説明

医療画像処理装置

【課題】 食道等の管状部位の内面を撮像した医療画像から診断に適した展開図の画像を生成する医療画像処理装置を提供する。
【解決手段】 内視鏡により撮像した食道等の対象物の画像データを取り込み、前処理した後、各が素に対応する対象物上の3次元位置の算出を行って、3次元形状の中心を通る直線を推定し、さらに直線を基準とした座標系の変換パラメータを算出する等して、撮像面の画素を対象物のサイズに近い円柱体の表面に投影して、展開図を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の管状部位に対する医療画像から展開図を生成する画像処理を行う医療画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置による食道検査のスクリーニングにおいて、胃と食道との接合部から連続して食道内に存在する円柱上皮(バレット粘膜)の広がりや円柱上皮と扁平上皮との境界形状は、バレット食道を診断するための有益な情報の一つである。
直視型の内視鏡により、管状部位の内面を撮像面に撮像された内視鏡画像そのままでは、円柱上皮の広がり方(全周性か舌状に延びている)を正確に判断することが難しい等の問題がある。
【特許文献1】特開平8−256295号公報
【特許文献2】米国特許4,962,540号明細書
【非特許文献1】コンピュータ画像処理入門 総研出版( 株) 田村秀行監修:p.148 〜p.150
【非特許文献2】コンピュータビジョン,投影中心に点光源がある場合のShape−from−Shading−内視鏡形状からの3次元形状復元− 岡谷、出口:pp.19−26,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、食道のような管状部位の内面を撮像した内視鏡画像からより診断し易い画像、具体的には展開図を生成して、この展開図を表示することが有用となるが、これまで実現されていなかった。
【0004】
(発明の目的)
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、食道等の管状部位の内面を撮像した医療画像から診断し易い展開図の画像を生成できる医療画像処理装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、管状部位の内面の立体形状を推定することにより、精度の良い展開図の画像を生成できる医療画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の医療画像処理装置は、生体内の管状部位を撮像した少なくとも1枚の医療画像から前記管状部位の立体形状を推定する立体形状推定手段と、
前記推定された立体形状に対して幾何学的な変換を行う画像変換手段と、
前記画像変換手段によって生成された変換画像を展開図として表示手段に出力する展開図出力手段と、
を有することを特徴とする。
上記構成により、食道等の管状部位の内面の立体形状を推定してその立体形状に対応する円柱体表面等に画像変換手段により医療画像を投影する等の幾何学的な変換を行い、診断し易い展開図の画像を生成できるようにしている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、食道等の管状器官等の内面を撮像した医療画像から、診断し易い展開図の画像を生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0008】
図1ないし図14は、本発明の実施例1に係り、図1は本発明の実施例1の画像処理装置を備えた内視鏡システムの構成を示し、図2は食道のような管状部位内に内視鏡を挿入して撮像する様子を示し、図3は図2の内視鏡によって撮影された内視鏡画像を示し、図4は画像処理装置を構成するCPUによる画像処理機能を示し、図5は展開図を生成する為の処理内容を示し、図6は撮像された画像の各画素に対応する物体上の対応点と光源等との位置関係を示し、図7は光源からの光を物体の面で反射する様子などを示す。
また、図8は対応点の周囲に設定される複数の法線ベクトルを示し、図9はベクトルmが画像上の位置を通ることを示し、図10は3次元形状の中心を通る直線を求めるための説明図を示し、図11は3次元形状の座標系から直線を基準にした座標系に変換する説明図を示し、図12は内視鏡画像の位置を円柱体表面に投影して展開図を生成する説明図を示し、図13は補間処理により展開図を生成する説明図を示し、図14は表示装置に表示される内視鏡画像及び展開図を示す。
【0009】
図1に示す内視鏡システム1は、内視鏡観察装置2と、この内視鏡観察装置2により得られた内視鏡画像に対して画像処理を行うパーソナルコンピュータ等により構成される内視鏡画像処理装置(以下、単に画像処理装置と略記)3と、この画像処理装置3により画像処理された画像を表示する表示モニタ4とから構成される。
内視鏡観察装置2は、体腔内に挿入される内視鏡6と、この内視鏡6に照明光を供給する光源装置7と、内視鏡6の撮像手段に対する信号処理を行うカメラコントロールユニット(CCUと略記)8と、このCCU8から出力される映像信号が入力されることにより、撮像素子で撮影した内視鏡画像を表示するモニタ9とを有する。
【0010】
内視鏡6は、体腔内に挿入される挿入部11と、この挿入部11の後端に設けられた操作部12とを有する。また、挿入部11内には照明光を伝送するライトガイド13が挿通されている。
