包装物を備える血管病変部治療用金属ステント
本発明にかかるシステムは、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステント(3)と、ステント(3)が保護状態で配置された内部容積部を有する包装物(1)とを備える。ステント(3)は、互いに管形状を形成する多数のウェブ(33)と、間にステント内腔(34)が延在する近位端(31)および遠位端(32)とを有する。ステント表面(35)は親水性を有する。表面(35)上に存在する水滴の、親水性の尺度としての接触角が処理前の接触角に比べて縮小される処理によって、表面上で大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素化合物が大幅に低減されている。ステント(3)は、包装物(1)内で不活性状態で保存されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステントと、包装物とからなる装置に関する。ステントは、包装物の内部容積部内に保護状態で配置される。ステントは、合わせて管形状を形成する多数のウェブを有している。ステント長さと、通路としてのステント内腔とが、近位端と遠位端との間に延在している。ステントは、拡張または解放された状態では、相応の直径を呈する。ステント表面は、血液適合性を促すために親水性に具現化される。
【背景技術】
【0002】
特別な適用分野の1つは、心臓血管への治療介入も含む、経皮経管的血管形成術分野における血管拡張である。そのようなステントは、ステント用に特別に設けられたカテーテルとともに、例えば大腿部の動脈を穿刺することによって、最小の開口を通して人体に挿入され、病変部、すなわち、治療すべき血管狭窄部まで上方移動させられ、そこで拡張される。ステントは、拡張された血管内に留まって内側から血管を支持する一方、カテーテルは、人体から取り出される。拡張され支持された血管を通る血流が再び確保される。この方法は、モニター上に血管と体内に挿入された器具の両方を表示する即時X線記録を用いて実行される。
【0003】
特別な適用分野のもう1つは、動脈瘤、すなわち、膨張した血管の治療である。この治療では、通常の血流を再び確保するために、支持メッシュとカバーとからなるステントグラフトが動脈瘤に挿入される。
【0004】
しかしながら、血管に挿入された金属ステントは、患者にとって一定の危険性を抱えている。とりわけ、ステントの構造に血栓症が生じる可能性がある。挿入後の患者に投与される薬剤と併用すれば、ベアメタルステント(BMS)の場合の血栓症の発生を最初の10日間以内に1%未満まで低下させることができる。にもかかわらず、血栓症は、特に冠動脈介入の場合に、最も懸念される合併症の1つである。
【0005】
開業医が望むステントの特性は、ステントの急成長、いわゆる再内皮化である。再内皮化は、内皮層の細胞が主要な抗血栓因子を形成することから、ステント治療の成功にとって最高に重要である。しかしながら、ステントがまだ成長していない間は、そしてステントの構造が血流を受けている間は、抗血栓性のステント表面を設けることが最高に重要である。
【0006】
親水性の表面特性を有するステントがはるかに高い血液適合性、すなわち、はるかに低い血栓形成性を有することはよく知られている。ステント表面上の親水性を高めるため、ステント表面に、コーティング法によって物質が塗布されている[Seeger JM,lngegno MD,Bigatan E,Klingman N,Amery D,Widenhouse C,Goldberg EP.Hydrophilic surface modification of metallic endoluminal stents.J Vasc Surg. 1995 Sep;22(3):327−36、およびLahann J,Klee D,Thelen H,Bienert H,Vorwerk D,Hocker H.Improvement of haemocompatibility of metallic stents by polymer coating.J Mater Sci Mater Med.1999 Jul;10(7):443−8参照]。
【0007】
例として、実行可能なコーティング法には、材料、例えば、所定の膜厚の高分子や金属がステント表面に塗布される「化学蒸着法(CVD)」や「物理蒸着法(PVD)」などがある。高分子コートのBMSの場合には、表面の親水性向上の結果、血小板形成が85%(BMS)から20%(高分子コートBMS)に低減されることがわかった。
【0008】
一方では、臨床的介入時に、ステント表面に作用する強い摩擦力が発生し、他方では、拡張時に、個々のステント網ウェブの表面に、高い機械的応力が発生する。挿入後、ステントは、血管から生じる永久的な脈動する負荷を受ける。これらの高い機械的負荷は、コーティングの剥れという結果を招く可能性があり、その結果、血栓症、コーティング粒子から形成される微小塞栓および深刻な慢性炎の著しい危険性が潜在する。さらに、挿入されるステントに、大きなコーティングむらさえ測定された。
【0009】
機械的な影響に加えて、ステントのコーティングは、体内で発生する化学反応によっても損傷されたり、分解されたりする。金属製コーティングは、コーティングとステントとの間で異なる電気化学ポテンシャルが、電解質、例えば血液によるバッテリー効果によって等化された途端に、腐食する可能性がある。
【0010】
ステント上の高分子コーティングは、人体の酵素によって逐次分解される。このプロセスは、望ましくない細胞増殖を引き起こす、周辺血管細胞の炎症に関連している場合が多く、それにより、血管の再狭小化(再狭窄)に至る可能性がある。さらに、高分子コーティング自体によって、炎症が既に引き起こされている可能性もある。
【0011】
そのような表面改質は、良い効果として、ステント特性の向上を促すが、しかしながら、上述の問題によって臨床的合併症を発生させる可能性がある。これまで、医療的用件および機械的要件の両方を満たす最適な親水性表面を有するステントが入手できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術における上記の欠点に鑑みて、本発明は、表面改質によって親水性を向上させ、したがって上述の問題を回避するステントを提供するという目的に基づいている。同時に、本発明にかかる表面改質が施されたステントの介入までステントの親水性表面特性を維持するために、ステントを保存および輸送するための包装物が提供される必要がある。
【0013】
初めは未クリンプ(crimp)状態のステントを包装物内に保存する場合には、ステントをカテーテルに装着するための、ステント表面の親水性が維持されるべき手段を提案することによって、別の目的が構成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる装置は、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステントと、ステントが保護状態で配置される内部容積部を有する包装物とからなる。ステントは、合わせて管形状を形成する多数のウェブと、間にステント内腔が延在する近位端および遠位端とを備える。ステント表面は親水性を有する。親水性の尺度として、表面上に位置する水滴の接触角が処理前の接触角に比べて縮小される結果をもたらす処理によって、表面上で大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素が大幅に低減されている。ステントは、大気からの自然の再汚染を防止するために、包装物内に不活性状態で保存されている。
