説明

動力伝達装置

【課題】動力の伝達効率を向上させることができるとともに、変速タイムラグを小さくすることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】エンジンEの駆動力を車輪に対して任意タイミングで伝達又は遮断可能な発進変速クラッチ手段2と、入力と出力とが所定のギア比に設定された複数のギア段クラッチ手段3と、エンジンEから車輪に対する動力伝達時のギア比を任意に設定し得るギア段選択手段5とを具備した動力伝達装置であって、ギア段クラッチ手段3は、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンとを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンの駆動力を車輪に対して任意選択的に伝達又は遮断可能な動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの駆動力を車輪側へ選択的に伝達又は遮断するための動力伝達装置として、手動にて変速操作させるマニュアルトランスミッション(MT)と、トルクコンバータにて自動的に変速操作させるオートマティックトランスミッション(AT)とが挙げられる。このうちATは、変速操作が容易であるものの、トルクコンバータの特性上、伝達効率が悪いという欠点があることから、当該トルクコンバータを有さず変速操作を自動的に行わせるAMT型動力伝達装置が提案されるに至っている。
【0003】
かかるAMT型動力伝達装置は、エンジンと車輪との間の動力伝達系を断続させ得る発進変速クラッチ手段と、入力と出力とが所定のギア比に設定された複数のギア段クラッチ手段とを具備していた。このギア段クラッチ手段は、シンクロ(同期)機構と、ドグクラッチとを具備しており、ドグクラッチを何れかのギア段クラッチ手段に選択的に接続させることにより、エンジンから車輪に対する動力伝達時のギア比を任意に設定し得るよう構成されていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の動力伝達装置においては、ギア段クラッチ手段を構成するシンクロ(同期)機構とドグクラッチとにより任意ギア段を選択してギア比を設定していたので、変速タイムラグが大きくなってしまうという問題があった。即ち、従来の動力伝達装置においては、ギア段を選択するに際し、シンクロ機構による同期を行い、続いてドグクラッチを接続させる必要があったため、その継続動作に比較的大きな時間が必要とされることから、変速タイムラグが大きくなってしまうのである。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、動力の伝達効率を向上させることができるとともに、変速タイムラグを小さくすることができる動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、エンジンの駆動力を車輪に対して任意タイミングで伝達又は遮断可能な発進変速クラッチ手段と、動力伝達系の途中における前記発進変速クラッチ手段と車輪との間に配設され、入力と出力とが所定のギア比に設定された複数のギア段クラッチ手段と、車両の走行状態に応じて前記ギア段クラッチ手段の何れかを選択し、エンジンから前記車輪に対する動力伝達時のギア比を任意に設定し得るギア段選択手段とを具備した動力伝達装置であって、前記ギア段クラッチ手段は、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンとを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記ギア段クラッチ手段は、油圧ピストンの作動方向に応じて異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接させ得るよう構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の動力伝達装置において、トルク増幅機能を有するトルクコンバータを具備するとともに、前記発進変速クラッチ手段は、当該トルクコンバータの駆動伝達系を介して前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達させる第1クラッチ手段と、当該トルクコンバータの駆動伝達系を介さず前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達させる第2クラッチ手段とを有するとともに、車両の状態に応じて当該第1クラッチ手段と第2クラッチ手段とを任意選択して作動させ得る制御手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の動力伝達装置において、前記発進変速クラッチ手段は、偶数段のギア段クラッチ手段と断続可能な偶数段用クラッチ手段と、奇数段のギア段クラッチ手段と断続可能な奇数段用クラッチ手段とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の動力伝達装置において、前記発進変速クラッチ手段は、時間経過に伴って動摩擦係数が連続的に低下する摩擦特性の摩擦材を有するとともに、前記ギア段クラッチ手段は、時間経過に伴う動摩擦係数が前記発進変速クラッチ手段と略同等であり、且つ、経過時間初期の動摩擦係数よりも高いピークを有したルースターテールを示す摩擦特性の摩擦材