説明

動力伝達装置

【課題】高分子アクチュエータを用いた動力伝達装置の設計自由度を向上させる。
【解決手段】動力伝達装置は、2つの回転要素を連結自在な係合機構を備える。係合機構は、高分子アクチュエータ5で作動する。高分子アクチュエータ5は、固定部材1に設けられた磁界発生手段71が発生させる磁界の影響を受けて電力を発生させる受電手段61から電力が供給されることにより伸縮し、係合機構を係合させる。又、高分子アクチュエータ5が係合機構を係合させる際に受ける反力により発生する起電力に応じた信号を無線送信手段64で無線受信手段81に送信し、制御手段8が逆起電力から係合機構の実際の係合力を把握し、磁界発生手段71の磁界の強さを調節するフィードバック制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子アクチュエータで作動される係合機構を備える動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源から伝達される駆動力を左右の駆動輪に分配する動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この動力伝達装置は、駆動源から伝達される駆動力を左右の駆動輪に分配する差動機構と、左右の駆動輪へ伝達される駆動力の配分比を切り換える動力配分比制御機構とを備える。
【0003】
差動機構は、右側の駆動輪に右車軸を介して連結されるサンギヤと、駆動力が入力されるリングギヤと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤに噛合し他方がリングギヤに噛合するピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなるダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。差動機構のキャリアには、左側の駆動輪が左車軸を介して連結されている。
【0004】
動力配分比制御機構は、差動機構のキャリアに連結する第1サンギヤと、右車軸に固定され第1サンギヤよりも少ない歯数の第2サンギヤと、右車軸に回転自在に軸支され第2サンギヤよりも少ない歯数の第3サンギヤと、第1サンギヤに噛合する小径部と第2サンギヤに噛合する中径部と第3サンギヤに噛合する大径部とを有する段付きピニオンと、段付きピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなる複式遊星歯車機構を備える。
【0005】
又、動力配分比制御機構は、係合機構として、キャリアをケースに固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在な第1多板ブレーキと、第3サンギヤをケースに固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在な第2多板ブレーキとを備える。
【0006】
このように構成することにより、第1多板ブレーキを固定状態とすれば、右側の駆動輪に伝達させる駆動力を左側よりも大きくすることができ、第2多板ブレーキを固定状態とすれば、左側の駆動輪に伝達させる駆動力を右側よりも大きくすることができる。
【0007】
係合機構たる第1及び第2多板ブレーキは、高分子アクチュエータにより、固定状態と開放状態とが切り換えられる。高分子アクチュエータは、電圧を印加することにより体積が増加するものであり、この体積増加を利用してピストンで多板ブレーキのプレートを押圧することにより、多板ブレーキを固定状態に切り換えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−155871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高分子アクチュエータを伸縮させるためには電力を供給する必要があるため、高分子アクチュエータと電源とを接続するリード線を配線する必要がある。
【0010】
従来の動力伝達装置では、係合機構はブレーキだけであるため、高分子アクチュエータを回転することのないケース側に設ければ、高分子アクチュエータ用のリード線の配置は比較的容易である。
【0011】
しかしながら、2つの回転要素を連結される係合機構に高分子アクチュエータを用いる場合には、高分子アクチュエータは、一方の回転要素に設ける必要がある。この場合、高分子アクチュエータが回転要素と共に回転することとなるため、電源と接続するためのリード線を設けることができない。
【0012】
