化学分析装置
【課題】
エレクトロウエッティング(EWOD)を適用した化学分析装置において、分注精度を向上させる。
【解決手段】
化学分析装置100は、分析デバイス150を構成し液体を供給するポート151が形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、基板内に供給された液体を流動させる。先端部に細管180を有し、この細管を用いてポートから液体を供給する160を設ける。下側基板の電極は、多数の小電極を有する電極列152を備える。電極列を移動する液滴よりも大容量の液を細管が保持可能である。ポートから細管を対向配置した基板間に挿入し、大容量の液を一度に供給する
エレクトロウエッティング(EWOD)を適用した化学分析装置において、分注精度を向上させる。
【解決手段】
化学分析装置100は、分析デバイス150を構成し液体を供給するポート151が形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、基板内に供給された液体を流動させる。先端部に細管180を有し、この細管を用いてポートから液体を供給する160を設ける。下側基板の電極は、多数の小電極を有する電極列152を備える。電極列を移動する液滴よりも大容量の液を細管が保持可能である。ポートから細管を対向配置した基板間に挿入し、大容量の液を一度に供給する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学分析装置に係り、特に微量物質が含まれる液の分析に好適な化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液移送装置の例が、特許文献1に記載されている。この特許明細書に記載の液移送装置は、微小流量を駆動するマイクロアクチュエータを有している。このマイクロアクチュエータは、エレクトロウエッティングという現象に基づいており、可動部を有しておらず、液と固体の壁面間の粘着エネルギー勾配を液に作用させている。具体的には、1枚の共通電極板に、互いに絶縁された複数の電極を有する駆動電極列が表面に形成された平板が対向配置されている。電極列を構成する各電極への通電を切り換えて、共通電極板と駆動電極板の隙間に供給した微量な液滴を、電極列に沿って搬送している。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6565727号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の液移送装置によれば、電圧を制御して平板の表面の濡れ性を変え、分析部であるデバイス内で液を搬送させている。しかしながら、この液移送装置は微小な液滴の移送だけに注目しているので、化学分析に必要な液滴の分注や液滴の分析等については、十分には考慮していない。
【0005】
化学分析装置では、デバイス外から細管のプローブを用いてサンプルに多種の試薬を供給して、多項目の分析を高速で実施する必要がある。そのため、デバイス内に、サンプルや試薬を精度よく分注および導入しなければならないが、現状では分注方法が確立されておらず分注精度が低い。また、分析に必要な量よりも余分に分注しないと分析が出来なくなる恐れがあり、分注する試薬やサンプルの量が増大する。さらに、多数のサンプルや複数の試薬を並行して同時に扱えば自動化の効率が向上するが、多数の試薬を同時に扱うことについて考慮していないので、スループットを向上させることが困難である。
【0006】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、エレクトロ・ウエッティング・オン・ダイエレクトリック(EWOD:electrowetting on dielectric)を適用した化学分析装置において、分注精度を向上させることにある。本発明の他の目的は、EWODを適用した化学分析装置のスループットを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の特徴は、液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、先端部に細管を有しこの細管を用いて前記ポートから液体を供給する供給手段を設け、前記一方の基板の電極は、多数の小電極を有する電極列を備え、この電極列を移動する液滴よりも大容量の液を保持可能であり、前記ポートから細管を前記対向配置した基板間に挿入して、大容量の液を一度に供給可能としたものである。
【0008】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、前記ポートは分注部を形成しており、このポートの下方に液溜り電極を配置し、この液溜り電極より小面積の多数の電極で構成された電極列を、前記液溜り電極にわずかな間隔をおいて配置したことにある。
【0009】
そしてこれらの特徴において、前記対向する基板は分析デバイスを構成し、この分析デバイスは前記ポートを有する分注部と異なる位置に配置した分析部を有し、前記分注部から分注された液体から1回の分析に要する液滴を、分注部で分離可能とするのが好ましい。
【0010】
また上記特徴において、前記分注部は、それぞれ第1の液体と第2の液体を供給可能な複数のポートを有し、これら複数のポートの下方であって前記対向する基板間に第1、第2の液体を混合して保持する保持部が形成されていてもよく、前記細管に、ポートの開口部に嵌合するストッパを設けてもよい。さらに、前記第1の液がサンプル液であり、前記第2の液が試薬または希釈液のいずれかであるのが望ましい。
【0011】
上記各特徴において、前記液溜り電極の周りに、複数の電極を有する電極列を複数個配置してもよく、前記複数の電極列のなす角が鋭角のときには、その間に液体はみ出し防止手段を設けるのがよい。また、前記細管の先端部は、前記電極列方向に開口しているのがよく、前記液溜り電極は、外径が互いに異なる複数の三日月状の電極と、この三日月状電極の内側に配置され円の一部が切り欠かれた電極とを互いにわずかの隙間をおいて配置してほぼ円形の電極とするのがよい。
【0012】
また上記各特徴において、分注部を形成する液溜り電極および電極列の多数の電極に印加する電圧の大きさを変えるコントローラを有するのがよく、細管を浸漬するフッ素系オイル保持手段を有し、前記コントローラは、前記ポートから液体を供給する前に前記細管をこのフッ素系オイル保持手段に保持したオイルに浸漬するよう制御してもよい。さらに、前記細管の径は前記ポートの開口端部の径よりも小さく、前記ポートの開口部の内側がロート状に形成されていてもよく、前記コントローラは、前記細管が供給する液体の順番と、分析部での分析順番とを異ならせるように前記液体を供給するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化学分析装置において、電極が形成されたデバイス内に供給するプローブが、1回の分析に必要な試薬またはサンプル量以上を分注可能であり、分注部の電極を1回の分析に必要な量だけの液滴を形成する構造としたので、分注精度の低いプローブを用いても液滴量の精度が向上する。また、プローブから複数回または複数個の分析に要するサンプルまたは試薬をデバイス中に分注できるので、デバイス内で同時に多数の液滴を操作でき、スループットが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る化学分析装置のいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。図1は、第1の実施例における化学分析装置100の斜視図であり、一部省略図で示している。血清などの生体試料を収容する円柱容器であるサンプルカップ110は、回転可能に設けられたサンプルディスク120の外周近傍に多数配置されている。このサンプルディスク120に隣り合って、これも回転可能に設けられた試薬ディスク140が配置されている。試薬ディスク140の外周近傍には、多数の試薬ボトル130が収容されている。
【0015】
これら2個のディスク120、140から間隔をおいて、詳細を後述する分析デバイス150が配置されている。分析デバイス150とサンプルディスク120間には、サンプル分注機構160が配置されている。サンプル分注機構160は、上下に移動可能な主軸部と、この主軸部から水平方向に突き出たアーム部を備えたプローブ移動機構212を有している。アーム部の先端には、サンプルカップ110からサンプル液を吸引し、分析デバイスの表面に設けられた開口部を有する複数のポート151へ吐出するプローブと呼ばれる細管182が鉛直下方に延びている。プローブ182のアーム側端部には、図示しないチューブが接続されている。このチューブの他端は、サンプル分注機構150の近傍に配置した図示しないシリンジに接続されている。シリンジは、プローブ内182の試薬を駆動する。
【0016】
分析デバイス150と試薬ディスク140との間には、試薬分注機構170が配置されている。試薬分注機構170は、上下に移動可能な主軸部と、この主軸部から水平方向に突き出たアーム部を備えたプローブ移動機構210とを有している。アーム部の先端には、試薬ボトル130から試薬液を吸引し、分析デバイスの表面に設けられた開口部を有する複数のポート151へ吐出するプローブと呼ばれる細管180が鉛直下方に延びている。プローブ180のアーム側端部には、チューブ190が接続されている。このチューブ190の他端は、試薬分注機構170の近傍に配置したシリンジ200に接続されている。シリンジ200は、プローブ内180の試薬を駆動する。
【0017】
サンプルディスク120および試薬ディスク140は、電気配線181によりコントローラ180に接続されている。コントローラ180には、さらにサンプル分注機構160および試薬分注機構170も接続されており、サンプルディスク120とサンプル分注機構160、および試薬ディスク140と試薬分注機構170とが、整合して動作するように制御する。
【0018】
分析デバイス150は矩形状をした平板を有しており、ステージ220上に載置されている。分析デバイス150のサンプルディスク120および試薬ディスク140に近い側の辺の近傍に、複数のポート151が並んで配置されている。このポート151を端部として、多数の電極が列を成して形成された電極レーン152が設けられている。
【0019】
図2に、分析デバイス150のポート151を含む分注部の縦断面図を、図3および図4に、分析デバイス150に形成した電極レーン152の中から、1個の電極列を取出したときの上面図を示す。分析デバイス150では、矩形の上面基板230と下面基板240の2枚の基板を、間隔をおいて対向配置している。下面基板240の一部には、例えば1辺の長さが数mmから数μm程度の多数の電極3001、3002、…が僅かな間隔をおいて配列されており、電極レーン152を構成する。電極3001、3002、…の上面は、絶縁膜250で覆われている。絶縁膜250の上面は、撥水膜260で覆われている。
【0020】
上側基板230は全体がグランド電極となっており、撥水膜260で覆われている。上側基板230のグランド電極はグランドに、下側基板240の電極3001、3002、…は図示しない電源に、電気配線181により接続されている。下側基板240の各電極3001、3002、…には、電圧を切り換えて印加できるようになっている。2枚の基板230、240間の間隔はスペーサ280により、一定に保たれている。
