説明

化学物質検出素子、化学物質検出装置、及び、化学物質検出素子の製造方法

【課題】 特定物質を高選択的かつ高感度に検出でき、更に装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる化学物質検出素子、化学物質検出装置、及び、化学物質検出素子の製造方法を提供する。
【解決手段】
化学物質検出素子は、特定物質と選択的に反応するタンパク質、例えば、一酸化窒素(NO)76と選択的に反応するニトリルヒドラターゼ(NHase)72によって、アミド結合を介して表面修飾されたカーボンナノ構造体74を含むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定物質を検出するための化学物質検出素子に関し、特には、化学物質検出素子の測定対象ガスに対する感度及び選択性を改善し、迅速かつ簡便な検出を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国は高齢化及び少子化が進んでおり、近い将来に国民の3人に1人が65歳以上になるという超高齢化社会の到来が予測されている。このような状況下において急務とされているのが、国民医療費の抑制である。このため、予防医療の充実が注目されている。予防医療が充実することで病気になる人が減少すれば、医療費を軽減させることができるからである。
【0003】
予防医療を充実させるためには、身近な機器で測定した健康情報を活用して健康管理を行なうことができるシステムが必要である。手軽に個人の健康状態を把握するための指標として、血液、尿、汗、唾液及び呼気等の生体試料がある。このような生体試料中には、血液における血糖値のように、疾病又はその兆候に起因して数値が変化する物質(以下、「マーカ」と記す。)が複数含まれている。したがって、マーカの変化量を測定することによって個人の健康状態を把握できる可能性が高く、マーカの測定を常時行なうことで、健康管理及び疾病の早期発見が可能になる。上述の生体試料の中でも、呼気は、複数種のマーカを含む点、迅速かつ簡便にサンプリング及び測定ができる点、及び、測定対象がガス状であり非侵襲で測定できるため肉体的なダメージが小さい点等から、測定に最適な生体試料であると言える。
【0004】
非特許文献1には疾病と呼気中のマーカとの関係が示されている。テーブル1にこの一部を引用する。
【0005】
【表1】

【0006】
呼気中のマーカの測定方法として、ガスクロマトグラフィー及び化学発光法が知られているが、これらの測定方法においては測定機器が大型かつ高額であり、また操作方法の習熟も必要であるため実用的ではない。また、酸化物半導体ガスセンサによる測定も知られているが、検出限界が10ppmレベルと感度が低く、ppbからppmオーダーの濃度である呼気中のマーカの測定には適していない。更に、ガスセンサとして作動するためには300℃に加熱する必要があるため実用的ではない。
【0007】
このような問題を解決するための一方法として、非特許文献2には、カーボンナノチューブ(以下、「CNT(Carbon Nano Tube)」と記す場合がある。)を利用したガスセンサが提案されている。CNTは直径がナノオーダーのチューブ状炭素材料であり、グラフェンシートを円筒状に丸めた構造によりなる。このグラフェンシートとは、6つの炭素原子が正六角形の板状構造を形成して結合したグラファイト構造が二次元に連続して形成されたものである。CNTは高い導電性を有し、かつナノオーダーの材料であるため、非特許文献2に開示されるガスセンサは、超小型化、低消費電力及び可搬性を実現可能であり、簡便で実用的な健康チェック手段として最適である。しかしながら、測定対象ガスに対する選択性が低いために、どのようなガス分子が接近しても同じように抵抗変化を起こしてしまい、雰囲気中に存在する物質の定性分析ができないという問題がある。
【0008】
呼気中のマーカの1つである一酸化窒素(NO)は、テーブル1に示すように、喘息患者の呼気中において高濃度で検出される。また、生体内の神経伝達物質の一つであり、免疫反応及び血圧調整等においても重要な役割を果たすことが知られている。そのため、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を検出することで疾病の予測及び程度等を知ることが可能であり、高性能な一酸化窒素センサ(以下「NOセンサ」と記す。)の実現が望まれている。
【0009】
非特許文献3には、CNTを利用したNOセンサが提案されている。非特許文献3に開示されるNOセンサは、CNT表面を特定の物質と反応する物質で修飾することにより、測定対象ガスに対する選択性を向上させている。すなわち、二酸化窒素(NO)と反応するポリエチレンイミンにより表面を修飾されたCNTを利用し、更に一酸化窒素から二酸化窒素へと変換する触媒を設けることによって、呼気内の特定のマーカである一酸化窒素(NO)を検出している。
【0010】
【非特許文献1】ウェンチン・ツァオら、「呼気分析:臨床診断及び曝露評価の可能性」、クリニカル・ケミストリ、第52巻:5、p.800−p.811、2006年(Wenqing Cao et al.、“Breath Analysis:Potential for Clinical Diagnosis and Exposure Assessment”、Clinical Chemistry、vol.52:5、p.800−p.811、2006)
【非特許文献2】齋藤理一郎、「カーボンナノチューブの概要と課題」、機能材料、vol.21、No.5、p.6−p.14、2001年5月号
【非特許文献3】アレクサンダー スターら、「呼気成分のためのカーボンナノチューブセンサ」、ナノテクノロジー、第18巻、p.375502(7pp)、2007年(Alexander Star et al.、“Carbon nanotube sensors for exhaled breath components”、Nanotechnology、vol.18、p.375502(7pp)、2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的に、健康な人の呼気中における一酸化窒素濃度は10ppb程度であり、喘息患者の呼気中における一酸化窒素濃度は50ppb程度であるため、呼気中の一酸化窒素(NO)を検出するためのNOセンサは、検出下限がppbレベルと高感度のものが要求される。非特許文献3に開示されるNOセンサでは、このような呼気中の一酸化窒素(NO)を検出できるレベルの高感度化は達成されていない。
【0012】
また、非特許文献3に開示されるNOセンサは、使用される触媒が湿度15%〜30%程度の環境下でなければ正常に作動しないため、測定対象ガスの湿度を調整しなければならない。また正確な一酸化窒素量を検出するためには、測定対象ガスに含まれている二酸化窒素(NO)を予め除去しなければならない。したがって、非特許文献3に開示されるNOセンサによって呼気中の一酸化窒素(NO)を測定する場合には、触媒だけなく、呼気内に4%程度含まれている二酸化窒素(NO)の除去及び湿度の調整等の前処理に必要な構成を設けなければならず、装置が大型化してしまうという問題がある。また、測定に多段階の工程を必要とするため測定時間が長くなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定物質を高選択的かつ高感度に検出でき、更に装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる化学物質検出素子、化学物質検出装置、及び、化学物質検出素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の局面に係る化学物質検出素子は、特定物質と選択的に反応するタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む。これにより、特定物質を高選択的かつ高感度に検出できる。また、特定物質を他の物質へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質検出素子の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【0015】
