説明

化合物半導体結晶

【課題】低コストで製造することができる大型で良質な半導体結晶を提供する。
【解決手段】化合物からなる半導体結晶50であって、直径が6インチ以上であり、平均転位密度が1×104cm-2以下である。半導体結晶50はGaAsであるか、または、CdTe、InAsおよびGaSbからなる群から選ばれるいずれか1つであって、単結晶である。半導体結晶50のボロン濃度は、3×1016cm-3以下である。さらに、インゴットの固化率0.1〜0.8の領域にわたるカーボン濃度は、0.5×1015cm-3〜1.5×1015cm-3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体結晶に関するものであり、特に、光デバイス、電子デバイス等に利用されるGaAs基板等を製造するための化合物半導体結晶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体結晶の中で、たとえばGaAs結晶は、工業的には、引上げ法(LEC法)、横型ボート法(HB法、HGF法)、縦型ボート法(VB法、VGF法)によって製造される。特に、引上げ法や縦型ボート法は、得られる結晶の断面が基板と同じ円形であるため歩留りが向上することや、製造される結晶の対称性により大口径化が容易であることから、単結晶の製造方法として、横型ボート法よりも有利な点が多い。
【0003】
また、半導体結晶の製造装置の一例としては、ステンレス製の高圧容器内にカーボンヒータおよび原料融液を収容する坩堝を設置したものがある。このような装置は、LEC法、VB法またはVGF法等に用いられる。
【0004】
図5は、このようなステンレス製高圧容器を用いた装置の一例であって、引上げ法に用いられる半導体結晶の製造装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【0005】
図5を参照して、この装置においては、ステンレス製高圧容器11内に、下軸4により支持された坩堝2と、カーボンヒータ3とを備えている。カーボンヒータ3とステンレス製高圧容器11との間には、カーボンヒータ3の加熱によるステンレス製高圧容器11の損傷を防止するため、断熱材5が介在されている。
【0006】
このような装置を用いて結晶成長を行なう際には、まず、坩堝2内にGaAs原料を充填し、カーボンヒータ3により加熱して原料融液60を作製する。原料融液60からのAsの蒸発を防止するため、原料融液60の表面を液体封止材70で封止し、先端に種結晶55を取付けた引上げ軸14で矢印の方向に引上げながら、高圧雰囲気下で結晶成長を行なう。このようにして、GaAs単結晶50が得られる。
【0007】
図6は、ステンレス製高圧容器を用いた装置の他の例であって、VB法またはVGF法等の縦型ボート法に用いられる半導体結晶の製造装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【0008】
図6を参照して、この装置においては、坩堝2の下部に種結晶55を設置しておき、下軸4を矢印のように下方へ移動させたり、温度分布を移動させることにより、種結晶55から上方へ順に原料融液60を固化させて、結晶成長を行なう。なお、他の構成については、図5に示す装置と同様であるので、その説明は省略する。
【0009】
また、結晶成長装置の他の例としては、石英アンプル内に、原料融液を収容する坩堝またはボートを封入し、アンプルの外側から加熱するものがある。この装置は、HB法、HGF法等の横型ボート法や、VB法、VGF法等の縦型ボート法に用いられる。
【0010】
図7は、このような石英アンプルを用いた装置の一例の概略構成を示す断面図である。
図7を参照して、この装置においては、石英アンプル21内に坩堝2が封入され、アンプル21の外側にはカンタル等のヒータ3を備えている。石英アンプル21は下軸4により支持され、下軸4を矢印のように下方へ移動させたり、温度分布を移動させることにより、結晶成長を行なう。
【0011】
一方、結晶を育成するためのGaAs原料の合成方法としては、坩堝に入れたGaと、坩堝外のAsソースの温度を制御して発生させたAs蒸気とを反応させる方法(以下「Asインジェクション法」という)と、GaとAsを同時に坩堝内にチャージして昇温し、一気に反応させる方法とがある。いずれの方法も高圧容器内で液体封止下で行なわれるが、特に、後者の方法は、Asの蒸気圧が非常に高くなるため、数10気圧もの高圧を必要とする。
【0012】
GaAs多結晶の製造は、上記のようにして合成した原料を冷却することにより行なわれる。一方、単結晶の製造は、一旦作製した多結晶を原料として坩堝にチャージして行なう方法と、原料合成後引続いて単結晶の育成を行なう方法とがある。
【0013】
その他、特許文献1には、炭化珪素を半導体の熱処理炉に用いる例が記載されている。しかしながら、このような装置を単結晶の成長に用いた場合の効果については何ら開示がされていない。
【0014】
また、特許文献2には、装置全体をステンレス製の容器に入れてGaAs等の半導体単結晶を引上げ法によって成長させる装置が記載されている。この装置の特徴は、炭化珪素製の容器が高温にさらされるため、耐熱性のシール材として固体ガスケットを利用する点にある。しかしながら、耐熱性のシール材は、気密性が悪く、内外圧力差を十分につけることができない。
【0015】
