説明

動く臓器を描出した画像シリーズ内の最適画像を識別する方法及びシステム

周期成分及び周期成分よりも周波数が低い非周期成分を含む複合運動に従って動くオブジェクトを描出した画像シリーズ内の周期運動を定量化する方法及びシステム。複合運動が計算される。非周期成分が、一運動周期に渡る運動の積分として計算される。非周期成分が複合運動から減算されて周期成分が取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動く臓器を撮像するために医療画像装置を使用する場合が多い。特に、心臓画像処理装置は、動く臓器、すなわち心臓(例えば超音波撮像により)または冠動脈(例えば血管造影法により)のいずれかを撮像するために必ず使用される。これらの画像処理装置の多くは、運動を運動自体による表示として、あるいは画像処理アルゴリズムの一部として定量化するために使用される。
【0003】
左心室解析(LVA:Left Ventricle Analysis )用の画像処理装置を使用して、各心拍の間に駆出される血液の割合である駆出率(Ejection Fraction )を評価する。左心室解析では、左心室容積を血管造影図(血管映画撮影法による画像シーケンスから得られる)から計算する。左心室容積は心臓収縮期の心臓に関して1回計算され、心臓拡張期の心臓に関して1回計算される。駆出率はこれらの容積の比により推定される。収縮画像及び拡張画像を識別する操作はLVA手順の一部である。
【0004】
心筋厚及び心壁運動を超音波画像により評価して心不全状態を示す。ここでもまた、両方の手順において、収縮期に関するインスタンス及び拡張期に関するインスタンスを識別する。更に、オブジェクトの運動の定量化は、壁運動評価に直接使用することができる。
【0005】
血管内超音波法(IVUS:Intra-Vascular Ultrasound )は、冠動脈の欠陥を血管内超音波装置を挿入して血管を撮像することにより、評価して解析する方法である。IVUS測定では、血管内腔部を測定する。内腔部の推定は、心位相によって非常に大きく変わり、かつ結果は心周期内の異なる段階を表わす異なる画像に関して変わる。ここでもまた、測定を最適画像に対して行なうために拡張期−または最小移動インスタンス(minimal movement instance )−を識別することが有用である。
【0006】
CT,MRI,及びPETも使用して心臓だけでなく冠動脈を撮像する。これらの方法では、ECGトリガーを使用し、このECGトリガーによって画像取得をECGイベント(例えば拡張末期)に同期させて、画像解像度及び画像品質を低下させて画像結果、従って診療評価を悪化させるモーション・アーティファクトを低減する。
【0007】
医療画像の分野では、血管造影法は心臓血管診断の判断基準である。カテーテル検査中に適用され、C腕型X線血管撮影(C-Arm X-ray )装置により行なう従来の(2D)血管造影法は、血管疾患を評価するための最も正確な撮画手段となる。定量的な冠動脈解析は多くの場合、血管疾患を測定するために適用される。解析を特定の血管造影図に対して行なって血管の寸法を測定する。結果は、異なる血管造影図から生成される場合には異なり、血管を異なる心周期インスタンスで描出することになる。QCA手順では、拡張末期の画像を使用することが推奨される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冠血管の3次元再構成も、血管疾患を従来の血管造影検査により評価する方法である。2D血管造影法が、投影オブジェクトを主として提示して測定するので測定が不正確になるという幾つかの固有の不具合を有することについては良く知られており、かつそれらの不具合の多くが刊行物に記載されているが、幾つかの方法を利用して動脈の3次元再構成を、取得した2次元画像シリーズに基づいて行なうことができる。動脈の3次元画像を再構成するためには、動脈の少なくとも2つの2次元画像を同じ心拍位相において、例えば拡張期において取得する必要がある。従って、画像取得は普通、E.C.G信号に同期させて行なわれる。この手順では、X線カメラによるビデオ信号及び患者のE.C.G信号を同時に記録する。このECGゲーティング処理法は多くの不具合を有する。例えば、ECG信号は多くの場合、冠動脈の所望状態と相関させることが難しい。更に、記録済み血管造影フィルムを見直す場合、ECG信号を利用することができないことが多い。
【0009】
多くの更に別の心臓検査法/心臓測定及び他の医療検査法/医療測定があり、これらの検査法及び測定では、オブジェクトの動きの周期の内部のインスタンスを識別し、この動きの定量化も行なう。
【0010】
従って、臓器の動きを定量化することが望まれている。動きの周期の内部のインスタンスを識別することが望まれている。動く臓器を撮像する操作は、全ての撮画手段にとって非常に大きな困難を伴い、定量的結果及び診断評価に悪い影響を及ぼすことも判明している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、動く臓器を撮像する方法及びシステムを提供し、かつ臓器の動きを定量化することにある。
