説明

化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置

【課題】被加工物の品質に影響を及ぼすことなく、使用したスラリーを新品同様に再生させることができる化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置を提供する。
【解決手段】スラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずにスラリーを研磨パッド上より回収し、回収されたスラリーを回収槽に貯蔵し、貯蔵されたスラリーを濾過するスラリー再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置に係り、特に、半導体集積回路の層間膜等の平坦化プロセスに好適に適用できる化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路のデザインルールの縮小化に伴って、層間膜等の平坦化プロセスに化学的機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing )が多用されるようになってきた。このCMPによるウェーハの研磨は、回転する研磨パッドにウェーハを回転させながら所定の圧力で押し付け、その研磨パッドとウェーハとの間に研磨剤スラリー(以下、「スラリー」という)を供給することにより行われる(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなCMPにおいては、反応生成物や砥粒等の研磨屑によってスラリーが劣化していくので、品質重視の点より、スラリーを再利用しない(いわゆる、掛け流しする)場合が多い。
【0004】
ところが、近年、半導体集積回路分野においても、国際間の競争が激しく、コストダウンが強く求められており、コスト的に無視できないスラリーを再利用したいという要求も強い。
【0005】
このような観点より、使用後のスラリーより分散媒の一部を濃縮するとともに、pHを調整してスラリーの再利用を図る提案がなされている(特許文献2等)。
【特許文献1】特開2001−54854号公報
【特許文献2】特開2003−200347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されるような従来の再利用方法では、洗浄水等により希釈されたスラリーを濃縮し、pHを調整するのみであり、加工レート(研磨レート)を新品のスラリーと同等のレベルまで回復させることは、非常に困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被加工物の品質に影響を及ぼすことなく、使用したスラリーを新品同様に再生させることができる化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る本発明は、スラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記スラリーを前記研磨パッド上より回収する工程と、回収された前記スラリーを回収槽に貯蔵する工程と、貯蔵された前記スラリーを濾過する工程と、を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法を提供する。
【0009】
請求項1に係る本発明によれば、水を混入させずにスラリーを研磨パッド上より回収し、このスラリーを濾過するので、従来技術のようにスラリーを濃縮する必要がなく、簡便にスラリーを再生することができる。なお、水を混入させずにスラリーを研磨パッド上より回収する手段としては、後述する請求項10に係る本発明によることが好ましい。
【0010】
請求項2に係る本発明は、所定のpH値及び比重を有するスラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記スラリーを前記研磨パッド上より回収する工程と、回収された前記スラリーを回収槽に貯蔵する工程と、貯蔵された前記スラリーのpH値及び比重を測定する工程と、貯蔵された前記スラリーのpH値及び比重を前記所定の値に調整する工程と、所定の値に調整された前記スラリーを濾過する工程と、を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法を提供する。
【0011】
請求項2に係る本発明によれば、スラリーのpH値及び比重を測定し、このスラリーのpH値及び比重を所定の値に調整するので、再生スラリーの加工レート(研磨レート)を新品と同様のレベルまで回復させることができる。
【0012】
なお、スラリーのpH値及び比重とスラリーの加工レート(研磨レート)との関係については、後述する。
【0013】
請求項3に係る本発明は、所定のpH値及び比重を有するスラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記スラリーを前記研磨パッド上より回収する工程と、回収された前記スラリーを第1回収槽に貯蔵する工程と、第1回収槽に貯蔵された前記スラリーのpH値及び比重を測定する工程と、第1回収槽に貯蔵された前記スラリーのpH値を前記所定の値に調整する工程と、所定の値に調整された前記スラリーを第2回収槽に貯蔵する工程と、第2回収槽に貯蔵された前記スラリー中の酸化剤を分解させ、不純物を沈殿させる処理を行う工程と、処理された前記スラリーを濾過する工程と、を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法を提供する。
【0014】
請求項3に係る本発明によれば、請求項2の工程に加え、第2回収槽を設け、この槽に貯蔵されたスラリー中の酸化剤を分解させ、不純物を沈殿させる処理を行うので、再生スラリーを一層新品と同様のレベルまで回復させることができる。
【0015】
請求項4に係る本発明は、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法により再生されたスラリーと新規に調合されたスラリーとを混合して使用することを特徴とする化学的機械研磨方法を提供する。