このライドガイド13の後端は、光源装置7に接続される。そして、この光源装置7から供給される照明光をライトガイド13により転送し、挿入部11の先端部14に設けた照明窓に取り付けられた先端面から(伝送した照明光を)出射し、患部等の被写体を照明する。
照明窓に隣接する観察窓に取り付けた対物レンズ15と、この対物レンズ15の結像位置に配置された固体撮像素子としての例えば電荷結合素子(CCDと略記)16とによる撮像装置17が設けてある。そして、このCCD16の撮像面に結蔵された光学像は、このCCD16により光電変換される。
【0011】
このCCD16は、信号線を介してCCU8と接続され、このCCU8からCCD駆動信号が印加されることにより、CCD16は光電変換した画像信号を出力する。この画像信号は、CCU8内の映像処理回路により信号処理され、映像信号に変換される。 この映像信号はモニタ9に出力され、モニタ9の表示面には、内視鏡画像が表示される。この映像信号は、画像処理装置3にも入力される。
この画像処理装置3は、内視鏡観察装置2から入力される内視鏡画像に対応する映像信号が入力される画像入力部21と、この画像入力部21から入力された画像データに対する画像処理を行う中央演算処理装置としてのCPU22と、このCPU22により画像処理を実行させる処理プログラム(制御プログラム)を記憶する処理プログラム記憶部23とを有する。
【0012】
また、この画像処理装置3は画像入力部21から入力される画像データ等を記憶する画像記憶部24と、CPU22により処理された情報等を記憶する情報記憶部25と、CPU22により処理された画像データ及び情報等を記憶装置インターフエース26を介して記憶する記憶装置としてのハードディスク27と、CPU22により処理された画像データ等を表示するための表示処理を行う表示処理部28と、ユーザが画像処理のパラメータ等のデータ入力や指示操作を行うキーボードなどからなる入力操作部29とを有する。
【0013】
そして、この表示処理部28により生成された映像信号は、表示モニタ4に表示され、この表示モニタ4の表示面には画像処理された処理画像が表示される。なお、画像入力部21、CPU22、処理プログラム記憶部23、画像記憶部24、情報記憶部25、記憶装置インターフェース26、表示処理部28、入力操作部29は、データバス30を介して互いに接続されている。
【0014】
本実施例においては、図2に示すように、例えば食道31のような管状部位(管状器官)に直視型の内視鏡6の挿入部11が挿入され、撮像装置17により撮像される。 図3は、この直視型の内視鏡6によって撮像されたバレット食道の内視鏡画像Iaの1例を示している。バレット食道は、胃と食道の接合部から口腔に向かって連続的に食道粘膜(扁平上皮)が胃粘膜(円柱上皮)に変性した状態である。この変性した円柱上皮の広がり方や円柱上皮と扁平上皮との境界の特徴的な形状を内視鏡6によって観察することにより、術者はバレット食道の診断を行う。
【0015】
図3の内視鏡画像Iaの場合には、食道31から胃内部に至る管状部位部分が最暗部画像33、その周囲に胃及び食道の接合部の画像34、接合部の周囲の円柱上皮の画像35、そしてこの円柱上皮の周囲の扁平上皮の画像36が表示されている。
本実施例では、食道31のような管状器官を直視型の内視鏡6によって撮像し、撮像された画像から対象物の立体形状を推定する。
推定された立体形状の中心を通過する直線を推定し、直線を基準に幾何学的な変換することで展開図にし易い画像を生成し、その画像を展開図として表示手段に出力する。そして、表示手段の表示面に、展開図が表示されるようにする。
【0016】
つまり、画像処理装置3を構成するCPU22は、図4に示すようにその機能として、立体形状推定手段(機能)22aと、推定された立体形状の中心を通過する直線の推定手段(機能)22bと、推定された直線を基準として展開図として表示し易い形状に幾何学的な変換を行う幾何学的変換手段(機能)22cと、幾何学的な変換により展開図の画像を表示モニタ4に出力する展開図出力手段(機能)22dと有し、この表示モニタ4の表示面には展開図が表示される。
本実施例においては、図4に示した立体形状推定手段22a、直線の推定手段22b、幾何学的変換手段22c、展開図出力手段22dをソフトウェア的に実現している。つまり、処理プログラム記憶部23に記憶(格納)された処理プログラムをCPU22は読み出し、CPU22は、この処理プログラムに従って図5に示すフローチャートの処理を実行する。
【0017】
以下、展開図を生成して表示する処理を図5のフローチャートに従って説明する。 画像処理装置3の動作が開始すると、CPU22は処理プログラム記憶部23の処理プログラムを読み出し、その処理プログラムに従った処理を開始する。CPU22は最初のステップS1において、内視鏡観察装置2のCCU8から画像入力部21を経て入力される原画像としての画像データを取得する。
そして、次のステップS2においてCPU22は、取得された画像データに対して歪曲収差補正(特開平8−256295号公報)や、ノイズ除去等の前処理を行う。ステップS3においてCPU22は、画像内の画素に対応する対象物体の3次元位置を以下の手順で求める。
【0018】
図6に示すように視点位置Oにある撮像手段によって撮影された画像の3画素に対応する対象物体上の画素対応点E1、E2,E3を抽出し、画素対応点E1、E2,E3の3次元位置と光源Q及び視点Oとの位置関係から以下の式(1)が求められる。
【数1】

