説明

化学結合状態測定法

【課題】XPSによる所望の結合エネルギーの測定において、X線照射時間の経過とともに測定結合エネルギー値がシフトする場合、安定的に所定のエネルギー値を測定する。
【解決手段】XPSによって、被測定物の表面に吸着した吸着物に相当するピークスペクトルに関して、X線の継続的な照射による、そのピークの高さや形状の変化を測定し、そのピークが消滅ないし最小化状態で安定化したこと判定して、その表面吸着物が消滅ないし安定化したことを確認して後、所望のピーク測定値から結合エネルギーを測定する。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の組成評価を行うX線光電子分光分析法を用いた化学結合状態測定法に関し、特にその被測定物が絶縁物あるいは高抵抗物の場合に、被測定物への吸着物に起因する帯電による結合エネルギーシフトを考慮して、安定的に高精度な測定を行うことを可能にする化学結合状態測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線光電子分光分析法(XPS、X−ray Photoelectron Spectroscopy)は、X線照射によって試料表面から放出される光電子のエネルギー分析を行う測定法である。エネルギー分析の結果として得られる光電子スペクトルのピークのエネルギー(結合エネルギー)とスペクトル形状(光電子数)から、試料の化学結合状態を解析することができる。光電子の脱出可能な深さがナノメートルオーダーであるため、とくに試料の表面の分析に適している。
【0003】
絶縁物や高抵抗物である試料をXPSで測定する場合、X線照射開始後短時間のうちに、試料表面から放出される光電子や多量の二次電子によって試料表面が帯電する。その結果、光電子が電気的に放出され難い状態となり、光電子の結合エネルギーは本来のエネルギーの値より大きいほうにシフトした値として検出される。
【0004】
光電子の結合エネルギーは次の式から決定している。
【0005】
hν = E + φsp + E + φ
ここで、
hν:照射するX線のエネルギー
:スペクトロメータで測定される光電子の運動エネルギー
φsp:装置の仕事関数
:光電子の結合エネルギー
φ :帯電の強さ
と、する。
【0006】
通常は、X線照射後直ちに測定を行い、帯電によるシフトを含む結合エネルギーの測定結果は、次のような方法でエネルギーの補正を行う(例えば、特許文献1)。
(a)表面に吸着しているハイドロカーボンから放出される光電子C1sの結合エネルギーで補正する。
(b)金のような導電性物質を試料表面に、あるいは測定領域の近傍にスパッタや蒸着などで薄く成膜して同時に測定する。
(c)測定したい絶縁物が薄膜の場合、導電性の下部基板から放出される光電子でエネルギーを補正する。
(d)測定中に試料表面から放出される光電子や二次電子を補うために、試料表面に電子銃などによって電子を照射し、帯電を緩和させる。この際、Arイオンをアシストとして用
いることが多い。
【特許文献1】特開2001−124714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような結合エネルギーシフト量は、試料表面の絶縁性の程度によって異なるため、一律に補正をおこなうことはできない。さらに測定の途中であるX線照射継続中に、光電子スペクトルにおける注目ピークのエネルギーがシフト、つまり結合エネルギーの値が測定中に変化してしまうといった状態が生じることがある。
【0008】
このような測定中に発生する結合エネルギー測定値の変化は、上記したような従来の補正方法では補正が困難であり、その結果、本来の結合エネルギー値を見誤り、解析をしばしば困難にする。
【0009】
そこで本発明の課題は、XPSを用い、X線照射による測定中に帯電等による測定された結合エネルギーのシフトが生じた場合でも、本来の結合エネルギー値を得ることを可能とし、その結果、測定目的である、正確な組成評価ができるようにする、化学結合状態測定法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、被測定物の結合エネルギー値の測定によって前記被測定物の組成評価を行うX線光電子分光分析法を用いた化学結合状態測定法において、前記結合エネルギー値は、前記被測定物の表面吸着物の脱離ないし安定化の確認後の測定値である化学結合状態測定法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
