説明

動作状態推定装置および無段変速機

【課題】トルクカムの動作状態の把握を可能とする動作状態推定装置および無段変速機を提供すること。
【解決手段】可動シーブ37に対する押圧力を発生させる圧力室39に対する作動流体の給排を遮断可能な制御弁DS1,DS2と、伝達するトルクに応じて作動して前記圧力室内の作動流体を押圧するトルクカム44とを有する無段変速機3に設けられ、前記トルクカムの作動に応じて変化する物理量に基づいて前記トルクカムの動作状態を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作状態推定装置および無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクカムを介して動力を伝達する無段変速機が提案されている。例えば、特許文献1には、セカンダリ可動シーブとリダクションドライブギヤとの間に配置され、駆動用カム機構がセカンダリ可動シーブに伝達された駆動力をリダクションドライブギヤに伝達する2つのカム機構を有するトルクカム装置を備えるベルト式無段変速機の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクカムの動作状態を把握できることが望ましい。例えば、トルクカムの動作状態を把握できることは、可動シーブを駆動する油圧を適切に制御する上で好ましい。
【0005】
本発明の目的は、トルクカムの動作状態の把握を可能とする動作状態推定装置および無段変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動作状態推定装置は、可動シーブに対する押圧力を発生させる圧力室に対する作動流体の給排を遮断可能な制御弁と、伝達するトルクに応じて作動して前記圧力室内の作動流体を押圧するトルクカムとを有する無段変速機に設けられ、前記トルクカムの作動に応じて変化する物理量に基づいて前記トルクカムの動作状態を推定することを特徴とする。
【0007】
上記動作状態推定装置において、前記制御弁によって前記圧力室に対する作動流体の給排が遮断される遮断状態が開始されたときの前記圧力室内の圧力と、前記遮断状態が開始された後の前記圧力室内の圧力とに基づいて前記トルクカムの動作状態を推定することが好ましい。
【0008】
上記動作状態推定装置において、前記トルクカムの互いに噛み合う一対のカムの周方向の位相差に基づいて前記トルクカムの動作状態を推定することが好ましい。
【0009】
本発明の無段変速機は、上記動作状態推定装置と、前記トルクカムの互いに噛み合う一対のカムの軸方向における相対移動量を規制する規制手段とを備え、前記規制手段は、前記一対のカムの互いに離間する軸方向の相対移動量を前記一対のカムのカム山の高さに応じた相対移動量の最大値未満に規制することを特徴とする。
【0010】
本発明の無段変速機は、上記動作状態推定装置を備え、前記動作状態推定装置によって推定された前記トルクカムの動作状態に基づいて、前記圧力室に対する作動流体の給排を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る動作状態推定装置は、可動シーブに対する押圧力を発生させる圧力室に対する作動流体の給排を遮断可能な制御弁と、伝達するトルクに応じて作動して圧力室内の作動流体を押圧するトルクカムとを有する無段変速機に設けられ、トルクカムの作動に応じて変化する物理量に基づいてトルクカムの動作状態を推定する。本発明に係る動作状態推定装置によれば、トルクカムの動作状態の把握を可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1実施形態に係る車両の要部を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る無段変速機の要部を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係るトルクカムの断面図である。
【図4】図4は、トルクカムの動作説明図である。
【図5】図5は、トルクカムの動作量の算出方法の説明図である。
【図6】図6は、油圧変動量の大きさとトルクカムの動作量の大きさとの対応関係のマップを示す図である。
【図7】図7は、第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、変形例に係るトルクカムの最大動作時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る動作状態推定装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[第1実施形態]
図1から図5を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、動作状態推定装置に関する。図1は、第1実施形態に係る車両の要部を示す図、図2は、第1実施形態に係る無段変速機の要部を示す図である。
【0015】