また、特許文献3には、炭化珪素を坩堝として用いる例が記載されている。しかしながら、炭化珪素を反応管として用いることについては、何ら開示されていない。
【0016】
半導体素子の集積度の高まりとともに、6インチ以上の大型のGaAs半導体単結晶の要求が強まっている。一方、より低コストでかつ高品質の半導体結晶が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平7−221038号公報
【特許文献2】特開平2−233578号公報
【特許文献3】特開平2−120292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
半導体素子の集積度が高くなるのに伴い、半導体結晶の大型化が必要となる。化合物半導体結晶の場合、現在、直径4インチのGaAs結晶が実用化されている。さらに、このような化合物半導体結晶を大型化する必要性は高くなっており、そのための種々の研究開発がなされている。しかしながら、大型の化合物半導体結晶の量産には多くの制限があり、4インチを超える大型の化合物半導体結晶の製造については実用化に至っていない。
【0019】
たとえば、上述のような図5または図6に示すステンレス製高圧容器を用いた場合には、ヒータとステンレス容器との間に断熱層を挿入しなければならず、必然的に設備の大きさが大きくなってしまい、設備コストが高くつくという問題点があった。
【0020】
さらに、図5または図6に示す方法では、ヒータとしてカーボンを用いている。GaAsの融点は1238℃であるから、原料融液を作製する際には約1300℃の高温に加熱する必要がある。ここで、カーボンの蒸気圧は1300℃程度の高温においても小さい。したがって、カーボンはヒータとして用いるのに適した材料である。しかしながら、GaAs半導体単結晶の製造では、カーボンが電気的に活性な元素である。そのため、高品質な単結晶を得るためにはカーボンの濃度を制御する必要がある。ここで、上述のような図5または図6に示すステンレス製高圧容器を用いた方法の場合には、カーボンと合成されるGaAsとが同じ空間の中にあるので、含有量の制御をするために種々の工夫が必要となる。その結果、設備コストが高くついてしまうという問題があった。
【0021】
一方、上述のような図7に示す石英アンプルを用いた場合には、アンプルの変形または割れが発生するおそれがあるため、原料を大量にチャージして大型の結晶を製造することが困難であるという問題があった。また、アンプルを封止するため、原料のその場合成ができず、Asインジェクション法に適用できないという問題があった。さらに、アンプルを封止後は、雰囲気ガスの制御ができないという問題があった。
【0022】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解決し、高品質でかつ大型という2つの要求を満足し得るGaAs等の化合物半導体結晶およびこれを用いた化合物半導体結晶基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明にかかる化合物半導体結晶は、化合物からなる半導体結晶であって、直径が6インチ以上であり、平均転位密度が1×104cm-2以下であることを特徴としている。
【0024】
本発明にかかる化合物半導体結晶には、たとえばGaAs、CdTe、InAs、GaSb等の化合物半導体が広く含まれるものとする。また、化合物半導体結晶には、単結晶および多結晶が含まれるものとする。
【0025】
本発明にかかる化合物半導体結晶基板は、化合物からなる半導体結晶基板であって、直径が6インチ以上であり、平均転位密度が1×104cm-2以下であることを特徴としている。
【0026】
なお、本願明細書において、「平均転位密度」とは、結晶から切出した基板をエッチングし、エッチピット密度として評価したときの転位密度の面内の平均値をいう。
【0027】
また、本発明において、「平均転位密度が1×104cm-2以下である」とは、結晶のいずれの位置から切出した6インチ径以上の基板についても、その平均転位密度が1×104cm-2以下であることをいう。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる化合物半導体結晶は、直径が6インチ以上であって、平均転位密度が1×104cm-2以下であり、欠陥密度が極めて低い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施の形態にかかる化合物半導体結晶を製造する場合に用いることができる製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1における反応管とステンレス製フランジとの接続部分を拡大して示す部分断面図である。
【図3】本実施の形態にかかる化合物半導体結晶を製造する場合に用いることができる他の製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の比較の形態としての化合物半導体結晶を製造する場合に用いる製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】従来のステンレス製高圧容器を用いた半導体結晶の製造装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【図6】従来のステンレス製高圧容器を用いた半導体結晶の製造装置の他の例の概略構成を示す断面図である。