XPSは、光電子の運動エネルギーと数を測定して、得られるスペクトルを構成するピークを解析する。スペクトルを構成するピークには、被測定物への吸収成分も含まれるが、この成分は、ピークフィッティングにより分離・確認することができる。そこで、開示した、本発明に係る化学結合状態測定法は、XPS測定で得られたスペクトルのピークから、水あるいは水酸基を有する物質に含まれる酸素に起因する物質のピークをピークフィッティングにより分離し、X線照射の継続により、そのピークが消滅ないし最小化されている状態であると判定することで、表面吸着物の脱離ないし安定化したことを確認した後に、測定対象物質の結合エネルギー測定値を本来の結合エネルギーと判断するようにする。こうすることで、正確かつ再現性の良い結合エネルギーを測定でき、正しい化学結合状態測定が行えることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を、添付図を参照しつつ説明する。
【0013】
(実施例)
われわれは、半導体デバイスへの適用のための新規材料のひとつとして、各種のhigh−k(高誘電率)材料に対してXPSをはじめ、各種分析を進めてきた。
【0014】
例えば、high−k材料の代表的なものひとつに、HfSiOがある。これを測定対象物として、XPSによる解析をおこなった。この材料のHfに起因するHf4f7/2ピークの結合エネルギー値を測定したところ、X線照射時間の経過に従って、これが高エネルギー側にだんだんとシフトしていってしまうことが解った。
【0015】
図1は、あるHfSiO試料のHf4f7/2ピークの結合エネルギーに関して、X線照射時間に対する変化の様子の例を示したものである。ここで横軸はX線照射時間で、縦軸はそのピークの測定結合エネルギー(Binding Energy)を示す。この場合では、はじめの照射3分の段階では、16.2eV程度が観測されるが、267分後の測定値ではおよそ17.4eV程度までシフトし、正確な結合エネルギーを把握できない状況となっている。
【0016】
そこで、より詳細な測定を行った。即ち、同様に、測定対象としてHfSiO試料を用い、その試料表面の所定の測定位置(X線照射位置)、すなわち、場所Aで、このHfSiO試料のHf以外の他の構成元素についても、時間経過による結合エネルギー値の変化の様子を測定した。測定は、試料の構成元素の光電子スペクトルを、Hf4f、Si2p、C1s、O1sの順番で1測定単位(測定時間は約1時間)として実施し、同一場所(場所A)に対して、さらに同様の測定を何度も繰り返しておこなった。
【0017】
図2(2−1)〜(2−4)に、そのときの、上記の4つの結合エネルギーピーク値を読み取ったスペクトルに関して、測定回数毎のスペクトル波形の変化の様子を重畳して示す。いずれも、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)で、縦軸は相対的な強度(Counts/s)を示す。
【0018】
図2(2−1)のように、結合エネルギー、13〜23eVの範囲で、図示するようにHf4fスペクトルが観測される。この図を含めて以下(2−2)、(2−3)、(2−4)の全4図は、測定回数1、2,7回目のスペクトル波形を示す。本図(2−1)から解るように、測定回数ごとに、Hf4f5/2とHf4f7/2の対の結合エネルギーピーク値は高いほうに大きくずれて行っている。測定の1回目と2回目の差が大きいことも解る。
【0019】
図2(2−2)は、結合エネルギー、95〜115eVの範囲でのスペクトル測定値で、図示するようにSi2pスペクトルが観測される。このピークも測定回数とともに高エネルギー側への若干のシフトが見られる。図2(2−3)は、結合エネルギー、280〜294eVの範囲でのスペクトル測定値で、図示するようにC1sスペクトルが観測される。このピークでは測定回数とともに若干の高エネルギー側へのシフトが見られる。図2(2−4)は、結合エネルギー、525〜540eVの範囲でのスペクトル測定値で、図示するようにO1sスペクトルが観測される。このピークでも測定回数を重ねても高エネルギー側へのシフトが殆ど見られない。上記のように、Hf4fピークのシフトが最も大きいものであった。
【0020】
より詳細に試料表面の化学結合状態を検討するため、これら4つのスペクトルを重畳している構成ピークに分離して比較する。その結果を図3に示す。
【0021】