【0021】
下側基板240の電極3001、3002、…は、例えば、ガラスや石英などの絶縁基板素材の表面に、CrやTi、Al、ITOなどの導電性を有する薄膜電極を蒸着またはスパッタ、CVD等の表面処理して作成される。この電極の上に、スリーボンド社のパリレン(商品名)などの有機絶縁膜やSiO2などの無機絶縁膜を、蒸着またはスパッタ、CVD等により処理する。絶縁膜250上に、フッ素系ベースの撥水膜260をコーティングする。撥水膜260の材料としては、デュポン社のテフロンAF1600(商品名)や、旭ガラス社のCytop(商品名)などを用いる。
【0022】
上面基板230では、ITOなどの透明導電膜を基板素材の上面一面に形成する。この導電膜上に、フッ素系ベースの撥水膜260をコーティングする。撥水膜260を表面に形成したので、基板230、240の表面には各種溶液が付着し難く、不純物溶液による汚染を防止できる。上面基板230の複数箇所には開口が形成されており、この開口に上部からアクセス可能なように円筒形のポート151が取り付けられている。
【0023】
このように構成した分析デバイス150の動作を、以下に説明する。以下の説明では、サンプルの操作について説明するが、試薬の操作も同様である。サンプルカップ110にプローブ180を浸漬し、シリンジ200を動作させてサンプル液290を吸引する。吸引するサンプル液の液量は、複数テスト分である。例えば3テスト分の場合には、プローブ180内に、分析に必要な第1〜第3サンプル量2901〜2903に余裕を見たダミー量2904を加えた分が吸引される。
【0024】
サンプル分注機構160を駆動して、プローブ180を分析デバイス150の所定ポート152に位置決めする。その後、図2(1)に示すように、内部にサンプル液が保持されたプローブ180をポート152内に挿入する。プローブ180の先端は、斜めに切り欠かれており、切欠き面185は電極レーン152を向いている。シリンジ200を駆動して、サンプル液290を2枚の基板間230、240の隙間に吐出する(同図(2)参照)。
【0025】
このとき、プローブ180の切り欠き面185は電極レーン152を向いて保持されていること、および第1の電極3001〜第4の電極3004に通電して上面基板230との間に電圧が印加されていることにより、電極レーン152の中で通電された電極3001〜3004上だけが濡れ性が大になる。そして、プローブ180から吐出されたサンプル液はスペーサの方向には向かわず、電極レーン152の上を這うように流動する。プローブ180内のサンプル液290が全て吐出されたときには、サンプル液290は電圧が印加されて濡れ性が大になった第1の電極3001〜第4の電極3004と、慣性により第5の電極3005に先端が掛かる程度まで延びる(同図(3)参照)。
【0026】
サンプル液290が空になったプローブ180を引き上げ、サンプル後端320が位置する第1の電極3001の通電を停止し、サンプル先端310が位置する第5の電極3005に通電する。サンプル後端320位置では電極レーン152の濡れ性が低下し、サンプル先端310位置では濡れ性が増大する。これによりサンプル液290は、図2で右方に移動する(同図(4)参照)。
【0027】
ところで、本実施例に記載の分析デバイス150では、図3に示すように電極レーン152が形成されている。すなわち、電極レーン152は、サンプル液または試薬液を所定位置まで搬送するための搬送レーン330と、液分離ポイント340で分離された液を分析位置に搬送するための分析レーン350と、排出レーン360とを備えている。液分離ポイント340は、分注部のポート151から分注された液滴から1回の分析で使用する液量だけを分離する場所である。排出レーン360は、搬送レーン330に連続しており、1回の分析に必要な量だけ分離された残りのサンプル液290を仮置きするときや、分析に必要な液滴が全て分離された残りのダミー液滴を分析デバイス150外に排出する場合に使用される。これらの各レーン330、350、360は、多数の矩形電極を、一直線上に互いに僅かな隙間をおいて配置した形状をしている。
【0028】
図3は、1回の分析に必要なサンプル量を分離する様子を示す図であり、同図(1)は分注部のポート151から分注されたサンプル液290が、搬送レーン330にある場合である。X印を付けた電極3301〜3304に電圧が印加されている。この電極3301〜3304の濡れ性が増大し、サンプル液はこれらの電極3301〜3304上を占めている。この状態から、順次電極3304よりも図で右方に位置する電極に通電する。それとともに、左方に位置する電極3301から順次通電を停止する。このようにして、サンプル液290を右方に搬送する。
【0029】
同図(2)に、右方に搬送されたサンプル液290が、液分離ポイント340を含む位置まで搬送された様子を示す。搬送レーン中330の電極および排出レーン360中の電極を順次切り換えた結果、サンプル液290は液分離ポイント340に達している。この状態で、搬送レーン330から分析レーン350に分岐する角部に位置し、サンプル液290の後端部が載置された電極320へは電圧の印加を継続する。しかし、この電極320に隣り合う排出レーン360の最左部に位置する電極3601への電圧印加を停止する。そして、サンプル液290が載置された最右端側の電極310への通電を開始する。このときサンプル液290は、後端部が電極320に引かれるとともに、先端部が電極310側に引かれて、電極3601でくびれ370を生じ始める(同図(3)参照)。この電極レーン330、360への電圧印加状態を継続すると、同図(4)に示すように、最終的にサンプル液290は、第1テスト分のサンプル量である第1サンプル液滴3801と、残りのサンプル液390に分離される。第1サンプル液滴3801、ほぼ1個の電極を覆う量である。
【0030】
第1サンプル液滴3801が保持される位置は、分析レーン350への分岐点であり、第1サンプル液滴3801の量は電極1個の面積を占める量であるから、分析レーン350の電極1個づつ電圧印加位置を変えれば、第1サンプル液滴3801は分析レーン350上を搬送される。つまり、分析レーン350の図では上端に位置する電極3501から順に電圧印加を切り換える(同図(5)参照)。サンプル290と同様に、試薬液を分析デバイス150中の他のポート152から分注し、他の搬送レーンおよび分析レーンを経てこの第1サンプル液滴3801に混合させる。混合した液について、図示しない分析部で吸光度分析等が実施される。
【0031】
第1サンプル液滴3801が分析レーン350に移動して、分析レーン350との分岐部である電極320上を第1サンプル液滴3801が占めていなくなったら、排出レーン360の後端に位置する電極3601への電圧印加を開始するとともに排出レーン360の先端の電極310への電圧印加を停止する。これにより第1サンプル液滴3801が分離された残りのサンプル液390が、左方に戻される。そして、サンプル液390の後端が電極320を占めるようになったら(同図(6)参照)、再び図3(2)から図3(4)に示した手順を繰り返し、第2のサンプル液滴3802を分離する。
【0032】
この手順を、所定の回数だけ繰り返す。本実施例ではサンプル液290として、3回の分析を十分行えるだけの量を分注しているので、第1〜第3サンプル液滴3801〜3803を分離すると、分注時の余裕を見込んだダミー量2904が残る。このダミー量2904は、今回の分析には不要であるから、排出レーン360の電圧印加電極を順次右方に切り換えて、排出レーン360を右方に搬送し、図示しない排出ポートから排出する(同図(7)参照)。
【0033】
本実施例によれば、第1〜第3サンプル液滴3801〜3803として分離される液量は、電極320に留まる分の量で規定されているので,プローブ180でサンプル290を吸引および吐出する時に誤差が生じても、ダミー液滴3804がバッファとして作用するから、3個の液滴3801〜3803の液量を過不足なく高精度に設定できる。したがって、プローブ180の分注精度が低くても,分析デバイス150内で分析に使われる液量の分注精度を高精度に維持でき、分析部で高精度な分析が可能となる。また、複数個の液滴を1回の分注から形成できるので、複数テスト分を一度に分注でき、プローブやサンプルディスクを分析のたびに駆動する必要がなく、分析装置のスループットが向上する。
【0034】
なお、上記手順において、分離液滴を形成するために電圧印加を停止する電極数は、電極3601の1個には限らず、隣り合う複数個の電極の電圧印加を同時に停止して、液滴のくびれをうまく形成するようにしてもよい。その場合、液分離ポイント340におけるサンプル液や試薬の挙動を静電容量や画像などモニタして、その挙動にあわせて電圧印加停止数を決定するのがよい。
【0035】
図4に、上記実施例の変形例を示す。本変形例では、連続する搬送レーン330と排出レーン360とから分岐する分析レーン350を複数個設けて同時に複数個のサンプル液滴を分離する点が、上記実施例と相違する。分析レーン350が複数個あり、しかも同時に液滴を複数個分離するので、液滴が分離しやすい形状に電極を形成する。
【0036】
具体的には、搬送レーン330側に位置する第1の分析レーン350までは、上記実施例と同じ構成であるが、第1の分析レーン350との分岐部よりも右方に第2の分析レーン350を、そのさらに右方に第3の分析レーン350を配置する。そして図4において、分岐部の電極320と同様の電極321、322を、第2、第3の分析レーン350の最上側に位置する電極の上側に配置し、電極320と電極321間、電極321と電極322間、および電極322と排出レーン360の最左側の電極3601間に、その他の電極よりも1辺の長さが短い小電極3311〜3316を2個づつ並べて配置している。この小電極3311〜3316は、液分離ポイント340を構成する。
【0037】
複数回のテストが可能なサンプル量を含むサンプル液290が、搬送レーン330上を液分離ポイント340まで搬送される。液分離ポイント340は、小電極3311〜3316と大電極320〜322とを含む。図4(1)に示すように、分注部のポート151から分注され、搬送レーン330を搬送されたサンプル液290は、図の右方に進み後端部が分岐部の電極320を占めるようになる。このとき、サンプル液290の前端は、排出レーン360にまで及んでいる。液分離ポイント340に配置された小電極3311〜3316では、エレクトロウエッティングによる液滴の保持力が小さいから、液分離ポイント340でサンプル液290は、電極面積に応じたくびれ370を形成する(同図(2)参照)。
【0038】
この状態で、液分離ポイント340の小電極3311〜3316への電圧印加を同時に停止する。サンプル液290から第1〜第3サンプル液滴3801〜3803が分離されるとともに、残りはダミー液2904として排出レーンに残る(同図(3)参照)。分岐部の電極320〜322だけを第1〜第3のサンプル液滴3801〜3803が占めているので、分析レーン350の電極に順次電圧を印加すれば、サンプル液滴3801〜3803は、それぞれ別個の分析レーン350を搬送される(同図(4))。このとき、ダミー液2904は、排出レーン360から図示しない排出ポートに送られる。
