説明

化合物及び光学フィルム

【課題】広い波長域において一様の偏光変換が可能な新規光学フィルム及び該機能を与え得る新規化合物を提供する。
【解決手段】(式1)の化合物及びこの化合物に由来する構造単位を含有する光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及び光学フィルムに関し、より詳細には、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などのフラットパネル表示装置に用いられる偏光板等の光学フィルムに好適な化合物及び光学フィルム、さらに光学フィルムの製造方法、それを用いた光学部材及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板などの光学フィルムを用いた部材が含まれている。光学フィルムとしては、たとえば、重合性化合物を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布した後、重合して得られる光学フィルムなどが挙げられる。そして、波長λnmの光が与える光学フィルムの位相差(Re(λ))は、複屈折率Δnとフィルムの厚みdとの積で決定されることが知られている(Re(λ)=Δn×d)。また、波長分散特性は、通常、ある波長λにおける位相差値Re(λ)を550nmにおける位相差値Re(550)で除した値(Re(λ)/Re(550))で表され、(Re(450)/Re(550))が1に近い波長分散特性を示す光学フィルムによれば、位相差値の波長依存性を低減することができ、広い波長域において一様の偏光変換が可能であることが知られている。
上述した重合性化合物として、例えば、特許文献1に、式(A)に示す重合性化合物が開示されている。
【化1】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、式(A)に示す重合性化合物を含んで製造される光学フィルムが与えるRe(450)/Re(550)の値は1.065であり、さらなる厳しい要求の元、Re(450)/Re(550))がより1に近い波長分散特性を示す光学フィルムが求められている。
本発明の課題は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な新規な光学フィルムを与え得る新規な化合物及びそのような光学フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式(1)で表される化合物を提供する。
【化2】

(式(1)中、Aは、フェニル基を表し、該フェニル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトリル基又はニトロ基で置換されていてもよい。
は、1,4−フェニレン基を表す。
及びBは、それぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−OCH−、−O−CO−O−又は単結合を表す。ここで、Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。
Eは、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル又はハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ又はハロゲン化アルコキシ基、ニトリル基あるいはニトロ基で置換されていてもよい。
Pは、水素原子又は式(P−1)〜式(P−5)のいずれかで表される基を表す。
【化3】

[式(P−1)〜式(P−5)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。])
この化合物では、式(1)中、Pが、式(P−1)で表される基であることが好ましい。
【0005】
また、本発明によれば、上述した式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物(ただし、式(1)で表される化合物とは同一ではない)とを含有する組成物が提供される。
D11-C11-(L11-B11)-L12-G (2)
(式(2)中、
B11は、2価の環状炭化水素又は複素環基を表し、該基に含まれる水素原子は、フッ素原子、炭素数1〜7のアルキル基又は炭素数1〜7のアルコキシ基で置換されていてもよい。
L11及びL12は、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CS−、−CS−O−、−O−CS−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CO−NR−、−NR−CO−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表すか、互いに結合して炭素数4〜6のアルキレン基を表してもよい。該アルキル基及びアルキレン基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。
C11は、炭素数2〜25のアルキレン基を表す。該アルキレン基は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル又はハロゲン化アルキル基あるいは炭素数1〜4のアルコキシ又はハロゲン化アルコキシ基で置換されていてもよい。
D11は、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル又はハロゲン化アルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のモノ又はジアルキルアミノ基、ニトリル基あるいはニトロ基であるか、炭素数2〜25のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル又はハロゲン化アルキル基あるいは炭素数1〜4のアルコキシ又はハロゲン化アルコキシ基で置換されていてもよい。
nは1〜5の整数]
【0006】
また、本発明によれば、上述した化合物に由来する構造単位を含有する光学フィルムであるか、上述した組成物を重合してなる光学フィルムが提供される。
【0007】
さらに、本発明によれば、光学フィルムを透過する光の波長550nmにおける位相差値(Re(550))が、113〜163nmであるλ/4板又は250〜300nmであるλ/2板として機能する光学フィルムが提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上述した光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板が提供される。
本発明によれば、上述した光学フィルム及びカラーフィルタを含む光学部材が提供される。
さらに、本発明によれば、上述した偏光板及び/又は光学部材と、液晶パネル又は有機エレクトロルミネッセンスパネルとを備えるフラットパネル表示装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、支持基材又は支持基材上に形成された配向膜上に、上述した化合物を含む溶液を塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法が提供される。
さらに、この未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光学部材を示す断面図である。
【図2】本発明の偏光板を示す断面図である。
【図3】本発明の液晶パネルを示す断面図である。
【図4】本発明の薄型液晶表示装置を示す断面図である。
【図5】本発明の有機ELパネルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、光学フィルムを作製するために好適に用いられる化合物は、式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)である。なお、本発明において、「光学フィルム」とは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。
【化4】

(式(1)中、各置換基の定義は上記したとおりである)
【0013】
式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が例示される。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基等が挙げられる。
【0014】
ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、テトラフルオロエチル基、クロロエチル、n−フルオロプロピル基、イソフルオロプロピル基、n−フルオロブチル基、sec−フルオロブチル基、2−フルオロエチルヘキシル基等が挙げられる。
ハロゲン化アルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、テトラクロロエトキシ基、フルオロプロポキシ基、フルオロブトキシ基、フルオロヘキシルオキシ基、フルオロオクチルオキシ基、2−フルオロエチルヘキシルオキシ基等が例示される。
【0015】
なお、本明細書では、いずれの化学構造式においても、炭素数によって異なるが、特に断りのない限り、アルキル基等は、上記と同様のものが例示される。また、直鎖又は分岐の双方をとることができるものは、そのいずれをも含む。
【0016】
特に、式(1)においては、Eにおけるアルキレン基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基)、ニトリル基、ニトロ基又はハロゲン原子で置換されているものが例示されるが、置換されていないものが好ましい。
及びPは、式(P−1)〜(P−5)で表される基であると、得られる光学フィルム中に化合物(1)に由来する構造単位を固定化しやすい傾向があることから好ましく、なかでも、式(P−1)で表される基が好ましい。
【0017】
例えば、−A−B−E−B−Pとしては、以下の組み合わせが挙げられる。ここでmは1から20を示す。
【0018】
【表1】

