説明

医用画像処理システム

【課題】 被験者を撮像して得られた医用画像において、任意の位置を指定した場合に、その位置に関する情報を得ることが可能な医用画像処理システムを提供する。
【解決手段】 診断対象画像上、標準テンプレートそれぞれについて3つの断面画像が表示された状態で、利用者により、診断対象画像のいずれかの断面画像上において位置が指定されると、指定された断面画像上においては、位置を示す十字線の中心を指定された位置に移動するとともに、他の2つの断面画像については、指定された位置に対応する断面画像を表示する。一方、指定された位置に対応する診断対象画像の座標を標準テンプレートの座標に変換し、その座標に対応する3つの断面画像を表示する。さらに、標準テンプレートの座標で、部位情報記憶手段を参照し、その座標に対応する部位名を取得して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI等の撮像装置で撮像した医用画像に関し、特に、被験者の医用画像における特定の位置に関する情報を得るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)などの撮像装置を用いて患者の臓器を撮像し、撮像された画像から異常のある部位を確認することや、画像に対して統計的な画像処理を行うことで萎縮のある部位を判定することが、診断支援として役立っている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、こうした撮像装置で撮像された画像は、機種、設定、撮像時の体位、患者の個人差などにより解剖学的な位置が一致せず、その点を考慮した上で複数の画像を見比べることが課題となっていた。これを解決するため、出願人は、患者の撮像画像と標準テンプレートの関係から、患者の撮像画像における関心領域(regions of interest:ROI)を特定する技術を提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第4025823号公報
【特許文献2】特開2007−209583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、標準テンプレートにおける特定部位を変換して、患者の撮像画像側に表現できるのみであり、患者の撮像画像を任意に指定して、その箇所がどういう部位であるかを表現することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、被験者を撮像して得られた医用画像において、任意の位置を指定した場合に、その位置に関する情報を得ることが可能な医用画像処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明第1の態様では、診断対象とする患者の画像である診断対象画像上で指定した任意の位置に関する情報を標準的な画像である標準テンプレート上に示すシステムであって、前記診断対象画像と、前記標準テンプレートを利用して、前記診断対象画像から前記標準テンプレートへの空間的な順変換規則、および前記標準テンプレートから前記診断対象画像への空間的な逆変換規則を求める変換規則算出手段と、前記診断対象画像および前記標準テンプレートを表示する画像表示手段と、前記表示された診断対象画像または標準テンプレート上の任意の位置を指定する位置指定手段と、前記位置指定手段により指定された位置に対応する診断対象画像または標準テンプレート上の座標を認識し、前記順変換規則または逆変換規則を用いて他方の画像における座標を算出する座標変換手段と、を有し、前記画像表示手段は、前記指定された位置を所定の形式で表示するとともに、前記座標変換手段により算出された他方の画像の位置を所定の形式で表示する医用画像処理システムを提供する。
【0007】
本発明第1の態様によれば、診断対象画像と標準テンプレート間の空間的変換規則を求め、この空間的変換規則を用いて、診断対象画像、標準テンプレートのどちらか一方の画像上で指定された位置を他方の画像上の位置に変換して表示するようにしたので、被験者を撮像して得られた医用画像において、任意の位置を指定した場合に、その位置に関する情報を得ることが可能となる。
【0008】
また、本発明第2の態様では、本発明第1の態様において、医学的な部位の名称である部位名を前記標準テンプレートの座標と対応付けて記憶した部位情報記憶手段をさらに有し、前記画像表示手段は、前記指定された位置に基づいて得られた標準テンプレートの座標に対応する部位名を前記部位情報記憶手段から抽出して表示することを特徴とする。本発明第2の態様によれば、診断対象画像上で任意の位置を指定した場合であっても、その位置に対応した標準テンプレートの座標を介してその部位名が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被験者を撮像して得られた医用画像において、任意の位置を指定した場合に、その位置に関する情報を得ることが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(1.システム構成)