【0015】
以下の特徴は、本発明の特別な実施形態に関する。化学汚染を低減する表面の処理は、材料アブレーションの形で、すなわち、例えば、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチング、湿式化学エッチングなどによって行われている。
【0016】
あるいは、化学汚染を低減する表面の処理の結果が、表面の組織分布の不変であり、この場合にも、例えば、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチング、湿式化学エッチングなどによって処理が行われている。例えば、超音波、紫外光もしくはオゾンを用いて材料をアブレーションしない処理、またはそれらから構成された併用処理も、同様に表面の組織分布を不変にすることができる。この表面処理には、ステント材料自体を腐食させないエッチング媒体も同様に適している。
【0017】
包装物の全内容物は不活性であり、包装物は不活性充填物を含んでいる。
【0018】
包装物内にカテーテルが配置され、カテーテルにステントが装着されており、バルーンカテーテルまたはチューブカテーテルが、バルーン拡張型または自己拡張型ステントに相補的に割り当てられている。
【0019】
包装物は、基部とカバーとを備えた容器からなる。基部および/またはカバーは取り外されてもよい。基部および/またはカバーは、ステントを包装物から取り出すことができるか、またはカテーテルに装着されたステントをカテーテルと一緒に包装物から取り出すことができるように、開口される入口を有している。
【0020】
カテーテルは、遠位端にチップを有しており、チップとは反対側のカテーテルのシャフトの近位端は、入口を抜けて包装物の外に突出している。
【0021】
基部またはカバーには、内側に向かって包装物内で一体型のクリンプ装置のジョーに達し、外側に向かって、クリンプ装置を作動させる作動子に達するシャフトを通す通路がある。開口される入口は、通路とは反対側のカバーまたは基部に存在して、カテーテルを通す役割をする。ガイド心軸が、クリンプ装置を通り抜けて軸方向に延在しており、カテーテルのガイドワイヤ内腔に完全に挿入された後、安定化および位置決めの目的で使用される。開口される入口は、例えば、貫通可能な封止材または有孔材料から形成されていると有利である。
【0022】
包装物内には、ステントおよび/またはカテーテルおよび/またはクリンプ装置を固定する支持要素が延在している。
【0023】
ステントは、動脈瘤の場合に貼付するためのステントグラフトを形成するように、カバー付きで具現化されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】未クリンプ状態のバルーン拡張型または自己拡張型ステントを示す。
【図1B】図1Aのステントが内部の不活性充填物の中に保存された包装物を示す。
【図2A】包装物内への入口と、一体型の開状態のクリンプ装置を備える、図1Bの装置を示す。
【図2B】開状態の図2Aのクリンプ装置を示す。
【図2C】閉状態の図2Bのクリンプ装置を示す。
【図3A】バルーン拡張型ステントと、位置決めされた拡張カテーテルと、開状態のクリンプ装置を備える、図2Aの装置を示す。
【図3B】閉状態のクリンプ装置を備える、図3Aの装置を示す。
【図4】バルーン拡張型ステントが内部の不活性充填物の中で拡張カテーテル上にクリンプ状態で保存された包装物を示す。
【図5A】入口を有し、内部の不活性充填物内に保存された未クリンプ状態の自己拡張型ステントと、位置決めされたカテーテルと、開状態のクリンプ装置を備える包装物を示す。
【図5B】クリンプ状態にあり、閉状態のクリンプ装置を備える、図5Aの装置を示す。
【図5C】開状態のクリンプ装置を備える、図5Bの装置を示す。
【図5D】クリンプされたステント上に部分的に押し込まれたカテーテルの外側管を備える、図5Cの装置を示す。
【図5E】クリンプされたステント上に完全に押し込まれたカテーテルの外側管を備える、図5Dの装置を示す。
【図6】自己拡張型ステントが内部の不活性充填物の中に保存され、カテーテルにクリンプ状態で装着された包装物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の文では、添付の図面に基づいて、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステントと、ステントが保護状態で配置される内部容積部を有する包装物とからなる、本発明にかかる装置について詳細に説明する。
【0026】
次の記述は、その後の説明全体について当てはまるものである。参照符号が、図面表現上明確にするために図面に含まれているにもかかわらず、直接関連する説明文に述べられていない場合、前述または後述の図面の説明における参照符号の記述が参照される。明確にするため、別の図面における構成要素の符号表記の繰返しは、その構成要素が「繰返し出現する」構成要素であることが図面表現上明白であるならば、概ね省略される。
【0027】
図1A
図示のステント3は、従来の材料構成と構造設計を有しており、バルーン拡張型であっても自己拡張型であってもよい。ステント3は、近位端31と遠位端32との間で延在する長さlを有する。非クリンプ状態では、ステント3は、直径dをとり、それゆえ、表面35を有するウェブ33が互いに間隔を置いて広々と格子形状に配置されている。ステント内腔34は、原則的に円筒形の設計であり、管状のステント3を貫通している。
【0028】
図1B
ステント3は、包装物1内にあって、この場合、包装物1内に配置された支持体13に固定されており、支持体13は、まず、近位端31が当接する第1の支持要素131を備えている。遠位端32は、第2の支持要素132に保持されている。包装物1は、まず、基部10を有する容器12を備え、基部10と反対側の端部でカバー11によって封止されている。第1の支持要素131は、容器12の断面領域にわたって隔壁のように延在して、カバー11に面しており、第3の支持要素133が、カバー11を第1の支持要素131と軸方向に接続させている。第2の支持要素132も、同様に容器12の断面領域にわたって隔壁のように延在しているが、基部10に面している。包装物1内には、不活性充填物2が存在し、ステント3の表面35を保護している。ステント3に面する包装物1の内面は不活性である。
【0029】
表面35の前処理により、表面35の親水性が高められた。表面35上の大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素が大幅に低減された結果、親水性の尺度として、表面35上に位置する水滴の接触角が縮小されている。
