説明

医療用マニピュレータ

【課題】体腔内からのガスリークを可及的に抑制することができる医療用マニピュレータを提供する。
【解決手段】マニピュレータ10は、中空の連結シャフト18と、連結シャフト18内に挿通されるワイヤ80aと、連結シャフト18の一端側に設けられ、ワイヤ80aを軸線方向に進退駆動するプーリ70aと、連結シャフト18の他端側に設けられ、ワイヤ80aの進退駆動によって動作される先端動作部12と、ワイヤ80aの一部を囲繞して該ワイヤ80aに密着固定されると共に、連結シャフト18の内面に対して摺動可能であることにより、該連結シャフト18内を先端動作部12側とプーリ70a側とに仕切る気密シール100とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達部材を介して先端動作部を動作させる医療用マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下外科手術(又は腹腔鏡下手術とも呼ばれる。)においては、患者の腹部等に複数の孔を開け、器具の通過ポートとしてトラカール(筒状の器具)を挿入した後、シャフトを有する鉗子の先端部をトラカールを通じて体腔内に挿入して患部の手術を行っている。鉗子の先端部には、作業部として、生体組織を把持するためのグリッパや、鋏、電気メスのブレード等が取り付けられている。
【0003】
トラカールから挿入される鉗子として、先端の作業部に関節を持たない一般的な鉗子に加えて、作業部に複数の関節を有する鉗子、いわゆるマニピュレータの開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。このようなマニピュレータによれば、体腔内で自由度の高い動作が可能であり、手技が容易となり、適用可能な症例が多くなる。
【0004】
マニピュレータは、細長いシャフトの先端に設けられた先端動作部(エンドエフェクタとも呼ばれる。)を備える作業部を有し、ワイヤによって当該先端動作部を駆動するアクチュエータが本体部(操作部)に設けられている。ワイヤは基端側でプーリに巻き掛けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−105451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような腹腔鏡下手術では、腹部を気腹装置による炭酸ガス等で陽圧にして膨らませ、手術空間や視野を大きく確保することが行われている。従って、体内外に圧力差が生じるため、トラカール等の気密構造を持つポートを介して、内視鏡や鉗子等の器具(術具)の出し入れ及び操作が行われており、当然、トラカールから体腔内に挿入される器具、特に管状のものは気腹圧をシールできる構成が必要である。
【0007】
マニピュレータは、通常、管状で細径のシャフト内に先端動作部を駆動するワイヤが挿通された構造からなる。このため、シャフト内から体腔内のガスがリークすることを可及的に抑制する構成が必要とされている。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、体腔内からのガスリークを可及的に抑制することができる医療用マニピュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る医療用マニピュレータは、中空のシャフトと、前記シャフト内に挿通される動力伝達部材と、前記シャフトの一端側に設けられ、前記動力伝達部材を軸線方向に進退駆動する駆動機構部と、前記シャフトの他端側に設けられ、前記動力伝達部材の前記進退駆動によって動作される先端動作部と、前記動力伝達部材の一部を囲繞して該動力伝達部材に密着固定されると共に、前記シャフトの内面に対して摺動可能であることにより、該シャフト内を前記先端動作部側と前記駆動機構部側とに仕切るシール部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、中空のシャフト内を先端側と基端側とに仕切るシール部材を設けることにより、シャフトの軸線方向での気密性を確保することができる。このため、例えば、体腔内に封入されたガス(気腹圧)が先端動作部からシャフトを介して外部へとリークすることを可及的に抑制することができる。この際、シール部材が動力伝達部材に密着固定されることにより、該動力伝達部材が進退駆動された場合にも容易に且つ確実に気密性を確保することができる。
【0011】
また、前記動力伝達部材は、前記シャフト内に複数挿通され、前記シール部材は、各動力伝達部材にそれぞれ固定され且つ隣接するシール部材同士が互いに摺動可能に配置されると共に、各シール部材がそれぞれ前記シャフトの内面に対して摺動可能であることにより、先端動作部が複数軸で動作され、シャフト内にワイヤ等の動力伝達部材が複数挿通される場合であっても、隣接するシール部材同士及びシール部材とシャフト内面との間が確実にシールされ、体腔内のガスがリークすることを有効に防止することができる。
【0012】
この場合、前記シャフトの軸線方向に直交する断面方向で見たときに、各シール部材はそれぞれ前記シャフトの内部空間を複数に分割した形状の輪郭を有することにより、シール部材を容易にシャフト内面形状に対応して構成することができ、その気密性の確保が容易である。
【0013】
前記シャフトは円管状であり、各シール部材を集合した集合体が、前記シャフトの内周面に対応する円柱形状とすることもできる。
【0014】
さらに、各シール部材は、各動力伝達部材が進退駆動された場合であっても、常に隣接するシール部材同士が摺動されるように配置されることにより、先端動作部の動作中でのガスリークを確実に抑えることが可能となる。
【0015】
前記シール部材には、前記動力伝達部材が嵌挿される貫通孔が軸線方向に沿って形成されると共に、外面から前記貫通孔へと連なるスリットが形成されていると、例えば、前記動力伝達部材を予めループ状にした状態でスリットから前記貫通孔へと動力伝達部材を簡単に挿入することができ、当該医療用マニピュレータの組立性が向上する。
