説明

医薬組成物

治療上活性な薬剤、拡散バリアコーティング及び疎水性材料を含むコーティングを含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年8月15日に出願された米国特許仮出願番号60/403,711号の優先権を主張し、そのすべての開示内容は本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、治療上活性な薬剤、アニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティング、及び前記拡散バリアコーティングを被覆する疎水性材料を含むコーティングを含む、医薬基質組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト及び動物への経口投与後に組成物に含有される薬理学的に活性な物質の制御放出をもたらす組成物を調製することは、医薬分野において公知である。当該分野において公知である制御放出製剤は、特に被覆されたペレット、被覆された錠剤及びカプセル、ならびにイオン交換樹脂を含み、ここで、活性な医薬品の徐放は、製剤のコーティングの選択的分解を介するか又は薬物の放出に影響を及ぼす特別なマトリックスと混和することを介してもたらされる。いくつかの制御放出製剤は、投与後の予め決定された期間に単回用量の活性化合物の関連する連続放出をもたらす。
【0004】
許容しうる医薬組成物の要件の1つは、組成物の製造と患者による使用との間の時間内で、有効成分が実質的に分解しないように安定でなければならないことである。
【0005】
ある場合には、特定の有効成分が、製造プロセス中に特定の剤型のコーティングを介して漏出又は滲み出る傾向があり得、活性な薬剤の制御放出が求められる場合に、投与時に活性な薬剤の即時放出がおこることが見出されている。さらに、ある場合には、活性な薬剤の漏出又は滲出は、放出が認められないか又は実質的に認められないことが所望される活性な薬剤の実質的な放出をおこす。
【0006】
当該分野では、製剤内の有効成分が製造プロセス中及び/又は製剤の投与前の貯蔵時に制御放出コーティングを介して移動しない制御放出医薬製剤を開発する必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の目的及び概要
本発明の目的は、製剤におけるアニオン性ポリマーの包含により、製剤中の治療剤の安定性が改善された、経口制御放出医薬製剤を提供することである。
【0008】
本発明のある実施態様のさらなる目的は、製造プロセス中及び/又は製剤の投与前の貯蔵時の制御放出コーティングを介する治療剤の移動を減少させた、経口制御放出医薬製剤を提供することである。
【0009】
本発明のある実施態様のさらなる目的は、治療剤、基質を被覆するアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティング、及び拡散バリアコーティングを被覆する疎水性材料を含むコーティングを含む経口医薬製剤をもたらすことである。
【0010】
これらの目的及びその他は本発明によって達成されるが、それは、治療剤、拡散バリアコーティング、及び疎水性材料を含むコーティングを含む医薬組成物の部分を対象とする。
【0011】
ある実施態様では、本発明は、治療剤を含む1つもしくはそれ以上の医薬的に許容しうる基質、アニオン性ポリマーを含みかつ基質上を被覆する拡散バリアコーティング、及び疎水性材料を含みかつ拡散バリアコーティングを被覆するコーティングを含有する基質製剤に関する。
【0012】
ある好適な実施態様では、医薬製剤は、治療剤を含む層で被覆される医薬的に許容しうる不活性なビーズ製剤を含み、それは、アニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティングで上塗りされ、さらに疎水性材料を含むコーティングで上塗りされる。
【0013】
ある実施態様では、疎水性材料を含むコーティングは、治療剤の制御放出をもたらす。
【0014】
ある実施態様では、疎水性材料を含むコーティングは治療剤の隔離をもたらす。
【0015】
ある好適な実施態様では、治療剤は、プロトン化薬物、例えば、正に荷電する薬物である。
【0016】
ある実施態様では、本発明の医薬製剤は、オピオイドアンタゴニストを含む基質、基質を被覆するアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティング、及び前記拡散バリアコーティングを被覆する疎水性材料を含むコーティングを含有する。
【0017】
ある実施態様では、本発明の医薬製剤は、オピオイド鎮痛薬を含む基質、基質を被覆するアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティング、オピオイド鎮痛薬の制御放出をもたらす前記拡散バリアを被覆する疎水性材料を含むコーティングを含有する。
【0018】
本発明の目的のために、用語「制御放出」は、薬剤の治療上有益な血液レベル(しかし、毒性レベルより低い)が長期間持続し、例えば、8〜24時間の治療効果をもたらすように、治療剤が制御された速度で製剤から放出されることを意味する。
【0019】
本発明の目的のために、用語「隔離された(sequestered)」は、剤型が原型を保ったまま投与される場合、治療剤が放出されないか又は実質的に放出されないことを意味する。例えば、PCT公開国際公開第 01/58451号(その開示内容の全体が参照として本明細書に組み込まれる)は、剤型が原型を保ったまま投与される場合に放出されないか又は実質的に放出されない隔離されたオピオイドアンタゴニストを含む経口用剤型を開示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、製剤中のアニオン性ポリマーの包含により、治療剤を含む経口制御放出医薬製剤の安定性を改善することに関する。本発明の製剤は、好ましくは、3つの成分を有する。第1の成分は、1つもしくはそれ以上の治療剤を含む基質である。治療剤は、好ましくは基質上を被覆する。第2の成分は、治療剤を含む基質上を被覆する(例えば、治療剤を被覆する)アニオン性ポリマーである。第3の成分は、疎水性材料を含むコーティングであり、第2の成分を被覆する。第3の成分は、治療剤の制御放出を提供しうるか、あるいは治療剤の隔離を提供しうる。好ましくは、治療剤はプロトン化薬物分子(例えば、正に荷電)であり、プロトン化薬物分子に対して親和性を有する第2の成分のアニオン性ポリマーは結合し、製造プロセス中及び/又は投与前の貯蔵時の製剤の疎水性コーティングを介して、治療剤の拡散を防止する。疎水性コーティングを介する薬剤の拡散は、疎水性材料が水性分散液として基質に適用される場合、製造プロセス中、特に、問題である。したがって、拡散バリアコーティングは、疎水性材料の水性分散液の適用中の移動を防止又は減少させるような実施態様において有用である。
【0021】