図1に示すように、車両100は、エンジン1、トルクコンバータ2、無段変速機3、出力ギア4、ギア機構5、差動機構6、駆動軸7および駆動輪8を備える。本実施形態に係る動作状態推定装置1−1は、供給用制御弁DS1(図2参照)、排出用制御弁DS2(図2参照)およびトルクカム44を有する無段変速機3に設けられており、第一パルス検出器51、第二パルス検出器52およびECU50を備える。
【0016】
エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを回転運動に変換して出力する。エンジン1は、トルクコンバータ2を介して無段変速機3と接続されている。トルクコンバータ2は、作動流体を介してトルクを伝達することができる。トルクコンバータ2は、更に、作動流体を介さずに入力側から出力側に直接トルクを伝達するロックアップ機構を有していてもよい。
【0017】
無段変速機3は、ベルト式の無段変速機である。無段変速機3は、クラッチ31、プライマリプーリ32、セカンダリプーリ33およびベルト34を有する。プライマリプーリ32は、セカンダリプーリ33よりもエンジン1側に設けられており、クラッチ31を介してトルクコンバータ2と接続されている。クラッチ31は、無段変速機3とトルクコンバータ2との断接および前後進の切り替えを行うことができる。
【0018】
プライマリプーリ32は、プライマリプーリ軸32a、プライマリ固定シーブ32b、プライマリ可動シーブ32cおよびプライマリ油圧室32dを有する。プライマリ固定シーブ32bは、プライマリプーリ軸32aに対して軸方向に移動不能に固定されており、プライマリプーリ軸32aと一体回転する。プライマリ可動シーブ32cは、プライマリプーリ軸32aに対して軸方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不能に配置されている。プライマリ油圧室32dは、プライマリ可動シーブ32cに対してプライマリ固定シーブ32b側と反対側に配置されている。プライマリ油圧室32dに対して供給される作動流体(例えば、作動油)の圧力(油圧)によって、プライマリ可動シーブ32cに対して軸方向の押圧力が作用する。この押圧力により、プライマリ固定シーブ32bに対するプライマリ可動シーブ32cの相対位置が制御される。言い換えると、プライマリ油圧室32dの油圧により、プライマリ固定シーブ32bとプライマリ可動シーブ32cとで形成されるプライマリ溝の溝幅(プーリ幅)が調節され、変速比が制御される。
【0019】
プライマリプーリ32とセカンダリプーリ33には、無端のベルト34が巻き掛けられている。ベルト34を介してプライマリプーリ32とセカンダリプーリ33との間で動力の伝達がなされる。クラッチ31を介して伝達されるエンジン1の動力は、プライマリプーリ32、ベルト34、セカンダリプーリ33を介してセカンダリプーリ軸の出力ギア4から出力される。出力ギア4は、ギア機構5、差動機構6および駆動軸7を介して駆動輪8と接続されている。
【0020】
図2に示すように、セカンダリプーリ33は、セカンダリプーリ軸35、セカンダリ固定シーブ36、セカンダリ可動シーブ37、ピストン38およびセカンダリ油圧室39を有する。セカンダリプーリ軸35は、両端部においてそれぞれ軸受によって回転自在に支持されている。セカンダリ固定シーブ36は、セカンダリプーリ軸35に対して軸方向に移動不能に固定されており、セカンダリプーリ軸35と一体回転する。セカンダリ可動シーブ37は、セカンダリプーリ軸35に対して軸方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不能に配置されている。本実施形態では、セカンダリ可動シーブ37は、軸方向に延在するスプラインによってセカンダリプーリ軸35とスプライン嵌合している。
【0021】
ベルト34は、セカンダリ固定シーブ36とセカンダリ可動シーブ37とで形成されるセカンダリ溝40に巻き掛けられている。セカンダリ油圧室39は、セカンダリ可動シーブ37に対してセカンダリ固定シーブ36側と反対側に位置している。セカンダリ油圧室39の油圧は、セカンダリ固定シーブ36とセカンダリ可動シーブ37とによってベルト34を挟むベルト挟圧力を発生させることができる。ベルト34が伝達するトルクの大きさに応じた適切な挟圧力を発生させることにより、ベルト34の滑りを抑制することができる。
【0022】
ピストン38は、セカンダリ可動シーブ37に対して軸方向のセカンダリ固定シーブ36側と反対側に配置されている。ピストン38は、セカンダリプーリ軸35に対して軸方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不能に配置されている。本実施形態では、ピストン38は、軸方向に延在するスプラインによってセカンダリプーリ軸35とスプライン嵌合している。セカンダリ可動シーブ37は、ピストン38側に向けて開口する凹部37aを有している。ピストン38は、凹部37aと嵌合している。ピストン38と、セカンダリ可動シーブ37と、セカンダリプーリ軸35とによってセカンダリ油圧室39が形成されている。セカンダリ油圧室39は、内部の作動油(作動流体)の圧力によって、セカンダリ可動シーブ37をセカンダリ固定シーブ36に向けて押圧する押圧力を発生させる圧力室である。
【0023】