【0039】
本変形例では、分注ポートから一度に分注するサンプル液量を3回分の分析量よりもやや多めの量としているが、6回分や7回分等よりもやや多めの量として、上記手順を繰り返すようにしてよい。本変形例で示したように、液滴分離用の小型電極を搬送レーンに繰り返し配置し、その間に分析レーンを配置すれば、同時に分析のための液滴を複数個形成できる。したがって、化学分析装置のスループットが向上する。
【0040】
本発明の他の実施例を、図5〜図10を用いて説明する。本実施例が、上記実施例および変形例と相違するのは、分注と液滴分離を同一の場所で実施可能にしたことにある。図5に、化学分析装置100の斜視図を示す。この図5ではサンプル分注部を示し、試薬分注部を省略している。多数のサンプルカップ1101、1102、…を収容し、回転可能なサンプルディスク120に、上下および回転可能なサンプル分注機構160のプローブ180がアクセス可能に配置されている。プローブ180の途中にはストッパ181が取り付けられている。プローブ180は、分析デバイス150に形成したポート151にもアクセス可能である。サンプルディスク120には、フッ素系オイルなどの耐薬品性が高い不活性オイルの入ったオイルカップ1151も収容されている。
【0041】
分析デバイス150を構成する下側基板240には、詳細を後述する液溜め電極400と、多数の電極が引き出し電極レーン410として配列されている。引き出し電極レーン410には、搬送レーン330が接続されている。搬送レーン330には、異なる3種のサンプルを保持する第1〜第3の保持レーン4601〜4603が接続されている。保持レーン4601〜4603は、図示しない分析部に接続されている。
【0042】
その他の構成は、上記実施例と同様である。分析デバイス150の2枚の基板230、240間には、図6にその断面図で示すように、プローブ180を用いてポート151から予め不活性オイル420が供給されている。この状態で、サンプル液や試薬が基板230、240間に入ってきても、基板230、240全体がオイル膜で覆われているので、基板230、240に試薬やサンプル液が接触しにくい。したがって、1回の分析が終了した後に、他の分析をするために試薬やサンプル液を変えるときであっても、前の分析に使用した液がキャリーオーバするのを回避でき、同一ポート151および同一分析レーンを用いて、異なるサンプルを扱うことができる。
【0043】
プローブ180を用いて第1のサンプルカップ1101からポート151に分注された第1のサンプル液の一部を分離して生成された第1のサンプル液滴4701は、引き出し電極レーン410から搬送レーン330に運ばれ、最後に第1サンプル保持レーン4601に運ばれて、混合や分析を待つ。同様に、第2、第3のサンプルをポート151に分注し、液溜め電極400で一部を分離してサンプル液滴4702、4703を生成し、分離された液滴4702、4703は、引き出し電極レーン410、次いで搬送レーン330へと移動し、それぞれの保持レーン4602、4603で待機する。
【0044】
図示しないコントローラが、必要に応じてそれぞれのサンプルを分析レーンに移動させる。これにより、プローブ180を駆動しなくても、分析デバイス150内だけで、第1〜第3のサンプルを任意の順序で保持レーン4601〜4603から分析レーンへ搬送することができ、スループットが向上する。また、分析の要求のたびに、毎回サンプルディスク120を回転して、所望のサンプルの入ったサンプルカップをプローブ180の分注位置にまで移動する必要がなくなる。
【0045】
このように構成した本実施例における液滴の分離動作の詳細を、図6および図7を用いて説明する。以下の説明においては、サンプル290のハンドリングを説明するが、試薬の場合も同様である。シリンジ200およびチューブ190、プローブ180内に、水191を入れる。オイルカップ1104にプローブ180を浸漬し、オイルを少量、吸引する。
【0046】
サンプルディスク120を回転させて、サンプルカップ110とプローブ180を位置決めし、その後サンプルカップ110にプローブ180を浸漬してサンプル290を吸引する。吸引するサンプル290の量は、複数回または複数個のテストを実行できる量に、余裕を見るためのダミー量を合わせた量である。このとき、プローブ180は先にオイルカップ1104に浸漬されているので、プローブ180の先端は内外表面ともにオイルで覆われている。したがって、吸引したサンプル290がプローブ180表面に付着するのを防止できる。サンプル290によるプローブ180でのコンタミの発生を抑制でき、高精度な分析が可能になる。
【0047】
プローブ位置決め機構210を駆動して、プローブ180を分注用のポート151に移動させて位置決めする(図6(2)参照)。内部にサンプル液290を保持したプローブ180を、ポート151内に挿入する。プローブ180先端近傍に形成したプローブストッパ181を、ポート151上部に形成したポートコネクタ1510に嵌合して、プローブ180とポート151とを密着させる。プローブ180に設けたストッパ181は、プローブ位置決め機構210によるプローブ180とポート151の位置決めずれや挿入ずれを補償するもので、分析デバイス180の底面の損傷を防止する。それとともに、プローブ180をポート151に挿入したときにポート151からオイル420が溢れ出るのを防止する。
【0048】
シリンジ200を駆動して、サンプル液290を分析デバイス150内に吐出する。このとき、液溜め電極400だけに電圧を印加する。電圧を印加された液溜め電極400の位置は濡れ性が良く、その他の電極の位置では濡れ性が悪い。そこで、サンプル液290は他に流動することなく液溜め電極400上に留まる(図6(3)参照)。引き出し電極レーン410の電極に電圧を印加する。これにより、サンプル液290の一部2902が分離する。引き出し電極レーン410の電圧印加電極410a、410b、…を順次切り換え、サンプル液滴2902を電極レーン上で駆動する。
【0049】
分析に必要な最後の液滴2903を、液溜め電極400上から引き出し電極レーン410に搬送し終わると、残サンプル2904を保持したまま、プローブ180をポート151から引き上げる。このとき、シリンジ200を動作して残サンプル2904を吸引する(図6(5)参照)。分析に不要なサンプル液290を分析デバイス150外に排出したので、分析プロセスが簡略化する。
【0050】
ここで本実施例では、図7に示すように液滴分離が容易な液溜め電極400形状としている。X印を付した電極は、電圧が印加された電極である。液溜め電極400は、円形の部分に大小異なる大きさの三日月状の電極440a〜440dをわずかの隙間をおいて複数並べ、最も小さい三日月状電極440aの内部に、一部が切りかかれた円形の電極430を配置した構成である。引き出し電極レーン410の電極は、液溜め電極の円形の電極430とほぼ同じ形状である。すなわち、同じ大きさの2個の円を一部重なるように配置したときに、一方の円の重部分を切り欠いた形状の電極410a、410b、…である。個々の電極410a、410b、…は、互いにわずかに隙間をおいて直線状に配置されている。
【0051】
液溜め電極440に電圧を印加しているので、プローブ180から吐出された直後のサンプル液290は、太線で輪郭を示すように液溜め電極400を覆っている(図7(1)参照)。第1回目のサンプル液滴2902を分注するために、液溜め電極410の最外側の三日月状電極440dへの電圧印加を停止し、引き出し電極レーン410の図7で最左側に位置する電極410a、410bに電圧を印加する(同図(2)参照)。引き出し電極レーンの410の電極410a、410bの濡れ性が増大したので、サンプル液滴290は引き出し電極レーン410側に延びだし、くびれ部を生ずる。一方、最外側の三日月状電極400dへの電圧印加を停止したので、この三日月状電極400dの面積によって規定されるサンプル液290量が、図で右方に移動しようとする。
【0052】
サンプル液290のくびれ部に当たる引き出し電極レーン410の電極410aへの電圧印加を停止する。電極410aの濡れ性が低下し、この電極410aからサンプル液290が流出しようとし、サンプル液滴2902が形成される(同図(3)参照)。引き出し電極レーン410の電極410a、410b、…への電圧印加を順次切り換えると、形成されたサンプル液滴2902は、引き出し電極レーン410上を搬送される。そのとき、三日月状電極440cへの電圧印加を停止すると、分離液滴2902が分離された残りのサンプル液2901は、図で右方に移動する。この動作を繰り返す。なお、三日月状電極440c、440b、…への電圧印加停止のタイミングは、上下2枚の基板230、240間の静電容量値や画像をモニタして決定する。
【0053】
液溜め電極400上に分注した複数テスト分のサンプル液290から、液溜め電極400の個々の電極400a〜400d、430の形状により規定される量の液滴が、分離液滴2902として搬送される。したがって、各電極400a〜400d、430を精度よく製作すれば、分注精度が向上し高精度分析が可能となる。これらの電極400a〜400d、430の製作には、半導体の製造で用いられるスパッタ法や蒸着法を容易に適用することにより、高精度の加工が可能になる。
【0054】
なお、図6に示した実施例では、最後に残った残サンプル液をプローブ180で吸引していたが、本実施例では残サンプル液2905を、図示しない排出レーンから排出ポートに搬送している(図7(4)参照)。引き出し電極レーン410には排出レーンが接続されている。本実施例によればシリンジ200を駆動する必要が無く、プローブ180動作が拘束されないのでスループットが向上する。
【0055】
液溜め電極400の他の例を、図8に上面図で示す。本実施例では、液溜め電極400fを円形の1部を扇形に切り欠いた電極400fで構成し、扇形に切り欠いた部分に嵌る三角部を有する電極430bを、引き出し電極レーン410が備えている。電極430bは矩形部と三角部を有しており、液溜め電極400とはわずかな隙間をおいて配置されている。引き出し電極レーン410のその他の電極431、432、…は、矩形状の電極である(図8(1)参照)。
【0056】
液溜め電極400fより大径となるようにサンプル液290を吐出する。液溜め電極410fおよび引き出し電極レーン410の図で最左方側に位置する電極に電圧を印加する。これにより、分離液滴が形成され、その後は上記各実施例と同様、引き出し電極レーン410の各電極への電圧印加を切り換えて、分離液滴を分析部まで搬送する。
【0057】
プローブ180から分注されたサンプル液290量が少ないときや数回の分離液滴の生成で、液溜め電極400f上に位置するサンプル液290の大きさが液溜め電極400fの外径よりも小さくなったときには、液溜め電極400と引き出し電極レーン410の図で最左方側の2個の電極430b、431に電圧を印加する。濡れ性を増大させてサンプル液290の一部を引き出し、引き出し電極レーン410まで移動させる(同図(2)参照)。このとき、液溜め電極400fに印加する電圧を、電極430bよりも小さくする。液溜め電極400fの濡れ性が低下し、液溜め電極400fがサンプル液290を吸引する吸引力が低下する。サンプル液290は、容易に移動できる。
