説明

化粧箔

転写印刷で作成される化粧箔を提供する。化粧箔の構造は、プライマ層の上に化粧層、更に当該化粧層の表面を覆うように塗布後硬化して形成された熱または放射線による硬化性樹脂層を有するものであり、上記化粧層は、スパッタリング法等で形成された金属薄膜層を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば、建物の外壁、住宅の玄関扉などの建築部材、自動車の外装・内装、車両・船舶の外装・内装、看板・サインなどに意匠として鏡面効果を必要とする場合に好適に使用可能な化粧箔及びその製造方法ならびにこれにより修飾された自動車用部品に関する。
【背景技術】
例えば、建物の外壁、住宅の玄関扉などの建築部材、看板・サインなどの意匠性を高めるために、着色などの化粧が施された化粧シートを貼付したり、化粧済みの化粧箔を基体に接着させたりすることがある。
従来、作業効率の良く作成できる意匠性に優れた化粧箔として、離型シートの離型面にインキによって印刷され、離型面に対して離型性を有する印刷層と、熱硬化性樹脂塗料、電子線硬化性樹脂塗料、放射線硬化性樹脂塗料、紫外線硬化性樹脂塗料からなる群より選ばれた1種の硬化性樹脂塗料が前記印刷層の表面を覆うように塗布後硬化されて形成された塗膜層とからなる箔本体を備える化粧塗装箔が提案されている(特開2001−1483号公報)。
上記技術によれば、意匠性、対磨耗性等に優れた化粧箔を接着または粘着させることで、作業現場において簡単に基体に化粧を施すことができる。
ここで、上記技術を用いて、化粧箔に金属光沢を有する化粧を施そうとした場合には、印刷工程においてバインダ成分を含む金属顔料を印刷し、印刷層を形成することとなる。
ところが、この方法によって得られる化粧箔は、得られた印刷層は個々の金属粒子がバインダ成分により結合しているだけなので、金属による鏡面効果を欲した場合であっても、金属粒子の乱反射により、意匠としてはメタリック調となってしまうことから、めっき調を有する化粧箔を得ることはできなかった。
ここで、メタリック調とは金属粉顔料を含む塗料を塗って、塗膜に金属面の感じを与えることをいう。一方、めっき調とは金属薄膜の反射によって得られる乱反射のない均一な金属面の感じを与えることをいう。
また、印刷工程によって、金属を有する層を均一に印刷するためには、印刷層の厚さを10μm以下にすることは困難であった。従って上記技術では、透明でありつつ、金属の反射効果を有するような意匠性の高い化粧箔を作成できなかった。
そこで、上記技術の製造方法を用いて、めっき調の効果を有する化粧箔を得るためには、上記印刷工程において、上記文献において開示されている下地層といわれる層のみ印刷し、その後、電解メッキ法や、一般的な金属薄膜形成方法を用いて金属の薄膜層を形成することが考えられる。
ところが、電解メッキ法を用いるためには、印刷用離型シートを導電性シートとする必要があり、また下地層が電解溶液中に溶解しないようにする必要があり、更に装置も大掛かりなものとなってしまうため、経済的に採算が合わない。
一方、金属薄膜法により、単純に下地層上に金属薄膜形成方法によって金属薄膜を形成させようとしても、例えばスパッタリング法や蒸着法においては、下地層がスパッタされた金属や蒸発した金属をはじくため、金属薄膜層を形成できなかった。これを例えばスパッタリング法においてイオン粒子の加速エネルギーを上げることで解決しようとした場合、スパッタされた金属粒子は下地層を通り越して、印刷用の離型シートに直接金属が積層するため、化粧箔に金属薄膜層を転写することができず、結局そのような化粧箔を得ることができなかった。
従って、上記技術で得られる化粧箔では、特に意匠性としてのめっき調の効果が必要とされる自動車のミラー部分やバンパー部分、また自動車のボディ本体等の車両・船舶の外装・内装等に用いることが困難であった。