【0030】
表面35上の化学汚染物質は、好ましくは、材料アブレーションによって低減されてもよい。この目的のため、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチング、または湿式化学エッチングが役立つ。あるいは、表面35上の化学汚染物質の低減は、表面35の組織分布を変えない処理によって達成される。このために、超音波、紫外光もしくはオゾンを用いた処理、またはそれらから構成された併用処理が考えられる。組織分布を変えない処理には、ステント材料自体を腐食させないエッチング媒体、例えば、表面の酸処理も同様に適している。コバルト−クロム合金に対する95%〜97%の硫酸が実証済みである。
【0031】
図2A〜図2C
この図面群は、包装物1内に配置されたクリンプ装置4の機能を概略的に示している。最初は、クリンプ装置4が開いており、それゆえ、ジョー40が拡張位置をとり、それにより、包装物1内に位置する拡張したステント3を包囲している(図2A、図2B参照)。ステント3は、図1Bに基づいて既に説明したように、前処理されている。同じく、包装物1は不活性充填物2を含んでおり、包装物の内壁は不活性である。ジョー40は、基部10の通路100を経由し、作動可能な作動子42まで外方へ軸方向に延在するシャフト41に取り付けられている。基部10とカバー11との間を軸方向に延在する軸線15が容器12内を通っている。容器12内の中心部には、クリンプ装置4に属するガイド心軸43が通っており、心軸43は、容器12内部の、カバー11にある穿孔可能な入口110の前で終端している。クリンプ装置4が閉じられると、ジョー40は径方向に狭窄され、それゆえ、ステント3は圧縮された径dを有する(図2C参照)。
【0032】
図3Aおよび図3B
これらの図面、使用されたステント3がバルーン拡張型であり、図1Bに基づいて説明したように、表面35の親水性を高めるために前処理にかけられた、図2Aの配置に基づいている。この場合も、包装物1内の不活性充填物と、包装物1の内壁の不活性特性とが前提にされている。クリンプ装置4のジョー40は、当初は開いている(図3A参照)。シャフト52上に配置されたカテーテル5のバルーン50が、カバー11にある穿孔可能な入口110を通して、チップ55から先にステント内腔34内に挿入されている。その過程で、ガイド心軸43が、シャフト52のガイドワイヤ内腔53に貫入している。シャフト52は、流路状の拡張腔54をさらに有しており、手術時に拡張腔54の内部を外部供給源から、例えば、生理食塩水で満たすことによってバルーン50が拡張され、それにより、ステント3を内側から拡張させる。バルーン50のステント領域51が、ステント内腔34内に位置し、それゆえ、ステント領域51は、少なくとも原則的にステントの全長lを越える一方、バルーン50の先細りの両端は、ステント3の近位端31および遠位端32から突出している。
【0033】
作動子42を例えば手動で回転させることによって作動させた後、クリンプ装置4は閉状態に達し、それゆえ、ステント3の直径dが圧縮される(図3B参照)。今やステント径dが狭窄され、クリンプ装置4のジョー40が圧縮された場合でも、バルーン50のステント領域51は、ステント内腔34内でもとのまま軸方向位置に留まっている。
【0034】
図4
包装物1内にクリンプ装置4が組み込まれた前出の図面の構成に代わるものとして、ここでは、包装物1が、拡張カテーテル5のバルーン50上にクリンプ状態のバルーン拡張型ステント3を含んでいる。この場合、ステント径dは狭窄されており、ウェブ33は互いに押し付けられている。バルーン50のステント領域51は、この場合も、少なくとも原則的に、ステントの長さlを越えて延在している。基部10から延在するガイド心軸43が、シャフト52のガイドワイヤ内腔53に貫入している。チップ55が、基部10の近くに位置している。包装物1の内部には、図1Bに基づいた説明のとおり前処理されたステント3の表面35を保護する不活性充填物2が設けられている。また、包装物1の内壁が不活性であることが前提にされている。クリンプされたステント3とバルーン50とを備えた拡張カテーテル5は、カバー11にある穿孔可能な入口110を通して包装物1から引き出すことができる。
【0035】
図5A〜図5E
この図面群では、包装物1が一体型のクリンプ装置4を有しており、自己拡張型ステント3とチューブカテーテル6が使用されている。この場合も、クリンプ装置4は、基部10の通路100を貫通して作動子42まで延在するシャフト41と、包装物1を軸方向に貫通するガイド心軸43とを備えている。包装物1は不活性充填物2を含んでおり、包装物の内壁は不活性である。また、包装物1内に軸線15が通っている。ステント3の表面35は、図1Bに基づいて説明したように、親水性を高めるために既に前処理されている。
【0036】
図5A(初期状態)
クリンプ装置4のジョー40は開いており、したがって、ステント3は未クリンプ状態にあり、チューブカテーテル6の内側管66が、カバー11にある穿孔可能な入口110を経由し、さらにステント内腔34を経由して、チップ65がステント3から突出して基部10に直面する程度まですでに押し込まれている。ガイド心軸43が、シャフト62のガイドワイヤ内腔63に軸方向に貫入している。同様に、支持管67と外側管68も、穿孔可能な入口110を通して押し込まれているが、それらの自由端は、ステント3の近位端31の前に位置している。支持管67の自由端とチップ65にあるストッパ69との間に、ステントの長さl分を保持可能なステント領域61が延在している。
【0037】
図5B(第1の継続ステップ)
クリンプ装置4のジョー40は今や閉じられており、それゆえ、ステント3のウェブ33が押付け合いの状態になり、ステント径dが狭窄されている。クリンプ装置4は、作動子42を回転させることによって作動された。チップ65と、内側管66と、支持管67と、外側管68とを備えるチューブカテーテル6は、同じ位置のままである。ステント3は、温度が所定の閾値より低下した時に自己拡張特性を不能にするために、クリンプ状態で冷却される。
【0038】
図5C(第2の継続ステップ)
クリンプ装置4のジョー40は開放されるが、自己拡張型ステント3は、先の温度低下の結果として、ステント径dが狭窄されてウェブ33が圧縮されたクリンプ状態のままである。
【0039】
図5D(第3の継続ステップ)
ステント径dが狭窄されたクリンプ状態のままのステント3により、外側管68をステント3上に近位端31から遠位端32の方向に連続的に押し込むことが可能になる。支持管67と内側管66上に配置されたチップ65とは同じ位置のままである。外側管68の前進により、ステント3も同じ方向に移動するが、ストッパ69がステント3のさらなる前進を防止する。
【0040】
図5E(第4の継続ステップ)
外側管68が、チップ65の背後のストッパ69と接触するまで、クリンプされたステント3上に押し込まれ、その結果、ステント領域61全体を覆う。この状態で、クリンプされたステント3が収容されたチューブカテーテル6が、穿孔可能な入口110を通して包装物1から引き出され、上記に詳述したように準備されたステント3を患者の体内の所定部位に貼り付ける。
