説明

化粧板及び化粧板の製造方法

【課題】長期的なキャスターの使用に対する耐傷性と意匠性とに優れた化粧板を得る。
【解決手段】化粧板は、少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、接着層を介して木質薄単板を積層一体化する。接着層は、半硬化状態において木質薄単板が積層されることで、厚みが30μm以上でかつ75μm以下であり、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる基材側接着剤で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材として使用される化粧板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャスター付きの家具を移動させるときや家具を置く際に凹みが生じないように、合板上に突板が貼着された床材としての化粧板は知られている。このような床材を製造する方法として、例えば、特許文献1に示すように、木質基材の表面に樹脂を含浸させたMDF(中密度繊維板)を貼着し、このMDFの表面に木質薄単板を貼着してなる床材が提案されている。
【0003】
しかし、上記特許文献1の方法により製造された床材では、硬質プラスチック製や鉄製のキャスターを長期的に連続して摺動させて使用すると、固いキャスターにより硬質な木質薄単板がすり潰されて剪断破壊をおこしてしまい、木質薄単板が剥がれてしまうという問題が生じる。
【0004】
そこで、特許文献2に示すように、木質基材と木質薄単板との間にメラミン樹脂含浸紙等を介装させてホットプレスすることにより、耐傷性に優れた床材を得る方法が提案されている。この床材では、木質基材や樹脂含浸紙の上に塗布する接着剤としてSBR(スチレンブタジエンラバー)使用し、ホットプレスで接着剤に接着効果を発揮させることで、木質薄単板の剥離を抑制している。
【0005】
しかし、上記特許文献2の床材でも、熱硬化した樹脂含浸紙は極めて硬質であるため、通常の接着剤塗布量による製造条件においては、長期的なキャスターの使用により、やはり接着剤層の上の木質薄単板が層間剥離をおこして剥がれてしまうという問題が生じる。
【0006】
一方、長期的なキャスターの使用等に対する耐傷性に考慮した床材として、特許文献3に示すように、柔軟性のある接着剤を用いることで、応力を分散させて木質薄単板の剥離を抑制しようとするものがある。
【特許文献1】特開平4−214301号公報
【特許文献2】特開2004−216612号公報
【特許文献3】特開2003−211420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献3のように柔軟性のある軟質の接着剤により接着層を形成する場合、ある程度の厚みを有する接着層を形成することが困難であるという問題がある。単純に接着剤の塗布量を増やして接着層を厚くしようとすると、木質基材と木質薄単板との間から接着剤が染み出てしまったり、木質薄単板に接着剤が染み上がり、表面から余分な接着剤が染み出てきてしまい意匠性が悪いという問題がある。
【0008】
上記のように木質薄単板に接着剤が染み上がった化粧板(床材)に、ショットブラスト法による浮造り加工を施そうとすると、木質薄単板の接着剤が染み上がった部分を研削することができず、浮造り加工にムラが生じてしまい、化粧板の意匠性がよくないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長期的なキャスターの使用に対する耐傷性と意匠性とに優れた化粧板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る化粧板は、少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、接着層を介して木質薄単板が積層一体化された化粧板であって、上記接着層は、半硬化状態において木質薄単板が積層されることで、厚みが30μm以上でかつ75μm以下であり、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる基材側接着剤で構成されている。
【0011】
上記の構成によると、接着層が30〜75μmの厚みを有するとともに、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下で弾性を有することで、柔軟でかつ充分な厚みの接着層が木質基材と木質薄単板との間に介装されるので、長期的にキャスターを使用しても、その応力が分散されて木質薄単板の剥離が抑制される。
【0012】
また、基材側接着剤を半硬化状態とした後に木質薄単板を積層することで、接着層の厚みを確保しつつ、木質薄単板への基材側接着剤の染み上がりが抑制される。