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ギア段クラッチ手段は、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンとを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されたので、動力の伝達効率を向上させることができるとともに、変速タイムラグを小さくすることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ギア段クラッチ手段は、油圧ピストンの作動方向に応じて異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接させ得るよう構成されたので、異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ手段の油圧ピストンを共用させることができ、動力伝達装置の小型化(特に、軸方向の小型化)を図ることが容易とされるとともに、部品点数を削減してコストを低減させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、発進変速クラッチ手段は、トルクコンバータの駆動伝達系を介してエンジンの駆動力を車輪に伝達させる第1クラッチ手段と、当該トルクコンバータの駆動伝達系を介さずエンジンの駆動力を車輪に伝達させる第2クラッチ手段とを有するとともに、車両の状態に応じて当該第1クラッチ手段と第2クラッチ手段とを任意選択して作動させ得る制御手段を具備したので、変速タイムラグを小さくすることができるのに加え、第1クラッチ手段と第2クラッチ手段とで負荷を分担させることにより発進変速クラッチ手段の負荷を低減させることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、発進変速クラッチ手段は、偶数段のギア段クラッチ手段と断続可能な偶数段用クラッチ手段と、奇数段のギア段クラッチ手段と断続可能な奇数段用クラッチ手段とを有するので、変速タイムラグを小さくすることができるのに加え、偶数段用クラッチ手段と奇数段用クラッチ手段とで負荷を分担させることにより発進変速クラッチ手段の負荷を低減させることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、発進変速クラッチ手段は、時間経過に伴って動摩擦係数が連続的に低下する摩擦特性の摩擦材を有するとともに、ギア段クラッチ手段は、時間経過に伴う動摩擦係数が発進変速クラッチ手段と略同等であり、且つ、経過時間初期の動摩擦係数よりも高いピークを有したルースターテールを示す摩擦特性の摩擦材を有するので、発進変速クラッチ手段及びギア段クラッチ手段のそれぞれに好適な特性を付与させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る動力伝達装置を示す縦断面図
【図2】同動力伝達装置の概念を示す模式図
【図3】同動力伝達装置におけるトルクコンバータ及び発進変速クラッチ手段を示す拡大断面図
【図4】同動力伝達装置におけるギア段クラッチ手段(第1入力軸に形成されたギア段クラッチ手段)を示す拡大断面図
【図5】同動力伝達装置におけるギア段クラッチ手段(第2入力軸に形成されたギア段クラッチ手段)を示す拡大断面図
【図6】同動力伝達装置で適用されるモード表
【図7】同動力伝達装置における(a)発進変速クラッチ手段の摩擦特性、(b)ギア段クラッチ手段の摩擦特性
【図8】本発明の第2の実施形態に係る動力伝達装置を示す縦断面図
【図9】同動力伝達装置の概念を示す模式図
【図10】本発明の第3の実施形態に係る動力伝達装置の概念を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る動力伝達装置は、自動車(車両)のエンジン(駆動源)による駆動力を車輪(駆動輪)に伝達又は遮断するためのものであり、図1及び図2に示すように、トルクコンバータ1と、発進変速クラッチ手段2と、ギア段クラッチ手段3と、制御手段4と、ギア段選択手段5とから主に構成されている。尚、図1は、本実施形態に係る動力伝達装置の主要部を表す縦断面図であり、図2は、同実施形態に係る動力伝達装置を模式化した模式図(概念図)を示すものである。
【0018】
然るに、図1、2に示すように、車両の駆動源としてのエンジンEから車輪(駆動輪D)に至るまでの動力伝達系の途中に、トルクコンバータ1、発進変速クラッチ手段2、及びギア段クラッチ手段3が配設されており、尚、図中、符号11は、エンジンEから延設された入力軸を示しており、符号8は駆動輪Dまで延設された出力軸を示している。このうち、トルクコンバータ1は、エンジンEからのトルクを増幅して駆動輪Dに伝達するトルク増幅機能を有して成るもので、当該エンジンEの駆動力が伝達されて軸回りに回転可能とされるとともにオイル(作動油)を液密状態で収容したトルコンカバー1a、13と、該トルコンカバー1a側に形成されて当該トルコンカバー1aと共に回転するポンプPと、該ポンプPと対峙しつつトルコンカバー13側で回転可能に配設されたタービンTとを主に具備している。
【0019】