【0016】
請求項4に係る本発明によれば、再生されたスラリーと新規に調合されたスラリーとを混合して使用するので、CMPにおける大幅なコストダウンが図れる。
【0017】
請求項5に係る本発明は、スラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記研磨パッド上より回収された前記スラリーを貯蔵する回収槽と、その一端が前記回収槽に接続され、前記スラリーを圧送するとともに、その他端が自動切換え弁に接続される送液手段と、前記送液手段中に設けられる濾過手段と、前記自動切換え弁に配管を経て接続される再生スラリー槽と、その一端が前記自動切換え弁に接続され、その他端が前記回収槽に接続される戻り配管と、を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置を提供する。
【0018】
請求項5に係る本発明によれば、水を混入させずに研磨パッド上より回収されたスラリーを回収槽に貯蔵し、送液手段中に設けられる濾過手段で濾過する。そして、自動切換え弁(3方弁等)の切り換えにより、濾過後のスラリーを再生スラリー槽に送ったり、戻り配管により循環濾過させたり選択できる。したがって、スラリー再生が効率よく行える。
【0019】
請求項6に係る本発明は、前記回収槽にpH値測定手段及び比重測定手段が設けられている請求項5に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置を提供する。
【0020】
請求項6に係る本発明によれば、回収槽にpH値測定手段及び比重測定手段が設けられているので、これらの値を適正値の調整するのが容易である。
【0021】
請求項7に係る本発明は、前記回収槽に配管を経て接続される第2回収槽と、その一端が前記第2回収槽に接続され、前記スラリーを圧送するとともに、その他端が第2の自動切換え弁に接続される第2の送液手段と、前記第2の送液手段中に設けられる第2の濾過手段と、その一端が前記第2の自動切換え弁に接続され、その他端が前記回収槽に接続される第2の戻り配管と、その一端が前記第2の自動切換え弁に接続され、その他端が前記第2の回収槽に接続される循環配管と、を備える請求項5又は6に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置を提供する。
【0022】
請求項7に係る本発明によれば、第2回収槽を更に設け、回収槽で処理されたスラリーを、更に第2の濾過手段等により処理するので、再生スラリーを一層新品と同様のレベルまで回復させることができる。
【0023】
請求項8に係る本発明は、前記回収槽及び/又は前記第2の回収槽にpH値調整手段が設けられている請求項5〜7のいずれか1項に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置を提供する。
【0024】
請求項8に係る本発明によれば、回収槽及び/又は第2の回収槽にpH値調整手段が設けられているので、この値を適正値に調整するのが容易である。
【0025】
請求項9に係る本発明は、前記スラリー中の酸化剤を分解させる処理手段、及び、前記スラリー中の不純物を沈殿させる処理手段が設けられている請求項5〜8のいずれか1項に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置を提供する。
【0026】
請求項9に係る本発明によれば、スラリー中の酸化剤を分解させ、不純物を沈殿させる処理手段が設けられているので、再生スラリーを一層新品と同様のレベルまで回復させることができる。
【0027】
請求項10に係る本発明は、表面に研磨パッドが貼着され回転駆動される円盤状の研磨定盤と、前記研磨定盤の周縁に該研磨定盤を囲むように設けられ、該研磨定盤の周縁より流される液状体を回収可能なスラリー受け手段と、前記研磨定盤の周縁と前記スラリー受け手段との間に、前記研磨定盤を囲むように設けられるとともに、上部が内傾し上端部の内径が前記研磨定盤の外径と略同一であり、昇降可能となっており、前記研磨定盤の周縁より流される液状体を回収可能な受け手段であって、上昇時には前記研磨定盤の周縁より流される液状体を回収するとともに、前記研磨定盤の周縁より流される液状体の前記スラリー受け手段への流れを遮断し、下降時には前記研磨定盤の周縁より流される液状体の回収を遮断するとともに、前記研磨定盤の周縁より流される液状体を前記スラリー受け手段へ導くように形成されているパージ水受け手段と、を備えることを特徴とする化学的機械研磨装置を提供する。
【0028】
請求項10に係る本発明によれば、パージ水受け手段の昇降動作により、パージ水等のスラリーを希釈させる液体がスラリーと分離され、水を混入させずにスラリーを研磨パッド上より回収することができる。したがって、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生に非常に効果がある。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、再生スラリーを新品と同様のレベルまで回復させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って、本発明に係る化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
図1は、化学的機械研磨装置10の全体構成を示す斜視図である。同図に示されるように化学的機械研磨装置10は、主として研磨定盤12と保持ヘッド(ウェーハ保持ヘッド)14とで構成されている。なお、理解の便宜のため、後述するスラリー受け手段30とパージ水受け手段32の図示は省略されている。
【0032】
研磨定盤12は円盤状に形成され、その下面中央には回転軸16が連結されている。研磨定盤12は、この回転軸16に連結されたモータ18を駆動することにより図の矢印A方向に回転する。また、この研磨定盤12の上面には研磨パッド20が貼り付けられており、この研磨パッド20上に図示しないノズルからスラリー(メカノケミカル研磨剤)が供給される。