本発明は、臓器運動の評価に関連する幾つかの方法及びシステムを提供する。
【0012】
本発明によれば、周期成分及び周期成分よりも周波数が低い非周期成分を含む複合運動に従って動くオブジェクトを描出した画像シリーズ内の周期運動を定量化する方法が提供され、本方法は、
(a)複合運動を計算すること、
(b)非周期成分を一運動周期に渡る運動の積分として計算すること、
(c)非周期成分を複合運動から減算して周期成分を取得すること、
を含む。
【0013】
本発明は、臓器の周期運動を任意のソースの画像シリーズに基づいて評価する新規の方法を提供し、かつモーション・アーティファクトを低減するか、あるいは無くすこのような方法の実施形態を提供する。詳細には、我々は、最適画像を冠動脈の3D再構成プロセスに関して選択する新規の方法及びシステムが提示する。我々は更に、ECGゲーティングの必要性を心臓の動きの解析によって置き換える方法及びシステムを提供する。
【0014】
画像シリーズの臓器の運動を推定する方法は次の操作を含む。医療画像装置は、運動している臓器を表示する画像シリーズを取得する。運動は、臓器が形を変える運動(最終的には周期的にその元の形に回復する)、または追加される構成として、臓器が画像内の位置を変える運動(血管造影図では、例えば撮像中に患者のベッドが動くのが普通であり、その結果、冠動脈の位置が画像内でシフトする)のいずれかである。非周期運動が周期運動に重なる場合、画像シリーズを解析して周期運動を非周期運動から分離する。一旦、これらの2つのタイプの運動が分離されると、周期運動を定量化することができる。次に、定量化された運動を使用して直接測定を行なうことができるか、あるいは定量化された運動を調査して運動周期内の異なるイベントを識別することができる。実施形態によっては、この調査は所定の画像に対して行なわれ、この画像は、画像が最小運動を表わし、その結果、モーション・アーティファクトが最も少ないか、あるいは無いという観点から最適である。他の実施形態では、周期運動調査は幾つかの画像に対して行なわれ、これらの画像に対しては、追加の手順または計算を実行することが望ましい。我々は特に、臓器の動きを定量化する2つの方法を提示する。
【0015】
本発明の好適な実施形態は次の項目を含む。我々は、最適画像−(冠動脈の最小の動きを描出した画像)を血管映画撮影法による冠動脈の造影図シリーズの中から識別する方法及びシステムを提示する。我々は、心臓の動きを造影図シリーズに現れる他の動きから分離する方法を提示する。ECGゲーティング処理法に関する更に良好な別の方法として、我々は、この技術分野において公知の検索アルゴリズムを使用して、最小の動きを表わす位置である拡張末期における位置に関する心臓運動のグラフを探し出すことを提案する。我々は、拡張末期におけるこの位置を適切な造影図に相関させる。選択されるこの造影図は、冠動脈の3次元再構成手法への入力として加えることができる最適な画像である。この造影図は、3Dモデルが、撮像される血管を最も良く表わすという点で最適である。従って、このモデルから導出される血管測定値が最も正確である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を理解し、かつ本発明を実際にどのようにして実施することができるかについて確認するために、好適な実施形態について次に、本発明を制限するものではない例を通してのみ、心臓運動を表現する画像シリーズ内の最適画像を求める操作に関連する形で、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
基本原理
本発明について、画像シリーズ内の最適画像を求める方法を特に参照することにより説明するが、この場合、画像シリーズは、例えば患者を乗せる手術台のシフトによって生じる「雑音」を含む可能性のある心臓運動を表現する。説明を行なう前に、幾つかの基本アルゴリズムについてまず記載する。
【0018】
図2は、最適画像を動くオブジェクトを描出した画像シリーズの中から識別するための本発明による方法によって実行される基本操作を示すフロー・チャートである。
図3は、最適画像を血管映画撮影法による冠動脈の画像シリーズの中から識別するためのこのような方法の好適な実施形態を示すフロー・チャートである。この画像は、冠動脈を3次元再構成するための入力となる。
【0019】
画像シリーズは、任意の画像ソースからの入力として受信する。これらの画像は、2つのタイプの運動に従って動く臓器を描出する。第1タイプの運動は、オブジェクト自体の周期運動であり、特定のタイム・フレーム内で、オブジェクトがその元の形状及び位置を回復することを意味する。第2タイプの運動は、シーン(画像)内でのオブジェクトの運動であり、オブジェクトが位置を撮像位置の変化に起因して変えることを意味する。図3に示す本方法の好適な実施形態では、画像は血管造影法による冠動脈の画像シリーズであり、カテーテル検査の間に取得される。周期運動は心臓の拍動であり、第2の運動は、例えば撮像対象の冠血管のシフトを画像中で生じさせるCアーム(C−ARM)テーブルの動きとすることができる。
【0020】
