説明

医療用ロボット、および医療用ロボットのパフォーマンス要求事項を充足する方法

本発明は、医療用ロボット(R)、および医療用ロボット(R)のパフォーマンス要求事項を充足する方法に関する。ロボット(R)は、複数の軸(1〜6)と制御装置(17)とを有する。医療用工具(21〜24)は、ロボット(R)の取付装置(18)に取り付けられ、ロボット(R)の作業領域(30)は、そのロボット(R)がそれら医療用工具(21〜24)のパフォーマンス要求事項を充足するように、特に信頼度の高い技術で制御装置(17)によって設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ロボット、および医療用ロボットのパフォーマンス要求事項を充足する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、物体の自動式の取扱および/または加工のために工具を装備することができ、複数の運動軸でたとえば向き、位置、作業工程に関してプログラミング可能な作業機械である。ロボットは、通常、ロボットの運動過程を作動中に制御するプログラミング可能な制御部(制御装置)を有している。
【0003】
ロボットは、たとえば医療用および/または診療用の用途に用いることができる。医療技術における利用範囲は比較的幅広いため、たとえば作業範囲、剛性、耐荷重、または速度能力、加速度能力に関して、それぞれ明確な違いがあり状況によっては互いに競合する要求事項が、使用するロボットに求められる動作挙動(パフォーマンス)に対して課せられる。求められる仕様の充足は、通常、すべてのロボットコンフィギュレーションについて保証されなくてはならず、特に、相応のパフォーマンス特性値が最悪であるコンフィギュレーションの「ワーストケース」について保証されなくてはならない。このことは、たとえばIEC60601−1に定める機械的な過負荷試験で求められており、この試験は医療技術機器の認可の一環として、たとえばドイツでは作業領域内のもっとも不都合な負荷コンフィギュレーションについて、合格が証明されなくてはならない。このことは、ロボットの所与の作業範囲で、非常に保守的な性能仕様につながりうる。
【0004】
特許文献1は、機械の安全性関連の機能を制御する方法および装置を開示している。機械は機械制御部と、監視領域内でたとえば人間等の物体を検出するためのセンサと、危険領域を設定し、検出された物体が危険領域に入ると安全性関連の機能を発動させるための評価ユニットとを有している。危険領域を設定するために、評価ユニットは機械制御部と結合されており、評価ユニットは、機械の運動制御のために機械制御部により利用される制御信号から、危険領域の設定のために必要なパラメータを導き出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102004043514A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ロボットの性能仕様をさほど保守的に選択しなくてよくするための前提条件を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、医療用ロボットのパフォーマンス要求事項を充足する方法において、
−複数の軸と1つの制御装置とを有するロボットの取付装置に医療用工具を取り付ける方法ステップと、
−制御装置により特に信頼度の高い技術でロボットの作業領域を適合化し、それにより、医療用工具で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項をロボットが充足するようにする方法ステップと
を有する方法によって解決される。
【0008】
本発明の課題は、複数の可動の軸および取付装置を備えるロボットアームと、ロボットアームの軸を駆動装置によって動かすための制御装置とを有する医療用ロボットによっても解決され、制御装置は特に信頼度の高い技術でロボットの作業領域を適合化するようにセットアップされており、それにより、医療用工具で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項をロボットが充足するようになっている。
【0009】
このように、本発明に基づくロボットによって、本発明の方法を実施することができる。
【0010】