本発明の目的は、前記事情を鑑みて行われたものであり、特開2001−1483号で開示されている技術によって製作される、意匠性、耐擦傷性、及び作業現場での作業性に優れる化粧箔が、特にめっき調となる効果を必要とするものである場合に好適な化粧箔及びその製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明の化粧箔は、プライマ層の上に化粧層、更に当該化粧層の表面を覆うように塗布後硬化して形成された熱または放射線による硬化性樹脂層とを少なくとも有している化粧箔において、上記化粧層が、金属薄膜層を有していることを特徴とする化粧箔である。
なお、本発明において、放射線とは、紫外線などの電磁波、電子線、粒子線のことである。
更に上記化粧箔において、上記プライマ層が、印刷用離型シートによって転写形成された離型面に対して離型性を有しているものである化粧箔である。
また更に、上記化粧箔において、プライマ層中に、架橋剤を含んでいることを特徴とする化粧箔である。
また更に、上記化粧箔において、金属薄膜層の厚さが10μm未満である化粧箔である。
また本発明は、請求の範囲1記載の化粧箔が接着された自動車用部品である。
なかでも、プライマ層の上に化粧層としての金属薄膜層を有し、更に当該化粧層の表面を覆うように塗布後硬化して形成された熱または放射線による硬化性樹脂層を少なくとも有している化粧箔を、当該化粧箔のプライマ層側に接着剤を塗布し、化粧塗膜として車体の表面に接着されている自動車である。
また、本発明の化粧箔を用いた3次元成型用無塗装フィルムである。
更に、このような化粧箔を効率良く製造できる製造法として、少なくとも離型シートの離型面に印刷され、印刷によって架橋剤を含む離型性を有するプライマ層を形成する第一の工程と、スパッタリング法によりプライマ層上に金属薄膜層としての化粧層を形成する第二の工程と、離型面と反対側の面に、プライマ層と化粧層を離型シートに添設した状態で、熱または放射線硬化性樹脂塗料を塗布する第三の工程と、塗布された硬化性樹脂塗料を硬化させて硬化性樹脂層を形成する第四の工程とを備えている化粧箔の製造方法である。
また、上記製造方法のうち、スパッタリング法によりプライマ層上に金属薄膜層としての化粧層を形成する工程に替えて、蒸着法によりプライマ層上に金属薄膜層としての化粧層を形成する工程を用いた当該化粧箔の製造方法である。
本発明の化粧箔および化粧箔の製造方法は上記の通りであるから、特開2001−1483号公報で開示された技術では作成できなかった、めっき調の意匠効果を有する化粧箔や更に透明でありつつ、金属光沢を有する化粧箔等意匠性の高い化粧箔を提供できる。またかかる化粧箔の効率的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る実施形態例における化粧箔を示す断面図である。
第2図は、本発明に係る実施形態例における化粧箔の製造方法を工程順に示す断面図である。
第2(a)図は、本発明に係る実施形態例における化粧箔製造方法の第一の工程を示す断面図である。
第2(b)図は、本発明に係る実施形態例における化粧箔製造方法の第二の工程を示す断面図である。
第2(c)図は、本発明に係る実施形態例における化粧箔製造方法の第三の工程を示す断面図である。
第2(d)図は、本発明に係る実施形態例における化粧箔製造方法の第四の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に係る第1の実施形態例の化粧箔を、図1及び図2を参照しながら説明する。この化粧箔10は、プライマ層11と化粧層12、更に当該化粧層12の表面を覆うように塗布後硬化して形成された熱または放射線による硬化性樹脂層13とを少なくとも有しているものである。化粧層12は、金属薄膜層を有している。またプライマ層11中には架橋剤が含まれることになる。
プライマ層11は、印刷用離型シート24によって転写形成された離型面に対して離型性を有していることが望ましい。従って印刷用離型シート24との剥離性がよく、かつその後化粧層として形成される金属の薄膜を積層しやすい特性を有していることが必要とされる。例えば、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることができる。また、相溶性がある樹脂同士の場合はこれらの樹脂を混合し、または複層にして用いることもできる。