図1は、本発明に係る医用画像処理システムの一実施形態を示す構成図である。図1において、10は診断対象画像記憶手段、20は標準テンプレート記憶手段、30は変換規則算出手段、40は位置指定手段、50は座標変換手段、60は画像表示手段である。
【0011】
診断対象画像記憶手段10は、被験者をMRI等の撮像装置で撮像した撮像画像を記憶したものである。標準テンプレート記憶手段20は、健常者を撮像した撮像画像を1以上用いて、作成した標準的な画像である標準テンプレートを記憶したものである。部位情報記憶手段70は、標準テンプレートの座標と対応付けて臓器の医学的な名称である部位名を記憶したものである。診断対象画像記憶手段10、標準テンプレート記憶手段20、部位情報記憶手段70は、コンピュータに内蔵または接続されたハードディスク等の記憶装置により実現される。
【0012】
変換規則算出手段30は、診断対象画像と標準テンプレートの位置関係を求めるための空間的変換規則を算出する。具体的には、診断対象画像上の各座標に対応する標準テンプレート上の座標を求めるための空間的変換規則である順変換規則、標準テンプレート上の各座標に対応する診断対象画像上の座標を求めるための空間的変換規則である逆変換規則の双方を算出する。
【0013】
位置指定手段40は、画像表示手段60に表示された診断対象画像、標準テンプレートにおける任意の位置を指定するものであり、マウスやキーボード等の入力機器を用いて実現される。座標変換手段50は、位置指定手段40により指定された診断対象画像または標準テンプレート上における位置を標準テンプレートまたは診断対象画像上の位置に変換する。画像表示手段60は、診断対象画像、標準テンプレートの断面画像を表示するとともに、位置指定手段40により指定された診断対象画像または標準テンプレート上の位置、および座標変換手段50により変換された標準テンプレートまたは診断対象画像上の位置を所定の形式で表示するものであり、液晶ディスプレイ等の表示装置を用いて実現される。図1に示したシステムは、キーボード、マウス等の入力機器、ハードディスク等の記憶装置、液晶ディスプレイ等の表示装置を備えた汎用のコンピュータに、上記各手段を実現させるための専用のプログラムを組み込むことにより実現される。
【0014】
ここで、本実施形態で用いる医用画像である診断対象画像、標準テンプレートについて説明する。本発明では、医用画像として、人間の体内の様々な臓器を撮像した画像を用いることができるが、本実施形態では、脳を撮像して得られた脳画像を用いた場合を例にとって説明する。図2は、脳全体とその一部を切り出したスライス画像(断面画像)のイメージを示す図である。本実施形態では、被験者の脳全体をMRI装置で撮像することにより得た脳画像を診断対象画像としており、具体的には、図2に示すようなスライス画像が100〜200枚のT1強調MRI画像として実現される。図2に示すように、スライス画像の最小単位はボクセルで表現する。ボクセルは、「厚さ」を持つ画像の座標単位であり、2次元画像におけるピクセルに相当する。断面画像としては、Coronal(冠状断面)、Sagittal(矢状断面)、Axial(横断面)の3つが得られるが、図2には、Axialの断面画像を示している。
【0015】
標準テンプレート記憶手段20に記憶された標準テンプレートも、診断対象画像と同様にボクセル表現の脳画像である。標準テンプレートの座標系としては、MNI(Montreal Neurological Institute)座標系、Talairach座標系等を用いることが可能であるが、本実施形態では、MNI座標系を用いている。標準テンプレートとしては、多くの健常者の平均画像や、ある1人の健常者の画像を用いる。
【0016】
図3は、部位情報記憶手段70に記憶された部位情報の一例を示す図である。図3に示すように、部位情報記憶手段70には、MNI座標系における座標、Talairach座標系における座標に対応付けて部位名が記憶されている。例えば、図3の例では、(-20,0,-32)は海馬傍回(parahippocampal gyrus)が対応付けられている。また、部位名は、MNI座標系ではなく、Talairach座標系の座標に対応付けて、Talairach座標系の座標から部位名を特定する形態としても良い。
【0017】
(2.処理動作)
次に、図1に示した医用画像処理システムの処理動作について説明する。医用画像処理システムが起動された後、診断対象画像記憶手段10に記憶された診断対象画像のうち処理を行う診断対象画像が指定されると、変換規則算出手段30は、標準テンプレート記憶手段20に記憶された標準テンプレートとの比較を行い、診断対象画像、標準テンプレートで互いの位置関係を求めるための空間的変換規則を算出する。具体的には、診断対象画像上の各座標に対応する標準テンプレート上の座標を求めるための空間的変換規則である順変換規則、標準テンプレート上の各座標に対応する診断対象画像上の座標を求めるための空間的変換規則である逆変換規則の双方を算出する。