本発明による方法の一態様はロボットの作業領域の適合化であり、それにより、医療用工具で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項をロボットが充足する。アプリケーションのパフォーマンス要求事項は、たとえば求められる速度能力、求められる加速度能力、ロボットに作用する荷重、工具の使用に基づいてロボットに求められる剛性、ロボットの制動距離、および/またはロボットの操作性を含んでいる。
【0011】
ロボットの作業領域とは、ロボットにとって作業や移動をするための確実な領域である。ロボット作動時には、特にロボットのすべての軸が作業領域内部に存在しなくてはならない。作業領域とは、ロボットがその機械的な拡張に基づいて動くことができる最大の領域である。しかしながら通常、作業領域は、そのような最大限可能な領域の部分領域であるにすぎない。
【0012】
あるいはロボットの作業領域は、ロボットの制御装置で進行する計算プログラムによって、機械的に限定ないし調整することもできる。本発明の方法ではロボットの作業領域は、ロボットの作動時に軸が所定の作業領域の外部へ動くことを、たとえば前述の計算プログラムが妨げることによって、制御装置により調整される。
【0013】
本発明によるロボットは、特に、さまざまに異なる医療用工具を装備するためのものとして想定されており、すなわち本発明によるロボットの取付装置には、作動時に特にさまざまな医療用工具、たとえば医療用器具が取り付けられることが意図される。取付装置は、たとえばロボットのフランジである。このようなシナリオが特に成立するのは、同一のロボットがさまざまな役割のために利用され、潜在的にさまざまな工具が装備される外科用の用途である。本発明によるロボットを「ワーストケース」に備えて設計しなくてすむようにするために、本発明によるロボットの制御装置は、取付装置に取り付けられている工具ないしは取り付けられるべき工具に合わせて作業領域を適合化し、それにより、その医療用工具で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項をロボットが充足するようになっている。このように、使用する医療用工具に依存して、あるいはそのパフォーマンス要求事項に依存して、たとえばロボットの作業領域の動的な適合化が行われる。
【0014】
作業領域の適合化は、たとえば、ロボットの関節移動幅の制限、デカルト座標の作業空間の制限、および/またはいわゆるゼロ空間の制限により、特に求められるパフォーマンス要求事項に応じて行われる。ゼロ空間と呼ばれるのは、ロボットのエンドエフェクタの姿勢(位置と向き)が空間内で変わらずに保たれるようにロボット関節のコンフィギュレーション変更が可能である、冗長的なロボットの関節角度空間である。
【0015】
作業領域の適合化は、特に信頼度の高い技術で行うことができる。
【0016】
ロボットの比較的高い機械的剛性は、たとえば、比較的高い相互作用の力が発生する可能性がある整形外科での穿孔用途において、高い作用精度を実現するために必要になる場合がある。したがって本発明によるロボットは、その制御装置が、穿孔用途について意図される工具が使用される場合、比較的剛性が高い領域に作業領域を制限するようにセットアップされていてよく、それにより、そうした用途について目安となるパフォーマンス基準が高められる。
【0017】
ロボットのアクチュエータの力仕様ないしトルク仕様のほか、たとえばドイツで認可を得るために必要なIEC60601−1に定める過負荷試験は、ロボットの定格荷重能力にとって1つの制約となる。ロボットは、過負荷試験に合格するために、定義された時間にわたり、特にブレーキを作動させた状態で、および/または制御状態で、指定されている定格荷重と自重の数倍に耐えられなくてはならない。このことは、予定されているすべてのロボットコンフィギュレーションについて保証されなくてはならず、特に「ワーストケース」についても保証されなくてはならない。使用する医療用工具に依存して、ロボットの作業領域を本発明に基づいて適合化することは、ロボットの確実な定格荷重の引き上げにつなげることができる。
【0018】
ロボットに取り付けられた医療用工具の実現されるべき速度に関わる要求事項がある用途は、場合により、運動学的な特異点に近い周辺でのロボットコンフィギュレーションの排除を必要とする。その場合、作業領域のこのような制約を、求められる仕様を順守するために適用することができる。速度パフォーマンスに関わる要求事項は、たとえばロボットが身体部分の運動(たとえば呼吸運動)を補償するべき用途で生じる。
【0019】