【0016】
また、前記各シール部材を集合した集合体の中心には、前記シャフトの軸線方向に沿う孔部が形成され、前記孔部には、前記動力伝達部材の進退駆動に伴って進退する各シール部材をガイドするガイド部材が介装されると、各シール部材の摺動を一層円滑に行うことができる。
【0017】
この場合、前記ガイド部材の端部には、各動力伝達部材が挿通される挿通孔が複数設けられた円板部が設けられていると、各シール部材を一層簡単にガイド部材と共に組み付けることができる。
【0018】
さらに、前記ガイド部材には、その軸線方向に沿って貫通した洗浄用孔部が形成されると共に、該洗浄用孔部には、前記駆動機構部に設けられた洗浄ポートから洗浄液が注入される洗浄チューブが連通されていると、シャフト内の洗浄を容易に実施することが可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0019】
なお、前記ガイド部材は、前記駆動機構部側から前記シャフトの軸線方向に沿って先端側へと延びて前記シール部材の前記先端動作部側に噴射口を有し、前記駆動機構部に設けられた洗浄ポートから洗浄液が注入される洗浄チューブであってもよい。
【0020】
前記各シール部材同士は、隣接するシール部材の少なくとも一方に形成されて、軸線方向に交差した方向に延びた凸部を介して互いに摺動されることにより、摺動時の摩擦抵抗を適切に低減しつつ、気密性を確実に確保することができる。
【0021】
また、前記シール部材の軸線方向で一部に細径部が形成されると共に、該細径部には、前記シャフトの内面と密着するパッキンが外嵌されると、シール部材とシャフト内面との間での気密性を一層確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、中空のシャフト内を先端側と基端側とに仕切るシール部材を設けることにより、シャフトの軸線方向での気密性を確保することができる。このため、例えば、体腔内に封入されたガス(気腹圧)が先端動作部からシャフトを介して外部へとリークすることを可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係るマニピュレータの斜視図である。
【図2】作業部と操作部とを分離したマニピュレータの一部断面側面図である。
【図3】作業部の一部省略断面平面図である。
【図4】先端動作部の斜視図である。
【図5】マニピュレータの複合入力部及びその周辺部の一部省略斜視図である。
【図6】気密シールの分解斜視図である。
【図7】図7Aは、気密シール及びその周辺部の一部断面斜視図であり、図7Bは、図7Aに示す状態からシール部材の一部を進退させた状態での一部断面斜視図である。
【図8】図7A中のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】スリットを形成したシール部材の斜視図である。
【図10】シール部材の移動範囲を説明するための断面説明図である。
【図11】気密シールの変形例を示す断面説明図である。
【図12】シール部材をガイドするガイドの斜視図である。
【図13】図12に示すガイドにシール部材及びワイヤ等を適用した状態を示す斜視図である。
【図14】気密シールの別の変形例を示す一部断面斜視図である。
【図15】シール部材にブレードを設けた構成を示す一部省略斜視図である。
【図16】マニピュレータをロボットアームの先端に接続したロボットシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る医療用マニピュレータについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態に係るマニピュレータ(医療用マニピュレータ)10は、連結シャフト18の先端に設けられた先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うための医療用器具であり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。
【0026】
以下の説明では、図1における幅方向をX方向、高さ方向をY方向及び、連結シャフト18の延在方向をZ方向と規定する。また、先端側から見て右方をX1方向、左方をX2方向、上方向をY1方向、下方向をY2方向と規定し、さらに、連結シャフト18の前方をZ1方向、後方をZ2方向と規定する。なお、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ10が基準姿勢(中立姿勢)である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることはもちろんである。
【0027】
マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを有し、グリップハンドル26の下端から延びたケーブル28がコントローラ29に接続されてマニピュレータシステムを構成している。
【0028】
図1及び図2に示すように、操作部14は、Z1方向及びY2方向に延びた略L字状に構成されると共に、Z方向に略対称に分割された一対の上部カバー25a、25bを筐体として、その内部に、駆動部(アクチュエータ部)30等が収納されると共に、基端側でY2方向に延びた部分が人手によって把持されるグリップハンドル26として構成されている。グリップハンドル26は、人手によって把持されるのに適した長さであり、上部の傾斜面26aに複合入力部24が設けられている。
【0029】
操作部14のY1方向頂部近傍には、上部カバー25bから露出してマスタスイッチ34が設けられ、マスタスイッチ34のZ1方向で視認しやすい箇所にLED35が設けられている。図1中、操作部14のZ1方向端近傍からY1方向に延びた電極プラグ41は、当該マニピュレータ10を電気メスとして使用する際に高電圧電源が接続される電極であり、図示しない送電構造によって先端動作部12側へと高電圧を供給することができる。
