説明

助手席用エアバッグ

【課題】ツインチャンバ型の助手席用エアバッグを構成するパネルの部品点数を減らし、しかも、簡単な構成で乗員の頭部を侵入させる収納凹部を安定した状態で形成することができ、結果として、製造コストを低下させることができる助手席用エアバッグを提供する。
【解決手段】上面部2と下面部4との間に形成した開口部6を、縦方向の襞16aを形成した乗員面部3によって密閉する。乗員面部3の外表面側に、少なくとも一端部側が裾広がり状に構成された外側ベルト5を取り付け、開口部6における上下方向の拡開を防止するとともに、膨張した乗員面部3を外側ベルト5の両側から膨出させて、乗員の左右肩部を拘束する右チャンバ11と左チャンバ12とを形成させる。そして、右チャンバ11と左チャンバ12との間に、乗員の頭部を拘束する収納凹部13を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
助手席用エアバッグは、車両前面衝突時にエアバッグのチャンバが膨張展開して、助手席に搭乗した乗員の胸部中央部と頭部とを乗員の前方から拘束することで、乗員に対する安全性の確保を行うことを目的として用いられている。助手席用エアバッグとしては、一つのチャンバが膨張展開するシングルチャンバ型のエアバッグ装置や、二つのチャンバが膨張展開して、シングルチャンバ型よりも乗員をソフトに拘束することができるツインチャンバ型のエアバッグ装置が提案されている。
【0003】
ツインチャンバ型のエアバッグ装置では、乗員に対向したエアバッグの後方側の左右両側に、二つのチャンバが並設された状態で膨張展開を行い、二つのチャンバが隆起するように構成されている。そして、隆起した二つのチャンバで乗員の左右両肩付近をそれぞれ拘束するとともに、隆起した二つのチャンバ間の収納凹部内に乗員の頭部を侵入させて受け止める構成となっている。
【0004】
乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部を形成したツインチャンバ型のエアバッグ装置としては、溝付きエアバッグ(特許文献1参照。)などが提案されている。特許文献に記載された溝付きエアバッグでは、乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部を形成するため、次のように構成されている。
【0005】
即ち、乗員に当接したときのクッション部分となる外面パネルと、外面パネルの左右両側縁に連接した左右の側部パネルと、外面パネルの中央部に形成した上下方向の開口を乗員の頭部を侵入させる収納凹部として形成するため、開口の上辺及び下辺に両端部が連接した中心溝パネルと、中心溝パネルの両側縁と前記開口の両側縁との間をそれぞれ連接する右パネル及び左パネルと、を備えた構成となっている。
【0006】
そして、エアバッグ膨張展開時に、右パネルと中心溝パネルと左パネルとによって構成された収納凹部が、主パネルの外部表面を越えて膨出してしまうのを防止するため、即ち、中心溝パネルが収納凹部の底面を維持するように、中心溝パネルをエアバッグの内側に繋ぎとめておくテザーベルト(特許文献1では、つなぎ部分と称している。)が、エアバッグ内に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−112427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された溝付きエアバッグでは、収納凹部を形成するため、左右パネルと中心溝パネルとを必要とする構成となっている。そのため、エアバッグを構成する各パネルの部品点数が多数となるばかりでなく、各パネルを縫製によって組み付ける作業が煩雑となる。その結果として、助手席用エアバッグの製造コストを低下させることが難しいものとなっている。
【0009】
また、真っ直ぐに伸びたテザーベルトによって中心溝パネルをエアバッグの内側に繋ぎ
とめている構成になっているため、助手席用エアバッグの膨張展開時に中心溝パネルが左右方向に変動を生じ易くなり、中心溝パネルの両側面も左右方向に変動を起こしてしまうことになる。このようになると、例えば、乗員の頭部を中心溝パネル内に正しく侵入させることが難しくなる。
【0010】