【0019】

【表2】

【表3】

【0020】
また、化合物(1)の具体例としては、以下の構造の化合物が挙げられる。ここで、sは1〜20の整数である。
【化5】


【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0021】
化合物(1)の製造方法としては、例えば、Aを含むフェノール誘導体に、シクロヘキサンジカルボン酸部、A、B、B、E及びPを含む化合物を反応させて得る方法が挙げられる。
【0022】
シクロヘキサンジカルボン酸部、A、B、B、E及びPを含む化合物は、シクロヘキサンジカルボン酸部、A、B、B、E及びPの各構造単位を含む化合物を縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、ウィッティッヒ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応又はアルドール反応などで結合することにより製造することができる。
【0023】
本発明の化合物(1)は、メソゲン中央部にシクロヘキサン骨格を有していることから、位相差値の波長分散性を低減することが可能となる。また、各種フェノール誘導体を原料として、安価にかつ容易に製造することができる。
化合物(1)は、通常、汎用的な有機溶媒にも溶解しやすく、後述する化合物(2)との相溶性にも優れる。
【0024】
光学フィルムは、通常、光学フィルムを構成する全ての構造単位100重量部に対して化合物(1)に由来する構造単位を30重量部程度以上含有する。
【0025】
本発明の組成物又は光学フィルムは、化合物(1)に由来する構造単位を含有し、任意に、化合物(1)とは異なる化合物であって液晶性を示す化合物(以下、液晶化合物という場合がある)に由来する構造単位をさらに含有してもよい。液晶化合物に由来する構造単位を含むことで、液晶相範囲・配向性を抑制することが可能となり、成膜性をも制御することができる。
このような液晶化合物としては、化合物(1)に含まれるPと、共重合し得るような重合性基を含むものであれば、どのような液晶化合物であってもよい。特に、式(P−1)で表されるもの、さらに、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基又はビニルオキシ基等を含むものが、より容易に光重合させることができることから、特に好ましい。なお、液晶化合物としては、異なる複数の液晶化合物を併用してもよい。
【0026】
液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
【0027】
このような液晶化合物としては、具体的に、上述したような式(2)で表される化合物が挙げられる。
式(2)において、2価の環状炭化水素基としては、例えば、炭素数3〜20のものが挙げられる。また、この置換基は、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基であってもよい。脂環式炭化水素基としては、具体的には、シクロアルキレン、つまり、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、ビシクロブチレン、ビシクロヘプチレン、ビシクロオクチレン等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、インデン、ペンタレン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセン、ビフェニレン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン等の任意の位置に2つの結合手を有する2価の基が挙げられる。
2価の複素環基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子と炭素原子とを有する2価の環状基が挙げられる。この複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、有していなくてもよい。例えば、炭素数3〜6のものが挙げられ、芳香族性を有する2価の複素環基としては下記式で表される基が例示される。
【0028】
【化10】

芳香族性を有さない2価の複素環基としては下記式で表される基が例示される。
【化11】

【0029】
モノ又はジアルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N−プロピルアミノ、N−ブチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N,N−メチルエチルアミノ、N,N−エチルプロピルアミノ基等が挙げられる。
重合性基としては、重合に関与し得る置換基であればよく、例えば、上述した(P−1)から(P−5)で示す置換基、ビニル基、ビニルオキシ基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基などが挙げられる。
【0030】
なかでも、式(2)の化合物では、置換基Gの末端及びD11は、光重合が容易であり、取り扱いが容易かつで、製造も容易であることから、アクリロイル基、メタクロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基、ビニルオキシ基が好ましい。D11及びGの末端が同一の重合性基であれば、製造が容易となることから好ましい。
なお、D11とC11の種類を適宜選択することにより、両者の結合がエーテル結合又はエステル結合を介して行われることが好ましい。また、Gの置換基内において、エーテル結合又はエステル結合が存在することが好ましい。
【0031】
化合物(2)としては、例えば、式(2−1)、式(2−2)で表される化合物が挙げられる。
D11-C11-(L11-B11)-L12-C12-D12 (2−1)
D11-C11-(L11-B11)-L12-F11 (2−2)
(式中、B11、C11、D11、L11、L12及びnは上記と同義である。
F11は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル又はハロゲン化アルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のモノ又はジアルキルアミノ基、ニトリル基又はニトロ基を表す。
C12は、C11と同義である。
D12は、D11と同義である。)
【0032】
さらに、これら式(2−1)及び(2−2)で表される化合物として、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)又は式(V)で表される化合物を含む。
D11-C11-L11-B11-L12-B12-L13-B13-L14-B14-L15-B15-L16-C12-D12 (I)
D11-C11-L11-B11-L12-B12-L13-B13-L14-B14-L15-C12-D12 (II)
D11-C11-L11-B11-L12-B12-L13-B13-L14-C12-D12 (III)
D11-C11-L11-B11-L12-B12-L13-B13-L14-F11 (IV)
D11-C11-L11-B11-L12-B12-L13-F11 (V)
(式中、B12〜B15は、B11と同義である。L12〜L16は、L11と同義である。D11、D12、C11、C12、F11は、上記と同義である。)
なお、式(2−1)、式(2−2)、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)で表される化合物においても、上述したように、D11とC11との種類を適宜選択することにより、さらにD12とC12との種類を適宜選択することにより、両者の結合がエーテル結合又はエステル結合を介して行われることが好ましい。
【0033】
化合物(2)の具体例としては、例えば、以下の式(I−1)〜(I−5)、(II−1)〜(II−6)、(III−1)〜(III−19)、(IV−1)〜(IV−14)、(V−1)〜(V−5)で表される化合物などが挙げられる。ただし、式中kは、それぞれ独立に、1〜11のいずれかの整数を表す。
これらの化合物は、合成が容易であったり、市販されているなど、入手が容易であることから好ましい。
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【化15】

