説明

医薬組成物

【課題】患者、例えばてんかん発作に苦しむ患者または許容できないレベルの痛みに苦しむ患者の粘膜へのミダゾラムの投与のための改善された製剤を提供すること。
【解決手段】本出願は、pHが約6以上であるミダゾラムおよび薬学的に許容される担体を含む、患者に投与するための液体組成物であって、約200mg/ml未満のシクロデキストリンを含み、ミダゾラムの少なくとも約50%が液中に存在する液体組成物を開示する。これらの組成物の使用も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物に関する。詳細には、本発明は、てんかんの治療に適した改善された液体医薬組成物に関する。本発明はさらに、麻酔剤として使用するのに適した液体医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミダゾラム、すなわち下式の8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-4H-イミダゾ[1,5-a][1,4]ベンゾジアゼピン:
【0003】
【化1】

【0004】
は、鎮静性、抗不安性、記憶喪失性および催眠性の特性を有する十分裏付けのある製品である。これは塩酸塩の形態で、例えば、2.5mg/mlのミダゾラムを含むVERSED(登録商標)という商品名で市販されているグリセリンをベースとしたシロップ剤の形態で市販されている。これは、マレイン酸塩の形態で、例えばDORMICUM(登録商標)という商品名の錠剤当たり7.5mgまたは15mgを含む錠剤としても販売されている。口腔経路で投与するように製剤された製品はEPISTATUS(登録商標)である。ミダゾラムの口腔製剤は欧州特許第1323422号にも開示されている。
【0005】
ミダゾラムが、閉環形態でもまた開環形態でも溶解して存在することができることは知られている。これらの2つの形態は互いに平衡状態にある:
【0006】
【化2】

【0007】
水溶液中に存在する開環型(Ia)の量はpHによって影響される。開環型で存在するミダゾラムの割合に対するpHの影響を示す図を図1に示す。
【0008】
ミダゾラムの生理学的吸収速度を決定する因子の1つは、製剤中に存在する開環(Ia)ミダゾラムの割合である。閉環型(I)のミダゾラムは親油性であり、開環型(Ia)より急速に吸収される。したがって、ミダゾラムの大部分が閉環型(I)で存在する製剤を提供することが望ましい。
【0009】
治療上有効なpHの高いミダゾラム製剤を開発しようとする試みがなされているが、ミダゾラムのpHと溶解度とが逆相関関係にあるため、首尾よくいっていない。例えば、Olivierら、International Journal of Pharmaceutics、2001(213)、187〜192頁は、より高いpHでミダゾラムを十分に可溶化することが、解決すべき問題点の1つであると結論づけている。
【0010】
pH8で、ミダゾラムの溶解度は水溶液中でちょうど0.055mg/mlである。そうした溶液を治療有効量で送達するためには、必要な体積が受け入れ難いほど大きくなってしまう。
【0011】
WO01/30391は、低い溶解度の問題を回避しながら、より高いpHでミダゾラムを製剤する試みの例を提供している。これは、ミダゾラムと包接錯体を形成し、それを溶解して保持するシクロデキストリンの使用によって実現される。しかし、シクロデキストリン包接錯体からのミダゾラムの放出は遅く、このため、投与と治療効果の開始との間の時間差が大きくなる。
【0012】
高いpHでのミダゾラムの溶解度が低い結果として、市販されているミダゾラムの液体製剤は約5以下のpHを有する傾向にあるが、それはこれらのpHで、許容できる程度の効果を確実にするのに十分高い割合の閉環型のミダゾラムが存在し、同時に、ミダゾラムの溶解度は比較的小さい体積の担体液体の使用を可能にするのに十分であるからである。
【0013】
例えば、経口投与用の典型的なシロップ剤、例えばVERSED(登録商標)シロップ剤では、pHは2.8〜3.6の範囲である。その範囲内で、その溶液はミダゾラムの最大で約40%を開環型(Ia)で含むことができる。投与後、その医薬品は5〜8の範囲のpHを含む生理学的状態に曝されるようになり、そうした条件下で全身循環に吸収されることになる。したがって、医薬品中の開環型で存在するミダゾラムの大部分は吸収により閉環型に変換されることになる。しかし、このpHの変化とミダゾラムの吸収は投与後直ちには起こらず、投与と治療活性の開始との間に約10〜30分間の時間差が存在する。
【0014】
口腔投与形態のミダゾラム、EPISTATUS(登録商標)は、てんかん発作または相当な程度の痛みに苦しむ患者にミダゾラムを迅速に送達するための非常に便利で、直接的な手段である。EPISTATUS(登録商標)製品のpHはおおよそ4.5〜5.5であり、開環型(Ia)のミダゾラムの割合は約1%である。