また、入力軸11は、カバー部材12を介してトルコンカバー13と連結されている。そして、エンジンEの駆動力にて入力軸11が回転し、カバー部材12、トルコンカバー13、1a及びポンプPが回転すると、その回転トルクが液体(作動油)を介してタービンT側にトルク増幅されつつ伝達される。しかして、トルク増幅されてタービンTが回転すると、該タービンTとスプライン嵌合した第1駆動シャフト15が回転し、ギア段クラッチ手段3を介して駆動輪Dに当該トルクが伝達される。ここで、本発明における「トルクコンバータの駆動伝達系」は、上記したトルコンカバー1a、ポンプP及びタービンTが成す駆動伝達系を指すものである。尚、同図中符号10は、ミッションケースを示している。
【0020】
一方、トルコンカバー13は、コイルスプリングから成るダンパ機構18を介して連結部材14と連結されており、当該連結部材14は、第1入力軸6を介して第2駆動シャフト16と嵌合している。これにより、エンジンEの駆動力にて入力軸11が回転すると、カバー部材12、トルコンカバー13、連結部材14及び第2駆動シャフト16が回転し、ギア段クラッチ手段3にエンジンEの駆動トルクが伝達される。而して、第2駆動シャフト16によれば、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずに駆動輪Dに駆動力を伝達することが可能とされている。
【0021】
上記の如く、第1駆動シャフト15は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力で回転可能とされ、発進変速クラッチ手段2の第1クラッチ手段2aと連結されるとともに、第2駆動シャフト6は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力で直接回転可能とされ、発進変速クラッチ手段2の第2クラッチ手段2bと連結されている。
【0022】
発進変速クラッチ手段2は、エンジンEの駆動力を車輪(駆動輪D)に対して任意タイミングで伝達又は遮断可能なもので、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力を車輪(駆動輪D)に伝達させる第1クラッチ手段2aと、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンの駆動力を車輪(駆動輪D)に伝達させる第2クラッチ手段2bとを有する。これら第1クラッチ手段2a及び第2クラッチ手段2bには、図3で示すように、図中左右方向に対して摺動自在な複数の駆動側クラッチ板2aa、2ba及び被動側クラッチ板2ab、2bbが形成され、多板クラッチを成している。
【0023】
然るに、第1クラッチ手段2aにおいては、第1駆動シャフト15に形成されて連動可能とされた連動部材15aに駆動側クラッチ板2aaが形成されるとともに、筐体17に被動側クラッチ板2abが形成され、これら駆動側クラッチ板2aaと被動側クラッチ板2abとが交互に積層形成されている。これにより、隣り合う駆動側クラッチ板2aaと被動側クラッチ板2abとが圧接又は離間可能となっている。
【0024】
また、第2クラッチ手段2bにおいては、第2駆動シャフト16に形成されて連動可能とされた連動部材16aに駆動側クラッチ板2baが形成されるとともに、筐体17に被動側クラッチ板2bbが形成され、これら駆動側クラッチ板2baと被動側クラッチ板2bbとが交互に積層形成されている。これにより、隣り合う駆動側クラッチ板2baと被動側クラッチ板2bbとが圧接又は離間可能となっている。然るに、ここでいう離間とは、物理的離間に限らず、圧接が解かれた状態のことをいい、圧接状態にて駆動力が伝達されるとともに、離間状態にて当該駆動力の伝達が遮断される。
【0025】
また、かかる発進変速クラッチ手段2は、図3に示すように、同一筐体17内に第1クラッチ手段2a、第2クラッチ手段2b、及び当該第1クラッチ手段2a及び第2クラッチ手段2bに対応する2つの油圧ピストンP1、P2を有するとともに、当該油圧ピストンP1、P2を作動させる油圧を制御することにより、当該第1クラッチ手段2a又は第2クラッチ手段2bを任意選択的に作動可能とされている。
【0026】
即ち、筐体17と油圧ピストンP1との間の油圧室S1に作動油を注入させることにより、油圧ピストンP1がリターンスプリング2cの付勢力に抗して同図中右側へ移動し、その先端で第1クラッチ手段2aを押圧して、駆動側クラッチ板2aaと被動側クラッチ板2abとを圧接させるよう構成されている。尚、第2クラッチ手段2bにおける駆動側クラッチ板2ba及び被動側クラッチ板2bbは、それぞれの周縁に凹凸形状(不図示)が形成されており、その凹部において油圧ピストンP1の先端が挿通されるよう構成されている。
【0027】
また、油圧ピストンP1と油圧ピストンP2との間の油圧室S2に作動油を注入させることにより、油圧ピストンP2がリターンスプリング2cの付勢力に抗して図3中右側へ移動し、その先端で第2クラッチ手段2bを押圧して、駆動側クラッチ板2baと被動側クラッチ板2bbとを圧接させるよう構成されている。これにより、油圧ピストンP1、P2を作動させる油圧を制御することにより、第1クラッチ手段2a又は第2クラッチ手段2bを任意選択的に作動可能とされている。尚、図中符号19は、第1クラッチ手段2a側及び第2クラッチ手段2b側に設けられたストッパを示しており、第2クラッチ2b側に当該ストッパ19を設けることにより、当該第2クラッチ手段2b及び第1クラッチ手段2aが互いに独立して作動し得るよう構成されている。
【0028】