求められる加速度能力の順守は、場合によっては作業領域全体で保証することができず、したがって、作業領域の制約によってしか実現することができない。可能なアプリケーションは、やはり運動補償のための取組みを含んでいる。さらに、安全性の要求事項が高い用途は、制動距離の制限を必要としうる。このことは、制動加速度が十分に高い領域に作業領域を制限することによって、実現することができる。ロボットの最大加速度を低くすることも考えられる。このことは、エラーが生じた場合、制動が始まるまでの時間中にロボットが低い運動エネルギーしか生成することができず、短い距離しか進めないという結果につながる。
【0020】
本発明による方法ないしロボットの一変形形態では、ロボットは、ロボットに取り付けられている工具に関する情報を自動的に判定して、パフォーマンス要求事項を充足する作業領域を決定する。このことは、たとえば工具がデータ担体を有しており、このデータ担体に、工具に関する情報および/またはその医療用工具で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項に関する情報を有するデータが保存されていることによって実現することができる。たとえばデータ担体は、たとえばロボットに配置された相応の読み取り機器によって読み取ることができ、それによって本発明によるロボットは、読み出されたデータに基づいて制御装置を自動的に適合化し、それにより、取り付けられている工具に合わせて制御装置がロボットの作業領域を適合化することが可能となる。あるいは、データの読み取りを手動式に開始しなくてはならず、および/または作業領域の適合化を手動式に確認しなくてはならないことが意図されていてもよい。パフォーマンス要求事項のために必要な情報は、たとえば、取り付けられている工具の荷重パラメータである。同様に取扱の方法も、パフォーマンス要求事項の判定にあたって一定の役割を演じる場合がある。
【0021】
データ担体からのデータの読み取り、および/またはデータ担体から制御装置への読み出されたデータの伝送は、特に、信頼度の高い技術で行うことができる。データは、特に信頼度の高い技術で保存されている。信頼度の高いデータ伝送は、たとえばチェックサムの適用によって具体化することができる。データをデータ担体へ信頼度の高い技術で保存しなおすことも可能である。
【0022】
データ担体は、接触式のデータ担体または無接触式のデータ担体であってよい。データ担体は特にトランスポンダであってよい。トランスポンダは、たとえば読み取り機器に由来する無線で受信される信号に基づいて別の信号を自動的に生成し、読み取り機器へ無線で送信する装置である。トランスポンダはいわゆるRFID(Radio Frequency Identification)技術で利用されており、RFIDタグとも呼ばれる。トランスポンダは、能動的または受動的なトランスポンダであってよい。能動的なトランスポンダは独自の能動的なエネルギー源を有しており、たとえばバッテリや蓄電池を有している。それに対して、受動的なトランスポンダは能動的なエネルギー源を含んでおらず、たとえばトランスポンダのコンデンサが読み取り機器の電磁場で充電されることによって、読み取り機器の電磁場により電気エネルギーの供給をうける。
【0023】
本発明による方法ないしロボットのさらに別の実施形態では、工具に関する情報が制御装置へたとえばロボットの入力手段を用いて入力され、それにより、取り付けられている医療用工具または取り付けられるべき医療用工具に合わせた作業領域の適合化を、入力された情報に基づいて行うことができる。
【0024】
本発明によるロボットは医療分野や外科分野で使用されるので、たとえば特定の医療処置について、ないしは特定の外科処置について、ただ1つの医療器具だけをロボットに取り付けられるべき工具として使用することが可能である。この器具はたとえば処置ないし治療の前に選択することができる。そしてパフォーマンス要求事項は、アプリケーションソフトウェアから制御装置へ特に信頼度の高い技術で、たとえばチェックサムを通じて確認しながら、伝送することができる。このような情報に基づいて、ロボットの作業領域が、特に同じく信頼度の高い技術で制約される。この制約は、たとえば計算規則または事前に作成された表を通じて行うことができる。同様に、速度、トルク、加速度なども制限することができる。
【0025】
処置ないし治療のときに複数の器具が使用される場合、および/またはパフォーマンス要求事項が作業ステップとともに変化する場合には、上に説明したプロセスを反復することができる。
【0026】