【図7】従来の石英アンプルを用いた半導体結晶の製造装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
≪化合物半導体結晶≫
本願発明の効果が最も顕著に現れるのは、VB法によって成長させた化合物半導体単結晶である。本願発明によれば、直径が6インチ以上の大きさをもっており、かつ、平均転位密度が1×104cm-2以下の化合物半導体結晶が容易に得られる。さらに冷却方法などをコントロールすることにより、平均転位密度が1〜5×103cm-2程度の化合物半導体結晶を提供することもできる。このような低転位密度であれば、電気特性を均一化することができる。
【0031】
また、本願発明によれば、ホウ素(B)の濃度が3×1016cm-3以下、好ましくは1×1016cm-3以下の化合物半導体結晶を提供することもできる。ホウ素(B)は、イオン注入後の活性化率を低下すると言われている。したがって、ホウ素(B)の濃度を低下させることにより、デバイス特性を改善することができる。
【0032】
また、本願発明にかかる化合物半導体結晶は、転位の発生が少ないため、残留歪みが少ない。そのため、サイズが大きくなった場合でも、500〜700μmの薄さで実用に耐える十分な強度を有している。光弾性法で測定した基板の平均残留歪みは、1×10-5以下である。
【0033】
また、本願発明にかかる化合物半導体結晶は、インゴットとしてみたとき、長さ方向におけるカーボン濃度分布の傾斜が極めて小さいという特徴を有している。すなわち、反応管内のCOガス濃度を制御することにより、長さ方向にわたり、炭素(C)濃度分布を均一にすることができる。本願発明によれば、直径が6インチ以上であって、平均転位密度が1×104cm-2以下であり、固化率0.1〜0.8の領域にわたり、炭素濃度が目標値に対して±50%以内に制御されている化合物半導体単結晶インゴットを得ることができる。すなわち、例えば炭素濃度を1×1015cm-3に設定した場合、実際に得られた結晶の炭素濃度は、その全長にわたってバラツキが設定値に対して±50%以内に制御されている。したがって、このインゴットから基板を切出したときの歩留りが向上するという効果を有する。
【0034】
このように本発明によって炭素濃度のバラツキを小さくすることができるのは、反応管内のCOガス濃度を、成長を通して精密に制御することができるためである。この効果は、反応管の材質をカーボンを含まないものにするか、カーボンを含まない材質でコーティングされたものを利用することにより、より有効になる。さらに、後述のように、本発明によれば、従来の高圧チャンバによる結晶成長の場合のようにカーボンヒータを用いない。そのため、反応管内をカーボンフリーの状態にして結晶成長させることができるため、炭素濃度分布を均一にすることができる。
【0035】
また、後述する実施例1および2では、直径が6インチの化合物半導体結晶の製造の例を示すが、本願発明は、8インチなどのさらに大きなサイズの化合物半導体結晶の製造の場合にも適用できる。
【0036】
≪化合物半導体結晶の製造装置および該製造装置を用いた製造方法≫
本発明にかかる化合物半導体結晶を製造する場合に用いることができる製造装置は、少なくとも一方端部に開放端を有し、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか1つの材料からなる反応管、または、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライトおよびカーボンからなる群から選ばれるいずれか1つの材料を基材としその表面に耐酸化性または気密性の膜を形成した複合材からなる反応管と、反応管の周囲であって、大気圧雰囲気下に配設された加熱手段と、反応管を密閉するように、開放端に取付けられるフランジと、反応管内に設置された、化合物半導体結晶の原料を収容するための坩堝と、を備えている。
【0037】
なお、本願明細書において、「ムライト」とは、酸化アルミニウムと酸化珪素との混合物をいう。
【0038】
また、「耐酸化性または気密性の膜」としては、たとえば、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、または酸化珪素からなる薄膜等が挙げられ、これらの膜は、基材の上にコーティングにより形成することができる。
【0039】
また、「複合材からなる反応管」としては、たとえば、グラファイト等のカーボンからなる基材の表面に、上述した耐酸化性または気密性の膜をコーティングにより形成したものや、炭化珪素からなる基材の表面を酸化させたもの、またはその表面に酸化珪素からなる薄膜をコーティングにより形成することにより耐酸化性を向上させたもの等が挙げられる。
【0040】
より好ましくは、本発明にかかる化合物半導体結晶を製造する製造装置は、少なくとも一方端部に開放端を有し、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか1つの材料からなる反応管、または、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライトおよびカーボンからなる群から選ばれるいずれか1つの材料を基材としその表面に耐酸化性または気密性の膜を形成した複合材からなる反応管と、反応管の周囲であって、大気圧雰囲気下に配設された加熱手段と、反応管を密閉するように、開放端に取付けられるフランジと、反応管内に設置された、化合物半導体結晶の原料を収容するための坩堝と、フランジと反応管の開放端との接続部を封止するための封止部材と、封止部材による封止機能を維持できるように、フランジと反応管の開放端との接続部の温度を維持するための封止維持手段と、を備えている。