【0036】
【化16】

【0037】
【化17】

【0038】
本発明の光学フィルムは、光学フィルムを構成する全ての構造単位100重量部に対して化合物(1)とは異なる液晶性を示す化合物に由来する構造単位を、10重量部程度以上含むことが好ましく、60重量部程度以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明の光学フィルムは、例えば、化合物(1)を含有する組成物又は化合物(1)と化合物(1)とは異なる液晶性を示す化合物とを含有する組成物を用いて、未重合で又は重合して形成することができる。
【0040】
〔光学フィルムの重合〕
本発明の光学フィルムを重合して製造する方法について以下に説明する。
まず、本発明の化合物(1)を含有する組成物又は化合物(1)と化合物(1)とは異なる液晶性を示す化合物とを含有する組成物に、任意に、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、有機溶媒、架橋剤等の添加剤の1種以上が混合された組成物の溶液を調製する。特に、有機溶媒は、成膜が容易となることから、また、重合開始剤は、得られた光学フィルムを硬化する働きをもつことから、含有されていることが好ましい。
【0041】
〔重合開始剤〕
本発明の液晶性組成物は、通常、重合させるための重合開始剤、特に光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、及びイルガキュア369(以上、全てチバスペシャルティケミカルズ社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152又はアデカオプトマーSP−170(以上、全て旭電化)などを挙げることができる。
重合開始剤の使用量は、通常、化合物(1)及び液晶化合物の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、液晶性組成物の配向性を乱すことなく、液晶性組成物を重合させることができる。
【0042】
〔重合禁止剤〕
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6、−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類又はβ−ナフトール類等を挙げることができる。
重合禁止剤を含有することにより、化合物(1)及び液晶化合物の重合を制御することができ、得られる光学フィルムの安定性及び塗布前の組成物の安定性を向上させることができる。また、重合禁止剤の使用量は、通常、化合物(1)及び液晶化合物の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、本光学フィルムを構成する組成物の配向性を乱すことなく、重合させることができる。
【0043】
〔光増感剤〕
光増感剤としては、例えば、キサントン若しくはチオキサントン等のキサントン類、アントラセン若しくはアルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン又はルブレンを挙げることができる。
光増感剤を用いることにより、化合物(1)及び液晶化合物の重合を高感度化することができる。また、光増感剤の使用量としては、化合物(1)及び液晶化合物の合計100重量部に対して、通常、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、本光学フィルムを構成する組成物の配向性を乱すことなく、重合させることができる。
【0044】
〔架橋剤〕
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、当該分野で公知のもの、例えば、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ウレタンアクリレート類、ポリイソシアネート類、エポキシ化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。より具体的には、トリアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:CBX−1N、CBX−0、A−TMPT−3EO、A−TMPT−6EO、A−TMPT−9EO、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMM−3LMN、A−GLY−3E、A−GLY−6E、A−GLY−9E、A−GLY−20E、TM−4EL、SARTOMER社製:SR499、SR502、SR9035、SR368)、テトラアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:ATM−4E,ATM−35E)、ペンタアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:A−9530、SARTOMER社製:SR399E)、ヘキサアクリレート類(新中村化学工業株式会社製:A−DPH−6E、A−DPH−12E、A−DPH−6P、共栄社化学株式会社製:UA−306H、UA−306I、日本化薬株式会社製:DPCA−60、DPCA−120)などを挙げることができる。
架橋剤を用いることにより、光学フィルムの架橋密度を調整することができる。
架橋剤の使用量は、通常、化合物(1)及び液晶化合物の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。架橋剤を用いることにより、化合物(1)および液晶化合物を光重合により架橋することができる。従って、熱による複屈折の変化の影響を低減させることができる。
【0045】
〔レベリング剤〕
レベリング剤としては、例えば、放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越シリコーン社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)又はフッ素系添加剤(大日本インキ化学工業製:F−445、F−470、F−479)などを挙げることができる。
レベリング剤を用いることにより、光学フィルムを平滑化することができる。さらに、光学フィルムの製造過程で、組成物の流動性を制御したり、化合物(1)及び液晶化合物を重合して得られる光学フィルムの架橋密度を調整等することができる。また、レベリング剤の使用量は、通常、化合物(1)及び液晶化合物の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、本光学フィルムを構成する組成物の配向性を乱すことなく、重合させることができる。
【0046】
〔有機溶媒〕
有機溶媒としては、光学フィルムに含まれる化合物等を溶解し得る有機溶媒であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ若しくはブチルセロソルブなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン若しくはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン若しくはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン若しくはヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン若しくはクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、乳酸エチル、クロロホルム又はフェノールなどが挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。なかでも、光学フィルムを構成する組成物との相溶性に優れ、アルコール、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、非塩素系脂肪族炭化水素溶媒及び非塩素系芳香族炭化水素溶媒などにも溶解し得ることから、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素を用いなくとも、溶解して塗工させることができる。
【0047】
上述した組成物を含有する混合溶液の粘度は、塗布しやすいように、通常、10Pa・s以下、好ましくは0.1〜7Pa・s程度に調整される。
また、混合溶液における固形分の濃度は、通常、5〜50重量%である。固形分の濃度をこの程度の範囲とすることにより、光学フィルムの膜厚にムラが生じにくく、適切な膜厚に調整することが容易となり、液晶パネルの光学補償に必要な光学異方性を与えることができる。
続いて、支持基材に、上述した組成物の溶液を塗布し、乾燥、重合させることにより、支持基材上に目的のフィルムを形成することができる。なお、乾燥後に、上述した有機溶媒が蒸発して残る組成物は、液晶性を示すことが必要である。
【0048】
用いる支持基材は、その表面に配向膜を形成できるものであればどのような材料を用いてもよい。例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム等を挙げることができる。透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
上記組成物から得られる光学フィルムは、貼合、運搬、保管等、強度が必要な場合があるため、支持基材を用いることにより、フィルムが破れず、取り扱いが容易となる。
【0049】
なお、上記組成物の溶液を、支持基材上に直接塗工してもよいが、より均一な配向を得るため、支持基材上に形成された配向膜上に塗工することが好ましい。
配向膜は、上記組成物を含有する溶液の塗工等により溶解しない溶剤耐性を有し、溶媒の除去、液晶の配向の加熱処理による耐熱性を有し、ラビングによる摩擦などによる剥がれ等が起きないこと等が必要であり、ポリマーと、任意に溶媒とを含有する組成物によって形成することができる。
【0050】
配向膜を形成するポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合、共重合体してもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合又は開環重合等で容易に得ることができる。
【0051】
溶媒は、特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、乳酸エチル、クロロホルム等種々のものを用いることができる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜としては、感光性ポリイミドに偏光UV処理を施したものとして、サンエバー(登録商標、日産化学社製)、オプトマー(登録商標、JSR製)などが挙げられ、アルキル変性ポリビニルアルコールとして、ポバール(登録商標、クラレ製)などが挙げられる。
【0053】
支持基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば、市販の配向膜材料、配向膜の材料となる上述したポリマー又はその構成モノマー等と、任意に溶媒とを、支持基材上に塗布し、その後、アニールする方法が挙げられる。
得られる配向膜の厚さは、通常、10nm〜10000nm程度が適しており、10nm〜1000nm程度が好ましい。上記範囲とすれば、後述する未重合フィルム調製工程において、本発明の液晶性組成物から形成されるフィルムを配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
また、これら配向膜は、必要に応じてラビング又は偏光紫外線照射を行うことができる。これにより、本発明の液晶性組成物から形成されるフィルムを所望の方向に配向させることができる。
【0054】
配向膜をラビングする方法としては、例えば、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
このように、配向膜を用いることにより、容易に液晶の配向をホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向など、所望の配向を得ることができるため、延伸による屈折率制御を行う必要がない。そのため、複屈折の面内ばらつきが小さい均一性に優れた光学フィルムとなる。その結果、支持基材上にFPDの大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを形成することが可能となる。
【0055】
液晶組成物の溶液を、支持基材上又は配向膜上へ塗布する方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法などが挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーターなどのコーターを用いて塗布してもよい。
【0056】
溶媒の乾燥は、光重合の場合には、成膜性を向上させるために、光重合前にほとんど溶媒を乾燥させて、未重合フィルムを得ることが好ましい。また、熱重合の場合には、通常、乾燥とともに重合を進行させてもよいが、重合前にほとんどの溶媒を乾燥させて、未重合フィルムを得ることが好ましい。その後、重合させる方法が、成膜性に優れる傾向があることから好ましい。
溶媒の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥などが挙げられる。具体的な加熱温度は、10〜120℃程度が適しており、25〜80℃程度が好ましい。加熱時間は、10秒間〜60分間程度が適しており、30秒間〜30分間程度が好ましい。加熱温度及び加熱時間が、上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0057】
重合は、化合物(1)のP及び液晶化合物に含まれる重合性基が光重合性基であれば、可視光、紫外光、レーザー光などの光を照射して硬化させることができる。これらの重合性基が熱重合性であれば、加熱によって重合させることができる。
成膜性の観点から、光重合が好ましく、取り扱い性の観点から、紫外光による重合がより好ましい。
【0058】
〔未重合光学フィルムの製造〕
本発明の光学フィルムを未重合で製造する方法としては、例えば、配向膜が形成され、ラビング処理が行われた支持基材の配向膜上に、上記組成物の溶液を塗工し、乾燥する方法等が挙げられる。特に、支持基材の上に形成した配向膜上に未重合フィルムを得る方法は、生産コストを低減することができ、ロールフィルムでのフィルムの生産が可能となり、製造効率が良好であることから好ましい。
得られた未重合のフィルムにおいて、上記組成物はネマチック相などの液晶相を示し、モノドメイン配向による複屈折性を有する。この未重合フィルムは0〜120℃程度、好ましくは、25〜100℃の低温で配向することから、耐熱性に関して必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0059】