好ましくは、カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなる。このようなグループから選択されるカーボンナノ構造体は、その形状がナノオーダーの微細構造であることから、応答性及び検出下限が大幅に向上する。したがって、従来の化学物質検出素子では困難であったppbオーダー程度の微量の特定物質の検出が可能になる。
【0016】
より好ましくは、カーボンナノ構造体は、カーボンナノ構造体1mgに対して、0.30μmol〜0.50μmolのタンパク質により表面修飾される。これにより、化学物質検出素子の抵抗をセンシングの感度が最適になるようにすることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる。
【0017】
更に好ましくは、カーボンナノ構造体は、タンパク質が有するカルボン酸又はアミノ基とアミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有し、タンパク質は、アミド結合によってカーボンナノ構造体に表面修飾される。このように、アミド結合を介して表面修飾されることにより、タンパク質は、カーボンナノ構造体表面に強固に固定されるので、長期間に渡って化学物質検出素子の高選択性及び高感度を維持することができる。
【0018】
更に好ましくは、特定物質は、一酸化窒素である。これにより、一酸化窒素を高選択的かつ高感度に検出できる。また、一酸化窒素を二酸化窒素へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質検出素子の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【0019】
更に好ましくは、タンパク質は、ニトリルヒドラターゼを含む。ニトリルヒドラターゼは、微生物から単離可能であり、かつ、大気中で使用可能であるため取扱いが容易なタンパク質である。したがって、化学物質検出素子の利便性をより一層向上させることができる。
【0020】
更に好ましくは、ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼである。これにより、光応答性を利用して化学物質検出素子の再生処理を行なうことが可能になるので、長期間に渡って化学物質検出素子の高選択性及び高感度を維持することができる。
【0021】
本発明の第2の局面に係る化学物質検出装置は、上述の化学物質検出素子と、化学物質検出素子に電気的に接続され、化学物質検出素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段とを含む。このように、化学物質検出装置は上述の化学物質検出素子を含むので、特定物質を高選択的かつ高感度に検出でき、更に装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【0022】
本発明の第3の局面に係る化学物質検出素子の製造方法は、第1のステップにおいて、特定物質と選択的に反応するタンパク質と、カルボン酸とアミノ基とを縮合させてアミド結合を形成するための縮合剤と、溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製し、第2のステップにおいて、調整した表面修飾用溶液に対し、アミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射することによって、タンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を作製する。
【0023】
このように、超音波を用いることでアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体を表面修飾用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面をタンパク質によって均一に修飾できる。したがって、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質検出素子を製造することができる。また、タンパク質はアミド結合によってカーボンナノ構造体に表面修飾されるので、タンパク質をカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。したがって、長期間に渡って高選択性及び高感度を維持可能な化学物質検出素子を製造することができる。
【0024】
好ましくは、第1のステップにおいて、表面修飾用溶液中を塩基性条件にするための塩基を更に含む表面修飾用溶液を調製する。これにより、アミド結合の形成反応をより一層促進することができるので、タンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体をより一層容易に作製することができる。
【0025】
より好ましくは、化学物質検出素子の製造方法は、タンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含むシート状の基体を作製する第3のステップを更に含む。これにより、タンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を、特定物質に対して均一な状態で反応させることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質検出素子を製造することができる。
【0026】
更に好ましくは、第3のステップは、タンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体が分散された分散液を調製するステップと、分散液をろ過するステップとを含む。これにより、均一に表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む基体を、均一な厚みで、かつ短時間で形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、化学物質検出素子は、特定物質と選択的に反応するタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む。これにより、特定物質を高選択的かつ高感度に検出できる。また、特定物質を他の物質へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質検出素子の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下の説明及び図面においては、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明をその都度繰返すことはしない。
【0029】
−構成−
図1は、本発明の一実施の形態に係る化学物質検出素子32を含む化学物質検出装置20の構成図である。図1を参照して、化学物質検出装置20は、直流電源30と、直流電源30のプラス端子に一端が接続された、本実施の形態に係る化学物質検出素子32と、化学物質検出素子32の他端と直流電源30のマイナス端子との間に接続された負荷抵抗34と、化学物質検出素子32と負荷抵抗34との間の接点に入力が接続され、この接点の電位変化を増幅するための増幅器36とを含む。化学物質の検出時には、この電位変化を測定するために、増幅器36の他方の端子に直流電圧計(図示せず。)が接続される。