発進変速クラッチ手段2を構成する筐体17は、ギアGaと連結されており、該ギアGaは、出力軸8に形成されたギアと噛み合って構成されている。これにより、第1クラッチ手段2a又は第2クラッチ手段2bにて伝達されたエンジンEの駆動力は、ギアGaを介して出力軸8に伝達され得るようになっている。
【0029】
制御手段4は、各ギア段クラッチ手段3に供給する油圧を制御可能なものであり、車両の状態に応じて第1クラッチ手段2aと第2クラッチ手段2bとを任意選択して作動させ得るよう構成されている。この制御手段4は、後述するギア段選択手段5と同様、例えば車両に搭載されたマイコン等から成るものとされている。
【0030】
ギア段クラッチ手段3は、動力伝達系の途中における発進変速クラッチ手段2と車輪(駆動輪D)との間に配設され、入力(発進変速クラッチ手段2側の回転数)と出力(車輪側の回転数)とが所定のギア比に設定されたものであり、本実施形態においては、ギア段クラッチ手段3a〜3h(1〜7速とリバース(後退)に対応するギア比)の8つが形成されている。尚、図中符号6は第1入力軸、符号7は第2入力軸、符号8は出力軸、及び9はアイドル軸をそれぞれ示しているとともに、ギアGa、Gbは、アイドルギアを示している。
【0031】
より具体的には、第1入力軸6には、図4に示すように、ギア段クラッチ手段3a〜3cが形成されている。ギア段クラッチ手段3aは、交互に積層された駆動側クラッチ板3aa及び被動側クラッチ板3abと、駆動側クラッチ板3aa及び被動側クラッチ板3abを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPaとを具備し、当該駆動側クラッチ板3aa及び被動側クラッチ板3abが圧接すると、ギアG1を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。
【0032】
即ち、油圧室Saに作動油を注入させることにより油圧ピストンPaが同図中左側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3aを押圧して、駆動側クラッチ板3aaと被動側クラッチ板3abとを圧接させるよう構成されているのである。そして、第1入力軸6側の回転力がギアG1を介して出力軸8側に伝達され、これにより、ギアG1の径に対応したギア比にて動力が伝達されることとなる。尚、油圧室Snに作動油を注入させると、油圧ピストンPaが中立位置に戻り、駆動側クラッチ板3aa及び被動側クラッチ板3abが離間するので、ニュートラルとされる。
【0033】
ギア段クラッチ手段3bは、交互に積層された駆動側クラッチ板3ba及び被動側クラッチ板3bbと、駆動側クラッチ板3ba及び被動側クラッチ板3bbを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPbとを具備し、当該駆動側クラッチ板3ba及び被動側クラッチ板3bbが圧接すると、ギアG2を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。また、ギア段クラッチ手段3cは、交互に積層された駆動側クラッチ板3ca及び被動側クラッチ板3cbと、駆動側クラッチ板3ca及び被動側クラッチ板3cbを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPbとを具備し、当該駆動側クラッチ板3ca及び被動側クラッチ板3cbが圧接すると、ギアG3を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。
【0034】
本実施形態においては、油圧室Sbに作動油を注入させることにより油圧ピストンPbが同図中右側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3bを押圧して、駆動側クラッチ板3baと被動側クラッチ板3bbとを圧接させるとともに、油圧室Scに作動油を注入させることにより油圧ピストンPbが同図中左側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3cを押圧して、駆動側クラッチ板3caと被動側クラッチ板3cbとを圧接させるよう構成されている。
【0035】
即ち、作動油を油圧室Sb或いはScの何れかに注入させれば、油圧ピストンPbを左右何れかの方向に選択的に移動させることができ、ギア段クラッチ手段3bと3cとを選択的に作動させ得るよう構成されているのである。これにより、ギア段クラッチ手段3b、3cは、油圧ピストンPbの作動方向に応じて異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接させ得るよう構成されたので、異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ手段の油圧ピストンPbを共用させることができ、動力伝達装置の小型化(特に、軸方向の小型化)を図ることが容易とされるとともに、部品点数を削減してコストを低減させることができる。而して、第1入力軸6側の回転力がギアG2又はG3を介して出力軸8側に伝達され、これにより、ギアG2、G3の径に対応したギア比にて動力が伝達されることとなる。
【0036】
