説明

動作玩具

【課題】回路構成が簡素で、かつ、誤動作の少ない動作玩具を提供すること。
【解決手段】特定周波数帯の発音を行う外部発音手段と、前記外部発音手段によって動作制御される動作体とを備え、前記動作体には、前記外部発音手段の音に対して共鳴する共鳴器と、前記共鳴器に付設され且つ外部音をピックアップしアナログ信号に変換して出力するマイクロフォンと、前記マイクロフォンから出力された前記アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段からの前記デジタル信号が前記外部発音手段の信号か否かを判定し且つ該デジタル信号が該外部発音手段の信号である場合に前記動作体の動作を制御するコントローラとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作玩具に関し、詳しくは、ホイッスルの音に反応して動作する動作玩具に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外部発音手段によって動作体を駆動制御する動作玩具が知られている。
例えば、笛などの外部発音手段から発せられる音を動作体側のマイクロフォンでピックアップし、そのマイクロフォンから出力される電気信号の振幅の大きさを判別し、その判別結果に基づいて制御信号を生成し、その制御信号によって動作体の動作制御を行うように構成した動作玩具がある。
【0003】
また、他の動作玩具として次のようなものが知られている。この動作玩具は走行玩具であって、この走行玩具は、特定周波数帯の発音を行う外部発音手段を設け、走行体には、外部音をピックアップして電気信号に変換するマイクロフォンと、変換された電気信号中に含まれる特定周波数帯の信号だけを透過するフィルタ回路と、フィルタ回路を透過した電気信号の入力により出力手段の駆動制御を行う集積回路と、集積回路からの制御信号によって動作体の動作制御を行うように構成されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−46752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の動作玩具では、発音体から出力した音をマイクロフォンで検出しようとする際、外来雑音や本体自身の動作に伴う音声出力や機械的な振動音により、それらの雑音と正規の外部音(以下「正規外部音」と言う。)との判別がつかないため検出が不能となり、また誤動作を起こす原因となっていた。
一方、後者の走行玩具にあっては、雑音と正規外部音との判別を行うためのフィルタ回路を必要とする分だけ、回路構成が複雑となって、動作玩具の価格が高価となるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、回路構成が簡素で、かつ、誤動作の少ない動作玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段に係る動作玩具は、特定周波数帯の発音を行う外部発音手段と、前記外部発音手段によって動作制御される動作体とを備え、前記動作体には、前記外部発音手段の音に対して共鳴する共鳴器と、前記共鳴器に付設され且つ外部音をピックアップしアナログ信号に変換して出力するマイクロフォンと、前記マイクロフォンから出力された前記アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段からの前記デジタル信号が前記外部発音手段の信号か否かを判定し且つ該デジタル信号が該外部発音手段の信号である場合に前記動作体の動作を制御するコントローラとを備えることを特徴とする。
【0007】
第2の手段に係る動作玩具は、第1の手段に係る動作玩具において、前記共鳴器はヘルムホルツ共鳴器であることを特徴とする。
【0008】
第3の手段に係る動作玩具は、第1又は2の手段に係る動作玩具において、前記共鳴器は共鳴胴の長さを変更できるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第4の手段に係る動作玩具は、第1から3のいずれか一の手段に係る動作玩具において、前記外部発音手段はホイッスルであることを特徴とする。
【0010】
第5の手段に係る動作玩具は、第1から4のいずれか一の手段に係る動作玩具において、前記制御手段は、前記ホイッスルの音に対応する周波数の倍の周波数に対応する周期でデジタル信号(2値化した入力信号)をサンプリングしたときのロジックによって前記デジタル信号が前記ホイッスルの信号か否かを判定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