セカンダリプーリ軸35には、出力ギア4が配置されている。出力ギア4は、セカンダリプーリ軸35における軸方向のエンジン側の端部、言い換えると、ピストン38に対してセカンダリ固定シーブ36およびセカンダリ可動シーブ37側と反対側の端部に配置されている。出力ギア4は、軸受4aを介してセカンダリプーリ軸35によって回転自在に支持されている。軸受4aの軸方向の移動は、ロックナット9によって規制されている。ロックナット9は、軸受4aに対してピストン38側と反対側に配置されており、セカンダリプーリ軸35と螺合している。これにより、ロックナット9は、軸受4aおよび出力ギア4のピストン38から離間する方向の軸方向の移動を規制する。
【0024】
セカンダリプーリ軸35には、ピストン38の軸方向の移動を規制する段差部35aが形成されている。段差部35aは、ピストン38を挟んで軸方向の出力ギア4側と反対側に位置している。また、段差部35aは、セカンダリ可動シーブ37よりも出力ギア4側に位置している。段差部35aは、軸方向のセカンダリ可動シーブ37側の外径が出力ギア4側の外径よりも大きい段差となっている。従って、ピストン38は、セカンダリプーリ軸35における段差部35aよりも出力ギア4側の小径部に嵌合しており、セカンダリ可動シーブ37は、セカンダリプーリ軸35における段差部35aよりもセカンダリ固定シーブ36側の大径部に嵌合している。
【0025】
ピストン38が軸方向のセカンダリ可動シーブ37側へ向かう場合、その移動は、段差部35aによって規制される。段差部35aの段差面35bは、ピストン38と当接することでピストン38の移動を規制するストッパとして機能する。
【0026】
車両100は、セカンダリ油圧室39に油圧を供給するポンプ41を備える。ポンプ41は、例えば、エンジン1の回転軸の回転によって駆動されるものである。なお、これに限らず、ポンプ41は、車輪の回転と連動して回転する回転部材によって駆動されるものであっても、電動式のものであっても、その他の公知のポンプであってもよい。ポンプ41は、供給油路42を介してセカンダリ油圧室39と接続されている。また、供給油路42には、供給油路42の作動油を排出する排出油路43が接続されている。
【0027】
供給油路42には、供給用制御弁DS1が設けられている。供給用制御弁DS1は、供給油路42におけるポンプ41の設置位置と排出油路43との接続部との間に配置されている。供給用制御弁DS1は、少なくとも、供給油路42を開放してポンプ41からセカンダリ油圧室39に対して油圧を供給できる開放状態と、供給油路42を閉塞してポンプ41とセカンダリ油圧室39との作動油の流通を遮断する閉塞状態とに切り替え可能である。供給用制御弁DS1は、ポンプ41からセカンダリ油圧室39に対して供給する作動油の油圧や流量を制御する調圧バルブとしての機能を有する。
【0028】
排出油路43には、排出用制御弁DS2が設けられている。排出用制御弁DS2は、少なくとも、排出油路43を開放して供給油路42の油圧を排出できる開放状態と、排出油路43を閉塞して排出油路43を介した作動油の流通を遮断する閉塞状態とに切り替え可能である。排出用制御弁DS2は、セカンダリ油圧室39から排出油路43を介して排出される作動油の流量を制御する調圧バルブとしての機能を有する。
【0029】
供給用制御弁DS1および排出用制御弁DS2は、それぞれ閉塞状態において油圧の漏れが生じないように構成されている。つまり、供給用制御弁DS1および排出用制御弁DS2は、セカンダリ可動シーブ37に対する押圧力を発生させるセカンダリ油圧室39に対する作動油の給排を遮断可能な制御弁である。このように、セカンダリ油圧室39の油圧を制御する油圧回路は、ゼロリーク回路として構成されている。各制御弁DS1,DS2は、たとえば、ポペット弁や逆止弁等によって構成することができる。
【0030】
本実施形態の無段変速機3では、供給用制御弁DS1および排出用制御弁DS2をそれぞれ閉塞状態として供給油路42、排出油路43およびセカンダリ油圧室39に油圧を封入することで、ゼロリーク状態でセカンダリ油圧室39の油圧を維持することができる。油圧を封入することにより、ポンプ41による油圧の供給によらずにベルト挟圧力を維持できるため、ポンプ41の運転を停止することが可能となる。例えば、ポンプ41がエンジン1の回転によって駆動されるものである場合、走行中にエンジン1を停止して燃費の向上を図ることが可能となる。また、ポンプ41が電動ポンプである場合、ポンプ41の運転時間を低減して電力消費量の削減を図ることができる。
【0031】
本明細書では、供給用制御弁DS1および排出用制御弁DS2をそれぞれ閉塞状態としてセカンダリ油圧室39、供給油路42および排出油路43に油圧を封入した状態を「遮断状態」と記載する。遮断状態は、制御弁DS1およびDS2によってセカンダリ油圧室39に対する作動油の給排が遮断される状態である。
【0032】
更に、本実施形態の無段変速機3は、伝達トルクに応じて作動してセカンダリ油圧室39内の作動油を押圧するトルクカム44を備える。これにより、以下に説明するように、遮断状態において無段変速機3の伝達トルクが増大する場合に、トルクカム44によってセカンダリ油圧室39の油圧を上昇させてベルト挟圧力を増加させることができる。図3は、本実施形態に係るトルクカムの断面図である。トルクカム44の一例として、シザーズトルクカムが図示されている。