【0030】
作業部16は、作業を行う先端動作部12と、該先端動作部12を先端に設けた長尺で中空の連結シャフト(シャフト)18と、該連結シャフト18の基端側が固定されるプーリボックス32と、プーリボックス32のZ2方向端から延びたトリガレバー支持部33に軸支されたトリガレバー36とを有する。作業部16は、Z方向で略対称に分割された一対の下部カバー37a、37bを筐体として、その内部にプーリボックス32を収納している。トリガレバー支持部33は、プーリボックス32のZ2側端面からZ2方向に平行に延びた一対のプレートであり、該プレート間に渡ったトリガ軸39により、トリガレバー36を回動可能に軸支している(図3参照)。
【0031】
このような作業部16は、操作部14に設けられた左右一対の着脱レバー40、40によって当該操作部14と連結・固定されると共に、着脱レバー40の開放操作によって操作部14から分離可能であり、特別な器具を用いることなく、手術現場で容易に交換作業等を行うことができる。
【0032】
図1に示すように、先端動作部12及び連結シャフト18は細径に構成されており、患者の腹部等に設けられた円筒形状のトラカール20から体腔22内に挿入可能であり、複合入力部24及びトリガレバー36の操作によって体腔22内で患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。
【0033】
複合入力部24及びトリガレバー36の操作に基づいて動作する先端動作部12は、例えばグリッパ48を備え(図4参照)、Y軸を基準に傾動するヨー軸動作、先端を指向する軸(中立姿勢時にはZ軸)を基準に回転するロール軸動作、及び、開閉可能なグリッパ軸動作からなる3軸の動作が可能である。本実施形態の場合、ヨー軸及びロール軸は、複合入力部24の操作に基づいて電気的に駆動され、グリッパ軸はトリガレバー36の操作に基づいて機械的に駆動される。ここで機械的とは、ワイヤ、チェーン、タイミングベルト、リンク、ロッド、ギア等を介して駆動する方式であり、主に、動力伝達方向に非弾性な固体の機械部品を介して駆動する方式である。ワイヤやチェーン等は、張力により不可避的な多少の伸びが発生する場合があるが、これらは非弾性な固体の機械部品とする。
【0034】
次に、互いに着脱可能な駆動部30及びプーリボックス32について説明する。
【0035】
図1及び図2に示すように、駆動部30は、X方向に並んだ2つのモータ(アクチュエータ)50a、50bと、該モータ50a、50bを支持するブラケット52と、モータ50a、50bの回転方向を変換して作業部16側に伝達するギア機構部54とを有する。
【0036】
モータ50a、50bは円柱形状であり、図示しない減速機によって減速される出力軸56a、56bがブラケット52の一面を貫通し、該出力軸56a、56bに対してギア機構部54を構成する駆動傘歯車58a、58bが固定されている。モータ50a、50bは、例えばDCモータであり、図示しない角度センサとしてロータリエンコーダ等が設けられる。
【0037】
図2に示すように、ギア機構部54は、ブラケット52内の空間に設けられ、X方向に並んだ2本の駆動シャフト(駆動軸)60a、60bと、各駆動シャフト60a、60bに固定され、駆動傘歯車58a、58bと噛み合う2つの従動傘歯車62a、62bとを有する。モータ50a、50bの出力軸56a、56b、駆動シャフト60a、60b等は図示しないベアリングによってブラケット52に軸支されている。
【0038】
図2に示すように、駆動シャフト60a(60b)の下端側はブラケット52の下面から突出しており、その先端には、例えば断面波形六角形状で先細りのテーパ形状からなる係合凸部64a(64b)が設けられている。
【0039】
図2及び図3に示すように、プーリボックス32は、X方向両側が開口した空洞部66と、該空洞部66に収納されたプーリ(従動軸)70a、70b及びワイヤガイド部72a、72bとを有し、空洞部66のZ1側に貫通した孔部で連結シャフト18が固定・支持されている。
【0040】
プーリ70a、70bは、駆動シャフト60a、60bに対して同軸であり、その上端側には、駆動シャフト60a、60b側の係合凸部64a、64bと係合可能な係合凹部74a、74bが設けられている。係合凹部74a、74bは、前記係合凸部64a、64bが係合(嵌合)可能であり、例えば断面波形六角形状で奥細りのテーパ形状の凹部を有する。
【0041】
従って、操作部14と作業部16との装着時、係合凸部64a(64b)と係合凹部74a(74b)とが係合し、これにより、駆動シャフト60a(60b)からの回転駆動力をプーリ70a(70b)へと伝達することができる。この際、例えば操作部14には、操作部14と作業部16の着脱を検出する着脱検出センサ(図示せず)や、駆動シャフト60aの位相を検出する位相検出センサ(図示せず)等を設けてもよく、さらに、係合凸部64aや係合凹部74aの係合構造は他の構造であってもよい。例えば、当該マニピュレータ10の全体的な構成は、特願2009−111344号や特願2009−111502号の明細書や図面に開示された構成と略同様にしてもよい。
【0042】
図2及び図3から諒解されるように、ワイヤガイド部72a(72b)は、プーリ70a(70b)のZ1側に配設されると共に、その間隔が狭く設定されており、プーリ70a(70b)と先端動作部12のギア78等との間に巻き掛けられたワイヤ(動力伝達部材)80a(80b)をガイドして、連結シャフト18内へと円滑に導く機能を有する。このようなワイヤガイド部72a、72bを用いることにより、連結シャフト18は、モータ50a、50bの径やプーリ70a、70bの軸間距離に依存することなく十分に細くすることができ、例えば、トラカール20に挿入するのに適した5mm〜10mm程度の外径に容易に設定することができる。