第2入力軸7は、第1入力軸6と連動して回転し得るよう構成されており、当該第2入力軸7には、図5に示すように、ギア段クラッチ手段3d〜3hが形成されている。ギア段クラッチ手段3dは、交互に積層された駆動側クラッチ板3da及び被動側クラッチ板3dbと、駆動側クラッチ板3da及び被動側クラッチ板3dbを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPcとを具備し、当該駆動側クラッチ板3da及び被動側クラッチ板3dbが圧接すると、ギアGrを介してアイドル軸9に駆動力が伝達され、当該アイドル軸9から出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。また、ギア段クラッチ手段3eは、交互に積層された駆動側クラッチ板3ea及び被動側クラッチ板3ebと、駆動側クラッチ板3ea及び被動側クラッチ板3ebを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPcとを具備し、当該駆動側クラッチ板3ea及び被動側クラッチ板3ebが圧接すると、ギアG4を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。
【0037】
本実施形態においては、油圧室Sdに作動油を注入させることにより油圧ピストンPcが同図中右側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3dを押圧して、駆動側クラッチ板3daと被動側クラッチ板3dbとを圧接させるとともに、油圧室Seに作動油を注入させることにより油圧ピストンPcが同図中左側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3eを押圧して、駆動側クラッチ板3eaと被動側クラッチ板3ebとを圧接させるよう構成されている。
【0038】
即ち、作動油を油圧室Sd或いはSeの何れかに注入させれば、油圧ピストンPcを左右何れかの方向に選択的に移動させることができ、ギア段クラッチ手段3dと3eとを選択的に作動させ得るよう構成されているのである。これにより、ギア段クラッチ手段3d、3eは、油圧ピストンPcの作動方向に応じて異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接させ得るよう構成されたので、異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ手段の油圧ピストンPcを共用させることができ、動力伝達装置の小型化(特に、軸方向の小型化)を図ることが容易とされるとともに、部品点数を削減してコストを低減させることができる。而して、第2入力軸7側の回転力がギアGr又はG4を介して出力軸8側に伝達され、これにより、ギアGr、G4の径に対応したギア比にて動力が伝達されることとなる。尚、ギアGrを介して動力が伝達されると、車両は所定のギア比にて後退することとなる。
【0039】
ギア段クラッチ手段3fは、交互に積層された駆動側クラッチ板3fa及び被動側クラッチ板3fbと、駆動側クラッチ板3fa及び被動側クラッチ板3fbを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPdとを具備し、当該駆動側クラッチ板3fa及び被動側クラッチ板3fbが圧接すると、ギアG5を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。
【0040】
即ち、油圧室Sfに作動油を注入させることにより油圧ピストンPfが同図中左側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3fを押圧して、駆動側クラッチ板3faと被動側クラッチ板3fbとを圧接させるよう構成されているのである。そして、第1入力軸6側の回転力がギアG5を介して出力軸8側に伝達され、これにより、ギアG5の径に対応したギア比にて動力が伝達されることとなる。尚、油圧室Snに作動油を注入させると、油圧ピストンPfが中立位置に戻り、駆動側クラッチ板3fa及び被動側クラッチ板3fbが離間するので、ニュートラルとされる。
【0041】
ギア段クラッチ手段3gは、交互に積層された駆動側クラッチ板3ga及び被動側クラッチ板3gbと、駆動側クラッチ板3ga及び被動側クラッチ板3gbを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPeとを具備し、当該駆動側クラッチ板3ga及び被動側クラッチ板3gbが圧接すると、ギアG6を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。また、ギア段クラッチ手段3hは、交互に積層された駆動側クラッチ板3ha及び被動側クラッチ板3hbと、駆動側クラッチ板3ha及び被動側クラッチ板3hbを選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンPeとを具備し、当該駆動側クラッチ板3ha及び被動側クラッチ板3hbが圧接すると、ギアG7を介して出力軸8に駆動力が伝達され得るよう構成されている。
【0042】
本実施形態においては、油圧室Sgに作動油を注入させることにより油圧ピストンPeが同図中右側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3gを押圧して、駆動側クラッチ板3gaと被動側クラッチ板3gbとを圧接させるとともに、油圧室Shに作動油を注入させることにより油圧ピストンPeが同図中左側へ移動し、その先端でギア段クラッチ手段3hを押圧して、駆動側クラッチ板3haと被動側クラッチ板3hbとを圧接させるよう構成されている。