〔未重合光学フィルムの重合〕
なお、上述したように未重合でフィルムを形成した後、そのフィルムを重合して硬化させてもよい。これにより、本発明の液晶性組成物に由来する構造単位を有するフィルムの配向性を固定化することができる。
未重合フィルムを重合させる方法は、液晶性組成物に含まれる化合物の種類に応じて、適宜調整することができる。例えば、光重合、熱重合が挙げられる。なかでも、光重合が好ましい。これにより、低温で、未重合フィルムを重合させることができるので、支持基材の耐熱性の選択幅が広がる。また、工業的にも製造が容易となる。
未重合フィルムを光重合させる方法は、例えば、未重合フィルムに紫外線を照射することにより、未重合フィルムを重合させる方法などが挙げられる。未重合フィルムの重合工程において、液晶性組成物を光重合によって架橋させることにより、その後の工程等における熱による複屈折の変化の影響を受けにくくなる。
【0060】
なお、上述した光学フィルムの製造方法では、支持基板及び/又は配向膜上に光学フィルムを形成した後、支持基材及び/又は配向膜を剥離する工程を含んでいてもよい。
このように、液晶ポリマーを用いることなく光学フィルムを製造することができる。
また、上述した製造方法により得られた光学フィルムは、支持基材と配向膜及び配向膜と光学フィルムとの密着性が良好であり、光学フィルムの製造が容易となり、界面活性剤などの表面処理剤を用いなくてよい。
【0061】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、透明性に優れ、単独での単層又は積層構造(例えば、2〜4層程度)で、上述した支持基板及び/又は配向膜あるいは種々の光学フィルムとともに、種々の用途に用いることができる。なお、複数層積層する場合は、同一のフィルムであってもよいし、異なるものを組み合わせて用いてもよい。ここで、光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムを意味し、光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。
【0062】
このような光学フィルムとしては、優れた波長分散特性を有する光学フィルムが挙げられ、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルム及び透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルムなどが例示される。また、本発明の光学フィルムの用途として、これらの用途が例示される。
例えば、偏光フィルムに本発明のフィルムを貼合して楕円偏光板として用いることができる。また、この楕円偏光板にさらに本発明のフィルムを広帯域λ/4板として貼合して広帯域円偏光板として利用することができる。
【0063】
特に、本発明の光学フィルムを、広帯域λ/4板又はλ/2板として使用するためには、化合物(1)及び液晶性の化合物に由来する構造単位の含有量を適宜調整し、フィルムの膜厚を調整し、位相差値を調整すればよい。
具体的には、λ/4板の場合には、得られるフィルムのRe(550)を113〜163nm、好ましくは135〜140nm、より好ましくは約137.5nm程度に調整すればよい。λ/2板の場合には、得られるフィルムのRe(550)を250〜300nm、好ましくは273〜277nm、より好ましくは約275nm程度となるように調整すればよい。
【0064】
また、本発明の光学フィルムをVA(Vertical Alingment)モード用の光学フィルムとして使用するためには、本発明の化合物(1)又は液晶化合物に由来する構造単位の含有量を適宜調整し、フィルムの膜厚を調整すればよい。具体的には、Re(550)が例えば、40〜100nm、好ましくは60〜80nm程度となるように、膜厚を調整すればよい。
【0065】
つまり、上記組成物において、化合物(1)又は液晶化合物の含有量等を変化させることにより、得られるフィルムの屈折率の波長依存性、波長分散特性等を任意に制御することができ、上記組成物を塗布する際の量及び有機溶媒の濃度等を調整して、得られるフィルムの膜厚を調整することにより、位相差値を制御することができ、あるいは、位相差層の積層を省略することができる。
【0066】
例えば、化合物(1)の[Re(450)/Re(550)]および[Re(650)/Re(550)]の値は1に近い又は1より小さいため、化合物(1)の含有量を増加させることにより、Re(450)/Re(550)等を変化させ、つまり、波長分散を小さくする等、所望の波長分散特性(例えば、1に近い値)を得ることができる。言い換えると、化合物(1)を少量添加するだけで、光学フィルムにおけるRe(450)/Re(550)の値を低下させることができ、結果として、広い波長域において一様な偏光変換が可能な光学フィルムを簡便な方法で製造することができる。
また、液晶化合物の含有量を増加させることにより、液晶組成物をフィルム方向に配向させることができる。
【0067】
化合物(1)が一定である混合溶液の場合、フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(3)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚dを調整する。
Re(λ)=d×Δn(λ) (3)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける屈折率異方性を表す。)
従って、位相差値を大きくするためには膜厚を大きくし、位相差値を小さくするためには、膜厚を小さくすればよい。
【0068】
本発明の光学フィルムの膜厚は、0.1〜100μm、好ましくは0.1〜10μm程度であり、光弾性を小さくするという観点から、0.5〜3μmであることが好ましい。
配向膜を用いて複屈折性を有する場合には、通常、位相差値としては、50〜500nm程度であり、好ましくは100〜300nmである。
このように、本発明の光学フィルムは、延伸フィルムで同等の位相差値を有するフィルムと比較して、薄膜とすることができる。また、位相差値の波長依存性を低減することができる。
【0069】
〔光学部材〕
本発明のフィルムの実施形態として、本発明のフィルムを備えた光学部材について説明する。
図1に示すように、光学部材1は、位相差層として本発明の光学フィルム2と、配向膜3を介して積層されたカラーフィルタ4とを含んで構成することができる。
このような光学部材1は、以下の製造方法により形成することができる。
まず、カラーフィルタ4の上に配向性のポリマー(例えば、上述したものから選択することができる)を印刷し、ラビング処理を施して、配向膜を形成する。
次に、所望の波長分散特性をもつように、重合開始剤等の添加剤と、本発明の化合物(1)または化合物(1)と液晶化合物とを、良溶媒に溶解させて混合溶液を調製し、所望の位相差値になるよう厚みを調整しながら、得られた配向膜上に得られた混合溶液を塗布する。
最後に、化合物(1)又は液晶化合物の液晶相をとる温度に加温しながら紫外線照射して、光学フィルムを形成する。この際、マスキングなどの手法によって光学フィルムをパターニングしてもよい。
【0070】
本発明の光学フィルムは、配向膜上に塗布、紫外線照射等で重合させることによって形成することができるため、従来よりも簡便にカラーフィルタ上に、例えば、広帯域λ/4、λ/2の位相差層、光学フィルムを形成することができる。特に、液晶パネルをカラー化するためには、カラーフィルタが必須であるが、このようなカラーフィルタを含む光学部材を用いれば、液晶パネル自体が備える位相差を軽減することができる。さらに、位相差層の数を減らした薄型の液晶表示装置を製造することが可能となる。
【0071】
〔偏光板〕
本発明の光学フィルムの別の具体的な実施形態として、本発明の光学フィルムと偏光フィルムとを積層して構成される偏光板等について説明する。
偏光板30aは、本発明の光学フィルム14と、偏光機能を有するフィルム、すなわち偏光フィルム15とを直接張り合わせられており(図2(a))、光学フィルム14は、支持基材16、配向膜17および光学異方性層18からなる。偏光板30aは、支持基材16、配向膜17、光学異方性層18、偏光フィルム15の順に積層されている。
【0072】
図2(b)に示す偏光板30bは、光学フィルム14と偏光フィルム15とが、接着剤層19を介して貼り合わされている。
図2(c)に示す偏光板30cは、光学フィルム14と光学フィルム14’とが直接貼り合わされ、さらに光学フィルム14’と偏光フィルム15とが直接貼り合わされている。
図2(d)に示す偏光板30dは、光学フィルム14と光学フィルム14’とが接着剤層19を介して貼り合わされ、さらに光学フィルム14’上に偏光フィルム15が直接貼り合わされている。
図2(e)に示す偏光板30eは、光学フィルム14と光学フィルム14’とを接着剤層19を介して貼り合わせ、さらに光学フィルム14’と偏光フィルム15とを接着剤層19’を介して貼り合わされている。
【0073】
光学フィルム14および光学フィルム14’の代わりに、光学フィルム14から支持基材16および配向膜17を剥離した、化合物(1)に由来する構造単位を含有する光学異方性層18のみからなるフィルムを用いてもよいし、光学フィルム14から支持基材16を剥離した、配向膜17および光学異方性層18からなるフィルムを用いてもよい。
本発明の偏光板は、光学フィルムを複数積層してもよく、その複数の光学フィルムは、全て同一であっても、上述した異なるフィルムを組み合わせて用いてもよい。
【0074】
偏光フィルム15としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルムなどが挙げられる。
接着剤19、19’としては、透明性が高く、耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系あるいはウレタン系接着剤などが用いられる。
【0075】
〔フラットパネル表示装置〕
また、本発明の光学フィルムは、反射型の液晶ディスプレイ及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のフラットパネル表示装置(FPD)において、どのような位置に、どのような態様で、どのように機能させるものとして備えられていてもよい。
例えば、上述した偏光板と、液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置(LCD)、上述した偏光板と、発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)、さらに、本発明の光学フィルムを位相差板として備えるLCD及びEL等、カラーフィルタを備えるLCD及びEL等が挙げられる。
このように、光学特性を有する本発明の光学フィルムを用いることにより、すべてのFPDを、薄膜で、光学補償することができる。
【0076】
〔LCD〕
LCDとしては、例えば、図3に示すように、本発明の偏光板30と液晶パネル20とが接着層22を介して貼り合わされてなる貼合品21によって構成される。
この構成によれば、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子を駆動させ、光シャッター効果を発揮させることができる。
特に、図4に示すように、一対の基板に液晶層が挟持され形成されてなる液晶表示素子において、少なくとも一方の基板の液晶層側にカラーフィルタを形成した薄型液晶表示装置について以下に説明する。
【0077】
図4に示す液晶表示装置5では、偏光板6上に、例えば、ガラス基板などのバックライトと対向する基盤7が接着剤を介して固定されており、基盤7上に作成されたカラーフィルタ4’上に、本発明の光学フィルムが、配向膜3’を介して位相差層2’として形成されている。さらに、位相差層2’上には対向電極8が形成され、対向電極上に液晶相9が形成されている。
バックライト側は、偏光板10の上に、例えば、ガラス基板などの基盤11が接着剤を介して固定されており、基盤11上には、液晶層をアクティブ駆動させるための薄膜トランジスタ(TFT)と絶縁層12が形成され、さらに、TFT上に、Ag、Al又はITO(Indium Tin Oxide)による電極13、13’が形成されている。
このような構成によれば、従来の液晶表示装置と比較して、位相差層の枚数を減らすことができ、より薄型の液晶表示装置の製造を可能とする。
【0078】
また、このような液晶表示装置は、以下のように製造することができる。
まず、バックライト側の基盤であるホウケイ酸ガラス上に、Mo、MoW等からなるゲート電極、ゲート絶縁膜およびアモルファスシリコンを堆積・パターニングする。
次いで、アモルファスシリコンをエキシマレーザでアニールすることによって結晶化させて半導体薄膜を形成する。その後、ゲート電極両側にP、Bなどをドープし、nチャンネル、pチャンネルのTFTを形成する。
さらに、SiOからなる絶縁膜を形成する。
【0079】
このようにして得られたバックライト側の基盤11上に、ITOをスパッタすることにより、全透過型表示装置用の透明電極13を積層する。また、同じくITOの換わりにAg、Al等を用いることにより全反射型表示装置用の反射電極13’を形成する。
さらに、反射電極、透明電極を適宜組み合わせることにより、半透過型の液晶表示装置用のバックライト側の電極を形成することができる。
【0080】
一方、対向する基盤7に、カラーフィルタ層4’を形成する。R、G、Bのカラーフィルタを併用することにより、フルカラーの液晶表示装置が得られる。
次に、カラーフィルタ上に配向性ポリマーを塗布し、ラビングして、配向膜3’を形成する。この配向膜上に、化合物(1)又は液晶性組成物を含む塗布液を塗布し、液晶相をとる温度範囲に加熱しながら、紫外線照射によって重合させ、位相差層2’を形成する。位相差層形成後、ITOをスパッタすることにより、対向電極8を形成する。
さらに、対向電極8上に配向膜(図示せず)、液晶相9を形成し、最後にバックライト側の基盤とあわせて組み立てる。
【0081】
〔EL〕
ELとしては、例えば、図5に示すように、本発明の偏光フィルム30と、発光層24とが、接着層25を介して貼り合わせてなる有機ELパネル23が挙げられる。この有機ELパネルにおいて、偏光フィルム30は、広帯域円偏光板として機能する。また上記発光層24は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層により構成される。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、化合物の液晶性の確認は、ホットステージ付き偏光顕微鏡にて行った。
<化合物(PG−2)の製造例>
化合物(PG−2)を以下のスキームにしたがって製造した。
【化18】