本発明の製剤で用いる治療剤は、好ましくは、アニオン性ポリマー層においてアニオン性ポリマーに対して親和性を有するプロトン化薬物(例えば、正に荷電)である。ある実施態様では、本発明の治療剤は、麻薬拮抗薬(例えば、ナルトレキソン、ナロキソン、ナロルフォン(nalorphone))及び/又はオピオイド鎮痛薬(例えば、アニレリジン、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニール、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、モルヒネ、メペリジン、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドール)である。ある別の実施態様では、治療剤は、例えば、心血管薬(例えば、アセブトロール、アミオダロン、クロニジン、エナラプリル、グアンファシン、ヒドララジン、メカミルアミン、ニカルジピン、ニフェナロール(nifenalol)、プロカインアミド、キニジン、ソタロール、ベラパミル)、抗ヒスタミン薬(例えば、アンタゾリン、ブロモフェニラミン、カルビノキサミン、セチリジン、クロルフェニラミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、プロメタジン)、呼吸器用薬(例えば、デキストロメトルファン、偽エフェドリン、アルブテロール)、CNS刺激薬(例えば、アンフェタミン、カフェイン、メチルフェニデート、シブトラミン)、抗ウイルス/抗細菌/抗マラリア薬(例えば、アマンタジン、アミカシン、アモジアキン、バカンピシリン、クロロキン、プリマキン、キニーネ)、抗うつ薬(例えば、アセプロマジン、アミトリプチリン、ブプロピオン(bupropion)、デシプラミン、ドクサピン、フルオキセチン、イミプラミン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン)、麻酔薬(例えば、ブピバカイン、クロロプロカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、プロカイン、テトラカイン)、CNS抑制薬(ブスピロン、クロルジアゼポキシド、フルラゼパム、ヒドロキシジン、ミダゾラム、ゾルピデム)、それらの混合物、それらの塩などである。ある実施態様では、薬剤はオピオイドアンタゴニストを含む。ある実施態様では、薬剤はオピオイド鎮痛薬及びオピオイドアンタゴニストの両方を含む。他の実施態様では、治療剤はオピオイド鎮痛薬を含み、オピオイドアンタゴニストは含まない。好適な実施態様では、薬物分子は、薬物分子の酸性塩の形態である。
【0022】
好ましくは、治療剤は基質に適用される。治療剤で被覆された基質は、例えば、治療剤を溶媒、例えば、水に溶解し、次いで、溶液を基質、例えば、nu pariel 18/20ビーズ上に噴霧することによって調製しうる。治療剤を基質に適用する好適な方法は、ポリマーフィルムを用いる。本発明で用いるポリマーフィルムの例としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーを治療剤と共に水性又は有機媒体に溶解もしくは分散し、基質上に被覆しうる。治療剤に加えて、ポリマーフィルムは当該分野において公知の任意の充填剤、色素、及び染料を含有しうる。
【0023】
従来のコーティング技術、例えば、以下に記載の噴霧又はパンコーティングを用いて、治療剤を含むコーティングを基質に適用しうる。基質に適用される治療剤の量は、最終製品において所望される濃度に依存して変動しうる。好ましくは、基質上において治療剤を含む適用されたフィルムの重量は、約1〜約50重量%の増量、より好ましくは約2〜約30重量%の増量である。
【0024】
本発明で用いる基質としては、例えば、ビーズ、マイクロスフェア、シード、ペレット、イオン交換樹脂ビーズ、他の多粒子系などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の基質は医薬的に許容しうる不活性なビーズである。ビーズは、典型的には、これらに限定されないが、スクロース、マンニトール、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、セルロース、デンプン、それらの混合物から選択された群のうちの1つ又は混合物から作製される。不活性なビーズの好適なサイズは、0.1mm〜約2.5mmの範囲である。不活性なビーズは、好ましくは、当該分野において公知である予め製造されたビーズ(例えば、non-pareil PGビーズ)である。ある実施態様では、本発明で用いる基質は、複数の、即時放出マトリックス、又は即時もしくは制御放出マトリックス中に治療剤を含む圧縮マトリックス製剤(例えば、マトリックス錠)において治療薬を含みうるマトリックス多粒子系を含みうる。
【0025】
本発明によれば、治療剤を含む基質は、ついで、拡散バリアコーティングで上塗りされる。好適な実施態様では、基質がビーズである場合、製剤は治療剤を被覆する複数のビーズを含み、次に拡散バリアコーティングで上塗りされる。
【0026】
拡散バリアコーティングは、好ましくは、アニオン性ポリマー、及び、場合によっては他の賦形剤を含む。本発明で用いるアニオン性ポリマーの例としては、例えば、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、メタクリル酸ポリマー及びコポリマー、非アクリル腸溶性コーティングポリマー、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明によれば、アニオン性ポリマーの代わりに、又は該アニオン性ポリマーに加えて、製剤に含まれるプロトン化治療剤に対して親和性を有するセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース)、デンプン(カルボキシメチルデンプン)、ゴム(キサンタンゴム)、これらの混合物なども有用である。
【0027】
アクリル酸ポリマー及びコポリマー、及びメタクリル酸ポリマー及びコポリマーの例としては、例えば、カルボキシポリメチレン、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、及び、グリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ある好適な実施態様では、アクリルポリマーは、1つもしくはそれ以上のアンモニアメタクリレート(ammonio methacrylate)コポリマーが含まれる。アンモニアメタクリレート(ammonio methacrylate)コポリマーは当該分野において周知であり、アクリル及びメタクリル酸エステルと低含有量の第4級アンモニウム基とが十分にポリマー化されたコポリマーとしてNF XVIIに記載されている。
【0029】
ジエチルアミノエチルメタクリレート及び他の中性メタクリルエステルから合成され、またメタクリル酸コポリマー又はポリマー性メタクリレートとして公知であり、Rohm Tech社からEudragit(登録商標)として市販されているコポリマーのファミリーの、あるメタクリル酸エステル型ポリマーもまた、本発明の目的に有用である。いくらかの異なるタイプのEudragit(登録商標)が存在する。例えば、Eudragit(登録商標)Eは、メタクリル酸コポリマーの例であり、酸性媒体中で膨潤し、溶解する。Eudragit(登録商標)Lは、約pH<5.7では膨潤せず、約pH>6では可溶性であるメタクリル酸コポリマーである。Eudragit(登録商標)Sは、約pH<6.5では膨潤せず、約pH>7では可溶性である。Eudragit(登録商標)RL及びEudragit(登録商標)RSは、水性膨潤性であり、これらのポリマーによって吸収される水の量はpH依存性であるが、しかし、Eudragit(登録商標)RL及びRSで被覆された剤型はpH非依存性である。
【0030】