第6の手段に係る動作玩具は、第1から5のいずれか一の手段に係る動作玩具において、前記外部発音手段の発音の長さ又は回数に応じて前記動作体の動作態様を変更させるコントローラを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1及び2の手段に係る動作玩具によれば、正規外部音については共鳴器によって共振が生じる一方、雑音の場合には共鳴器によって共振が生じないので、正規外部音と雑音との判別が容易となる。また、正規外部音について共振させるのに共鳴器を使用し電気的回路を必要としないので、その分、回路構成が簡素化され、動作玩具の価格の低廉化を図ることができる。
【0013】
第3の手段に係る動作玩具によれば、共鳴器の共鳴胴の長さを変更できるので、互いに異なる特定周波数帯の発音を行う複数の外部発音手段を使用すれば、複数の動作体に互いに異なる動作をさせることが可能となる。
【0014】
第4の手段に係る動作玩具によれば、外部発音手段として、比較的に安価なホイッスルを使用するので、動作玩具自体の価格のさらなる低廉化が可能となる。
【0015】
第5の手段に係る動作玩具によれば、デジタル信号が正規外部音に対応する信号か否かを判定する際に、デジタル信号の周波数の倍の周波数でデジタル信号をサンプリングすることとしているので、より正確な判定を行うことができる。
【0016】
第6の手段に係る動作玩具によれば、外部発音手段の発音の長さに応じて動作体の動作態様を変更させるように構成されているので、1つの外部発音手段によって、変化に富んだ色々な動作制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る動作玩具を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る動作玩具の一例である軌道走行玩具の斜視図を示している。この軌道走行玩具100は、特定周波数帯の発音をするホイッスル(外部発音手段)10の音によって、走行体(動作体)の走行及び停止を行うように構成されている。この軌道走行玩具100の走行体は、3つの車両20、21、22の隣接する車両同士をそれぞれ連結器23を介して連結した構造となっている。なお、同図においてSWは電源スイッチである。
【0018】
3つの車両20、21、22の中で、1両目の車両20には、電池20aと、この電池20aを電源とするモータ20b等(図2参照)とが設置されている。後者のモータ20bは、1両目の車輪20cを駆動するための駆動機構と一体となって駆動ユニットを構成している。
2両目の車両21には、マイクロフォン30a(図3参照)と、スピーカ30b(図3参照)と、上記電池20aを電源としスピーカ30bや上記モータ20bの動作制御を行うための回路を構成する回路部品が付設された回路基板30cとが設置されている。また、2両目の車両21の上壁には集音用の孔30dが形成されている。ここで、車両21の内部には上記集音用の孔30dの直下には、上記マイクロフォン30aが、図3に示すように、共鳴器60に付設された状態で設置されている。この場合の共鳴器としては、特に限定はされないが、ヘルムホルツ共鳴器が使用される。
なお、3つの車両20、21、22の中で、1両目の車両20の回路構成部品と2両目の車両21の回路構成部品とは電気的に接続されている。
【0019】
図3には、軌道走行玩具100の回路構成を示す図が示されている。この図に従って本実施形態の回路構成を説明すれば、次の通りである。
すなわち、軌道走行玩具100には、マイクロフォン30a、マイクアンプ70、コンパレータ71、コントローラ72、D/Aコンバータ73、アンプ74、スピーカ30b、D/Aコンバータ75、モータ駆動回路76及びモータ20bが設置されている。
【0020】
このうち、マイクロフォン30aは、外部音をピックアップしアナログ電気信号に変換してマイクアンプ70に出力するもので、特に制限はされないが、ここではコンデンサ形のマイクロフォンが使用されている。
マイクアンプ70は、マイクロフォン30aからのアナログ電気信号を増幅してコンパレータ71に出力するものである。このマイクアンプ70は、マイクロフォンとしてコンデンサ形のマイクロフォンを使用する場合に必要となるもので、マイクロフォンとしてダイナミック形のマイクロフォンを使用する場合には、マイクロフォン自体で電気信号が増幅されるので不要である。なお、図4(A)には、正規外部音の場合のマイクアンプ出力(アナログ電気信号)の波形が示されている。ただし、同図の波形は実際の波形ではなく、実際の波形を模式化したものである点に留意する必要がある。
コンパレータ71は、マイクアンプ70で増幅されたアナログ電気信号が基準電圧に対して高いか低いかを比較し,その結果のデジタル電気信号を音声合成コントローラ72に出力するもので、1ビットのA/D変換手段として機能する。なお、図4(B)には、正規外部音の場合のコンパレータ出力(ディジタル電気信号)の波形が示されている。ただし、同図の波形は実際の波形ではなく、実際の波形を模式化したものである点に留意する必要がある。