まず、全体運動を全ての画像シーケンスに関して、任意の方法、例えばオプティカル・フローまたは位相相関を用いて計算する。
周期運動が未知の場合、周期長を運動データ全体から計算する。このような操作を実行する一つの方法では、スペクトル解析を使用する。非周期運動は、全体運動、及び既知の、あるいは計算される周期長を使用して計算する。既知の周期長の好適な実施形態は、ECG信号の解析から抽出される心周期の長さである。
【0021】
非周期運動を全体運動から減算して周期運動を取得する。図3に示す好適な実施形態では、心拍運動は非周期運動(主として、患者のベッドの動きに起因する)を全体運動から取り除くことにより取得する。
【0022】
運動値、特に周期運動を表わす運動値は今日では、直接的測定に、例えば心壁運動解析に使用することができる。
この目的のために、運動関数に関連するイベントを定義する。例えば、図3に示す好適な実施形態では、このイベントは、最小の冠動脈運動を示す画像を識別する最小インスタンスとすることができ、これにより3次元再構成の最適画像となる。
【0023】
イベントが一意的である場合、このイベントに一致するインスタンス(画像)を見つけ出す。あるいは、イベントに一致する全てを見つけ出し、複数の候補から成るこのリストから、発見的規則に対応する一つのインスタンスを選択する。好適な実施形態では、最小の動脈運動のイベントは、インスタンスの近似がECG信号の解析により抽出される場合に一意的と成り得る(Rピークが拡張末期インスタンスの近似となる)。あるいは、このような近似を利用することができない場合、最小運動のイベントは一意的ではない。何故なら、このイベントには収縮末期及び拡張末期の両方が一致するからである。従って、最小運動イベントの両方のインスタンスを求め、拡張末期運動は、拡張末期運動が収縮末期運動の最小弛緩とは反対に動脈の最大弛緩を表わすという規則によって識別される。
【0024】
識別済みインスタンスに相関する画像が最適画像である。例えば、好適な実施形態におけるように、最小運動のイベント、すなわち動脈の最大弛緩状態に相関する画像が3次元再構成に最適である。
【0025】
臓器の運動を推定する方法
上記実施形態では、臓器の運動は、画像(フレーム)シリーズから計算される。この計算を行なう方法はそれ自体が本発明の特徴となる訳ではないが、完全性を期すために、この計算を実行することができる方法について以下に説明する。
【0026】
まず、我々は、臓器の周期運動当たりの画像(フレーム)の数が既知である構成の一つのアルゴリズムを提案する。このパラメータは普通既知である(例えば、心周期の長さは、カテーテル室のECGユニットに接続することにより容易に取得することができる)。それにも拘らず、我々は後で、このパラメータを知る必要を無くす。
【0027】
IM,IM...IMをn個の画像とし、これらの画像はそれぞれ、周期運動を行なう一つの臓器を含む。mを周期当たりの画像の数とする。
いずれの(m+1)個の画像、IM,IM...IM,IMm+1も全周期を形成する(説明を簡単にするために、mは偶数とする)。このシーケンスの複数フレームの間の差は臓器の周期運動に起因するが、他の要素にも起因する。
【0028】
周期運動のみが生じる場合、このシーケンスの最初の画像及び最後の画像は同じである、すなわちIM=IMm+1である必要がある。
複合運動を表わす複数の画像の差は、この技術分野では公知のように、例えばオプティカル・フローにより、または位相相関計算を、i∈{1...m}の場合の連続画像IM及びIMi+1のペアに適用することにより計算することができる。この計算の結果(例えば位相相関の結果)は、dX及びdYをそれぞれX軸及びY軸におけるこれらの画像の間のシフトとし(同じパターンのほとんどの部分が両方の画像に含まれると仮定する)、かつρを相関度とする場合にdX,dY及びρで表わされる。ρを使用してアルゴリズムについて更に詳細に説明することができる。
【0029】
運動積分(motion integration)を次のように定義して計算する。
【0030】
【数1】

【0031】
【数2】

上式は、第1画像では、運動積分がゼロに等しいことを意味する。画像i+1の運動積分は、位相相関により計算されるように、画像iの運動積分に、画像iと画像i+1との間のシフトを加算した値に等しい。
【0032】
画像IMからIMm+1までの周期運動の積分は、オブジェクトが同じ位置からスタートして同じ位置で止まる場合にゼロになるので、オブジェクトの動き(X軸上及びY軸上の)の積分はゼロになる(図1に示す)。従って、周期運動のみが生じる場合には、(Xm+1,Ym+1)=(X,Y)=(0,0)が成り立つ。
【0033】
(XNC,YNC)を非周期運動の積分とすると、
(XNC,YNC)=(Xm+1,Ym+1)となる。
これは、周期運動の積分が0とすると、(Xm+1,Ym+1)が非周期的な動きに起因する残りの運動を表わすことを意味する。
【0034】
非周期運動が一様(consistent)であるか、あるいは少なくとも非周期運動の周波数が周期運動の周波数よりも低いとすると、この運動を全体運動から次式のようにして取り除くことができる。
【0035】