【0030】
図2は、化学物質検出素子32の構成を示す図であり、図2(A)は側面図であり、図2(B)は上面図である。図2を参照して、化学物質検出素子32は、後述する、特定物質と選択的に反応するタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体の集合体からなる化学物質検出部42と、化学物質検出部42の両端に配置される電極44及び電極46と、これらが表面に設置される基板48とを含む。
【0031】
以下、化学物質検出素子32を構成する化学物質検出部42、電極44及び電極46、並びに、基板48について詳細に説明する。
【0032】
[化学物質検出部42]
化学物質検出部42は、特定物質と選択的に反応するタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体の集合体からなる。カーボンナノ構造体の表面に化学物質が付着すると、電子移動が起こり起電力が発生する。言い換えれば、カーボンナノ構造体の2点間に電位差又は電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質の検出(センシング)が可能となる。また、ある特定物質と選択的に反応するタンパク質によりカーボンナノ構造体の表面を修飾すると、上述の電気抵抗の変化は、表面に修飾されたタンパク質の挙動に連動するようになるので、特定物質のみを検出できる化学物質検出素子32を得ることができる。このように、化学物質検出部42として、導電性を有するカーボンナノ構造体に、上述のタンパク質が表面修飾されたものを使用するので、その導電性の変化、すなわち抵抗の変化を測定することで特定物質の検出が可能になる。したがって、上述のタンパク質を含む電解液の電気化学的挙動の変化を利用する化学物質検出素子等と比較して、電解質等の構成を設ける必要がないため、より一層化学物質検出素子32の小型化を達成できる。
【0033】
タンパク質としては、特定物質と選択的に反応するものであれば特に限定されない。例えば、酵素等の触媒タンパク質、輸送タンパク質、又は、抗体等の防御タンパク質等を使用できるが、特定気体分子を高選択的に認識可能である点から、気体分子センサータンパク質を使用することが好ましい。テーブル2に、代表的な気体分子センサータンパク質を示す。
【0034】
【表2】

【0035】
テーブル2を参照して、気体分子センサータンパク質としては、例えば、一酸化窒素(NO)と選択的に反応するニトリルヒドラターゼ(NHase)及びsGC、一酸化炭素(CO)と選択的に反応するCooA及びNPAS2、並びに、酸素(O)と選択的に反応するFixL、DOS及びHemAT等がある。これらの中でも、微生物から単離可能であり、かつ、大気中で使用可能であるため取扱いが容易な点から、ニトリルヒドラターゼ(NHase)を使用することが特に好ましい。これにより、化学物質検出素子32の利便性をより一層向上させることができる。
【0036】
以下、ニトリルヒドラターゼ(NHase)について詳細に説明する。
【0037】
ニトリルヒドラターゼ(NHase)は、種々の放線菌及びPseudomonas属等の細菌に存在する酵素であって、ニトリル化合物のアミド化合物への加水分解反応を触媒する。ニトリルヒドラターゼ(NHase)は、三価の鉄原子(Fe(III))又は三価のコバルト原子(Co(III))を活性中心に有し、この活性中心に対して、セリン、システインスルフィン酸、及び、システインスルフェン酸の3つのアミノ酸が配位する構造を有する。すなわち、セリン、システインスルフィン酸、及び、システインスルフェン酸における3つのシステイン残基のチオール性硫黄原子(S)と、セリン及びシステインスルフェン酸における2つの主鎖アミド性窒素原子(N)が配位子として作用している。ここで、チオール性硫黄原子とは、チオール基(−SH)からプロトン(H)を除いた基を構成する硫黄原子、すなわち、−Sで表される基を構成する硫黄原子のことを示す。アミド性窒素原子(N)とは、カルボニルとアミンとにより構成される二級アミド基(−CONH−)からプロトン(H)を除いた基を構成する窒素原子、すなわち、−CON−で表される基を構成する窒素原子のことを示す。配位子は、それぞれが有する非共有電子対を活性中心に対して供与する電子対供与体である。
【0038】
ニトリルヒドラターゼ(NHase)において、三価の鉄原子(Fe(III))又は三価のコバルト原子(Co(III))は一酸化窒素(NO)と結合し、更に、セリン、システインスルフィン酸、及び、システインスルフェン酸における3つの酸素原子は一酸化窒素(NO)を保持する機能を有する。したがって、ニトリルヒドラターゼ(NHase)は、一酸化窒素分子(NO)と選択的に反応する性質、すなわち、一酸化窒素分子(NO)に対する反応性に比べて、他の化学種に対する反応性が著しく低い性質を有する。そのため、他の化学種はニトリルヒドラターゼ(NHase)と反応しにくい。このような、一酸化窒素(NO)と選択的に反応するタンパク質であるニトリルヒドラターゼ(NHase)により表面修飾されたカーボンナノ構造体の集合体からなる化学物質検出部42は、一酸化窒素(NO)を高選択的かつ高感度に検出できる。また、一酸化窒素を二酸化窒素へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質検出素子32の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【0039】
以下、活性中心に鉄原子を有するものを鉄型ニトリルヒドラターゼと呼び、コバルト原子を有するものをコバルト型ニトリルヒドラターゼと呼ぶ。鉄型ニトリルヒドラターゼは、一酸化窒素(NO)に対する光応答性を示す。すなわち、暗条件下では、三価の鉄原子(Fe(III))と一酸化窒素(NO)とが結合するとともに、セリン、システインスルフィン酸、及び、システインスルフェン酸における3つの酸素原子が一酸化窒素(NO)を保持し、触媒作用を示さない不活性型となる。これに対し、明条件下では、不活性型において保持していた一酸化窒素(NO)を解離して放出し、触媒作用を示す活性型となる。このような鉄型ニトリルヒドラターゼ(NHase)により表面修飾されたカーボンナノ構造体の集合体からなる化学物質検出部42は、光応答性を利用して化学物質検出部42の再生処理を行なうことが可能になるので、長期間に渡って化学物質検出素子32の高選択性及び高感度を維持することができる。
【0040】
カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることが好ましく、更にはCNTからなることが好ましい。このようなカーボンナノ構造体は、従来の方法を用いて生成したものを使用できる。また、不純物除去のために塩酸により処理されたものを使用することもできる。上述のグループから選択されるカーボンナノ構造体は、その形状がナノオーダーの微細構造であることから、応答性及び検出下限が大幅に向上する。すなわち、化学物質がカーボンナノ構造体表面に付着してからカーボンナノ構造体の電気抵抗変化が発生するまでの時間は、カーボンナノ構造体の導電性及びナノ構造に起因して非常に短くなる。また、カーボンナノ構造体における、表面積が大きいという特徴点、及び、全ての構成原子が表面を構成しているという特徴点に起因して、化学物質による付着の影響が電気抵抗に反映される際の電子散乱等による損失が非常に小さくなる。したがって、上述のグループから選択されるカーボンナノ構造体は、従来の化学物質検出素子では困難であった、ppbオーダー程度の微量の特定物質、例えば、一酸化窒素(NO)の存在確認が可能になる。カーボンナノ構造体がカーボンナノチューブからなる場合には、上述の効果がより顕著に発現する。このように、ppbオーダーの微量の特定物質を検出できるようになることで、呼気中のマーカ等の測定が可能な化学物質検出素子32を得ることができる。したがって、手軽に個人の健康状態を把握することができるようになる。