【0058】
液溜め電極400fに嵌る電極430bの三角部の頂点部分4301を、液溜め電極400fの中心近傍に配置しているので、サンプル液290の径がどんどん小径化しても、液溜め電極400fと電極430bとの印加電圧の大きさを変えることにより、液溜め電極400fからサンプル液290引き出し電極レーン410側に引き出すことができる。電極430bへの電圧印加を停止して、分離液滴2902を形成する(同図(3)参照)。
【0059】
なお、搬送電極レーン410上でも、分離液滴2902が位置する2個の電極について、一方の電極への印加電圧を他方の電極の印加電圧よりも小さくすると、印加電圧の大きい方に分離液滴2902は搬送されるから、必ずしも電極のオン/オフを切り換える必要はなく、印加電圧の大きさを調整してもよい。この場合、分離液滴2902の搬送がスムーズになり、搬送速度を向上できる。
【0060】
本実施例のいくつかの変形例を、以下に示す。液溜め電極400、400fに印加される電圧を小さくするために、基板230、240の絶縁膜250と撥水膜260の厚さを液溜め電極400、400f部分で厚くする。本変形例では、サンプル液に加わる電圧が小さくなる。液溜め電極の他の形状を、上面図で図9に示す。液溜め電極400gの複数箇所にスリット400hを形成する。これにより、液溜め電極400gの電極面積を低減し、吸引力を低減する。
【0061】
図10に、液溜め電極のさらに他の変形例を上面図で示す。この変形例では、液溜め電極400kに3本の引き出し電極レーン4101〜4103が接続されている。各引き出し電極レーン4101〜4103の、最も液溜め電極400kに近い電極は、上記実施例と同様に三角形部が付加された矩形であり、三角形部が液溜め電極400kに形成したスリットに嵌る構造である。第1の引き出し電極レーン4101と第2の引き出し電極レーン4102のなす角は鋭角であり、その間には、ポール450が設けられている。第1の引き出し電極レーン4101と180度反対側に、第3の引き出し電極レーン4103が配置されている。
【0062】
第1の引き出し電極レーン4101と第3の引き出し電極レーン4103のように、互いに反対方向に配置された引き出し電極レーンを搬送する場合には、引き出し電極レーンの電極に電圧を印加するだけで、同時にサンプル液290を引き出すことができる。しかし、第1の引き出し電極レーン4101と第2の引き出し電極レーン4102のように、鋭角で隣り合っている場合には、これら2個の引き出し電極レーン4101、4102間に位置するサンプル液290は、液溜め電極400kからはみ出して、半径方向外方に移動する恐れがある。そこで、ポール450を配置して、サンプル液290が、はみ出ないようにする。ポール450は、サンプル液290との接触面積が少ない丸棒のような構造がよい。このように、引き出し電極レーン間が狭いときには、液溜め電極からのサンプル液はみ出し防止手段を設けるのがよい。
【0063】
本発明に係る化学分析装置のさらに他の実施例を、図11を用いて説明する。図11は、分析装置100が備える分析デバイス150の分注部の縦断面図である。本実施例は、上記各実施例とはサンプル液290の分注方法が相違している。2種の溶液、本実施例ではサンプル液と希釈液を組み合わせて分注する。その他の組み合わせとして、試薬とサンプル液の組み合わせにも適用できる。
【0064】
サンプルを分析する分析デバイス150には、プローブ180がサンプルを供給するためのポート151が設けられている。上下1対の基板230、240を有する分析デバイス150を載置するテーブル480の一隅には、希釈液容器490が載置されている。サンプルポート151の近傍には、希釈液を分析デバイス150内に供給するための希釈液ポート500が配置されている。希釈液ポート500には、希釈液チューブ510が接続されており、バルブ520を介して希釈液容器490に接続されている。希釈液容器490内は、予め圧力が付加されている。
【0065】
サンプルポート151に、外部からプローブ180を挿入して、サンプル290を分注する。プローブ180は、サンプルポート151の内径よりはるかに小径であり、外径0.1mm程度のSUS製または樹脂製で、変形可能である。サンプルポート151の内側はロート状に形成されており、サンプルポート151の内壁面にプローブ180が当たっても変形して分析デバイス150の内部まで挿入される(図11(1)参照)。サンプルポート内壁をロート状にしたので、プローブ180の位置決め機構の位置決め精度が悪くても、プローブ180を分析デバイス150の所定位置決めできる。
【0066】
希釈液容器490に接続された希釈液チューブ510に介在させたバルブ520を予め定めた時間だけ開き、希釈液540の所定量を分析デバイス150内に吐出する(同図(2)参照)。サンプル液290と希釈液540が混合され、液溜め電極400上で混合溶液550が生成される(同図(3)参照)。ここで、下側基板240は、液溜め電極400位置で少し下側に凹んでおり、サンプル液290と希釈液540とを溜めることができる。希釈液540を大量に注入すれば、希釈率の高い混合液550を作成することができる。希釈液540を大量に注入すると、ポート151からオイルやサンプル液290が溢れ出る恐れがあるので、ポート151にはシッパーチューブ511を接続し、ポート開口部から溢れそうになる余分なサンプルやオイル等を吸い出して除去する。上記いずれかの実施例に記載の方法により、引き出し電極レーン410において、混合液550から1回の分析に必要な量だけ液滴551を分離する。
【0067】
本実施例によれば、サンプルポート151と希釈液ポート500をともに液溜め電極400上に配置し、2個の位置を近接させているので、2種の液の混合が容易となり、希釈率の精度を向上させることが出来る。なお、通常、サンプル液量より希釈液量が多いので、大容量側の液を後から分注して、分注の際のエネルギで混合液に大きい流動を生じさせ混合効果を高める。
【0068】
また、計量誤差がほぼ一定であれば、大容量の溶液の分注時の計量精度が高いから、先に分析デバイス150内に供給したサンプル液290の量に応じて、大容量の希釈液540を分注すればよい。その結果、分注量を高い精度で調整することができる。サンプル290と希釈液540の分注量を、分析デバイス150が有する2枚の基板23、240間の静電容量出力や液の撮影画像でモニタすれば、さらに分注精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る化学分析装置の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示した化学分析装置が備える分注プローブ部の縦断面図である。
【図3】図1に示した化学分析装置が備える分析デバイス部の上面図である。
【図4】図1に示した化学分析装置が備える分析デバイス部の上面図である。
【図5】図1に示した化学分析装置のサンプル分注部の詳細斜視図である。
【図6】分注プローブ部の他の実施例の縦断面図である。
【図7】分注プロセスを説明する図である。
【図8】分注プロセスを説明する図である。
【図9】分析デバイス部の他の実施例の上面図である。
【図10】分析デバイス部のさらに他の実施例の上面図である。
【図11】分注プローブ部のさらに他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0070】
110…サンプルカップ、120…サンプルディスク、150…分析デバイス、180…プローブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は化学分析装置に係り、特に微量物質が含まれる液の分析に好適な化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液移送装置の例が、特許文献1に記載されている。この特許明細書に記載の液移送装置は、微小流量を駆動するマイクロアクチュエータを有している。このマイクロアクチュエータは、エレクトロウエッティングという現象に基づいており、可動部を有しておらず、液と固体の壁面間の粘着エネルギー勾配を液に作用させている。具体的には、1枚の共通電極板に、互いに絶縁された複数の電極を有する駆動電極列が表面に形成された平板が対向配置されている。電極列を構成する各電極への通電を切り換えて、共通電極板と駆動電極板の隙間に供給した微量な液滴を、電極列に沿って搬送している。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6565727号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の液移送装置によれば、電圧を制御して平板の表面の濡れ性を変え、分析部であるデバイス内で液を搬送させている。しかしながら、この液移送装置は微小な液滴の移送だけに注目しているので、化学分析に必要な液滴の分注や液滴の分析等については、十分には考慮していない。
【0005】
化学分析装置では、デバイス外から細管のプローブを用いてサンプルに多種の試薬を供給して、多項目の分析を高速で実施する必要がある。そのため、デバイス内に、サンプルや試薬を精度よく分注および導入しなければならないが、現状では分注方法が確立されておらず分注精度が低い。また、分析に必要な量よりも余分に分注しないと分析が出来なくなる恐れがあり、分注する試薬やサンプルの量が増大する。さらに、多数のサンプルや複数の試薬を並行して同時に扱えば自動化の効率が向上するが、多数の試薬を同時に扱うことについて考慮していないので、スループットを向上させることが困難である。
【0006】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、エレクトロ・ウエッティング・オン・ダイエレクトリック(EWOD:electrowetting on dielectric)を適用した化学分析装置において、分注精度を向上させることにある。本発明の他の目的は、EWODを適用した化学分析装置のスループットを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の特徴は、液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、先端部に細管を有しこの細管を用いて前記ポートから液体を供給する供給手段を設け、前記一方の基板の電極は、多数の小電極を有する電極列を備え、この電極列を移動する液滴よりも大容量の液を保持可能であり、前記ポートから細管を前記対向配置した基板間に挿入して、大容量の液を一度に供給可能としたものである。
【0008】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、前記ポートは分注部を形成しており、このポートの下方に液溜り電極を配置し、この液溜り電極より小面積の多数の電極で構成された電極列を、前記液溜り電極にわずかな間隔をおいて配置したことにある。
【0009】