本願発明は、このような問題点を解決し、ツインチャンバ型の助手席用エアバッグを構成するパネルの部品点数を減らし、しかも、簡単な構成で乗員の頭部を侵入させる収納凹部を安定した状態で形成することができ、結果として、製造コストを低下させることができる助手席用エアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の課題は、請求項1〜4に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明は、上面部と下面部と乗員面部とを有する助手席用エアバッグであって、左右幅方向の中央部に上下方向の開口部を形成して、上面部と下面部とが連接され、前記開口部が、縦方向に沿って形成した複数の襞を有する前記乗員面部によって塞がれ、前記乗員面部が、エアバッグの膨張展開時に、前記開口部の上下両端縁部における横幅寸法よりも上下方向の中央部側における横幅寸法が広くなるように、前記開口部に取り付けられ、
前記乗員面部の左右方向における中央部の外側面に、前記助手席用エアバッグの周長よりも短く構成され、上下方向に沿って配した外側ベルトが添設され、前記外側ベルトの少なくとも一端部側は、その端部に向かって裾広がり状に構成され、前記外側ベルトの上下方向における両端部が、それぞれ前記助手席用エアバッグに取り付けられ、
エアバッグ膨張展開時に前記乗員面部の上下方向における中央部側の部位が、前記外側ベルトの両側縁からそれぞれ左右方向に膨出することを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記外側ベルトの一部部位が、前記乗員面部の左右方向における中央部の部位であって、前記襞を含まない部位に取り付けられてなることを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本発明では、前記外側ベルトの少なくとも一端部側における形状が、二股に分かれた裾広がり形状に構成されてなることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記外側ベルトが逆Y字状形状に構成されており、前記二股に分かれた前記外側ベルトの一端部が、前記助手席用エアバッグの上下方向における下端部側に取り付けられ、前記裾広がり形状に分かれた二股間における前記助手席用エアバッグの部位には、前記助手席用エアバッグの膨張展開時に下向きに開口するポケットが形成されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、上面部と下面部との間に形成した開口部を塞ぐ乗員面部には、縦方向の襞(ひだ)を複数形成している。尚、襞とは、襞折りした時の折れ線の部分である。しかも、乗員面部の左右方向における中央部の外側面には、外側ベルトが添設されており、外側ベルトの少なくとも一端部側は、その端部に向かって裾広がり形状に構成されている。そして、前記外側ベルトの上下方向における両端部は、それぞれ前記助手席用エアバッグに取り付けられた構成としている。
【0016】
また、乗員面部の上下両端縁は、襞とともに上面部と下面部とに連接されており、乗員面部の左右両端縁は、襞の部分が縫い合わされないようにして、上面部と下面部とに連接されている。そして、上面部と下面部との間に形成した開口部の周縁に乗員面部を連接することによって、前記開口部を乗員面部によって塞いでいる。
【0017】
このように構成されているので、エアバッグの膨張展開時には、乗員面部の上下両端部における横幅寸法よりも上下方向の中央部側における横幅寸法を広く形成することができる。そして、エアバッグの膨張展開時には、乗員面部は上面部と下面部との間に形成した開口部から膨出するように膨らみ、特に、上下方向の中央部側が大きく膨らむことになる。
【0018】
乗員面部の上下方向における中央部側が大きく膨らもうとしても、乗員面部の外側面には、外側ベルトが上下方向に沿って配されているので、乗員面部の中央部側における膨らみは、外側ベルトによって規制されることになる。そして、前記開口部における上辺と下辺との間隔は、外側ベルトによって規制されることになるので、前記開口部から膨出した乗員面部の中央部側における膨らみは、外側ベルトの両側縁から膨出することになる。
【0019】
しかも、外側ベルトの少なくとも一端部は、裾広がり形状に構成されているので、外側ベルトによって規制する乗員面部の中央部における位置が、左右方向に変動するのを確実に防止することができる。即ち、外側ベルトは、少なくとも裾広がり状に形成した端部と他端部とによって、助手席用エアバッグに取り付けられているので、外側ベルトの固定範囲を広く設定することができる。また、助手席用エアバッグが膨張展開を行うと、外側ベルトは裾広がり状に形成した端部において、左右方向への引っ張り力が作用すると共に、外側ベルトの両端部間では、上下方向への引っ張り力が作用することになる。
【0020】
このように、助手席用エアバッグの膨張展開に伴って外側ベルトは、左右方向及び上下方向に引っ張られることになるので、外側ベルトによって、乗員面部の中央部における位置を左右方向に変動させることなく確実に規制しておくことができる。裾広がり形状としての端部構成としては、裾広がり形状となるように二股に分かれた構成しておくこともできる。