ある実施態様では、拡散バリアコーティングは、それぞれEudragit(登録商標)RL30D及びEudragit(登録商標)RS30Dの商品名でRohm Pharmaから市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーを含む。Eudragit(登録商標)RL30D及びEudragit(登録商標)RS30Dは、アクリル及びメタクリルエステルと低含有量の第4級アンモニウム基とのコポリマーであり、アンモニウム基対残存する中性(メタ)アクリルエステルのモル比はEudragit(登録商標)RL30Dでは1:20であり、Eudragit(登録商標)RS30Dでは1:40である。平均分子量は約150,000である。
【0031】
本発明の拡散バリアコーティングで用いる、あるアクリル非腸溶性コーティングポリマーとしては、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメラテート(cellulose acetate trimellatate)、セルロースアセトフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、及びそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
他の任意の成分を拡散バリアコーティングに含めることができ、例えば、以下に説明するような可塑剤、結合剤、潤滑剤、流動化剤(glidant)、充填剤などがある。ある好適な実施態様では、拡散バリアコーティングは、以下に説明する可塑剤を含む。
【0033】
拡散バリアコーティングは、治療剤を含む基質の約0.1〜約20重量%、好ましくは、約1〜約10重量%の量で治療剤を含む基質上に適用することができる。基質に対する治療剤の適用について、拡散バリアコーティングは、溶媒の適切な混合物を用いるアニオン性ポリマーを含む適切な溶液又は分散液を噴霧し、当該分野において公知の技術を使用して、適用しうる。拡散バリアコーティングは、好ましくは、基質のプロトン化治療剤に対する親和性を有することによって、剤型からの治療剤の移動を防止又は減少する。
【0034】
治療剤を含む基質を拡散バリアコーティングで被覆した後、次いで、それらを、疎水性材料を含むコーティングで上塗りする。好ましくは、疎水性材料は、治療剤の制御放出、又は治療剤の隔離をもたらす。
【0035】
コーティングにおける包含のためのある疎水性材料としては、例えば、セルロース材料及びポリマー、アクリルポリマー、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ある実施態様では、疎水性材料は、セルロース材料又はセルロースポリマーを含み、アルキルセルロースを含む。簡単な例として、1つの好適なアルキルセルロースポリマーは、エチルセルロースであるが、当業者であれば、本発明に関するすべて又は一部の疎水性コーティングとして、他のセルロース及び/又はアルキルセルロースポリマーを単独又は任意の組み合わせで用いてもよいことを理解するであろう。
【0037】
エチルセルロースの1つの市販の水性分散液は、Aquacoat(登録商標)(FMC Corp., Philadelphia, Pennsylvania, U.S.A.)である。Aquacoat(登録商標)は、エチルセルロースを水不混和性有機溶媒に溶解し、次いで、それを界面活性剤及び安定化剤の存在下で水に乳化させることによって、調製される。ミクロン以下の小滴を作製するための均質化後、減圧下で有機溶媒をエバポレートし、偽ラテックス(pseudolatex)を形成する。可塑剤は、製造相の間偽ラテックス(pseudolatex)には組み入れられない。従って、コーティングと同じものを使用する前に、Aquacoat(登録商標)と使用前の適切な可塑剤とを緊密に混合する必要がある。
【0038】
エチルセルロースのもう1つの水性分散液は、Surelease(登録商標)(Colorcon, Inc., West Point, Pennsylvania, U.S.A.)として市販されている。この製品は、製造プロセス中に可塑剤を分散液に組み入れることによって調製される。ポリマー、可塑剤(ジブチルセバケート)、及び安定化剤(オレイン酸)のホットメルトは、均質な混合物として調製され、次いで、アルカリ溶液で希釈され、基質上に直接適用することができる水性分散液を得る。
【0039】
ある実施態様では、疎水性材料は、上記の医薬的に許容しうるアクリルポリマーを含み、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、及びグリシジルメタクリレートコポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0040】
ある好適な実施態様では、アクリルポリマーは、1つもしくはそれ以上のメタクリレートコポリマーからなる。所望の溶解プロフィールを得るために、異なる物理特性、例えば、第4級アンモニウム基対中性(メタ)アクリルエステルの異なるモル比を有する2つもしくはそれ以上のアンモニアメタクリレートコポリマーを組み入れることが必要でありうる。
【0041】
あるメタクリル酸エステル型ポリマーは、本発明に基づいて使用しうるpH依存性コーティングを調製するのに有用である。例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート及び他の中性メタクリルエステルから合成されるコポリマーのファミリーが存在し、また、メタクリル酸コポリマー又はポリマー性メタクリレートとしても公知であり、Rohm Tech, Inc.からEudragit(登録商標)として市販されている。上記のように、いくらかの異なるタイプのEudragit(登録商標)が存在する。
【0042】
ある好適な実施態様では、アクリルコーティングは、上記のようにEudragit(登録商標)RL30D及びEudragit(登録商標)RS30Dの商品名でRohm Pharmaから市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。コード名RL(高浸透性)及びRS(低浸透性)は、これらの薬剤の浸透特性を示す。Eudragit(登録商標)RL/RS混合物は、水及び消化液に不溶性である。しかし、同じものから形成されるコーティングは、水溶液及び消化液中で膨潤可能及び浸透可能である。
【0043】
本発明のEudragit(登録商標)RL/RS分散液は、所望の溶解プロフィールを有する制御放出製剤を最終的に得るために、任意の所望される割合で共に混合されうる。例えば、100%Eudragit(登録商標)RL、50%Eudragit(登録商標)RL及び50%Eudragit(登録商標)RS、ならびに10%Eudragit(登録商標)RL:90%Eudragit(登録商標)RSから誘導される遅延コーティングから、所望の制御放出製剤を得ることができる。もちろん、当業者であれば、他のアクリルポリマー、例えば、Eudragit(登録商標)Lも使用しうることを認識するであろう。
【0044】
ある実施態様では、コーティングが疎水性材料、例えば、アルキルセルロース又はアクリルポリマーの水性分散液を含む場合、疎水性材料の水性分散液における可塑剤の有効量の包含は、制御放出コーティングの物理特性をさらに改善する。例えば、エチルセルロースはガラス転位温度が比較的高く、通常のコーティング条件下では可撓性フィルムを形成しないため、コーティング材料と同じものを使用する前に、制御放出コーティングを含有するエチルセルロースコーティングに可塑剤を組み入れることが好ましい。一般に、可塑剤の量は、疎水性材料の約1〜約50重量パーセントの量で、コーティング溶液に含まれる。しかし、可塑剤の濃度は、特定のコーティング溶液及び適用方法を用いた注意深い実験でしか適切に決定することができない。
