説明

包装食品の製造方法

【課題】液状成分とともに多量の固形成分を含む食品を少量ずつ小分けにして袋詰めしてなる包装食品を、従来の充填包装機をそのまま利用して、連続的に安定して製造することができる包装食品の製造方法を提供する。
【解決手段】液状成分とともに固形成分を含む食品20を、投入ノズル1から筒状フィルム12内に投入し、熱シール工程、切断工程を経てピロー包装してなる包装食品を製造するにあたり、液状成分に加工でんぷんを加えてゲル化させて固形成分と混ぜ合わせておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状成分とともに多量の固形成分を含む食品を筒状フィルム内に投入し、熱シール工程、切断工程を経てピロー包装してなる包装食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングなどの液状又はペースト状の流動物を少量ずつ小分けして、袋詰め(ピロー包装)にした包装食品が知られている。
この種の包装食品は、例えば、特許文献1などに記載されているように、製袋ガイドによって筒状に形成されたシート状フィルムの合わせ面を縦方向に熱シールして筒状フィルムを形成し、この筒状フィルムの内部に配置させた投入ノズルから筒状フィルム内に食品を投入した後に、その食品の上位側がしごきローラで挟まれて、しごかれながら筒状フィルムが下方に送られて形成される空充填部を幅方向に熱シールし、次いで、熱シールされた部分を切断することによって製造されている(図3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−171137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術は、流動性のよい食品には好適に利用し得るが、食品が固形成分を多量に含むなどして流動性が悪くなってしまうような場合には、食品が投入パイプに詰まってしまうという問題があった。
例えば、フレーク状のツナ製品(ツナの油漬け)のように、多量の肉片を調味液などの液状物と混ぜ合わせた流動性の悪いものを充填しようとすると、比較的大径(例えば、直径16mm程度)の投入パイプを用いても肉片が詰まってしまい、肉片と調味液とをバランスよく投入するのが困難であった。
【0005】
その結果、連続的な製造を安定して行うことができないだけでなく、製造された包装食品には、包装食品ごとのばらつきが発生してしまい、肉片のみ、又は調味液のみが充填された包装食品ができてしまうこともあった。
そして、このような不具合は、一袋当たりの食品充填量が少ない(例えば、50g以下)ときに顕著であった。
【0006】
また、食品の流動性が悪いと、しごきローラによる空充填部の形成が十分になされず、食品(特に、固形成分)がシール部に噛み込んでしまう。このようにして噛み込まれた食品は、シール部の切断面から脱落したり、外気に触れて経時的にかびてきたりするなどするため、商品価値を著しく損ねてしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、液状成分とともに多量の固形成分を含む食品を少量ずつ小分けにして袋詰めしてなる包装食品を、従来の充填包装機をそのまま利用して、連続的に安定して製造することができる包装食品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る包装食品の製造方法は、液状成分とともに、固形成分を含む食品を、フィルム材を筒状に製袋してなる筒状フィルム内に投入し、熱シール工程、切断工程を経てピロー包装してなる包装食品を製造するにあたり、前記食品を前記筒状フィルムに投入するに先だって、前記液状成分に加工でんぷんを加えてゲル化させて、前記固形成分と混ぜ合わせておく方法としてあり、前記液状成分は、粘度1000〜8000mPa・sとなるようゲル化させる方法としてある。
【0009】
このような方法とすることにより、液状成分と固形成分とを均一に混じり合わせることができるとともに、食品の流動性を確保して、筒状フィルム内に食品を投入する際に食品が投入ノズルに詰まってしまったり、シール部への食品の噛み込みが生じてしまったりするのを有効に回避することができる。
その結果、多量の固形成分を含む流動性の悪い食品であっても、小容量で小分けされた包装食品を工業的に効率よく製造することができる。
なお、本発明において食品とは、ペット用のえさなどを含む広い概念のものである。
【0010】
また、本発明に係る包装食品の製造方法は、ゲル化させた前記液状成分の粘度を、加熱処理によってゲル化前の粘度とほぼ等しくなるように不可逆的に低下させる方法とすることができる。
このような方法とすれば、液状成分の粘度を本来の粘度に戻すことで、食品を食した際の食感に違和感が生じてしまうようなことがない。
【0011】
このような本発明に係る包装食品の製造方法に用いる前記加工でんぷんとしては、粘化しやすく、透明なゲルを形成することができることから、ワキシーコーンスターチをベースに加工されたでんぷんを用いるのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る包装食品の製造方法は、前記食品中に占める前記固形成分の割合が、15重量%以上であるときに、その効果が顕著となり、このような多量の固形成分を含む食品であっても、小容量で小分けされた包装食品を工業的に効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液状成分とともに固形成分を含む食品であっても、その流動性を確保して少量ずつ小分けにして袋詰めしてなる包装食品を、連続的に安定して製造することができる。