【0033】
保持ヘッド14のヘッド本体22は円盤状に形成され、その上面中央には回転軸24が連結されている。ヘッド本体22は、この回転軸24に連結された図示しないモータに駆動されて図の矢印B方向に回転する。
【0034】
図2は、化学的機械研磨装置10の部分断面図である。このうち、(A)は、パージ水受け手段32を上昇させている状態を示し、(B)は、パージ水受け手段32を下降させている状態を示す。
【0035】
図2において、スラリー受け手段30は、研磨定盤12の周縁に研磨定盤12を囲むように設けられ、研磨定盤12の周縁より流されるスラリー等の液状体(液体と固体の混合流体)を回収可能な受け手段であり、円筒状に形成されている。
【0036】
パージ水受け手段32は、研磨定盤12の周縁とスラリー受け手段30との間に、研磨定盤12を囲むように設けられている。このパージ水受け手段32も、研磨定盤12の周縁より流されるスラリー等の液状体(液体と固体の混合流体)を回収可能な受け手段であり、円筒状に形成されている。このパージ水受け手段32の上部32Aは内傾しており、上端部の内径が研磨定盤12の外径と略同一である。そして、図示しない昇降手段により、昇降可能となっている。
【0037】
更に、研磨定盤12の下面側であって、パージ水受け手段32の内側には、円筒状の液ガイド手段34が設けられている。
【0038】
以上の図2の構成により、スラリー受け手段30とパージ水受け手段32により、スラリー回収流路36が形成され、パージ水受け手段32と液ガイド手段34により、パージ水排出流路38が形成される。
【0039】
そして、図2(A)に示されるように、パージ水受け手段32の上昇時には、研磨定盤12の周縁より流される液状体は、全てパージ水排出流路38に流入し、スラリー回収流路36には流入しない。
【0040】
一方、図2(B)に示されるように、パージ水受け手段32の下降時には、研磨定盤12の周縁より流される液状体は、全てスラリー回収流路36に流入し、パージ水排出流路38には流入しない。すなわち、パージ水受け手段32の上端部と研磨定盤12の外径との間の隙間がほとんどないので、研磨定盤12の周縁より流される液状体は、パージ水受け手段32の上部32Aを伝って全てスラリー回収流路36に流入する。
【0041】
以上説明した図2の構成により、CMP中に、水を混入させずにスラリーを研磨パッド20上より回収することができる。
【0042】
前記のごとく構成された化学的機械研磨装置10のウェーハ研磨方法は次のとおりである。
【0043】
まず、被加工物であるウェーハをウェーハ保持ヘッド14で保持して研磨パッド20上に載置する。そして、研磨定盤12を図の矢印A方向に回転させるとともに、研磨パッド20上に図示しないノズルからスラリーを供給し、保持ヘッド14を図の矢印B方向に回転させるとともに、図示しない加圧手段によりウェーハを研磨パッド20に押圧し、化学的機械研磨作用によりCMPを行う。
【0044】
CMP際には、図2(B)に示されるように、パージ水受け手段32を下降させておく。すなわち、CMP中では、研磨定盤12の周縁より流される液状体は全てスラリーであるので、これを全てスラリー回収流路36に流入させて回収させる。
【0045】
CMPの終了の際には、ウェーハを取り外し、ダイアモンド砥石などにより研磨パッド20のドレッシングを行う。その際、スラリーの供給を停止させ、パージ水を研磨パッド20上に供給し、ドレッシングを行うのが一般的である。
【0046】
したがって、この際には、図2(A)に示されるように、パージ水受け手段32を上昇させておく。これにより、研磨定盤12の周縁より流されるパージ水により希釈された液状体は全てパージ水排出流路38に流入する。このパージ水により希釈された液状体は、再生スラリーには使用しにくいので、廃棄(廃液処理)すればよい。
【0047】
次に、CMP中で回収されたスラリー再生方法及び装置について説明する。図3は、スラリー再生装置50の構成を示す構成図である。このスラリー再生装置50は、第1回収槽である第1回収タンクT−101と、第2回収槽である第2回収タンクT−102と、再生スラリー貯留槽である再生スラリータンクT−201と、新規スラリー貯留槽である新規スラリータンクT−202と、これらを繋ぐ配管と、各種配管機材(バルブ、フィルタ、計器等)より構成されている。
【0048】
図3の左上部に示される既述の化学的機械研磨装置10のスラリー回収流路36(図2参照)には、配管52が接続されており、この配管52は二又に分岐され、それぞれ自動バルブA−102及び自動バルブA−103と接続されている。
【0049】
一方、化学的機械研磨装置10のパージ水排出流路38(図2参照)には、配管54が接続されており、この配管54は自動バルブA−101を経て廃液処理装置999に接続されている。また、この配管54の自動バルブA−101の下流には、自動バルブA−102からの配管56が合流している。
【0050】
自動バルブA−103の下流において、配管52は第1回収タンクT−101に接続されている。第1回収タンクT−101には、比重測定手段40と、H2 2 測定手段42と、pH測定手段44が設けられており、タンク内部の回収スラリーの比重、H2 2 及びpHが測定できるようになっている。
【0051】
このpH測定手段44によるpHの測定結果により、図示しない制御手段が既述の酸供給装置P−301を運転させ、タンク内部の回収スラリーのpHを所望の値に制御できるようになっている。すなわち、酸供給装置P−301は、HNO3 のタンクと定量ポンプを備えており、配管73を経由して第1回収タンクT−101へHNO3 を供給できるようになっている。
【0052】
第1回収タンクT−101の底部には、配管58と配管60が接続されており、底部近傍の側面には、配管62が接続されている。配管58は、自動バルブA−105を経て第2回収タンクT−102に接続されている。配管60は、手動バルブM−101を経て廃液処理装置999に接続されている。
【0053】