図3(3−1)は、Hf4fスペクトルに関し、測定1回目、同2回目、同7回目におけるそれぞれの測定スペクトルを2つのピーク(この場合は、Hf4f5/2とHf4f7/2の2ピーク)に分離して示している。それぞれのピークの高さや形状(カウント数の面積)は大きな変化は無いが、結合エネルギーが大きく変化していることが解る。
【0022】
同様に、図3(3−2)は、Si2pスペクトルに関し、測定1回目、同2回目、同7回目におけるそれぞれの測定スペクトルを3つのピークに分離し、図3(3−3)は、C1sスペクトルに関し、測定1回目、同2回目、同7回目におけるそれぞれの測定スペクトルを3つのピークに分離しているが、いずれのピークの高さや形状(カウント数の面積)はあまり変わらず、結合エネルギーが若干変化している。
【0023】
図3(3−4)は、O1sスペクトルに関し、測定1回目、同2回目、同7回目におけるそれぞれの測定スペクトルを3つのピークに分離している。これらのピークは、低結合エネルギー側から、HfOのピーク、SiOのピーク、そして、吸着成分に含まれる酸素成分相当のピーク、の3つに分離できる。いずれのピークも結合エネルギーについては殆ど変化していない。
【0024】
上記で示した、Hf4fスペクトル<図3(3−1)>とO1sスペクトル<図3(3−4)>の分離ピークの時間変化がより明瞭にわかるように、2つを並べて示したものが、図4(4−1)(Hf4fスペクトル)、図4(4−2)(O1sスペクトル)である。とくに、右側に示した、図4(4−2)(O1sスペクトル)をみると、前述のように、いずれのピークも結合エネルギーについては殆ど変化していないが、3つの分離ピークのうち、最も高エネルギー側にある、吸着成分に含まれる酸素成分相当のピークのみにおいては、その高さや形状(検出カウント数の面積)が、X線照射時間の経過とともに減少していることが観察できる。他方、HfOのピークとSiOのピークの高さは、X線照射時間経過に対して、それについては殆ど変化を見出されない。
【0025】
また、X線照射時間に対する、この吸着成分に含まれる酸素成分相当のピークの高さや形状(検出カウント数の面積)における減少や変形(縮小)の程度が大きいと、図4(4−1)(Hf4fスペクトル)におけるHf4f7/2ピークの結合エネルギーの増大の程度が大きくなることがわかる。この場合、測定1回目と測定2回目との変化では、吸着成分に含まれる酸素成分相当のピークの高さや形状(検出カウント数の面積)における減少や変形が相対的に大きく、Hf4f7/2ピークの結合エネルギーも相対的に大きく増大している。他方、測定2回目と測定7回目との変化では、吸着成分に含まれる酸素成分相当のピークの高さや形状(検出カウント数の面積)における減少や変形の程度は相対的に小さく殆ど変化をしていない。他方、Hf4f7/2ピークの結合エネルギーの増大の程度も相対的に小さく殆ど変化をしていない。
【0026】
これらの測定結果は、次のように考えることができる。O1sスペクトルにおいて、最も高エネルギー側のピークは、前述のように、吸着成分に含まれる酸素成分相当のピークと同定できるが、ともに測定している、C1sスペクトル(図3(3−3))において、測定時間が経過しても、ここでの高さや形状に大きな変化が無いことから、この図4(4−2)の酸素成分相当のピークは、炭素(C)と酸素(O)に関わる、COのような結合状態のものとは考えられない。従って、試料表面に吸着され得る物質を考えたとき、これは、水あるいは−OHのような結合状態に相当する酸素成分ピークであると考えるのが妥当であろう。
【0027】
つまり、測定されたHf4f7/2ピークの結合エネルギーの増大変化の原因のひとつは、試料表面に付着した、水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分の吸着量などの変化に由来するものであると判断できる。この水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分の物質が試料表面に吸着した状態から、真空状態でのX線照射による測定時間の経過とともにこれが表面から徐々に減少し、これに伴って試料表面の帯電状態が変化し、その状態変化により、Hf4f7/2ピークの結合エネルギーの増大が観測される。表面の水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分の物質の吸着物の減少が消滅状態、あるいは最小の安定状態になった時点で、O1sスペクトルにおける最も高エネルギー側のピーク高と形状(検出カウント数の面積)の減少や変化(縮小)は停止し、Hf4f7/2ピークの結合エネルギーの増大も停止し、安定した結合エネルギーの測定が可能となる。