【0015】
EPISTATUS(登録商標)製剤からのミダゾラムの吸収速度は、患者で治療効果を迅速に開始させるのに十分高い。しかし、それを必要とする患者にミダゾラムを迅速に送達することの重要さを考慮すると、吸収速度が向上されれば有利であろう。
【0016】
これは、てんかん発作が、神経的な医療上の緊急事態の一般的原因であり、脳に損傷をもたらす恐れがあるからである。てんかん発作の症状を約15分以内で緩和するのに失敗すると死に至ることがある。したがって、てんかん発作に苦しむ患者をできるだけ速く処置して、患者の脳損傷または死のリスクを最少化することが極めて望ましい。さらに、麻酔剤として使用する場合、当然のことながら、痛みに苦しむ患者をできるだけ迅速に治療することが望ましい。
【0017】
ミダゾラムの注射用製剤の使用が一般的である。この方法で投与されたミダゾラムでは治療効果が急速に始まるが、それがすべての患者群での使用に適しているわけではない。例えば、てんかん発作に苦しむ患者に針付きの注射器を使用することには問題があり、患者と医薬品を投与する医療専門家の両方に危険である可能性がある。さらに、針付きの注射器の使用は、子供などのある種の患者に不安を惹起させる恐れがある。
【0018】
したがって、患者の粘膜を介したミダゾラムの投与はミダゾラムのための望ましい投与経路である。この経路を介した投与は、迅速な治療の開始と針付きの注射器の回避という利点を提供する。口腔、経鼻、経直腸および/または舌下粘膜を介したミダゾラムの投与が特に望ましい。
【0019】
例えばWiltonらによりAnesthesiology 1988年、69巻、972〜5頁に報告されているように、経鼻投与用のミダゾラムの製剤を調製する試みがなされている。ミダゾラムの経鼻製剤に関する研究の大部分は希薄な水性のミダゾラム注射液を使用しているが、これは経鼻投与には適していない。その理由は、pHが低く(3以下)患者に強い不快さを引き起こし、また、鼻が流れ出る傾向もあるからである。
【0020】
こうした問題点を克服しようとする試みがなされている。例えば、Wermelingら、Anasthesia & Analgesia、2006年8月、103巻、2号、344〜349頁は、ミダゾラム、ポリエチレングリコール400、ブチル化ヒドロキシトルエン、サッカリンおよびプロピレングリコールを含む製剤を開発している。その製剤は、市販の単位用量噴霧ポンプの改良版を用いて送達される0.1mLの噴霧液中に2.5mgのミダゾラムを含むものである。しかし、この製剤は、流涙(投与の58%)、目まい(投与の17%)、味覚の悪化(投与の25%)および鼻詰まり/鼻咽頭の炎症感(投与の100%)を含む多くの有害事象を伴っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許第1323422号
【特許文献2】WO01/30391
【特許文献3】英国特許出願番号第0922357.9号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Olivierら、International Journal of Pharmaceutics、2001(213)、187〜192頁
【非特許文献2】WiltonらによりAnesthesiology 1988年、69巻、972〜5頁
【非特許文献3】Wermelingら、Anasthesia & Analgesia、2006年8月、103巻、2号、344〜349頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、それを必要とする患者、例えばてんかん発作に苦しむ患者または許容できないレベルの痛みに苦しむ患者の粘膜へのミダゾラムの投与のための改善された製剤を提供することが必要である。
【0024】
本発明は、患者の不安レベルを高めることなく、てんかん発作に苦しむ患者が安全に使用することができ、安定であり、かつ/または不快感を引き起こすことなく患者の粘膜に投与することができる、従来技術のミダゾラム含有製剤より急速な治療効果の開始を提供する液体医薬品を提供することを探究する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の態様によれば、6以上のpHを有し、粘度が200〜400CPであるミダゾラムおよび薬学的に許容される担体を含む、患者に投与するための液体組成物であって、その製剤が200mg/ml未満のクロデキストリンを含み、ミダゾラムの少なくとも50%が溶解して存在する液体組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】開環型で存在するミダゾラムの割合に対するpHの影響を示す図である。