配管62には、ポンプP−101が接続されており、第1回収タンクT−101からの回収スラリーを圧送できるようになっている。ポンプP−101の下流側の配管62には、順に手動バルブM−102、逆止弁63、流量計64、及び圧力計66が設けられており、その先で二又に分岐されている。
【0054】
分岐後の一方の配管62Aには、順に手動バルブM−103、フィルタF−1−1、及び手動バルブM−104が設けられており、分岐後の他方の配管62Bには、順に手動バルブM−105、フィルタF−1−2、及び手動バルブM−106が設けられており、その先で配管62A及び配管62Bが合流し、配管62となっている。この配管62には圧力計68が設けられており、配管62は、その先で自動切換え弁である三方弁A−104の第1の口(図のA)に接続されている。
【0055】
この三方弁A−104の第2の口(図のC)には、配管70が接続されており、この配管70は、再生スラリータンクT−201に接続されている。三方弁A−104の第3の口(図のB)には、配管72が接続されており、この配管72は、第1回収タンクT−101に接続されている。すなわち、配管72は、循環用の戻り配管である。
【0056】
第2回収タンクT−102には、H2 2 測定手段46と、pH測定手段48が設けられており、タンク内部の回収スラリーのH2 2 及びpHが測定できるようになっている。また、第2回収タンクT−102には、配管74を経て酸供給装置P−302が接続されている。
【0057】
pH測定手段48によるpHの測定結果により、図示しない制御手段が既述の酸供給装置P−302を運転させ、タンク内部の回収スラリーのpHを所望の値に制御できるようになっている。すなわち、酸供給装置P−302は、酸供給装置P−301と同様に、HNO3 のタンクと定量ポンプを備えており、既述の配管74を経由して第2回収タンクT−102へHNO3 を供給できるようになっている。
【0058】
また、第2回収タンクT−102には、排気手段が設けられており、回収スラリーが再生処理された際にH2 2 の分解でガスが発生し、タンクの内圧が上昇することを防ぐべく、発生するガスを外部に放出できるようになっている。
【0059】
第1回収タンクT−101の底部には、配管76と配管78が接続されており、底部近傍の側面には、配管80が接続されている。配管76は、自動バルブA−106を経て廃液処理装置999に接続されている。配管78は、手動バルブM−107を経て廃液処理装置999に接続されている。
【0060】
配管80には、ポンプP−102が接続されており、第2回収タンクT−102からの回収スラリーを圧送できるようになっている。ポンプP−102の下流側の配管80には、順に手動バルブM−108、逆止弁81、流量計82、及び圧力計84が設けられており、その先で二又に分岐されている。
【0061】
分岐後の一方の配管80Aには、順に手動バルブM−109、フィルタF−2−1、フィルタF−3−1、及び手動バルブM−110が設けられており、分岐後の他方の配管80Bには、順に手動バルブM−111、フィルタF−2−2、フィルタF−3−2、及び手動バルブM−112が設けられており、その先で配管80A及び配管80Bが合流し、配管80となっている。この配管80には圧力計86が設けられており、配管80は、その先で自動切換え弁である三方弁A−107の第1の口(図のA)に接続されている。
【0062】
この三方弁A−107の第2の口(図のC)には、配管88が接続されており、この配管88は、第1回収タンクT−101に接続されている。すなわち、配管72は、循環用の戻り配管である。三方弁A−107の第3の口(図のB)には、配管90が接続されており、この配管90は、第2回収タンクT−102に接続されている。すなわち、配管90は、循環用の戻り配管である。
【0063】
再生スラリータンクT−201の底部には、配管92が接続されており、底部近傍の側面には、配管94が接続されている。配管92は、手動バルブM−201を経て廃液処理装置999に接続されている。
【0064】
配管94には、ポンプP−201が接続されており、再生スラリータンクT−201からの回収スラリーを圧送できるようになっている。ポンプP−201の下流側の配管94には、順に手動バルブM−202、逆止弁97、及び流量計98が設けられており、その先で二又に分岐されている。
【0065】
分岐された一方の配管100は、自動バルブA−106を経て再生スラリータンクT−201に接続されている。すなわち、配管100は、循環用の戻り配管である。
【0066】
分岐された他方の配管102は、自動バルブA−202及び流量計104を経てスラリー供給装置S−101に接続されている。すなわち、配管102は、スラリー供給用の配管である。
【0067】
新規スラリータンクT−202の底部には、配管106が接続されており、底部近傍の側面には、配管108が接続されている。配管106は、手動バルブM−203を経て廃液処理装置999に接続されている。
【0068】
配管108には、ポンプP−202が接続されており、新規スラリータンクT−202からのスラリーを圧送できるようになっている。ポンプP−202の下流側の配管108には、順に手動バルブM−204、逆止弁109、及び流量計110が設けられており、その先で二又に分岐されている。
【0069】
分岐後の一方の配管112は、自動バルブA−204を経て新規スラリータンクT−202に接続されている。すなわち、配管112は、循環用の戻り配管である。更に、新規スラリータンクT−202には、新規スラリー供給用の配管1 14が設けられている。
【0070】
分岐後の他方の配管116には、自動バルブA−203が設けられており、その先で配管102に合流し、流量計104を経てスラリー供給装置S−101に接続されている。すなわち、配管116は、スラリー供給用の配管である。
【0071】
次に、以上のように構成されたスラリー再生装置50の運転方法について説明する。図4は、スラリー再生装置50の運転の手順を示すフロー図であり、(A)は、スラリーの再生処理のフローであり、(B)は、再生スラリーを使用したCMPのフローである。
【0072】