【0019】
ただし、画素対応点E1、E2,E3の3次元位置のベクトルをk11、k22、k33(m1,m2,m3:大きさ1の単位ベクトル)、視点Oから光源Qへのベクトルをd、光源Qから3画素対応点E1、E2,E3の3次元位置へのベクトルをr1、r2、r3とする。
【0020】
画素対応点E1、E2,E3の3次元位置で構成される平面の法線ベクトルをnとすると、式(1)よりベクトルnは、次の式(2)のようになり、ベクトル成分k1、k2、k3の比率で表される。
【数2】

【0021】
ただし、点E1から点E2へのベクトルをl12,点E2から点E3へのベクトルをl23,×は外積を表す。また、図7(A)に示すように撮像対象となる(食道内面等の)対象物体の表面は、全方向に均一に光を反射する拡散反射率と仮定すると、画素対応点E1、E2,E3の輝度値I、I,Iは、次の式(3)で表される。
【数3】

【0022】
ただし、hは対象物体の表面の拡散反射率、Iqは光源Qの光度、βは点Pにおける対象物体の表面の法線ベクトルnと光源Qから点Pに至るベクトルrとのなす角である。なお、図7(A)の点Pは、図6の画素対応点E1、E2,E3を代表している(このため、ベクトルrは、図6のベクトルr1、r2、r3を代表している)。
次に以下の条件(a)及び(b)を設定して、これらの条件(a)及び(b)を満たす仮定のもとで、撮像される画素に対応する対象物体の3次元位置の算出を行う。
【0023】
今、条件(a)視点位置Oと光源Qの距離≪視点位置Oと画素対応点E1、E2,E3の3次元位置との距離、つまり、|d|≪|r|(或いは|d|≪|r|ここでm=1〜3)、及び
条件(b)画素対応点E1、E2,E3の3次元位置が近接している、
の両条件(a),(b)が成立する場合、以下の近似式(4)が得られる。
【数4】

【0024】
上記条件(a)は、図7(B)に示すようにdの絶対値に比べてrの絶対値が大きければ成立する。また、条件(b)は、食道等の管状の内面を撮像する場合においては、殆どの場合において成立すると考えられる。なお、図7(B)は、挿入部の先端部14における先端面部分を拡大して示す。
この先端面には、ライトガイド13の先端面(或いは照明レンズ)13aが臨み、ここから照明光を出射する。つまり、このライトガイド13の先端面13aは、図6及び図7(A)の光源Qに相当する。また、この先端面13aに隣接して、視点Oに相当する撮像手段(撮像装置17)の対物レンズ15が配置されている。
【0025】
上記式(4)よりk1、k2、k3の比率が求められ、法線ベクトルnが求められる。
画像内の各画素に対応する対象物体の表面上の画素対応点は、隣接する画素対応点が複数存在する為、図8に示すように1つの画素対応点Paの周囲の点Pb〜Peにおける各3点により形成される各面に対してそれぞれ法線ベクトルn〜nが求められる。よって、これら複数の法線ベクトルn〜nの平均ベクトルを算出し、その平均ベクトルを画素対応点の法線ベクトルとしてもよい。
図7(A)に示したように対象物体の表面を拡散反射と仮定し、さらに角βを書き換えることにより、各画素対応点P(x,y)の輝度値I(x,y)は以下のような式(5)で表すことができる。
【数5】