【0021】
本願発明では、外側ベルトの両側縁からそれぞれ膨出させた乗員面部によって、二つのチャンバを構成しており、二つのチャンバが左右にふらつくのを外側ベルトによって確実に防止しておくことができる。そして、外側ベルトの両側縁からそれぞれ正しく膨出させた二つのチャンバによって、助手席に搭乗した乗員の左右肩部を拘束することができる。しかも、外側ベルトの規制によって形成された二つのチャンバ間の凹部内に、乗員の頭部を正しい姿勢で侵入させて受け止めることができる。
【0022】
また、外側ベルトの両側縁からそれぞれ膨出させる膨出量は、乗員面部に形成した縦方向の襞(ひだ)の本数や襞によって重なり合う部分の幅を設定することで、適宜調整することができる。更に、乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部の深さや収納凹部における左右方向の幅に関しても、外側ベルトの幅や長さを調整することや外側ベルトの上下方向における横幅形状を調整すること、又は、外側ベルトの両側縁からそれぞれ膨出させる乗員面部の膨出量を調整すること、あるいはこれらの調整を適宜組み合わせて行なうことによって、所望の状態となるように調整することができる。
【0023】
本願発明における乗員面部に形成した縦方向の襞(ひだ)としては、エアバッグが膨張展開したときの乗員面部の膨張量として、上面部と下面部との間に形成した開口部の上辺及び下辺における膨張量よりも、前記開口部の上下方向における中央部側における膨張量の方が、大きくなるように構成できるものであれば適宜の形状に構成することができる。
【0024】
乗員面部の上下方向における中央部側における横幅寸法を大きく構成すると、外側ベルトの両側縁から膨出する乗員面部の膨出量を大きくすることができる。このように、車両レイアウトやエアバッグの大きさに応じて、外側ベルトの両側縁からそれぞれ膨出させて
形成する二つのチャンバの形状を適宜設定することができる。
【0025】
本願発明における外側ベルトは、エアバッグの外側を縫製等の連接によって規制する構成であるのに対して、上述した特許文献におけるテザーベルトは、エアバッグの内側から中心溝パネルを引き込む構成となっている。このため、本願発明における外側ベルトは、特許文献1におけるテザーベルトに比べて、エアバッグへの取り付けも容易になり、上述した特許文献のテザーベルトのように剛性を高く構成しておく必要がない。
【0026】
本願発明における外側ベルトをエアバッグに取り付ける方法に関しては、縫製によって行うことも、接着剤による貼着で行うことも、縫製と接着剤による貼着とを併せて行うこともできる。
【0027】
外側ベルトは、外側ベルトの一部部位を乗員面部の襞を含まない部位に取り付けておくことができる。このように構成しておくことにより、乗員面部の中央部における位置を左右方向に変動するのを外側ベルトによって、より確実に規制しておくことができる。
【0028】
外側ベルトの幅形状としては、乗員頭部の横幅寸法と同程度となるように構成しておくことも、必要に応じて適宜の幅形状に設定しておくこともできる。外側ベルトの長さは、外側ベルトと外側ベルトの両側縁から膨出した乗員面部の膨出部とによって形成される収納凹部の位置に応じて、適宜設定することができる。
【0029】
このように、収納凹部は、凹部とその側面とがしっかりと形状保持された状態で構成することができるので、乗員の頭部が収納凹部内に入り込む際に、乗員の頭部が収納凹部の側面と擦れることがない。しかも、収納凹部を簡単な構成で形成することができる。しかも、助手席用エアバッグの製造作業が複雑にならず、結果として、助手席用エアバッグの製造コストを低減させることができる。
【0030】
本願発明では、逆Y字状形状に構成された外側ベルトの二股に分かれたところに、助手席用エアバッグの膨張展開時に下向きに開口するポケットを形成しておくことができる。このように構成しておくことにより、例えば、助手席用エアバッグの膨張展開時において、助手席に後ろ向きに固定された幼児用シートの頂部をポケット内に収納することができ、幼児用シートの頂部等の障害物を円滑に保護することができる。
【0031】
しかも、ポケットが二股に分かれたところに構成されているので、助手席用エアバッグの膨張展開時にポケットの位置が左右方向に移動してしまうのを防止しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】助手席用エアバッグの展開組み立て図である。(実施例1)
【図2】膨張展開時の助手席用エアバッグを示す斜視図、上面図、断面図である。(実施例1)