原料のモノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノンは特許文献(特開2004−262884)に記載されている方法により合成した。
【0083】
(化合物(PG−1)の合成例)
モノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン100.1g(515mmol)、炭酸カリウム97.1g(703mmol)、6−クロロヘキサノール64g(468mmol)を取り、ジメチルアセトアミドに溶解・分散し、攪拌しながら100℃で加熱した。得られたスラリーを、室温まで冷却し、純水、メチルイソブチルケトンを加え攪拌し、有機層を取り出した。回収した有機層を純水で洗浄し、減圧濃縮し、溶媒を除去した後、メタノールを加えて攪拌した。生成した沈殿を濾過後、真空乾燥させて、化合物(PG−1)を126g(428mmol)得た。収率は6−クロロヘキサノール基準で91%であった。
【0084】
(化合物(PG−2)の合成例)
化合物(PG−1)を126g(428mmol)、3、5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン(以下BHTという)1.40g(6.42mmol)、N、N−ジメチルアニリン116.7g(963mmol)、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1.00gを取り、クロロホルムに溶解し、攪拌しながら氷冷下でアクイロイルクロリド58.1g(642mmol)を滴下した。得られた溶液にさらに純水を加えて攪拌し、有機層を取り出した。回収した有機層を純水で洗浄し、BHTをスパーテル1杯分加え、減圧濃縮し、溶媒を除去した。得られた溶液にテトラヒドロフラン(以下THFという)200mlを加えた。これに塩酸水を加えて、窒素雰囲気下60℃で攪拌した。得られた溶液を、室温まで冷却し、分液して有機層を取り出した。反応溶液に飽和食塩水500mlを加えて攪拌し、回収した有機層を純水で洗浄し、減圧濃縮し、溶媒を除去した後、ヘキサンを加えて氷冷下攪拌した。生成した沈殿を濾過した後、真空乾燥して、化合物(PG−2)を90g(339mmol)得た。収率は化合物(PG−1)基準で79%であった。
【0085】
<化合物(PG−6)の製造例>
化合物(PG−6)を以下のスキームにしたがって製造した。
【化19】