【0026】
ただし、hは対象表面の拡散反射率、Iqは光源Qの光度、βは点Pにおける対象物体の表面の法線ベクトルn(x,y)と光源方向r(x,y)のなす角である。
また、点Pにおける光源方向r(x,y)は、以下のような式(6)で表すことができる。
【数6】

【0027】
ただし、図7(B)に示すように対物レンズ15の視点Oから光源Qへのベクトルをd、視点Oから対象物体の位置Pへの単位ベクトルをm(x,y)、距離OPをk(x,y)とする。
ベクトルm(x,y)は、図9に示すように(CCD16の)撮像面42の画像上の位置(x,y)を通ることから、以下の式(7)に示すように
【数7】

【0028】
となる。ただし、fは撮像装置17の焦点距離である。従って画像上の各画素の輝度値I(x,y)は次のような式(8)で表すことができる。
【数8】

【0029】
上記式(8)においてk(x,y)以外は全て既知であることから、式(8)よりk(x,y)を算出し、画像上の各画素(x,y)に対応する3次元位置(X,Y,Z)を、以下の式(9)のように算出する。
【数9】

【0030】
次にステップS4においてCPU22は、ステップS3で得られた3次元形状(各画素対応点の3次元位置によって得られた形状)の中心を通過する直線を求める。
【0031】
図10に示すように視点0から3次元形状の点Pへのベクトルをp、直線上の任意の点Aへのベクトルをa、直線の方向ベクトルをlとおくとヽ3次元形状の点Pから垂直に直線におろしたベクトルu(x,y)は次の式(10)で表される。
【数10】

【0032】
推定された3次元形状が円柱体に近い形状を示す場合、3次元形状の中心を通過する直線は、各画素に対応する3次元形状の各3次元位置から等距離に存在すると考えられる。従って、以下の式(11)に示すように、式(10)より得られるベクトルu(x,y)の大きさと任意の大きさr(円柱体の半径)との差の総和が最も小さくなるように任意の大きさrと直線の方向ベクトルlと点Aへのベクトルaを最小二乗法により推定する。
【数11】

【0033】
次のステップS5においてCPU22は、各画素に対応する3次元形状の3次元位置を座標系X−Y−Zから直線を基準とした座標系X−Y−ZLに変換する為のパラメータ回転行列R、並進行列Mを、図11に示す関係から求める。
座標系X−Y−ZのZ方向のベクトルZ、直線のベクトルlより単位ベクトルv=(vx,vy,vz)と角度γは、以下の式(12)に示すように
【数12】

【0034】
となる。
【0035】
よって、回転行列R、並進行列Mは次の式(13)、式(14)のようになる。
【数13】

【0036】
ここで、並進行列Mとして、ベクトルa=(a,a,a)と設定する。
次のステップS6においてCPU22は、座標系X−Y−Zで表されている3次元位置を座標系XL−YL−ZLに変換する。この変換式は、次の式(15)のようになる。
【数14】

【0037】
次のステップS7においてCPU22は、式(15)によって図12(A)の内視鏡画像Iaに対応する図12(B)に示すように変換された各画素対応点の3次元位置PL=(XL,YL,ZL)を、さらにZLを中心とした円柱体表面に投影する。
【0038】
この円柱体としては、例えば食道等の管状部位のサイズに近い値に設定する。例えば、管状部位の内径を平均化した値を円柱体の直径とする。
例えば図12(A)における内視鏡画像Iaにおける境界部分A,B,Cは、図12(B)における同じ符号A,B,Cで示す3次元形状部分に対応し、その3次元形状部分の各位置は太い線で示すZLを中心とした円柱体表面に投影される。
【0039】
円柱体表面の座標系をθL−ZLとすると、変換された3次元位置PL=(XL,YL,ZL)は以下の式(16)によって求められる。
【数15】