【0018】
変換規則算出手段30は、まず、指定された診断対象画像に対して、解剖学的標準化処理を行う。解剖学的標準化とは、各個人間に存在する脳画像の解剖学的な違いを吸収するために、脳全体に対する大局的な補正と、部分的な大きさに対する局所的な補正を行うものである。標準テンプレートは、解剖学的標準化が行われた画像であるので、解剖学的標準化を行うことにより同時に標準テンプレートとの位置合わせが行われる。
【0019】
具体的には、図4に処理の特徴を概念的に示すように、線形変換と非線形変換を用いて、標準テンプレート記憶手段20から読み出した標準テンプレートと解剖学的な位置を一致させる画像処理を行なう。この解剖学的標準化処理では、初めに線形変換による位置や大きさ、角度の大局的な補正を行ない、次に非線形変換によって局所的な凹凸等の形状の補正を行なう。
【0020】
線形変換(アフィン変換)では、空間的位置と角度の補正を行なう。具体的には、診断対象画像と、標準テンプレートとの誤差の平方和が最小となるような4種類の変換パラメータを、x、y、z方向それぞれについて求める。4種類の変換パラメータとしては、図5に示すような平行移動、回転、拡大縮小、シアーがある。求められたパラメータを用い、診断対象画像をアフィン変換することにより、診断対象画像を、位置や大きさ等が予め設定されている標準テンプレートに対して、空間的な位置合わせを実現することができる。又、非線形変換は、x 方向、y 方向それぞれについてDCT(離散コサイン変換)の低周波成分によって構成される変形場を推定し、この変形場によって元画像の変換を行なうものである。このような線形変換、非線形変換は、特許文献1にも開示されているように公知のものである。上記のような解剖学的標準化により得られた線形変換における4種類の変換パラメータ、非線形変換における変形場が空間的な順変換規則となる。
【0021】
逆変換規則の求め方は公知の種々の手法を用いることができるが、本実施形態では、図6、図7に示すような最も単純な手法を用いる。実際の画像は3次元であるが、わかりやすくするため、図6、図7では2次元の画像で説明する。まず、順変換規則に関して、線形変換および非線形変換のパラメータを使用して診断対象画像上の有限の座標に対する標準テンプレートの座標の対応関係を求める。図6における矢印が診断対象画像の座標から標準テンプレートの座標への対応関係を意味する。例えば、診断対象画像の座標(1,1)は標準テンプレートの座標(1,1.3)に対応している。また、ここでは診断対象画像上の整数座標のみ対応関係を求めている。
【0022】
図7は、標準テンプレートの座標から診断対象画像の座標との対応関係を求める手法を示している。例として、標準テンプレート座標n(2,2)の座標を求めたい場合は、図6に示した診断対象画像の座標と標準テンプレートの座標の対応関係を利用する。座標nの周囲の点であるa、b、c、dに関しては、診断対象画像の座標がわかっているので、線形変換によって座標nに対応する診断対象画像の座標を推測することができる。
【0023】
また、解剖学的標準化としては、「K.J. Friston, J. Ashburner, C.D. Frith, J.-B. Poline,J.D. Heather, and R.S.J. Frackowiak Spatial Registration and Normalization of Images.Human Brain Mapping 2:165-189(1995)」、「J. Ashburner, P. Neelin, D.L. Collins, A.C. Evans and K. J. Friston Incorporating Prior Knowledge into Image Registration.NeuroImage 6:344-352 (1997)」、「J. Ashburner and K. J. Friston Nonlinear Spatial Normalization using Basis Functions.Human Brain Mapping 7(4):in press (1999)」等に記載の手法を用いることも可能である。なお、本実施形態においては、解剖学的標準化は、実際に診断対象画像に対して空間的変換を行う必要はなく、空間的変換規則を求めるだけで良い。
【0024】
解剖学的標準化の前処理として、特許文献1に記載のように灰白質抽出を行っても良い。また、解剖学的標準化の前処理として、特許文献1に記載のように画像平滑化を行っても良い。
【0025】