従って、従来のものでは、高分子アクチュエータで作動させることができる係合機構としては、ブレーキに限られてしまい、動力伝達装置の設計自由度が低いという不都合があった。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑み、高分子アクチュエータを用いた動力伝達装置において、設計自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、車両に対して回転自在に設けられる第1と第2の2つの回転要素と、該第1回転要素と該第2回転要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切り換え自在な係合機構とを備える動力伝達装置において、前記第1回転要素又は前記第2回転要素に連結されると共に、供給される電力に応じて伸縮自在に構成され、当該伸縮によって前記係合機構の連結状態と開放状態とを切り換えられる高分子アクチュエータと、前記車両に対して回転不能に設けられた固定部材と、該固定部材に設けられ、電力が供給されることにより磁界を発生させる磁界発生手段と、前記磁界発生手段に供給する電力を制御する制御手段と、前記第1回転要素又は前記第2回転要素に設けられ、前記磁界発生手段により発生された磁界により電力を発生させる受電手段と、前記高分子アクチュエータが縮むときに発生する逆起電力を検出し、当該逆起電力に応じた所定信号を無線で送信する無線送信手段と、該無線送信手段から送信された所定信号を受信し、受信した所定信号に基づいて電気信号を前記制御手段に送信する無線受信手段とを備え、前記高分子アクチュエータは、前記受電手段により発生した電力が供給されることにより伸縮され、前記制御手段は、前記無線受信手段から受信した電気信号に基づいて前記磁界発生手段に供給する電力を調節することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、磁界発生手段により発生された磁界により受電手段が電力を発生させ、この電力を用いて高分子アクチュエータが伸縮する。このため、高分子アクチュエータに非接触で電力を供給させることができ、高分子アクチュエータを第1と第2の回転要素を互いに連結させる係合機構に用いることができ、動力伝達装置の設計自由度を向上させることができる。
【0016】
又、高分子アクチュエータは、縮むときにマイナスイオンを放出し逆起電力を発生させる性質に着目し、本発明では、高分子アクチュエータで発生する逆起電力を検出し、検出された逆起電力に応じて所定信号を無線で送信する無線送信手段と、所定信号を受信し、これを電気信号に変換して制御手段に送信する無線受信手段とを設け、制御手段は受信した電気信号に基づき磁界発生手段に供給する電力を調節するように構成している。
【0017】
固定部材に設けられた磁界発生手段と、回転要素に連結された受電手段との間には、隙間(エアギャップ)が存在するため、磁界発生手段に供給する電力又は磁界発生手段で発生される磁束から想定される係合機構への押圧力と、係合機構に実際に加わる押圧力との間には、誤差が生じる。
【0018】
上記の如く構成される本発明によれば、高分子アクチュエータが係合機構に押圧力を加える際に発生する逆起電力に基づいて、実際の押圧力を推定することができ、制御手段による係合機構の制御精度を向上させることができる。
【0019】
尚、本明細書中で記載する「無線」は、電波によるもののみならず、光や音波などによるものを含むものとして定義する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の動力伝達装置を示すスケルトン図。
【図2】実施形態の係合機構を示す断面図。
【図3】実施形態の動力伝達装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜3を参照して、本発明の実施形態の動力伝達装置を説明する。本実施形態の動力伝達装置は、前輪駆動車両に設けられるものであり、図1に示すように、変速機(図示省略)のケース1の中に配置される差動機構D及び配分比制御機構Tとを備える。
【0022】
差動機構Dは、ケース1に回転自在に配置され、外周面に図外の変速機の出力ギヤと噛合する外歯21aを有するデフドラム21と、デフドラム21内に配置される左右一対のアウターサイドギヤ22L,22Rと、アウターサイドギヤ22L,22Rの内方に配置されるインナーサイドギヤ23L,23Rとを備える。
【0023】
又、差動機構Dは、デフドラム21の内周面から径方向内方に伸びるデフシャフト24に回転自在に軸支されると共に、アウターサイドギヤ22L,22Rと噛合するアウターべベルギヤ25と、デフシャフト24に回転自在に軸支されると共にアウターべベルギヤ25の内端側に連結され、インナーサイドギヤ23L,23Rと噛合するインナーべベルギヤ26とを備える。アウターベベルギヤ25とインナーベベルギヤ26との歯数は同一に設定されている。
【0024】