一方、表面張力の小さいシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂は、離型シートの材質を選択することで離型シートとの離型性は確保できるものの、以下に説明する架橋材を添付しても金属薄膜を形成するのは困難であるため、適当ではない。
プライマ層11の厚さは、特に限定されないが、0.3μm〜50μm程度が好ましく、更に好ましくは1μm〜10μmである。すなわち、プライマ層の厚さが厚すぎると、化粧箔の可撓性が悪くなり、凹凸のある基材面の場合、化粧箔を基体に巧く沿わせることができなくなるおそれがある。一方、薄すぎると印刷用離型シートとの離型性が悪くなる。
上記プライマ層11には、めっき調の意匠効果のある金属薄膜層を積層させるための架橋剤が含まれている。架橋剤の例として、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルミキレート系架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤を含ませることで、なぜ金属薄膜層を積層できるかについて詳しいメカニズムは分かっていない。ひとつの考え方として挙げるならば、架橋剤を含ませることにより、プライマ層を構成する分子鎖が立体的構造をつくるために、分子鎖がつくる立体的構造中に金属粒子が捕捉されやすくなっているのではないかと考えられる。
化粧層12は硬化性樹脂層13側から見てめっき調の意匠効果が現れるようにするために、金属をスパッタリング法または蒸着法等の一般的金属薄膜形成方法によって積層させることにより、金属薄膜層である化粧層12を形成させることができる。この場合、これらの方法で金属薄膜を形成できる金属であれば、金属の種類は特に限定されるものではない。特にスパッタリング法によれば低蒸気圧金属であっても積層することができるので金属の種類を問わず使用することができる。その一例として、クロム、アルミニウム、チタン、金、銀等の金属を挙げることができる。また複数の金属の種類を用いて、合金とすることもできる。金属の種類を選択することにより、金属自身色彩による無色または有色の金属光沢を得ることができる。
化粧層12の厚さは、特に制限されるものではない。ただし、化粧層として金属薄膜を用いた場合、金属薄膜の厚さは、数μm程度でめっき調の意匠効果が得られるため、厚さ10μm以上積層する必要はない。スパッタリング法や蒸着法によって化粧層を形成した場合、印刷法では困難な厚さ10μm未満の厚みにすることが容易にできる。このことから、このため、例えば厚さを0.1μm以下に抑えて、透明でありながら、金属の反射効果を有する特徴的な意匠を作成することもできる。
また金属薄膜形成工程において、特定形状の積層遮断板を用いることで、必要とする形状の部分にめっき調意匠効果を有する層を形成することができる。
更に化粧層12を、金属薄膜層の上にインキによる印刷方法による印刷層を設けた層とすることもできる。この場合、転写されることにより、使用に際して、硬化性樹脂層13側から見て、金属薄膜層と金属薄膜層のない部分から見える印刷層とによる意匠とすることができる。印刷層に用いるインキとしては、離型シートの離型面に印刷可能で、公知のインキを用いることができ、例えばアクリル樹脂系のもの、フッ素樹脂系のもの、無機系のものなどが挙げられる。この工程においては、金属薄膜層を積層した後、印刷工程を行なうことになるため、フッ素系樹脂等でも用いることができる。