【0045】
エチルセルロースのための適切な可塑剤の例としては、他の水不溶性可塑剤(例えば、アセチル化モノグリセライド、フタレートエステル、ヒマシ油など)を使用しうることが可能であるが、これらに限定されず、水不溶性可塑剤、例えば、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート及びトリアセチンも挙げられる。
【0046】
本発明のアクリルポリマーのための適切な可塑剤の例としては、クエン酸エステル、例えば、トリエチルシトレートNF XVI、クエン酸トリブチル、ジブチルフタレート、及びおそらく1,2−プロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。アクリルフィルム、例えば、Eudragit(登録商標)RL/RSラッカー溶液から形成されるフィルムの弾性を増強するのに適切であることが証明されている他の可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルフタレート、ヒマシ油、及びトリアセチンが挙げられる。トリエチルシトレートは、本発明で用いる特に好適な可塑剤である。
【0047】
ある実施態様では、疎水性ポリマーの水性分散液、例えば、アルキルセルロースが基質に適用される場合、被覆された基質は、被覆された製剤が、例えば、高い温度及び/又は湿度の貯蔵条件で暴露されても実質的に影響を受けない溶解プロフィールを達成するエンドポイントに到達するまで、可塑化ポリマーのガラス転位温度より高い温度かつ周囲条件より高い相対湿度で、硬化される。一般に、そのような製剤では、硬化時間は約24時間もしくはそれ以上であり、硬化条件は、例えば、約60℃及び85%相対湿度でありうる。そのような製剤の安定化に関する詳細な情報は、米国特許第5,273,760号;同第5,681,585号;及び同第5,472,712号に記載されており、それらのすべては、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0048】
アクリルポリマーの水性分散液を含む制御放出コーティングが基質に適用される製剤において、制御放出被覆基質は、制御放出被覆製剤が、例えば、高い温度及び/又は湿度の貯蔵条件で暴露されても実質的に影響を受けない溶解プロフィールを達成するエンドポイントに到達するまで、可塑化ポリマーのガラス転移温度より高い温度で硬化されることが好ましい。一般に、硬化時間は約24時間もしくはそれ以上であり、硬化温度は、例えば、約45℃でありうる。そのような製剤の安定化に関する詳細な情報は、米国特許第5,286,493号;同第5,580,578号;及び同第5,639,476号に記載されており、それらのすべては、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0049】
本発明の被覆された製剤の制御放出プロフィールは、例えば、疎水性材料の水性分散液による上塗りの量を変動すること、可塑剤が疎水性材料の水性分散液に添加される態様を変更すること、疎水性材料に対する可塑剤の量を変動すること、他の成分又は賦形剤を包含すること、製造の方法を変更すること、及びそれらを組み合わせて変更することができる。
【0050】
本発明のコーティング溶液は、好ましくは、可塑剤及び溶媒系(例えば、水)に加えて、上品さ及び製品の差別化をもたらす着色剤を含有する。例えば、疎水性材料の水性分散液に添加して着色しうる。色は、例えば、Aquacoatに、アルコール又はプロピレングリコールに基づく色分散液、粉砕したアルミニウム・レーキ及び乳白剤、例えば、チタニウムジオキシドの使用を介して、剪断により色を水溶性ポリマー溶液に添加し、次いで、可塑化Aquacoatの低剪断の使用を介することにより添加しうる。あるいは、本発明の製剤に色を提供する任意の適切な方法を使用しうる。アクリルポリマーの水性分散液が使用される場合に色を製剤に提供するための適切な成分としては、チタニウムジオキシド及び色素、例えば、酸化鉄色素が挙げられる。しかし、色素の組み込みにより、制御放出コーティングの効果が遅延しうる。
【0051】
疎水性材料の可塑化水性分散液(例えば、溶液又は懸濁液)は、当該分野において公知である任意の適切な噴霧装置を使用する噴霧によって、治療剤を含む基質上に適用しうる。分散液は、従来のコーティングパンにおいて治療剤を含む拡散バリア被覆基質に、あるいは、CF造粒機などの自動化システム、例えば、FREUND CF造粒機、GLATT流動化ベッドプロセッサー、AEROMATIC、改造型ACCELA-COTA又は他の任意の適切な自動化ビーズコーティング装置を使用して、適用してもよい。
【0052】
好ましくは、1キログラムの基質あたりの被覆につき2〜25mlの溶液/懸濁液が適用される。自動化システムでは、溶液/懸濁液が連続的に適用される場合を除いて、基質に適用される溶液/懸濁液の合計量は、従来のコーティングパンにおいて適用される量と同じである。
【0053】
好ましくは、コーティングパンが使用される場合、コーティングは、各乾燥工程の間に20〜30被覆の割合で、すべての被覆が適用されるまで、適用される。適用の間に、12時間を超えて、50℃〜60℃、最も適切には55℃で基質を乾燥しうる。
【0054】
自動化コーティングシステムでは、溶液/懸濁液の適用の速度は、0.5〜10g/kgの基質/分でありうる。
【0055】
好適な方法では、Wurster流動化ベッドシステムが使用され、アクリルポリマーコーティングが噴霧される間、下方から注入されるエアジェットが基質を流動化し、乾燥がおこる。ある実施態様では、被覆された基質が水性溶液、例えば、胃液に暴露される場合に、十分な量の疎水性材料の水性分散液が、治療剤(即ち、薬物)の予め決定された制御放出を得るために治療剤を含む拡散バリア被覆基質に適用される。
【0056】
ある実施態様では、フィルム形成剤(film-former)、例えば、Opadry(登録商標)のさらなる上塗りは、基質を疎水性コーティングで被覆した後、場合によっては基質に適用される。ビーズの集積の実質的な減少をもたらすためには、このような上塗りが好ましい。
【0057】
拡散バリア被覆基質(例えば、ビーズ)を疎水性コーティングで上塗りした後、形成される上塗りされた基質(例えば、制御放出ビーズ)を、硬又は軟ゼラチンカプセルに充填しうる。あるいは、上塗りされた基質は、一般に、錠剤化に用いられる結合剤及び/又は硬化剤(例えば、商標「AVICEL」で販売されている微結晶性セルロース又は高度に改変されたデキストリンの共結晶化(co-crystallised)粉体(3重量%)及び商標「DI-PAC」で販売されているスクロースがあるがこれらに限定されない)を使用して、制御放出基質(例えば、ビーズ)の特定の溶解速度が維持されるような方法で、錠剤に圧縮されうる。
【0058】
混合物の錠剤への形成後、極めて薄いコーティングを錠剤の外表面に適用することが所望されうる。コーティングの機能は、適用される場合、錠剤の完全性(intactness)を増強することである。コーティングは、ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール又はポリビニルポロリドールを含むことができ、錠剤を原型のまま維持するが、水性の使用環境(例えば、胃腸系)に一旦置かれると、コーティングが錠剤に適用される場合は、錠剤による毛管取り込みを阻害せず、溶解時間は僅かに増加しうる。