【0043】
プーリボックス32を構成する空洞部66には、さらに、棒状又は線状の伝達部材である2本のロッド82a、82bがY方向に並んで、Z方向に貫通している。ロッド82a、82bは、例えば、十分に強く且つ細いステンレスパイプ又は中実ロッドあり、Z1方向は空洞部66を貫通して連結シャフト18内へと延び、図示しないワイヤ等を介して先端動作部12内の前記ギア78等に巻き掛けられており、Z2方向はプーリボックス32を貫通してトリガレバー支持部33へと延び、図示しないワイヤ等を介してトリガレバー36に接続されている。
【0044】
図2及び図3に示すように、プーリボックス32のZ2側には、Z方向を基準として対称な一対のピン穴84、84が形成されている。各ピン穴84、84には、作業部16と操作部14との装着時、ブラケット52の底面からY1方向に突出した一対のガイドピン86、86が挿入され、これにより、操作部14と作業部16とが位置決めされ且つ高い剛性で装着される。
【0045】
このような作業部16では、ワイヤ80a、80bは、それぞれプーリ70a、70b側と先端動作部12側との間で往復していることから、連結シャフト18の中空空間内には、延べ4本のワイヤ80a、80bと2本のロッド82a、82bとが挿通されている。ワイヤ80a、80bは、それぞれ同種又は異種、同径又は異径のものを用いることができる。本実施形態では、ロッド82a、82bの方がワイヤ80a等よりも大径のものを用いているが、これらは同径であってもよく、当然、ロッドに代えてワイヤのみで全ての動力伝達機構を構成してもよい。
【0046】
マニピュレータ10では、複合入力部24が操作されてモータ50a、50bが駆動されることにより、駆動シャフト60a、60bからプーリ70a、70bを介してワイヤ80a、80bが往復駆動され、これにより先端動作部12にロール方向及びヨー方向の動作が付与される。さらに、トリガレバー36が回動操作されることにより、ロッド82a、82bが機械的に往復駆動され、先端動作部12のグリッパ48に開閉動作が付与される。すなわち、プーリ70a、70b(モータ50a、50b)及びトリガレバー36は、動力伝達部材であるワイヤ80a、80b及びロッド82a、82bに駆動力を付与し、先端動作部12を動作させる駆動機構部の一部として機能する。
【0047】
図5に示すように、先端動作部12を電気的に駆動する複合入力部24は、Z軸(Y軸)を中心としてX1及びX2方向に対称な構造であり、先端動作部12に対してロール方向(軸回転方向)及びヨー方向(左右方向)の回転指令を与える複合的な入力部である。
【0048】
複合入力部24は、傾斜面26aに配置されたセンサホルダ88によって支持されており、傾斜面26aのZ1側(Y1側)の回転操作部90と、そのZ2側(Y2側)に設けられた傾動操作部92と、傾動操作部92の下部側面にそれぞれ配設された3つのスイッチ操作子94a、94b、94cとを有する。これら回転操作部90等への入力は、センサホルダ88内に設けられたスイッチ基板(図示せず)等によってその操作量が検出され、モータ50a、50bがコントローラ29の制御下に適宜駆動制御される。
【0049】
図2及び図3に示すように、連結シャフト18の途中には、その内部空間をZ1側(先端動作部12側)とZ2側(プーリボックス32側)とに仕切る気密シール(シール部材)100が設けられている。
【0050】
図6及び図7Aに示すように、気密シール100は、延べ6本のワイヤ及びロッド(ワイヤ80a、80bの往復分とロッド82a、82b)のそれぞれの軸線方向の一部を囲繞するように密着固定された複数(この場合は、6個)のシール部材102a〜102fを集合した集合体である。気密シール100は、略円柱形状に構成される前記集合体の全体として、その外周面が連結シャフト18の内周面に密着配置され、これにより当該連結シャフト18内を仕切り、気体や液体の流通を遮断する遮断壁として機能する。
【0051】
シール部材102a〜102fは、前記集合体として連結シャフト18の内部空間に対応した略円柱形状であり、すなわち、各シール部材102a〜102fは、前記集合体をワイヤやロッドの合計本数に応じて等分した略扇柱形状である。
【0052】
従って、ワイヤやロッドの合計本数によってシール部材の配設数は当然変更可能であり、すなわち、先端動作部12の自由度を2自由度や4自由度等に変更し、ワイヤやロッドの本数を変更した場合には、シール部材の設置数も1以上の数で適宜変更可能である。例えば、ワイヤが1本でシール部材が1個の場合には、該シール部材は実質的に連結シャフトの内径に適合した外径を有する円柱体で構成され、シール部材が2個以上の複数の場合には、各ワイヤやロッドの径を考慮しつつ、連結シャフトの内径に適合した外径を有する円柱体を図8に示すように略均等に分割した形状とすればよい。
【0053】
各シール部材102a〜102fには、ワイヤ80aやロッド82aが挿通されて固定される軸線方向の貫通孔104が形成されている。シール部材102a〜102fは、隣接するシール部材同士(例えば、シール部材102a、102c)が互いに摺動可能に密着配置されると共に、それぞれの外周面が連結シャフト18の内周面に摺動可能に密着配置される。これにより、気密シール100全体として連結シャフト18内の長手方向での気密性及び液密性を確保することができる。
【0054】
気密シール100を構成するシール部材102a〜102fは、円滑な摺動性能と十分な密着性(気密性)を両立できることが望ましく、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂やポリアセタール樹脂等で形成するか又はこれら材料を所定の材質の表面にコーティングして形成するとよい。また、金属を用いる場合には、腐食に強いステンレス材等が好ましく、このように金属材料を用いた場合にはシール部材の周囲にシリコーンオイルやグリスを塗布しておくとよい。勿論、上記した樹脂製材料の場合にもシリコーンオイル等の潤滑油を塗布しておくこともできる。