【図3】膨張展開した助手席用エアバッグの底面図である。(実施例1)
【図4】膨張展開した助手席用エアバッグと乗員との配置関係を示す斜視図である。(実施例1)
【図5】外側ベルトの変形例を示す斜視図である。(実施例1)
【図6】助手席用エアバッグの展開組み立て前の状態を示す斜視図及び乗員面部の他の折り畳の例を示す断面図である。(実施例1)
【図7】膨張展開時の助手席用エアバッグを底面側から見た斜視図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わる助手席用エアバッグの構成としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0034】
図1(a)には、助手席用エアバッグ1を構成する上面部2、乗員面部3、下面部4の展開図を示している。図1(b)には、上面部2、乗員面部3、下面部4を組み立てる前の斜視図を示し、図1(c)は、上面部2、乗員面部3、下面部4を組み立てた状態と、これに添設する外側ベルト5を示した斜視図である。図1(d)は、助手席用エアバッグ1を膨張展開させたときに、膨出した左右一対の右チャンバ11と左チャンバ12及び乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部とを示した斜視図である。
【0035】
図2(a)には、図1(d)に示したのと同じ斜視図を示しており、図2(b)には、助手席用エアバッグ1の上面図を示している。図2(c)には、図2(a)におけるA−A断面図を示している。
【0036】
助手席用エアバッグ1は、非通気性の可撓性材料から構成されており、例えば、内側がゴムコーティングされたナイロン製の基布パネルで構成した上面部2、乗員面部3及び下面部4を縫合した構成になっている。
【0037】
助手席用エアバッグ1は、車両の助手席前方のインスツルメントパネル内に、折り畳まれて収納されており、車両の前面衝突時あるいは衝突を予知した時に、図示せぬインフレータから噴射されたガスによって車両の後方側、即ち、助手席に搭乗している乗員の前面側において全面を覆うように膨張展開され、乗員を前方から拘束することができる。
【0038】
助手席用エアバッグ1は、図1に示すように、上面部2、乗員面部3、下面部4と、乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部を形成するための外側ベルト5とを備えた構成となっている。
【0039】
図1(a)に示すように、上面部2は、下面部4と連接する後端縁2aと、上面部2と下面部4との間に形成する開口部6の側縁の一部となる側縁部2bと、開口部6の上辺となる上辺部2cとによって囲まれた形状によって構成されている。また、エアバッグの膨張形成時に余剰の膨張用ガスを排気するベントホール7を左右の側部に開口した構成となっている。
【0040】
下面部4は、上面部2の後端縁2aと連接する後端縁4aと、上面部2と下面部4との間に形成する開口部6の側縁の一部となる側縁部4bと、開口部6の下辺となる下辺部4cとによって囲まれた形状によって構成されている。また、エアバッグ内に図示せぬインフレータからのガスを導入するガス導入口8を中央部の後端縁4a側に開口した構成となっている。
【0041】
尚、上面部2及び下面部4によって、左右側面のパネル部を構成している構成例を図示しているが、上面部2及び下面部4から左右の側面パネルを別々に構成しておくこともできる。
【0042】
乗員面部3は、上面部2の後端縁2aと下面部4の後端縁4aとを連接させたときに、上面部2と下面部4との間に形成される開口部6を塞ぐパネルとして構成されている。開口部6を形成するときには、上辺部2cの左右両端からの屈折部を対向する側縁部2bに連接させるとともに、下辺部4cの左右両端からの屈折部を対向する側縁部4bに連接させている。
【0043】
乗員面部3の上端縁3a及び下端縁3cにおける幅寸法は、上辺部2c及び下辺部4cにおける幅寸法よりも広く構成されている。また、乗員面部3の側端縁3b間の間隔は、上端縁3a及び下端縁3cにおける幅寸法よりも広く構成されている。尚、乗員面部3の側端縁3b間の間隔と、上端縁3a及び下端縁3cにおける幅寸法とを同じ寸法として構成しておくこともできる。
【0044】
そして、図1(b)に示すように、乗員面部3は、縦方向の襞16aによって重なり合った部分16を形成することによって、乗員面部3の横幅寸法を短くして、開口部6を塞ぐように上面部2及び下面部4に連接されている。尚、襞16aとは、襞折りした時の折れ線の部分である。
【0045】