【0013】
第2の発明に係る化粧板は、第1の発明に係る化粧板において、上記接着層と木質薄単板とが単板側接着剤により接合一体化されている。
【0014】
上記の構成によると、基材側接着剤による接着層と木質薄単板とが強固に接着される。
【0015】
第3の発明に係る化粧板は、第2の発明に係る化粧板において、上記単板側接着剤の木質薄単板への染み上がりが、該木質薄単板の厚みの50%以下とされている。
【0016】
上記の構成によると、木質薄単板の表面にまで単板側接着剤が染み上がって意匠性が劣ってしまうことがなく、また、ショットブラスト法により浮造り加工を施した場合でも、少なくとも木質薄単板の厚みの上半分には単板側接着剤が染み上がっていないので、浮造り加工にムラが生じない。
【0017】
第4の発明に係る化粧板は、第2又は第3の発明に係る化粧板において、上記木質薄単板の表面に、単板側接着剤の該木質薄単板の裏面からの染み上がり部分に到る深さまで、ショットブラスト法による浮造り加工が施される。
【0018】
上記の構成によると、ショットブラスト法により、木質薄単板の軟らかい部分を研削して凹部を形成する。このショットブラスト法とは、硬質で微細なブラスト研磨材を木質薄単板の表面に衝突させて、表面に微細な傷をつける加工のことであり、木質薄単板の軟らかい部分が少しずつ研削され、硬い部分が残る。
【0019】
このショットブラスト法による浮造り加工を施すとき、木質薄単板に接着剤が染み上がっている部分は研削されにくいが、木質薄単板への単板側接着剤の染み上がり部分まで浮造り加工を施すことで、単板側接着剤の染み上がり量を調整することにより浮造り加工の凹凸深さが決定される。
【0020】
第5の発明に係る化粧板の製造方法は、少なくも表面が硬質な木質基材の表面に、硬化状態で弾性を有する基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、上記基材側接着剤を半硬化させて接着層を形成する接着層形成工程と、上記接着層上に単板側接着剤を塗布する単板側接着剤塗布工程と、上記単板側接着剤が塗布された接着層上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、上記積層体を熱圧プレスして積層一体化することで、上記接着層の厚みが30μm以上でかつ75μm以下であるとともに該接着層の硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる化粧基材を得る熱圧プレス工程と、上記化粧基材の表面に化粧加工を行う化粧加工工程とを含む。
【0021】
上記の構成によると、木質基材表面に塗布した基材側接着剤を半硬化させて接着層を形成した後に単板側接着剤を塗布し、さらに木質薄単板を積層する。基材側接着剤が半硬化状態であるため、基材側接着剤の木質薄単板への染み上がりが抑制されるとともに、接着層の厚みが確保される。また、単板側接着剤により、接着層と木質薄単板とが強固に接着される。
【0022】
そして、木質基材と接着層と木質薄単板とが積層された積層体を熱圧プレスして積層一体化して化粧基材を得る。このとき、接着層は厚みが30μm以上でかつ75μm以下であり、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる、すなわち、硬化物がこのような状態になる基材側接着剤が使用される。このため、充分な厚みと柔軟性を有した接着層が介装された化粧板を得ることができ、長期的なキャスターの使用に対しても、木質薄単板の剥離が抑制される。
【0023】
第6の発明に係る化粧板の製造方法は、第5の発明に係る化粧板の製造方法において、上記単板側接着剤塗布工程の後に、上記単板側接着剤を半硬化させる半硬化工程をさらに含む。
【0024】
上記の構成によると、単板側接着剤を半硬化状態にした後に木質薄単板を積層することで、木質薄単板への単板側接着剤の染み上がりが抑制される。
【0025】
第7の発明に係る化粧板の製造方法は、少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、硬化状態で弾性を有する基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、上記基材側接着剤上に、該基材側接着剤よりも低粘度である単板側接着剤を塗布手段が接触しないように塗布する単板側接着剤塗布工程と、上記基材側接着剤及び単板側接着剤を半硬化させる半硬化工程と、上記単板側接着剤上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、上記積層体を熱圧プレスして積層一体化することで、上記基材側接着剤で構成された接着層の厚みが30μm以上でかつ75μm以下であるとともに該接着層の硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる化粧基材を得る熱圧プレス工程と、上記化粧基材の表面に化粧加工を行う化粧加工工程とを含む。