【0055】
シール部材102a〜102fは、ワイヤやロッドに対して貫通孔104での気密性を保持した状態で固定する必要がある。そこで、シール部材を樹脂製材料で構成した場合には、接着剤、封止材や高周波等の熱溶融によりワイヤ等に固定するとよい。当然、ワイヤ等に対してインサート成形によって形成することもできる。一方、シール部材を金属製材料で構成した場合には、接着等以外にも、例えば溶接によって固定することもできる。
【0056】
シール部材102a〜102fの貫通孔104にワイヤやロッドを挿通する方法としては、貫通孔104の一端から他端へとワイヤやロッドの端部を挿通させる方法が挙げられるが、図9に示すように、シール部材102a〜102fにその外周側面から貫通孔104へと連なる切込みであるスリット105を形成する方法でもよい。このようなスリット105を形成しておくと、マニピュレータ10の組立時、例えば、ワイヤ80a、80bやロッド82a、82bをプーリ70a、70bやギア78等との間に巻き掛ける際、先にワイヤ80a、80b(ロッド82a、82bの場合には図示しないプーリやギアとの間に巻き掛けるワイヤ等)をループ状に形成し、それからスリット105を介して貫通孔104へと挿入することができる。そうすると、貫通孔104へとワイヤ80a等を挿通させてからワイヤ80a等をループ状に形成する場合に比べて組立性を大幅に向上させることができる。なお、スリット105を形成した場合であっても、各シール部材の各スリットは連結シャフト18内に気密シール100が嵌挿された際に密着し、シール部材としての密閉性を損なうことはない。勿論、ワイヤを通した後、各スリットを接着剤等で接着することも可能である。
【0057】
さらに、各ワイヤ80a、80b及びロッド82a、82bの中心位置には、例えば水や酵素洗浄剤等の洗浄液を流通させるための洗浄チューブ(送水管、ガイド部材)106が連結シャフト18の軸線方向に延在している。この場合、各シール部材102a〜102fの内周面は、前記集合体の中心に軸線方向に貫通した孔部を形成する円弧形状とされており(図6及び図7A参照)、該孔部に前記洗浄チューブ106が挿通配置される。つまり、各シール部材102a〜102fのそれぞれの内周面は、洗浄チューブ106の外周面に摺動可能に密着配置される(図8参照)。
【0058】
洗浄チューブ106は、基端側であるプーリボックス32内で適宜配管されると共に、該プーリボックス32の上面に開口した注水ポート(洗浄ポート)108まで延びたチューブであり、例えば、ゴム、シリコーン又はPTFE(4フッ化エチレン樹脂)等のフッ素系樹脂等から構成される。
【0059】
図2に示すように、洗浄チューブ106の基端側にある注水ポート108は、通常(非洗浄時)、蓋体110により閉塞されている。洗浄チューブ106の使用時(洗浄時)には、蓋体110が取り外され、注水ポート108から洗浄液が注入されることにより、該洗浄液がZ1方向に流通される。洗浄チューブ106を送液された洗浄液は、図7Aに示すように気密シール100のZ1側(先端動作部12側)に開口した噴射口106aから連結シャフト18内に噴射される。そこで、噴射口106aからの洗浄液の噴射性を向上させるため、該噴射口106aの形状を扁平に形成したり、噴射口106a部分を塞ぎ、その近傍の洗浄チューブ106外周面に無数の小孔を設けたりすることもできる。前記のように扁平にした場合には、噴射口106aの開口面積を低減し、血液等の逆流を低減する逆止弁としての作用を得ることもできる。
【0060】
基本的には、以上のように構成される本実施形態に係るマニピュレータ10の作用について説明する。
【0061】
図4に示すように、先端動作部12は、ロール軸、ヨー軸及びグリッパ軸の3自由度の機構を備え、複数の関節を有し、先端動作部12には各部に隙間Aが形成されている。もちろん、1自由度の機構であっても関節は設けられる。従って、マニピュレータ10による手術中、図示しない気腹装置等によって体腔22内に封入された炭酸ガス等が、体腔22内が陽圧であるために、隙間Aを介して連結シャフト18内へリークすることになる。該リークが発生した場合には、体腔22の空間が収縮し、円滑な手術が難しくなる可能性がある。
【0062】
そこで、本実施形態に係るマニピュレータ10では、連結シャフト18内を先端動作部12側と駆動機構部側であるプーリボックス32側とに仕切る気密シール100を設けている。
【0063】
図7Aに示すように、先端動作部12の非動作時には、各シール部材102a〜102fが集合して略円柱形状となる。換言すれば、各シール部材102a〜102fは、図8に示すように、連結シャフト18の軸線方向に直交する断面方向で見たときに、該連結シャフト18の内部空間を複数に分割した形状の輪郭を有し、該内部空間を実質的に仕切っている。これにより、連結シャフト18の軸線方向での気密性が確保され、体腔22内のガス(気腹圧)が先端動作部12の隙間A(図4参照)等から連結シャフト18内を通って外部へとリークすることを防止することができる。
【0064】
図7Bに示すように、先端動作部12の動作時には、例えばモータ50aの駆動作用下にプーリ70aを介して往復一対のワイヤ80aが進退されると、一方のワイヤ80aに固定されたシール部材102cがZ2側に移動され、他方のワイヤ80aに固定されたシール部材102dがZ1側に移動され、両者は互いに摺動する。さらに、これらシール部材102c、102dの外周面は連結シャフト18の内周面に摺動し、それらの内周面は洗浄チューブ106の外周面に摺動する。従って、図7Aに示す先端動作部12の非動作時の場合と同様に、気密シール100による気密性が確実に維持され、体腔22からのガスリークを防止することができる。
【0065】