【0041】
カーボンナノ構造体は、カーボンナノ構造体1mgに対して、0.30μmol〜0.50μmolのタンパク質により表面修飾されることが好ましい。これにより、化学物質検出素子32の抵抗をセンシングの感度が最適になるようにすることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる。タンパク質の表面修飾量がカーボンナノ構造体1mgに対して0.30μmolより少なくなると、化学物質検出素子32の検出感度が小さくなりすぎ、一酸化窒素(NO)等の特定物質に対する応答が確認できなくなるおそれがある。また、カーボンナノ構造体のみでも化学物質をセンシングすることができるので、特定物質とそれ以外の化学物質との判別が困難になるおそれがある。タンパク質の表面修飾量がカーボンナノ構造体1mgに対して0.50μmolより多くなると、化学物質検出素子32の抵抗値が大きくなりすぎて、化学物質検出素子32から出力される信号の検出が困難になるおそれがある。
【0042】
カーボンナノ構造体は、タンパク質が有するカルボン酸又はアミノ基とアミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有し、タンパク質は、タンパク質が有するカルボン酸及びカーボンナノ構造体が有するアミノ基、又は、タンパク質が有するアミノ基及びカーボンナノ構造体が有するカルボン酸が縮合することによって形成されるアミド結合によってカーボンナノ構造体に表面修飾されることが好ましい。このように、アミド結合を介して表面修飾されることにより、タンパク質は、カーボンナノ構造体表面に強固に固定されるので、長期間に渡って化学物質検出素子32の高選択性及び高感度を維持することができる。
【0043】
カーボンナノ構造体に対するアミノ基又はカルボン酸の導入量は、カーボンナノ構造体1gに対して、0.30mmol〜0.50mmolであることが好ましい。これにより、カーボンナノ構造体に対するタンパク質の表面修飾量を上述の好ましい範囲内になるように調整することができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる。カーボンナノ構造体に対するアミノ基の導入量は、kaiser test又はピクリン酸試験等によって求めることができる。カーボンナノ構造体に対するカルボン酸の導入量は、当該分野において一般的に使用される試験方法によって求めることができる。カーボンナノ構造体に対するアミノ基又はカルボン酸の導入方法及びアミド結合の形成方法については、後述する。
【0044】
[電極44及び電極46]
電極44及び電極46の構成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、タングステン又はそれらの合金等からなるものを使用できる。電極44と電極46との電極間距離としては、特定物質のセンシングが可能な距離であれば特に限定されるものではないが、1.0cm〜2.0cmであることが好ましい。電極44及び電極46は、蒸着法又は導電性ペーストを塗布する方法等の公知の方法によって、化学物質検出部42上に形成できる。
【0045】
[基板48]
基板48の構成材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、シリコン、石英、ガラス、又は、フッ素樹脂等の高分子材料からなるものを使用できる。基板48の厚みとしては、適度な機械的強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、100μm〜1000μmであることが好ましい。基板48としては、テフロン(登録商標)製のメンブレンフィルタ(例えば、市販品(商品名:OMNIPORETM MEMBRANE FILTERS 0.2μm(孔径) JG、MILLIPORE社製)等)を使用することが好ましい。
【0046】
−化学物質検出素子32の製造方法−
以下、化学物質検出素子32の製造方法について説明する。図3(A)〜図3(D)は、化学物質検出部42の製造方法の一例を説明するための図である。化学物質検出部42の製造方法の一例は、図3(A)〜図3(D)の順に進行する、後述する第1のステップ〜第3のステップを含む。
【0047】
図3(A)及び図3(B)を参照して、第1のステップでは、特定物質と選択的に反応する上述のタンパク質と、カルボン酸とアミノ基とを縮合させてアミド結合を形成するための縮合剤と、溶剤とを含む表面修飾用溶液50を調製し、第2のステップでは、調製した表面修飾用溶液50に対し、アミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体52を投入した後、超音波54を照射する。この第1のステップ及び第2のステップによって、上述のタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体(以下、「表面修飾カーボンナノ構造体」と記す。)を作製できる。このように、超音波照射を用いて表面修飾を行なう方法を、以下、超音波修飾法と呼ぶ。
【0048】
縮合剤としては、ペプチド合成等のアミド結合形成反応においてカップリング剤として一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等のN−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等のカルボジイミド類、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)等のBOP試薬、及び、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU)等からなるグループから選択されるものを使用できる。これらの中でも、取扱いの容易さ及び安全性の点から、HATUを使用することが好ましい。縮合剤の含有量としては、当該分野において一般的に使用される量であれば特に限定されないが、例えば、アミド結合を形成するための所望のカルボン酸1molに対して、1mol〜1.5molであることが好ましい。
【0049】
溶剤としては、タンパク質及び縮合剤等の、表面修飾用溶液50の含有物を可溶であり、かつ、アミド結合形成反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)又はテトラヒドロフラン(THF)等を使用できる。これらの中でも、アミドの加水分解を抑えるために、脱水されたものを使用することが好ましく、更には、溶解性に優れる点から、脱水DMFを使用することが好ましい。表面修飾用溶液50に使用する溶剤の量は、分散させるカーボンナノ構造体52の使用量に応じて、適宜設定されればよい。
【0050】
表面修飾用溶液50は、必要に応じて塩基を含むことが好ましい。塩基としては、ペプチド合成において反応系内を塩基性条件にするために一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等を使用できる。これらの中でも、副反応の発生を抑えて縮合反応を円滑に進めることができる点から、嵩高い置換基を有し求核性の低いDIEAを使用することが好ましい。このように、表面修飾用溶液50が、表面修飾用溶液50中を塩基性条件にするための塩基を更に含むことより、アミド結合の形成反応をより一層促進することができるので、表面修飾カーボンナノ構造体をより一層容易に作製することができる。塩基の含有量としては、当該分野において一般的に使用される量であれば特に限定されないが、例えば、カーボンナノ構造体であるカーボンナノチューブに対して導入されるアミノ基1molに対して、10mol〜13molであることが好ましい。