しかも、袋詰めした後は、その食品本来の粘度に戻すことができるので、食感に違和感を生じさせることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、図1は、本発明に係る包装食品の製造方法を実施するのに好適な縦型充填包装機の一例を示す概略側面図であり、図2は、同概略正面図である。
【0015】
図示する縦型充填包装機によれば、原単ロール10から順次繰り出されるシート状フィルム11を製袋ガイド3により筒状として、その合わせ面を縦シール装置4で縦方向に熱シールして筒状フィルム12を形成しながら、この筒状フィルム12内に投入ノズル1から食品20を投入し、次いで、筒状フィルム12を横シール装置7で幅方向に熱シールした後に、シール部を切断することによって、食品20を少量ずつ小分けにして袋詰め(ピロー包装)された包装食品を連続して製造することができる。
【0016】
ここで、図示する例にあっては、シート状フィルム11を筒状とするための製袋ガイド3が、投入パイプ2の外周部に取り付けられている。
そして、この製袋ガイド3に案内されて、投入パイプ2の外周に沿って筒状とされたシート状フィルム11が、製袋ガイド3の下方に設けられた縦シール装置4により、その合わせ面が熱シールされて筒状フィルム12とされる。
【0017】
このようにして筒状に製袋された筒状フィルム12は、扁平に押しつぶされるようにしながら、投入パイプ2の下方に設置された送りローラ5により、両端部を狭持しつつ下方に送られるが、この際、投入パイプ2内に挿通されるようにして設置された投入ノズル1から、図示しない計量装置で計量された食品が、筒状フィルム12内に投入される。
【0018】
また、送りローラ5の下方には、筒状フィルム12の送り方向に沿って順に、しごきローラ6、横シール装置7が設置されており、しごきローラ6は、筒状フィルム12を介して対向配置された一対の円柱状ローラ6a,6bを備え、各ローラ6a,6bが筒状フィルム12の送り方向に直交して近接、離間するように設けられている。横シール装置7も同様に、筒状フィルム12を介して対向配置され、筒状フィルム12の送り方向に直交して近接、離間する一対のシールバーユニット7a,7bからなっており、各シールバーユニット7a,7bは、図示しない切断刃を備えている。
【0019】
次に、本実施形態において包装食品を製造する工程を概念的に示す図3の例において、食品20が投入された筒状フィルム12は(図3(a)参照)、食品20の上位側がしごきローラ6に挟み込まれて(図3(b)参照)、送りローラ5に同期して回転するしごきローラ6により、しごかれながら下方に送られ(図3(c)参照)、このとき、筒状フィルム12には、図示するような食品20のない空充填部13が形成される。
【0020】
そして、図中矢印方向に近接する横シール装置7のシールバーユニット7a,7bに挟まれて、筒状フィルム12に形成された空充填部13が幅方向に熱シールされるとともに、シールバーユニット7a,7bが備える切断刃によってシール部を切断することにより、食品20が少量ずつ小分けに袋詰めにされた包装食品が製造される(図3(d)参照)。
【0021】
なお、横シール装置7による熱シール工程と切断工程を終えた後、しごきローラ6の各円柱状ローラ6a,6bと、横シール装置7の各シールバーユニット7a,7bは、それぞれ離間して再び食品20が筒状フィルム12内に投入されて(図3(a)参照)、上記したような包装食品の製造が繰り返し連続して行われる。
【0022】
本実施形態にあっては、このような縦型充填包装機を用いて、液状成分とともに、固形成分を含む食品20を筒状フィルム12内に投入し、熱シール工程、切断工程を経てピロー包装してなる包装食品を製造するが、固形成分としては、例えば、フレーク状にほぐしたツナの肉片、とり肉のささみ、鮭の肉片、スイートコーンなどが用いられ、液状成分としては、例えば、調味液、サラダ油、酢、酒、しょうゆなどが用いられる。これらの固形成分、液状成分は、上記したもののなから、必要に応じて二種以上を混合して用いることもできる。
【0023】
また、筒状フィルム12を形成するフィルム材としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂,ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート,ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂などの未延伸フィルムや、一軸又は二軸延伸フィルムを用いることができる。
さらに、これらのフィルム材は、単層で、又は二種以上を積層して用いることができるほか、アルミニウム等の金属箔、金属又は金属酸化物の蒸着フィルムなどを積層して用いることもできる。
【0024】
そして、本実施形態にあっては、食品20を筒状フィルム12に投入するに先だって、液状成分に加工でんぷんを加えてゲル化させ、ゲル化された液状成分と、固形成分とを混ぜ合わせることによって食品20を調製しておく。
このとき、二種以上の液状成分が用いられていれば、加える加工でんぷんとの相容性のよい方の液状成分をゲル化するのが好ましい。
【0025】
これにより、液状成分と固形成分とを均一に混じり合わせることができるとともに、食品20の流動性を確保して、投入ノズル1から筒状フィルム12内に食品20を投入する際に、食品20が投入ノズル1に詰まってしまうのを有効に回避することができる。
また、しごきローラ6により食品20の上位側をしごいて筒状フィルム12に空充填部13を形成するにあたり、食品20の流動性を確保することで、空充填部13に食品20が残留するのを抑止して、シール部への食品20の噛み込みを有効に回避することもできる。
【0026】