コントローラ72は、コンパレータ71からのデジタル電気信号が正規外部音に基づくデジタル電気信号か否かを判別し、それが正規外部音に基づく正規外部音データである場合には、内蔵されたROMに記憶されたデータ等に基づいて生成した制御信号をD/Aコンバータ73やモータ駆動回路75に出力するものである。この場合、コントローラ72を音声合成コントローラとすれば、音声合成コントローラはD/A変換手段を備えるので、コントローラの後段のD/A変換手段を省略できるので、回路の構成が簡素となるという利点を有する。なお、このコントローラ72によって行われる、正規外部音に基づくデジタル電気信号か否かの判別方法の詳細は後述する。
D/Aコンバータ73は、コントローラ72からの音声信号(デジタル電気信号)をアナログ電気信号に変換してアンプ74に出力する。
アンプ74は、D/Aコンバータ73からのアナログ電気信号を増幅してスピーカ30bに出力するものである。
D/Aコンバータ75は、コントローラ72からの音声信号(デジタル電気信号)をアナログ電気信号に変換してモータ駆動回路76に出力するものである。
モータ駆動回路76はモータ20bを駆動するものである。
【0021】
ここで、コントローラ72で行われる判別方法を説明すれば、コントローラ72は、図4(C)に示すように、ホイッスル10の音の特定周波数(特定周波数帯の中の1つ)の2倍の周波数に対応する周期でデジタル信号をサンプリングしたときのロジックによって前記デジタル信号が、コンパレータ出力がホイッスル10の信号か否かを判別する。
具体的には、コントローラ72は検出プログラムによって、ホイッスル10の特定周波数の2倍のサンプリング周波数fに対応する周期t=1/2fでコンパレータ出力を捕捉しその極性を常時検出する。このとき、もしホイッスル10から発せられた音をマイクロフォン30aが捉えていれば、コンパレータ出力は周期t毎(サンプリングタイミング毎)に連続的に極性が反転するため、コントローラ72では捕捉毎に極性が反転するロジックが連続して検出されることとなり、ホイッスル10の音の到来を検知することができる。
なお、実際には、ホイッスル10の周波数とサンプリング周期との関係を完全には一致させることはできないし、また、ノイズによってロジックが乱れることも想定されるが、検出プログラム上のアルゴリズムで適度な冗長性を持たせれば、外来ノイズで誤作動することなくホイッスル10からの音を検出することが可能となる。この場合の冗長性を持たせる方法の一例としては、所定時間内におけるサンプリングデータを基準データ(周波数が完全に一定の理想的なホイッスルを考慮した場合のデータ)と比較し、その合致割合が所定割合以上であれば、ホイッスル10の音であると判定する方法が考えられる。
【0022】
続いて、動作玩具100の作用を説明する。
マイクロフォン30aによって外部音がピックアップされると、マイクロフォン30aの出力(アナログ信号)がマイクアンプ70に出力される。このマイクアンプ70ではそのアナログ信号が増幅されてコンパレータ71に出力される。そして、そのアナログ信号がコンパレータ71によって2値のディジタル信号に変換されてコントローラ72に出力される。コントローラ72は、そのディジタル信号がホイッスル10の音の信号か否かを判定し、ホイッスル10の音の信号である場合、音声用の制御信号をD/Aコンバータ73及びアンプ74を介してスピーカ30bに出力する。これによって、スピーカ30bの発音が動作制御され、スピーカ30bから所定の音声が出力される。この場合の音声としては走行音及びブレーキ音が考えられる。一方で、コントローラ72は、ディジタル信号がホイッスル10の音の信号である場合、モータ駆動用の制御信号をD/Aコンバータ75及びモータ駆動回路76を介してモータ20bに出力する。これによってモータ20bの回転が動作制御され、軌道走行玩具100が走行又は停止する。
【0023】
次に、上記軌道走行玩具100の変形例の要部だけを説明する。その他の部分の構成は上記軌道走行玩具100とほぼ同様なのでその部分の図示と説明は省略する。
この軌道走行玩具においては、上記マイクロフォン30aが付設される共鳴器60は、図5に示すように、共鳴胴60aの長さが複数段に可変となるように構成されている。この場合、使用されるホイッスルの共鳴胴の長さも、共鳴胴60aの長さ変化に対応させて、複数段に可変となるように構成してもよい。勿論、両共鳴胴は無段に可変となるように構成してもよいが、その場合には、その調整が難くなる。
【0024】
このような構成とすれば、1つのホイッスルによって、複数の走行体の動作態様を変化させることが可能となる。
【0025】