【0041】
上記製造装置において、封止維持手段は、反応管の加熱手段による加熱部と、フランジと反応管の開放端との接続部との間に、断熱材を設けることを含む。
【0042】
上記製造装置において、封止維持手段は、フランジに取付けられたジャケット内に、冷却水を循環することを含む。
【0043】
上記製造装置において、封止維持手段は、フランジと反応管の開放端との接続部を空冷することを含む。
【0044】
上記製造装置は、フランジを介して坩堝に連結される軸部材をさらに備えている。
上記製造装置において、反応管は縦方向に配置されて用いられ、軸部材は反応管内部に設置された坩堝を上下に移動可能である。
【0045】
上記製造装置は、さらに、フランジを介して坩堝付近に少なくとも1ケ以上の温度測定手段を備えている。
【0046】
上記製造装置において製造される化合物半導体結晶はGaAs結晶が好ましい。
上記製造装置において、反応管の内部の圧力は大気圧より高くなるように維持され、反応管の外部の圧力は大気圧になっている。
【0047】
上記製造装置において、反応管内に化合物半導体結晶の第2の原料を収容するためのリザーバをさらに備え、リザーバは、坩堝内に第2の原料の気体を導入するためのパイプを有してもよい。このような装置において例えばGaAs結晶を製造する場合、坩堝内に収容する原料はGaであり、リザーバに収容する第2の原料はAsである。
【0048】
本発明にかかる化合物半導体結晶を製造する製造方法は、上記製造装置を用いることができ、少なくとも一方端部に開放端を有し、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか1つの材料からなる反応管、または、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライトおよびカーボンからなる群から選ばれるいずれか1つの材料を基材としその表面に耐酸化性または気密性の膜を形成した複合材からなる反応管中に、化合物半導体結晶の原料を収容した坩堝を設置するステップと、開放端にフランジを取付けて反応管を密閉するステップと、反応管内を不活性ガス雰囲気に保つステップと、反応管の周囲であって、大気圧雰囲気下に配設された加熱手段により、原料融液を形成するステップと、原料融液を固化させることにより、化合物半導体結晶を育成するステップと、を備えている。
【0049】
上記製造方法において、製造装置がさらに、リザーバおよびパイプを備える場合には、反応管中に化合物半導体結晶の原料を収容した坩堝を設置するステップは、坩堝内にGaを充填するステップと、パイプを有するリザーバ内にAsを充填するステップと、Gaを充填した坩堝とAsを充填したリザーバとを反応管中に設置するステップと、を含み、原料融液を形成するステップは、坩堝内に充填したGaを加熱手段によりGaAsの融点以上の温度まで加熱するステップと、リザーバ内に充填したAsを加熱手段により加熱して気化し、As蒸気を形成するステップと、形成されたAs蒸気をパイプを介してGa中に導入し、坩堝内にGaAs融液を形成するステップと、を含んでいる。
【0050】
上記製造方法において、化合物半導体結晶を育成するステップは、VB法を用いているが、VGF法を用いてもよい。
【0051】
以上説明したように、本発明にかかる化合物半導体結晶を製造する製造装置は、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか1つの材料からなる反応管、または、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライトおよびカーボンからなる群から選ばれるいずれか1つの材料を基材としその表面に耐酸化性または気密性の膜を形成した複合材からなる反応管を備えている。そのため、従来の石英アンプルを用いた場合のように、反応管の変形または割れが発生するおそれがなく、原料を大量にチャージして大型の結晶を製造することが可能となる。
【0052】
また、炭化珪素からなる反応管を用いた場合は、従来のステンレス製高圧容器と比較して安価であるため、このような製造装置によれば、化合物半導体結晶の製造における設備コストを大幅に低減することが可能となる。
【0053】
また、上記製造装置において、窒化珪素からなる反応管、窒化アルミニウムからなる反応管、酸化アルミニウムからなる反応管、または、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト等のカーボンを含んでいない基材からなる反応管を用いた場合、半導体材料にカーボンが混入することを防止することができる。その結果、半導体材料の高純度化を達成することができる。
【0054】
また、上記製造装置において、耐酸化性のないグラファイトのようなカーボン材料や、気密性のないポーラス状の酸化アルミニウムやムライト等の材料からなる基材を用いた場合でも、表面を耐酸化性または気密性のよい材料でコーティングすることによって、反応管の変形または割れの発生を有効に防止することができる。これらの基材となる材料は、非常に安価であるため、このような製造装置によれば、化合物半導体結晶を低コストで得ることができる。
【0055】