【0040】
画像の全ての画素に対応する円柱体表面の位置C(θL、ZL)を求め、各画素の輝度値を座標系θL−ZLに貼り付ける。そして、図12(C)に示す展開図Ibを生成する。なお、輝度値としては、カラー画像の場合には、各色信号の輝度値を表す。
【0041】
図12(C)或いは図13に示すように円柱体表面に貼り付けられた画素は、不均一に存在し、ZLが大きくになるほど粗くなる(視点から遠方側となる位置の画像部分ほど粗くなる)。
【0042】
また、図13の部分拡大図に示すように貼り付けられた各画素は、表示装置に表示される画像の各画素位置と一致しない場合が多い。従って、補間処理によって表示装置に表示する画像、すなわち展開図Ibを生成する。
ステップS8においてCPU22は、上記補間処理を行い、表示モニタ4等の表示装置に表示可能な画像、すなわち展開図Ibを生成する。次のステップS9においてCPU22は、内視鏡画像Iaと展開図Ibを表示モニタ4に出力する。そして、図14に示すように表示モニタ4には、ステップS10の内視鏡画像Iaと展開図Ibとが表示されるようになる。そして、この展開図Ibを表示する処理が終了する。
【0043】
本実施例は、以下の効果を有する。
胃と食道の接合部から連続的に存在する円柱上皮の広がり方、円柱上皮と扁平上皮の特徴的な形状を、展開された展開図(展開図の画像)により表示し、術者は、より比較等がし易い状態で観察できる為、バレット食道等の管状部位の診断をより容易に行うことが可能となる。
つまり、従来例では、図14における内視鏡画像Iaのみが表示され、この内視鏡画像Iaでは管状部位の内面を2次元的に投影した画像となっており、例えば奥行き方向(管状部位の軸方向)の距離の値によって、縮小された状態で各部が表示される。
【0044】
このため、例えば奥行き方向の値が異なる部分を比較しようとしても、各部が奥行き方向の距離によりスケールが異なっているため、比較することが簡単にできない。
これに対して、本実施例によれば、2次元的に撮像された内視鏡画像Iaにおける各画素に対応する管状部位の内面の位置の3次元位置を算出し、3次元位置の算出により、各画素の位置情報を周方向の位置情報と、この周方向と直交する管腔の略中心軸方向の距離成分情報とに変換し、さらに管状部位の平均的サイズ等に設定した円柱体の表面に投影した状態で、各部の輝度情報を周方向の位置情報、つまり角度の値で展開して表示するようにしている。
このため、本実施例によれば、奥行き方向が異なる位置でも、周方向のスケールを揃えて表示でき、従って場所が異なる部位での比較が簡単に行え、さらに過去の症例等との比較等も客観的かつ簡単に行える。
従って、本実施例によれば、管状部位の診断を容易に行うことができる展開図の画像を生成でき、診断上、非常に有効な画像処理装置及び画像処理方法を提供できる。
【実施例2】
【0045】
次に図15から図17を参照して本発明の実施例2を説明する。本実施例の画像処理装置は、実施例1と同じ構成であり、処理プログラム記憶部23に記憶されている処理プログラムが異なる。
実施例1においては、1枚の画像から各画素に対応する画素対応点の3次元位置を推定していたが、本実施例では以下に説明するように、複数の内視鏡画像を撮像し、その撮像された複数の内視鏡画像に対応する対象物体の3次元位置を算出する。
3次元位置の算出後における以後の処理は、実施例1と同様である。図15は本実施例における3次元位置を算出するフローチャートを示し、図16はその処理内容の概略の動作を示し、図17はテンプレート画像と参照画像とのシフト量を求める様子を示す。 以下、図15及び図16を参照して3次元画像データが算出されるまでの過程を説明する。
【0046】
ステップS11に示すように画像処理装置3のCPU22は、内視鏡6の挿入部11の先端部14の撮像装置17を移動しながら対象物を撮像して、複数の画像データを取得する。
撮像された複数の画像データは、画像入力部21を経て画像処理装置3内の画像記憶部24に一時記憶される。
つまり、同一対象物に対して(内視鏡6の先端部14の)撮像装置17を移動しながら、少しづつ位置が異なる2次元画像データの取得を行う。
【0047】
挿入部11の先端側を移動して撮像している様子を図16に示している。ここでは、PoからPNまで移動し、その際の撮像により得られた画像データを四角で示している。 次のステップS12においてCPU22は、ステップS11で取得された複数の画像に対して歪曲収差補正等の前処理を適用し、画像の歪を補正する。
内視鏡観察装置2から送られてくる内視鏡の画像データでは、対物レンズとして広角レンズを使用していることにより歪が発生するため、各画像に対して歪曲収差補正処理を適用し画像の歪を補正する。
【0048】
また、このステップS12においてCPU22は、補正された複数の画像(画像対)を用いて、対応点の追跡、つまり対象物を表す1つの画像(テンプレート画像)を選び、その画像上の複数の点を選択してそれぞれの点が他の参照画像(リファレンス画像)上でどのように移動しているかの追跡を行う。この対応点追跡を補足説明する。
対応点追跡は、図17(A)に示すように、検出しようとする対象物のテンプレート画像に、ある点を中心とした矩形領域(ウィンドウ)をt(x)とし、図17(B)に示すように参照画像にある大きさのサーチエリアSを設定し、サーチエリアS内の対応領域f(x)と前記テンプレート画像の矩形領域t(x)とのブロックマッチング処理を相互相関演算によって相関値が最大となる領域を求める演算で行い、その場合におけるテンプレート画像に対する参照画像の移動方向及び移動量を求める。
【0049】
例えば、次のような正規化された式(17)の相互相関D(u,v);
【数16】