このように、気密シール100は、各シール部材102a〜102fが各ワイヤ80a、80b及びロッド82a、82bにそれぞれ密着固定されると共に、隣接するシール部材同士及び連結シャフト18内面との間が気密状態を維持しつつ摺動可能とされているため、ワイヤやロッドの作動状態にかかわらず、常に連結シャフト18内を仕切り、気密状態を保持することができる。
【0066】
従って、図10に示すように、気密シール100は、各シール部材102a〜102b(つまり、ワイヤ80a、80b及びロッド82a、82b)のそれぞれの最大移動距離をLとした場合に、該距離L内では、常に互いに密着し摺動可能な状態にある必要がある。換言すれば、ワイヤ80aやロッド82aの往復移動(押し引き)によって各シール部材102a〜102fがそれぞれ最大限に進退された場合であっても、気密シール100は、その一部が常に円柱体を形成し、連結シャフト18内をZ方向に仕切り、その気密性を確保できるように設定する必要がある。
【0067】
例えば、図10に示すように、シール部材102c、102dがそれぞれZ2方向、Z1方向に最大限移動した際にも、図10中の矢印Bで示す部分の断面は、図8に示す状態と略同様であり、連結シャフト18の内部空間が軸線方向に完全にシールされた状態となる。これにより、先端動作部12の動作に係わらず、体腔22からの連結シャフト18を介したガスリークを常に阻止することができる。
【0068】
さらに、気密シール100を連結シャフト18内に介装することにより、先端動作部12の隙間Aから浸入した血液等の液体が、連結シャフト18の内周面に沿って先端動作部12側からプーリボックス32側へと流通することも阻止され、術後の連結シャフト18やプーリボックス32の洗浄等が容易となり、メンテナンス性を向上させることができる。この場合、気密シール100を設けたことにより、上記した気密性も確保することができ、体腔22内のガスが連結シャフト18の先端側を略密封するように機能する。従って、密封状態となったガスにより、血液等の液体が前記隙間Aから連結シャフト18内へと浸入すること事態が可及的に抑制されるという効果もある。
【0069】
なお、手術中に隙間Aから流入して気密シール100に接触した後、再び隙間Aを介して患者の体腔22内へと戻る血液等の流れを考慮して、気密シール100は、上記したフッ素系樹脂やポリアセタール樹脂、ステンレス材等のように生体に対して影響の小さい材質とすることが好ましい。同様な理由から、洗浄チューブ106についても気密シール100と同様な材質にすることが好ましい。
【0070】
図7Aに示すように、マニピュレータ10に洗浄チューブ106を設け、その噴射口106aを気密シール100の先端動作部12側に配設することにより、マニピュレータ10の洗浄時、蓋体110を取り外して注水ポート108から洗浄チューブ106内へと洗浄液を流すことで、連結シャフト18内部や先端動作部12内部を一層容易に洗浄することができる。洗浄チューブ106の噴射口106aは、連結シャフト18内で開口しているが、手術時には注水ポート108が蓋体110によって閉塞されているため、当該洗浄チューブ106の内圧は所定圧に保持され、ここから体腔22内のガスがリークすることが防止される。さらに、洗浄チューブ106は、各シール部材102a〜102fの中心でそのZ方向への移動をガイドするガイド部材としても機能するため、シール部材の摺動が一層円滑になり、気密シール100の気密性をより確実に維持することも可能となる。
【0071】
なお、洗浄チューブ106はマニピュレータ10の仕様等によっては省略可能であり、例えば、先端動作部12側から連結シャフト18内を洗浄するような使用条件等の場合には当該洗浄チューブ106を省略し、構成の簡素化を図ることができる。
【0072】
洗浄チューブ106を省略する場合には、例えば、図11に示すように、所定のシール部材102aの内径側にZ軸方向に延びた小径略円柱状のガイド部118を突設した気密シール(シール部材)120として構成してもよい。そうすると、ガイド部118を介して他のシール部材を円滑に摺動させることができる。当然、ガイド部118を設けず、各シール部材を円柱体から均等に分割した形状(図11中のガイド部118に付した破線参照)とすることも可能である。
【0073】
また、気密シール100(120)を構成する各シール部材102a〜102fを一層容易に束ねて略円柱形状を形成し易く且つ連結シャフト18内に挿入し易くするために、図12に示すようなガイド122を用いることもできる。
【0074】
図12及び図13に示すように、ガイド122は、各シール部材102a〜102fの内径側と密着し、これらの摺動をガイドするZ方向に延びた棒状のガイド部材124と、該ガイド部材124の両端側に設けられた一対の円板部126、126とを有する。各円板部126には、ワイヤ80a、80b及びロッド82a、82bの配置及び外径に対応し、該ワイヤやロッドが挿通されて進退可能な複数(この場合には6個)の挿通孔126aがそれぞれZ方向に貫通形成されている。円板部126の外径は、連結シャフト18の内周面に密着可能な寸法に構成される。円板部126は、接着剤等によって連結シャフト18の内周面に固定することもできる。
【0075】
このようなガイド122を用いることにより、ワイヤ80a等や各シール部材102a〜102fを一層容易に連結シャフト18内に挿入することができ、マニピュレータ10の組立性を向上させることができる。また、気密シール100(120)のZ方向前後でワイヤ80a等の進退が挿通孔126aによってガイドされることから、シール部材102a〜102fの進退動作がより安定して円滑なものとなり、気密性を一層確実に維持することが可能となる。
【0076】