【0043】
即ち、作動油を油圧室Sg或いはShの何れかに注入させれば、油圧ピストンPeを左右何れかの方向に選択的に移動させることができ、ギア段クラッチ手段3gと3hとを選択的に作動させ得るよう構成されているのである。これにより、ギア段クラッチ手段3g、3hは、油圧ピストンPeの作動方向に応じて異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接させ得るよう構成されたので、異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ手段の油圧ピストンPeを共用させることができ、動力伝達装置の小型化(特に、軸方向の小型化)を図ることが容易とされるとともに、部品点数を削減してコストを低減させることができる。而して、第2入力軸7側の回転力がギアG6又はG7を介して出力軸8側に伝達され、これにより、ギアG6、G7の径に対応したギア比にて動力が伝達されることとなる。
【0044】
ギア段選択手段5は、各ギア段クラッチ手段3に供給する油圧を制御可能なものであり、車両の走行状態に応じて当該ギア段クラッチ手段3(本実施形態においてはギア段クラッチ手段3a〜3h)の何れかを選択し、エンジンから車輪(駆動輪D)に対する動力伝達時のギア比を任意に設定し得るものであり、例えば車両に搭載されたマイコン等から成る。
【0045】
然るに、制御手段4及びギア段選択手段5は、図6に示すように、予め設定されたモードに従って発進変速クラッチ手段2及びギア段クラッチ手段3を選択的に作動させるものとされる。例えば同図(3)に示すように、ニュートラル条件としてニュートラル1〜3のモードを設定することができ、同図(5)に示すように、発進条件として発進1、2のモードを設定することができる。また、同図(6)に示すように、走行条件としての前進段1走行1〜3のモードを設定することができる。このように、複数のモードを設定し得るので、例えば温度、油温条件等によりモードを任意選択することができ、よりスムーズ且つ最適な制御を可能とすることができる。
【0046】
ここで、本実施形態においては、変速時、エンジントルクとエンジン慣性トルクとを吸収させる発進変速クラッチ手段2と、エンジントルクの伝達及びミッション慣性トルクを吸収可能なギア段クラッチ手段3とを有したものとされていることから、発進変速クラッチ手段2(第1クラッチ手段2a及び第2クラッチ手段2b)における駆動側クラッチ板2aa、2ba及び被動側クラッチ板2ab、2bbの摩擦特性と、ギア段クラッチ手段3(ギア段クラッチ手段3a〜3h)における駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板の摩擦特性とは、図7に示すように、互いに異なったものとされている。
【0047】
即ち、発進変速クラッチ手段2における駆動側クラッチ板2aa、2ba及び被動側クラッチ板2ab、2bbは、同図(a)で示すように、自励振動が発生しない摩擦特性(即ち、時間経過に伴って動摩擦係数が連続的に低下する摩擦特性)を有した摩擦材から成るものとされ、例えば綿、木材などの繊維や合成繊維等に無機、有機の摩擦性能向上材を配合し、抄造したベースにフェノール系レジンを含浸、硬化したものが挙げられる。かかる摩擦材を発進変速クラッチ手段2における駆動側クラッチ板2aa、2ba及び被動側クラッチ板2ab、2bbに適用すれば、高摩擦係数とすることができ、面圧、温度、周速に対する安定性に優れたものとすることができる。
【0048】
これに対し、ギア段クラッチ手段3における駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板は、同図(b)で示すように、発進変速クラッチ手段2の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と略同等の動摩擦係数(動μ)とされ、且つ、経過時間初期の動摩擦係数よりも高いピークを有したルースターテール(時間経過に伴って上昇傾向)を示す摩擦特性(図中符号Aで示す摩擦特性)の摩擦材から成るものとされ、例えばコルク粉をゴムまたはレジンをバインダとして結合したもので、比重が小さく、弾性を有したものが挙げられる。かかる摩擦材をギア段クラッチ手段3における駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板に適用すれば、油中摩擦における摩擦係数を高いものとすることができる。
【0049】
上記の如く摩擦材を選択して利用することにより、発進変速クラッチ手段及びギア段クラッチ手段のそれぞれに好適な特性を付与させることができる。即ち、本実施形態の如く、発進変速クラッチ手段2にはエンジントルク及びエンジン慣性トルクが付与されるのに対し、ギア段クラッチ手段3にはミッション慣性トルク及び伝達トルク(静μ)が付与されることとなるので、熱容量の小さなギア段クラッチ手段3とすることができ、小型化を図ることができる。
【0050】
上記実施形態によれば、ギア段クラッチ手段3は、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストン(Pa〜Pe)とを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されたので、特にATタイプのものと比べて、動力の伝達効率を向上させることができるとともに、AMTタイプのものと比べて、変速タイムラグを小さくすることができる。