しかしながら未知の工具が使用される場合には、その器具にたとえば適切に選択された異なる識別姿勢をとらせて、それぞれに対応する関節トルク値が読み出されることによって、ロボットは自動的な荷重判定を行うことができる。各姿勢への移動およびトルクの読み取りは、いずれも信頼度の高い技術で行われるのが好ましい。そしてこのような情報から、好ましくは同じく信頼度の高い技術で器具の荷重パラメータを計算して、パフォーマンス要求事項を制限し、特に作業領域を制限することができる。
【0027】
これに応じて、本発明の方法ないしロボットの一変形形態では、ロボットに取り付けられた工具の少なくとも1つの荷重パラメータを、ロボットにより特に信頼度の高い技術で判定して、工具についてのパフォーマンス要求事項を判定することが意図される。このことは、ロボットにより特に信頼度の高い技術で工具を異なる位置へ動かし、特に信頼度の高い技術でロボットの軸に作用するトルクを判定することによって、またはロボットの駆動装置から印加されるトルクを判定することによって、実現することができる。あるいは、特に信頼度の高い技術でロボットにより工具を異なる位置へ動かし、ロボットの取付装置に作用する力および/またはトルクを特に信頼度の高い技術で判定することも可能である。荷重パラメータは、特に工具の質量および/またはその重心である。
【0028】
本発明の実施例が一例として添付の模式的な図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ロボットを示す図である。
【図2】ロボットに取付可能な複数の工具を示す図である。
【図3】ロボットの作業領域とともにロボットを示す平面図である。
【図4】ロボットとその作業領域を示す側面図である。
【図5】ロボットの複数の軸位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本実施例の事例では台座Sに取り付けられたロボットアームMを備えるロボットRを示している。ロボットアームMは実質的にロボットの可動部分をなしており、複数の軸1〜6と、複数のレバー7〜10と、フランジ18とを含んでおり、図2に示す医療用工具21〜24をこのフランジへ取付可能である。工具21〜24は、本実施例の事例で意図されているように医療用器具であってよく、特に外科用器具であってよい。
【0031】
各々の軸1〜6は駆動装置によって運動し、たとえば、ロボットRの制御コンピュータ17と図示しない仕方で電気接続された電気式の駆動装置11〜16によって運動し、それにより、ロボットのフランジ18の位置を空間内で実質的に自由にアライメントできるように、制御コンピュータ17ないし制御コンピュータ17で進行する計算プログラムが電気式の駆動装置11〜16を制御できるようになっている。ロボットRの電気式の駆動装置11〜16は、たとえば電動モータおよび場合によりモータを制御するパワーエレクトロニクスをそれぞれ含んでいる。
【0032】
本実施例の事例では制御コンピュータ17は、制御コンピュータないしそこで進行するコンピュータプログラムが、ロボットRの作業領域を制限することができるように施工されている。ロボットRの作業領域とは、作業および移動をするためのロボットRの領域を意味している。ロボットRの作動時には、特にロボットRのすべての軸1〜6が作業領域の内部に存在していなければならない。図3と図4は、制御コンピュータ17により好ましくは信頼度の高い技術で調整されるロボットRの作業領域30の一例を示しており、図3はロボットRおよび作業領域30を示す平面図であり、図4はロボットRおよび作業領域30を示す側面図である。
【0033】
本実施例の事例では、制御コンピュータ17はロボットRの作業領域30を、現在フランジ18に取り付けられている工具21〜24に合わせて、ないしは現在フランジ18に取り付けられている医療用工具21〜24で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項に合わせて、動的に充足することが意図されている。
【0034】
本実施例の事例において、工具21〜24が現在フランジ18に取り付けられているという情報を制御コンピュータ17が得るために、各々の工具21〜24には、本実施例の事例では受動的なトランスポンダである少なくとも1つのRFIDトランスポンダ25〜28がそれぞれ配置されている。トランスポンダは原理に関して当業者に周知であるので、トランスポンダ25〜28は詳しくは図示されておらず、その機能性についてこれ以上は説明しない。
【0035】