また、炭化珪素やグラファイトのようなカーボンを含む基材を用いる場合でも、表面をカーボンを含まない材料でコーティングすることによって、半導体材料にカーボンが混入することを防止することができる。また、ムライトのような低純度な基材を用いる場合でも、表面を純度の高い材料でコーティングすることによって、化合物半導体結晶の高純度化を達成することができる。
【0056】
また、上記製造装置において、反応管は、少なくとも一方端部に開放端を有し、この開放端にはフランジが取付けられる。そのため、従来の石英アンプルを用いた場合と異なり、反応管を繰返して使用することが可能となる。その結果、製造コストを低減することが可能となる。
【0057】
また、上記製造装置において、坩堝付近に温度測定手段を設けているため、再現性の高い結晶成長を行なうことができる。
【0058】
さらに、上記製造装置において、アンプルを封止する場合と異なり、原料のその場合成が可能となり、Asインジェクション法への適用も可能となる。また、アンプルを封止する場合と異なり、反応管内の雰囲気ガス分圧のその場制御も可能となり、不純物濃度の調整が容易となる。
【0059】
また、上記製造装置によれば、長さ方向におけるカーボン濃度分布の傾斜が極めて小さい化合物半導体単結晶が得られる。以下に、本発明にかかる化合物半導体結晶のうち、化合物半導体単結晶の具体的な製造方法の一例について、図1を用いて説明する。
【0060】
図1は、本実施の形態に係る化合物半導体結晶を製造する場合に用いることができる製造装置の概略構成を示す断面図である。
【0061】
図1を参照して、この装置は、内径が170mm、厚さが3mmで、両端部に開放端を有する炭化珪素製反応管1と、炭化珪素製反応管1の周囲の大気圧雰囲気下に配設された、ゾーン数が5個のカンタルヒータ3とを備えている。
【0062】
この製造装置の特徴は、図1に示すように、ヒータの外側をシールしていない点にある。従来のLEC法では、前述の特許文献2に記載されるように、高圧チャンバ内での結晶成長が必要であるため、反応性の低いカーボンヒータを用いていた。これに対して、この製造装置では、反応管の外側の大気中にヒータが設けられるため、コストの低い鉄系等のヒータを用いることができる。この種のヒータは容易に多段ゾーン化することができるため、非常に温度制御性のよい温度分布を形成することができる。さらに、カーボンヒータを用いない場合、炭化珪素製反応管内をカーボンフリーの状態にして結晶成長ができるため、結晶中の炭素濃度のバラツキを小さくすることもできる。
【0063】
炭化珪素製反応管1の両開放端には、ステンレス製のフランジ9が取付けられている。
図2は、炭化珪素製反応管1とステンレス製フランジ9との接続部分を拡大して示す部分断面図である。
【0064】
図2を参照して、炭化珪素製反応管1とステンレス製フランジ9との接続部分は、ウィルソンシール構造からなり、パッキン12が介在され、気密性が確保されるようになっている。なお、パッキン12としては、オーリング等の弾性体が用いられ、具体的にはゴムの他、フッ素樹脂等を用いることができる。パッキン12として使用できる材料の選択性が広いのは、図2に示すように、ウィルソンシール構造では、パッキン12は炭化珪素製反応管1よりも外側に存在するため、パッキン12の材料が炭化珪素製反応管1内で成長する化合物半導体結晶中に不純物として混入するおそれがないからである。
【0065】
また、この例では、炭化珪素製反応管1とステンレス製フランジ9との接続部分のシール部は、低温部に設けられている。そのため、気密性に優れたゴム、フッ素樹脂等の材料をシール材として用いることができるため、炭化珪素製反応管1の内外圧力差を十分に大きくとることができる。
【0066】
また、フランジ9にはジャケットが取付けられ、そのジャケット内に冷却水を循環することにより、炭化珪素製反応管1とフランジ9との接続部を冷却して、ヒータ3による加熱の際にも気密性が維持できるように構成されている。
【0067】
炭化珪素製反応管1とフランジ9との接続部の気密性を維持するためには、このようなジャケットを用いる他、たとえば接続部を強制的に空冷するか、反応管と接続部の距離を十分離して、雰囲気で空冷することもできる。
【0068】
炭化珪素製反応管1の上部に取付けられたフランジ9には、排気管挿入用ポート16と、ガス導入管挿入用ポート17とが形成されている。排気管挿入用ポート16には炭化珪素製反応管1内部を真空に排気するための排気管18が挿入され、また、ガス導入管挿入用ポート17には、炭化珪素製反応管1内部へガスを導入するためのガス導入管19が挿入されている。
【0069】
一方、炭化珪素製反応管1の下部に取付けられたフランジ9の中心には、上下動が可能な下軸4が貫通して設置され、下軸4の先端には、化合物半導体結晶の原料を収容するための坩堝2が載置されている。また、炭化珪素製反応管1の下部に取付けられたフランジ9には、熱電対挿入用ポート15が形成されている。熱電対挿入用ポート15には、坩堝2の側面付近の温度を測定するための熱電対13が挿入されている。上部フランジに熱電対ポートを設け、上方から坩堝内部に熱電対を挿入することもできる。熱電対は下軸内部を通すことにより、坩堝底部の温度を測定してもよい。なお、温度測定手段として、熱電対の他に、放射温度計を利用することもできる。
【0070】
このように構成される製造装置を用いて、以下のように、VB法により、6インチ径のGaAs単結晶を製造することができる。