熱または放射線硬化性樹脂層13に用いる樹脂としては、無溶剤型の硬化性樹脂であれば公知のものが使用できるが、たとえば、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ビニル基などの2重結合を有する光重合性のオリゴマー(たとえば、ウレタンアクリレート樹脂など)と、モノマー(たとえば、トリプロピレングリコールジアクリレートなど)の単体もしくは混合物を種成分とするものが好ましい。また、化粧層12の模様等が明確に見えるという意匠性の観点からは、硬化性樹脂層13は透明であることが望ましい。ただし、硬化性樹脂層13に着色成分を含有させ、有色透明とすることができる。その際、使用する着色成分としては公知の顔料等を用いることができる。
さらに、必要に応じて、硬化性樹脂層13中に添加剤として、紫外線吸収剤、他の光安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填剤、有機系充填剤、紫外線吸収能や近赤外線吸収能を有する酸化チタン、酸化亜鉛、ITOなどの金属(複合)酸化物微粒子等を添加することもできる。
また、硬化性樹脂層13を複数の層で構成することもできる。この場合、複数の層に、それぞれ別の着色成分を含有させることもできる。硬化性樹脂層13が複数の層から構成され、その複数の層がそれぞれ別の着色成分を含有していると、意匠性をさらに向上させることができる。また、硬化性樹脂層の表面に更に金属薄膜層を形成して使用することもできる。
硬化性樹脂層13の厚さは、5〜500μm、好ましくは10〜300μmの範囲である。樹脂層13の厚さが5μm未満であると化粧層の保護効果が不十分になる。一方、500μmを超えると、化粧箔の可撓性が低くなり、取扱性が低下することがある
硬化性樹脂層13の形成方法は、特に限定されないが、たとえば、バーコート法、ロールコート法、エアードクターコート法、ブレードコート法、スクイズコート法、エアーナイフコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、トランスファーコート法、ファウンテンコート法、スリットダイコート法或いはリップダイコート法等によって化粧層表面に硬化性樹脂組成物を所定の厚さに塗布する工程を経たのち、硬化性樹脂組成物を加熱し、または硬化性樹脂組成物に紫外線、電子線、放射線等を照射する方法が挙げられる。樹脂に電子線硬化性樹脂を用いる場合、用いられる電子線照射装置は、特にその方式を限定するものではなく、例えばバンデグラーフ型スキャニング方式、ダブルスキャニング方式、およびカーテンビーム方式のような電子線照射装置を使用することが出来、これらの中でも比較的安価で電子線の照射出力の大きい、カーテンビーム方式が好ましい。塗布膜厚によって必要加速電圧を選択する。電子線照射雰囲気は、窒素中等の、酸素やオゾン等を含有しない不活性ガス中とする。
また、電子線照射の際の加速電圧は100〜500kVであることが好ましい。電子線の透過率を上げるため、250kV以上のほうがより好ましい。電子線の吸収線量は、電子線硬化性樹脂組成物に所望の硬化を施すことができるものであればよく、特に限定するものではないが、一般的には、0.1〜7Mradであり、好ましくは0.2〜5Mradである。吸収線量が0.1Mrad未満の場合には、電子線照射量による電子線硬化性樹脂組成物の硬化が不十分になることがある。また吸収線量が7Mradを越えると、シート状基材を劣化させたり、変色させたりすることがあり、またエネルギーの無駄でもある。
硬化性樹脂層13の表面を保護フィルムで覆うこともできる。保護フィルムとしては、硬化性樹脂層13に対する易剥離性を有し、硬化性樹脂層13を構成する樹脂とマイグレートしにくい材料であれば、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムが挙げられ、これらの樹脂フィルムをベースとして硬化性樹脂層13側の面に離型剤を塗布された離型層を備えたものでも構わない。
印刷用離型シート24としては、プライマ層11が容易に剥離するものであれば、特に限定されないが、例えば、上質紙、コート紙、キャストコート紙、アート紙などの紙基体、合成紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどのフィルム状合成樹脂シート、ポリエチレンのようなポリオレフィン樹脂で片面あるいは両面にラミネートを施したラミネート紙等や、これらをベース層としてこのベース層の離型面側に離型剤によって離型層を形成したもの、コロナ処理等によって離型性を調整したもの等が挙げられる。すなわち、プライマ層に対して適度の接着性があり、剥離時に容易に剥離できるように離型性を調整できていればよい。