本実施例の事例では、各々のトランスポンダ25〜28には、工具21〜24に関する情報を含むデータ31〜34が保存されている。この情報は、たとえば該当する工具21〜24の質量および重心を含んでいる。あるいはこの情報は、工具21〜24の使用ないしは相応の医療用アプリケーションのパフォーマンス要求事項の適用についての指定事項を含むこともでき、たとえば許容される速度プロファイル、許容される加速度プロファイル、あるいは、該当する工具21〜24の使用に基づいてロボットRに求められる剛性などを含むことができる。
【0036】
さらに本実施例の事例では、ロボットRのフランジ18に、図示しない仕方で制御コンピュータ17と接続された読み取り装置19が取り付けられている。
【0037】
ロボットRのフランジ18に工具21〜24のうちの1つが取り付けられると、取付の終了後、読み取り装置19が信号を送信し、この信号は、フランジ18に取り付けられた工具21〜24のトランスポンダ25〜28によって受信される。図1に示す実施例では、工具21はフランジ18にすでに取り付けられており、それを受けて工具21のトランスポンダ25は読み取り装置19から得られた信号を受信し、それに応じて応答信号を自動的に生成して、これを読み取り装置19へ送信する。応答信号は工具21のデータ31を有している。読み取り装置19は、データ31を含む応答信号をトランスポンダ25から受信して、データ31を制御コンピュータ17へ伝送する。データ31の読み取り、ならびに読み取り装置19から制御コンピュータ17へのデータ31の伝送は、たとえばチェックサムを利用して、信頼度の高い技術で行われる。
【0038】
制御コンピュータ17はデータ31を受けとり、工具21のパフォーマンス要求事項、質量、および/または重心に関する情報に基づいて、工具21に割り当てられる作業領域30を判定する。作業領域30の判定は、たとえば計算規則を通じて行われるか、または事前に作成されて制御コンピュータ17に保存される表を通じて行われる。
【0039】
工具21に割り当てられる作業領域30の判定と調整は、たとえば自動式に行うことができる。あるいは、たとえば詳しくは図示しない人物が制御コンピュータ17の操作手段20を操作することによって、トランスポンダ25からのデータ31の読み取りを手動式に開始することも可能である。その追加または代替として、作業領域30の変更を手動式に操作することが意図されていてもよい。
【0040】
同様に、制御コンピュータ17からトランスポンダ25への信頼度の高い逆方向通信路を介して、トランスポンダに信頼度の高い技術で書き込みをすることが可能であり、それにより、たとえば動作時間を記憶させることができる。
【0041】
作業領域30の調整に必要なデータを、工具に配置されたデータ記憶装置に保存する代わりに、使用する工具21〜24に関する情報を制御コンピュータ17に保存しておくことが意図されていてもよい。このように、この人物は制御コンピュータ17で使用する工具21〜24に関する入力を行うことが可能であり、そのために、たとえば制御コンピュータ17と接続されたスクリーン29によって工具の選択が提供される。そしてこの人物は、たとえば制御コンピュータ17と接続されたコンピュータマウス35でクリックをすることで、該当する工具を選択することができる。すると、選択された工具のパフォーマンス要求事項および該当する荷重パラメータ(質量と重力)が、アプリケーションソフトウェアから制御コンピュータ17へ信頼度の高い技術で、たとえばチェックサムを通じて確認されたうえで、伝送される。こうした情報に基づき、ロボットRの作業領域30が同じく信頼度の高い技術で制限される。同様に、操作員によるコンフィギュレーションも信頼度の高い技術で行われるのが好ましい。
【0042】
工具21〜24ないしそのパフォーマンス要求事項に関する情報が既知でない場合、本実施例の事例では、ロボットRに取り付けられている工具21〜24の質量と重心を次のようにして判定することが意図される:
制御コンピュータ17が電気式の駆動装置11〜16を制御して、軸1〜6が事前設定された位置にくるようにする。図5では、3つの異なる軸位置S1〜S3を示すことによって、その様子が図示されている。次いで、電気式の駆動装置11〜16により印加されるトルクがそれぞれ異なる軸位置S1〜S3について、たとえば駆動装置11〜16の電流の評価によって、またはロボットRに組み込まれた力センサおよび/またはトルクセンサによって判定される。
【0043】
あるいは、ロボットRがそのフランジ18に取り付けられている工具21を異なる位置へと移動させ、フランジ18に作用する力および/またはトルクから判定をすることも可能である。
