザー部材が、前記左内側パネル部と前記右内側パネル部との内周縁相互の縫合時に、共縫いされて、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項3】
前記テザー部材が、経糸と緯糸とを織って形成した織布から形成されるとともに、経糸若しくは緯糸の方向を、前記第1テザー若しくは前記第2テザーの少なくとも一方の軸方向に沿わせて、配設されていることを特徴とする請求項2に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項4】
前記テザー部材が、前記第1テザーにおける前記天井側縁部と前記底側縁部とに連結された両端部間の中央付近から前記第1テザーと直交するように前記第2テザーを突出させて構成されて、
前記織布の経糸若しくは横糸が、前記第1テザーと前記第2テザーとの軸方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項3に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項1】
車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、上方へ突出するとともに、前記インストルメントパネル上面と前記インストルメントパネル上方のウインドシールドとの間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張し、展開膨張完了時の形状を前端側に頂部を設けた略四角錐形状とするとともに、後面側を略鉛直方向に沿って配置させて乗員を受け止める乗員拘束部とし、かつ、前部側の下面に膨張用ガスを流入させる流入用開口を設けて構成される助手席用エアバッグであり、
前記乗員拘束部が、乗員の左右両肩を受け止め可能に、前記乗員拘束部の左右両側に上下方向に延びるように並設される拘束凸部と、左右の前記拘束凸部の間で上下方向に沿うように配置されて前方側に凹む凹溝と、を備えて構成され、
前記エアバッグの外周壁が、左右の側壁をそれぞれ構成する左外側パネル部及び右外側パネル部と、前記凹溝を間にする左右の前記拘束凸部の対向壁をそれぞれ構成する略C字形状の左内側パネル部及び右内側パネル部と、を備えて構成され、
左右の前記拘束凸部が、それぞれ、前記左外側パネル部と前記左内側パネル部との外周縁相互、及び、前記右外側パネル部と前記右内側パネル部との外周縁相互を、結合させて形成され、
前記凹溝が、前記左内側パネル部と前記右内側パネル部との内周縁相互を、結合させて形成され、
前記凹溝の部位の前後方向に沿う前記エアバッグの内周縁の後部側が、後方側に曲率を大きくして凹む大曲率部と、該大曲率部における前記インストルメントパネルから離れた側の離隔側端から前方側に延びて膨張完了時に前記流入用開口の上方位置付近まで延びる天井側縁部と、該大曲率部における前記インストルメントパネルに近い近接側端から前方側の前記流入用開口の前縁付近まで延びる底側縁部と、を備えて構成されるとともに、膨張完了時の前記大曲率部を間にする前記天井側縁部と前記底側縁部との離隔を規制可能な規制部材を配設させて構成されている助手席用エアバッグにおいて、
前記規制部材が、
前記大曲率部を間にする前記天井側縁部と前記底側縁部とを連結する第1テザーと、該第1テザーから延びて前記第1テザーにおける前記天井側縁部と前記底側縁部とに連結された両端部の間における前記凹溝の部位の前記エアバッグの内周縁の後部側に連結される少なくとも一本の第2テザーと、を備えて構成されるとともに、
該第2テザーの軸直交方向の両縁側に、左右方向に貫通する連通用開口を設けて、配設されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項2】
前記規制部材が、前記左内側パネル部及び前記右内側パネル部と別体とした一つの可撓性を有したシート状のテザー部材から形成され、
前記左内側パネル部と前記右内側パネル部との内周縁相互が、縫合により結合され、
前記テザー部材が、前記左内側パネル部と前記右内側パネル部との内周縁相互の縫合時に、共縫いされて、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項3】
前記テザー部材が、経糸と緯糸とを織って形成した織布から形成されるとともに、経糸若しくは緯糸の方向を、前記第1テザー若しくは前記第2テザーの少なくとも一方の軸方向に沿わせて、配設されていることを特徴とする請求項2に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項4】
前記テザー部材が、前記第1テザーにおける前記天井側縁部と前記底側縁部とに連結された両端部間の中央付近から前記第1テザーと直交するように前記第2テザーを突出させて構成されて、
前記織布の経糸若しくは横糸が、前記第1テザーと前記第2テザーとの軸方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項3に記載の助手席用エアバッグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−6132(P2010−6132A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164785(P2008−164785)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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