そしてこれらの特徴において、前記対向する基板は分析デバイスを構成し、この分析デバイスは前記ポートを有する分注部と異なる位置に配置した分析部を有し、前記分注部から分注された液体から1回の分析に要する液滴を、分注部で分離可能とするのが好ましい。
【0010】
また上記特徴において、前記分注部は、それぞれ第1の液体と第2の液体を供給可能な複数のポートを有し、これら複数のポートの下方であって前記対向する基板間に第1、第2の液体を混合して保持する保持部が形成されていてもよく、前記細管に、ポートの開口部に嵌合するストッパを設けてもよい。さらに、前記第1の液がサンプル液であり、前記第2の液が試薬または希釈液のいずれかであるのが望ましい。
【0011】
上記各特徴において、前記液溜り電極の周りに、複数の電極を有する電極列を複数個配置してもよく、前記複数の電極列のなす角が鋭角のときには、その間に液体はみ出し防止手段を設けるのがよい。また、前記細管の先端部は、前記電極列方向に開口しているのがよく、前記液溜り電極は、外径が互いに異なる複数の三日月状の電極と、この三日月状電極の内側に配置され円の一部が切り欠かれた電極とを互いにわずかの隙間をおいて配置してほぼ円形の電極とするのがよい。
【0012】
また上記各特徴において、分注部を形成する液溜り電極および電極列の多数の電極に印加する電圧の大きさを変えるコントローラを有するのがよく、細管を浸漬するフッ素系オイル保持手段を有し、前記コントローラは、前記ポートから液体を供給する前に前記細管をこのフッ素系オイル保持手段に保持したオイルに浸漬するよう制御してもよい。さらに、前記細管の径は前記ポートの開口端部の径よりも小さく、前記ポートの開口部の内側がロート状に形成されていてもよく、前記コントローラは、前記細管が供給する液体の順番と、分析部での分析順番とを異ならせるように前記液体を供給するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化学分析装置において、電極が形成されたデバイス内に供給するプローブが、1回の分析に必要な試薬またはサンプル量以上を分注可能であり、分注部の電極を1回の分析に必要な量だけの液滴を形成する構造としたので、分注精度の低いプローブを用いても液滴量の精度が向上する。また、プローブから複数回または複数個の分析に要するサンプルまたは試薬をデバイス中に分注できるので、デバイス内で同時に多数の液滴を操作でき、スループットが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る化学分析装置のいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。図1は、第1の実施例における化学分析装置100の斜視図であり、一部省略図で示している。血清などの生体試料を収容する円柱容器であるサンプルカップ110は、回転可能に設けられたサンプルディスク120の外周近傍に多数配置されている。このサンプルディスク120に隣り合って、これも回転可能に設けられた試薬ディスク140が配置されている。試薬ディスク140の外周近傍には、多数の試薬ボトル130が収容されている。
【0015】
これら2個のディスク120、140から間隔をおいて、詳細を後述する分析デバイス150が配置されている。分析デバイス150とサンプルディスク120間には、サンプル分注機構160が配置されている。サンプル分注機構160は、上下に移動可能な主軸部と、この主軸部から水平方向に突き出たアーム部を備えたプローブ移動機構212を有している。アーム部の先端には、サンプルカップ110からサンプル液を吸引し、分析デバイスの表面に設けられた開口部を有する複数のポート151へ吐出するプローブと呼ばれる細管182が鉛直下方に延びている。プローブ182のアーム側端部には、図示しないチューブが接続されている。このチューブの他端は、サンプル分注機構150の近傍に配置した図示しないシリンジに接続されている。シリンジは、プローブ内182の試薬を駆動する。
【0016】
分析デバイス150と試薬ディスク140との間には、試薬分注機構170が配置されている。試薬分注機構170は、上下に移動可能な主軸部と、この主軸部から水平方向に突き出たアーム部を備えたプローブ移動機構210とを有している。アーム部の先端には、試薬ボトル130から試薬液を吸引し、分析デバイスの表面に設けられた開口部を有する複数のポート151へ吐出するプローブと呼ばれる細管180が鉛直下方に延びている。プローブ180のアーム側端部には、チューブ190が接続されている。このチューブ190の他端は、試薬分注機構170の近傍に配置したシリンジ200に接続されている。シリンジ200は、プローブ内180の試薬を駆動する。
【0017】
サンプルディスク120および試薬ディスク140は、電気配線181によりコントローラ180に接続されている。コントローラ180には、さらにサンプル分注機構160および試薬分注機構170も接続されており、サンプルディスク120とサンプル分注機構160、および試薬ディスク140と試薬分注機構170とが、整合して動作するように制御する。
【0018】
分析デバイス150は矩形状をした平板を有しており、ステージ220上に載置されている。分析デバイス150のサンプルディスク120および試薬ディスク140に近い側の辺の近傍に、複数のポート151が並んで配置されている。このポート151を端部として、多数の電極が列を成して形成された電極レーン152が設けられている。
【0019】
図2に、分析デバイス150のポート151を含む分注部の縦断面図を、図3および図4に、分析デバイス150に形成した電極レーン152の中から、1個の電極列を取出したときの上面図を示す。分析デバイス150では、矩形の上面基板230と下面基板240の2枚の基板を、間隔をおいて対向配置している。下面基板240の一部には、例えば1辺の長さが数mmから数μm程度の多数の電極3001、3002、…が僅かな間隔をおいて配列されており、電極レーン152を構成する。電極3001、3002、…の上面は、絶縁膜250で覆われている。絶縁膜250の上面は、撥水膜260で覆われている。
【0020】
上側基板230は全体がグランド電極となっており、撥水膜260で覆われている。上側基板230のグランド電極はグランドに、下側基板240の電極3001、3002、…は図示しない電源に、電気配線181により接続されている。下側基板240の各電極3001、3002、…には、電圧を切り換えて印加できるようになっている。2枚の基板230、240間の間隔はスペーサ280により、一定に保たれている。
【0021】
下側基板240の電極3001、3002、…は、例えば、ガラスや石英などの絶縁基板素材の表面に、CrやTi、Al、ITOなどの導電性を有する薄膜電極を蒸着またはスパッタ、CVD等の表面処理して作成される。この電極の上に、スリーボンド社のパリレン(商品名)などの有機絶縁膜やSiO2などの無機絶縁膜を、蒸着またはスパッタ、CVD等により処理する。絶縁膜250上に、フッ素系ベースの撥水膜260をコーティングする。撥水膜260の材料としては、デュポン社のテフロンAF1600(商品名)や、旭ガラス社のCytop(商品名)などを用いる。
【0022】
上面基板230では、ITOなどの透明導電膜を基板素材の上面一面に形成する。この導電膜上に、フッ素系ベースの撥水膜260をコーティングする。撥水膜260を表面に形成したので、基板230、240の表面には各種溶液が付着し難く、不純物溶液による汚染を防止できる。上面基板230の複数箇所には開口が形成されており、この開口に上部からアクセス可能なように円筒形のポート151が取り付けられている。
【0023】
このように構成した分析デバイス150の動作を、以下に説明する。以下の説明では、サンプルの操作について説明するが、試薬の操作も同様である。サンプルカップ110にプローブ180を浸漬し、シリンジ200を動作させてサンプル液290を吸引する。吸引するサンプル液の液量は、複数テスト分である。例えば3テスト分の場合には、プローブ180内に、分析に必要な第1〜第3サンプル量2901〜2903に余裕を見たダミー量2904を加えた分が吸引される。
【0024】
サンプル分注機構160を駆動して、プローブ180を分析デバイス150の所定ポート152に位置決めする。その後、図2(1)に示すように、内部にサンプル液が保持されたプローブ180をポート152内に挿入する。プローブ180の先端は、斜めに切り欠かれており、切欠き面185は電極レーン152を向いている。シリンジ200を駆動して、サンプル液290を2枚の基板間230、240の隙間に吐出する(同図(2)参照)。
【0025】
このとき、プローブ180の切り欠き面185は電極レーン152を向いて保持されていること、および第1の電極3001〜第4の電極3004に通電して上面基板230との間に電圧が印加されていることにより、電極レーン152の中で通電された電極3001〜3004上だけが濡れ性が大になる。そして、プローブ180から吐出されたサンプル液はスペーサの方向には向かわず、電極レーン152の上を這うように流動する。プローブ180内のサンプル液290が全て吐出されたときには、サンプル液290は電圧が印加されて濡れ性が大になった第1の電極3001〜第4の電極3004と、慣性により第5の電極3005に先端が掛かる程度まで延びる(同図(3)参照)。
【0026】
サンプル液290が空になったプローブ180を引き上げ、サンプル後端320が位置する第1の電極3001の通電を停止し、サンプル先端310が位置する第5の電極3005に通電する。サンプル後端320位置では電極レーン152の濡れ性が低下し、サンプル先端310位置では濡れ性が増大する。これによりサンプル液290は、図2で右方に移動する(同図(4)参照)。
【0027】
ところで、本実施例に記載の分析デバイス150では、図3に示すように電極レーン152が形成されている。すなわち、電極レーン152は、サンプル液または試薬液を所定位置まで搬送するための搬送レーン330と、液分離ポイント340で分離された液を分析位置に搬送するための分析レーン350と、排出レーン360とを備えている。液分離ポイント340は、分注部のポート151から分注された液滴から1回の分析で使用する液量だけを分離する場所である。排出レーン360は、搬送レーン330に連続しており、1回の分析に必要な量だけ分離された残りのサンプル液290を仮置きするときや、分析に必要な液滴が全て分離された残りのダミー液滴を分析デバイス150外に排出する場合に使用される。これらの各レーン330、350、360は、多数の矩形電極を、一直線上に互いに僅かな隙間をおいて配置した形状をしている。
【0028】
図3は、1回の分析に必要なサンプル量を分離する様子を示す図であり、同図(1)は分注部のポート151から分注されたサンプル液290が、搬送レーン330にある場合である。X印を付けた電極3301〜3304に電圧が印加されている。この電極3301〜3304の濡れ性が増大し、サンプル液はこれらの電極3301〜3304上を占めている。この状態から、順次電極3304よりも図で右方に位置する電極に通電する。それとともに、左方に位置する電極3301から順次通電を停止する。このようにして、サンプル液290を右方に搬送する。
【0029】