【0026】
上記の構成によると、基材側接着剤を半硬化させる前に塗布手段が接触しないように単板側接着剤を塗布し、第1及び単板側接着剤の両方を同時に半硬化させる。
【0027】
第8の発明に係る化粧板の製造方法は、第5から第7のいずれか1つの発明に係る化粧板の製造方法において、上記熱圧プレス工程の後、ショットブラスト法により、上記木質薄単板の表面に上記単板側接着剤の木質薄単板の裏面からの染み上がり部分に到る深さまで浮造り加工を施す浮造り加工工程をさらに含む。
【0028】
すなわち、上記ショットブラスト法による浮造り加工では、木質薄単板の単板側接着剤が染み上がった部分は研削されにくくなる。上記の構成によると、木質薄単板に単板側接着剤が染み上がった部分まで浮造り加工を施すことで、単板側接着剤の染み上がり量を調整して浮造り加工の凹凸深さが決定される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、木質薄単板の剥離を効果的に抑制して、長期的なキャスターの使用に対する耐傷性を向上させることができるとともに、意匠性に優れた化粧板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
[化粧板]
本発明の実施形態に係る化粧板は、木質基材と、木質基材の表面に接着層を介して貼着される木質薄単板とを備え、床材として使用されるものである。
【0032】
(木質基材)
木質基材は、少なくとも表面が硬質な木質基材で構成されていれば、例えば木材でもよいし、インシュレーションボードやMDF、ハードボード等の木質繊維板でもよいし、合板、パーティクルボードでもよい。
【0033】
木質基材の表面を硬く強化する強化方法としては、単純に、表層にメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂やイソシアネート系樹脂を含浸させてもよいし、メラミン樹脂含浸紙、フェノール樹脂含浸紙等の各種樹脂含浸紙による強化層を表層に設けてもよい。また、樹脂含浸紙に代えて、木粉や木質繊維、木質切片等を主体とし、これらを各種樹脂とともに混練成形した硬質の人工樹脂木材や、MDF、ハードボード等の木質繊維板等の硬質な木質基材で表面強化してもよい。
【0034】
また、合板等の表面にMDFやハードボード等の硬質木質基材を貼着してもよい。この場合、MDFやハードボード等は樹脂含浸強化されたものでもよい。
【0035】
いずれの場合でも、軟質な木質基材表面が長期的かつ連続的なキャスターの使用に耐え得るように強化されている必要がある。
【0036】
(接着層)
上記接着層は、厚みが30〜75μmであって、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下である、弾性を有する基材側接着剤の硬化物で構成されている。このように、接着層が充分な厚みと弾性とを有することにより、キャスターの長期的かつ連続的な荷重に対しても、木質薄単板の剥離を抑制することができる。
【0037】
また、基材側接着剤で構成される接着層と木質薄単板とを強固に接着させるために、これらは単板側接着剤により接合一体化されることが好ましい。単板側接着剤の塗布量は、木質薄単板への染み上がりを抑制するために必要最低限の量であることが好ましい。さらに、詳細は後述するように、単板側接着剤を半硬化状態にした後に木質薄単板を積層し、木質基材と木質薄単板とが積層された積層物を熱圧プレスして積層一体化する際に、単板側接着剤は所望の強度が実現できるものが好ましく、さらに染み上がりを抑制することができる。
【0038】
上記基材側接着剤と単板側接着剤とは、同じ接着剤であってもよいし、異なる種類の接着剤であってもよいが、少なくとも基材側接着剤が、その硬化物の硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となり、弾性を有するものであればよい。
【0039】
上記基板側又は単板側接着剤の木質薄単板への染み上がりは、木質薄単板の厚みの50%以下であることが好ましい。染み上がり量をこのように抑えることにより、後述するショットブラスト法による浮造り加工を効果的に行うことができる。
【0040】
基材側接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ラテックス系樹脂、ゴム系樹脂、ビニルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの変性樹脂、これらの樹脂と尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂等との混合物等が好適に用いられる。