硬化樹脂層と化粧層との密着性を増加させるために、化粧層12と硬化樹脂層13との間に、第2のプライマ層を形成することもできる。第2のプライマ層に用いる樹脂は限定されないが、特にアクリル系オリゴマーからなる放射線硬化型樹脂の硬化物および/またはアクリル系樹脂を25重量%以上含有させて物を用いた場合、耐候性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐薬品性に優れ、収縮率が小さい化粧箔や化粧シートを提供することができる。
当該化粧箔10のプライマ層11側に、更に粘着層を設け、この粘着層に保護のための剥離シートを粘着させた化粧シートとすることもできる。粘着層を構成する粘着剤としては、公知の粘着剤が使用できる。例えば、アクリル重合体と粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤Jが挙げられる。剥離シートは、粘着剤が接着しないものであれば制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム系のシート、シリコーンなどの離型剤がコーティングされた上質紙、クラフト紙などの紙系のシートを挙げることができる。
使用にあたっては、化粧箔の場合には、印刷用の離型シートを剥がした化粧箔10のプライマ層11に接着剤を塗布するかまたは化粧箔10を貼り付ける基体表面に接着剤を塗布した後、基体表面に密着するように添設し、接着剤を介して基体表面に接着一体化させることにより行なう。
またこの化粧箔は、ブロー成型法、インサートモールド工法、フィルムインモールド工法、SMC成型法、PFM工法等の3次元成型法に用いる無塗装フィルムとして使用することもできる。
一方、化粧シートの場合には、剥離シートを剥がし、基体上に粘着させることにより行なう。
(製造方法)
次に本発明である化粧箔10を簡便に作製するのに好適な製造方法について、図2を参照しつつ詳しく説明する。
製造の前段階として、上述のようにプライマ層21を構成する樹脂に架橋剤を混合する必要がある。混合方法は通常の方法を用いることができる。混合割合としては、樹脂に対する架橋剤の実質割合が0.02%から6%程度であることが好ましい。架橋剤の割合が少なすぎると、金属薄膜層を積層する事ができない。架橋剤の割合が大きすぎると印刷用離型シートから剥離しにくくなる。
本発明における化粧箔10製造の第一の工程では、図2(a)に示すように、まず、印刷用離型シート24の表面に対する上記架橋剤の混合したプライマ層を構成する樹脂を印刷してプライマ層21を作成する。
第二の工程では、図2(b)に示すように、第一の工程で得られたものを、印刷用離型シートごと真空状態において、スパッタリング法にて、プライマ層21上に化粧層22としての金属薄膜層を積層させる。このときの真空度は、通常の金属薄膜の積層する場合の条件で足りるため、10−1Pa程度の真空度で行うことができる。積層速度は金属の種類にもよるが、0.1μm/分〜20μm/分程度が望ましい。あまり積層速度が速いとスパッタされた金属粒子がプライマ層21を通り越して、印刷用離型シート24上に直接金属が積層するので適当でない。一方、あまりに積層速度が遅いと作用効率の面で劣る。
また、上記第二の工程に替えて、蒸着法を第二の工程とすることもできる。図2(b)に示すように、第一の工程で得られたものを、印刷用離型シートごと真空状態において、蒸着法にて、プライマ層21上に化粧層22としての金属薄膜層を積層させる。このときの真空度は、通常の金属薄膜の積層する場合の条件で足りるため10−3Pa程度の真空度で行うことができる。積層速度は金属の種類にもよるが、0.1μm/分〜5μm/分程度が望ましい。あまり積層速度が速いと蒸発金属がプライマ層21を通り越して、印刷用離型シート24上に直接金属が積層するので適当でない。一方、あまりに積層速度が遅いと作用効率の面で劣る。