なお、ガイド部材124のZ方向長さ、つまり一対の円板部126間のZ方向距離は、該円板部126間に配設されるシール部材102a〜102fが進退動作可能な距離に設定される必要があり、図10に示す距離L以上に設定される必要がある。また、ガイド部材124を円筒状に形成し、そのZ2側端開口に洗浄チューブ106の噴射口106aを連結すると、該ガイド部材124内の貫通孔を洗浄チューブ106の一部となる洗浄用孔部として機能させることができる。
【0077】
図14に示すように、上記した気密シール100、120(シール部材102a〜102f)は、その長手方向で中心付近に細径部128を形成した段付きの気密シール(シール部材)130として構成してもよい。この場合、該細径部128に、連結シャフト18の内周面に密着するOリング等のパッキン132を外嵌させることにより、該パッキン132によって気密シール130の連結シャフト18との間での気密性を一層高めることができる。
【0078】
図15に示すように、各シール部材102a〜102fについて、例えば、その並び方向(円周方向)で一個置きのシール部材102a、102d、102fの互いの摺動面に、その軸線方向に直交した方向に延びた突起状のブレード(凸部)134aを軸線方向に複数(2個)設け、各シール部材102a〜102fの連結シャフト18との摺動面にもブレード134aと略同様なブレード(凸部)134bを軸線方向に複数(2個)設けて構成してもよい。なお、ブレード134aは、全てのシール部材について設置しても勿論よい。
【0079】
ブレード134aは、他のシール部材のブレード134aと軸線方向(Z方向)で互い違いになるように設置されており、例えば、全てのシール部材にブレード134aを設置した場合に、ブレード134a同士での接触により、シール部材の移動が規制されることが防止される。
【0080】
ブレード134aにより、該ブレード134aを設けたシール部材の両隣で摺動するシール部材との間での摺動面の摩擦抵抗が過度に高くなり、円滑な摺動がなされなくなることを有効に回避することができ、例えば、シール部材102aの場合にはシール部材102b、102eとの間で円滑な摺動を確保することができる。同様に、連結シャフト18の内周面に摺動するシール部材102a〜102fの外周面にブレード134bを設けることにより、シール部材と連結シャフトとの間での摩擦抵抗を適切に調整することができ、その円滑な摺動を確保することができる。
【0081】
この場合、ブレード134a、134bは、シール部材の軸線方向に直交する方向に延びた形状であることから、気密シール100等のシール性を損なうことがない。また、ブレード134a、134bは、軸線方向(Z方向)で複数並んで設けられることにより、気密シール100等のシール性を一層高めることができ、しかもブレード134a、134bはシール部材の軸線方向に短尺であることから、摺動面(シール面)での片当たり等が防止され、シール部材の製造誤差等にかかわらずシール性を一層確実に確保することができる。
【0082】
本発明は、例えば図16に示すような手術用ロボットシステム200に適用してもよい。
【0083】
手術用ロボットシステム200は、多関節型のロボットアーム202と、コンソール204とを有し、ロボットアーム202の先端には前記のマニピュレータ10と同じ機構が設けられている。ロボットアーム202の先端部208には、操作部14に代えて、内部に駆動部30を収納した基部14aが固定され、該基部14aに対して作業部16が着脱可能に取り付けられる。ロボットアーム202は、作業部16を移動させる手段であればよく、据置型に限らず、例えば自律移動型でもよい。コンソール204は、テーブル型、制御盤型等の構成を採り得る。
【0084】
ロボットアーム202は、独立的な6以上の関節(回転軸やスライド軸等)を有すると、作業部16の位置及び向きを任意に設定できて好適である。先端のマニピュレータ10を構成する基部14aは、ロボットアーム202の先端部208と一体化している。マニピュレータ10は、前記のトリガレバー36の代わりに図示しないモータ(人手によって操作する入力部に連動するアクチュエータ)を有し、該モータが2本のロッド82a、82bを駆動する。
【0085】
ロボットアーム202は、コンソール204の作用下に動作し、プログラムによる自動動作や、コンソール204に設けられたジョイスティック206に倣った操作、及びこれらの複合的な動作をする構成にしてもよい。コンソール204は、前記のコントローラ29の機能を含んでいる。作業部16には、前記の先端動作部12が設けられている。
【0086】
コンソール204には、操作指令部としての2つのジョイスティック206と、モニタ210が設けられている。図示を省略するが、2つのジョイスティック206により、2台のロボットアーム202を個別に操作することが可能である。2つのジョイスティック206は、両手で操作し易い位置に設けられている。モニタ210には、軟性鏡による画像等の情報が表示される。
【0087】
ジョイスティック206は、上下動作、左右動作、捻り動作、及び傾動動作が可能であり、これらの動作に応じてロボットアーム202を動かすことができる。ジョイスティック206はマスターアームであってもよい。ロボットアーム202とコンソール204との間の通信手段は、有線、無線、ネットワーク又はこれらの組合せでよい。ジョイスティック206には、トリガレバー36が設けられており、該トリガレバー36を操作することによりモータ212を駆動可能である。
【0088】
このようなロボットシステム200においても、上記の気密シール100、120、130を備えることにより、気腹圧のリークを有効に防止でき、さらに、洗浄や滅菌等のメンテナンス性を向上させることができる。
【0089】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10…マニピュレータ 12…先端動作部
14…操作部 16…作業部
18…連結シャフト 30…駆動部
32…プーリボックス 80a、80b…ワイヤ
82a、82b…ロッド 100、120、130…気密シール
102a〜102f…シール部材 104…貫通孔