【0071】
まず、下軸4の先端に載置された6インチ径の坩堝2の下端のキャプ部に、GaAs単結晶からなる種結晶を入れる。次に、坩堝2内に、20kgのGaAs多結晶原料と、原料融液60表面を封止するための300gのB2370をチャージする。
【0072】
この坩堝を、炭化珪素製反応管1内に設置し、フランジ9を取付けて密封する。続いて、排気管18を用いて、炭化珪素製反応管1内を真空に排気した後、カンタルヒータ3により昇温を行なう。昇温の途中で、ガス導入管19を用いて炭化珪素製反応管1内に窒素ガスを導入し、昇温完了時に炭化珪素製反応管1内の圧力が約2気圧になるように調整する。
【0073】
カンタルヒータ3による加熱によってGaAs多結晶原料を融解して原料融液60を形成する。種結晶の温度がGaAsの融点である1238℃付近になるように、また、坩堝2の側面の温度が約1250℃になるように調整した後、下軸4を2mm/時間の速度で矢印のように下方へ移動させる。
【0074】
このようにして、坩堝2の下端に入れられた種結晶から上方へ順に原料融液60を固化させることにより、GaAs単結晶50を成長する。
【0075】
上記実施の形態においては、両端部に開放端を有する酸化アルミニウム製反応管を備える装置の例を示したが、酸化アルミニウム製反応管の開放端は、少なくとも一方端部にのみ形成されていればよい。
【0076】
さらに、上記実施の形態においては、GaAs結晶の製造についてのみ説明したが、上記製造装置および製造方法は、GaAs結晶の他にCdTe結晶、InAs結晶、GaSb結晶等の化合物半導体結晶や、シリコン半導体結晶、ゲルマニウム半導体結晶にも適用できる。
【0077】
また、上記実施の形態においては、酸化アルミニウム製反応管を例にとって説明したが、反応管としては酸化アルミニウム単体からなるものの他、窒化珪素、窒化アルミニウムまたは炭化珪素の単体からなるものや、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライトまたはカーボンを基材とし、その表面に耐酸化性または気密性の膜を形成した複合材からなるもの等を用いることもできる。
【0078】
次に、本発明にかかる化合物半導体結晶のうち、化合物半導体多結晶の製造方法の一例について、図3を用いて説明する。
【0079】
図3は、本実施の形態にかかる化合物半導体結晶を製造する場合に用いることができる他の製造装置の概略構成を示す断面図である。反応管は窒化アルミニウムからなる。
【0080】
図3を参照して、この装置においては、断熱材8が介在されることにより、ゾーン数が5個のカンタルヒータ3が、断熱材8より上側の1ゾーンと下側の4ゾーンとに分割されている。また、窒化アルミニウム製反応管1の内部にも、ヒータの間に介在された断熱材8と同じ高さのところに、断熱材8が設置されている。
【0081】
窒化アルミニウム製反応管1内の断熱材8より下側には、坩堝2が設置されている。一方、窒化アルミニウム製反応管1内の断熱材8より上側には、リザーバ6が設置されている。このリザーバ6には、パイプ7が接続され、このパイプ7は坩堝2の内部にチャージされた原料融液60にまで達するように構成されている。
【0082】
なお、他の構成については、図1に示す製造装置と全く同様であるので、その説明は省略する。
【0083】
このように構成される製造装置を用いて、以下のように、VB法により、6インチ径のGaAs多結晶を製造することができる。
【0084】
まず、下軸4の先端に載置された6インチ径のpBN製坩堝2内に、14.5kgの高純度の液体Gaと、原料融液60表面を封止するための300gのB2370をチャージする。また、断熱材8の上に設置されたリザーバ6内に、15.5kgの高純度のAs80をチャージする。リザーバ6に接続されたパイプ7が、断熱材8に設けられた孔を通してその先端が液体Ga60中に達するように、リザーバ6と坩堝2の位置を調整する。これを窒化アルミニウム製反応管1内に設置し、フランジ9を取付けて密封する。
【0085】
続いて、排気管18を用いて、窒化アルミニウム製反応管1内を真空に排気した後、カンタルヒータ3により昇温を行なう。この際、坩堝2の側面に設置した熱電対13の温度が約1250℃になるように調整する。一方、リザーバ6内の温度は500℃以下に維持するように調整する。また、昇温の途中で、ガス導入管19を用いて窒化アルミニウム製反応管1内に窒素ガスを導入し、昇温完了時に窒化アルミニウム製反応管1内の圧力が約2気圧になるように調整する。
【0086】
その後リザーバ6内の温度を約650℃まで上昇させてAs蒸気を発生させ、パイプ7を通じてAs蒸気を液体Ga中に注入して反応させることにより、坩堝2内にGaAs融液60を作製する。
【0087】
GaAs融液の合成反応完了後、坩堝2の底部の温度がGaAsの融点である1238℃付近になるように調整した後、下軸を10mm/時間の速度で矢印のように下方へ移動させる。
【0088】
このようにして、坩堝の底部より順に原料融液60を固化させることにより、GaAs多結晶50を成長させる。
【0089】
以上、化合物半導体単結晶の製造方法および化合物半導体多結晶の製造方法について、異なる製造装置を用いた製造方法をそれぞれ説明したが、これらの製造方法および製造装置は相互に組み合わせて使用することができる。たとえば、図3の製造装置を用いで得られたGaAs多結晶体を粉砕したものを、図1の製造装置において原料として使用することができる。なお、図1の製造装置では種結晶が用いられているが、図3の製造装置では種結晶が用いられていない。