変換規則算出手段30により変換規則が算出された後、画像表示手段60は、診断対象画像および標準テンプレートの断面画像を表示する。上述のように、断面画像としては、Coronal(冠状断面)、Sagittal(矢状断面)、Axial(横断面)の3種類の画像を用いる。図8に示すように、標準テンプレートについては、画面右側に、MNI座標の原点(0,0,0)を基準としたCoronal、Sagittal、Axialの3断面画像が表示される。図8の標準テンプレートでは、Coronalはy=0の断面画像、Sagittalはx=0の断面画像、Axialはz=0の断面画像をそれぞれ示している。また、Coronal、Sagittal、Axialの各断面画像上に示されている十字線は、他の2つの断面画像における断面の位置を示している。すなわち、Coronalにおける縦方向の点線はx=0、横方向の点線はz=0を示し、Sagittalにおける縦方向の点線はy=0、横方向の点線はz=0を示し、Axialにおける縦方向の点線はx=0、横方向の点線はy=0を示している。したがって、図8に示した標準テンプレートのCoronal、Sagittal、Axialいずれの断面画像においても十字線の交点は原点(0,0,0)を示している。MNI座標とTalairach座標は異なる座標系であるが、それぞれの原点は等しいので、十字線の交点はTalairach座標の原点(0,0,0)も示している。図8に示すように、画面右側下部には、画面右側上部に表示されている標準テンプレートの断面画像の位置が、MNI座標、Talairach座標で数値表示される。
【0026】
続いて、座標変換手段50が、標準テンプレート上におけるMNI座標の原点(0,0,0)に対応する診断対象画像上の点を求める。具体的には、座標変換手段50が、変換規則算出手段30により求められた逆変換規則を利用する。ここで使用する逆変換規則は、標準テンプレートの座標から診断対象画像の座標を求めるものである。この結果、標準テンプレート上のMNI座標原点(0,0,0)に対応する診断対象画像上のボクセルが特定される。例えば、ここでは、MNI座標原点(0,0,0)に対応する診断対象画像上のボクセルとして、ボクセル(0,11,14)が特定されたとする。すると、画像表示手段60は、ボクセル(0,11,14)に対応した診断対象画像のCoronal、Sagittal、Axialの3断面画像を表示する。
【0027】
図8の診断対象画像では、Coronalはy=11の断面画像、Sagittalはx=0の断面画像、Axialはz=14の断面画像をそれぞれ示している。また、Coronal、Sagittal、Axialの各断面画像上に示されている十字線は、標準テンプレートの場合と同様、他の2つの断面画像における断面の位置を示している。すなわち、Coronalにおける縦方向の点線はx=0、横方向の点線はz=14を示し、Sagittalにおける縦方向の点線はy=11、横方向の点線はz=14を示し、Axialにおける縦方向の点線はx=0、横方向の点線はy=11を示している。したがって、図8に示した診断対象画像のCoronal、Sagittal、Axialいずれの断面画像においても十字線の交点はボクセル(0,11,14)を示している。図8に示すように、画面左側下部には、画面左側上部に表示されている診断対象画像の断面画像の位置が、数値表示される。
【0028】
続いて、画像表示手段60は、標準テンプレートのMNI座標もしくはTalairach座標で部位情報記憶手段70を参照し、標準テンプレート上の原点位置が示す部位を特定する。この場合、標準テンプレートのMNI座標とTalairach座標は、対応する関係にあるので、どちらの座標を用いて部位情報記憶手段70を参照するようにしても良い。図8の例では、MNI座標原点(0,0,0)に対応する部位名は、「前交連(AC)」となる。
【0029】
画像表示手段60は、部位情報記憶手段70を参照して得られた部位名を表示する。従って、画面の部位欄には、図8に示すように「前交連(AC)」と表示される。以上のような処理により、初期状態では、図8に示すように、画面右側上部には、原点に対応した標準テンプレートの3つの断面画像が表示され、画面右側下部には、MNI座標、Talairach座標、部位が表示され、画面左側上部には、標準テンプレートの原点に対応した位置における診断対象画像の3つの断面画像が表示され、画面左側下部には、標準テンプレートの原点に対応した診断対象画像のボクセル座標が数値表示される。
【0030】
図8のような初期画面が表示された状態で、利用者は、位置指定手段40により、標準テンプレート、診断対象画像のCoronal、Sagittal、Axial計6つの断面画像のうちいずれかの任意の位置を指定することができる。具体的には、マウス等を用いていわゆるクリックをすることにより指定を行う。ここでは、6つの断面画像のうち、標準テンプレートのSagittal画像上の位置を指定した場合を例にとって説明する。利用者により標準テンプレートのSagittal画像上で位置指定が行われると、画像表示手段60は、指定された位置に対応する標準テンプレートのMNI座標を認識し、指定された位置のy座標の値でスライスしたCoronalの断面画像、指定された位置のz座標の値でスライスしたAxialの断面画像を表示する。Sagittal画像上で位置指定した場合、x座標は変更されないため、Sagittal画像は位置指定前と変更はない。
【0031】