【図2】従来のミダゾラム製剤中に存在する付加生成物の経時的な漸増が確認されるHPLCトレースを図2の図2aから図2dに示す。これらのトレースは、加速条件下(40℃および75%の相対湿度)で貯蔵し、1カ月(図2a)、3カ月(図2b)、6カ月(図2c)および9カ月(図2d)後に試験したEpistatusの試料から得られたものである。
【図3】3.4、4.1、4.8、5.5、6.2、6.9、7.5、8.0、8.5、9.0、10.0のpHを有した製剤の、40℃、75%の相対湿度のもとで1カ月間貯蔵した後の、これらの試料の不純物プロファイルを測定した結果を示す図である。
【図4】製剤の外挿された不純物含量を示す図である。
【図5a】不純物スクシニルミダゾラム(SMA、SMB)の濃度%を示す図である。実施例2で論じた製剤のいくつかの安定性を、市販されている4.5〜5.5のpHを有するEpistatus製品(比較例)の2つの試料と比較した。これらの試料を、40℃の温度、75%の相対湿度下で3カ月間貯蔵後、試料を分析した。
【図5b】全不純物の濃度%を示す図である。実施例2で論じた製剤のいくつかの安定性を、市販されている4.5〜5.5のpHを有するEpistatus製品(比較例)の2つの試料と比較した。これらの試料を、40℃の温度、75%の相対湿度下で3カ月間貯蔵後、試料を分析した。
【図6】低pH比較例製剤とグリセロール40:(PEG200)60製剤のフラックス速度を測定した結果を示す図である。本発明の組成物の吸収は232nmにピークがある。比較例製剤の平均セル体積は2.93mlであり、本発明の製剤の平均セル体積は3.13mlであった。25μg/mlのマレイン酸ミダゾラム標準品の吸収は232nmで1.455である。
【図7a】実施例4で論じた比較例製剤および実施例2で調製した組成物のいくつかを用いた追加のフランツセル試験の結果を示す図である。本発明の組成物で製剤した場合、ミダゾラムの移動は比較例製剤より著しく大きく、その差は時間とともに増大している。
【図7b】実施例4で論じた比較例製剤および実施例2で調製した組成物のいくつかを用いた追加のフランツセル試験の結果を示す図である。図7aで観察された有利な結果はPEG200:GLY(60:40)製剤に限定されず、本発明の他の製剤でも示された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この製剤は任意の粘膜を介して患者に投与するのに適している。好ましい実施形態では、この製剤は口腔、経鼻、経直腸および/または舌下経路で投与するのに適している。
【0028】
ミダゾラムを含む液体製剤のpH(したがって親油性閉環型ミダゾラムの割合)を上げる可能性は、同時的にその活性剤の溶解度が低下することによってこれまで限定されていた。驚くべきことに、本発明の高いpH製剤を用いると、ミダゾラムが、完全ではないにしても、非常に可溶性であることが分かった。より具体的には、これらの製剤では、ミダゾラムの少なくとも約50%が溶解して保持される。本発明の好ましい実施形態では、ミダゾラムの少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%が溶解して保持される。特に好ましい実施形態では、存在するミダゾラムのほとんどすべてが溶解して保持される。これは、かなりの量のシクロデキストリンを用いる必要なく達成される。シクロデキストリンは高いpHでミダゾラムの溶解を助けるが、これは包接錯体を形成し、投与された際のこれらの包接錯体からミダゾラムの放出は治療効果の開始を遅延させることになる。したがって、本発明の製剤は200mg/ml未満のシクロデキストリンを含む。その製剤は好ましくは150mg/ml、100mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、10mg/ml、5mg/mlまたは2mg/ml未満のシクロデキストリンを含む。本発明の特に好ましい実施形態では、その製剤は、1mg/ml未満のシクロデキストリンを含むかまたはシクロデキストリンを実質的に含まない。
【0029】
本発明の組成物の治療効果の開始は、粘膜を横切る通過速度に明らかに依存することになる。有利なことに、本発明の製剤は、低いpHの対応する組成物より速く通過することができる。したがって、本発明の好ましい態様では、本発明の製剤は、約20μg/cm2/時間以上、約30μg/cm2/時間以上、約40μg/cm2/時間以上、約50μg/cm2/時間以上、約60μg/cm2/時間以上、約70μg/cm2/時間以上または約80μg/cm2/時間以上のフラックス速度を示す。
【0030】