【0041】
図6
包装物1内にクリンプ装置4が組み込まれた前出の図面群、図5Aから図5Eの構成に代わるものとして、包装物1に属するクリンプ装置4を必要としないように、自己膨張型ステント3が、包装物1の外側で既にクリンプされ、チューブカテーテル6に装着され、包装物1に挿入されている。ガイド心軸43が、ガイドワイヤ内腔63に既に挿入されている。外側管68、支持管67および内側管66を備えるシャフト62が、カバー11にある穿孔可能な入口110を貫通して外側に突出している。外側管68は、チップ65のストッパ69に突き当たり、それにより、ステント領域61全体に及んでいる。支持管67の自由端は、ステント3の近位端31の前に位置している。図5Eに関連するようなさらなる取扱いがもたらされる。
【0042】
この場合に利用されるステント3は、前出の図1Bから図5Eの例示の実施形態全てと同じ前処理にかけられており、包装物1が不活性充填物2を含んでおり、包装物内壁が不活性であることが前提とされている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステントと、包装物とからなる装置に関する。ステントは、包装物の内部容積部内に保護状態で配置される。ステントは、合わせて管形状を形成する多数のウェブを有している。ステント長さと、通路としてのステント内腔とが、近位端と遠位端との間に延在している。ステントは、拡張または解放された状態では、相応の直径を呈する。ステント表面は、血液適合性を促すために親水性に具現化される。
【背景技術】
【0002】
特別な適用分野の1つは、心臓血管への治療介入も含む、経皮経管的血管形成術分野における血管拡張である。そのようなステントは、ステント用に特別に設けられたカテーテルとともに、例えば大腿部の動脈を穿刺することによって、最小の開口を通して人体に挿入され、病変部、すなわち、治療すべき血管狭窄部まで上方移動させられ、そこで拡張される。ステントは、拡張された血管内に留まって内側から血管を支持する一方、カテーテルは、人体から取り出される。拡張され支持された血管を通る血流が再び確保される。この方法は、モニター上に血管と体内に挿入された器具の両方を表示する即時X線記録を用いて実行される。
【0003】
特別な適用分野のもう1つは、動脈瘤、すなわち、膨張した血管の治療である。この治療では、通常の血流を再び確保するために、支持メッシュとカバーとからなるステントグラフトが動脈瘤に挿入される。
【0004】
しかしながら、血管に挿入された金属ステントは、患者にとって一定の危険性を抱えている。とりわけ、ステントの構造に血栓症が生じる可能性がある。挿入後の患者に投与される薬剤と併用すれば、ベアメタルステント(BMS)の場合の血栓症の発生を最初の10日間以内に1%未満まで低下させることができる。にもかかわらず、血栓症は、特に冠動脈介入の場合に、最も懸念される合併症の1つである。
【0005】
開業医が望むステントの特性は、ステントの急成長、いわゆる再内皮化である。再内皮化は、内皮層の細胞が主要な抗血栓因子を形成することから、ステント治療の成功にとって最高に重要である。しかしながら、ステントがまだ成長していない間は、そしてステントの構造が血流を受けている間は、抗血栓性のステント表面を設けることが最高に重要である。
【0006】
親水性の表面特性を有するステントがはるかに高い血液適合性、すなわち、はるかに低い血栓形成性を有することはよく知られている。ステント表面上の親水性を高めるため、ステント表面に、コーティング法によって物質が塗布されている[Seeger JM,lngegno MD,Bigatan E,Klingman N,Amery D,Widenhouse C,Goldberg EP.Hydrophilic surface modification of metallic endoluminal stents.J Vasc Surg. 1995 Sep;22(3):327−36、およびLahann J,Klee D,Thelen H,Bienert H,Vorwerk D,Hocker H.Improvement of haemocompatibility of metallic stents by polymer coating.J Mater Sci Mater Med.1999 Jul;10(7):443−8参照]。
【0007】
例として、実行可能なコーティング法には、材料、例えば、所定の膜厚の高分子や金属がステント表面に塗布される「化学蒸着法(CVD)」や「物理蒸着法(PVD)」などがある。高分子コートのBMSの場合には、表面の親水性向上の結果、血小板形成が85%(BMS)から20%(高分子コートBMS)に低減されることがわかった。
【0008】
一方では、臨床的介入時に、ステント表面に作用する強い摩擦力が発生し、他方では、拡張時に、個々のステント網ウェブの表面に、高い機械的応力が発生する。挿入後、ステントは、血管から生じる永久的な脈動する負荷を受ける。これらの高い機械的負荷は、コーティングの剥れという結果を招く可能性があり、その結果、血栓症、コーティング粒子から形成される微小塞栓および深刻な慢性炎の著しい危険性が潜在する。さらに、挿入されるステントに、大きなコーティングむらさえ測定された。
【0009】
機械的な影響に加えて、ステントのコーティングは、体内で発生する化学反応によっても損傷されたり、分解されたりする。金属製コーティングは、コーティングとステントとの間で異なる電気化学ポテンシャルが、電解質、例えば血液によるバッテリー効果によって等化された途端に、腐食する可能性がある。
【0010】
ステント上の高分子コーティングは、人体の酵素によって逐次分解される。このプロセスは、望ましくない細胞増殖を引き起こす、周辺血管細胞の炎症に関連している場合が多く、それにより、血管の再狭小化(再狭窄)に至る可能性がある。さらに、高分子コーティング自体によって、炎症が既に引き起こされている可能性もある。
【0011】
そのような表面改質は、良い効果として、ステント特性の向上を促すが、しかしながら、上述の問題によって臨床的合併症を発生させる可能性がある。これまで、医療的用件および機械的要件の両方を満たす最適な親水性表面を有するステントが入手できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術における上記の欠点に鑑みて、本発明は、表面改質によって親水性を向上させ、したがって上述の問題を回避するステントを提供するという目的に基づいている。同時に、本発明にかかる表面改質が施されたステントの介入までステントの親水性表面特性を維持するために、ステントを保存および輸送するための包装物が提供される必要がある。
【0013】