一方、利用者により標準テンプレートのSagittal画像上で位置指定が行われると、座標変換手段50は、標準テンプレート上における指定位置に対応する診断対象画像上の点を求める。具体的には、図8に示した初期画面の生成時と同様、変換規則算出手段30により求められた空間的逆変換規則を利用する。この結果、標準テンプレート上のMNI座標原点(0.00,-58.00,-24.00)に対応する診断対象画像上のボクセルが特定される。すると、画像表示手段60は、標準テンプレート上のMNI座標原点(0.00,-58.00,-24.00)に対応して特定されたボクセル(0,41,30)に対応した診断対象画像のCoronal、Sagittal、Axialの3断面画像を表示する。
【0032】
図9の診断対象画像では、Coronalはy=41の断面画像、Sagittalはx=0の断面画像、Axialはz=30の断面画像をそれぞれ示している。また、Coronal、Sagittal、Axialの各断面画像上に示されている十字線は、初期画面の場合と同様、他の2つの断面画像における断面の位置を示している。すなわち、Coronalにおける縦方向の点線はx=0、横方向の点線はz=30を示し、Sagittalにおける縦方向の点線はy=41、横方向の点線はz=30を示し、Axialにおける縦方向の点線はx=0、横方向の点線はy=41を示している。したがって、図9に示した診断対象画像のCoronal、Sagittal、Axialいずれの断面画像においても十字線の交点はボクセル(0,41,30)を示している。
【0033】
ここでは、標準テンプレートのSagittal画像上の位置を指定した場合を例にとって説明したが、Coronal画像、Axial画像上の位置を指定するようにしても良い。Coronal画像上の位置を指定した場合には、標準テンプレートのy座標は変化せずに、x座標とz座標が変化する。Axial画像上の位置を指定した場合には、標準テンプレートのz座標は変化せずに、x座標とy座標が変化する。
【0034】
また、標準テンプレート上の位置を指定するのではなく、診断対象画像のCoronal、Sagittal、Axialいずれかの断面画像上の位置を指定しても良い。診断対象画像のいずれかの断面画像が指定された場合には、画像表示手段60は、指定された位置に対応するボクセル座標を認識し、そのボクセル座標に対応する他の2つの断面画像を表示するとともに、指定された断面画像においては、指定された位置に十字線の交点を移動する。
【0035】
続いて、座標変換手段50は、診断対象画像上における指定位置に対応する標準テンプレートの座標を求める。具体的には、変換規則算出手段30により求められた順変換規則を利用する。この結果、診断対象画像上のボクセル(0,41,30)に対応する標準テンプレート上のMNI座標(0.00,-58.00,-24.00)が特定される。すると、画像表示手段60は、診断対象画像上のボクセル(0,41,30)により特定されたMNI座標(0.00,-58.00,-24.00)に対応した標準テンプレートのCoronal、Sagittal、Axialの3断面画像を表示する。
【0036】
続いて、画像表示手段60は、特定されたMNI座標(0.00,-58.00,-24.00)で、部位情報記憶手段70を参照し、標準テンプレート上のMNI座標が示す部位を特定する。図9の例では、MNI座標(0.00,-58.00,-24.00)に対応する部位名は、「小脳」となる。次に、対応位置提示手段60は、部位情報記憶手段70を参照して得られた部位名を表示する。従って、画面の部位欄には、図9に示すように「小脳」と表示される。以上のような処理により、図8に示したようなMNI原点に対応した初期状態から、図9に示すような指定位置に対応した状態に変化する。
【0037】
診断対象画像、標準テンプレートにおける位置の指定は、断面画像上でなく、座標を直接数値入力することにより行っても良い。診断対象画像のボクセル値が数値入力された場合には、座標変換手段50が、診断対象画像における入力されたボクセル座標に対応する標準テンプレート上の点を、順変換規則を利用して求める。また、標準テンプレートのMNI座標値またはTalairach座標値が数値入力された場合には、座標変換手段50が、標準テンプレートにおける入力されたMNI座標値またはTalairach座標値に対応する診断対象画像上の点を、逆変換規則を利用して求める。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、診断対象画像の比較対象を、多くの健常者の平均画像や、ある1人の健常者の画像である標準テンプレートとしたが、他の被験者の診断対象画像を比較対象としても良い。比較対象として他の被験者の診断対象画像を用いた場合、2つの診断対象画像を比較することになる。このように異なる被験者の診断対象画像同士を比較することにより、2者の解剖学的な位置関係を確認することが可能となる。また、比較対象として同一被験者の異なる日時における診断対象画像であっても良い。このように同一被験者の異なる日時における診断対象画像同士を比較することにより、機種、設定、撮像時の体位等が異なる場合に、2者の解剖学的な位置関係を確認することが可能となる。比較対象として同一または異なる被験者の診断対象画像を用いた場合は、画面の下部に表示される座標数値はどちらもボクセル座標となる。