【0051】
また、発進変速クラッチ手段3は、トルクコンバータ1の駆動伝達系を介してエンジンEの駆動力を車輪に伝達させる第1クラッチ手段2aと、当該トルクコンバータ1の駆動伝達系を介さずエンジンEの駆動力を車輪に伝達させる第2クラッチ手段2bとを有するとともに、車両の状態に応じて当該第1クラッチ手段2aと第2クラッチ手段2bとを任意選択して作動させ得る制御手段4を具備したので、変速タイムラグを小さくすることができるのに加え、第1クラッチ手段2aと第2クラッチ手段2bとで負荷を分担させることにより発進変速クラッチ手段2の負荷を低減させることができる。
【0052】
更に、本実施形態によれば、ギア段クラッチ手段3(ギア段クラッチ手段3a〜3h)において、油圧ピストン(Pa〜Pe)に対して付与される油圧のキャンセラー室と油圧室とを共用させていることから、当該キャンセラー室を不要とすることができ、動力伝達装置における更なる小型化を図ることができる。また、ギア段クラッチ手段3(ギア段クラッチ手段3a〜3h)における駆動側クラッチ板又は被動側クラッチ板を波形のもの(ウェーブ量を持たせたもの)とするのが好ましく、その場合、リターンスプリングを不要としつつ駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を離間させることができるとともに、非作動時の接触面積を低減させてフリクションを低減させることができる。
【0053】
また更に、シンクロ(同期)機構とドグクラッチとにより任意ギア段を選択してギア比を設定していた従来のものに比べ、シンクロ音を低減させることができるとともに、ドグクラッチの噛み込み音の発生を回避させることができる。尚、本実施形態によれば、所謂飛変速(例えば1段から3段といった連続しない段への変速)も容易に可能とすることができる。
【0054】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る動力伝達装置は、第1の実施形態と同様、自動車(車両)のエンジン(駆動源)による駆動力を車輪(駆動輪)に伝達又は遮断するためのものであり、図8及び図9に示すように、発進変速クラッチ手段2’と、ギア段クラッチ手段3と、制御手段4と、ギア段選択手段5と、ダンパ機構18’とから主に構成されている。尚、図8は、本実施形態に係る動力伝達装置の主要部を表す縦断面図であり、図9は、同実施形態に係る動力伝達装置を模式化した模式図(概念図)を示すものである。また、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0055】
発進変速クラッチ手段2’は、エンジンEの駆動力を車輪(駆動輪D)に対して任意タイミングで伝達又は遮断可能なもので、図8に示すように、油圧ピストンP’と、該油圧ピストンP’を図中右側に移動させるための油圧室S’と、駆動側クラッチ板2’a及び被動側クラッチ板2’bとを有して構成されており、油圧室S’に作動油を注入させることにより油圧ピストンP’を移動させて駆動側クラッチ板2’aと被動側クラッチ板2’bとを圧接させるよう構成されている。而して、発進変速クラッチ手段2’は、第1の実施形態と同様、制御手段4による制御で任意タイミングにてエンジンEの駆動力を伝達又は遮断させることができる。
【0056】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、ギア段クラッチ手段3は、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストン(Pa〜Pe)とを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されたので、動力の伝達効率を向上させることができるとともに、変速タイムラグを小さくすることができる。
【0057】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る動力伝達装置は、第1、2の実施形態と同様、自動車(車両)のエンジン(駆動源)による駆動力を車輪(駆動輪)に伝達又は遮断するためのものであり、図10に示すように、発進変速クラッチ手段2”と、ギア段クラッチ手段3’と、制御手段4と、ギア段選択手段5と、ダンパ機構18’とから主に構成されている。尚、図10は、本実施形態に係る動力伝達装置を模式化した模式図(概念図)を示すものである。また、第1、2の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0058】
本実施形態におけるギア段クラッチ手段3’は、ギア段クラッチ手段3’a(2、4段)、3’b(6速、及びR(リバース))が偶数段とされるとともに、ギア段クラッチ手段3’c(1、3段)、3’d(5、7段)が奇数段とされている。各ギア段クラッチ手段(3’a〜3’d)の具体的構成は、第1、第2の実施形態と同様、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンとを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されている。
【0059】