【0033】
トルクカム44は、第一カム45および第二カム46を有する。第一カム45は、ピストン38における出力ギア4側の端部に設けられている。第二カム46は、出力ギア4におけるピストン38側の端部に設けられている。第一カム45、第二カム46は、軸方向において互いに対向するカム面45a,46aを有する。第一カム45は、カム面45aに対して出力ギア4側に突出する突出部45bを有する。突出部45bは、軸方向の出力ギア4側へ向かうに従い周方向の幅が縮小するテーパ形状である。突出部45bの断面形状は、例えば、三角形状とすることができる。第二カム46は、カム面46aに対してピストン38側に突出する突出部46bを有する。突出部46bは、軸方向のピストン38側へ向かうに従い周方向の幅が縮小するテーパ形状である。突出部46bの断面形状は、例えば、三角形状とすることができる。
【0034】
第一カム45の突出部45bの傾斜面45cと、第二カム46の突出部46bの傾斜面46cとが当接して第一カム45と第二カム46とが係合することにより、第一カム45と第二カム46との動力の伝達がなされる。無段変速機3のベルト34と出力ギア4とは、セカンダリ固定シーブ36、セカンダリプーリ軸35、ピストン38、トルクカム44を介して動力を伝達する。なお、各傾斜面45c,46cの各カム面45a,46aに対する傾斜角(リード角)γは、ヘリカルギアである出力ギア4の捻れ角δよりも小さくされている。
【0035】
トルクカム44は、伝達するトルクに応じて作動してセカンダリ油圧室39内の作動油を押圧する。トルクカム44がトルクを伝達するときには、第一カム45の傾斜面45cと第二カム46の傾斜面46cとが互いに押圧し合うことで、第一カム45および第二カム46には軸方向に互いに離間する方向の反力が作用する。つまり、ピストン38には、伝達トルクに対する軸方向の反力によって、セカンダリ可動シーブ37に向かうスラスト力F1が作用する。一方、ピストン38には、セカンダリ油圧室39の油圧によって、出力ギア4に向かうスラスト力F2が作用する。
【0036】
伝達トルクが小さいと、トルク反力によるスラスト力F1の大きさが、遮断状態としたときの初期油圧によるスラスト力F2の大きさよりも小さくなる。この場合、トルクカム44は、図3に示すように、カム面45aとカム面46aとが最も接近した状態となる。このようにカム面45aとカム面46aとが軸方向において最も接近した状態を「初期状態」あるいは「非作動状態」と記載する。非作動状態では、第一カム45の突出部45bの先端が第二カム46のカム面46bと接触し、第二カム46の突出部46bの先端が第一カム45のカム面45bと接触する。
【0037】
遮断状態においてトルクカム44の伝達トルクが増加し、トルク反力によるスラスト力F1が油圧によるスラスト力F2を上回ると、第一カム45は、第二カム46から離間する方向に移動する。これにより、ピストン38はセカンダリ可動シーブ37に向けて軸方向に移動し、セカンダリ油圧室39内の作動油を押圧する。つまり、トルクカム44は、ピストン38を介してセカンダリ油圧室39内の作動油を押圧する。ピストン38が作動油を押圧することによって、セカンダリ油圧室39内の油圧が上昇し、セカンダリシーブ33のベルト挟圧力が増加する。
【0038】
ピストン38による押圧力は、トルクカム44の伝達トルク、言い換えるとベルト34の伝達トルクに応じた大きさである。従って、トルクカム44は、無段変速機3のベルト34が伝達するトルクに応じて作動して伝達トルクに応じた圧力でセカンダリ油圧室39内の作動油を押圧することができる。また、ピストン38は、伝達トルクに応じてトルク反力によるスラスト力F1と油圧によるスラスト力F2とが釣り合う位置に移動する。従って、トルクカム44は、伝達トルクに応じて動作し、その動作量が伝達トルクに応じて変化するトルクセンサとして機能することができる。また、トルクカム44は、伝達トルクに応じてピストン38を軸方向に移動させることでセカンダリ油圧室39内の油圧を調節するアクチュエータとしての機能を有している。
【0039】
このように、無段変速機3は、遮断状態において伝達トルクの増加に応じてセカンダリプーリ33のベルト挟圧力を増加させることができる。これにより、走行時に伝達トルクが増加した場合、例えば段差を乗り越えた場合や路面μの急な変化によってタイヤの回転が停止した場合などの過大トルクの入力に対して、トルクカム44による挟圧力増幅機能が作用する。トルクカム44がセカンダリ油圧室39の圧力を増加させることによって、ベルト挟圧力を適切に増加させ、ベルト34の滑りの発生を抑制することができる。トルクカム44による挟圧力増幅機構は、コンピュータ等の制御を介さない機械的なものであるため、応答よくベルト挟圧力を増加させることができる。トルクカム44による挟圧力増幅機構があることで、挟圧力増幅機構を備えない場合よりも遮断状態としてセカンダリ油圧室39内に油圧を封入するときのセカンダリ油圧室39内の油圧(初期油圧)を低減することができる。
【0040】