(X,Y)=(X,Y)−(XNC,YNC)*(i−1)/m,
i=1,2,...,m+1
このようにして後続の運動値が得られる。(XNC,YNC)は非周期運動の値であり、かつi=1,2,...,m+1とした場合の(X,Y)は、フレームiに関する周期運動の値である。
【0036】
次に、これらの値は直接的測定(例えば心壁運動のような)に使用することができ、かつ更に以下に説明する後続の処理への入力として使用することができる。
予め周期運動の長さを直接的計算によって認識するという要件を無くすことができる。この操作を行なうための最も一般的な方法では、高速フーリエ変換に基づくスペクトル分析をシーケンス全体の運動グラフに適用して周期運動の周波数を識別する。
【0037】
最小運動画像を取得する方法
多くの用途において、最小運動(例えば、心臓の最小運動または冠動脈の最小運動)の画像を識別することが望まれる。周期運動内での最小運動イベントが一意的である場合、最小運動画像は運動差を表わすグラフの最小ポイントによって指し示される。
【0038】
次式を仮定する。
【0039】
【数3】

上の式において、Di,jは運動差を表わすグラフである。最小運動インスタンスはDi,j関数の最小インスタンスである。
【0040】
最小運動イベントが運動周期内で一意的ではない他の場合においては(例えば、心周期は2つの最小運動インスタンス−収縮末期及び拡張末期−を含む)、次の方法を提案する。
【0041】
最小運動画像の初期近似が既知である場合(例えば、心周期内の拡張末期画像の近傍が、ECG信号から検出されるRピークによって容易に識別される)、近似最小運動画像とは最も距離がある第1端点を見つけ出す。すなわち、
IMが最小運動画像の近似である場合、第1端点は、i=1...m+1の全てに対してDE,F=max{Di,F}となる式で表わされる。
【0042】
最小運動画像−IMLM−は、画像IMから最も離れているとして、i=1...m+1の全てに対して成り立つ次式により求められる。
LM,E=max{Di,E
予め最小運動画像の近似を直接的計算によって認識するという要件を無くすことができる。実際に最小運動インスタンスが一意的ではない場合、発見的基準を差別化に使用することができる。例えば、心周期の様子を描出した血管造影図シーケンスの内部では、両方ともに最小運動を表わす収縮末期インスタンスと拡張末期インスタンスとを差別化することは容易である。何故なら、拡張末期インスタンスは、冠動脈が最大限に拡大している状態を提示することにより識別され、収縮末期インスタンスは、冠動脈が最小限に拡大している状態を提示することにより識別されるからである。
【0043】
好適な実施形態
我々は好適な実施形態を、冠血管を従来の血管造影法から3次元再構成する適用形態に関して提案する。動脈の3次元画像を再構成するために、同じ心拍位相での、例えば拡張末期での動脈の少なくとも2次元の画像を取得する必要がある。従って、画像取得を普通、ECG信号に同期させる。この手順では、X線カメラからのビデオ信号及び患者のECG信号を同時に記録する。我々はここで、拡張末期インスタンスを識別するためのECGゲーティングと等価な新規の方法を提示するが、この場合、たとえECG信号しかないとしてもECG信号のみを利用するということはしない。
【0044】
IM,IM...IMをカテーテル法を実行して取得したn個の画像とする。
mを心周期当たりのフレーム数とし、mは予め判明しているか、あるいは臓器運動を推定する上記の方法に詳細が説明されている方法で計算されている。
【0045】
IMを周期内の拡張末期フレームの近似位置とし、この位置は予め判明しているか、あるいは最小運動画像を取得する上記の方法に詳細が説明されている方法で発見的に識別されている。
【0046】
IMk−m/2,IMk−m/2+1,IMk−m/2+2,...IMk−m/2+mは一心周期全体を形成する(説明を簡単にするために、mは偶数と仮定する)。このシーケンスの複数フレームの間の差は心臓の運動に起因するが、ベッドの動き、ヨウ素の浸透、及び他の幾つかの理由にも起因する。心臓の運動しか生じていなかった場合、このシーケンスの最初の画像及び最後の画像−IMk−m/2及びIMk−m/2+m−は同じとなる必要がある。何故なら、心臓の運動は周期的であるからである。
【0047】
説明を簡単にするために、シーケンスの番号を付け直してIM,IM...IM,IMm+1とする。
上記したように、心臓の運動のみを考慮する場合、IM=IMm+1が成り立つ。また、番号を付け直した拡張末期フレームはIMm/2+1であり、このフレームは最小運動フレームの近似である。
【0048】
位相相関計算を、i∈{1...m}の場合の連続画像IM及びIMi+1のペアに適用する。位相相関の結果は、dX,dY及びρと表わすことができ、この場合、dX及びdYは、それぞれX軸及びY軸におけるこれらの画像の間のシフトであり(同じパターン−冠動脈枝または冠動脈枝の一部−のほとんどが両方の画像に含まれると仮定する)、ρは相関度である。ρを使用して記載のアルゴリズムを更に高性能にすることができる。
【0049】