【0041】
さらに、基材側接着剤の塗布量を増やすために、各種増粘剤や増量剤を添加して高粘度にすることが好ましい。増粘剤としては、例えば小麦粉やポバール等が使用される。また増量剤としては、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン等が使用される。
【0042】
また、基材側接着剤には、木質基材の隠蔽性を向上させるために、各種顔料が添加されて着色されていてもよい。
【0043】
単板側接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ラテックス系樹脂、ゴム系樹脂、ビニルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの変性樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂等及びこれらの樹脂の混合物等が好適に用いられる。
【0044】
単板側接着剤は弾性を有するものが好ましいが、その硬化物が著しく脆くて硬い性質のものではない限り、どのようなものでも使用することができる。好ましくは、酢ビ系樹脂やラテックス系樹脂にエポキシ系樹脂やメラミン系樹脂等を配合した強度と柔軟性とに考慮したものがよい。また、単板側接着剤は、基材側接着剤で構成された接着層と木質薄単板とを強固に接着するために、強接着性を有することが好ましい一方、基材側接着剤に比して低粘度のものであってもよい。
【0045】
上記接着剤には、適宜硬化剤を添加して硬化性を促進させる。硬化剤としては、熱反応型や紫外線硬化型等を適宜選択すればよく、これらを組み合わせてもよい。また、硬化剤は、接着剤を半硬化させる程度の比較的低温の熱で反応する硬化剤と、接着剤を半硬化させる工程では反応せず、熱圧プレス工程で反応するような硬化剤とを併用することが好ましい。
【0046】
本発明の化粧板は、基材側接着剤で厚膜な接着層を形成し、木質基材に木質薄単板を積層する前に、基材側接着剤を半硬化状態とする。このため、接着層を熱硬化により半硬化状態にするためには、大掛かりなドライヤー設備が必要となるため、紫外線硬化型の硬化剤を添加し、紫外線照射により瞬時に半硬化状態とすることが好ましい。
【0047】
単板側接着剤も、木質薄単板への染み上がりを効果的に制御するために、半硬化状態にした後に木質薄単板を積層することが望ましい。また単板側接着剤も紫外線硬化特性を有することで、紫外線照射により半硬化状態とし、化粧板を効率よく生産することができる。
【0048】
(木質薄単板)
木質薄単板としては、天然木質材や、これらの積層物をスライスした薄切片を使用することができる。天然木質材は、針葉樹、広葉樹、いわゆる早生樹等、どのようなものでも使用することができる。また、天然木質材の積層物をスライスしたものとは、いわゆる人工突板といわれるものである。
【0049】
また、木質薄単板には、乾燥単板や生単板(いわゆる濡れ単板)を使用することができる。木質薄単板の厚みが厚すぎると、硬くなるだけでなく、単板自体の耐干割れ性が悪くなってしまうので、木質薄単板の厚みは、0.15〜1.0mm程度が好ましく、後の浮造り工程を考慮すると、より好ましくは、0.25〜0.6mm程度の厚みがよい。
【0050】
[製造方法]
次に、上記化粧板の製造方法について説明する。
【0051】
(基材側接着剤塗布工程)
まず、上記木質基材に基材側接着剤を塗布する。基材側接着剤を塗布する手段としては、フローコーター又はロールコーターが好適に用いられる。この基材側接着剤によって、30〜75μmの厚みの接着層が形成されるように塗布する。
【0052】
(接着層形成工程)
次に、上記基材側接着剤を半硬化状態として接着層を形成する。
【0053】
基材側接着剤は、通風ドライヤー乾燥により半硬化状態とすることが一般的である。ドライヤーの温度は40〜60℃程度が好ましく、木質基材の盤面温度が80℃以上にならないようにする。木質基材の盤面が80℃以上になると、積層体を熱圧プレスする工程の前に接着剤が硬化してしまうからである。
【0054】
紫外線照射により半硬化状態とする場合に使用する設備は、使用する光開始剤の種類により適宜選択する。具体的には、メタルハライドランプ、無電極方式のDランプ、Vバルブ、Qバルブ、Mバルブ、パルスUV方式等を使用する。
【0055】
(単板側接着剤塗布工程)
上記接着層上に単板側接着剤を塗布する。なお、この単板側接着剤は、基材側接着剤を半硬化状態とする前に塗布してもよい。少なくとも木質薄単板を積層する前に基材側接着剤が半硬化状態となっていればよい。
【0056】