【0028】
逆に言えば、絶縁性や高抵抗性を有する試料の表面に、このような酸素成分物質(表面の水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分の物質)が吸着(付着)したとき、上述のようなX線照射継続に伴って、結合エネルギーの測定値の継続的変化が生じる。そこで、測定試料の扱う上で、試料表面にこのような酸素成分物質が吸着している可能性のある試料(とくに吸湿性の絶縁材料、あるいは吸湿環境状態にある試料など)では、帯電による測定中での結合エネルギーピークシフトの影響(測定誤差)を排除するように、このような酸素成分が離脱あるいは最小安定化し、測定上は、O1sスペクトルにおいて、前述の最も高エネルギー側のピークである酸素成分相当のピークの高さや形状(検出カウント数の面積)が消滅ないし最小状態で安定したことを確認して、Hf4f7/2ピークなどの結合エネルギーのシフトを終息状態にして、X線照射による所要のスペクトルを測定(XPS測定)することが重要で、こうして、測定中の結合エネルギー値のシフトを含まないスペクトルを得ることが可能となる。
【0029】
図5に示すものは、同一HfSiO試料の、他の測定表面位置(X線照射位置)、すなわち、場所Bで、X線照射の時間経過による結合エネルギー値の変化の様子を測定した結果である。図の見方や測定条件は、図3で示したものと同じであるが、測定位置のみが、場所Aから場所Bに変わったときのものである。そして、前と同様に、Hf4fスペクトル<図5(5−1)>とO1sスペクトル<図5(5−4)>の分離ピークの時間変化がより明瞭にわかるように、2つを並べて示したものが、図6(6−1)(Hf4fスペクトル)、図6(6−2)(O1sスペクトル)である。
【0030】
この場合、図6(6−2)(O1sスペクトル)の、水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分のピーク高さや形状(検出カウント数の面積)が、測定1回目のときから比較的高く無く(大きく無く)、(場所Aの、図4(4−2)の測定1回目での、水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分のピーク高さや形状(検出カウント数の面積)を参照)、測定2回目では若干高さや形状(検出カウント数の面積)が減少や変化するが、測定7回目でもその高さや形状(検出カウント数の面積)は全くと言ってよいほど変化が無い。他方、Hf4f7/2ピークの結合エネルギーは、測定1回目から測定2回目では高エネルギー側にシフトするが、その値は測定7回目ででも殆ど変化しないで安定状態となっている。これらのことから、場所Bは、前述の、水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分の物質の吸着が初めから比較的少ない状態で、短いX照射時間内に安定した表面状態になったものと考えられる。
【0031】
図4(場所A)、図6(場所B)に示した、同一のHfSiO試料を用いた、測定場所の違い(場所A、場所B)における、Hf4f7/2ピークの結合エネルギーのシフトの様子を、図7にまとめた。横軸はX線照射時間で、縦軸はHf4f7/2ピークの結合エネルギーである。水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分に相当すると考えられるピーク高さや形状(検出カウント数の面積)が大きいほど、X線照射初期の結合エネルギーが低く、X照射による測定時間が長くなるに従って、安定値に達するまでのシフトが大きい。逆に、水あるいは−OHのような結合状態の酸素成分に相当すると考えられるピーク高さや形状(検出カウント数の面積)が小さいほど、X線照射初期の結合エネルギーが高く、X照射による測定時間が比較的短くても、安定値に早く達し、シフト量も少ない。同一試料による測定であるため、安定的な測定状態では、いずれの場合でも同一のHf4f7/2ピークの結合エネルギー値を得ることができるのは当然である。
【0032】
以上の実施例の説明では、測定対象として、いわゆるhigh−k(高誘電率)材料のひとつであって、絶縁物であるHfSiOを用いた。絶縁物あるいは高抵抗物である、high−k材料は、今後の有力なゲート絶縁材料として考えられており、HfSiO以外に、HfO、HfON、HfAlON、ZrSiO、ZrAlON等々、各種検討されている。われわれはそれらの材料、すなわち、HfO、ZrO、AlOおよびこれらにSi、Nを付加した各種材料について、これまで述べてきた本発明になる化学結合状態測定法を適用し、再現性良い測定結果を得ることができた。