【0051】
本製造例において、カーボンナノ構造体は、タンパク質が有するカルボン酸又はアミノ基とアミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有する。すなわち、アミド結合は、タンパク質が有するカルボン酸及びカーボンナノ構造体が有するアミノ基、又は、タンパク質が有するアミノ基及びカーボンナノ構造体が有するカルボン酸が縮合することによって形成される。したがって、カーボンナノ構造体がアミノ基を有する場合には、タンパク質が有する全てのアミノ基、及び、アミド結合を形成するための所望のカルボン酸以外のカルボン酸は、縮合反応前に保護基によって保護されることが好ましい。また、カーボンナノ構造体がカルボン酸を有する場合には、タンパク質が有する全てのカルボン酸、及び、アミド結合を形成するための所望のアミノ基以外のアミノ基は、縮合反応前に保護基によって保護されることが好ましい。
【0052】
アミノ基の保護基としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、t−ブトキシカルボニル(Boc)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、又は、アリルオキシカルボニル(Aloc)基等を使用できる。これらの中でも、トリフルオロ酢酸等により容易に脱保護可能である点からt−ブトキシカルボニル(Boc)基を使用することが好ましい。カルボン酸の保護基としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ベンジルエステル(Bzl)基、アルキニルメチル基、又は、t−ブチルエステル基等を使用できる。これらの保護基は、所望のアミド結合が形成された後、対応する脱保護条件下において適宜脱保護されることが好ましい。
【0053】
アミノ基又はカルボン酸は、カーボンナノ構造体表面に直接導入されてもよいし、例えば、エチレン基等のアルキレン基等を介して導入されてもよい。カーボンナノ構造体に対するアミノ基又はカルボン酸の導入方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されない。例えば、カルボン酸を導入する場合には、硫酸:硝酸=3:1の混酸中にカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する方法等がある。アミノ基を導入する場合には、例えば、カーボンナノ構造体の表面に導入されたカルボン酸を、リチウムアルミニウムハイドライド(LAH)等の還元剤によって還元することでアルコールに変換し、更に、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)及びトリフェニルホスフィン等を使用した光延反応条件下において、得られたアルコールをフタルイミドに変換した後、トリフルオロ酢酸等によって加水分解する方法等がある。アルキレン基等を介してアミノ基を導入する場合には、カーボンナノ構造体の表面に導入されたカルボン酸とアルキレンジアミンとを縮合剤を用いて縮合させてアミド結合を形成させる方法等がある。カーボンナノ構造体に対してアミノ基又はカルボン酸が導入されたか否かの確認は、X線光電子分光法(XPS(X−ray photoelectron spectroscopy))によって得られるXPSスペクトル、及び、赤外分光法(IR(Infrared spectroscopy))によって得られるIRスペクトル等において、アミノ基由来のピーク又はカルボン酸由来のピークが確認できるか否かに基づいて行なうことができる。
【0054】
第2のステップにおいて、照射する超音波54の周波数としては、アミド結合の形成反応を促進可能な程度に適宜設定されればよいが、40kHz〜60kHzであることが好ましい。超音波54を照射する時間としては、タンパク質による表面修飾が確実になされる時間、すなわち、アミド結合の形成反応が確実に完了する時間であれば特に限定されないが、例えば、2時間〜4時間であることが好ましい。超音波54の照射は、一般的に用いられる超音波洗浄器(例えば、市販品(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製))等の超音波発生装置を用いて行なうことができる。
【0055】
上述のようにして作製された表面修飾カーボンナノ構造体は、反応系内から取出された後、洗浄用溶剤で洗浄し、更に、減圧下で一定時間乾燥させることが好ましい。洗浄用溶剤としては、表面修飾用溶液50の含有物等を除去可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、メタノール、又は、これらの混合溶剤等を使用できる。減圧条件としては、洗浄用溶剤等が完全に除去できる条件であれば特に限定されるものではないが、1.0×10−6MPa〜1.0×10−5MPaで1時間〜3時間乾燥させることが好ましい。
【0056】
このように、化学物質検出部42の製造方法の一例は、第1のステップ及び第2のステップを経て超音波修飾法により表面修飾カーボンナノ構造体を作製する。すなわち、第1のステップにおいて、特定物質と選択的に反応する上述のタンパク質と、カルボン酸とアミノ基とを縮合させてアミド結合を生成するための縮合剤と、溶剤とを含む表面修飾用溶液50を調製し、第2のステップにおいて、調製した表面修飾用溶液50に対し、アミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体52を投入した後、超音波54を照射する。このように、超音波54を用いることでアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体52を表面修飾用溶液50に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体52表面をタンパク質により均一に修飾できる。したがって、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質検出素子32を製造することができる。また、タンパク質はアミド結合によってカーボンナノ構造体52に表面修飾されるので、タンパク質をカーボンナノ構造体52表面に強固に固定しておくことができる。したがって、長期間に渡って高選択性及び高感度を維持可能な化学物質検出素子32を製造することができる。
【0057】
図3(C)及び図3(D)を参照して、第3のステップでは、第1のステップ及び第2のステップにより作製された表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体56を作製する。この第3のステップは、表面修飾カーボンナノ構造体が分散された分散液58を調製するステップと、分散液58をろ過するステップとを含むことが好ましい。
【0058】
分散液58において表面修飾カーボンナノ構造体を分散させるための分散用溶剤としては、表面修飾カーボンナノ構造体を分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール又はジメチルホルムアミド(DMF)等を使用できる。これらの中でも、安全性及びコストの点から水が特に好ましい。このような分散用溶剤を用いて表面修飾カーボンナノ構造体を分散させることにより、均一に表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む基体56を、均一な厚みで形成することができる。表面修飾カーボンナノ構造体が分散しにくい溶剤を分散用溶剤として用いた場合には、表面修飾カーボンナノ構造体が局所的に凝集するために、均一な厚みの基体56が形成されないおそれがある。分散液58に使用する分散用溶剤の量は、分散させる表面修飾カーボンナノ構造体の使用量に応じて、適宜設定されればよい。