【0044】
姿勢の変更(軸位置S1〜S3)およびトルクの判定および/または計算は、いずれも信頼度の高い技術で行われるのが好ましい。そしてこのような情報から、(同様に信頼度の高い技術で)ロボットRに取り付けられている工具の荷重パラメータ(質量と重心)を計算し、それに準じて該当する作業領域30を設定することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ロボットのパフォーマンス要求事項を充足する方法において、
複数の軸(1〜6)と1つの制御装置(17)とを有するロボット(R)の取付装置(18)に医療用工具(21〜24)を取り付ける方法ステップと、
制御装置(17)により特に信頼度の高い技術で前記ロボット(R)の作業領域(30)を適合化し、それにより、前記医療用工具(21〜24)で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項を前記ロボット(R)が充足するようにする方法ステップと
を有している方法。
【請求項2】
前記アプリケーションのパフォーマンス要求事項は、
求められる速度能力、
求められる加速度能力、
ロボット(R)に作用する荷重、
工具(21〜24)の使用に基づいて前記ロボット(R)に求められる剛性、
ロボット(R)の制動距離、および/または
ロボット(R)の操作性
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パフォーマンス要求事項を充足する前記作業領域(30)を決定するために、前記ロボット(R)に取り付けられている前記工具(21〜24)に関する情報の自動的な判定を含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工具(21〜24)に配置されたデータ担体(25〜28)からデータ(31〜34)を読み取り、該データ(31〜34)は前記工具(21〜24)に関する情報および/またはそのパフォーマンス要求事項に関する情報を有しており、
読み取られた前記データ(31〜34)に基づいて前記制御装置(17)を自動的に適合化し、それにより該制御装置が前記作業領域(30)を適合化する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記データ担体はトランスポンダ(25〜28)であり、前記データ(31〜34)は特に前記ロボット(R)に配置された読み取り装置(19)によって読み取られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
追加的に、
取付装置(18)への前記工具(21〜24)の取付後に前記データ(31〜34)の読み取りを手動式に開始し、
読み取られた前記データ(31〜34)に基づき、および手動式の操作に基づき、前記制御装置(17)を適合化し、それにより該制御装置が前記作業領域(30)を適合化し、および/または
データ(31〜35)を前記データ担体(25〜28)から前記制御装置(17)へ信頼度の高い技術で伝送する、
請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記工具(21〜24)に関わるパフォーマンス要求事項を判定するために、前記ロボット(R)に取り付けられている前記工具(21〜24)の少なくとも1つの荷重パラメータを前記ロボット(R)により特に信頼度の高い技術で判定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記荷重パラメータを判定するために、
ロボット(R)によって前記工具(21〜24)をさまざまに異なる位置(S1〜S3)へ特に信頼度の高い技術で動かし、前記ロボット(R)の軸(1〜6)に作用するトルクを判定し、または前記ロボット(R)の駆動装置(11〜16)から印加されるトルクを特に信頼度の高い技術で判定するか、または、
ロボット(R)によって前記工具(21〜24)をさまざまに異なる位置(S1〜S3)へ特に信頼度の高い技術で動かし、前記ロボット(R)の前記取付装置(18)に作用する力および/またはトルクを特に信頼度の高い技術で判定する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工具(21〜24)に関する情報を前記制御装置(17)へ入力し、入力された前記情報に基づいて前記作業領域(30)を適合化する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記取付装置は前記ロボット(R)のフランジ(18)であり、および/または