ここで、ベルト挟圧力を適切に維持できるためには、トルクカム44の動作状態を把握できることが望ましい。図4は、トルクカム44の動作説明図である。図4において、横軸は時間を示す。実線101は、トルクカム44が発生させるベルト挟圧力、実線102は、伝達トルクに応じて必要とされるベルト挟圧力、破線103は、トルクカム44の非作動状態で初期油圧によって発生させているベルト挟圧力(以下、単に「初期ベルト挟圧力」とも記載する。)である。なお、伝達トルクに応じて必要とされるベルト挟圧力102を単に「必要ベルト挟圧力102」とも記載する。
【0041】
時刻t1において車輪からのトルク入力等によって必要ベルト挟圧力102が初期ベルト挟圧力103を上回ったとしても、トルクカム44が発生させるベルト挟圧力101によってベルト34の滑りが抑制される。また、車両100が上り坂を走行する場合、勾配の大きさに応じて、必要ベルト挟圧力102が増加する(符号102a参照)。初期ベルト挟圧力103だけでは必要ベルト挟圧力102を満たすことができなくても、符号101aに示すように、トルクカム44が発生させるベルト挟圧力101が伝達トルク(勾配)に応じて増加することで、ベルト34の滑りが抑制される。
【0042】
しかしながら、トルクカム44が発生させるベルト挟圧力101には、上限が存在する。破線104は、トルクカム44が発生させることのできるベルト挟圧力の上限である。ベルト挟圧力の上限104は、第一カム45および第二カム46のカム高さ等に応じて決まる。上り坂を走行してトルクカム44が作動しているときに、符号102bで示すように、更に車輪からのトルク入力等によって必要ベルト挟圧力102が増加した場合、トルクカム44が発生させるベルト挟圧力101を加えても必要ベルト挟圧力102を満足することができない可能性がある。この場合、トルクカム44の係合が外れてしまう虞や、ベルト34の滑りが発生してしまう虞がある。
【0043】
これに対して、本実施形態の動作状態推定装置1−1は、トルクカム44の動作状態を推定することができる。図1に示すように、動作状態推定装置1−1は、第一パルス検出器51および第二パルス検出器52を備える。第一パルス検出器51は、トルクカム44よりもエンジン側の回転体の回転位相を検出するものである。第一パルス検出器51は、例えば、セカンダリプーリ軸35の回転位相を検出する。第二パルス検出器52は、トルクカム44よりも駆動輪8側の回転体の回転位相を検出するものである。第二パルス検出器52は、例えば、駆動軸7の回転位相を検出する。
【0044】
車両100には、ECU50が搭載されている。ECU50は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU50は、エンジン1、無段変速機3とそれぞれ接続されており、エンジン1および無段変速機3を制御することができる。また、ECU50は、第一パルス検出器51および第二パルス検出器52と接続されている。各パルス検出器51,52の検出結果を示す信号は、ECU50に入力される。また、ECU50は、圧力検出装置53(図2参照)と接続されている。圧力検出装置53は、セカンダリ油圧室39の油圧を検出する。圧力検出装置53の検出結果を示す信号は、ECU50に入力される。
【0045】
ECU50は、各パルス検出器51,52の検出結果に基づいて、トルクカム44の動作量TS(θ)を推定する。トルクカム44が作動した場合、第一カム45と第二カム46とは、軸方向に離間すると共に、周方向に相対回転する。これにより、トルクカム44が作動すると、トルクカム44よりもエンジン1側の回転体と、トルクカム44よりも駆動輪8側の回転体との間には回転位相差が発生する。この回転位相差は、トルクカム44の互いに噛み合う一対のカム45,46の周方向の位相差に対応する。
【0046】
ECU50は、エンジン1側の回転体と駆動輪8側の回転体との回転位相差に基づいてトルクカム44の動作量TS(θ)を算出する。ここでθは、第一パルス検出器51の検出対象の回転体の回転位相と、第二パルス検出器52の検出対象の回転体の回転位相との回転位相差である。回転位相差θは、トルクカム44の作動に応じて変化する物理量に含まれる。図5は、トルクカム44の動作量TS(θ)の算出方法の説明図である。
【0047】
図5において、符号110は、第一パルス検出器51の出力パルスを示し、符号111a、111bおよび111cは、第二パルス検出器52の出力パルスを示す。トルクカム44が作動していない場合の第二パルス検出器52の出力パルス111aは、第一パルス検出器51の出力パルス110と同期しており、パルス検出器51,52の位相遅れω=0である。
【0048】
トルクカム44が作動し、トルクカム44の回転位相差がθ=a°である場合、パルス検出器51,52に位相遅れω=αが発生する。また、トルクカム44の回転位相差θ=b°であると、パルス検出器51,52に位相遅れω=βが発生する。ECU50は、検出されたパルス検出器51,52の位相遅れωに基づいて、トルクカム44の動作量TS(θ)を推定する。ECU50は、例えば、予め記憶されている位相遅れωと動作量TS(θ)との対応関係を示すマップに基づいて、動作量TS(θ)を推定することができる。ECU50が推定するトルクカム44の動作量TS(θ)は、初期状態からの第一カム45と第二カム46との相対回転角度、初期状態からの第一カム45と第二カム46との軸方向の相対移動量を含むものとすることができる。ECU50は、動作量TS(θ)を含むトルクカム44の動作状態(例えば、トルクカム44が動作しているか否かを含む)を推定することができる。