本発明の目的では、フラックス速度は、活性剤を無限投与し、250μm膜を備えたフランツセル(例えば、Rotulex No.18)と紫外-可視分光光度計(Spectronic Biomate, Thermo Electron Limited, Cambridge, UK)を用いて、21℃で測定する。
【0031】
この装置を用いて測定したフラックス速度はインビボでのフラックス速度と直接比較することはできないが、この装置は、生物学的状況を模倣した条件下でのフラックスの一貫した測定を可能にする。
【0032】
溶液中のミダゾラムを提供することによって、乳液または真の懸濁液(すなわち、医薬品の50%超がその中に懸濁されているもの)などの他の種類の液体医薬系の使用に伴う欠点を回避することができる。より具体的には、乳液は、特に長期間保存すると、油相と水相が分離して二層系になるというような安定性の問題を起こしがちであることは公知である。さらに、懸濁液を長期間保存すると、懸濁物質が沈降し凝集して、その送達を困難にする恐れがある。
【0033】
本発明の製剤の有利な製剤中の閉環型(I)のミダゾラムの割合は少なくとも99%である。より好ましくは、閉環型(I)のミダゾラムの割合は少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、さらには少なくとも99.9%である。
【0034】
pH4〜5を有する従来技術の製剤では、ミダゾラムの約95〜98%は閉環型で存在していた。これらの医薬品の治療活性は、pHを増大させることによって、したがって閉環構造の割合が95〜98%から少なくとも99%で存在することによって改善されると予想されるが、ミダゾラムをより高いpHで製剤する困難さを勘案すると、この臨床効果の増大は正当化されるものではない。
【0035】
本発明の製剤は、ミダゾラムの少なくとも50%を溶解した状態に保持し、活性剤の大部分は閉環型で存在する。効能の改善と治療効果の開始速度の向上に加えて、これらの製剤によって示される他の利点は安定性の改善である。
【0036】
より具体的には、ミダゾラムを含む従来の製剤はある種の不純物を含有しており、これらの製品を長期間貯蔵するとその不純物がより多くなることが観察されている。
【0037】
従来のミダゾラム製剤中に存在する付加生成物の経時的な漸増が確認されるHPLCトレースを図2aから図2dに示す。これらのトレースは、加速条件下(40℃および75%の相対湿度)で貯蔵し、1カ月(図2a)、3カ月(図2b)、6カ月(図2c)および9カ月(図2d)後に試験したEpistatusの試料から得られたものである。
【0038】
4つのすべてのトレースの約24分での幅広いピークは、ミダゾラムによってもたらされたものである。約4.5分での二重のピークは、2つの化合物、3-カルボキシ-2-(8-クロロ-1,6-ジメチル-4H-イミダゾ[1、5-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イウム-2-イル)プロパノエートおよび3-カルボキシ-3-(8-クロロ-1,6-ジメチル-4H-イミダゾ[1,5-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イウム-2-イル)プロパノエート、すなわち略してSMAおよびSMBによってもたらされたものである。その二重のピークの強度は時間とともに増大している。存在する不純物の量の増大は、Epistatus製品に与えられた純度および効能の要件に反するほど大きくはなかったが、それは望ましいものではない。
【0039】
驚くべきことに、ミダゾラムをより高いpHで製剤することによって、存在する不純物、特にSMAおよびSMBの量が著しく低下することを見出した。
【0040】
理論に拘泥するわけではないが、不純物の量のこの有利な減少は、開環型で存在するミダゾラムの量の減少または排除と関係していると考えられる。より具体的には、開環型のミダゾラムは、そこで、例えばEpistatus製剤を調製するのに用いられるミダゾラム塩からの対イオンとの付加反応が起こる反応部位を提供する。
【0041】
したがって、ミダゾラムがそのマレイン酸塩の形態で製剤中に含まれる場合、溶液中に存在する生成マレイン酸は開環型のミダゾラムを分解させて、SMAおよびSMBなどのスクシニル誘導体を形成させることができる。ミダゾラムとの塩を形成させるのに用いられるマレイン酸塩以外の対イオンは、開環型のミダゾラムとの同様の望ましくない反応に関係すると予想される。
【0042】