105…スリット 106…洗浄チューブ
122…ガイド 124…ガイド部材
126…円板部 126a…挿通孔
128…細径部 132…パッキン
134a、134b…ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のシャフトと、
前記シャフト内に挿通される動力伝達部材と、
前記シャフトの一端側に設けられ、前記動力伝達部材を軸線方向に進退駆動する駆動機構部と、
前記シャフトの他端側に設けられ、前記動力伝達部材の前記進退駆動によって動作される先端動作部と、
前記動力伝達部材の一部を囲繞して該動力伝達部材に密着固定されると共に、前記シャフトの内面に対して摺動可能であることにより、該シャフト内を前記先端動作部側と前記駆動機構部側とに仕切るシール部材と、
を備えることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項2】
請求項1記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記動力伝達部材は、前記シャフト内に複数挿通され、
前記シール部材は、各動力伝達部材にそれぞれ固定され且つ隣接するシール部材同士が互いに摺動可能に配置されると共に、各シール部材がそれぞれ前記シャフトの内面に対して摺動可能であることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項3】
請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記シャフトの軸線方向に直交する断面方向で見たときに、各シール部材はそれぞれ前記シャフトの内部空間を複数に分割した形状の輪郭を有することを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項4】
請求項3記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記シャフトは円管状であり、
各シール部材を集合した集合体が、前記シャフトの内周面に対応する円柱形状であることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
各シール部材は、各動力伝達部材が進退駆動された場合であっても、常に隣接するシール部材同士が摺動されるように配置されることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項6】
請求項1又は2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記シール部材には、前記動力伝達部材が嵌挿される貫通孔が軸線方向に沿って形成されると共に、外面から前記貫通孔へと連なるスリットが形成されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項7】
請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記各シール部材を集合した集合体の中心には、前記シャフトの軸線方向に沿う孔部が形成され、
前記孔部には、前記動力伝達部材の進退駆動に伴って進退する各シール部材をガイドするガイド部材が介装されることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項8】
請求項7記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記ガイド部材の端部には、各動力伝達部材が挿通される挿通孔が複数設けられた円板部が設けられていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項9】
請求項7又は8記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記ガイド部材には、その軸線方向に沿って貫通した洗浄用孔部が形成されると共に、該洗浄用孔部には、前記駆動機構部に設けられた洗浄ポートから洗浄液が注入される洗浄チューブが連通されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項10】
請求項7記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記ガイド部材は、前記駆動機構部側から前記シャフトの軸線方向に沿って先端側へと延びて前記シール部材の前記先端動作部側に噴射口を有し、前記駆動機構部に設けられた洗浄ポートから洗浄液が注入される洗浄チューブであることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項11】
請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記各シール部材同士は、隣接するシール部材の少なくとも一方に形成されて、軸線方向に交差した方向に延びた凸部を介して互いに摺動されることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項12】
請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記シール部材の軸線方向で一部に細径部が形成されると共に、該細径部には、前記シャフトの内面と密着するパッキンが外嵌されることを特徴とする医療用マニピュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−273978(P2010−273978A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131272(P2009−131272)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】