【0090】
以上の実施の形態においては、VB法に用いられる製造装置および製造方法の例のみを示した。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
図1の製造装置を用いて、上述の図1の製造装置による化合物半導体単結晶の製造方法と同様の方法により、炭化珪素製反応管を用いて、VB法により実際に直径が6インチのGaAs結晶を製造した。その結果、長さが25cmの単結晶が得られた。得られた結晶は転位密度が低く、成長中の反応管内のCOガス濃度が制御されていたため、炭素濃度のバラツキも小さく、高品質であった。
【0092】
さらに、本実施例により、同様の結晶成長を6回行なったときの平均歩留りは50%であった。このことから、ステンレス製の高圧容器を備えた従来の装置と、本実施例の炭化珪素製反応管を備えた装置との価格差を考慮すると、本実施例によって、GaAs単結晶の製造コストはステンレス製高圧容器を用いた場合に比べ約20%低減できることがわかった。
【0093】
(実施例2)
図3の製造装置を用いて、上述の図3の製造装置による化合物半導体多結晶の製造方法と同様の方法により、窒化アルミニウム製反応管を用いて、実際に直径が6インチのGaAs結晶を製造した。その結果、約30kgのGaAs多結晶が得られた。得られた多結晶の純度分析を行なったところ、マトリックス元素および炭素とホウ素以外は検出限界以下であり、非常に高品質であった。
【0094】
また、図6に示すような従来のステンレス製の高圧容器を備えた装置を用いて成長した結晶の品質と比べて、特に差は見られなかった。ステンレス製の高圧容器を備えた従来の装置と本実施例の窒化アルミニウム製反応管を備えた装置との価格差を考慮すると、本実施例によって、GaAs多結晶の製造コストは約30%低減できることがわかった。
【0095】
(比較例1)
図4の製造装置において、酸化アルミニウム製反応管を用いて、LEC法により実際に直径が6インチのGaAs結晶を製造した。
【0096】
ここで、図4は、本発明の比較の形態としての化合物半導体結晶を製造する場合に用いる製造装置の概略構成を示す断面図である。反応管は酸化アルミニウムからなる。
【0097】
図4を参照して、この装置は、主として引上げ法に用いられるものであり、両端部に開放端を有する酸化アルミニウム製反応管1と、酸化アルミニウム製反応管1の周囲に配設されたヒータ3とを備えている。酸化アルミニウム製反応管1の両開放端には、フランジ9が取付けられる。
【0098】
酸化アルミニウム製反応管1の下部に取付けられたフランジ9の中心には、下軸4が貫通して設置され、下軸4の先端には、坩堝2が載置されている。一方、酸化アルミニウム製反応管1の上部に取付けられたフランジ9の中心には、上下動が可能な引上げ軸14が貫通して設置されており、この引上げ軸14を矢印の方向に引上げながら結晶成長を行なう。
【0099】
このような製造装置を用いたLEC法では、結晶成長の際のAs抜けを防止するため、温度勾配を大きくする必要がある。その結果、得られた結晶の平均転位密度および残留歪の値は、実施例1で得られた結晶よりも大きくなった。
【0100】
また、この比較例1では構造上ヒータのゾーン数を容易に増やすことができるため、温度分布の制御性に優れている。その結果、結晶成長の後半における多結晶の発生を防止することができ、後述する比較例2よりも単結晶長が長くなった。
【0101】
(比較例2)
図5に示す従来のLEC法により、直径が6インチのGaAs結晶を製造した。
【0102】
比較例1と同様に、結晶成長の際のAs抜けを防止するため温度勾配を大きくする必要がある結果、得られた結晶の平均転位密度および残留歪の値は、実施例1で得られた結晶よりも大きくなった。
【0103】
また、従来のLEC法においては、構造上ヒータのゾーン数をあまり増やすことができないため、温度分布の制御性に限界がある。その結果、結晶成長の後半における多結晶の発生を防止することができず、比較例1と比較して単結晶長が短くなってしまった。
【0104】
(比較例3)
図6に示す従来の液体封止VB法により、直径が6インチのGaAs結晶を製造した。
【0105】
比較例2と同様に、構造上ヒータのゾーン数をあまり増やすことができないため、温度分布の制御性に限界がある結果、結晶成長の後半における多結晶の発生を防止することができず、実施例1と比較して単結晶長が短くなってしまった。
【0106】
また、従来のLE−VB法においては、ヒータ、断熱材等のカーボン製部品が存在する環境の低圧力下で結晶成長が行なわれる。その結果、実施例1と比較して、得られた結晶のC濃度(カーボン濃度)およびB濃度(ホウ素濃度)が高くなった。
【0107】
(比較例4)
図7に示す従来の石英アンプル封入VB法により、直径が4インチのGaAs結晶を成長した。
【0108】
従来の石英アンプル封入VB法においては、結晶成長中に石英アンプル内のカーボン濃度を制御することができない。その結果、カーボン濃度の均一性が悪かった。
【0109】
また、石英アンプルの強度に問題があるため、直径が6インチの結晶を成長させることはできなかった。
【0110】
(結果のまとめ)
上述の実施例1および2および比較例1〜4の結果を、以下の表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