即ち、図1(c)に示しているように、襞16aによって重なり合った部分16を形成することによって、乗員面部3を上面部2と下面部4との間の開口部6に連接させることができる。このとき、乗員面部3の上端縁3a及び下端縁3cでは、襞16aによって重なり合った部分16の上から上面部2の上辺部2c及び下面部4の下辺部4cにそれぞれ連接することになる。また、乗員面部3の各側端縁3bは、上面部2の側縁部2bと下面部4の側縁部4bとによって構成される開口部6の左右側縁部にそれぞれ連接されることになる。
【0046】
そして、乗員面部3の各側端縁3bを開口部6の左右側縁部にそれぞれ連接させるときには、乗員面部3に形成した襞が開口部6の左右側縁部に縫い合わされないように連接することになる。
このように構成することによって、助手席用エアバッグ1を膨張展開させたときには、乗員面部3を開口部6から膨出させることができる。
【0047】
図1(c)に示すように、上面部2、乗員面部3、下面部4間での連接は、縫製によって行われている。図1(c)では、縫製部15を点線で示している。また、ベントホール7の周囲は、図示せぬ補強部材が縫製部15によって取り付けられている。ガス導入口の周囲は、図示せぬ補強部材がリベット等の固定手段によって取り付けられた構成を示しているが、ガス導入口の周囲に図示せぬ補強部材を縫製部15によって取り付けた構成としておくこともできる。
【0048】
図1(c)に示すように、助手席用エアバッグ1を膨張展開させたときには、乗員面部3によって、右チャンバ11と左チャンバ12の二つのチャンバを形成するため、乗員面部3の左右方向における中央部の外側面には、上下方向に沿って外側ベルト5が配されるように構成されている。
【0049】
外側ベルト5は、下端側が二股に分かれて、裾広がり状の端部5b、5dとして構成されており、上端側の端部5a及び下端側の端部5b、5dは、それぞれ上面部2及び下面部4にそれぞれ連接されている。また、外側ベルト5の中央部5cは、乗員面部3に形成した襞16aの部分を一緒に連接しないようにして、乗員面部3の中央部に連接されている。
【0050】
外側ベルト5を上面部2、下面部4及び乗員面部3に連接する方法としては、縫製による連接方法も、接着剤を用いた貼着による連接方法も、縫製と接着剤を用いた貼着との両方を用いた連接方法を行うこともできる。図1(d)では、外側ベルト5の中央部5cを縫製部15によって、乗員面部3に連接した状態を示している。
【0051】
外側ベルト5の両端部5a、5b、5dによって、外側ベルト5の長さ寸法が規定され、しかも、図3に示すように、外側ベルト5の下端側は裾広がり状に二股に分かれた端部5b、5dによって、外側ベルト5の固定範囲を広く設定することができる。また、外側ベルト5の下端
側における端部5b、5dは、助手席用エアバッグ1の膨張展開に伴って左右方向に引っ張られることになる。そして、上端側の端部5aと下端側の端部5b、5dとの間では、助手席用エアバッグ1の膨張展開に伴って上下方向に引っ張られることになる。
【0052】
これによって、乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部13は、外側ベルト5によって規制されることになり、右チャンバ11と左チャンバ12の二つのチャンバとが、左右にぶれることがなくなる。
【0053】
従って、開口部6から膨出した乗員面部3は、外側ベルト5によって規制されながら、外側ベルト5の左右両側から外部に膨出することができる。そして、図2(a)に示すように、外側ベルト5の左右両側から膨出した乗員面部3によって、乗員の左右の肩部を支える右チャンバ11及び左チャンバ12を形成することができる。
【0054】
しかも、図2(b)、(c)に示すように、右チャンバ11と左チャンバ12との間には、乗員の頭部を侵入させて受け止める収納凹部13を形成することができる。収納凹部13の幅は、外側ベルト5の幅によって調整することができ、乗員の頭部が収納凹部13内に入り込む際に、乗員の頭部が収納凹部13の側面13a、13bとの間で擦れることがないように構成することができる。
【0055】
外側ベルト5において、二股に分かれる開始位置としては、助手席用エアバッグ1の下面4dに接する部位であっても、外側ベルト5の中央部の部位からであっても、あるいは外側ベルト5の上部部位からであってもよい。二股に分かれる開始位置が、外側ベルト5の中央部の部位や外側ベルト5の上部部位であったときには、二股に分かれた部位によって、漸次幅広となる外側ベルト5の左右両側によって乗員面部3を規制しながら、外側ベルト5の左右両側から乗員面部3を外部に膨出させることができる。
【0056】