【0059】
ろ過に用いるろ材60としては、絶縁性を有し、かつ適度な機械的強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、フッ素樹脂等の高分子材料からなるメンブレンフィルタ、銀メンブレンフィルタ、ガラス繊維ろ紙又はろ紙等を使用できる。これらの中でも、コスト面や取扱いの容易さから、テフロン(登録商標)製のメンブレンフィルタを使用することが特に好ましい。ろ過方法としては、減圧ろ過又は自然ろ過等の一般的な方法を使用できるが、ろ過速度が速く、かつ、均一な厚みの基体56を形成しやすい点から減圧ろ過を使用することが好ましい。自然ろ過を用いる場合には、ろ過速度が遅いため基体56の形成に長時間を要するおそれがあり、また均一な厚みの基体56を形成できないおそれがある。減圧ろ過は、ブフナー漏斗62及び吸引瓶(図示せず。)等からなる減圧ろ過装置を用いて行なうことが好ましく、更には、分散液58をブフナー漏斗62内に注入した後減圧することが好ましい。減圧後に分散液58を注入した場合には、中央部の厚みが他の部分の厚みよりも大きい基体56が形成されてしまうおそれがある。上述のようにして作製された基体56は、乾燥させることが好ましい。なお、基体56は、基板48及び化学物質検出部42からなり、この場合、基板48はろ材60であり、化学物質検出部42はろ材上に残るろ物64である。
【0060】
このように、化学物質検出部42の製造方法の一例は、第3のステップにおいて、表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体56を作製する。これにより、表面修飾カーボンナノ構造体を、特定物質に対して均一な状態で反応させることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質検出素子32を製造することができる。更には、表面修飾カーボンナノ構造体を含む基体56を、表面修飾カーボンナノ構造体が分散された分散液58を調製し、この分散液58を減圧ろ過等によって乾燥させることで作製する。これにより、均一に表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む基体56を、均一な厚みで、かつ短時間で形成することができる。
【0061】
第3のステップにおいて作製された表面修飾カーボンナノ構造体を含む基体56は、必要に応じて、短冊状等の所望の形状及び所望の大きさになるようにカッティングされる。その後、化学物質検出部42表面の両端部に蒸着法又は導電性ペーストを塗布する方法等の公知の方法によって、所望の電極間距離となるように電極44及び電極46が形成され、これにより、本実施の形態に係る化学物質検出素子32が製造できる。
【0062】
−動作−
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る化学物質検出装置20は以下のように動作する。直流電源30により、化学物質検出素子32と負荷抵抗34とを直列接続したものの両端に一定電圧をかけながら、特定物質を含む測定対象ガスを化学物質検出素子32表面に導入する。化学物質検出素子32に含まれる、化学物質検出部42を構成する表面修飾カーボンナノ構造体の表面に測定対象ガス中の何らかの物質が付着すると、電極44,46間の電気抵抗が変化する。その変化を増幅器36の出力電圧の変化として直流電圧計(図示せず。)により検出する。このように出力電圧変化を知ることによって、測定対象ガス中の何らかの物質の存在を確認することができる。
【0063】
これは以下に示す理由による。化学物質検出部42においては、個々のカーボンナノ構造体同士が隣接して互いに接触し合っているので、全体として導電性材料の集合体となっている。このような化学物質検出部42を構成する、個々のカーボンナノ構造体の表面に何らかの物質が付着すると、それぞれの電気抵抗が変化し、それらの総和が出力電圧変化として出力される。したがって、化学物質検出部42の両端の電気抵抗の変化を知ることにより、化学物質検出部42に何らかの物質が付着したことが判るので、測定対象ガス中に何らかの物質が存在することを確認することができる。
【0064】
図4は、ニトリルヒドラターゼ(NHase)72により表面修飾されたカーボンナノ構造体74表面に一酸化窒素(NO)76が吸着する様子を示す図である。図4を参照して、一酸化窒素(NO)76と選択的に反応するタンパク質であるニトリルヒドラターゼ(NHase)72により表面修飾されたカーボンナノ構造体74に一酸化窒素(NO)76が接近すると、ニトリルヒドラターゼ(NHase)72による選択能によって、一酸化窒素(NO)76が選択的にニトリルヒドラターゼ(NHase)72の活性中心78に保持される。このように、カーボンナノ構造体74に表面修飾されたニトリルヒドラターゼ(NHase)72は、一酸化窒素(NO)76を選択的に捕捉するので、一酸化窒素(NO)76が保持されたときとそうでないときとの差が、化学物質検出部42の全体の電気抵抗の変化として顕著に現れる。したがって、化学物質検出部42の電気抵抗の変化を測定することによって、特定物質である一酸化窒素(NO)76の存在の有無、及び、その存在量を他の物質と比較してより高感度に検出することができる。
【0065】
〈作用・効果〉
本実施の形態によれば、化学物質検出素子32は、特定物質と選択的に反応するタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む。これにより、特定物質を高選択的かつ高感度に検出できる。また、特定物質を他の物質へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質検出素子32の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【0066】
また本実施の形態によれば、化学物質検出装置20は、化学物質検出素子32と、化学物質検出素子32に電気的に接続され、化学物質検出素子32の電気抵抗の変化を検出するための増幅器36及び直流電圧計とを含む。このように、化学物質検出装置20は化学物質検出素子32を含むので、特定物質を高選択的かつ高感度に検出でき、更に装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
【0067】
また本実施の形態によれば、化学物質検出素子32の製造方法の一例は、特定物質と選択的に反応するタンパク質と、カルボン酸とアミノ基とを縮合させてアミド結合を形成するための縮合剤と、溶剤とを含む表面修飾用溶液50を調製する第1のステップと、表面修飾用溶液50に対し、アミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体52を投入した後、超音波54を照射する第2のステップとを含み、これによって、表面修飾カーボンナノ構造体を作製する。このように、超音波54を用いることでアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体52を表面修飾用溶液50に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体52表面をタンパク質によって均一に修飾できる。したがって、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質検出素子32を製造することができる。また、タンパク質はアミド結合によってカーボンナノ構造体52に表面修飾されるので、タンパク質をカーボンナノ構造体52表面に強固に固定しておくことができる。したがって、長期間に渡って高選択性及び高感度を維持可能な化学物質検出素子32を製造することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態では、化学物質検出素子32の製造方法の一例を示したが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、化学物質検出素子32の製造方法の他の一例として、第1のステップにおいて、特定物質と選択的に反応するタンパク質と溶剤とを含む表面修飾溶液を調製し、第2のステップにおいて、調製した表面修飾用溶液に対し、アミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体と、カルボン酸とアミノ基とを縮合させてアミド結合を形成するための縮合剤とを投入した後、超音波を照射することで、表面修飾カーボンナノ構造体を作製してもよい。また、第2のステップにおいて、超音波照射を行なわず、攪拌する構成であってもよい。
