説明

包装容器とその製造方法

【課題】簡単な方法により短時間で凹凸が形成された合成樹脂製の容器を形成可能な包装容器とその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製の一枚のブランクシート16から一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、箱体形成片には加熱したスタンプ版18を押圧して形成された凸部14を備える。スタンプ版18は、縦横に対称な複数の線状の形状であり、凸部14は、スタンプ版18に接触した部分の外側がブランクシート16に対して一定深さにくぼんだ側周面14aと、側周面14aの先端に連続し押圧面に対して略平行な端面14bから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に凹凸が形成された合成樹脂製の包装容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品を収容して店頭に陳列する包装容器には、紙や合成樹脂で作られたブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片を組み立てて作られるものがある。このような包装容器には、消費者に強い印象を与えるように、文字や模様をシート表面から立体的に浮き上がらせて形成するものがある。ブランクシートが紙製の場合は塑性変形しやすく、エンボス加工により簡単に凹凸を設けることができる。一方、ブランクシートが合成樹脂の場合は、シート状のまま折り曲げて箱体を形成していた。また、ブリスターケースのように、凹形状や凸形状の型を用いて真空成型し、内容物の形状に沿った凹部を形成して、内容物をがたつきなく包装したものもある。
【0003】
その他、特許文献1には、所定の間隔を開けて立体形状が連結する連続真空成形複合板の製造装置が開示されている。この真空成形装置は、所定間隔で連結壁または連通溝を形成する多数の凹部又は凸形状の立方体の並ぶ細孔のある金属板の成形基盤を製作し、これを空気吸引機構に通じる円筒又は多面筒体のロールに貼り付けて回転させ、軟化させた樹脂シートを真空成形するものである。或いは、多数の成形基盤をベルト状に接続して、下部に空気吸引装置をおいて二つの円筒状のドラム間に張って回転させて、真空成形するものである。
【0004】
また、特許文献2に開示されている包装容器の成形方法は、真空成形や圧空成形において、両端の固定側金型とこれに対応する成形側金型とを先行して閉型することによって、また両端側の外周部のみが楕円形状などの凸状部を有する各々の包装容器の外周部に相当する位置で樹脂シートを固定するようにしたものである。さらに両端の予備成形プラグの押し出し中心軸のみをそれぞれ反両端側にずらして押し出すことによって、特に複数個の両端の包装容器の、開口フランジ部や側壁部や底部などの寸法や厚さのばらつきを解決したものである。
【特許文献1】特開2004−237736号公報
【特許文献2】特開平5−177698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術の場合、合成樹脂のシートに凹凸を形成するときは、軟化したシートを成形する立体的な凹凸型と、凹凸型とシートの間を真空にする真空装置が必要であり、大きい設備が必要でありコストがかかっていた。さらに、真空にするため加工スピードが遅く、時間もかかっていた。また、包装容器に凹凸を付ける場合は、ブランクシートに文字や絵柄を印刷する印刷工程と、凹凸をつける型押工程の2工程が必要であり、手間と時間がかかるものである。
【0006】
一方、紙のシートに対して行っているエンボス加工と同様の方法を合成樹脂シートに使用すると、浮き出し部分の周囲に熱が伝わって変形が発生するという問題があり、使用することができなかった。
【0007】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な方法により短時間で凹凸が形成された合成樹脂製の容器を形成可能な包装容器とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂製の一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、前記箱体形成片には加熱したスタンプ版を押圧して形成された凹凸が設けられている包装容器である。前記ブランクシートは、例えばポリプロピレン製等である。
【0009】
また、前記スタンプ版は、縦横に対称な複数の線状の形状であり、前記凹凸は、前記スタンプ版に接触した部分の外側が前記ブランクシートに対して一定深さにくぼんだ側周面と、前記側周面の先端に連続し前記押圧面に対して所定間隔離れた端面から成る。
【0010】
また、前記スタンプ版は、縦横に対称な任意の形状の外郭線に沿う一重線の形状であり、前記凹凸は、前記スタンプ版に接触した部分の内側が、前記ブランクシートの、前記スタンプ版を押圧した面から膨出した球面状の凸部である。
【0011】
またこの発明は、熱可塑性樹脂製の一枚のブランクシートの所定位置に、縦横に略対称な任意の形状の加熱したスタンプ版を押圧し、前記スタンプ版の熱により前記ブランクシートに、前記スタンプ版に接触した部分の内側が凹または凸となる凹凸を形成し、前記凹凸が形成された前記ブランクシートを打ち抜いて箱体形成片を設け、前記箱体形成片を容器として組み立てる包装容器の製造方法である。
【0012】