次に、連続する画像の間の差に起因する全ての理由の中で、このような差に最も大きく影響する要素−心臓の運動自体が及ぼす影響よりも大きい場合がある−は、ベッドの動きである。
【0050】
IMからIMm+1までの心臓運動の積分はゼロである−(Xm+1,Ym+1)=(X,Y)=(0,0)
(X,Y)をベッドの動きの積分とすると、
(X,Y)=(Xm+1,Ym+1
となり、心臓運動の積分がゼロとすると、(Xm+1,Ym+1)はベッドの動きに起因する残りの運動を表わすことを意味する。
【0051】
ベッドの動きが一様であるか(医師がベッドをほぼ一定の方向に動かしていることを意味する)、あるいは弱い制約として、ベッドの動きが心拍よりも遅いと仮定すると、この動きを全体の動きから次式のように取り除くことができる。
【0052】
(X,Y)=(X,Y)−(X,Y)*(i−1)/m,
i=1,2,...,m+1
最小の動脈運動を示すフレームは(X,Y)曲線の極値のポイントによって表される。
【0053】
次式を定義する。
【0054】
【数4】

我々は収縮末期ポイントSを求めることができ、このポイントは近似拡張末期ポイントから最も離れたポイントであり、次式が成り立つことを意味する。
【0055】
S,m/2+1=max{Di,m/2+1
最小運動ポイント−拡張末期,ED−は、収縮ポイントから最も離れたポイントとして求められ、次式から得られる。
【0056】
S,ED=max{DS,J
3次元再構成プロセスに関して血管撮影装置(cine-angio)による画像シーケンスごとにIMED画像を選択することにより、再構成及び血管解析に関して精度及び確度の点で最適な結果が得られる。
【0057】
以下に示す方法の請求項では、請求項のステップを示すために使用する英文字及びローマ数字は説明を簡単にするためにのみ用いており、これらのステップを実行する順番を特定するために用いているのではない。
【0058】
本発明によるシステムは適切にプログラムされたコンピュータとすることができることも理解されたい。同様に、本発明は、本発明の方法を実行するコンピュータが読み取ることができるコンピュータ・プログラムを含む。本発明は更に、本発明の方法を実行するマシンが実行することができる命令プログラムを明白に具体化するマシン読み取り可能なメモリを含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】開始位置と終了位置が同じ位置であるオブジェクトの運動である周期運動の積分がゼロであることを簡単な形で示す例。
【図2】動くオブジェクトを描出した画像シリーズの中から最適画像を識別するための本発明による基本的な方法に従って実行される基本操作を示すフロー・チャート。
【図3】図2に示す方法の特定の実施形態に従って実行される基本操作を示すフロー・チャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期成分及び該周期成分よりも周波数が低い非周期成分を含む複合運動に従って動くオブジェクトを描出した画像シリーズ内の周期運動を定量化する方法であって、
(a)前記複合運動を計算すること、
(b)前記非周期成分を一運動周期に渡る運動の積分として計算すること、
(c)前記非周期成分を前記複合運動から減算して前記周期成分を取得すること、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記周期運動成分の繰り返し周期はスペクトル解析を使用して計算される、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記複合運動はオプティカル・フローにより求められる、方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法において、前記複合運動は前記画像の位相相関を用いて求められる、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法において、周期運動の値は体の臓器の機能を評価するために使用される、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、心臓機能を評価するために心臓の用途で使用される方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、駆出率解析に使用される方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、左心室解析に使用される方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、壁運動解析に使用される方法。
【請求項10】
周期運動に関連するイベントを描出した画像を識別する方法であって、
(a)前記周期運動を請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法に従って計算すること、
(b)前記周期運動のグラフィカル表示を使用して前記イベントに一致する全ての画像を識別すること、
(c)前記画像のうちの一つを選択すること、