存在する開環型のミダゾラムの割合が低いため、最初は、これらの誘導体は非常に僅かな割合でしか生成しない。しかし、開環型のミダゾラムが上記した付加塩に転換されるのにしたがって、これは、開環型のミダゾラムと閉環型のミダゾラムとの間の動的平衡を促進して追加的量(少しではあるが)の開環型ミダゾラムを生成し、続いてこれは転換されてさらなる量の望ましくない分解物を形成することになる。経時的に、この効果は、これらの付加生成物の割合を増大させるが、存在するミダゾラムの量は減少させることを理解されよう。開環型のミダゾラムをごく少量に保持することによって、不純物の生成が低減されると考えられる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、pHは少なくとも約7.0、7.5または8.0である。特に好ましい実施形態では、pHは約8〜約11.0、約8〜約10.5、最も好ましくは約8〜約10の範囲である。
【0044】
高いpHのミダゾラムの製剤を使用する他の利点は、それらが、従来技術の低pH製剤より経鼻投与および口腔投与に適しているという点である。経鼻投与した場合、酸性の医薬品が鼻粘膜に対する刺激物として作用して鼻粘膜を刺されたような感じにするので、これらの従来技術の酸性製剤は、不快感を引き起こす。さらに、口腔経路を介した3以下のpHを有する製剤の使用は、頬粘膜に損傷を与え、歯エナメル質にも損傷を与えることになる。本発明の製剤を使用することによって、こうした問題が回避される。
【0045】
ミダゾラムの分解速度が増大し、また、高いpHでの製剤は許容し難い「せっけん」のような味覚も有しているので、そうした過度に高いpH、例えば11.0超は一般に回避される。
【0046】
製剤のpHは、製剤中に存在する添加剤によって本来的に提供されるか、またはpH調節剤を用いることができる。pH調節剤は単なる塩基もしくは酸を含むことができ、また、追加的にもしくは代替的に緩衝剤を含むこともできる。
【0047】
製剤が粘膜に、特に口腔内で投与されると、一方で単に塩基性化された製剤は、投与後に唾液によって弱酸性のpHに調整されることになるが、緩衝剤が製剤の所望pHを維持するので、緩衝剤の使用が好ましい。薬学的に許容される任意の緩衝剤を使用することができるが、製剤を塩基性のpHに維持する緩衝剤が好ましい。そうした緩衝剤の例には、リン酸緩衝剤、グリシン/NaOH緩衝剤、炭酸または重炭酸緩衝剤が含まれる。
【0048】
本発明の組成物は好ましくは約5mg/ml〜約100mg/mlのミダゾラムを含む。好ましい実施形態では、その組成物は約5〜80mg/ml、約5〜60mg/ml、5〜30mg/ml、5〜20mg/ml、6mg/ml〜約15mg/ml、より好ましくは約7.5mg/ml〜約12.5mg/mlのミダゾラムを含む。
【0049】
本発明の組成物は好ましくは22℃で測定して約500CP以下の粘度を有する。好ましい実施形態では、粘度は約200〜400CP、約250CP〜350CP、最も好ましくは約270CP〜330CPであってよい。
【0050】
粘度は、当業者に公知の任意の装置、例えばBrookfield LVDV+/-を用いて測定することができる。
【0051】
患者の粘膜に投与されたとき、液体の運動性がより小さくなり所望の位置に局在して留まり、その間にミダゾラムは吸収されるので、約200CP〜約400CPの粘度を有する製剤の使用は有利である。例えば、組成物を患者の口腔に投与した場合、口内全体を製剤が低度に循環し、これはある量の製剤が患者の喉の方へしたたり落ちるリスクを、排除まではゆかないが、最少化することを意味する。
【0052】
製剤の粘度は、含まれる他の添加剤によって本来的に提供されるか、または増粘成分が追加的に存在していてよい。好ましい増粘成分には、グリセロール、カラギーン、マルメロの種、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、カルボキシビニルポリマー、加水分解水添デンプン、マルチトールシロップ、糖(デキストロース、グルコースおよびスクロース)、セルロース誘導体、例えばナトリウムもしくはカルシウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース、多糖、ペクチン、寒天、親水性のゴム、例えばアカシアゴム、グァーガム、アラビアゴムおよびキサンタンゴム、トラガカントゴム、アルギン酸、アルギン酸塩、デキストラン、カルボマー樹脂またはその混合物が含まれる。
【0053】
貯蔵寿命を長くするために、製剤は抗微生物保存剤を含むことができる。ミダゾラムまたは添加剤のいずれかに悪影響を及ぼさない任意の保存剤を用いることができる。好ましい保存剤には、アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、ブチルパラベン、セトリミド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、エタノール、エチルパラベン、グリセリン、イミド尿素、メチルパラベン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀(II)、ホウ酸フェニル水銀(II)、硝酸フェニル水銀(II)、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコール、プロピル-パラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸およびチオマーサルまたはその混合物が含まれる。保存剤の量は、例えば組成物の約0.5〜約10mg/ml、好ましくは製剤の約1〜約5mg/mlの範囲であってよい。