【0059】
ある実施態様では、本発明の製剤は、適用前に、任意のコーティングと混合しうる潤滑剤をさらに含みうる。適切な潤滑剤としては、例えば、タルク、マグネシウムステアレート、ナトリウムステアレート、ステアリン酸、カルシウムステアレート、マグネシウムオレエート、オレイン酸、カリウムオレエート、カプリル酸、ナトリウムステアリルフマレート、及びマグネシウムパルミテート、それらの混合物などが挙げられる。一般に、潤滑剤が存在する場合、潤滑剤の量は約0.1%〜約10%、好ましくは、約0.1%〜約5%であろう。
【0060】
ある実施態様では、本発明の製剤は結合剤をさらに含みうむ。結合剤は、当業者に公知である任意の医薬的に許容しうる結合剤でありうる。そのような結合剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムを含む天然及び合成ゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、プルラン、デキストリン、デンプン、それらの混合物などが挙げられる。結合剤は、適用前に任意のコーティングと混合してもよく、あるいは水性もしくは有機溶液、又はそれらの混合物に溶解もしくは分散させてもよい。水性の結合剤溶液又は分散液が特に好適である。一般に水溶性とみなされる適切な結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びトウモロコシデンプンが挙げられる。本発明と組み合わせて用いるのに適切な他の多くの水溶性結合剤は、当業者に公知である。
【0061】
ある実施態様では、本発明の組成物は、医薬的に許容しうる担体をさらに含む。一般に、ここで用いられる担体には、例えば、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ラクトース、デキストロース、スクロース、デンプン、ソルビトール、マンニトール、それらの混合物などがあるが、これらに限定されない。経口剤型を製剤するために使用することができる医薬的に許容しうる担体及び賦形剤の他の例については、Handbook of Pharmaceutical Excipients、 American Pharmaceutical Association (1986)(本明細書において参考として組み入れられる)に記載されている。
【0062】
本発明の製剤に含めることができる他の任意の成分としては、流動化剤(glidant)、例えば、タルク、チタニウムジオキシド、マグネシウムステアレート、シリコンジオキシド、ジブチルセバケート、アンモニウムヒドロキシド、オレイン酸コロイドシリカ、それらの混合物などが挙げられ、適用前に任意のコーティングと混合するならびに/あるいは適用前に水性及び/又は有機溶媒に溶解もしくは分散することができる。
【0063】
ある実施態様では、本発明の製剤は放出改変剤をさらに含む。孔形成剤(pore-former)として機能する放出改変剤は有機又は無機であってもよく、使用環境において制御放出コーティングから溶解、抽出又は滲出されうる材料を含む。孔形成剤(pore-former)は、1つもしくはそれ以上の親水性材料、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含みうる。ある実施態様では、放出改変剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、金属ステアレート、及び前記物質のうちのいずれかの混合物から選択される。
【0064】
本発明の制御放出コーティングはまた、侵食促進剤、例えば、デンプン及びゴムを含みうる。
【0065】
本発明の制御放出コーティングはまた、使用環境においてミクロ細孔薄膜を作製するのに有用な材料、例えば、ポリマー鎖においてカルボネート基が再発する(reoccur)カルボン酸の線状ポリエステルからなるポリカーボネートを含みうる。
【0066】
本発明の制御放出コーティングはまた、少なくとも1つの通路、オリフィスなどを含む流出手段(exit means)を含んでもよい。通路は、米国特許第3,845,770号;同第3,916,889号;同第4,063,064号、及び同第4,088,864号(それらのすべては、本明細書において参考として組み込まれる)に開示されているような方法によって形成させてもよい。通路は、任意の形状、例えば、円形、三角形、正方形、長円形、不定形などとしうる。
【0067】
ある実施態様では、治療剤の分解を防止するために、本発明の製剤において安定化剤を含む必要がありうる。例えば、ナルトレキソン塩酸塩の分解産物としては、10−ヒドロキシナルトレキソン;10−ケトナルトレキソン;2,2'ビスナルトレキソン(偽ナルトレキソン(pseudonaltrexone));2,2'ビスナルトレキソンの酸化物;2,2'ビスナルトレキソンの二酸化物;ナルトレキソン及び10−ヒドロキシナルトレキソンのアルドール付加物;ナルトレキソン及び10−ケトナルトレキソンのアルドール付加物;ナルトレキソン−N−オキシド;10−ヒドロキシナルトレキソン−N−オキシド;10−ケトナルトレキソン−N−オキシド;ナルトレキソンのセミキノン;ナルトレキソンのフリーラジカル過酸化物;ナルトレキソンのアルドール付加物;7,6位で結合したナルトレキソンのアルドール付加物;6,5位で結合したナルトレキソンのアルドール付加物;ナルトレキソンのエーテル連結付加物;ナルトレキソン及び10−ヒドロキシナルトレキソンのエーテル連結付加物;ナルトレキソン及び10−ケトナルトレキソンのエーテル連結付加物;脱水素化ナルトレキソン;ヒドロキシナルトレキソン;ケト−ナルトレキソン;それらの塩ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
例えば、ナルトレキソン塩酸塩の分解を防止するための本発明で用いる安定化剤としては、有機酸、カルボン酸、アミノ酸の酸性塩(例えば、システイン、L−システイン、システイン塩酸塩、グリシン塩酸塩又はシスチン二塩酸塩)、ナトリウムメタビサルファイト(sodium metabisulphite)、アスコルビン酸及びその誘導体、リンゴ酸、イソアスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パルミチン酸、ナトリウムカルボネート、ナトリウム水素カルボネート、カルシウムカルボネート、カルシウム水素ホスフェート、二酸化イオウ、ナトリウムサルファイト、ナトリウムビサルフェート、トコフェロール、ならびにそれらの水溶性及び脂溶性誘導体、例えば、トコフェルソラン(tocofersolan)もしくはトコフェロールアセテート、サルファイト、ビサルファイト(bisulphite)及び水素サルファイト又はアルカリ金属、アルカリ土類金属及び他の金属、PHBエステル、ガレート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)もしくはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及び2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、t−ブチルヒドロキノン、ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチルヒドロキノン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロカテコール、ピロガロール、プロピル/ガレート、及びノルジヒドログアイアレチン酸、ならびに低級脂肪酸、フルーツ酸、リン酸、ソルビン酸及びベンゼン酸ならびにそれらの塩、エステル、誘導体及び異性体化合物、アスコルビルパルミテート、レシチン、モノ−及びポリハイドロキシル化(polyhydroxylated)ベンゼン誘導体、エチレンジアミン−四酢酸及びその塩、シトラコン酸、コニデンドリン(conidendrine)、ジエチルカルボネート、メチレンジオキシフェノール、ケファリン、β,β'−ジチオプロピオン酸、ビフェニル及び他のビフェニル誘導体、医薬的に許容しうるそれらの塩、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある好適な実施態様では、安定化剤はBHTである。