初めは未クリンプ(crimp)状態のステントを包装物内に保存する場合には、ステントをカテーテルに装着するための、ステント表面の親水性が維持されるべき手段を提案することによって、別の目的が構成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる装置は、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステントと、ステントが保護状態で配置される内部容積部を有する包装物とからなる。ステントは、合わせて管形状を形成する多数のウェブと、間にステント内腔が延在する近位端および遠位端とを備える。ステント表面は親水性を有する。親水性の尺度として、表面上に位置する水滴の接触角が処理前の接触角に比べて縮小される結果をもたらす処理によって、表面上で大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素が大幅に低減されている。ステントは、大気からの自然の再汚染を防止するために、包装物内に不活性状態で保存されている。
【0015】
以下の特徴は、本発明の特別な実施形態に関する。化学汚染を低減する表面の処理は、材料アブレーションの形で、すなわち、例えば、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチング、湿式化学エッチングなどによって行われている。
【0016】
あるいは、化学汚染を低減する表面の処理の結果が、表面の組織分布の不変であり、この場合にも、例えば、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチング、湿式化学エッチングなどによって処理が行われている。例えば、超音波、紫外光もしくはオゾンを用いて材料をアブレーションしない処理、またはそれらから構成された併用処理も、同様に表面の組織分布を不変にすることができる。この表面処理には、ステント材料自体を腐食させないエッチング媒体も同様に適している。
【0017】
包装物の全内容物は不活性であり、包装物は不活性充填物を含んでいる。
【0018】
包装物内にカテーテルが配置され、カテーテルにステントが装着されており、バルーンカテーテルまたはチューブカテーテルが、バルーン拡張型または自己拡張型ステントに相補的に割り当てられている。
【0019】
包装物は、基部とカバーとを備えた容器からなる。基部および/またはカバーは取り外されてもよい。基部および/またはカバーは、ステントを包装物から取り出すことができるか、またはカテーテルに装着されたステントをカテーテルと一緒に包装物から取り出すことができるように、開口される入口を有している。
【0020】
カテーテルは、遠位端にチップを有しており、チップとは反対側のカテーテルのシャフトの近位端は、入口を抜けて包装物の外に突出している。
【0021】
基部またはカバーには、内側に向かって包装物内で一体型のクリンプ装置のジョーに達し、外側に向かって、クリンプ装置を作動させる作動子に達するシャフトを通す通路がある。開口される入口は、通路とは反対側のカバーまたは基部に存在して、カテーテルを通す役割をする。ガイド心軸が、クリンプ装置を通り抜けて軸方向に延在しており、カテーテルのガイドワイヤ内腔に完全に挿入された後、安定化および位置決めの目的で使用される。開口される入口は、例えば、貫通可能な封止材または有孔材料から形成されていると有利である。
【0022】
包装物内には、ステントおよび/またはカテーテルおよび/またはクリンプ装置を固定する支持要素が延在している。
【0023】
ステントは、動脈瘤の場合に貼付するためのステントグラフトを形成するように、カバー付きで具現化されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】未クリンプ状態のバルーン拡張型または自己拡張型ステントを示す。
【図1B】図1Aのステントが内部の不活性充填物の中に保存された包装物を示す。
【図2A】包装物内への入口と、一体型の開状態のクリンプ装置を備える、図1Bの装置を示す。
【図2B】開状態の図2Aのクリンプ装置を示す。
【図2C】閉状態の図2Bのクリンプ装置を示す。
【図3A】バルーン拡張型ステントと、位置決めされた拡張カテーテルと、開状態のクリンプ装置を備える、図2Aの装置を示す。
【図3B】閉状態のクリンプ装置を備える、図3Aの装置を示す。
【図4】バルーン拡張型ステントが内部の不活性充填物の中で拡張カテーテル上にクリンプ状態で保存された包装物を示す。
【図5A】入口を有し、内部の不活性充填物内に保存された未クリンプ状態の自己拡張型ステントと、位置決めされたカテーテルと、開状態のクリンプ装置を備える包装物を示す。
【図5B】クリンプ状態にあり、閉状態のクリンプ装置を備える、図5Aの装置を示す。
【図5C】開状態のクリンプ装置を備える、図5Bの装置を示す。
【図5D】クリンプされたステント上に部分的に押し込まれたカテーテルの外側管を備える、図5Cの装置を示す。
【図5E】クリンプされたステント上に完全に押し込まれたカテーテルの外側管を備える、図5Dの装置を示す。
【図6】自己拡張型ステントが内部の不活性充填物の中に保存され、カテーテルにクリンプ状態で装着された包装物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の文では、添付の図面に基づいて、血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属ステントと、ステントが保護状態で配置される内部容積部を有する包装物とからなる、本発明にかかる装置について詳細に説明する。
【0026】
次の記述は、その後の説明全体について当てはまるものである。参照符号が、図面表現上明確にするために図面に含まれているにもかかわらず、直接関連する説明文に述べられていない場合、前述または後述の図面の説明における参照符号の記述が参照される。明確にするため、別の図面における構成要素の符号表記の繰返しは、その構成要素が「繰返し出現する」構成要素であることが図面表現上明白であるならば、概ね省略される。
【0027】
図1A
図示のステント3は、従来の材料構成と構造設計を有しており、バルーン拡張型であっても自己拡張型であってもよい。ステント3は、近位端31と遠位端32との間で延在する長さlを有する。非クリンプ状態では、ステント3は、直径dをとり、それゆえ、表面35を有するウェブ33が互いに間隔を置いて広々と格子形状に配置されている。ステント内腔34は、原則的に円筒形の設計であり、管状のステント3を貫通している。
【0028】
図1B
ステント3は、包装物1内にあって、この場合、包装物1内に配置された支持体13に固定されており、支持体13は、まず、近位端31が当接する第1の支持要素131を備えている。遠位端32は、第2の支持要素132に保持されている。包装物1は、まず、基部10を有する容器12を備え、基部10と反対側の端部でカバー11によって封止されている。第1の支持要素131は、容器12の断面領域にわたって隔壁のように延在して、カバー11に面しており、第3の支持要素133が、カバー11を第1の支持要素131と軸方向に接続させている。第2の支持要素132も、同様に容器12の断面領域にわたって隔壁のように延在しているが、基部10に面している。包装物1内には、不活性充填物2が存在し、ステント3の表面35を保護している。ステント3に面する包装物1の内面は不活性である。
【0029】