【0049】
ECU50は、トルクカム44の動作状態を推定し、トルクカム44の動作状態を把握できることにより、セカンダリ油圧室39に対する作動流体の給排を決定し、適切に給排を行うことが可能となる。例えば、伝達トルクが増加してトルクカム44が作動した場合に、トルクカム44の動作量TS(θ)に応じてセカンダリ油圧室39に対して作動油を供給することができる。この場合、遮断状態を一時的に解除し、ポンプ41を運転すると共に供給用制御弁DS1を開閉制御して高油圧をセカンダリ油圧室39に供給することができる。
【0050】
セカンダリ油圧室39内の作動油量を増加させて第一カム45を第二カム46に向けて押し戻すようにすれば、トルクカム44によってベルト挟圧力を増幅できる余裕代を回復させることができる。一例として、初期状態の位置まで第一カム45を移動させるようにすることが可能である。本実施形態では、動作状態推定装置1−1によってトルクカム44の動作量TS(θ)が把握されている。このため、第一カム45を初期位置まで移動させるために必要以上に高油圧を供給する必要がなく、ポンプ41の運転による効率低下の度合いを抑制することができる。
【0051】
また、トルクカム44の動作量TS(θ)に基づいて、遮断状態を終了させるようにしてもよい。例えば、路面からのトルク入力等によってスパイク状やパルス状の連続した過大なトルクが入力され、トルクカム44が作動した場合に、遮断状態から復帰させてもよい。遮断状態から復帰した場合、油圧ポンプ41が供給するライン油圧と、制御弁DS1,DS2の制御によるセカンダリ油圧室39の油圧制御がなされる。
【0052】
セカンダリ油圧室39に対する作動流体の給排を適切に行うことができることで、伝達トルクの増加による意図しないトルクカム44の開放を未然に防ぐことが可能となる。トルクカム44の開放を抑制できることから、トルクカム44の開放に伴う挟圧不足によるベルト滑りの発生を抑制することができる。また、トルクカム44の開放が抑制されることで、トルクカム44の耐久性向上、品質の向上、ドライバビリティの低下抑制、トルクカム44の係合面の耐久性向上が可能である。
【0053】
トルクカム44による挟圧力増幅量を最大限使用することが可能となり、走行中にポンプ41等の油圧供給装置からの高油圧の供給を停止できる区間をより長く確保することができる。よって、油圧供給装置のユニット損失を低減することができ、燃費や耐久性の向上が可能である。走行中からのエンジン停止技術において、トルクカム44への過大トルク入力に対応するための油圧機器、例えば電動オイルポンプやアキュムレータが不要となり、あるいは体格を小型化できる。これにより、低コスト化、省スペース化に有利である。
【0054】
なお、トルクカム44の動作量TS(θ)を検出する方法は、パルス検出器51,52の位相遅れに基づく方法には限定されない。例えば、第一カム45と第二カム46との軸方向におけるギャップに基づいて動作量TS(θ)が検出されてもよい。また、トルクカム44の作動に応じて変化するその他の物理量に基づいてトルクカム44の動作状態が推定されてもよい。パルス検出器51,52の位相遅れに基づく方法の場合、既存のパルス検出器51,52の検出結果を利用することができ、動作状態推定装置1−1の低コスト化が図れる。
【0055】
[第2実施形態]
図6および図7を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の動作状態推定装置1−1において、上記第1実施形態と異なる点は、セカンダリ油圧室39内の油圧に基づいてトルクカム44の動作量TS(θ)を推定する点である。トルクカム44が作動することにより、セカンダリ油圧室39内の油圧が変化する。つまり、セカンダリ油圧室39内の油圧は、トルクカムの作動に応じて変化する物理量である。
【0056】
ECU50は、制御弁DS1,DS2閉動作時のセカンダリ油圧室39内の油圧Pdと、トルクカム44の動作後のセカンダリ油圧室39内の油圧Pd’との差圧に基づいてトルクカムの動作状態を推定する。以下の説明では、制御弁DS1,DS2が閉塞されて遮断状態が開始されたときのセカンダリ油圧室39内の油圧Pdを「初期油圧Pd」とも記載する。また、初期油圧Pdと、遮断状態が開始された後のセカンダリ油圧室39内の油圧Pd’との油圧変動量(Pd−Pd’)を「油圧変動量ΔPd」と記載する。
【0057】
ECU50は、圧力検出装置53の検出結果に基づいてセカンダリ油圧室39内の圧力を取得することができる。ECU50は、例えば、図6に示すマップに基づいてトルクカム44の動作量ΔTSを推定する。なお、動作量ΔTSは、遮断状態が開始されたときの動作量TS(θ)と、遮断状態が開始された後の動作量TS(θ)との動作量の差分である。以下の説明では、動作量TS(θ)の差分ΔTSを「相対動作量ΔTS」とも記載する。遮断状態が開始されたときにトルクカム44が初期状態にあれば、相対動作量ΔTSは、動作量TS(θ)と一致する。