同図(2)に、右方に搬送されたサンプル液290が、液分離ポイント340を含む位置まで搬送された様子を示す。搬送レーン中330の電極および排出レーン360中の電極を順次切り換えた結果、サンプル液290は液分離ポイント340に達している。この状態で、搬送レーン330から分析レーン350に分岐する角部に位置し、サンプル液290の後端部が載置された電極320へは電圧の印加を継続する。しかし、この電極320に隣り合う排出レーン360の最左部に位置する電極3601への電圧印加を停止する。そして、サンプル液290が載置された最右端側の電極310への通電を開始する。このときサンプル液290は、後端部が電極320に引かれるとともに、先端部が電極310側に引かれて、電極3601でくびれ370を生じ始める(同図(3)参照)。この電極レーン330、360への電圧印加状態を継続すると、同図(4)に示すように、最終的にサンプル液290は、第1テスト分のサンプル量である第1サンプル液滴3801と、残りのサンプル液390に分離される。第1サンプル液滴3801、ほぼ1個の電極を覆う量である。
【0030】
第1サンプル液滴3801が保持される位置は、分析レーン350への分岐点であり、第1サンプル液滴3801の量は電極1個の面積を占める量であるから、分析レーン350の電極1個づつ電圧印加位置を変えれば、第1サンプル液滴3801は分析レーン350上を搬送される。つまり、分析レーン350の図では上端に位置する電極3501から順に電圧印加を切り換える(同図(5)参照)。サンプル290と同様に、試薬液を分析デバイス150中の他のポート152から分注し、他の搬送レーンおよび分析レーンを経てこの第1サンプル液滴3801に混合させる。混合した液について、図示しない分析部で吸光度分析等が実施される。
【0031】
第1サンプル液滴3801が分析レーン350に移動して、分析レーン350との分岐部である電極320上を第1サンプル液滴3801が占めていなくなったら、排出レーン360の後端に位置する電極3601への電圧印加を開始するとともに排出レーン360の先端の電極310への電圧印加を停止する。これにより第1サンプル液滴3801が分離された残りのサンプル液390が、左方に戻される。そして、サンプル液390の後端が電極320を占めるようになったら(同図(6)参照)、再び図3(2)から図3(4)に示した手順を繰り返し、第2のサンプル液滴3802を分離する。
【0032】
この手順を、所定の回数だけ繰り返す。本実施例ではサンプル液290として、3回の分析を十分行えるだけの量を分注しているので、第1〜第3サンプル液滴3801〜3803を分離すると、分注時の余裕を見込んだダミー量2904が残る。このダミー量2904は、今回の分析には不要であるから、排出レーン360の電圧印加電極を順次右方に切り換えて、排出レーン360を右方に搬送し、図示しない排出ポートから排出する(同図(7)参照)。
【0033】
本実施例によれば、第1〜第3サンプル液滴3801〜3803として分離される液量は、電極320に留まる分の量で規定されているので,プローブ180でサンプル290を吸引および吐出する時に誤差が生じても、ダミー液滴3804がバッファとして作用するから、3個の液滴3801〜3803の液量を過不足なく高精度に設定できる。したがって、プローブ180の分注精度が低くても,分析デバイス150内で分析に使われる液量の分注精度を高精度に維持でき、分析部で高精度な分析が可能となる。また、複数個の液滴を1回の分注から形成できるので、複数テスト分を一度に分注でき、プローブやサンプルディスクを分析のたびに駆動する必要がなく、分析装置のスループットが向上する。
【0034】
なお、上記手順において、分離液滴を形成するために電圧印加を停止する電極数は、電極3601の1個には限らず、隣り合う複数個の電極の電圧印加を同時に停止して、液滴のくびれをうまく形成するようにしてもよい。その場合、液分離ポイント340におけるサンプル液や試薬の挙動を静電容量や画像などモニタして、その挙動にあわせて電圧印加停止数を決定するのがよい。
【0035】
図4に、上記実施例の変形例を示す。本変形例では、連続する搬送レーン330と排出レーン360とから分岐する分析レーン350を複数個設けて同時に複数個のサンプル液滴を分離する点が、上記実施例と相違する。分析レーン350が複数個あり、しかも同時に液滴を複数個分離するので、液滴が分離しやすい形状に電極を形成する。
【0036】
具体的には、搬送レーン330側に位置する第1の分析レーン350までは、上記実施例と同じ構成であるが、第1の分析レーン350との分岐部よりも右方に第2の分析レーン350を、そのさらに右方に第3の分析レーン350を配置する。そして図4において、分岐部の電極320と同様の電極321、322を、第2、第3の分析レーン350の最上側に位置する電極の上側に配置し、電極320と電極321間、電極321と電極322間、および電極322と排出レーン360の最左側の電極3601間に、その他の電極よりも1辺の長さが短い小電極3311〜3316を2個づつ並べて配置している。この小電極3311〜3316は、液分離ポイント340を構成する。
【0037】
複数回のテストが可能なサンプル量を含むサンプル液290が、搬送レーン330上を液分離ポイント340まで搬送される。液分離ポイント340は、小電極3311〜3316と大電極320〜322とを含む。図4(1)に示すように、分注部のポート151から分注され、搬送レーン330を搬送されたサンプル液290は、図の右方に進み後端部が分岐部の電極320を占めるようになる。このとき、サンプル液290の前端は、排出レーン360にまで及んでいる。液分離ポイント340に配置された小電極3311〜3316では、エレクトロウエッティングによる液滴の保持力が小さいから、液分離ポイント340でサンプル液290は、電極面積に応じたくびれ370を形成する(同図(2)参照)。
【0038】
この状態で、液分離ポイント340の小電極3311〜3316への電圧印加を同時に停止する。サンプル液290から第1〜第3サンプル液滴3801〜3803が分離されるとともに、残りはダミー液2904として排出レーンに残る(同図(3)参照)。分岐部の電極320〜322だけを第1〜第3のサンプル液滴3801〜3803が占めているので、分析レーン350の電極に順次電圧を印加すれば、サンプル液滴3801〜3803は、それぞれ別個の分析レーン350を搬送される(同図(4))。このとき、ダミー液2904は、排出レーン360から図示しない排出ポートに送られる。
【0039】
本変形例では、分注ポートから一度に分注するサンプル液量を3回分の分析量よりもやや多めの量としているが、6回分や7回分等よりもやや多めの量として、上記手順を繰り返すようにしてよい。本変形例で示したように、液滴分離用の小型電極を搬送レーンに繰り返し配置し、その間に分析レーンを配置すれば、同時に分析のための液滴を複数個形成できる。したがって、化学分析装置のスループットが向上する。
【0040】
本発明の他の実施例を、図5〜図10を用いて説明する。本実施例が、上記実施例および変形例と相違するのは、分注と液滴分離を同一の場所で実施可能にしたことにある。図5に、化学分析装置100の斜視図を示す。この図5ではサンプル分注部を示し、試薬分注部を省略している。多数のサンプルカップ1101、1102、…を収容し、回転可能なサンプルディスク120に、上下および回転可能なサンプル分注機構160のプローブ180がアクセス可能に配置されている。プローブ180の途中にはストッパ181が取り付けられている。プローブ180は、分析デバイス150に形成したポート151にもアクセス可能である。サンプルディスク120には、フッ素系オイルなどの耐薬品性が高い不活性オイルの入ったオイルカップ1151も収容されている。
【0041】
分析デバイス150を構成する下側基板240には、詳細を後述する液溜め電極400と、多数の電極が引き出し電極レーン410として配列されている。引き出し電極レーン410には、搬送レーン330が接続されている。搬送レーン330には、異なる3種のサンプルを保持する第1〜第3の保持レーン4601〜4603が接続されている。保持レーン4601〜4603は、図示しない分析部に接続されている。
【0042】
その他の構成は、上記実施例と同様である。分析デバイス150の2枚の基板230、240間には、図6にその断面図で示すように、プローブ180を用いてポート151から予め不活性オイル420が供給されている。この状態で、サンプル液や試薬が基板230、240間に入ってきても、基板230、240全体がオイル膜で覆われているので、基板230、240に試薬やサンプル液が接触しにくい。したがって、1回の分析が終了した後に、他の分析をするために試薬やサンプル液を変えるときであっても、前の分析に使用した液がキャリーオーバするのを回避でき、同一ポート151および同一分析レーンを用いて、異なるサンプルを扱うことができる。
【0043】
プローブ180を用いて第1のサンプルカップ1101からポート151に分注された第1のサンプル液の一部を分離して生成された第1のサンプル液滴4701は、引き出し電極レーン410から搬送レーン330に運ばれ、最後に第1サンプル保持レーン4601に運ばれて、混合や分析を待つ。同様に、第2、第3のサンプルをポート151に分注し、液溜め電極400で一部を分離してサンプル液滴4702、4703を生成し、分離された液滴4702、4703は、引き出し電極レーン410、次いで搬送レーン330へと移動し、それぞれの保持レーン4602、4603で待機する。
【0044】
図示しないコントローラが、必要に応じてそれぞれのサンプルを分析レーンに移動させる。これにより、プローブ180を駆動しなくても、分析デバイス150内だけで、第1〜第3のサンプルを任意の順序で保持レーン4601〜4603から分析レーンへ搬送することができ、スループットが向上する。また、分析の要求のたびに、毎回サンプルディスク120を回転して、所望のサンプルの入ったサンプルカップをプローブ180の分注位置にまで移動する必要がなくなる。
【0045】
このように構成した本実施例における液滴の分離動作の詳細を、図6および図7を用いて説明する。以下の説明においては、サンプル290のハンドリングを説明するが、試薬の場合も同様である。シリンジ200およびチューブ190、プローブ180内に、水191を入れる。オイルカップ1104にプローブ180を浸漬し、オイルを少量、吸引する。
【0046】
サンプルディスク120を回転させて、サンプルカップ110とプローブ180を位置決めし、その後サンプルカップ110にプローブ180を浸漬してサンプル290を吸引する。吸引するサンプル290の量は、複数回または複数個のテストを実行できる量に、余裕を見るためのダミー量を合わせた量である。このとき、プローブ180は先にオイルカップ1104に浸漬されているので、プローブ180の先端は内外表面ともにオイルで覆われている。したがって、吸引したサンプル290がプローブ180表面に付着するのを防止できる。サンプル290によるプローブ180でのコンタミの発生を抑制でき、高精度な分析が可能になる。
【0047】