図4(A)において、先ず、第1回収タンクT−101の液面レベルがチェックされ、第1回収タンクT−101内に、古いスラリー等が残留しているかチェックされる(ステップS−102)。そして、第1回収タンクT−101の液面レベルが低くなかった場合(No)には、自動バルブA−101が開かれ、残留している古いスラリー等が廃液処理装置999に破棄される(ステップS−104)。
【0073】
一方、ステップS−102において、第1回収タンクT−101の液面レベルが低かった場合(Yes)には、自動バルブA−101が閉じられるとともに、自動バルブA−103が開かれ、スラリー回収流路36からのスラリーが第1回収タンクT−101内に流入する(ステップS−106)。
【0074】
次いで、第1回収タンクT−101において、比重測定手段40によりタンク内部の回収スラリーの比重が測定される。そして、回収スラリーの比重が1.03より大きいか否かチェックされる(ステップS−108)。
【0075】
回収スラリーの比重が1.03未満だった場合(No)には、自動バルブA−102が開かれ、回収スラリーが廃液処理装置999に破棄される(ステップS−110)。
【0076】
一方、ステップS−108において、回収スラリーの比重が1.03より大きかった場合(Yes)には、次ステップに移る。
【0077】
次いで、第1回収タンクT−101において、H2 2 測定手段42によりタンク内部の回収スラリーのH2 2 が測定される。そして、回収スラリーのH2 2 が0.5%より大きいか否かチェックされる(ステップS−112)。
【0078】
回収スラリーのH2 2 が0.5%未満だった場合(No)には、次ステップ(ステップS−114)に移り、第2回収タンクT−102の液面レベルがチェックされ、第2回収タンクT−102内に、古いスラリー等が残留しているかチェックされる。
【0079】
そして、第2回収タンクT−102の液面レベルが低くなかった場合(No)には、自動バルブA−101が開かれ、残留している古いスラリー等が廃液処理装置999に破棄される(ステップS−104)。
【0080】
一方、ステップS−114において、第2回収タンクT−102の液面レベルが低かった場合(Yes)には、自動バルブA−105が開かれ、第1回収タンクT−101からのスラリーが第2回収タンクT−102内に流入する(ステップS−116)。
【0081】
次いで、第2回収タンクT−102において、pH測定手段48によりタンク内部の回収スラリーのpHが測定される。そして、回収スラリーのpHが略2.3に等しいか否かチェックされる(ステップS−118)。
【0082】
そして、回収スラリーのpHが略2.3に等しくない場合(No)には、酸供給装置P−302が運転されて、回収スラリーのpHが調整され、ステップS−118に戻る(ステップS−120)。
【0083】
一方、ステップS−118において、回収スラリーのpHが略2.3に等しい場合(Yes)には、三方弁A−107の第1の口と第3の口とを連通させ(ステップS−122)、ポンプP−102を起動させて、配管80と配管90により、第2回収タンクT−102内の回収スラリーを循環させる(ステップS−124)。
【0084】
この場合、分岐配管80A及び80Bのいずれかによりフィルタリングを行う。すなわち、フィルタ配管は2系統設けられており、一方を使用し終わった段階で他方に切り換え、その間に使用後のカートリッジフィルタを交換できるようになっている。
【0085】
たとえば、分岐配管80Aの系統を使用している際には、手動バルブM−109及びM−110が開かれており、手動バルブM−111及びM−112は閉じられている。フィルタF−2−1又はフィルタF−3−1に目詰りを生じ、フィルタのライフが終了した際には、手動バルブM−111及びM−112を開くとともに、手動バルブM−109及びM−110を閉じ、分岐配管80Bの系統を使用する。そして、その間にフィルタF−2−1及びフィルタF−3−1を新品に交換する。
【0086】
なお、1系統にフィルタが2個直列に設けられている理由は、メッシュサイズの大きいフィルタF−2−1及びフィルタF−2−2を前段に配し、メッシュサイズの小さいフィルタF−3−1及びフィルタF−3−2を後段に配することにより、フィルタのライフの均一化を図り、フィルタのライフを延長させるためである。この場合、フィルタF−3−1(F−3−2)又はこの後段に金属選択除去フィルタを設置することもできる。
【0087】
分岐配管80A及び80Bのいずれかにより所定時間(図では1分)フィルタリングを行った後、三方弁A−107を切り換え、三方弁A−107の第1の口と第2の口とを連通させる(ステップS−126)。これにより、第2回収タンクT−102内の回収スラリーは、分岐配管80A及び80Bのいずれかを経た後、配管88を経て、第1回収タンクT−101内に流入する。そして、最初のステップ(ステップS−102)に戻る。
【0088】
ステップS−112に戻って、回収スラリーのH2 2 が0.5%より大きかった場合(Yes)には、回収スラリーのpHが略2.3に等しいか否かチェックされる(ステップS−130)。
【0089】
そして、回収スラリーのpHが略2.3に等しくない場合(No)には、酸供給装置P−301が運転されて、回収スラリーのpHが調整され、ステップS−130に戻る(ステップS−132)。
【0090】
一方、ステップS−130において、回収スラリーのpHが略2.3に等しい場合(Yes)には、三方弁A−104の第1の口と第3の口とを連通させ(ステップS−134)、ポンプP−101を起動させて、配管62と配管72により、第1回収タンクT−101内の回収スラリーを循環させる(ステップS−136)。
【0091】
この場合、分岐配管62A及び62Bのいずれかによりフィルタリングを行う。なお、分岐配管62A及び62Bの2系統を設ける理由は、分岐配管80A及び80Bの場合と同様である。
【0092】