他の好適な実施態様では、安定化剤はアスコルビン酸である。すべて又は一部のアスコルビン酸は、金属又はアンモニウムアスコルベート、例えば、ナトリウム、カリウム及び/又はヨウ素アスコルベートで置き換えることができる。ナトリウムアスコルベートが好適である。
【0069】
上記の成分に加えて、本発明の組成物はまた、適切な量の他の材料、例えば、医薬分野において慣用されている顆粒化補助剤(granulating aid)、着色剤、及び風味付け剤(flavorant)を含有しうる。これらの他の材料の量は、所望される効果を所望される組成物に提供するのに十分であろう。
【0070】
本発明のある実施態様では、治療剤はまた、製剤中の即時放出コーティングに含まれうる。治療剤の即時放出コーティングは、血液(例えば、血漿)中の治療剤の最大濃度までの時間を減少するのに有効量が含まれる。ある実施態様では、即時放出層は、制御放出コーティングを被覆する。一方、即時放出層は、最終製剤の錠剤又はカプセルの表面を被覆しうる。当業者であれば、治療剤の即時放出形態を最終製剤に組み入れるさらに他の別の態様を認識するであろう。ある別の実施態様では、制御放出基質の治療剤以外の異なる治療剤を含む即時放出層が、疎水性ポリマーを含む制御放出コーティングを被覆しうる。
【0071】
ある実施態様では、本発明はさらに、本明細書に記載の経口医薬製剤の調製のためのプロセスに関する。前記プロセスは、好ましくは、
a.治療剤又は必要に応じて賦形剤と組み合わされた治療剤の混合物を含む基質を形成する工程;
b.前記基質にアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティングを適用する工程;及び
c.前記拡散バリアコーティングの上に疎水性材料を含むコーティングを適用する工程
を含む。
【0072】
好適な実施態様では、治療剤は基質上に適用される。従って、拡散バリアコーティングは、治療剤を通して前記基質上に適用される。好ましくは、拡散バリアコーティングは、約0.1〜30%、好ましくは、約1〜20%の範囲の重量増加に到達するまで適用される。次いで、疎水性コーティングが、拡散バリアコーティング上に上塗りされる。
【0073】
治療剤を伴うコーティングを含むコーティングは、好ましくは、液体ベッド装置又はパン被覆(pan coat)のいずれかにおけるフィルムコーティングプロセスの手段、又は自動化プロセス、あるいはプレスコーティングプロセスによって、適用される。
【0074】
ある好適な実施態様では、コーティング層は、フィルムコーティングプロセスの手段、水性ポリマー分散液又は有機もしくは水−有機溶媒ポリマー分散液を、1〜50%w/wの範囲、好ましくは、1〜25%の範囲の固体含有量で噴霧することによって、基質上に適用される。
【0075】
治療剤を含む球状体もまた、例えば、制御放出コーティングで基質をコーティングする前又は後に、上記の基質組成物に球状化剤(spheronizing agent)を添加することによって、調製しうる。
【0076】
本発明の製剤は、治療上有効量の治療剤を含む。本発明のある好適な実施態様では、製剤は、複数の得られる制御放出基質を含み、治療上有効量の治療剤を提供する。ある実施態様では、治療剤は、環境液体、例えば、胃液もしくは溶解媒体によって消化されるか又は接触される場合、有効な制御放出をもたらすのに十分な量で存在する。
【0077】
本発明に従って作製される医薬製剤の最終形態は、非常に様々でありうる。従って、錠剤、キャプレッツ、カプセル、サシェ(sachet)などが検討される。錠剤、キャプレッツ、及びカプセルが好適である。
【0078】
添付の実施例にしたがって、本発明についてより詳細に説明する。しかし、以下の説明は例示のみであって、上記で指定した本発明の一般性に対しては、いかなる方法においても制限として解釈すべきではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0079】
実施例1
実施例1では、表1に列挙した組成物を有するナルトレキソンHClビーズを調製した。
【0080】
【表1】

【0081】
ビーズ製造プロセス
1.ナルトレキソンHCl及びOpadry Clearを水に溶解する。Wurster挿入物を有する液体ベット塗装装置内のnon-pareilビーズ上に薬物溶液を噴霧する。
2.Eudragit L30D、トリエチルシトレート、及びグリセリルモノステアレートを水中に分散させる。液体ベット塗装装置内の薬物充填ビーズ上に分散液を噴霧する。
3.Eudragit RS30D、トリエチルシトレート、及びカボシル(cabosil)を水中に分散させる。液体ベット塗装装置内のビーズ上に分散液を噴霧する。
4.Opadry Clearを水に溶解する。液体ベット塗装装置内のビーズ上に溶液を噴霧する。
5.40℃で24時間、ビーズを硬化させる。
【0082】
実施例2
実施例2では、実施例1のように、表2に列挙した以下の組成物を有するナルトレキソンHClビーズを調製し(工程1でBHTを添加(溶解)した)。
【0083】
【表2】

【0084】
実施例3
実施例3では、実施例1のように、表3に列挙した以下の組成物を有するナルトレキソンHClビーズを調製した(工程1でアスコルビン酸を添加(溶解)した)。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例4
実施例4では、実施例1のように、表4に列挙した以下の組成物を有するナルトレキソンHClビーズを調製し(工程1でアスコルビン酸及びナトリウムアスコルベートを添加(溶解)した)した。
【0087】
【表4】

【0088】
実施例5
実施例5では、実施例4のように、表5に列挙した以下の組成物を有する製剤を調製した(カボシル(Cabosil)の代わりにグリセロールモノステアレートを使用した)。
【0089】
【表5】

【0090】
実施例6
以下の製剤及びプロセスに従って、オキシコドン制御放出ビーズを調製する。
【0091】
【表6】

【0092】
ビーズ製造手順
1.オキシコドンHCl及びOpadry(HPMC)を水に溶解する。Wurster挿入物を有する液体ベット塗装装置内のnon-pareilビーズ上に薬物溶液を噴霧する。
2.Eudragit RS、Eudragit RL、トリエチルシトレート、及びカボシル(Cabosil)を水中に分散させる。液体ベット塗装装置内のビーズ上に分散液を噴霧する。
3.Opadryを水に溶解する。液体ベット塗装装置内のビーズ上に溶液を噴霧する。
4.45℃で24時間、ビーズを硬化させる。
【0093】
実施例7