【0050】
を用いて相関値を求め、それが最大となる領域を求め、その場合における移動方向及び移動量を求める。ここで、2重積分記号はサーチエリアS内での積分を表し、<f>、<t>はそれぞれf(x+u,y+v) 、t(x,y) のS内での平均を表す。
【0051】
なお、ブロックマッチング処理は、相互相関演算に限定されるものでなく、米国特許4,962,540号明細書に開示されているカラーマッチング手法を適用してもよい。(参照文献:コンピュータ画像処理入門 総研出版( 株)田村秀行監修:p.148 〜p.150 )上述のようにして、テンプレート画像上で選択された点の移動方向及び移動量の値を記述したシフトマップを求める。
図16においても隣接する撮像位置PとP、PとP、…等により、得られた画像データからシフトマップM、M、…の算出を行い、位置推定を行う様子を示している。
【0052】
ステップS12で求めたシフトマップを用いて、次のステップS13においてCPU22は、最急降下法等の反復処理により、撮像装置17の運動ベクトルを求め、対象物体の位置及び撮像装置17の位置との相対的な位置関係を求める。
【0053】
次のステップS14においてCPU22は、各シフトマップで求めた対象物体と撮像装置17との位置関係が同一の座標空間になるように変換し、それぞれの同一点での対象物体と撮像装置17の位置を平均して1つの対象物体の3次元形状を推定する(対象物体の各3次元位置を算出する)。
このようにして、対象物体の3次元位置を算出した後には、図5のステップS4に示す3次元形状の中心を通る直線の推定等の処理を行うことになる。
本実施例は、撮像装置17により撮像した複数の画像を用いることにより、実施例1と同様に、診断する場合に適した展開図の画像を得ることができる。
【0054】
なお、この他に、非特許文献2に開示されているように、1枚の画像からshape−from−shading法により、立体形状を推定し、この推定した立体形状から実施例1のように展開図を生成するようにしても良い。
この非特許文献2は、光源(先端部14のライトガイド先端面13a)からの距離が等しい管状器官の表面上の曲線に注目して、その曲線の発展方程式を偏微分方程式で記述し、これを解くことで3次元形状を復元(算出)するものである。3次元形状の算出後の処理は、実施例2の場合と同様の処理を行う。
【0055】
[付記]
1.請求項1において、前記医療画像の歪曲収差等を補正する補正手段を有することを特徴とする。
2.請求項1において、前記推定された立体形状に対して、その略中心を通る直線を推定する直線の推定手段を有することを特徴とする。
3.付記2において、前記推定された立体形状を表す座標系から、前記直線を基準とした座標系に変換する変換パラメータを算出する変換パラメータ算出手段を有することを特徴とする。
4.請求項1において、前記展開図出力手段は、前記変換画像に対して補間処理を行って前記展開図として出力する補間処理手段を有することを特徴とする。
【0056】
5.請求項1において、前記展開図を表示する展開図表示手段を有することを特徴とする。
6.付記5において、前記表示手段は、前記医療画像と前記展開図を表示することを特徴とする。
【0057】
7.生体内の管状部位を撮像した少なくとも1枚の医療画像から前記管状部位の立体形状を推定する立体形状推定ステップと、
前記推定された立体形状に対して幾何学的な変換を行う画像変換ステップと、
前記画像変換ステップによって生成された変換画像を展開図として表示手段に出力する展開図出力ステップと、
を有することを特徴とする医療画像処理方法。
【0058】
8.付記7において、前記立体形状推定ステップは、それぞれ異なる撮像位置で撮像された複数枚の医療画像間の同一対象の動き量から、前記撮像位置と前記管状部位の立体形状を推定することを特徴とする。
【0059】