ここで、本実施形態における発進変速クラッチ手段2”は、偶数段のギア段クラッチ手段(3’a、3’b)と断続可能な偶数段用クラッチ手段2”aと、奇数段のギア段クラッチ手段(3’c、3’d)と断続可能な奇数段用クラッチ手段2”bとを有している。従って、本実施形態によれば、上記第1、第2の実施形態と同様、変速タイムラグを小さくすることができるのに加え、偶数段用クラッチ手段2”aと奇数段用クラッチ手段2”bとで負荷を分担させることにより発進変速クラッチ手段2”の負荷を低減させることができる。
【0060】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えばギア段クラッチ手段は、油圧ピストンを共用させないもの(即ち、それぞれのギア段クラッチ手段に油圧ピストンが配設されたもの)としてもよい。また、ギア段クラッチ手段のレイアウトについては何れのものであってもよく、その個数(即ち、変速し得る段数)も複数であれば何れのもの(例えば1〜3段のもの或いは1〜4段のもの)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
ギア段クラッチ手段は、交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンとを具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成された動力伝達装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 トルクコンバータ
2、2’、2” 発進変速クラッチ手段
2a 第1クラッチ手段
2b 第2クラッチ手段
2”a 偶数段用クラッチ手段
2”b 奇数段用クラッチ手段
3 ギア段クラッチ手段
4 制御手段
5 ギア段選択手段
6 第1入力軸
7 第2入力軸
8 出力軸
9 アイドル軸
10 ミッションケース
11 入力軸
12 カバー部材
13 トルコンカバー
14 連結部材
15、16 連動部材
17 筐体
18 ダンパ機構
19 ストッパ
E エンジン
D 駆動輪(車輪)
Pa〜Pe 油圧ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動力を車輪に対して任意タイミングで伝達又は遮断可能な発進変速クラッチ手段と、
動力伝達系の途中における前記発進変速クラッチ手段と車輪との間に配設され、入力と出力とが所定のギア比に設定された複数のギア段クラッチ手段と、
車両の走行状態に応じて前記ギア段クラッチ手段の何れかを選択し、エンジンから前記車輪に対する動力伝達時のギア比を任意に設定し得るギア段選択手段と、
を具備した動力伝達装置であって、
前記ギア段クラッチ手段は、
交互に積層された駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、
当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接又は離間動作させるべく油圧で作動し得る油圧ピストンと、
を具備し、当該駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板が圧接して所定のギア比にて動力が伝達され得るよう構成されたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記ギア段クラッチ手段は、油圧ピストンの作動方向に応じて異なるギア比の駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を選択的に圧接させ得るよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
トルク増幅機能を有するトルクコンバータを具備するとともに、前記発進変速クラッチ手段は、当該トルクコンバータの駆動伝達系を介して前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達させる第1クラッチ手段と、当該トルクコンバータの駆動伝達系を介さず前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達させる第2クラッチ手段とを有するとともに、車両の状態に応じて当該第1クラッチ手段と第2クラッチ手段とを任意選択して作動させ得る制御手段を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記発進変速クラッチ手段は、偶数段のギア段クラッチ手段と断続可能な偶数段用クラッチ手段と、奇数段のギア段クラッチ手段と断続可能な奇数段用クラッチ手段とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記発進変速クラッチ手段は、時間経過に伴って動摩擦係数が連続的に低下する摩擦特性の摩擦材を有するとともに、前記ギア段クラッチ手段は、時間経過に伴う動摩擦係数が前記発進変速クラッチ手段と略同等であり、且つ、経過時間初期の動摩擦係数よりも高いピークを有したルースターテールを示す摩擦特性の摩擦材を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−203591(P2010−203591A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52769(P2009−52769)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000128175)株式会社エフ・シー・シー (109)
【Fターム(参考)】