以下の製剤及びプロセスに従って、アニオン性ポリマーコーティングを有するオキシコドン制御放出ビーズを調製する。
【0094】
【表7】

【0095】
ビーズ製造手順
1.オキシコドンHCl及びOpadry(HPMC)を水に溶解する。Wurster挿入物を有する液体ベット塗装装置内のnon-pareilビーズ上に薬物溶液を噴霧する。
2.Eudragit L30D、トリエチルシトレート、及びカボシル(Cabosil)を水中に分散させる。液体ベット塗装装置内のビーズ上に分散液を噴霧する。
3.Eudragit RS、Eudragit RL、トリエチルシトレート、及びカボシル(Cabosil)を水中に分散させる。液体ベット塗装装置内のビーズ上に分散液を噴霧する。
4.Opadryを水に溶解する。液体ベット塗装装置内のビーズ上に溶液を噴霧する。
5.45℃で24時間、ビーズを硬化させる。
【0096】
アニオン性ポリマーコーティングの包含のため、実施例7の溶解は実施例6の溶解より遅いことが予想された。
【0097】
実施例8
実施例8では、表8に列挙した以下の組成物を有する拡散バリア被覆を伴わないナルトレキソンを調製した。
【0098】
【表8】

【0099】
ビーズ製造プロセス
1.ナルトレキソンHCl及びPlasdoneを水に溶解する。タルクを薬物溶液中に分散させる。Wurster挿入物を有する液体ベット塗装装置内のnon-pareilビーズ上に薬物溶液を噴霧する。
2.Opadry clearを水に溶解する。液体ベット塗装装置内の薬物充填ビーズ上に分散液を噴霧する。
3.Eudragit RS30D、ジブチルセバケート、Tween 80及びタルクを水中に分散させる。液体ベット塗装装置内のビーズ上に分散液を噴霧する。
4.Opadry clearを水に溶解する。液体ベット塗装装置内のビーズ上に溶液を噴霧する。
【0100】
実施例9
実施例9では、実施例8及び実施例1〜5の製剤について、以下の溶解方法を使用して、溶解試験した。
【0101】
溶解試験
1.装置−USP II型(パドル)、37℃で50rpm。
2.サンプリング時間−1、2、4、12、24、及び36時間(実施例8については1、2、4、8、及び18時間)。
3.媒体−900ml pH6.5リン酸緩衝液。
4.分析方法−高性能液体クロマトグラフィー。
【0102】
実施例8の溶解結果を以下の表9に列挙する。
【0103】
【表9】

【0104】
実施例1〜5の溶解結果を以下の表10に列挙する。
【0105】
【表10】

【0106】
本発明の他の多くの変化が当業者に明らかであり、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オピオイドアンタゴニストを含む基質;
前記基質を被覆するアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティング;及び
前記拡散バリアコーティングを被覆する疎水性材料を含むコーティング
を含む医薬製剤。
【請求項2】
前記基質はコアを被覆するオピオイドアンタゴニストを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記コアは医薬的に許容しうる不活性なビーズである、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記アンタゴニストはマトリックス状の多粒子中に分散される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記オピオイドアンタゴニストはプロトン化される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記プロトン化オピオイドアンタゴニストはアニオン性ポリマーに対し親和性を有する、請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記アニオン性ポリマーは、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、メタクリルポリマー、メタクリルコポリマー、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記アニオン性ポリマーは非アクリル腸溶性コーティング材料である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記腸溶性コーティング材料は、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメラテート(cellulose acetate trimellatate)、セルロースアセトフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記拡散バリアコーティングは前記基質の約0.1〜約10重量%の量である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記オピオイドアンタゴニストは治療上有効量をなしている、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
複数の前記基質を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記複数の前記基質は治療上有効量の前記オピオイドアンタゴニストを含む、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記疎水性材料を含む前記コーティングは、前記オピオイドアンタゴニストの制御放出をもたらす、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記疎水性材料を含む前記コーティングは前記オピオイドアンタゴニストの隔離をもたらす、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記疎水性材料は、セルロース材料、セルロースポリマー、アクリルポリマー又はコポリマー、メタクリルポリマー又はコポリマー、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記オピオイドアンタゴニストは、ナルトレキソン、ナロキソン及びそれらの医薬的に許容しうる塩よりなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項18】
オピオイド鎮痛薬を含む基質;
前記基質を被覆するアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティング;及び
前記拡散バリアコーティングを被覆する疎水性材料を含むコーティング
を含み、前記疎水性材料は前記オピオイド鎮痛薬の制御放出をもたらす、医薬製剤。
【請求項19】
前記基質はコアを被覆するオピオイド鎮痛薬を含む、請求項18に記載の医薬製剤物。
【請求項20】
前記コアは医薬的に許容しうるビーズである、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