また、加工でんぷんを加えて液状成分をゲル化するに際し、ゲル化後の液状成分の粘度が、1000〜8000mPa・sとなるようにするのが好ましい。ゲル化させた液状成分の粘度が上記範囲に満たないと、固形成分を十分に分散しなくなってしまう傾向にあるという不具合がある。また、上記範囲を超えてしまうと、充填機が目詰まりを起こしやすくなってしまうという不具合がある。
【0027】
また、液状成分の粘度が、ゲル化によって本来の粘度と異なっていると、包装食品を開封して食品20を食した際に、その食感に違和感が生じてしまう。このため、包装食品を最終製品とする際の加熱殺菌処理によって、ゲル化させた液状成分の粘度を、ゲル化前の粘度とほぼ等しくなるように不可逆的に低下させるのが好ましい。
【0028】
液状成分をゲル化させる加工でんぷんとしては、例えば、粘化しやすく、透明なゲルを形成することができることから、ワキシーコーンスターチをベースに加工されたでんぷんを用いるのが好ましい。
【0029】
このような本実施形態の包装食品の製造方法は、液状成分とともに固形成分を含む食品20をピロー包装するものを対象とするが、食品20中に占める固形成分の割合が、15重量%以上である場合に本実施形態の効果が顕著であり、本実施形態によれば、このような多量の固形成分を含む食品20であっても、例えば、50g以下(好ましくは、10g程度)の小容量で小分けされた包装食品を工業的に効率よく製造することができる。
【0030】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0031】
[実施例]
まず、調味液15.8gに、グルメスター(商品名;松谷化学工業株式会社製)0.2gを加えてゲル化させ、このゲル化させた調味液(粘度2500mPa・s)に、フレーク状にほぐしたツナの肉片60g、サラダ油24gを、全体が均一になるように混ぜ合わせて食品を調製した。
次いで、図1に示す充填包装機により、上記のようにして調製された食品を直径15mmの投入ノズルから筒状フィルム内に投入して、容量20gの包装食品を製造したところ、包装食品ごとのばらつきがない、ピロー包装された均一なツナ製品を連続的に安定して製造することができた。包装食品のシール部は密封されており、食品の漏れも認められなかった。
また、調製された食品を、115℃、40分で加熱殺菌処理をした後に、調味液の粘度を測定したところ、その値は本来の粘度とほぼ同じ80mPa・sであり、ツナ製品の食感に違和感はなかった。
【0032】
[比較例]
調味液をゲル化させなかった以外は上記実施例と同様にして、容量20gの包装食品を製造しようとしたところ、投入ノズルにツナの肉片が詰まってしまい、包装食品を連続的に安定して製造することができなかった。また、製造された包装食品は、個々の包装食品ごとのばらつきが大きかった。
【0033】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。また、本発明に適用される充填包装機の具体的な構成は前述したものに限定されず、従来公知の種々の充填包装機を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明は、液状成分とともに多量の固形成分を含む食品をピロー包装して、少量ずつ小分けされた包装食品を製造するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る包装食品の製造方法を実施するのに好適な縦型充填包装機の一例を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係る包装食品の製造方法を実施するのに好適な縦型充填包装機の一例を示す概略正面図である。
【図3】本発明に係る包装食品の製造方法が実施される工程を概念的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 投入ノズル
3 製袋ガイド
4 縦シール装置
6 しごきローラ
7 横シール装置
12 筒状フィルム
20 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状成分とともに、固形成分を含む食品を、フィルム材を筒状に製袋してなる筒状フィルム内に投入し、熱シール工程、切断工程を経てピロー包装してなる包装食品を製造するにあたり、
前記食品を前記筒状フィルムに投入するに先だって、前記液状成分に加工でんぷんを加えてゲル化させて、前記固形成分と混ぜ合わせておくことを特徴とする包装食品の製造方法。
【請求項2】
前記液状成分を、粘度1000〜8000mPa・sとなるようゲル化させる請求項1に記載の包装食品の製造方法。
【請求項3】
ゲル化させた前記液状成分の粘度を、加熱処理によってゲル化前の粘度とほぼ等しくなるように不可逆的に低下させる請求項1又は2のいずれか1項に記載の包装食品の製造方法。
【請求項4】
前記加工でんぷんとして、ワキシーコーンスターチをベースに加工されたでんぷんを用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装食品の製造方法。
【請求項5】
前記食品中に占める前記固形成分の割合が、15重量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−11785(P2008−11785A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186452(P2006−186452)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(591273960)はごろもフーズ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】