又、デフドラム21内には、サイドギヤ22L,22R,23L,23Rを左右方向で挟むように配置される左右一対の遊星歯車機構PGL,PGRが配置させている。両遊星歯車機構PGL,PGRは、サンギヤSL,SRと、リングギヤRL,RRと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSL,SRに噛合し、他方がリングギヤRL,RRに噛合する一対のピニオンPL,PL’,PR,PR’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCL,CRとからなるダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
【0025】
左インナーサイドギヤ23Lは、左遊星歯車機構PGLのサンギヤSLと連結されると共に、左車軸3Lを介して左前輪WFLに連結される。右インナーサイドギヤ23Rは、右遊星歯車機構PGRのサンギヤSRと連結されると共に、右車軸3Rを介して右前輪WFRに連結される。又、左アウターサイドギヤ22Lは、左遊星歯車機構PGLのキャリアCLと連結され、右アウターサイドギヤ22Rは、右遊星歯車機構PGRのキャリアCRと連結されている。
【0026】
又、デフドラム21内には、各遊星歯車機構PGL,PGRのリングギヤRL,RRとデフドラム21とを連結する連結状態、この連結を断つ開放状態とに切換自在な係合機構たる多板クラッチCLL,CLRが設けられている。
【0027】
両多板クラッチCLL,CLRは、デフドラム21の内周面にスプライン結合される複数のアウタープレート41と、アウタープレート41間に配置されると共に、遊星歯車機構PGL,PGRのリングギヤRL,RRとスプライン結合される複数のインナープレート42と、左右方向の最も内側に位置するアウタープレート41の内側への移動を阻止するサークリップ43と、左右方向の最も外側に位置するアウタープレート41を内側へ押圧するためのピストン44(図2参照)とを備える。
【0028】
実施形態の配分比制御機構Tは、左右一対の多板クラッチCLL,CLR及び左右一対の遊星歯車機構PGL,PGRで構成される。
【0029】
図2に示すように、両ピストン44の左右方向外側には、高分子アクチュエータ5,5が夫々配置されている。各高分子アクチュエータ5は、断面コ字状で左右方向内側が開口する環状のシリンダ51と、シリンダ51内に収納されたチューブ型環状のゴム製の弾性容器52とを夫々備える。ピストン44はシリンダ51内に挿入され、シリンダ51内に配置された弾性容器52と接触している。
【0030】
弾性容器52には、径方向外側に配置されたアクリルアミドゲル等のゲル状の電場応答性体積相転移高分子53aと、径方向内側に配置された電解質ゲル53bとが封入される。電場応答性体積相転移高分子53aと電解質ゲル53bとは、その間に仕切りを設けなくても相互に混ざり合うことはない。弾性容器52の内面には、電場応答性体積相転移高分子53aに接触するプラス電極54aと、電解質ゲル53bに接触するマイナス電極54bとが設けられている。
【0031】
高分子アクチュエータ5,5の左右方向外側には、ケース1の内面に対向させてデフドラム21に固定される受電手段たる受電コイル61が複数設けられている。受電コイル61は、車軸3L,3Rを中心に周方向に間隔を存して直列に配置されている。
【0032】
ケース1には、受電コイル61に対向させて磁界発生手段たる給電コイル71が設けられている。受電コイル61と給電コイル71との隙間(エアギャップ)は出来るだけ小さく(例えば、0.7mm以下)することが好ましい。
【0033】
図3に、本実施形態の固定部材たるケース1側に設けられた給電コイル71を備える給電回路7と、回転要素たるデフドラム21側に設けられた受電コイル61を備える受電回路6を模式的に示す。
【0034】
給電回路7は、電源72と給電コイル71とスイッチング制御部73とが直列に接続されて構成される。又、給電回路7には、電源72と並列にコンデンサ74が設けられている。
【0035】
電源72は、制御手段たるECU8の指示信号に基づく電圧を出力する。スイッチング制御部73は、ECU8の指示信号に基づき、給電コイル71と電源72とを接続させる接続状態と、この接続を断つ遮断状態とに切換自在に構成されている。即ち、スイッチング制御部73は、接続状態と遮断状態とを交互に切り換えることで、直流を交流に変換する。
【0036】
受電回路6は、受電コイル61と整流回路62と平滑回路63と負荷としての高分子アクチュエータ5とを備える。又、受電回路6には、発光ダイオード64が高分子アクチュエータ5と並列に設けられている。発光ダイオード64が設けられた回路部分には、増幅回路65とV−F回路66とで制御される可変抵抗器(図示省略)が介設されている。
【0037】