工具(21〜24)は前記ロボット(R)により特に自動式に可動の医療用器具である、
請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
医療用ロボットにおいて、
複数の可動の軸(1〜6)および取付装置(18)を備えるロボットアーム(M)と、
ロボットアーム(M)の前記軸(1〜6)を駆動装置(11〜16)によって動かすための制御装置(17)と
を有しており、前記制御装置(17)は特に信頼度の高い技術で前記ロボット(R)の作業領域(30)を適合化するようにセットアップされており、それにより、医療用工具(21〜24)で実行されるべきアプリケーションのパフォーマンス要求事項を前記ロボット(R)が充足するようになっている医療用ロボット。
【請求項12】
前記アプリケーションのパフォーマンス要求事項は、
求められる速度能力、
求められる加速度能力、
ロボット(R)に作用する荷重、
工具(21〜24)の使用に基づいて前記ロボット(R)に求められる剛性、
ロボット(R)の制動距離、および/または
ロボット(R)の操作性
を含んでいる、請求項11に記載のロボット。
【請求項13】
前記パフォーマンス要求事項を充足する前記作業領域(30)を決定するために、前記ロボット(R)に取り付けられている前記工具(21〜24)に関する情報を自動的に判定するようにセットアップされている、請求項11または12に記載のロボット。
【請求項14】
取付装置(18)に取り付けられている前記工具(21〜24)に配置されたデータ担体(25〜28)からデータ(31〜34)を特に信頼度の高い技術で読み取るようにセットアップされた読み取り装置(19)を有しており、前記データ(31〜34)は工具(21〜24)に関する情報および/またはそのパフォーマンス要求事項に関する情報を有しており、前記制御装置(17)は読み取られた前記データ(31〜34)に基づいて前記作業領域(30)を適合化するようにセットアップされている、請求項13に記載のロボット。
【請求項15】
前記データ担体はトランスポンダ(25〜28)であり、特に受動的なトランスポンダである、請求項14に記載のロボット。
【請求項16】
前記パフォーマンス要求事項を判定するために、前記ロボット(R)に取り付けられている工具(21〜24)の少なくとも1つの荷重パラメータを特に信頼度の高い技術で判定するようにセットアップされている、請求項11または12に記載のロボット。
【請求項17】
取り付けられている前記工具(21〜24)を特に信頼度の高い技術でさまざまに異なる位置(S1〜S3)へ動かし、前記ロボット(R)の前記軸(1〜6)に作用するトルクまたは前記ロボット(R)の前記駆動装置(11〜16)から印加されるトルクを判定して、取り付けられている前記工具(21〜24)の前記荷重パラメータを判定し、または、
工具(21〜24)を特に信頼度の高い技術でさまざまに異なる位置(S1〜S3)へ動かし、前記ロボット(R)の前記取付装置(18)に作用する力および/またはトルクを特に信頼度の高い技術で判定する
ようにセットアップされている、請求項16に記載のロボット。
【請求項18】
前記工具(21〜24)に関する情報を前記制御装置(17)へ入力するための入力手段(35)を有しており、前記制御装置(17)は入力された情報に基づいて前記作業領域(30)を適合化するようにセットアップされている、請求項11から17までのいずれか一項に記載のロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−519741(P2011−519741A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507890(P2011−507890)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055408
【国際公開番号】WO2009/135835
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(598057361)クーカ・ロボター・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (16)
【氏名又は名称原語表記】KUKA ROBOTER GMBH
【Fターム(参考)】