プローブ位置決め機構210を駆動して、プローブ180を分注用のポート151に移動させて位置決めする(図6(2)参照)。内部にサンプル液290を保持したプローブ180を、ポート151内に挿入する。プローブ180先端近傍に形成したプローブストッパ181を、ポート151上部に形成したポートコネクタ1510に嵌合して、プローブ180とポート151とを密着させる。プローブ180に設けたストッパ181は、プローブ位置決め機構210によるプローブ180とポート151の位置決めずれや挿入ずれを補償するもので、分析デバイス180の底面の損傷を防止する。それとともに、プローブ180をポート151に挿入したときにポート151からオイル420が溢れ出るのを防止する。
【0048】
シリンジ200を駆動して、サンプル液290を分析デバイス150内に吐出する。このとき、液溜め電極400だけに電圧を印加する。電圧を印加された液溜め電極400の位置は濡れ性が良く、その他の電極の位置では濡れ性が悪い。そこで、サンプル液290は他に流動することなく液溜め電極400上に留まる(図6(3)参照)。引き出し電極レーン410の電極に電圧を印加する。これにより、サンプル液290の一部2902が分離する。引き出し電極レーン410の電圧印加電極410a、410b、…を順次切り換え、サンプル液滴2902を電極レーン上で駆動する。
【0049】
分析に必要な最後の液滴2903を、液溜め電極400上から引き出し電極レーン410に搬送し終わると、残サンプル2904を保持したまま、プローブ180をポート151から引き上げる。このとき、シリンジ200を動作して残サンプル2904を吸引する(図6(5)参照)。分析に不要なサンプル液290を分析デバイス150外に排出したので、分析プロセスが簡略化する。
【0050】
ここで本実施例では、図7に示すように液滴分離が容易な液溜め電極400形状としている。X印を付した電極は、電圧が印加された電極である。液溜め電極400は、円形の部分に大小異なる大きさの三日月状の電極440a〜440dをわずかの隙間をおいて複数並べ、最も小さい三日月状電極440aの内部に、一部が切りかかれた円形の電極430を配置した構成である。引き出し電極レーン410の電極は、液溜め電極の円形の電極430とほぼ同じ形状である。すなわち、同じ大きさの2個の円を一部重なるように配置したときに、一方の円の重部分を切り欠いた形状の電極410a、410b、…である。個々の電極410a、410b、…は、互いにわずかに隙間をおいて直線状に配置されている。
【0051】
液溜め電極440に電圧を印加しているので、プローブ180から吐出された直後のサンプル液290は、太線で輪郭を示すように液溜め電極400を覆っている(図7(1)参照)。第1回目のサンプル液滴2902を分注するために、液溜め電極410の最外側の三日月状電極440dへの電圧印加を停止し、引き出し電極レーン410の図7で最左側に位置する電極410a、410bに電圧を印加する(同図(2)参照)。引き出し電極レーンの410の電極410a、410bの濡れ性が増大したので、サンプル液滴290は引き出し電極レーン410側に延びだし、くびれ部を生ずる。一方、最外側の三日月状電極400dへの電圧印加を停止したので、この三日月状電極400dの面積によって規定されるサンプル液290量が、図で右方に移動しようとする。
【0052】
サンプル液290のくびれ部に当たる引き出し電極レーン410の電極410aへの電圧印加を停止する。電極410aの濡れ性が低下し、この電極410aからサンプル液290が流出しようとし、サンプル液滴2902が形成される(同図(3)参照)。引き出し電極レーン410の電極410a、410b、…への電圧印加を順次切り換えると、形成されたサンプル液滴2902は、引き出し電極レーン410上を搬送される。そのとき、三日月状電極440cへの電圧印加を停止すると、分離液滴2902が分離された残りのサンプル液2901は、図で右方に移動する。この動作を繰り返す。なお、三日月状電極440c、440b、…への電圧印加停止のタイミングは、上下2枚の基板230、240間の静電容量値や画像をモニタして決定する。
【0053】
液溜め電極400上に分注した複数テスト分のサンプル液290から、液溜め電極400の個々の電極400a〜400d、430の形状により規定される量の液滴が、分離液滴2902として搬送される。したがって、各電極400a〜400d、430を精度よく製作すれば、分注精度が向上し高精度分析が可能となる。これらの電極400a〜400d、430の製作には、半導体の製造で用いられるスパッタ法や蒸着法を容易に適用することにより、高精度の加工が可能になる。
【0054】
なお、図6に示した実施例では、最後に残った残サンプル液をプローブ180で吸引していたが、本実施例では残サンプル液2905を、図示しない排出レーンから排出ポートに搬送している(図7(4)参照)。引き出し電極レーン410には排出レーンが接続されている。本実施例によればシリンジ200を駆動する必要が無く、プローブ180動作が拘束されないのでスループットが向上する。
【0055】
液溜め電極400の他の例を、図8に上面図で示す。本実施例では、液溜め電極400fを円形の1部を扇形に切り欠いた電極400fで構成し、扇形に切り欠いた部分に嵌る三角部を有する電極430bを、引き出し電極レーン410が備えている。電極430bは矩形部と三角部を有しており、液溜め電極400とはわずかな隙間をおいて配置されている。引き出し電極レーン410のその他の電極431、432、…は、矩形状の電極である(図8(1)参照)。
【0056】
液溜め電極400fより大径となるようにサンプル液290を吐出する。液溜め電極410fおよび引き出し電極レーン410の図で最左方側に位置する電極に電圧を印加する。これにより、分離液滴が形成され、その後は上記各実施例と同様、引き出し電極レーン410の各電極への電圧印加を切り換えて、分離液滴を分析部まで搬送する。
【0057】
プローブ180から分注されたサンプル液290量が少ないときや数回の分離液滴の生成で、液溜め電極400f上に位置するサンプル液290の大きさが液溜め電極400fの外径よりも小さくなったときには、液溜め電極400と引き出し電極レーン410の図で最左方側の2個の電極430b、431に電圧を印加する。濡れ性を増大させてサンプル液290の一部を引き出し、引き出し電極レーン410まで移動させる(同図(2)参照)。このとき、液溜め電極400fに印加する電圧を、電極430bよりも小さくする。液溜め電極400fの濡れ性が低下し、液溜め電極400fがサンプル液290を吸引する吸引力が低下する。サンプル液290は、容易に移動できる。
【0058】
液溜め電極400fに嵌る電極430bの三角部の頂点部分4301を、液溜め電極400fの中心近傍に配置しているので、サンプル液290の径がどんどん小径化しても、液溜め電極400fと電極430bとの印加電圧の大きさを変えることにより、液溜め電極400fからサンプル液290引き出し電極レーン410側に引き出すことができる。電極430bへの電圧印加を停止して、分離液滴2902を形成する(同図(3)参照)。
【0059】
なお、搬送電極レーン410上でも、分離液滴2902が位置する2個の電極について、一方の電極への印加電圧を他方の電極の印加電圧よりも小さくすると、印加電圧の大きい方に分離液滴2902は搬送されるから、必ずしも電極のオン/オフを切り換える必要はなく、印加電圧の大きさを調整してもよい。この場合、分離液滴2902の搬送がスムーズになり、搬送速度を向上できる。
【0060】
本実施例のいくつかの変形例を、以下に示す。液溜め電極400、400fに印加される電圧を小さくするために、基板230、240の絶縁膜250と撥水膜260の厚さを液溜め電極400、400f部分で厚くする。本変形例では、サンプル液に加わる電圧が小さくなる。液溜め電極の他の形状を、上面図で図9に示す。液溜め電極400gの複数箇所にスリット400hを形成する。これにより、液溜め電極400gの電極面積を低減し、吸引力を低減する。
【0061】
図10に、液溜め電極のさらに他の変形例を上面図で示す。この変形例では、液溜め電極400kに3本の引き出し電極レーン4101〜4103が接続されている。各引き出し電極レーン4101〜4103の、最も液溜め電極400kに近い電極は、上記実施例と同様に三角形部が付加された矩形であり、三角形部が液溜め電極400kに形成したスリットに嵌る構造である。第1の引き出し電極レーン4101と第2の引き出し電極レーン4102のなす角は鋭角であり、その間には、ポール450が設けられている。第1の引き出し電極レーン4101と180度反対側に、第3の引き出し電極レーン4103が配置されている。
【0062】
第1の引き出し電極レーン4101と第3の引き出し電極レーン4103のように、互いに反対方向に配置された引き出し電極レーンを搬送する場合には、引き出し電極レーンの電極に電圧を印加するだけで、同時にサンプル液290を引き出すことができる。しかし、第1の引き出し電極レーン4101と第2の引き出し電極レーン4102のように、鋭角で隣り合っている場合には、これら2個の引き出し電極レーン4101、4102間に位置するサンプル液290は、液溜め電極400kからはみ出して、半径方向外方に移動する恐れがある。そこで、ポール450を配置して、サンプル液290が、はみ出ないようにする。ポール450は、サンプル液290との接触面積が少ない丸棒のような構造がよい。このように、引き出し電極レーン間が狭いときには、液溜め電極からのサンプル液はみ出し防止手段を設けるのがよい。
【0063】
本発明に係る化学分析装置のさらに他の実施例を、図11を用いて説明する。図11は、分析装置100が備える分析デバイス150の分注部の縦断面図である。本実施例は、上記各実施例とはサンプル液290の分注方法が相違している。2種の溶液、本実施例ではサンプル液と希釈液を組み合わせて分注する。その他の組み合わせとして、試薬とサンプル液の組み合わせにも適用できる。
【0064】
サンプルを分析する分析デバイス150には、プローブ180がサンプルを供給するためのポート151が設けられている。上下1対の基板230、240を有する分析デバイス150を載置するテーブル480の一隅には、希釈液容器490が載置されている。サンプルポート151の近傍には、希釈液を分析デバイス150内に供給するための希釈液ポート500が配置されている。希釈液ポート500には、希釈液チューブ510が接続されており、バルブ520を介して希釈液容器490に接続されている。希釈液容器490内は、予め圧力が付加されている。
【0065】
サンプルポート151に、外部からプローブ180を挿入して、サンプル290を分注する。プローブ180は、サンプルポート151の内径よりはるかに小径であり、外径0.1mm程度のSUS製または樹脂製で、変形可能である。サンプルポート151の内側はロート状に形成されており、サンプルポート151の内壁面にプローブ180が当たっても変形して分析デバイス150の内部まで挿入される(図11(1)参照)。サンプルポート内壁をロート状にしたので、プローブ180の位置決め機構の位置決め精度が悪くても、プローブ180を分析デバイス150の所定位置決めできる。
【0066】