を備える方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記選択される画像は所定の近似に最も近い、方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法において、前記イベントは最小運動である、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、血管造影画像を選択して冠血管の3次元再構成を行なう方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、最小運動画像の繰り返し周期及び近似を、ECG信号を解析することにより導出することを含む方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法であって、拡張末期インスタンスを収縮末期インスタンスから、冠血管の状態、すなわち、最大限に拡大している状態及び最小限に拡大している状態のそれぞれにより区別することを含む方法。
【請求項16】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、最適画像または複数の最適画像を選択してQCA解析を行なうために使用される方法。
【請求項17】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、最適画像または複数の最適画像を選択してIVUS解析を行なうために使用される方法。
【請求項18】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、最適画像または複数の最適画像を選択してLVA解析を行なうために使用される方法。
【請求項19】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、最適画像または複数の最適画像を選択して壁運動解析を行なうために使用される方法。
【請求項20】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、CT再構成に使用される方法。
【請求項21】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、MRI再構成に使用される方法。
【請求項22】
請求項5乃至15のいずれか一項に記載の方法であって、PET再構成に使用される方法。
【請求項23】
周期成分及び該周期成分よりも周波数が低い非周期成分を含む複合運動に従って動くオブジェクトを描出した画像シリーズ内の周期運動を定量化するシステムであって、
(a)前記複合運動を計算する複合運動ユニットと、
(b)前記非周期成分を一運動周期に渡る運動の積分として計算する非周期運動ユニットと、
(c)前記非周期成分を前記複合運動から減算して前記周期成分を取得する減算ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項24】
周期運動に関連するイベントを描出した画像を識別するシステムであって、
前記周期運動を計算するとともに、前記周期運動のグラフィカル表示を表わすデータを導出する周期運動ユニットと、
前記周期運動のグラフィカル表示を表わす前記データに従って、前記イベントに一致する全ての画像を識別する画像識別ユニットと、
前記画像のうちの一つを選択する画像選択ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムにおいて、前記画像識別ユニットは、最小の周期運動を識別するように構成されている、システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記画像選択ユニットは、血管造影画像を選択して冠血管の3次元再構成を行なうように構成されている、システム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムであって、最小運動画像の繰り返し周期及び近似をECG信号を解析することにより導出するECG解析装置を含むシステム。
【請求項28】
請求項26又は27に記載のシステムであって、前記画像選択ユニットに接続されるとともに、拡張末期インスタンスを収縮末期インスタンスから、冠血管の状態、すなわち、最大限に拡大している状態及び最小限に拡大している状態のそれぞれにより区別する画像処理ユニットを含むシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−533336(P2007−533336A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520979(P2006−520979)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000632
【国際公開番号】WO2005/008583
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506022898)パイエオン インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】PAIEON INC.
【Fターム(参考)】