上記基材側接着剤を半硬化状態とした後に、単板側接着剤を塗布する場合には、塗布手段は特に限定されない。目的とする単板側接着剤の塗布量に応じた塗布方法を選択すればよく、例えば、ロールコーターやフローコーター、スプレー等が好適である。
【0057】
一方、基材側接着剤を乾燥させず半硬化状態となる前に単板側接着剤を塗布する場合には、塗布方法は塗布手段が接着層上に接触しない非接触方式に限定される。例えば、フローコーターやスプレー等の方式に限定される。
【0058】
(半硬化工程)
上記基材側接着剤を半硬化させた後に単板側接着剤を塗布した場合、次に、単板側接着剤を半硬化状態とする。単板側接着剤を半硬化状態とする方法は、上述した基材側接着剤を半硬化状態とする方法と同じであるが、この際、基材側接着剤が硬化状態とならないようにする。
【0059】
一方、上記基材側接着剤を半硬化状態とする前に単板側接着剤を塗布した場合には、基材側接着剤と単板側接着剤とを一緒に半硬化させる。これらを半硬化状態とする方法も上記基材側接着剤を半硬化状態とする方法と同じである。
【0060】
なお、この単板側接着剤を半硬化させずに木質薄単板を載置してもよいが、木質薄単板への単板側接着剤の染み上がりを抑制するためには、単板側接着剤を半硬化状態としてから木質薄単板を載置することが好ましい。
【0061】
(積層工程)
少なくとも基材側接着剤が半硬化状態で、次の木質薄単板の載置が行われる。
【0062】
半硬化状態の基材側接着剤、半硬化状態又は未硬化状態の単板側接着剤上に木質薄単板を載置して積層体を得る。載置した木質薄単板は仮固定してもよい。仮固定の方法としては、高周波等で仮固定部分の水分を飛ばし、単板側接着剤を固化させる方法が好適に用いられる。
【0063】
(熱圧プレス工程)
次に、上記積層体を積層一体化して化粧基材を得るために、積層体を熱圧プレスする。熱圧プレスの方法は、一般的なロールプレスや平板プレス等、様々な方法があるが、好ましくは平板プレスが使用される。熱圧プレスは、100〜130℃でかつ0.2〜1.0MPaの条件下で、30〜90秒程度行われる。これにより、基材側接着剤及び単板側接着剤が完全に硬化され、接着層の厚みが30μm以上でかつ75μm以下であるとともに、接着層の硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となり、積層体が積層一体化される。
【0064】
このとき、単板側接着剤の木質薄単板への染み上がりは、木質薄単板の厚みの50%以下となっている。
【0065】
(浮造り加工工程)
次に、上記化粧基材の表面に、ショットブラスト法による浮造り加工を施す。ショットブラスト法とは、硬質で微細なブラスト用研磨材を木質薄単板の表面に衝突させて表面に微細な傷をつける加工である。これにより、木質薄単板の軟らかい部分が研削され、硬い部分が残り、表面に凹凸を有する化粧基材を得ることができる。
【0066】
ブラスト用研磨材としては、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ケイ素質等の無機質粒子、アルミナ等の金属粒子、胡桃や桃の種等を粉砕した硬質有機粒子、あるいはドライアイスを細かく粉砕したドライアイス粒子等が用いられる。このようなブラスト用研磨材をノズルから噴出させ、化粧基材の表面に衝突させて浮造り加工を施す。なお、化粧基材には浮造り加工を施さなくてもよい。
【0067】
(化粧加工工程)
最後に、上記浮造り加工が施された化粧基材や、面均一に研削された化粧基材の表面に透明性樹脂塗料を塗布し、これを硬化させて透明性樹脂塗膜を形成する化粧加工を施して化粧板を得る。
【0068】
[実施形態の効果]
このように、本発明の実施形態に係る化粧板は、接着層が30μm以上でかつ75μm以下の厚みを有し、タイプAデュロメーターで30°以下の硬度となり弾性を有するので、柔軟でかつ充分な厚みを有する接着層が木質基材と木質薄単板との間に介装されることになり、長期的かつ連続的にキャスターを使用しても、その応力が分散されて木質薄単板の剥離を効果的に抑制することができる。
【0069】
また、基材側接着剤を半硬化状態とした後に木質薄単板を積層するので、接着層の厚みを確保しつつ、木質薄単板への基材側接着剤の染み上がりを抑制することができる。
【0070】
また、接着層と木質薄単板とを単板側接着剤により接合一体化するので、接着層と木質薄単板とが強固に接着されて、化粧板の凹み等をより効果的に抑制することができる。
【0071】
また、基材側接着剤の木質薄単板への染み上がりを抑制するとともに、単板側接着剤の木質薄単板への染み上がりの抑制も考慮することで、この化粧板にショットブラスト法により浮造り加工を施した場合に、ムラが生じにくくなり、意匠性に優れた化粧板を得ることができる。
【0072】