分岐配管62A及び62Bのいずれかにより所定時間(図では1分)フィルタリングを行った後、三方弁A−104を切り換え、三方弁A−104の第1の口と第2の口とを連通させる(ステップS−138)。これにより、第1回収タンクT−101内の回収スラリーは、分岐配管62A及び62Bのいずれかを経た後、配管70を経て、再生スラリータンクT−201内に流入する。そして、再生スラリーの回収が終了する(ステップS−140)。
【0093】
次に、図4(B)によって、再生スラリーを使用(リユース)したCMPのフローについて説明する。先ず、スラリー供給装置S−101において、タンクの液面レベルが規定値を超えているか否かが判定される(ステップS−202)。
【0094】
ステップS−202において、タンクの液面レベルが規定値以下の場合(No)には、自動バルブA−203が開かれるとともに、自動バルブA−202が閉じられる(ステップS−204)。
【0095】
そして、ポンプP−202が起動される(ステップS−206)。これにより、新規スラリータンクT−202内の新規スラリーが配管116、102を経てスラリー供給装置S−101に圧送される。
【0096】
一方、ステップS−202において、タンクの液面レベルが規定値を超える場合(Yes)には、自動バルブA−202が開かれ(ステップS−208)、ポンプP−201が起動される(ステップS−210)。これにより、再生スラリータンクT−201内の再生スラリーが配管102を経てスラリー供給装置S−101に圧送される。
【0097】
そして、再生スラリーの再使用(リユース)が終了する(ステップS−212)。
【0098】
以上、本発明に係る化学的機械研磨方法並びに装置、及び、化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法並びに装置の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0099】
たとえば、本実施の形態では、図2に示される構成により、CMP中に、水を混入させずにスラリーを研磨パッド20上より回収しているが、これ以外の構成により水を混入させずにスラリーを研磨パッド20上より回収する方法を採用してもよく、同様に本発明の効果が得られる。
【0100】
この例を図10によって説明する。なお、図2と同一の部材の説明は省略する。この構成では、研磨定盤12の外周に、円周方向の溝12Aが形成されており、また、パージ水受け手段32の上部32Aは、上端部の内径が研磨定盤12の外周よりも小さく形成されている。
【0101】
更に、この上部32Aには、円周方向の数箇所に切れ目が入っており(図示略)、弾性変形が可能となっている。そして、パージ水受け手段32と上部32Aとは、ばね32Bで内側に付勢されている。
【0102】
図10(B)に示されるように、パージ水受け手段32の下降時には、パージ水受け手段32の上部32Aが弾性変形し、研磨定盤12の外周部を乗り越えて、溝12Aに入り込む。したがって、研磨定盤12の周縁より流される液状体は、全てスラリー回収流路36に流入し、パージ水排出流路38には流入しない。以上説明した図10の構成により、CMP中に、水を混入させずにスラリーを研磨パッド20上より回収することができる。
【0103】
また、これ以外の構成により水を混入させずにスラリーを研磨パッド20上より回収する方法としては、研磨定盤12を傾斜させる構成が採用できる。
【0104】
更に、真空吸引によりスラリーを研磨パッド20上より回収する構成、ワイパーのようなブレードで掻きとってスラリーを研磨パッド20上より回収する構成等も採用でき、また、これらを組み合わせた構成をも採用できる。
【0105】
なお、図3におけるフィルタの形式や配管系統の構成等は1例であり、これ以外の構成により本発明に係る化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法を実現させるものであってもよい。
【実施例】
【0106】
CMPによりウェーハ上のタングステン膜(W膜)の研磨を行い、スラリー再生方法の効果を確認した。
【0107】
化学的機械研磨装置としては、少量のスラリーの使用でも結果が確認できるような既存の(市販の)装置(MAT社製の卓上CMP装置、型番:MAT BC−15)を使用した。
【0108】
研磨パッドとしては、ニッタハース社製のもの(商品名:IC1000、及びSUBA400 XY溝有り)を使用した。
【0109】
スラリーとしては、Cabot社製のタングステンCMP用スラリー(商品名:SSW2000)にH2 2 (和光純薬社製 試薬特級)を30重量%添加したものを使用した。
【0110】
ウェーハとしては、外径が約100mm(4インチサイズ)のシリコンウェーハに、熱酸化膜(膜厚500nm)、Ti膜(膜厚30nm)、TiN膜(膜厚20nm)、W膜(膜厚300nm)の順で成膜したものを使用した。
【0111】
加工レート(研磨レート)の測定は、CMP前後のW膜の膜厚を測定することにより行った。このW膜の膜厚測定は、抵抗率の測定により算出することによった。この抵抗率の測定は、4端子法による測定が可能な測定器であるロレスターGP(三菱化学社製)によった。
【0112】
加工条件は、下記の通りである。
・研磨定盤12、ウェーハ保持ヘッド14の回転数:60rpm
・研磨荷重(面圧):460g/cm2
・スラリー供給速度:140ml/分
・研磨時間:30秒
・ドレッシング時間:30秒
[実施例1]
CMPの際のスラリーの回収は、研磨定盤の外側に回収箱を8個、均等間隔で配し、遠心力により飛散するスラリーを、この回収箱で受けることにより行った。回収箱は矩形の桝状で、この平面サイズは150×50mmで、深さは30mmである。回収箱の材質は、フッ素樹脂(PTFE)である。スラリーを回収した後、8個の回収箱のスラリーをビーカーに貯留して、以降の実験に供した。
【0113】
スラリーの回収は、本発明の、水を混入させずにスラリーを研磨パッド上より回収するスラリー再生方法による場合と、従来手順の、水が混入したスラリーを研磨パッド上より回収する方法による場合の2条件を繰り返した。
【0114】