また、ここで化粧層22を、金属薄膜層と印刷層とで構成するには、金属薄膜層の上に、公知の印刷工程にて塗料を含んだ樹脂を金属薄膜層の表面に印刷することにより、印刷層を形成させることができる。
更に化粧箔を第2のプライマ層を有する構成とする場合には、化粧層22の表面に第2プライマ層の構成樹脂成分を塗布し、第2プライマ層を形成させることによって行なう。
第三の工程では、図2(c)に示すように、第二の工程で得られたものに、熱または放射線硬化型の樹脂を塗布する。例えば、電子線硬化樹脂を用いた場合には、硬化性樹脂層23を形成することになる無溶剤型電子線硬化性樹脂塗料23´を化粧層22の上から塗布する。
第四の工程では、図2(d)に示すように、第三の工程で得られた未硬化樹脂を硬化させる。例えば、第三の工程で例示した無溶剤型電子線硬化性樹脂塗料23´を用いた場合には、これを未硬化の状態で電子線照射装置内に入れ、電子線照射を行うことで、無溶剤型電子線硬化性樹脂塗料23´を硬化させて硬化樹脂層23を作成する。
上記の製造工程を経て得られたものから印刷用離型シート24を剥がすと化粧箔10が得られる。この化粧箔10を粘着型の化粧シートにするためには、粘剥離シートに粘着剤を塗布し、化粧箔のプライマ層側にこの剥離シートを貼り付け、転写粘着させることにより行なう。この状態で、50℃、3日間放置すれば、本発明の化粧箔を利用した化粧シートが得られる。
以上説明したような製造方法で得られる化粧箔は、意匠性、耐擦傷性、及び作業現場での作業性に優れ、かつめっき調の効果を必要とする場合に好適な化粧箔であるため、壁、柱、扉などの建築部材用、看板・サイン用のみならず、自動車のミラー部分やバンパー部分、また自動車のボディ本体等、車両・船舶の外装・内装等に好適に用いることができる。
【実施例】
以下に、本発明の実施例を詳しく説明する。
【実施例1】
アクリル樹脂に芳香族系イソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、商品名「L−55E」)を架橋剤として実質割合で1%混合した。厚さ32μmの未処理ポリエステルフィルム(東洋紡社製)の表面に剥離補助層を設けた離型シートの離型面全面に、当該架橋剤を含む樹脂成分をプライマ層として厚さ4μmにベタ印刷した。
つぎに、このシートをスパッタリング装置の中に入れ、2×10−1Pa真空中にして、積層速度10μm/分で、このプライマ層の上に銀をスパッタリング法で1μm積層させ化粧層とした。この化粧層を積層したシートを取り出し、化粧層の上に透明の無溶剤型の電子線硬化性樹脂塗料(サンユーペイント社製のウレタンアクリレート樹脂とトリプロピレンクリコールジアクリレートの混合物を主成分とするもの)をグラビアコート法で75μmの厚みになるように塗布した。
この電子線硬化性樹脂塗料の上に、すりガラス調の凹凸面を有する厚さ32μmのポリエステルエンボスフィルム(東洋紡社製)を保護フィルムとして凹凸面側が電子線硬化性樹脂塗料に沿うように添設した状態で、窒素ガス雰囲気の電子線照射装置(日新電機社製カーテンビーム方式)中に入れ、250kVの加速電圧で4Mradの電子線を照射し、硬化させることにより硬化樹脂層を形成し、化粧箔を得た。そして、化粧箔の印刷用離型シートを剥がし、露出したプライマ層にアクリル系樹脂接着剤を塗布し、接着剤を介して基材である木質ボードの表面に接着一体化したのち、保護フィルムを取り除いて、化粧ボードを得た。
得られた化粧ボードは、硬化樹脂層からみて、めっき調に仕上がり、銀色の均一な金属光沢を有していた。
【実施例2】
実施例1のスパッタリング工程に代えて、蒸着法により化粧層を形成し、その他は同様の工程とした。蒸着開始前の真空度は3×10−3Paとし、積層速度2μm/分とした。次にアクリル系粘着剤(ビッグテクノス(株)製、商品名「X−0589」)を化粧箔の露出したプライマ層に塗布し、粘着層を形成した。これをPET基体に粘着させ、化粧ボードを得た。得られた化粧ボードは、スパッタリング法の工程を用いた場合と同等程度に、めっき調に仕上がり、銀色の均一な金属光沢を有するものであった。