また、単板側接着剤の木質薄単板への染み上がりを木質薄単板の厚みの50%以下とすることで、木質薄単板の表面への単板側接着剤の染み上がりがないだけでなく、ショットブラスト法による浮造り加工の際、より確実にムラの発生を抑制することができ、意匠性により一層優れた化粧板を得ることができる。
【0073】
さらに、木質薄単板への単板側接着剤の染み上がり部分まで浮造り加工を施すことによって、単板側接着剤の染み上がり量を調整することで浮造り加工の凹凸深さを決定することができるので、効果的に浮造り加工を施すことができる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
厚さ9mmの針葉樹合板の表面に、厚さ2.7mmのMDFをビニルウレタン系接着剤で、コールドプレスによって貼着し、木質基材を得た。
【0075】
上記木質基材のMDFの表面に、基材側接着剤として変性酢ビ系接着剤95重量部に対してイソシアネート系接着剤5重量部を混合したものを塗布した。基材側接着剤の樹脂分率は約50%とし、その塗布量は15g/尺とした。この基材側接着剤を硬化させた硬化物の硬度をショア硬度計(タイプA)で測定すると25°であった。
【0076】
上記基材側接着剤を塗布した木質基材を80℃で1分間通風乾燥させ、常温になるまで通風冷却し、基材側接着剤を半硬化状態とした接着層を形成した。
【0077】
そして、接着層の上に、単板側接着剤としてアクリル系樹脂40重量部に対して、メラミン系樹脂59重量部及び増粘剤1重量部を混合したものを塗布し、80℃で10分間通風乾燥させ、常温になるまで通風冷却した。単板側接着剤の樹脂分率は約50%とし、その塗布量は10g/尺とした。
【0078】
上記単板側接着剤を塗布した接着層の上に、厚さ0.35mmの木質薄単板としてのホワイトオーク生単板を積層して積層体を得た。そして、この積層体を120℃で0.8MPa圧力下で60秒のプレススケジュールで熱圧プレスして化粧基材を得た。
【0079】
上記のようにして得た化粧基材の表面には、全く接着剤の染み上がりがなかった。
【0080】
そして、化粧基材の表面を均一に厚さ0.05mmだけワイドベルトサンダーで研削し、透明性樹脂塗料を塗布して透明性樹脂塗膜を形成し、化粧板を得た。
【0081】
上記のようにして得た化粧板の断面を顕微鏡観察すると、接着層の厚さは約30μmであった。
【0082】
上記化粧板に対して耐キャスター試験を行った。耐キャスター試験とは、直径50mmの鉄製の単輪キャスター上に25kgの荷重を載せ、300m長さを500回往復させる試験である。キャスターの移動速度は、約2秒/往復とし、試験後の化粧板表面の凹み量の測定と、状態の目視確認とを行う。
【0083】
上記耐キャスター試験の試験結果は、化粧板表面の凹み量は最大で0.1mmであり、木質薄単板の剥離も確認されなかった。
【0084】
(実施例2)
上記実施例1で得られた化粧基材の表面に、ショットブラスト法により浮造り加工を施した。この浮造り加工により、柔らかい導管以外の部分が優先的に研削され、硬い導管部分が残り、凹凸感に優れた外観を持つ化粧基材を得ることができた。この化粧基材の表面を研磨剤が含まれたスポンジで研磨した後、透明樹脂塗料を塗布して透明樹脂塗膜を形成し、美麗な化粧板を得た。
【0085】
上記のようにしてられた化粧板に対しても耐キャスター試験を行った。500回往復させた後には、木質薄単板の剥離等の問題は確認されなかった。
【0086】
(比較例1)
比較例1の化粧板は、基材側接着剤が尿素メラミン樹脂系接着剤60重量部に対して、変性酢ビ系接着剤40重量部を混合したものである点で上記実施例1の化粧板と異なり、他は実施例1と同じ構成であり、同じ製造方法により化粧板を得た。接着層の強度を測定すると80°であった。
【0087】
上記耐キャスター試験を行った結果、300回往復させた時点で、木質薄単板の剪断破壊が確認され、MDFと木質薄単板との間の接着層が界面剥離をおこしていた。
【0088】
(比較例2)
比較例2の化粧板は、上記比較例1において、基材側接着剤の塗布量を35g/尺とし、この基材側接着剤を乾燥させずに、つまり半硬化状態とせず、また単板側接着剤を使用せずに、0.35mmのホワイトオーク生単板を積層して積層体を得た。この積層体を120℃で0.8MPaの圧力下で60秒のプレススケジュールで熱圧プレスして化粧基材を得た。
【0089】
この場合、木質基材と木質薄単板との間から接着剤がはみ出ただけでなく、木質薄単板の表面に、かなりの量の接着剤の染み上がりが確認された。
【0090】
上記化粧基材の表面を均一に0.05mmだけワイドベルトサンダーで研削し、透明性樹脂塗料を塗布して透明性樹脂塗膜を形成し、化粧板を得た。
【0091】
上記化粧板の表面を顕微鏡で観察したところ、接着層は厚みが均等でなく、また平均した厚みは7μmであった。
【0092】