9.付記7において、前記立体形状推定ステップは、照明手段からの距離が等しいと見なされる表面上の曲線に対する発展方程式から前記管状部位の立体形状を推定するshape−from−shading法を用いることを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0060】
体腔内に挿入して食道等の管状部位を撮像した画像からその管状部位の内面に略等しい円柱体の表面に投影して展開図として表示される画像を生成するようにして、奥行き方向の値が異なる部分でも同じスケールで表示でき、従って比較などがし易くかつ客観的な診断も行い易い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例1を備えた内視鏡システムの構成を示すブロック図。
【図2】食道のような円管状器官内に挿入された内視鏡により撮像する様子を示す図。
【図3】図2の内視鏡に設けられた撮像装置により撮像された内視鏡画像を示す図。
【図4】CPUによる画像処理機能を示すブロック図。
【図5】展開図を生成する為の処理手順を示すフローチャート図。
【図6】撮像された画像の各画素に対応する物体上の対応点と光源等との位置関係を示す図。
【図7】光源からの光を物体の面で反射する様子などを示す図。
【図8】対応点の周囲に設定される複数の法線ベクトルを示す図。
【図9】ベクトルmが画像上の位置を通ることを示す図。
【図10】3次元形状の中心を通る直線を求めるための説明図。
【図11】3次元形状の座標系から直線を基準にした座標系に変換する説明図。
【図12】内視鏡画像の位置を円柱体表面に投影して展開図を生成する説明図。
【図13】補間処理により展開図を生成する説明図。
【図14】表示装置に表示される内視鏡画像及び展開図を示す図。
【図15】本発明の実施例2における展開図を生成する為の処理手順の一部を示すフローチャート図。
【図16】図15における処理内容の説明図。
【図17】テンプレート画像と参照画像とのシフト量を求める様子の説明図。
【符号の説明】
【0062】
1…内視鏡システム
2…内視鏡観察装置
3…画像処理装置
4…表示モニタ
6…内視鏡
7…光源装置
8…CCU
11…挿入部
15…対物レンズ
16…CCD
17…撮像装置
21…画像入力部
22…CPU
23…処理プログラム記憶部
24…画像記憶部
25…情報記憶部
27…ハードディスク
28…表示処理部
29…入力操作部
31…食道
41…円柱体
42…撮像面
Ia…内視鏡画像
Ib…展開図(展開図の画像)
代理人 弁理士 伊藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の管状部位を撮像した少なくとも1枚の医療画像から前記管状部位の立体形状を推定する立体形状推定手段と、
前記推定された立体形状に対して幾何学的な変換を行う画像変換手段と、
前記画像変換手段によって生成された画像を展開図として表示手段に出力する展開図出力手段と、
を有することを特徴とする医療画像処理装置。
【請求項2】
前記立体形状推定手段は、それぞれ異なる撮像位置で撮像された複数枚の医療画像間の同一対象の動き量から、前記撮像位置と前記管状部位の立体形状を推定することを特徴とする請求項1に記載の医療画像処理装置。
【請求項3】
前記立体形状推定手段は、照明手段からの距離が等しいと見なされる表面上の曲線に対する発展方程式から前記管状部位の立体形状を推定するshape−from−shading法を用いることを特徴とする請求項1に記載の医療画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−187470(P2006−187470A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1842(P2005−1842)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】