(比較例1)
実施例1の製造工程において、架橋剤を含まないアクリル樹脂をプライマ層として、スパッタリング工程を行った。しかしながら、プライマ層上に銀の積層は見られなかった。
(比較例2)
実施例2の製造工程において、架橋剤を含まないアクリル樹脂をプライマ層として、蒸着工程を行った。しかしながら、プライマ層上に銀の積層は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明の化粧箔おいては、特開2001−1483号公報で開示された作業性の良い化粧箔では実現できなかった、めっき調の意匠効果を持たせた化粧箔とすることができるため、更に意匠性を高めることができ、このことから、壁、柱、扉などの建築部材用、看板・サイン用のみならず、自動車のミラー部分やバンパー部分、また自動車のボディ本体等、車両・船舶の外装・内装等に好適に利用することができる。更にインモールド工法等3次元成型法の無塗装フィルムとしても用いることができ、この工法により、自動車の車体に化粧を施すこともできる。
【図1】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマ層の上に化粧層、更に当該化粧層の表面を覆うように塗布後硬化して形成された熱または放射線による硬化性樹脂層とを少なくとも有している化粧箔において、
上記化粧層が、金属薄膜層を有している化粧箔。
【請求項2】
上記プライマ層が、印刷用離型シートによって転写形成された離型面に対して離型性を有しているものである請求の範囲1記載の化粧箔。
【請求項3】
上記プライマ層中に、架橋剤を含んでいることを特徴とする請求の範囲1記載の化粧箔。
【請求項4】
上記化粧層のうち、金属薄膜層の厚さが10μm未満である請求の範囲1の化粧箔。
【請求項5】
請求の範囲1記載の化粧箔が接着された自動車用部品。
【請求項6】
プライマ層の上に化粧層としての金属薄膜層を有し、更に当該化粧層の表面を覆うように塗布後硬化して形成された熱または放射線による硬化性樹脂層を少なくとも有している化粧箔を、当該化粧箔のプライマ層側に接着剤を塗布し、化粧塗膜として車体の表面に接着されている自動車。
【請求項7】
請求の範囲1記載の化粧箔を用いた3次元成型用無塗装フイルム。
【請求項8】
少なくとも、印刷用離型シートの離型面に印刷され、印刷によって架橋剤を含む離型性を有するプライマ層を形成する第一の工程と、スパッタリング法によりプライマ層上に金属薄膜層としての化粧層を形成する第二の工程と、離型面と反対側の面に、プライマ層と化粧層を離型シートに添設した状態で、熱または放射線硬化性樹脂塗料を塗布する第三の工程と、塗布された硬化性樹脂塗料を硬化させて硬化性樹脂層を形成する第四の工程とを備えている化粧箔の製造方法。
【請求項9】
少なくとも、印刷用離型シートの離型面に印刷され、印刷によって架橋剤を含む離型性を有するプライマ層を形成する第一の工程と、蒸着法によりプライマ層上に金属薄膜層としての化粧層を形成する第二の工程と、離型面と反対側の面に、プライマ層と化粧層を離型シートに添設した状態で、熱または放射線硬化性樹脂塗料を塗布する第三の工程と、塗布された硬化性樹脂塗料を硬化させて硬化性樹脂層を形成する第四の工程とを備えている化粧箔の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/073974
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568464(P2004−568464)
【国際出願番号】PCT/JP2003/001740
【国際出願日】平成15年2月18日(2003.2.18)
【出願人】(500585890)
【出願人】(595164073)
【Fターム(参考)】