ウェーハ上のタングステン膜のCMPは、以下の)〜)の手順により行った。この際、使用するスラリーは、A)新規のスラリー、B)本発明のスラリー再生方法によるスラリー、C)従来手順の、水が混入したスラリー、の3種類である。
【0115】
1)シリコンウェーハの抵抗率を測定する。各シリコンウェーハの直径上を9箇所、均等間隔で測定する。その際、1箇所目と9箇所目は、両端(周縁)より10mmの位置とし、5箇所目がウェーハの中心になるようにした。
【0116】
2)ウェーハを保持ヘッドに装着する。
【0117】
3)スラリーを研磨パッド上に供給する(重力による掛け流し)。
【0118】
4)研磨定盤の回転をスタートさせる。
【0119】
5)保持ヘッドの回転をスタートさせる。
【0120】
6)保持ヘッドを研磨定盤上に下降させる。(なお、4)〜6)は、CMP装置の自動プログラムにより行う。)
7)保持ヘッドの研磨定盤への接触時から計時する。
【0121】
8)設定時間経過後に、保持ヘッドを研磨定盤より上昇させる。
【0122】
9)ウェーハを保持ヘッドより取り外す。
【0123】
10)研磨パッドのドレッシングを行う。
【0124】
11)ウェーハを超純水とPVAスポンジによりスクラブ洗浄する。
【0125】
12)ウェーハを超純水でリンスした後に、エア乾燥させる。
【0126】
13)シリコンウェーハの抵抗率を再測定する(1)の測定と同一箇所)。これにより、ウェーハ上のタングステン膜の加工レートが算出できる。
【0127】
算出されたタングステン膜の加工レートを図5のグラフに示す。
【0128】
図5のグラフによれば、既述のA)新規のスラリーによる場合の加工レートは、330nm/分であった。既述のB)本発明のスラリー再生方法による場合の加工レートは、326nm/分であり、新規のスラリーによる場合と略同一であった。これに対し、既述のC)従来手順の、水が混入したスラリーによる場合の加工レートは、230nm/分であり、本発明による場合より約30%も低下していることが解る。
【0129】
[実施例2]
次に、スラリーのpH値の影響を見るために、水の希釈によりpH値が変化したスラリーを数種類準備してCMPを行い、加工レートを評価した。実験手順は、実施例1と同様とした。なお、既述のB)本発明のスラリー再生方法による場合のpH値は、2.3であった。
【0130】
評価結果である、タングステン膜の加工レートを図6のグラフに示す。グラフの横軸は、スラリーのpH値である。
【0131】
図6のグラフによれば、スラリーのpH値が上昇するにつれて、加工レートが低下していく傾向が読み取れる。特に、スラリーのpH値が5.0のものでは、本発明のスラリー再生方法による場合の略半分の加工レートとなっている。以上のように、スラリーのpH値を所定の値に維持することにより、加工レートを高い状態に維持できることが確認された。
【0132】
[実施例3]
次に、スラリーのH2 2 濃度の影響を見るために、水の希釈によりH2 2 濃度が変化したスラリーを数種類準備してCMPを行い、加工レートを評価した。実験手順は、実施例1と同様とした。なお、既述のB)本発明のスラリー再生方法による場合のH2 2 濃度は、2.0%であった。
【0133】
評価結果である、タングステン膜の加工レートを図7のグラフに示す。グラフの横軸は、スラリーのH2 2 濃度である。
【0134】
図7のグラフによれば、スラリーのH2 2 濃度が上昇するにつれて、加工レートが低下していく傾向が読み取れる。特に、スラリーのH2 2 濃度が0.5%未満のものでは、本発明のスラリー再生方法による場合の加工レートと比べて大幅に低下している。以上のように、スラリーのH2 2 濃度を所定の値に維持することにより、加工レートを高い状態に維持できることが確認された。
【0135】
[実施例4]
次に、スラリーの砥粒濃度の影響を見るために、水の希釈により砥粒濃度が変化したスラリーを数種類準備してCMPを行い、加工レートを評価した。なお、スラリーの比重と砥粒濃度とは対応関係にあり、スラリーの比重を測定することにより、スラリーの砥粒濃度が得られる。実験手順は、実施例1と同様とした。なお、既述のB)本発明のスラリー再生方法による場合の砥粒濃度は、6.0であった。
【0136】
評価結果である、タングステン膜の加工レートを図8のグラフに示す。グラフの横軸は、スラリーの砥粒濃度である。
【0137】
図8のグラフによれば、スラリーの砥粒濃度が低下するにつれて、加工レートが低下していく傾向が読み取れる。特に、スラリーの砥粒濃度が3.0%未満のものでは、本発明のスラリー再生方法による場合の加工レートと比べて大幅に低下している。以上のように、スラリーの砥粒濃度を所定の値に維持することにより、加工レートを高い状態に維持できることが確認された。
【0138】
[実施例5]
次に、Fe濃度の影響を見るために、砥粒Fe濃度を変化させたスラリーを数種類準備してCMPを行い、加工レートを評価した。なお、スラリーのH2 2 濃度は、2%とし、pH値が2.3になるように、HNO3 で調整した。
【0139】
評価結果である、タングステン膜の加工レートを図9のグラフに示す。グラフの横軸は、スラリーのFe濃度である。
【0140】
図9のグラフによれば、スラリーの砥粒濃度が低下するにつれて、加工レートが低下していく傾向が読み取れる。特に、スラリーのFe濃度が15ppm未満のものでは大幅に低下している。以上のように、スラリーのFe濃度を所定の値に維持することにより、加工レートを高い状態に維持できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】化学的機械研磨装置の全体構成を示す斜視図
【図2】図1の化学的機械研磨装置の部分断面図
【図3】スラリー再生装置の構成を示す構成図
【図4】スラリー再生装置の運転の手順を示すフロー図
【図5】本発明のスラリー再生方法によるCMPと従来方法によるCMPとの加工レートの差を示すグラフ
【図6】CMPにおいて、スラリーのpH値と加工レートとの関係を示すグラフ
【図7】CMPにおいて、スラリーのH2 2 濃度と加工レートとの関係を示すグラフ
【図8】CMPにおいて、スラリーの砥粒濃度と加工レートとの関係を示すグラフ