【0058】
図6は、油圧変動量ΔPdの大きさとトルクカム44の相対動作量ΔTSの大きさとの対応関係のマップを示す図である。油圧変動量ΔPdの大きさが大きい場合のトルクカム44の相対動作量ΔTSの大きさは、油圧変動量ΔPdの大きさが小さい場合のトルクカム44の相対動作量ΔTSの大きさよりも大であると推定される。ここで、油圧変動量ΔPdが負の値の場合、すなわち初期油圧Pdに対してその後の検出油圧Pd’が増加している場合は、第一カム45と第二カム46とが軸方向に離間する相対動作量ΔTSが生じていると推定される。
【0059】
一方、油圧変動量ΔPdが正の値の場合、すなわち初期油圧Pdに対してその後の検出油圧Pd’が減少している場合は、第一カム45と第二カム46とが軸方向に接近する相対動作量ΔTSが生じていると推定される。
【0060】
また、相対動作量ΔTSの大きさが最大値εとなる油圧変動量ΔPdが定められている。図6に示すマップでは、トルクカム44の動作量TS(θ)が最大値εとなる油圧変動量ΔPdが定められている。この最大値εは、例えばトルクカム44が開放しない動作量TS(θ)の範囲で予め定められた許容最大動作量である。これにより、ECU50は、検出されたセカンダリ油圧室39内の油圧Pd’に基づいて、トルクカム44の動作量TS(θ)が許容最大動作量εに対してどの程度の余裕があるかを算出することができる。
【0061】
図7は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。ECU50は、図7に示す制御フローに基づいてトルクカム44の相対動作量ΔTSを推定する。
【0062】
まず、ステップS1では、ECU50により、制御弁DS1,DS2の閉動作がなされる。調圧バルブとしての供給用制御弁DS1および排出用制御弁DS2がそれぞれ閉塞状態とされることで、セカンダリ油圧室39に対する作動油の給排が遮断される遮断状態が開始される。ステップS1が実行されると、ステップS2に進む。
【0063】
ステップS2では、ECU50により、初期油圧Pdが取得される。ECU50は、圧力検出装置53の検出結果に基づいてセカンダリ油圧室39内の油圧を取得する。ここで取得されるセカンダリ油圧室39内の油圧は、制御弁DS1,DS2の閉動作を実行するときのセカンダリ油圧室39内の油圧である。ステップS2が実行されると、ステップS3に進む。
【0064】
ステップS3では、ECU50により、セカンダリ油圧室39内の油圧Pd’が取得される。ECU50は、所定の間隔で繰り返しセカンダリ油圧室39内の油圧Pd’を取得し、セカンダリ油圧室39内の油圧をモニタする。ステップS3が実行されると、ステップS4に進む。
【0065】
ステップS4では、ECU50により、ステップS3で取得した油圧Pd’と初期油圧Pdとが異なるか否かが判定される。ステップS4では、初期油圧Pdに対してセカンダリ油圧室39内の油圧が変動したか否かが判定される。セカンダリ油圧室39内の油圧が初期油圧Pdに対して変動している場合、トルクカム44の相対動作量ΔTSが変化したと推定される。ステップS4の判定の結果、ステップS3で取得した油圧Pd’と初期油圧Pdとが異なると判定された場合(ステップS4−Y)にはステップS5に進み、そうでない場合(ステップS4−N)には本制御フローは終了する。
【0066】
ステップS5では、ECU50により、トルクカム44の相対動作量ΔTSが判定される。ECU50は、例えば、図6を参照して説明したように相対動作量ΔTSを推定することができる。ステップS5が実行されると、本制御フローは終了する。
【0067】
なお、相対動作量ΔTSを算出する方法は、マップを参照して算出する方法に限定されるものではない。例えば、下記式(1)によって相対動作量ΔTSが算出されてもよい。
ΔTS=f(油圧変動量ΔPd,カムリード角,油圧剛性,・・・)…(1)
【0068】
[各実施形態の変形例]
上記第1実施形態および第2実施形態の変形例について説明する。本変形例において、上記各実施形態と異なる点は、トルクカム44の意図しない開放を抑制できる規制手段を備える点である。本変形例の規制手段は、トルクカム44の可動範囲を制限することにより、トルクカム44の開放を抑制する。図8は、本変形例に係るトルクカムの最大動作時を示す図である。
【0069】
より具体的には、ロックナット9によってトルクカム44の可動範囲が制限される。第二カム46の軸方向の移動は、ロックナット9によって規制されている。第二カム46は、伝達トルクの反力によってピストン38から離間する方向、すなわちロックナット9へ向かう方向に押圧されている。一方で、第二カム46は、ロックナット9によってピストン38から離間する方向の移動が規制されている。これにより、第二カム46は、ロックナット9によって支持されて軸方向の位置が固定されている。
【0070】