表面35の前処理により、表面35の親水性が高められた。表面35上の大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素が大幅に低減された結果、親水性の尺度として、表面35上に位置する水滴の接触角が縮小されている。
【0030】
表面35上の化学汚染物質は、好ましくは、材料アブレーションによって低減されてもよい。この目的のため、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチング、または湿式化学エッチングが役立つ。あるいは、表面35上の化学汚染物質の低減は、表面35の組織分布を変えない処理によって達成される。このために、超音波、紫外光もしくはオゾンを用いた処理、またはそれらから構成された併用処理が考えられる。組織分布を変えない処理には、ステント材料自体を腐食させないエッチング媒体、例えば、表面の酸処理も同様に適している。コバルト−クロム合金に対する95%〜97%の硫酸が実証済みである。
【0031】
図2A〜図2C
この図面群は、包装物1内に配置されたクリンプ装置4の機能を概略的に示している。最初は、クリンプ装置4が開いており、それゆえ、ジョー40が拡張位置をとり、それにより、包装物1内に位置する拡張したステント3を包囲している(図2A、図2B参照)。ステント3は、図1Bに基づいて既に説明したように、前処理されている。同じく、包装物1は不活性充填物2を含んでおり、包装物の内壁は不活性である。ジョー40は、基部10の通路100を経由し、作動可能な作動子42まで外方へ軸方向に延在するシャフト41に取り付けられている。基部10とカバー11との間を軸方向に延在する軸線15が容器12内を通っている。容器12内の中心部には、クリンプ装置4に属するガイド心軸43が通っており、心軸43は、容器12内部の、カバー11にある穿孔可能な入口110の前で終端している。クリンプ装置4が閉じられると、ジョー40は径方向に狭窄され、それゆえ、ステント3は圧縮された径dを有する(図2C参照)。
【0032】
図3Aおよび図3B
これらの図面、使用されたステント3がバルーン拡張型であり、図1Bに基づいて説明したように、表面35の親水性を高めるために前処理にかけられた、図2Aの配置に基づいている。この場合も、包装物1内の不活性充填物と、包装物1の内壁の不活性特性とが前提にされている。クリンプ装置4のジョー40は、当初は開いている(図3A参照)。シャフト52上に配置されたカテーテル5のバルーン50が、カバー11にある穿孔可能な入口110を通して、チップ55から先にステント内腔34内に挿入されている。その過程で、ガイド心軸43が、シャフト52のガイドワイヤ内腔53に貫入している。シャフト52は、流路状の拡張腔54をさらに有しており、手術時に拡張腔54の内部を外部供給源から、例えば、生理食塩水で満たすことによってバルーン50が拡張され、それにより、ステント3を内側から拡張させる。バルーン50のステント領域51が、ステント内腔34内に位置し、それゆえ、ステント領域51は、少なくとも原則的にステントの全長lを越える一方、バルーン50の先細りの両端は、ステント3の近位端31および遠位端32から突出している。
【0033】
作動子42を例えば手動で回転させることによって作動させた後、クリンプ装置4は閉状態に達し、それゆえ、ステント3の直径dが圧縮される(図3B参照)。今やステント径dが狭窄され、クリンプ装置4のジョー40が圧縮された場合でも、バルーン50のステント領域51は、ステント内腔34内でもとのまま軸方向位置に留まっている。
【0034】
図4
包装物1内にクリンプ装置4が組み込まれた前出の図面の構成に代わるものとして、ここでは、包装物1が、拡張カテーテル5のバルーン50上にクリンプ状態のバルーン拡張型ステント3を含んでいる。この場合、ステント径dは狭窄されており、ウェブ33は互いに押し付けられている。バルーン50のステント領域51は、この場合も、少なくとも原則的に、ステントの長さlを越えて延在している。基部10から延在するガイド心軸43が、シャフト52のガイドワイヤ内腔53に貫入している。チップ55が、基部10の近くに位置している。包装物1の内部には、図1Bに基づいた説明のとおり前処理されたステント3の表面35を保護する不活性充填物2が設けられている。また、包装物1の内壁が不活性であることが前提にされている。クリンプされたステント3とバルーン50とを備えた拡張カテーテル5は、カバー11にある穿孔可能な入口110を通して包装物1から引き出すことができる。
【0035】
図5A〜図5E
この図面群では、包装物1が一体型のクリンプ装置4を有しており、自己拡張型ステント3とチューブカテーテル6が使用されている。この場合も、クリンプ装置4は、基部10の通路100を貫通して作動子42まで延在するシャフト41と、包装物1を軸方向に貫通するガイド心軸43とを備えている。包装物1は不活性充填物2を含んでおり、包装物の内壁は不活性である。また、包装物1内に軸線15が通っている。ステント3の表面35は、図1Bに基づいて説明したように、親水性を高めるために既に前処理されている。
【0036】
図5A(初期状態)
クリンプ装置4のジョー40は開いており、したがって、ステント3は未クリンプ状態にあり、チューブカテーテル6の内側管66が、カバー11にある穿孔可能な入口110を経由し、さらにステント内腔34を経由して、チップ65がステント3から突出して基部10に直面する程度まですでに押し込まれている。ガイド心軸43が、シャフト62のガイドワイヤ内腔63に軸方向に貫入している。同様に、支持管67と外側管68も、穿孔可能な入口110を通して押し込まれているが、それらの自由端は、ステント3の近位端31の前に位置している。支持管67の自由端とチップ65にあるストッパ69との間に、ステントの長さl分を保持可能なステント領域61が延在している。
【0037】
図5B(第1の継続ステップ)
クリンプ装置4のジョー40は今や閉じられており、それゆえ、ステント3のウェブ33が押付け合いの状態になり、ステント径dが狭窄されている。クリンプ装置4は、作動子42を回転させることによって作動された。チップ65と、内側管66と、支持管67と、外側管68とを備えるチューブカテーテル6は、同じ位置のままである。ステント3は、温度が所定の閾値より低下した時に自己拡張特性を不能にするために、クリンプ状態で冷却される。
【0038】
図5C(第2の継続ステップ)
クリンプ装置4のジョー40は開放されるが、自己拡張型ステント3は、先の温度低下の結果として、ステント径dが狭窄されてウェブ33が圧縮されたクリンプ状態のままである。
【0039】
図5D(第3の継続ステップ)
ステント径dが狭窄されたクリンプ状態のままのステント3により、外側管68をステント3上に近位端31から遠位端32の方向に連続的に押し込むことが可能になる。支持管67と内側管66上に配置されたチップ65とは同じ位置のままである。外側管68の前進により、ステント3も同じ方向に移動するが、ストッパ69がステント3のさらなる前進を防止する。
【0040】
図5E(第4の継続ステップ)
外側管68が、チップ65の背後のストッパ69と接触するまで、クリンプされたステント3上に押し込まれ、その結果、ステント領域61全体を覆う。この状態で、クリンプされたステント3が収容されたチューブカテーテル6が、穿孔可能な入口110を通して包装物1から引き出され、上記に詳述したように準備されたステント3を患者の体内の所定部位に貼り付ける。