【0033】
とくにこれらの材料に関しては、構成元素比などの点で再現性良い膜形成が課題であり、それを評価するにはXPSは必須の化学結合状態測定手段あり、またそのときにおいて、従来は重要視されていなかった水などの付着物の影響を排除して、正確な測定を行えるようになったということは、これらの材料がとくに吸湿性の点でも配慮すべき材料である点においても非常に効果の高い測定方法であるといえる。
【0034】
以上の実施例を含む実施の形態に関し、以下の付記を開示する。
【0035】
(付記1)
被測定物の結合エネルギー値の測定によって前記被測定物の組成評価を行うX線光電子分光分析法を用いた化学結合状態測定法において、前記結合エネルギー値は、前記被測定物の表面吸着物の脱離ないし安定化の確認後の測定値であることを特徴とする化学結合状態測定法。
【0036】
(付記2)
前記確認は、前記X線光電子分光分析法による継続的な測定によって得られる前記表面吸着物に係る測定値の消滅ないし最小化状態の判定によることを特徴とする付記1記載の化学結合状態測定法。
【0037】
(付記3)
前記被測定物は絶縁物あるいは高抵抗材料であることを特徴とする付記1または2記載の化学結合状態測定法。
【0038】
(付記4)
前記表面吸着物は、水あるいは水酸基を有する物質に含まれる酸素に起因する物質であることを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の化学結合状態測定法。
【0039】
(付記5)
前記被測定物は、HfO、ZrO、AlOおよびこれらにSi、Nを付加した材料であることを特徴とする付記3記載の化学結合状態測定法。
【0040】
(付記6)
被測定物の化学結合のエネルギー値の測定法であって、
前記被測定物にX線を照射して、表面吸着物からの光を分析することにより表面吸着物の結合エネルギー値を複数回測定する工程と、
注目する測定による結合エネルギー値と、前回の測定における結合エネルギー値を比較する工程と、
結合エネルギー値間の差が所定の値より小さいときは、注目する測定における結合エネルギー値を前記被測定物の結合エネルギー値と判断する工程を備えることを特徴とする化学結合のエネルギー値の測定法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】あるHfSiO試料の結合エネルギーのX線照射時間に対する変化の測定例を示す図
【図2】HfSiO試料の位置AでのXPSスペクトルの測定例を示す図
【図3】図2の測定例をピーク分離したときの図
【図4】図3の一部を取り出したときの図
【図5】HfSiO試料の位置BでのXPSスペクトルの測定例のピーク分離したときの図
【図6】図5の一部を取り出したときの図
【図7】HfSiO試料の位置Aと場所Bでの結合エネルギーのX線照射時間に対する変化の比較をあらわす図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の結合エネルギー値の測定によって前記被測定物の組成評価を行うX線光電子分光分析法を用いた化学結合状態測定法において、前記結合エネルギー値は、前記被測定物の表面吸着物の脱離ないし安定化の確認後の測定値であることを特徴とする化学結合状態測定法。
【請求項2】
前記確認は、前記X線光電子分光分析法による継続的な測定によって得られる前記表面吸着物に係る測定値の消滅ないし最小化状態の判定によることを特徴とする請求項1記載の化学結合状態測定法。
【請求項3】
前記被測定物は絶縁物あるいは高抵抗材料であることを特徴とする請求項1または2記載の化学結合状態測定法。
【請求項4】
前記表面吸着物は、水あるいは水酸基を有する物質に含まれる酸素に起因する物質であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の化学結合状態測定法。
【請求項5】
前記被測定物は、HfO、ZrO、AlOおよびこれらにSi、Nを付加した材料であることを特徴とする請求項3記載の化学結合状態測定法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−8051(P2010−8051A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164064(P2008−164064)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】