【0086】
(化合物(PG−3)の合成例)
トランス−1、4−シクロヘキサンジカルボン酸200g(1.1616mol)を、ジメチルアセトアミド600mLに分散させた。窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃まで昇温して、得られた溶液に炭酸カリウム96.32g(0.6969mol)を加えた。その後、ベンジルブロミド188.73g(1.1035mol)を加え、攪拌した。反応溶液を室温まで放冷し、反応溶液を氷1500gに注ぎ攪拌した。得られた結晶を濾取して、これを水/メタノール1:1(v/v)、次いで水で洗浄した。真空乾燥により溶媒を除去し、残渣をクロロホルムに溶解させた。溶液をシリカゲルに吸着させ、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて、最初はヘプタン/クロロホルム3:1(v/v)、次いでヘプタン/クロロホルム1:1(v/v)、最後にクロロホルムで溶離させ、化合物(PG−3)138gを得た。収率は化合物トランス−1、4−シクロヘキサンジカルボン酸基準で46%であった。
【0087】
(化合物(PG−4)の合成例)
前工程で得られた化合物(PG−3)60g(0.2287mol)をクロロホルム200mLに溶解させた。得られた溶液を氷冷し、窒素雰囲気下、クロロメチルエチルエーテル43.25g(0.432mol)、トリエチルアミン69.44g(0.6862mol)を滴下した。反応溶液を室温、窒素雰囲気下で攪拌し、反応溶液にトルエン600mLを加え、トリエチルアミン塩酸塩を析出させた。これを濾別、濾液を回収し、水で洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過した後、溶媒を除去した。得られた粗生成物を真空乾燥させ、化合物(PG−4)74gを得た。収率は化合物(PG−3)基準で95%であった。
【0088】
(化合物(PG−5)の合成例)
前工程で得られた化合物(PG−4)64gをTHF250mlに溶解させた。窒素雰囲気下で、10%パラジウム−炭素(50%含水)3.2gを加えた。減圧後、水素置換し、室温、常圧、水素雰囲気下で攪拌した。窒素置換し、スラリーを濾過し、触媒及び溶媒を除去した。残渣を水/メタノール1:1(v/v)、次いで水で洗浄した。得られた結晶を濾別、真空乾燥させることにより化合物(PG−5)45gを得た。収率は化合物化合物(PG−4)基準で84%であった。
【0089】
(化合物(PG−6)の合成例)
化合物(PG−2)を56.8g(215mmol)、ジメチルアミノピリジン2.65g(22mmol)、(PG−5)を50g(217mmol)取り、クロロホルム300mLに溶解させた。窒素雰囲気下、氷冷して攪拌し、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド48.79g(237mol)の50mLクロロホルム溶液を滴下した。滴下終了後、室温にて攪拌した。反応溶液にクロロホルム200mLとヘプタン200mLを加えて沈殿を濾過した。濾液を回収して、2N−塩酸水溶液で洗浄した。有機層を回収し、不溶成分を濾過し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過した。溶媒を除去、真空乾燥を行い、固形物を得た。その固形物と、純水3.64g(202mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物3.84g(20.2mmol)を取り、THF200mLに溶解させた。窒素雰囲気下、50℃に加温後、攪拌した。室温まで放冷した後、THFを除去し、残渣にノルマルヘプタン200mLを加えた。析出した沈殿を濾取し、純水で洗浄し、真空乾燥させた。得られた粉末をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルを通して濾過した。濾液を回収し、クロロホルム400mLに溶解させて、これを濃縮、トルエンを加えていき溶媒をトルエンに置換した。トルエンを減圧濃縮した後、ヘプタンを加えて結晶化させた。得られた粉末を濾取、真空乾燥を経て、化合物(PG−6)64.1gを得た。収率は化合物(PG−2)基準で76%であった。
【0090】
<化合物(1−1)の製造例>
化合物(1−1)を以下のスキームにしたがって製造した。
【化20】