この可変抵抗器は、高分子アクチュエータ5で発生した逆起電力を検出するアクチュエータ逆起電力検出部67の出力電圧を増幅回路65で増幅させて、V−F変換回路66で電圧をパルス信号(周波数)に変換し、このパルス信号に基づいて抵抗を変化させる。これにより、発光ダイオード64がパルス信号に基づいて所定の発光パターンで点灯(点滅)する。
【0038】
ケース1には、発光ダイオード64の発光パターンを電気信号に変換しECU8に送信するフォトレジスタ81が設けられている。実施形態では、発光ダイオード64が本発明の無線送信手段に該当し、フォトレジスタ81が本発明の無線受信手段に該当する。
【0039】
又、ECU8は、回転数検出部82から第1回転要素たるデフドラム21の回転速度を示す信号を受信することができるように構成されている。回転数検出部82は、図外の車両速度センサや駆動輪の回転速度センサなどからデフドラム21の回転速度を求め、ECU8の要求信号に応じて、デフドラム21の回転速度を示す信号を送信する。
【0040】
次に、以上の如く構成される高分子アクチュエータ5の作動を説明する。
【0041】
ECU8は、多板クラッチCLL,CLRを連結状態とする場合には、先ず、回転数検出部82からの信号に基づき、デフドラム21が回転しているか否かをチェックする。デフドラム21が回転していない場合には、電源72で電圧を印加させると共に、スイッチング制御部73で直流を交流に変換させる。デフドラム21が回転している場合には、回転速度に応じて電源72の出力電圧を調整する。
【0042】
給電コイル71に電圧が印加されると磁界が発生し、受電コイル61で電圧が発生する。そして、高分子アクチュエータ5に電圧が印加され、電解質ゲル53b中のマイナスイオンが電場応答性体積相転移高分子53aに取り込まれ、電場応答性体積相転移高分子53aが膨張する。これにより、ピストン44がプレート41,42をサークリップ43に押し付けるように押圧力が発生し、多板クラッチCLL,CLRが、デフドラム21とリングギヤRL,RRとを連結させる連結状態となる。
【0043】
ここで、電場応答性体積相転移高分子53aが膨張する際には、ピストン44からの反力を受けるため、電場応答性体積相転移高分子53aの一部が収縮し、電場応答性体積相転移高分子53aから電解質ゲル53bにマイナスイオンを放出して、比較的低い逆起電力が発生する。
【0044】
この逆起電力をアクチュエータ逆起電力検出部67で検出し、増幅回路65で増幅させてV−F回路でパルス信号に変換し、パルス信号に応じて可変抵抗の抵抗値を切り換え、発光ダイオード64が逆起電力に応じた所定の発光パターンで発光する。発光ダイオード64の発光パターンは、フォトレジスタ81で電気信号に変換されてECU8に送信される。
【0045】
ECU8は、フォトレジスタ81から受信した電気信号から高分子アクチュエータ5で発生した逆起電力を把握し、ピストン44が目標の押圧力を出力できているかを判断する。ECU8は、目標の押圧力からずれていると判断した場合には、目標の押圧力が得られるように電源72の出力電圧を調整する。
【0046】
以上のように、高分子アクチュエータ5が制御されることにより、多板クラッチCLL,CLRの制御性度を向上させることができる。
【0047】
次に、実施形態の動力伝達装置の旋回時における作動を説明する。
【0048】
動力伝達装置は、車両が右旋回している場合には、外輪となる左前輪WFLの回転速度を増速させるべく左多板クラッチCLLを係合させる。左多板クラッチCLLを係合させると、外歯21aを介してデフドラム21に入力される入力トルクTEは、左多板クラッチCLLが連結状態となることにより、リングギヤRLとデフシャフト24とに分散される。リングギヤRLに伝達されるトルクをΔTとすると、デフシャフト24に伝達されるトルクは(TE−ΔT)となる。
【0049】
リングギヤRLに伝達されたトルクΔTは、サンギヤSLとキャリアCLとに分散される。サンギヤSLに伝達されるトルクをΔTsとすると、キャリアCLに伝達されるトルクは(ΔT−ΔTs)となる。
【0050】
従って、デフドラム21からデフシャフト24に伝達されたトルク(TE−ΔT)には、キャリアCLから左アウターサイドギヤ22L及びアウターベベルギヤ25を介してデフシャフト24に伝達されるトルク(ΔT−ΔTs)が加算され、デフシャフト24のトルクは(TE−ΔTs)となる。
【0051】
このデフシャフト24のトルク(TE−ΔTs)は、左右のインナーベベルギヤ23L,23Rを介して各駆動輪側に等しく分配され、デフシャフト24から各駆動輪に伝達されるトルクは(TE−ΔTs)/2となる。左前輪WFLには、デフシャフト24からのトルク(TE−ΔTs)/2に加えて、サンギヤSLからのトルクΔTsが加算される。
【0052】
従って、外輪となる左前輪WFLに伝達されるトルクは(TE+ΔTs)/2、内輪となる右前輪WFRに伝達されるトルクは(TE−ΔTs)/2となり、左前輪WFLの回転が増加し、車両をスムーズに旋回させることができる。