第一カム45は、第二カム46に対して軸方向に相対移動する。第一カム45の軸方向の可動範囲は、最も第二カム46と接近した初期状態の位置と、段差部35aの段差面35b(図2参照)に当接した位置とを両端とする範囲である。ロックナット9の軸方向の位置は、第一カム45が段差面35bに当接した状態においてトルクカム44が開放しないように定められている。言い換えると、ロックナット9の軸方向の位置は、第一カム45が段差面35bに当接した状態において、第一カム45の突出部45bと第二カム46の突出部46bとが当接し、係合した状態を維持できるように定められている。
【0071】
本変形例では、段差部35aの段差面35bとロックナット9が規制手段として機能する。規制手段は、第一カム45および第二カム46からなる一対のカムの軸方向における相対移動量を規制する。より詳しくは、規制手段は、一対のカム45,46の互いに離間する軸方向の相対移動量を突出部45b,46bの高さに応じた相対移動量の最大値未満に規制する。ここで、突出部45b,46bの高さHは、図8に示すように、各カム45,46のカム面45a,46aと突出部45b,46bの先端との軸方向の距離である。トルクカム44における第一カム45と第二カム46との軸方向の相対移動量の最大値は、突出部45b,46bの高さに基づいて決まる。突出部45b,46bの高さが共にHである場合、第一カム45と第二カム46との軸方向の相対移動量の最大値はHとなる。
【0072】
ロックナット9は、第一カム45と第二カム46との軸方向の相対移動量を突出部45b,46bの高さに応じた相対移動量の最大値未満に規制するように配置されている。これにより、初期状態の位置からの第一カム45と第二カム46との軸方向の相対移動量が相対移動量の最大値となる前に、ピストン38が段差面35bに当接して、ピストン38および第一カム45の移動が規制される。
【0073】
よって、本変形例によれば、大トルクが入力された場合や油圧フェールが生じた場合であっても、トルクカム44の係合が外れることが抑制される。トルクカム44の意図しない開放が抑制されることで、開放/係合に伴うカム45,46に対する衝撃が回避され、トルクカム44の係合面の耐久性向上・品質向上が可能となる。また、シーブ36,37の伝達トルク増加による意図しないトルクカム44の開放が抑制されることで、開放に伴うトルク遮断が発生せず、ドライバビリティの低下が抑制される。また、油圧低下等のフェールが発生し、セカンダリ油圧室39内の油圧がトルクカム44を係合させておくことができる油圧以下となったとしても、規制手段によってトルクカム44の係合状態が維持される。よって、油圧低下等が生じたとしても車両100を走行可能な状態に維持することが可能となり、品質やドライバビリティを確保することができる。
【0074】
なお、本変形例では、ロックナット9および段差部35aを規制手段の一例として示したが、規制手段はこれに限定されるものではない。
【0075】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0076】
1−1 動作状態推定装置
3 無段変速機
4 出力ギア
9 ロックナット
33 セカンダリプーリ
37 セカンダリ可動シーブ
38 ピストン
39 セカンダリ油圧室
44 トルクカム
45 第一カム
46 第二カム
50 ECU
DS1 供給用制御弁
DS2 排出用制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動シーブに対する押圧力を発生させる圧力室に対する作動流体の給排を遮断可能な制御弁と、伝達するトルクに応じて作動して前記圧力室内の作動流体を押圧するトルクカムとを有する無段変速機に設けられ、
前記トルクカムの作動に応じて変化する物理量に基づいて前記トルクカムの動作状態を推定する
ことを特徴とする動作状態推定装置。
【請求項2】
前記制御弁によって前記圧力室に対する作動流体の給排が遮断される遮断状態が開始されたときの前記圧力室内の圧力と、前記遮断状態が開始された後の前記圧力室内の圧力とに基づいて前記トルクカムの動作状態を推定する
請求項1に記載の動作状態推定装置。
【請求項3】
前記トルクカムの互いに噛み合う一対のカムの周方向の位相差に基づいて前記トルクカムの動作状態を推定する
請求項1に記載の動作状態推定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の動作状態推定装置と、
前記トルクカムの互いに噛み合う一対のカムの軸方向における相対移動量を規制する規制手段とを備え、
前記規制手段は、前記一対のカムの互いに離間する軸方向の相対移動量を前記一対のカムのカム山の高さに応じた相対移動量の最大値未満に規制する
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の動作状態推定装置を備え、
前記動作状態推定装置によって推定された前記トルクカムの動作状態に基づいて、前記圧力室に対する作動流体の給排を決定する
ことを特徴とする無段変速機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−113363(P2013−113363A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259243(P2011−259243)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】