【0091】
化合物(PG−6)を10.0g(24mmol)、4−ジメチルアミノピリジンを0.3(2mmol)、4−メトキシフェノールを2.5g(20mmol)、クロロホルム80gを加えた。続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド5.9g(29mmol)をクロロホルム20gに溶解させ、室温で滴下し、攪拌した。その後、2N塩酸100gを入れて攪拌し、濾過して固形物を取り除いて得られた液体を分液し、有機層を取り出した。この有機層の溶媒を留去した後、メタノールを添加すると、結晶が析出するため、濾過をして固形物を取り出した。得られた固形物を乾燥すると、化合物(1−1)が9.5g得られた。収率は、4−メトキシフェノール基準で91%であった。この化合物に熱をかけて、相転移温度を確認したところ、63℃〜71℃の間でスメクチック相71℃〜158℃の間でネマチック相を示した。
H NMR(CDCl);δ 1.66(m、12H)、2.72(m、4H)、2.57(m、2H)、3.80(s、3H)、3.94(t、2H)、4.17(t、2H)、5.80(d、1H)、6.11(m、1H)、6.40(d、1H)、6.95(m、8H)
【0092】
<化合物(1−2)の製造例>
化合物(1−2)を以下のスキームにしたがって製造した。
【化21】

【0093】
(化合物(1−2)の合成)
4−メトキシフェノールを4−シアノフェノールに代えた以外は、化合物(1−1)の合成例同様にして合成し、化合物(1−2)を得た。収率は、4−シアノフェノール基準で73%であった。この化合物に熱をかけて、相転移温度を確認したところ、82℃〜97℃の間でスメクチック相97℃〜169℃の間でネマチック相を示した。
H NMR(CDCl);δ 1.59(m、12H)、2.29(m、4H)、2.59(m、2H)、3.94(t、2H)、4.17(t、2H)、5.81(d、1H)、6.11(m、1H)、6.40(d、1H)、6.94(m、4H)、7.24(d、2H)、7.71(d、2H)
【0094】
<化合物(1−3)の製造例>
化合物(1−3)を以下のスキームにしたがって製造した。
【化22】