【0053】
車両が左旋回している場合には、外輪となる右前輪WFRの回転速度を増加させるべく右多板クラッチCLRを係合させる。これにより、右旋回のときと同様に、外輪となる右前輪WFRに伝達されるトルクは(TE+ΔTs)/2、内輪となる左前輪WFLに伝達されるトルクは(TE−ΔTs)/2となり、右前輪WFLの回転が増加し、車両をスムーズに旋回させることができる。
【0054】
実施形態の動力伝達装置によれば、磁界発生手段たる給電コイル71により発生された磁界により受電手段たる受電コイル61が電力(電圧、電流)を発生させ、この電力を用いて高分子アクチュエータ5が伸縮する。このため、高分子アクチュエータ5に非接触で電力を供給させることができ、高分子アクチュエータ5を第1回転要素たるデフドラム21と第2回転要素たるリングギヤRL,RRを互いに連結させる係合機構たる多板クラッチCLL,CLRに用いることができ、動力伝達装置の設計自由度を向上させることができる。
【0055】
尚、実施形態においては、無線送信手段として発光ダイオード64、無線受信手段としてフォトレジスタ81を用い、無線通信として光によるものを用いたが、本発明の無線送信手段及び無線受信手段はこれに限らず、無線通信ができるものであれば、他のものを用いても本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…変速機ケース、21…デフドラム、21a…外歯、22L…左アウターサイドギヤ、22R…右アウターサイドギヤ、23L…左インナーサイドギヤ、23R…右インナーサイドギヤ、24…デフシャフト、25…アウターベベルギヤ、26…インナーベベルギヤ、3L…左車軸、3R…右車軸、41…アウタープレート、42…インナープレート、43…サークリップ、44…ピストン、5…高分子アクチュエータ、51…シリンダ、52…弾性容器、53a…電場応答性体積相転移高分子、53b…電解質溶液、54a…プラス電極、54b…マイナス電極、6…受電回路、61…受電コイル(受電手段)、62…整流回路、63…平滑回路、64…発光ダイオード(無線送信手段)、65…増幅回路、66…V−F回路、67…アクチュエータ逆起電力検出部、7…給電回路、71…給電コイル(磁界発生手段)、72…電源、73…スイッチング制御部、74…コンデンサ、8…ECU(制御手段)、81…フォトレジスタ(無線受信手段)、82…回転数検出部、9…、10…、11…、12…、13…、14…、D…差動機構、T…配分比制御機構、PGL…左遊星歯車機構、SL…サンギヤ、CL…キャリア、RL…リングギヤ、PL,PL’…ピニオン、PGR…右遊星歯車機構、SR…サンギヤ、CR…キャリア、RR…リングギヤ、PR,PR’…ピニオン、WFL…左前輪、WFR…右前輪、CLL…左多板クラッチ、CLR…右多板クラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して回転自在に設けられる第1と第2の2つの回転要素と、
該第1回転要素と第2回転要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切り換え自在な係合機構とを備える動力伝達装置において、
前記第1回転要素又は前記第2回転要素に連結されると共に、供給される電力に応じて伸縮自在に構成され、当該伸縮によって前記係合機構の連結状態と開放状態とを切り換えられる高分子アクチュエータと、
前記車両に対して回転不能に設けられた固定部材と、
該固定部材に設けられ、電力が供給されることにより磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記磁界発生手段に供給する電力を制御する制御手段と、
前記第1回転要素又は前記第2回転要素に設けられ、前記磁界発生手段により発生された磁界により電力を発生させる受電手段と、
前記高分子アクチュエータが縮むときに発生する逆起電力を検出し、当該逆起電力に応じた所定信号を無線で送信する無線送信手段と、
該無線送信手段から送信された所定信号を受信し、受信した所定信号に基づいて電気信号を前記制御手段に送信する無線受信手段とを備え、
前記高分子アクチュエータは、前記受電手段により発生した電力が供給されることにより伸縮され、
前記制御手段は、前記無線受信手段から受信した電気信号に基づいて前記磁界発生手段に供給する電力を調節することを特徴とする動力伝達装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−106564(P2011−106564A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261863(P2009−261863)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】