【0069】
また、上記実施の形態における化学物質検出素子32の製造方法では、タンパク質はアミド結合によってカーボンナノ構造体52に表面修飾されたが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、タンパク質はカーボンナノ構造体52に物理的に付着することで表面修飾されていてもよい。このような場合には、化学物質検出素子32の製造方法として、未修飾のカーボンナノ構造体に対してタンパク質と溶剤とを含む塗布用溶液を吹付けるスプレー法、未修飾のカーボンナノ構造体を上述の塗布用溶液に浸漬した後引上げるディッピング法、又は、未修飾のカーボンナノ構造体を上述の塗布用溶液に浸漬させる含浸法等を使用することができる。
【実施例】
【0070】
以下に上記実施の形態を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、上記実施の形態はその要旨を超えない限り特に本実施例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り、実施例及び比較例において、XPSスペクトルの測定には、X線光電子分光装置(商品名:MICRO LAB 300A、VG SCIENTIFIC社製)を使用し、IRスペクトルの測定には、赤外線分光光度計(商品名:20D FTIR SPECTROMETER、Nicolet社製)を使用し、抵抗値の測定には、抵抗値測定装置(商品名:3468A MULTIMETER、Hewlett−Packard(hp)社製)を使用した。また、表面にアミノ基が導入されたCNT(以下、「アミノ基導入CNT」と記す。)におけるアミノ基導入量は、以下に示すピクリン酸試験によって測定した。
【0071】
〔ピクリン酸試験〕
乾燥したアミノ基導入CNTを専用の容器に投入し、投入したアミノ基導入CNTに対し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の5%ジクロロメタン溶液2mlで4回、ジクロロメタン2mlで4回、ピクリン酸の0.1mol/Lエタノール溶液2mlで4回洗浄する操作をこの順に実施してアミノ基導入CNTのピクリン酸塩を作製した。得られたピクリン酸塩に対し、更にジクロロメタン2mlで4回洗浄して過剰のピクリン酸を除いた。洗浄後のアミノ基導入CNTのピクリン酸塩に対し、DIEAの5%ジクロロメタン溶液2mlで4回、ジクロロメタン2mlで4回洗浄する操作をこの順に実施した。次いで、洗い流されたDIEAのピクリン酸塩が含有される洗浄液16mlを回収し、洗浄液1mlをエタノール9mlにて10倍に希釈してサンプル溶液を調製するとともに、DIEAの5%ジクロロメタン溶液1mlとジクロロメタン1mlとからなる混合溶液のうち1mlをエタノール9mlにて希釈してブランク溶液を調製した。
【0072】
ブランク溶液をブランクとして用い、サンプル溶液の358nmにおける吸光度を分光光度計(商品名:日立分光光度計 U−3310、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて測定し、下記式(1)に基づいて、アミノ基の導入量X(mol/g)を算出した。
X=(aVn)/(εwL)…(1)
(a:吸光度、V:洗浄液の体積(cm)、n:希釈率、ε:ピクリン酸のモル吸光係数(ε=14500cmmol−1)、w:ピクリン酸試験で使用したアミノ基導入CNTの質量(g)、L:セルの長さ(cm))
【0073】
[化学物質検出素子の製造]
(実施例)
まず、以下のようにして、カーボンナノ構造体であるCNTの表面にカルボン酸を導入した後、アミノ基を導入した。硫酸1.5mLと硝酸0.5mLとからなる混酸に対してSWCNT(商品名:Single−wall nanotube、本荘ケミカル株式会社製)5mgを加えた後、超音波洗浄器(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製)にて46kHzの超音波を5時間照射した。超音波照射後、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルタ(商品名:OMNIPORETM MEMBRANE FILTERS 0.2μm(孔径) JG、MILLIPORE社製)を用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、ろ物を回収して乾燥させることで、表面にカルボン酸が導入されたCNT(以下「カルボン酸導入CNT」と記す。)を得た。次いで、エチレンジアミン(商品名、和光純薬工業株式会社製)1mLに対して、上述のようにして得られたカルボン酸導入CNT2mgを加えた後、上述の超音波洗浄器にて46kHzの超音波を10分間照射し、エチレンジアミン中におけるカルボン酸導入CNTの分散を確認した。分散の確認後、HATU(縮合剤、シグマアルドリッチ社製)0.1mgを加え、更に4時間超音波を照射した。超音波照射後、メタノールで希釈して上述のテフロン(登録商標)製メンブレンフィルタを用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、ろ物をメタノールで洗浄して残存するHATUを除去した。洗浄後のろ物を回収して風乾させた後減圧下9.3×10−6MPaで2時間乾燥させることで、アミノ基導入CNTを得た。なお、得られたアミノ基導入CNTにおいて、XPSスペクトルでは、N1s領域にアミノ基由来のピーク(404eV)を確認するとともに、O1s領域にカルボン酸由来のピーク(533eV)を確認した。IRスペクトルでは、アミノ基由来のピーク(1570cm−1付近、3390cm−1付近)を確認するとともに、カルボニル基由来のピーク(1660cm−1付近)を確認した。また、得られたアミノ基導入CNTにおけるアミノ基導入量は、0.30mmol/g〜0.50mmol/gであった。
【0074】
次いで、以下のようにして、カーボンナノ構造体であるCNTに対するニトリルヒドラターゼ(NHase)の表面修飾を行なった。N末端及び側鎖アミノ基がBoc基によって保護されたニトリルヒドラターゼ(NHase)82.8mg(1.8μmol)と、HATU(縮合剤)0.76mg(2.0μmol)と、DIEA(塩基)1.6mg(12μmol)とを脱水ジメチルホルムアミド(脱水DMF)2mLに溶解して、表面修飾用溶液を調整した。この表面修飾用溶液2mLに対し、上述のようにして得られたアミノ基導入CNT2mgを投入した後、超音波洗浄器(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製)にて46kHzの超音波を2時間照射して、CNTのアミノ基とNHaseのカルボン酸とを縮合させてアミド結合を生成させた。この反応系内に対し、トリフルオロ酢酸0.5mLを加えてBoc基の脱保護を行なった後、反応系内からCNTを取出した。取出したCNTをジエチルエーテル及びメタノールによって洗浄した後、減圧下9.3×10−6MPaで2時間乾燥させることで、ニトリルヒドラターゼ(NHase)が表面修飾されたCNT(以下「表面修飾CNT」と記す。)を得た。