オピオイド鎮痛薬はマトリックス状の多粒子中に分散される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記オピオイド鎮痛薬はプロトン化される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記プロトン化オピオイド鎮痛薬は前記アニオン性ポリマーに対し親和性を有する、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記アニオン性ポリマーは、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、メタクリルポリマー、メタクリルコポリマー、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項25】
アニオン性ポリマーは非アクリル腸溶性コーティング材料である、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記腸溶性コーティング材料は、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメラテート(cellulose acetate trimellatate)、セルロースアセトフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項25に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記拡散バリアコーティングは前記基質の約0.1〜約10重量%の量である、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記オピオイド鎮痛薬は治療上有効量をなしている、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項31】
複数の前記基質を含む、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項32】
前記複数の前記基質は治療上有効量の前記オピオイド鎮痛薬を含む、請求項31に記載の医薬製剤。
【請求項33】
前記疎水性材料は、セルロース材料、セルロースポリマー、アクリルポリマー又はコポリマー、メタクリルポリマー又はコポリマー、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記オピオイド鎮痛薬は、アニレリジン、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニール、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、モルヒネ、メペリジン、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドール、それらの塩、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項35】
医薬製剤を調製するためのプロセスであって、
a)オピオイドアンタゴニストを含む基質を形成する工程;
b)前記基質にアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティングを適用する工程;及び
c)前記拡散バリアコーティングの上に疎水性材料を含むコーティングを適用する工程
を含む、前記プロセス。
【請求項36】
前記オピオイドアンタゴニストは前記基質に適用される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記基質は医薬的に許容しうる不活性なビーズである、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
前記基質はマトリックス状の多粒子である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項39】
前記オピオイドアンタゴニストはプロトン化される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項40】
前記プロトン化オピオイドアンタゴニストは前記アニオン性ポリマーに対し親和性を有する、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記アニオン性ポリマーは、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、メタクリルポリマー、メタクリルコポリマー、非アクリル腸溶性コーティング材料及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項42】
前記拡散バリアコーティングは前記基質の約0.1〜約20重量%の量である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項43】
前記オピオイドアンタゴニストは治療上有効量をなして存在する、請求項35に記載のプロセス。
【請求項44】
前記製剤は複数の前記基質を含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項45】
前記複数の前記基質は治療上有効量の前記オピオイドアンタゴニストを含む、請求項44に記載のプロセス。
【請求項46】
前記疎水性材料を含む前記コーティングは前記オピオイドアンタゴニストの制御放出をもたらす、請求項35に記載のプロセス。
【請求項47】
前記疎水性材料を含む前記コーティングは前記オピオイドアンタゴニストの隔離をもたらす、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記オピオイドアンタゴニストはナルトレキソン、ナロキソン又はそれらの医薬的に許容しうる塩よりなる群から選択される、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記疎水性材料はセルロース材料、セルロースポリマー、アクリルポリマー又はコポリマー、メタクリルポリマー又はコポリマー、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項50】
医薬製剤を調製するためのプロセスであって、
a)オピオイド鎮痛薬を含む基質を形成する工程;
b)前記基質にアニオン性ポリマーを含む拡散バリアコーティングを適用する工程;及び
c)前記拡散バリアコーティングの上に疎水性材料を含むコーティングを適用する工程
を含み、前記コーティングは前記オピオイド鎮痛薬の制御放出をもたらす、前記プロセス。
【請求項51】
前記オピオイド鎮痛薬は、アニレリジン、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニール、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、モルヒネ、メペリジン、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドール、それらの塩、及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
請求項18に記載の製剤を患者に投与することを含む、治療が必要な患者の痛みを治療する方法。

【公表番号】特表2006−514988(P2006−514988A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504461(P2005−504461)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/025601
【国際公開番号】WO2005/007135
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】