希釈液容器490に接続された希釈液チューブ510に介在させたバルブ520を予め定めた時間だけ開き、希釈液540の所定量を分析デバイス150内に吐出する(同図(2)参照)。サンプル液290と希釈液540が混合され、液溜め電極400上で混合溶液550が生成される(同図(3)参照)。ここで、下側基板240は、液溜め電極400位置で少し下側に凹んでおり、サンプル液290と希釈液540とを溜めることができる。希釈液540を大量に注入すれば、希釈率の高い混合液550を作成することができる。希釈液540を大量に注入すると、ポート151からオイルやサンプル液290が溢れ出る恐れがあるので、ポート151にはシッパーチューブ511を接続し、ポート開口部から溢れそうになる余分なサンプルやオイル等を吸い出して除去する。上記いずれかの実施例に記載の方法により、引き出し電極レーン410において、混合液550から1回の分析に必要な量だけ液滴551を分離する。
【0067】
本実施例によれば、サンプルポート151と希釈液ポート500をともに液溜め電極400上に配置し、2個の位置を近接させているので、2種の液の混合が容易となり、希釈率の精度を向上させることが出来る。なお、通常、サンプル液量より希釈液量が多いので、大容量側の液を後から分注して、分注の際のエネルギで混合液に大きい流動を生じさせ混合効果を高める。
【0068】
また、計量誤差がほぼ一定であれば、大容量の溶液の分注時の計量精度が高いから、先に分析デバイス150内に供給したサンプル液290の量に応じて、大容量の希釈液540を分注すればよい。その結果、分注量を高い精度で調整することができる。サンプル290と希釈液540の分注量を、分析デバイス150が有する2枚の基板23、240間の静電容量出力や液の撮影画像でモニタすれば、さらに分注精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る化学分析装置の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示した化学分析装置が備える分注プローブ部の縦断面図である。
【図3】図1に示した化学分析装置が備える分析デバイス部の上面図である。
【図4】図1に示した化学分析装置が備える分析デバイス部の上面図である。
【図5】図1に示した化学分析装置のサンプル分注部の詳細斜視図である。
【図6】分注プローブ部の他の実施例の縦断面図である。
【図7】分注プロセスを説明する図である。
【図8】分注プロセスを説明する図である。
【図9】分析デバイス部の他の実施例の上面図である。
【図10】分析デバイス部のさらに他の実施例の上面図である。
【図11】分注プローブ部のさらに他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0070】
110…サンプルカップ、120…サンプルディスク、150…分析デバイス、180…プローブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、先端部に細管を有しこの細管を用いて前記ポートから液体を供給する供給手段を設け、前記一方の基板の電極は、多数の小電極を有する電極列を備え、この電極列を移動する液滴よりも大容量の液を保持可能であり、前記ポートから細管を前記対向配置した基板間に挿入して、大容量の液を一度に供給可能としたことを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、前記ポートは分注部を形成しており、このポートの下方に液溜り電極を配置し、この液溜り電極より小面積の多数の電極で構成された電極列を、前記液溜り電極にわずかな間隔をおいて配置したことを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
前記対向する基板は分析デバイスを構成し、この分析デバイスは前記ポートを有する分注部と異なる位置に配置した分析部を有し、前記分注部から分注された液体から1回の分析に要する液滴を、分注部で分離可能としたことを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項4】
前記分注部は、それぞれ第1の液体と第2の液体を供給可能な複数のポートを有し、これら複数のポートの下方であって前記対向する基板間に第1、第2の液体を混合して保持する保持部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項5】
前記細管に、ポートの開口部に嵌合するストッパを設けたことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項6】
前記第1の液がサンプル液であり、前記第2の液が試薬または希釈液のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の化学分析装置。
【請求項7】
前記液溜り電極の周りに、複数の電極を有する電極列を複数個配置したことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項8】
前記複数の電極列のなす角が鋭角のときには、その間に液体はみ出し防止手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載の化学分析装置。
【請求項9】
前記細管の先端部は、前記電極列方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項10】
前記液溜り電極は、外径が互いに異なる複数の三日月状の電極と、この三日月状電極の内側に配置され円の一部が切り欠かれた電極とを互いにわずかの隙間をおいて配置してほぼ円形の電極としたものであることを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項11】
分注部を形成する電極列の多数の電極に印加する電圧の大きさを変えるコントローラを有することを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項12】
前記細管を浸漬するフッ素系オイル保持手段を有し、前記コントローラは、前記ポートから液体を供給する前に前記細管をこのフッ素系オイル保持手段に保持したオイルに浸漬するよう制御する特徴とする請求項11に記載の化学分析装置。
【請求項13】
前記細管の径は前記ポートの開口端部の径よりも小さく、前記ポートの開口部の内側がロート状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記細管が供給する液体の順番と、分析部での分析順番とを異ならせるように前記液体を供給することを特徴とする請求項11に記載の化学分析装置。
【請求項1】
液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、先端部に細管を有しこの細管を用いて前記ポートから液体を供給する供給手段を設け、前記一方の基板の電極は、多数の小電極を有する電極列を備え、この電極列を移動する液滴よりも大容量の液を保持可能であり、前記ポートから細管を前記対向配置した基板間に挿入して、大容量の液を一度に供給可能としたことを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
液体を供給するポートが形成された基板と、この基板に対向して配置した基板との双方の対向する面に形成された電極間に電圧を印加して、前記基板内に供給された液体を流動させるEWODを用いた化学分析装置において、前記ポートは分注部を形成しており、このポートの下方に液溜り電極を配置し、この液溜り電極より小面積の多数の電極で構成された電極列を、前記液溜り電極にわずかな間隔をおいて配置したことを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
前記対向する基板は分析デバイスを構成し、この分析デバイスは前記ポートを有する分注部と異なる位置に配置した分析部を有し、前記分注部から分注された液体から1回の分析に要する液滴を、分注部で分離可能としたことを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項4】
前記分注部は、それぞれ第1の液体と第2の液体を供給可能な複数のポートを有し、これら複数のポートの下方であって前記対向する基板間に第1、第2の液体を混合して保持する保持部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項5】
前記細管に、ポートの開口部に嵌合するストッパを設けたことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項6】
前記第1の液がサンプル液であり、前記第2の液が試薬または希釈液のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の化学分析装置。
【請求項7】
前記液溜り電極の周りに、複数の電極を有する電極列を複数個配置したことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項8】
前記複数の電極列のなす角が鋭角のときには、その間に液体はみ出し防止手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載の化学分析装置。
【請求項9】
前記細管の先端部は、前記電極列方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項10】
前記液溜り電極は、外径が互いに異なる複数の三日月状の電極と、この三日月状電極の内側に配置され円の一部が切り欠かれた電極とを互いにわずかの隙間をおいて配置してほぼ円形の電極としたものであることを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項11】
分注部を形成する電極列の多数の電極に印加する電圧の大きさを変えるコントローラを有することを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項12】
前記細管を浸漬するフッ素系オイル保持手段を有し、前記コントローラは、前記ポートから液体を供給する前に前記細管をこのフッ素系オイル保持手段に保持したオイルに浸漬するよう制御する特徴とする請求項11に記載の化学分析装置。
【請求項13】
前記細管の径は前記ポートの開口端部の径よりも小さく、前記ポートの開口部の内側がロート状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記細管が供給する液体の順番と、分析部での分析順番とを異ならせるように前記液体を供給することを特徴とする請求項11に記載の化学分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−329899(P2006−329899A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156547(P2005−156547)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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