【0075】
上述のようにして得られた表面修飾CNTを水5mLに分散させた分散液を調製後、この分散液に対して、上述のテフロン(登録商標)製メンブレンフィルタを用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、メンブレンフィルタ上に表面修飾CNTからなるろ物が形成されたシート状の基体を作製し、これを乾燥させた。次いで、得られた基体を短冊状になるようにカッティングし、蒸着法により短冊状の基体の両端部に電極間距離が1.5cmとなるように金電極を形成することで、実施例の化学物質検出素子を作製した。
【0076】
(比較例)
ニトリルヒドラターゼ(NHase)による表面修飾を行なわなかった以外は、実施例と同様にして比較例の化学物質検出素子を作製した。
【0077】
[評価]
実施例の化学物質検出素子を採用した化学物質検出装置を、雰囲気が制御できる300cmのステンレス(Stainless Used Steel:SUS)製チャンバー内に設置した後、ダイヤフラムポンプを用いてチャンバー内を6.65×10Pa程度まで減圧した。次いで、直流電源により化学物質検出素子に対して150μAの電流を流しながら、大気圧(1.01325×10Pa)になるまでチャンバー内に窒素を流通させた。窒素流通開始時から5分後(300秒後)に、大気圧を保ったまま一酸化窒素(NO)濃度1ppmの測定対象ガスを流量50mL/minで10分間(600秒間)流通させた。このときの化学物質検出素子と負荷抵抗との間の接点の電気抵抗変化を増幅器において増幅し、増幅した電気抵抗変化を増幅器の出力電圧の変化として直流電圧計により測定した。なお、測定は、1秒毎の測定間隔で、窒素流通開始後20分間(1200秒間)行なった。上述の操作と同様の操作を比較例の化学物質検出素子を採用した化学物質検出装置についても行なった。その結果を図5に示す。図5は、経過時間に対する化学物質検出素子の抵抗値の変化を示すグラフである。Aは、実施例の結果を示すグラフであり、Bは、比較例の結果を示すグラフである。
【0078】
図5を参照して、実施例の化学物質検出素子を採用した化学物質検出装置は、ニトリルヒドラターゼ(NHase)により表面修飾されたCNTの集合体からなる化学物質検出部を含むので、未修飾のCNTの集合体からなる化学物質検出部を含む比較例の化学物質検出装置よりも、高い感度で一酸化窒素(NO)を検出できることが判る。
【0079】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態に係る化学物質検出素子を含む化学物質検出装置の構成図である。
【図2】化学物質検出素子の構成を示す側面図及び上面図である。
【図3】化学物質検出部の製造方法の一例を説明するための図である。
【図4】ニトリルヒドラターゼにより表面修飾されたカーボンナノ構造体表面に一酸化窒素が吸着する様子を示す図である。
【図5】経過時間に対する化学物質検出素子の抵抗値の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
20 化学物質検出装置
30 直流電源
32 化学物質検出素子
34 負荷抵抗
36 増幅器
42 化学物質検出部
44,46 電極
48 基板
50 表面修飾用溶液
52 カーボンナノ構造体
54 超音波
56 基体
58 分散液
60 ろ材
62 ブフナー漏斗
64 ろ物
72 ニトリルヒドラターゼ
74 カーボンナノ構造体
76 一酸化窒素
78 活性中心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定物質と選択的に反応するタンパク質により表面修飾されたカーボンナノ構造体を含むことを特徴とする化学物質検出素子。
【請求項2】
前記カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の化学物質検出素子。
【請求項3】
前記カーボンナノ構造体は、前記カーボンナノ構造体1mgに対して、0.30μmol〜0.50μmolの前記タンパク質により表面修飾されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学物質検出素子。
【請求項4】
前記カーボンナノ構造体は、前記タンパク質が有するカルボン酸又はアミノ基とアミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有し、
前記タンパク質は、前記アミド結合によって前記カーボンナノ構造体に表面修飾されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の化学物質検出素子。
【請求項5】
前記特定物質は、一酸化窒素であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の化学物質検出素子。
【請求項6】
前記タンパク質は、ニトリルヒドラターゼを含むことを特徴とする請求項5に記載の化学物質検出素子。
【請求項7】
前記ニトリルヒドラターゼは、鉄型ニトリルヒドラターゼであることを特徴とする請求項6に記載の化学物質検出素子。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の化学物質検出素子と、
前記化学物質検出素子に電気的に接続され、前記化学物質検出素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段とを含むことを特徴とする化学物質検出装置。
【請求項9】
特定物質と選択的に反応するタンパク質と、カルボン酸とアミノ基とを縮合させてアミド結合を形成するための縮合剤と、溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製する第1のステップと、
前記表面修飾用溶液に対し、前記アミド結合を形成するためのアミノ基又はカルボン酸を有するカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する第2のステップとを含み、
前記第1のステップ及び前記第2のステップによって、前記タンパク質により表面修飾された前記カーボンナノ構造体を作製することを特徴とする化学物質検出素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1のステップにおいて、表面修飾用溶液中を塩基性条件にするための塩基を更に含む表面修飾用溶液を調製することを特徴とする請求項9に記載の化学物質検出素子の製造方法。
【請求項11】
前記タンパク質により表面修飾された前記カーボンナノ構造体を含むシート状の基体を作製する第3のステップを更に含むことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の化学物質検出素子の製造方法。
【請求項12】
前記第3のステップは、前記タンパク質により表面修飾された前記カーボンナノ構造体が分散された分散液を調製するステップと、前記分散液をろ過するステップとを含むことを特徴とする請求項11に記載の化学物質検出素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−38569(P2010−38569A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198523(P2008−198523)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】