(比較例5)
気密性の高純度窒化珪素からなる反応管を利用して、N2ガス圧力2atmで、SiドープGaAsをVGF法により成長した。その結果、3インチ径で20cm長の単結晶が得られた。
【0113】
得られた結晶の純度を調査したところ、結晶全般にわたり、Si以外のカーボンを含むすべての不純物濃度が5×1014cm-3以下となり、非常に高純度であることがわかった。
【0114】
(比較例6)
グラファイトからなる基材の表面に炭化珪素を50μm厚でコーティングした複合材からなる反応管を利用して、N2ガス圧力1.2atmでアンドープGaAsをVGF法により成長した。なお、反応管は、到達真空度が1×10-2torr以下を達成し、気密性は十分であることを確認した。その結果、3インチ径で30cm長の単結晶が得られた。
【0115】
得られた結晶の純度を調査したところ、結晶全域にわたり、カーボン濃度は1〜2×1015cm-3、他の不純物濃度は5×1014cm-3以下で、比抵抗が1〜3×107Ωcmとなり、非常に半絶縁特性の良好なGaAs結晶であることがわかった。
【0116】
(比較例7)
ポーラス状の低純度ムライトからなる基材の表面に高純度な酸化アルミニウムを100μm厚でコーティングした複合材からなる反応管を利用して、Arガス圧力1.5atmでSiドープGaAsをVGF法により成長した。なお、反応管は、到達真空度が1×10-3torr以下を達成し、気密性は十分であることを確認した。その結果、3インチ径で15cm長の単結晶が得られた。
【0117】
得られた結晶の純度を調査したところ、結晶全域にわたり、Si以外のカーボン濃度を含むすべての不純物濃度は5×1014cm-3以下となり、非常に高純度であることがわかった。
【符号の説明】
【0118】
1 反応管、2 坩堝、3 ヒータ、4 下軸、5,8 断熱材、6 リザーバ、7 パイプ、9 フランジ、11 ステンレス製高圧容器、12 パッキン、13 熱電対、14 引上げ軸、15 熱電対挿入用ポート、16 排気管挿入用ポート、17 ガス導入管挿入用ポート、18 排気管、19 ガス導入管、21 石英アンプル、50 半導体結晶、60 原料融液、70 液体封止材、80 As。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物からなる半導体結晶であって、直径が6インチ以上であり、平均転位密度が1×104cm-2以下であることを特徴とする、化合物半導体結晶。
【請求項2】
平均転位密度が5×103cm-2以下であることを特徴とする、請求項1記載の化合物半導体結晶。
【請求項3】
直径が8インチ以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の化合物半導体結晶。
【請求項4】
半導体結晶がGaAsであることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の化合物半導体結晶。
【請求項5】
半導体結晶がCdTe、InAsおよびGaSbからなる群から選ばれるいずれか1つの化合物半導体材料であることを特徴とする、請求項1〜請求項3に記載の化合物半導体結晶。
【請求項6】
半導体結晶が単結晶であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の化合物半導体結晶。
【請求項7】
ボロン濃度が、3×1016cm-3以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の化合物半導体結晶。
【請求項8】
ボロン濃度が、1×1016cm-3以下であることを特徴とする、請求項7に記載の化合物半導体結晶。
【請求項9】
インゴットの固化率0.1〜0.8の領域にわたるカーボン濃度が、0.5×1015cm-3〜1.5×1015cm-3であることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の化合物半導体結晶。
【請求項10】
インゴットの固化率0.1〜0.8の領域にわたり、炭素濃度が目標値に対して±50%以内に制御された、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の化合物半導体結晶。
【請求項11】
光弾性法で測定した平均残留歪みが1×10-5以下である基板からなる、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の化合物半導体結晶。
【請求項12】
500〜700μmの厚みを有する基板からなる、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の化合物半導体結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−30891(P2010−30891A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210124(P2009−210124)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【分割の表示】特願2008−103762(P2008−103762)の分割
【原出願日】平成10年12月11日(1998.12.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】