【0039】
また、上記実施形態では、診断対象画像と標準テンプレートの両方の断面画像を画像表示手段60により表示し、一方の画像における指定位置に対応する他方の画像における位置を表示するようにしたが、標準テンプレートの画像を表示せず、診断対象画像のみ表示し、診断対象画像における指定位置の部位を表示するようにしても良い。この場合、医用画像処理システム100は、画像表示手段60が標準テンプレートの断面画像を表示する処理を省略する以外は、上記実施形態と同一の処理を行う。この場合の表示画面の例を図10に示す。標準テンプレートの断面画像を表示しない場合でも、診断対象画像上において指定した任意の位置の部位名を知ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る医用画像処理システムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】脳全体とその一部を切り出したスライス画像(断面画像)のイメージを示す図である。
【図3】部位情報記憶手段70に記憶された部位情報の一例を示す図である。
【図4】解剖学的標準化の概念を示す図である。
【図5】アフィン変換の特徴を示す概念図である。
【図6】診断対象画像の座標から標準テンプレートの座標への対応関係を示す図である。
【図7】標準テンプレートの座標から診断対象画像の座標との対応関係を求める手法を示す図である。
【図8】画像表示の初期画面を示す図である。
【図9】断面画像上における位置指定後の画面を示す図である。
【図10】標準テンプレートを表示しない場合の位置指定後の画面を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10・・・診断対象画像記憶手段
20・・・標準テンプレート記憶手段
30・・・変換規則算出手段
40・・・位置指定手段
50・・・座標変換手段
60・・・画像表示手段
70・・・部位情報記憶手段
100・・・医用画像処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象とする患者の画像である診断対象画像上で指定した任意の位置に関する情報を標準的な画像である標準テンプレート上に示すシステムであって、
前記診断対象画像と、前記標準テンプレートを利用して、前記診断対象画像から前記標準テンプレートへの空間的な順変換規則、および前記標準テンプレートから前記診断対象画像への空間的な逆変換規則を求める変換規則算出手段と、
前記診断対象画像および前記標準テンプレートを表示する画像表示手段と、
前記表示された診断対象画像または標準テンプレート上の任意の位置を指定する位置指定手段と、
前記位置指定手段により指定された位置に対応する診断対象画像または標準テンプレート上の座標を認識し、前記順変換規則または逆変換規則を用いて他方の画像における座標を算出する座標変換手段と、を有し、
前記画像表示手段は、前記指定された位置を所定の形式で表示するとともに、前記座標変換手段により算出された他方の画像の位置を所定の形式で表示することを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項2】
医学的な部位の名称である部位名を前記標準テンプレートの座標と対応付けて記憶した部位情報記憶手段をさらに有し、
前記画像表示手段は、前記指定された位置に基づいて得られた標準テンプレートの座標に対応する部位名を前記部位情報記憶手段から抽出して表示することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項3】
前記診断対象画像および前記標準テンプレートは、3次元画像であり、
前記画像表示手段は、前記診断対象画像および前記標準テンプレートをそれぞれ3つの断面画像として表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像処理システム。
【請求項4】
前記画像表示手段は、指定された位置および当該指定された位置に対応する位置を前記診断対象画像および前記標準テンプレートの各断面画像上の十字線の交点で示し、前記十字線を構成する各線が、他の2つの断面画像の座標を示すことを特徴とする請求項3に記載の医用画像処理システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の医用画像処理システムとして、コンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−247535(P2009−247535A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98158(P2008−98158)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】