また、上記化粧板に対して耐キャスター試験を行った。試験結果は500回往復させた後で、表面の凹みは最大で0.15mm程度であった。また、接着層と透明性樹脂塗膜との間の木質薄単板の剪断破壊が発生していた。
【0093】
(比較例3)
上記比較例2で得られた化粧基材の表面に、ショットブラスト法により浮造り加工を施した。木質薄単板の接着剤が染み上がっている部分がほとんど研削されず、浮造り加工にムラが生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、床材として利用される化粧板及びその製造方法について有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、接着層を介して木質薄単板が積層一体化された化粧板であって、
上記接着層は、半硬化状態において木質薄単板が積層されることで、厚みが30μm以上でかつ75μm以下であり、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる基材側接着剤で構成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
請求項1の化粧板において、
上記接着層と木質薄単板とが単板側接着剤により接合一体化されていることを特徴とする化粧板。
【請求項3】
請求項2の化粧板において、
上記単板側接着剤の木質薄単板への染み上がりが、該木質薄単板の厚みの50%以下とされていることを特徴とする化粧板。
【請求項4】
請求項2又は3の化粧板において、
上記木質薄単板の表面に、単板側接着剤の該木質薄単板裏面からの染み上がり部分に到る深さまでショットブラスト法による浮造り加工が施されていることを特徴とする化粧板。
【請求項5】
少なくも表面が硬質な木質基材の表面に、硬化状態で弾性を有する基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、
上記基材側接着剤を半硬化させて接着層を形成する接着層形成工程と、
上記接着層上に単板側接着剤を塗布する単板側接着剤塗布工程と、
上記単板側接着剤が塗布された接着層上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、
上記積層体を熱圧プレスして積層一体化することで、上記接着層の厚みが30μm以上でかつ75μm以下であるとともに該接着層の硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる化粧基材を得る熱圧プレス工程と、
上記化粧基材の表面に化粧加工を行う化粧加工工程とを含むことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
請求項5の化粧板の製造方法において、
上記単板側接着剤塗布工程の後に、上記単板側接着剤を半硬化させる半硬化工程をさらに含むことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項7】
少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、硬化状態で弾性を有する基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、
上記基材側接着剤上に、該基材側接着剤よりも低粘度である単板側接着剤を塗布手段が接触しないように塗布する単板側接着剤塗布工程と、
上記基材側接着剤及び単板側接着剤を半硬化させる半硬化工程と、
上記単板側接着剤上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、
上記積層体を熱圧プレスして積層一体化することで、上記基材側接着剤で構成された接着層の厚みが30μm以上でかつ75μm以下であるとともに該接着層の硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる化粧基材を得る熱圧プレス工程と、
上記化粧基材の表面に化粧加工を行う化粧加工工程とを含むことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つの化粧板の製造方法において、
上記熱圧プレス工程の後、ショットブラスト法により、上記木質薄単板の表面に上記単板側接着剤の木質薄単板裏面からの染み上がり部分に到る深さまで浮造り加工を施す浮造り加工工程をさらに含むことを特徴とする化粧板の製造方法。

【公開番号】特開2009−67034(P2009−67034A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241102(P2007−241102)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】