また、前記スタンプ版は円形、渦巻き形、星形、三角形、連続した楕円形等である。スタンプ版が、任意の形状の外郭線に沿う二重線または三重以上の線の形状のときは、前記スタンプ版に接触した部分の内側が、押圧面に対してくぼむ凹部となる。スタンプ版が、任意の形状の外郭線に沿う一重線の形状のときは、前記スタンプ版に接触した部分の内側が、押圧面に対して突出する球面状の凸部となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装容器とその製造方法は、簡単な工程で確実に熱可塑性樹脂製のシートに凹凸を形成し、文字や絵柄を浮き上がらせて消費者に強い印象を与えることができる。また、熱可塑性樹脂シートに形成した凹部に内容物を入れて収容する容器として、少ない部品点数で、商品を振動から保護し、また商品を抑えて固定し回転等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の包装容器10は熱可塑性樹脂製であり、後述するブランクシート16を組み立てて作られている。組み立てられた箱体の側面12には、外側から見て凸部14が設けられている。凸部14は、側面12から所定高さに立ち上がる円筒状の側周面14aと、側周面14aの先端部から連続した円形の端面14bにより構成されている。
【0015】
次に、包装容器10の製造方法について図2に基づいて説明する。熱可塑性樹脂製のブランクシート16に所定の絵柄の印刷をした後、図2(a)に示すように、スタンプ装置の台22にセットする。ブランクシート16は例えばポリプロピレンである。スタンプ版18は、ブランクシート16側へ突出する二重円の突起20が一体に形成された黄銅等の金属である。突起20は、先端へ近づくにつれて薄肉になっている。
【0016】
次に、図2(b)に示すように、ブランクシート16の樹脂の軟化温度に加熱したスタンプ版18をブランクシート16の片面である押圧面16aに平面的に押圧する。すると、ブランクシート16は熱により僅かに膨張して変形し、図2(c)に示すように、スタンプ版18が接触した部分の外側と内側に、押圧面16aと反対の反対側面16bへ一定深さにくぼむ側周面14aと、側周面14aの先端に連続し反対側面16bに対して略平行な端面14bが形成され、凸部14が設けられる。なお、突起20の先端面がブランクシート16に対して斜めになっていると、より深くブランクシート16をくぼませることができる。
【0017】
この後、凸部14が形成されたブランクシート16を所定形状に打ち抜いて箱体形成片を設け、箱体形成片を所定形状に組み立てて包装容器10ができる。押圧面16aを内側にして組み立てることにより、つまり反対側面16bを外側にして組み立てることにより、凸部14が包装容器10の外側に突出する。なお、凸部14を包装容器10の内側に突出、つまりくぼみとするときは、押圧面16aを外側にして組み立てる。なお、ブランクシート16を予め所定形状に打ち抜いて箱体形成片とした後に、スタンプ版18を押圧して凸部14を形成してもよい。
【0018】
次に、上述のように形成した包装容器10の内側に商品を入れる。このとき、商品の一部を凸部14に係合させると、がたつきが無くなり、また所定位置に保持し回転を防ぐ。
【0019】
この実施形態の包装容器10によれば、スタンプ版18を平面的に加熱して押圧する簡単な工程で、熱可塑性樹脂製のブランクシート16に立体的に凹凸を形成し、文字や絵柄を部分的に浮き上がらせて消費者に強い印象を与えることができる。また、以下に述べるような作用効果を有する。
【0020】
この包装容器10によれば、形成された凹凸に商品の一部を差し込んでがたつきを防止して、商品を振動から保護し、また商品を押えて固定し回転を防止することができる。包装容器10に商品を押える凹凸を形成することで商品を保持する別体の緩衝部材が不要となり、部品点数を少なくすることができる。厚みの薄い商品用のブリスターパックの代替品として使用することができる。ブリスターパックは、真空成形した熱可塑性樹脂の成形容器と紙台紙の二つの部材が必要であったが、この包装容器10によれば成型容器が不要となり、一部材にすることができる。安価で簡単に複数個の凹部を形成することができるため、凹部に直接口紅等の試供品を入れる等、安価で簡単に試供品を作ることができる。
【0021】
また、熱可塑性樹脂製のブランクシート16に凹凸を形成する工程で、特別な成型用の凹凸型や真空装置を必要としないため、コストが安価で短時間に凹凸を形成することができる。スタンプ版18を押す工程は、ブランクシート16に印刷する印刷工程に続けて箔押し工程で凹凸を形成することでき、生産効率が良い。スタンプ版18は、任意の形状の外郭に沿う突起20を一定の高さで突出させたものであり、形状が単純で安価に短時間で作ることができ、凹凸の形状の種類を簡単に変更したり増やしたりすることができる。凸部14にも印刷や箔押し等の加工をすることができ、デザインに制限がなく、自由にデザインすることができる。
【0022】
次にこの発明の第二実施形態について図3に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の包装容器21は、箱体の側面24に凸部26が設けられている。凸部26は、側面24から円形に膨出した球面状である。
【0023】
次に、包装容器21の製造方法について図4に基づいて説明する。熱可塑性樹脂製のブランクシート16に所定の絵柄の印刷をした後、図4(a)に示すように、スタンプ装置にセットする。スタンプ版30は、ブランクシート16側へ突出する一重円の突起32が形成されている。突起32は、先端へ近づくにつれて薄肉になっている。