このように、図3に示すように、助手席用エアバッグ1が膨張展開している時には、外側ベルト5の左右両側から膨出した乗員面部3が更に膨らみながら、外側ベルト5の左右両側に右チャンバ11と左チャンバ12とを形成していくことができる。このとき、外側ベルト5の両端部5a、5b、5dは、それぞれ上面部2と下面部4とに取り付けられており、開口部6が上下方向に広がるのを外側ベルト5によって規制しておくことができる。
【0057】
また、外側ベルト5の中央部5cの一部は、乗員面部3に取り付けられているので、乗員面部3が外側ベルト5の片側だけから膨出してしまうのを防止しておくことができる。これによって、膨張した乗員面部3は、外側ベルト5の両側からそれぞれ膨出することができ、右チャンバ11と左チャンバ12とを形成することができる。
【0058】
このように、本願発明は構成されているので、図4に示すように、助手席用エアバッグ1が膨張展開することで、助手席用エアバッグ1を収納していたインスツルメントパネル内から飛び出し、インスツルメントパネル上面とウインドシールド23との間を塞ぐように、上方へ突出するとともに、座席21に着座している乗員20側へ突出して、背もたれ21aとの間で乗員20を保護することになる。
【0059】
座席21に着座している乗員20の左右両肩は、右肩拘束部分11a及び左肩拘束部分12aによって支えられ、乗員20の頭部は、右肩拘束部分11aと左肩拘束部分12aとの間に形成された収納凹部13内に正しい姿勢で受け止めることができる。
【0060】
外側ベルト5の構成としては、図5(a)に示すように、外側ベルト17の両端に裾広がり状に形成した端部17a、17bを形成した構成や、図5(b)に示すように、外側ベルト18の両端をそれぞれ二股に分かれた形状に形成し、二股の端部18a、18bと二股の端部18c、1
8dを形成した構成にしておくこともできる。
【0061】
このように構成した外側ベルト17又は外側ベルト18を用いることにより、外側ベルト17又は外側ベルト18の両端部においても、助手席用エアバッグ1の膨張展開に伴って左右方向に引っ張られることになる。そして、外側ベルト17又は外側ベルト18の両端部間での上下方向の引っ張りと相まって、右チャンバ11と左チャンバ12の二つのチャンバとが、左右にぶれることがなく、収納凹部13を形成することができる。
【0062】
上面部2と下面部4とによって形成される開口部6を塞ぐ乗員面部3は、図6(a)に示すように、乗員面部3の上下方向の中央部に襞16aによって重なり合った部分16を一つ形成した構成となっている。この重なり合った部分16は、図6(b)に示すように、助手席用エアバッグ1の内側を向くように配設することも、図6(d)に示すように、助手席用エアバッグ1の外側を向くように配設することもできる。
【0063】
また、乗員面部3の上下方向の中央部に形成する襞16aの本数としては、図6(b)のように4本として形成することも、図6(c)のように8本とすることもできる。尚、図6(b)〜図6(d)は、図6(a)におけるB−B断面図を示している。
【0064】
更には、任意の偶数倍の本数となるように襞16aの本数を形成しておくこともできる。襞16aの本数として、任意の偶数倍の本数とした場合にも、襞16aによって重なり合った部分16が助手席用エアバッグ1の内側を向くように配設することも、助手席用エアバッグ1の外側を向くように配設することもできる。
【0065】
本願発明の助手席用エアバッグ1は、乗員面部3が開口部6から膨出していない状態では、図1(c)に示すように、シングルチャンバ型のエアバッグ装置と同様な形状になっている。即ち、乗員面部3が開口部6から膨出していない状態では、二つのチャンバが構成されていない。このように、特許文献1に示されているように、助手席用エアバッグを膨張させる前から二つのチャンバが構成されている発明とは異なる発明となっている。
【実施例2】
【0066】
本願発明の実施例2に係わる助手席用エアバッグ1では、助手席用エアバッグ1の上下方向における下端部側の下面、即ち、図7に示すように、下面部4の下面4dには開口26が形成されており、開口26は、左右方向の襞25が複数形成されたポケットパネル24によって塞がれている。複数の左右方向の襞25を形成したポケットパネル24は、襞25を形成した状態のままで開口26の縁部に沿って下面部に縫着されている。
【0067】
他の構成は、実施例1における構成と同様の構成になっているので、同様の構成部材については、実施例1に用いた部材符号と同じ部材符号を用いることで、その部材の説明は省略する。
【0068】