【図9】CMPにおいて、スラリーのFe濃度と加工レートとの関係を示すグラフ
【図10】図1の化学的機械研磨装置の部分断面図の他の例
【符号の説明】
【0142】
10…化学的機械研磨装置、12…研磨定盤、14…保持ヘッド(ウェーハ保持ヘッド)、20…研磨パッド、30…スラリー受け手段、32…パージ水受け手段、T−101…第1回収タンク(第1回収槽)、T−102…第2回収タンク(第2回収槽)、T−201…再生スラリータンク(再生スラリー貯留槽)、T−202…新規スラリータンク(新規スラリー貯留槽)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記スラリーを前記研磨パッド上より回収する工程と、
回収された前記スラリーを回収槽に貯蔵する工程と、
貯蔵された前記スラリーを濾過する工程と、
を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法。
【請求項2】
所定のpH値及び比重を有するスラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記スラリーを前記研磨パッド上より回収する工程と、
回収された前記スラリーを回収槽に貯蔵する工程と、
貯蔵された前記スラリーのpH値及び比重を測定する工程と、
貯蔵された前記スラリーのpH値及び比重を前記所定の値に調整する工程と、
所定の値に調整された前記スラリーを濾過する工程と、
を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法。
【請求項3】
所定のpH値及び比重を有するスラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記スラリーを前記研磨パッド上より回収する工程と、
回収された前記スラリーを第1回収槽に貯蔵する工程と、
第1回収槽に貯蔵された前記スラリーのpH値及び比重を測定する工程と、
第1回収槽に貯蔵された前記スラリーのpH値を前記所定の値に調整する工程と、
所定の値に調整された前記スラリーを第2回収槽に貯蔵する工程と、
第2回収槽に貯蔵された前記スラリー中の酸化剤を分解させ、不純物を沈殿させる処理を行う工程と、
処理された前記スラリーを濾過する工程と、
を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生方法により再生されたスラリーと新規に調合されたスラリーとを混合して使用することを特徴とする化学的機械研磨方法。
【請求項5】
スラリーを研磨パッド上に供給しながら被加工物を前記研磨パッドに接触させて加工を行う化学的機械研磨加工中に、水を混入させずに前記研磨パッド上より回収された前記スラリーを貯蔵する回収槽と、
その一端が前記回収槽に接続され、前記スラリーを圧送するとともに、その他端が自動切換え弁に接続される送液手段と、
前記送液手段中に設けられる濾過手段と、
前記自動切換え弁に配管を経て接続される再生スラリー槽と、
その一端が前記自動切換え弁に接続され、その他端が前記回収槽に接続される戻り配管と、
を備えることを特徴とする化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置。
【請求項6】
前記回収槽にpH値測定手段及び比重測定手段が設けられている請求項5に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置。
【請求項7】
前記回収槽に配管を経て接続される第2回収槽と、
その一端が前記第2回収槽に接続され、前記スラリーを圧送するとともに、その他端が第2の自動切換え弁に接続される第2の送液手段と、
前記第2の送液手段中に設けられる第2の濾過手段と、
その一端が前記第2の自動切換え弁に接続され、その他端が前記回収槽に接続される第2の戻り配管と、
その一端が前記第2の自動切換え弁に接続され、その他端が前記第2の回収槽に接続される循環配管と、
を備える請求項5又は6に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置。
【請求項8】
前記回収槽及び/又は前記第2の回収槽にpH値調整手段が設けられている請求項5〜7のいずれか1項に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置。
【請求項9】
前記スラリー中の酸化剤を分解させる処理手段、及び、前記スラリー中の不純物を沈殿させる処理手段が設けられている請求項5〜8のいずれか1項に記載の化学的機械研磨加工におけるスラリー再生装置。
【請求項10】
表面に研磨パッドが貼着され回転駆動される円盤状の研磨定盤と、
前記研磨定盤の周縁に該研磨定盤を囲むように設けられ、該研磨定盤の周縁より流される液状体を回収可能なスラリー受け手段と、
前記研磨定盤の周縁と前記スラリー受け手段との間に、前記研磨定盤を囲むように設けられるとともに、上部が内傾し上端部の内径が前記研磨定盤の外径と略同一であり、昇降可能となっており、前記研磨定盤の周縁より流される液状体を回収可能な受け手段であって、
上昇時には前記研磨定盤の周縁より流される液状体を回収するとともに、前記研磨定盤の周縁より流される液状体の前記スラリー受け手段への流れを遮断し、
下降時には前記研磨定盤の周縁より流される液状体の回収を遮断するとともに、前記研磨定盤の周縁より流される液状体を前記スラリー受け手段へ導くように形成されているパージ水受け手段と、
を備えることを特徴とする化学的機械研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−165104(P2006−165104A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351231(P2004−351231)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(591222670)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】