【0095】
(化合物(1−3)の合成)
4−メトキシフェノールをペンタフルオロフェノールに代えた以外は、化合物(1−1)の合成例同様にして合成し、化合物(1−3)を得た。収率は、ペンタフルオロフェノール基準で75%であった。この化合物に熱をかけて、相転移温度を確認したところ、69℃〜79℃の間でスメクチック相79℃〜89℃の間でネマチック相を示した。
H NMR(CDCl);δ 1.65(m、12H)、2.29(m、4H)、2.70(m、2H)、3.94(t、2H)、4.17(t、2H)、5.81(d、1H)、6.11(m、1H)、6.43(d、1H)、6.91(m、4H)
【0096】
(実施例1)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2重量%水溶液を塗布したのち、加熱乾燥し、厚さ89nm膜を得た。続いて、表面にラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に、表1の実施例1の組成の塗布液(混合溶液)を、スピンコート法により塗布し、130℃で1分間乾燥した。続いて、60℃で加熱しながら1200mJ/cm紫外線を照射して、光学フィルムを作成した。
表4中、光重合開始剤は、イルガキュア907 (チバスペシャリティーケミカルズ社製)、レベリング剤には、BYK361N(ビックケミージャパン製)、溶剤はシクロペンタノンを用いた。また、溶剤以外の表中の重量%は、塗布液を100重量%とした固形分の重量%を意味する。
【0097】
【表4】

【0098】
<波長分散特性・液晶性の測定>
450nmから700nmの波長範囲において、作成した光学フィルムの位相差値を、測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定し、装置付属プログラムで波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)を算出した。結果を表5に示す。表中dは液晶層の膜厚、Δnは波長550nmにおける屈折率異方性を表す。
混合物の液晶性は、以下の方法で確認を行った。液晶化合物としてLC242及び化合物(1−1)の紛体を混合し、ホットステージ付偏光顕微鏡上で液体温度まで加熱した。その後、自然冷却した混合物の光学組織を偏光顕微鏡により観察することで、117℃から室温までネマチック相を示すことを確認した。結果を表5に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
(実施例2)
表4の塗布液を用い、120℃で1分間乾燥した後、60℃で加熱しながら1200mJ/cm紫外線を照射した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを製造した。得られた光学フィルムについて、位相差値を、測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定し、偏光顕微鏡を用いて混合物の液晶性を観察した。結果を表5に示す。
【0101】
(実施例3)
表4の塗布液を用い、120℃で1分間乾燥後、60℃で加熱しながら1200mJ/cm紫外線を照射した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを製造した。得られた光学フィルムについて、位相差値を、測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定し、偏光顕微鏡を用いて混合物の液晶性を観察した。結果を表5に示す。
【0102】
(比較例1)
表4の塗布液を用い、130℃で1分間乾燥した後、60℃で加熱しながら1200mJ/cm紫外線を照射した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを製造した。得られた光学フィルムについて、位相差値を、測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定し、偏光顕微鏡を用いて混合物の液晶性を観察した。結果を表5に示す。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 光学部材
2、14、14’ 光学フィルム
2’ 位相差層
3、3’ 配向膜
4、4’ カラーフィルタ
5 液晶表示装置
6、10、30、30a、30b、30c、30d、30d 偏光板
7、11 基盤
8 対向電極
9 液晶相
12 絶縁層
13 透明電極
13’ 反射電極
15 偏光フィルム
16 支持基材
17 配向膜
18 光学異方性層
19、19’、22、25 接着剤
20 液晶パネル
21 貼合品
23 有機ELパネル
24 発光層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2006−58546号公報([請求項2][0115])

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)中、Aは、フェニル基を表し、該フェニル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトリル基又はニトロ基で置換されていてもよい。
は、1,4−フェニレン基を表す。
及びBは、それぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−OCH−、−O−CO−O−又は単結合を表す。ここで、Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。
Eは、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル又はハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ又はハロゲン化アルコキシ基、ニトリル基あるいはニトロ基で置換されていてもよい。
Pは、水素原子又は式(P−1)〜式(P−5)のいずれかで表される基を表す。
【化2】

[式(P−1)〜式(P−5)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。])
【請求項2】
式(1)中、Pが、式(P−1)で表される基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物(ただし、式(1)で表される化合物とは同一ではない)とを含有する組成物。
D11-C11-(L11-B11)-L12-G (2)
(式(2)中、
B11は、2価の環状炭化水素又は複素環基を表し、該基に含まれる水素原子は、フッ素原子、炭素数1〜7のアルキル基又は炭素数1〜7のアルコキシ基で置換されていてもよい。
L11及びL12は、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CS−、−CS−O−、−O−CS−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CO−NR−、−NR−CO−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表すか、互いに結合して炭素数4〜6のアルキレン基を表してもよい。該アルキル基及びアルキレン基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。
C11は、炭素数2〜25のアルキレン基を表す。該アルキレン基は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル又はハロゲン化アルキル基あるいは炭素数1〜4のアルコキシ又はハロゲン化アルコキシ基で置換されていてもよい。
D11は、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル又はハロゲン化アルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のモノ又はジアルキルアミノ基、ニトリル基あるいはニトロ基であるか、炭素数2〜25のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル又はハロゲン化アルキル基あるいは炭素数1〜4のアルコキシ又はハロゲン化アルコキシ基で置換されていてもよい。
nは1〜5の整数]
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化合物に由来する構造単位を含有する光学フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の組成物を重合してなる光学フィルム。
【請求項6】
光学フィルムを透過する光の波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113〜163nmであるλ/4板として機能する請求項4又は5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
光学フィルムを透過する光の波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250〜300nmであるλ/2板として機能する請求項4又は5に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1つに記載の光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれか1つに記載の光学フィルム及びカラーフィルタを含む光学部材。
【請求項10】
請求項8記載の偏光板及び/又は請求項9の光学部材と、液晶パネルとを備えるフラットパネル表示装置。
【請求項11】
請求項8記載の偏光板及び/又は請求項9の光学部材と、有機エレクトロルミネッセンスパネルとを備えるフラットパネル表示装置。
【請求項12】
支持基材に、請求項1又は2に記載の化合物を含む溶液を塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項13】
支持基材上に形成された配向膜上に、請求項1又は2に記載の化合物を含む溶液を塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−1284(P2010−1284A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119420(P2009−119420)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】