【0041】
図6
包装物1内にクリンプ装置4が組み込まれた前出の図面群、図5Aから図5Eの構成に代わるものとして、包装物1に属するクリンプ装置4を必要としないように、自己膨張型ステント3が、包装物1の外側で既にクリンプされ、チューブカテーテル6に装着され、包装物1に挿入されている。ガイド心軸43が、ガイドワイヤ内腔63に既に挿入されている。外側管68、支持管67および内側管66を備えるシャフト62が、カバー11にある穿孔可能な入口110を貫通して外側に突出している。外側管68は、チップ65のストッパ69に突き当たり、それにより、ステント領域61全体に及んでいる。支持管67の自由端は、ステント3の近位端31の前に位置している。図5Eに関連するようなさらなる取扱いがもたらされる。
【0042】
この場合に利用されるステント3は、前出の図1Bから図5Eの例示の実施形態全てと同じ前処理にかけられており、包装物1が不活性充填物2を含んでおり、包装物内壁が不活性であることが前提とされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属製のステント(3)と、前記ステント(3)が保護状態で配置された内部容積部を有する包装物(1)とからなる装置であって、
a)前記ステント(3)が、
aa)協働して管形状を形成する多数のウェブ(33)と、
ab)間にステント内腔(34)が延在する近位端(31)および遠位端(32)と、
ac)親水性を有する表面(35)と、
を有する装置において、
b)親水性の尺度としての、前記表面(35)上に位置する水滴の接触角が処理前の接触角に比べて縮小されることとなる処理によって、前記表面(35)上で大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素が大幅に低減されているとともに、
c)前記ステント(3)が、大気からの自然の再汚染を防止するために、前記包装物(1)内に不活性状態で保存されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記化学汚染を低減する前記表面(35)の処理が、材料アブレーションの形で行われていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理が、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨、ドライエッチングまたは湿式化学エッチングによって行われていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記化学汚染を低減する前記表面(35)の処理の結果が、前記表面(35)の組織分布を変化させるものではないことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記処理が、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチングまたは湿式化学エッチングによって行われていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記処理が、例えば、超音波、紫外光もしくはオゾンを用いて、または超音波、紫外光もしくはオゾンから構成された併用処理によって材料をアブレーションしないものである、または、ステント材料自体を腐食させないエッチング媒体を用いて行われるものであることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記包装物(1)の全内容物が不活性であり、前記包装物(1)が不活性充填物(2)を含んでいることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項8】
a)前記包装物(1)内にカテーテル(5、6)が配置され、前記カテーテル(5、6)に前記ステント(3)が装着されており、
b)バルーンカテーテル(5)またはチューブカテーテル(6)が、バルーン拡張型または自己拡張型ステント(3)に相補的に割り当てられていることを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項9】
a)前記包装物(1)が、基部(10)とカバー(11)とを備えた容器(12)からなり、
b)前記基部(10)および/または前記カバー(11)が取外し可能であり、および/または
c)前記基部(10)および/または前記カバー(11)が、開口されるべき入口(110)を有し、
d)前記ステント(3)を前記包装物(1)から取り出すことができるようになっており、または
e)カテーテル(5、6)に装着された前記ステント(3)を前記カテーテル(5、6)と共に前記包装物(1)から取り出すことができるようになっている
ことを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項10】
a)前記カテーテル(5、6)が、前記遠位端にチップ(55、65)を有しており、
b)前記チップ(55、65)とは反対側の前記カテーテル(5、6)のシャフト(52、62)の近位端が、前記入口(110)を通って前記包装物(1)の外に突出していることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項11】
a)前記基部(10)または前記カバー(11)には、シャフト(41)を通す通路(100)があり、前記シャフトは、内側に向かって前記包装物(1)内で一体型のクリンプ装置(4)のジョー(40)に達すると共に、外側に向かって、前記クリンプ装置(4)を作動させる作動子(42)に達し、
b)前記開口されるべき入口(110)が、前記通路(100)とは反対側の前記カバー(11)または前記基部(10)に存在して、前記カテーテル(5、6)を通す役割をするものであり、
c)ガイド心軸(43)が、前記クリンプ装置(4)を通り抜けて軸方向に延在しており、前記カテーテル(5、6)のガイドワイヤ内腔(53、63)に完全に挿入された後、安定化および位置決めの目的で使用されることを特徴とする、請求項1〜10の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項12】
前記開口されるべき入口(110)が、貫通可能な封止材または有孔材料からなっていることを特徴とする、請求項9〜11の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ステント(3)および/または前記カテーテル(5、6)および/または前記クリンプ装置(4)を固定する支持要素(131〜133)が前記包装物(1)内で延びていることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ステント(3)が、動脈瘤の場合に貼付するためのステントグラフトを形成するように、カバー付きで具現化されていることを特徴とする、請求項1〜13の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項1】