なお、この場合、共鳴器60は、取扱上、走行体の本体から突出するものであることが好ましい。例えば、軌道走行玩具が機関車玩具の場合、煙突部分に共鳴器60を組み込み、煙突の長さを変化できるように構成し、煙突の長さを変えたときに同時に共鳴器60の共鳴胴60aの長さが変化するように構成することが好ましい。
また、勿論、ホイッスルの共鳴胴は変更できなくても良い。このときには、互いに特定周波数帯が異なる複数のホイッスルを用意してもよい。
さらに、共鳴胴の長さを変化させる代わりに、径の異なる集音用の孔が形成された孔部材を用意しておき、それを車両の上壁に対して着脱自在としておき、所望の孔部材を選択することで共鳴器の集音用の孔の面積を変えることによって、共振周波数を変更できるように構成しても良い。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
上記実施形態では、走行体が停止している状態で、ホイッスルが鳴ると走行体が走行し、走行体の走行時に、ホイッスルが鳴ると走行体が停止する場合を説明したが、走行体の走行態様(停止状態も含む)を3段階以上で切り替えられるようにし、ホイッスルが鳴る毎に走行態様(例えば速度)を変化させるようにしても良い。さらには、ホイッスルが鳴る毎に、走行態様と、車内灯の点灯などの他の態様との間で動作態様を切り替えられるように構成しても良い。
【0027】
また、ホイッスルの鳴っている間の時間を検出し、その時間に応じて動作態様を変更させるようにしても良い。
【0028】
さらに、上記実施形態では、ホイッスルを例にして説明したが、外部発音手段は特定周波数帯の発音をできるものであれば、音叉やピアノその他の外部発音手段を使用するができる。
【0029】
また、上記実施形態では、軌道走行玩具を例にして説明したが、動作玩具一般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る動作玩具の一例である軌道走行玩具を概念的に示した斜視図である。
【図2】軌道走行玩具の一部を示す図である。
【図3】軌道走行玩具の回路構成を示す図である。
【図4】軌道走行玩具の出力波形やサンプリングの仕方を示す図である。
【図5】本発明に係る動作玩具の他例の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
100 軌道走行玩具
20b モータ
30a マイクロフォン
70 マイクアンプ
71 コンパレータ
72 コントローラ
73,75 D/Aコンバータ
74 アンプ
76 モータ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定周波数帯の発音を行う外部発音手段と、前記外部発音手段によって動作制御される動作体とを備え、前記動作体には、前記外部発音手段の音に対して共鳴する共鳴器と、前記共鳴器に付設され且つ外部音をピックアップしアナログ信号に変換して出力するマイクロフォンと、前記マイクロフォンから出力された前記アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段からの前記デジタル信号が前記外部発音手段の信号か否かを判定し且つ該デジタル信号が該外部発音手段の信号である場合に前記動作体の動作を制御するコントローラとを備えることを特徴とする動作玩具。
【請求項2】
前記共鳴器はヘルムホルツ共鳴器であることを特徴とする請求項1に記載の動作玩具。
【請求項3】
前記共鳴器は共鳴胴の長さを変更できるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の動作玩具。
【請求項4】
前記外部発音手段はホイッスルであることを特徴とする請求項1から3いずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ホイッスルの音に対応する周波数の倍の周波数に対応する周期でデジタル信号をサンプリングしたときのロジックによって前記デジタル信号が前記ホイッスルの信号か否かを判定するように構成されていることを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項6】
前記外部発音手段の発音の長さ又は回数に応じて前記動作体の動作態様を変更させるコントローラを備えることを特徴とする請求項1から5いずれか一項に記載の動作玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−279177(P2008−279177A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127925(P2007−127925)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】