助手席用エアバッグ1の膨張展開の初期状態においては、ポケットパネル24に対して外部からの力が加わっていないときには、下面部4の下面4dと略同一の面上に位置している。助手席用エアバッグ1の膨張展開の初期状態において、ポケットパネル24に対して外部からの力が加わった際には、ポケットパネル24は、外部からの力によって中央部分が内側に凹設されるように容易に変形し、下向きに開口したポケットを形成することができる。
【0069】
そして、例えば、後ろ向きに固定されたチャイルドシートが助手席に存在する場合には、助手席用エアバッグ1の膨張展開時に障害物となるチャイルドシートの座席上部をポケットによって上方から下方に向かって押さえるように包み込むことができる。このように、助手席用エアバッグ1の底面に形成したポケット内に障害物の一部を受け入れることが
できるので、障害物に対する衝撃を抑制し、また、インストルメントパネルと助手席用エアバッグ1との間に障害物が挟まれることもなく、障害値を小さくした状態で保護することができる。
【0070】
下面部4の下面4dに形成されるポケットの一部領域は、逆Y字状形状に構成された外側ベルトの二股の端部5b、5dによって囲まれているので、助手席用エアバッグ1の膨張展開時にポケットの位置が左右方向に移動してしまうのを、外側ベルトの二股の端部5b、5dによって防止しておくことができる。
【0071】
また、助手席用エアバッグ1が最大に膨張展開したときに、ポケットパネル24によって下向きに開口したポケットが形成されているように、ポケットパネル24の裏面側と上面部2の裏面側との間を所望の長さを有するテザーによって連結させた構成にしておくこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本願発明は、エアバッグ装置に対して好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1・・・助手席用エアバッグ、2・・・上面部、3・・・乗員面部、4・・・下面部、5・・・外側ベルト、5a・・・端部、5b、5d・・・端部、6・・・開口部、11・・・右チャンバ、12・・・左チャンバ、13・・・収納凹部、16a・・・襞、17・・・外側ベルト、17a、17b・・・端部、18・・・外側ベルト、18a、18b、18c、18d・・・二股の端部、24・・・ポケットパネル、25・・・襞、26・・・開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と下面部と乗員面部とを有する助手席用エアバッグであって、
左右幅方向の中央部に上下方向の開口部を形成して、上面部と下面部とが連接され、
前記開口部が、縦方向に沿って形成した複数の襞を有する前記乗員面部によって塞がれ、
前記乗員面部が、エアバッグの膨張展開時に、前記開口部の上下両端縁部における横幅寸法よりも上下方向の中央部側における横幅寸法が広くなるように、前記開口部に取り付けられ、
前記乗員面部の左右方向における中央部の外側面に、前記助手席用エアバッグの周長よりも短く構成され、上下方向に沿って配した外側ベルトが添設され、
前記外側ベルトの少なくとも一端部側は、その端部に向かって裾広がり状に構成され、前記外側ベルトの上下方向における両端部が、それぞれ前記助手席用エアバッグに取り付けられ、
エアバッグ膨張展開時に前記乗員面部の上下方向における中央部側の部位が、前記外側ベルトの両側縁からそれぞれ左右方向に膨出することを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項2】
前記外側ベルトの一部部位が、前記乗員面部の左右方向における中央部の部位であって、前記襞を含まない部位に取り付けられてなることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項3】
前記外側ベルトの少なくとも一端部側における形状が、二股に分かれた裾広がり形状に構成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項4】
前記外側ベルトが逆Y字状形状に構成されており、前記二股に分かれた前記外側ベルトの一端部が、前記助手席用エアバッグの上下方向における下端部側に取り付けられ、前記裾広がり状に分かれた二股間における前記助手席用エアバッグの部位には、前記助手席用エアバッグの膨張展開時に下向きに開口するポケットが形成されてなることを特徴とする請求項3記載の助手席用エアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61882(P2012−61882A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205582(P2010−205582)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】