血管の病変部を治療するための医療用インプラントとしての金属製のステント(3)と、前記ステント(3)が保護状態で配置された内部容積部を有する包装物(1)とからなる装置であって、
a)前記ステント(3)が、
aa)協働して管形状を形成する多数のウェブ(33)と、
ab)間にステント内腔(34)が延在する近位端(31)および遠位端(32)と、
ac)親水性を有する表面(35)と、
を有する装置において、
b)親水性の尺度としての、前記表面(35)上に位置する水滴の接触角が処理前の接触角に比べて縮小されることとなる処理によって、前記表面(35)上で大気由来の分子状化学汚染物質、主として炭化水素が大幅に低減されているとともに、
c)前記ステント(3)が、大気からの自然の再汚染を防止するために、前記包装物(1)内に不活性状態で保存されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記化学汚染を低減する前記表面(35)の処理が、材料アブレーションの形で行われていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理が、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨、ドライエッチングまたは湿式化学エッチングによって行われていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記化学汚染を低減する前記表面(35)の処理の結果が、前記表面(35)の組織分布を変化させるものではないことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記処理が、イオン衝撃としてのスパッタリング、放電加工、電解研磨、プラズマ活性化、レーザアブレーション、機械的研磨法、ドライエッチングまたは湿式化学エッチングによって行われていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記処理が、例えば、超音波、紫外光もしくはオゾンを用いて、または超音波、紫外光もしくはオゾンから構成された併用処理によって材料をアブレーションしないものである、または、ステント材料自体を腐食させないエッチング媒体を用いて行われるものであることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記包装物(1)の全内容物が不活性であり、前記包装物(1)が不活性充填物(2)を含んでいることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項8】
a)前記包装物(1)内にカテーテル(5、6)が配置され、前記カテーテル(5、6)に前記ステント(3)が装着されており、
b)バルーンカテーテル(5)またはチューブカテーテル(6)が、バルーン拡張型または自己拡張型ステント(3)に相補的に割り当てられていることを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項9】
a)前記包装物(1)が、基部(10)とカバー(11)とを備えた容器(12)からなり、
b)前記基部(10)および/または前記カバー(11)が取外し可能であり、および/または
c)前記基部(10)および/または前記カバー(11)が、開口されるべき入口(110)を有し、
d)前記ステント(3)を前記包装物(1)から取り出すことができるようになっており、または
e)カテーテル(5、6)に装着された前記ステント(3)を前記カテーテル(5、6)と共に前記包装物(1)から取り出すことができるようになっている
ことを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項10】
a)前記カテーテル(5、6)が、前記遠位端にチップ(55、65)を有しており、
b)前記チップ(55、65)とは反対側の前記カテーテル(5、6)のシャフト(52、62)の近位端が、前記入口(110)を通って前記包装物(1)の外に突出していることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項11】
a)前記基部(10)または前記カバー(11)には、シャフト(41)を通す通路(100)があり、前記シャフトは、内側に向かって前記包装物(1)内で一体型のクリンプ装置(4)のジョー(40)に達すると共に、外側に向かって、前記クリンプ装置(4)を作動させる作動子(42)に達し、
b)前記開口されるべき入口(110)が、前記通路(100)とは反対側の前記カバー(11)または前記基部(10)に存在して、前記カテーテル(5、6)を通す役割をするものであり、
c)ガイド心軸(43)が、前記クリンプ装置(4)を通り抜けて軸方向に延在しており、前記カテーテル(5、6)のガイドワイヤ内腔(53、63)に完全に挿入された後、安定化および位置決めの目的で使用されることを特徴とする、請求項1〜10の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項12】
前記開口されるべき入口(110)が、貫通可能な封止材または有孔材料からなっていることを特徴とする、請求項9〜11の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ステント(3)および/または前記カテーテル(5、6)および/または前記クリンプ装置(4)を固定する支持要素(131〜133)が前記包装物(1)内で延びていることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ステント(3)が、動脈瘤の場合に貼付するためのステントグラフトを形成するように、カバー付きで具現化されていることを特徴とする、請求項1〜13の少なくとも一項に記載の装置。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【公表番号】特表2011−526163(P2011−526163A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515045(P2011−515045)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000190
【国際公開番号】WO2010/000080
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510325765)クヴァンテック アーゲー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000190
【国際公開番号】WO2010/000080
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510325765)クヴァンテック アーゲー (2)
【Fターム(参考)】
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