【0024】
次に、図4(b)に示すように、加熱したスタンプ版30をブランクシート16の片面である押圧面16aに平面的に押圧する。すると、ブランクシート16は熱により膨張して変形し、図4(c)に示すように、スタンプ版30が接触した部分の内側に、押圧面16aから凸になる方へ突出する球面状の凸部26が形成される。
【0025】
凸部26が形成されたブランクシート16を所定形状に打ち抜いて箱体形成片を設け、箱体形成片を所定形状に組み立てて包装容器21ができる。押圧面16aを外側にして組み立てることにより、凸部26が包装容器21の外側に突出する。なお凸部26を包装容器21の内側に突出、つまりくぼみとするときは、押圧面16aを外側にして組み立てる。この後、包装容器21の内側に商品を入れる。
【0026】
この実施形態の包装容器21によれば、上記実施の形態と同様の効果を有するものである。凸部26は円形で球面なのでシンプルでかわいい印象を与えることができる。複数個を並べたり、大きさが異なるものを設けたりして、自由にデザインすることができる。
【0027】
次にこの発明の第三実施形態について図5〜図8に基づいて説明する。ブランクシート16に設けられた凸部の形状は、自由に変更可能である。図5は、ブランクシート16に中心が高い渦巻き状の凸部34が形成されているものである。凸部34は、渦巻き形状のスタンプ版で形成され、ブランクシート16の反対側面16bに突出して設けられる。図6は、ブランクシート16に星型の凸部36が形成されているものである。凸部36は、星形の三重線のスタンプ版で形成され、図5と同様にブランクシート16の反対側面16bに突出して設けられる。図7は、外側に僅かに膨出する辺を有する略三角形が、中心を一致させて徐々に大きさが小さくなる4個の相似形に設けられ、中心軸に対して僅かに一定角度づつずらした形状の凸部38が設けられているものである。凸部38は、4個の相似形の三角形が、僅かに一定角度づつずらして設けられたスタンプ版で形成される。図8は、大きい径の山と小さい径の山が中腹付近でつなげられている形状の凸部40が設けられているものである。凸部40は、二つの山が中腹付近でつなげられている等高線のような4重の線のスタンプ版で形成される。
【0028】
なお、この発明の包装容器は、上記各実施形態に限定されるものではなく、凹凸の形状は、縦横に略対称な任意の形状であれば自由に変更可能であり、縦横の比率が大きく異なるものはブランクシートにゆがみが生じるが、少しの違いがある場合、形状によっては成形可能である。さらに、箱体形成片は、箱状のものに限らず従来のブリスターパックによる収容部のような凹部を備えたものも含むものである。また、凹凸の数、形成位置も自由に設定可能であり、製造工程等は適宜変更可能である。ブランクシートの素材は、熱可塑性を有する加工が容易なものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第一実施形態の包装容器の斜視図である。
【図2】この実施形態の包装容器の製造工程を示す概略図である。
【図3】この発明の第二実施形態の包装容器の斜視図である。
【図4】第二実施形態の包装容器の製造工程を示す概略図である。
【図5】この発明の第三実施形態の包装容器の斜視図である。
【図6】第三実施形態の変形例を示す包装容器の斜視図である。
【図7】第三実施形態の変形例を示す包装容器の斜視図である。
【図8】第三実施形態の変形例を示す包装容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 包装容器
12 側面
14 凸部
14a 側周面
14b 端面
16 ブランクシート
18 スタンプ版
20 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、前記箱体形成片には加熱したスタンプ版を押圧して形成された凹凸が設けられていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記スタンプ版は、縦横に対称な複数の線状の形状であり、前記凹凸は、前記スタンプ版に接触した部分の外側が前記ブランクシートに対して一定深さにくぼんだ側周面と、前記側周面の先端に連続し前記押圧面に対して所定間隔離れた端面から成ることを特徴とする請求項1記載の包装容器。
【請求項3】
前記スタンプ版は、縦横に対称な任意の形状の外郭線に沿う一重線の形状であり、前記凹凸は、前記スタンプ版に接触した部分の内側が、前記ブランクシートの、前記スタンプ版を押圧した面から膨出した球面状の凸部であることを特徴とする請求項1記載の包装容器。
【請求項4】
熱可塑性樹脂製の一枚のブランクシートの所定位置に、縦横に対称な任意の形状の加熱したスタンプ版を押圧し、前記スタンプ版の熱により前記ブランクシートに、前記スタンプ版に接触した部分の内側が凹または凸となる凹凸を形成し、前記凹凸が形成された前記ブランクシートを打ち抜いて箱体形成片を設け、前記箱体形成片を容器として組み立てることを特徴とする包装容器の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−29447(P2009−29447A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193300(P2007−193300)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(391019500)朝日印刷株式会社 (70)
【Fターム(参考)】