【0054】
貯蔵寿命は、ミダゾラムの酸化を防止することによっても延ばすことができる。これは、製剤の光への曝露を制限することによって達成することができる。例えば、本発明の製剤をバルク溶液として提供する場合、その溶液を暗色系のガラス瓶に詰めることが好ましい。あるいは、製剤を単位剤形で提供する場合、その剤形を、不透明な包装材料でオーバーラップ包装することが好ましい。
【0055】
さらに、酸化防止剤、例えばメタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸またはエデト酸ナトリウムなどのキレート剤を用いることができる。グリセリンも、安定剤として作用させるために使用することができる。酸化防止剤および安定剤の量は、例えば、組成物の約0.5〜約10mg/ml、好ましくは製剤の約1〜約5mg/mlの範囲であってよい。
【0056】
製剤は抗真菌薬を含むこともできる。典型的な抗真菌薬には、ナトリウムメチルヒドロキシベンゾエート、ナトリウムプロピルヒドロキシベンゾエートまたはその混合物などのアルキルヒドロキシベンゾエートのアルカリ金属塩が含まれる。抗真菌薬の量は、例えば組成物の約0.5〜約1mg/ml、好ましくは製剤の約1〜約5mg/mlの範囲であってよい。
【0057】
甘味剤を本発明の製剤で用いることができる。好ましい甘味剤には、糖、アセサルフェーム、スクラロース、高果糖コーンシロップ、マルチトールシロップ、チクロ、サッカリンおよびアスパルテームが含まれる。しかし、口腔を介して投与するための製剤の場合、製剤が歯の近くで口腔に保持されることになるので、甘味剤は合成甘味剤であることが好ましい。
【0058】
香味増進剤を本発明の製剤で用いることもできる。香味増進剤は、患者に受け入れられ易くする任意の香味を製剤に付与することができる。好ましい香味剤には、イチゴ、ラズベリー、クランベリー、バナナ、モモ、マンゴー、パッションフルーツ、リンゴ、ブドウ、キャラメル、スイカ、チョコレート、コーヒー、ヨーグルト、バニラ、アイスクリームまたは風船ガムが含まれる。
【0059】
甘味剤および/または香味増進剤の量は、製剤の約10mg/ml〜約100mg/mlの範囲であることが好ましい。
【0060】
高いpHでミダゾラムを溶解して保持できる任意の薬学的に許容される担体を、本出願の製剤中に含めることができる。その担体は好ましくは、水混和性のものである。担体は、アルコール(低分子量アルコール、例えばエタノールおよび多価アルコール、例えばグリセリン、グリセロール、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸とのグリセロールトリエステル、マルチトール、非毒性グリコール、例えばポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール、特にプロピレングリコール200〜400を含む)およびその誘導体ならびに油類(例えば、ヤシ油およびラッカセイ油)またはその混合物を含むことができる。本発明の好ましい処置では、その担体は、6超のpHでミダゾラムを溶解して保持する量で存在する。おおよそ5〜75、15〜60または25〜50%の担体を、本発明の好ましい実施形態で用いることができる。
【0061】
特に好ましい実施形態では、その担体系は、グリセロールおよび/またはグリコール(好ましくはポリエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールのいずれかまたはその両方)および任意選択の他の添加剤、例えば水、マルチトールまたは上記に概略を示した他の可能性のある担体のいずれかを含む。そうした担体系では、グリセロール:グリコールの重量比は好ましくは、約0:100、約1:99、約10:90、約15:85または約20:80から50:50、約45:55または約40:60の範囲である。
【0062】
本発明の他の態様によれば、ミダゾラムおよび薬学的に許容される担体を含む、患者に投与するための液体組成物であって、その組成物が約200mg/ml未満のシクロデキストリンを含み、その担体がグリコールおよび任意選択のグリセロールを含み、グリセロール:グリコールの重量比が約0:100〜約50:50の範囲であり、ミダゾラムの少なくとも約50%が溶解して存在する組成物が提供される。
【0063】
本発明のこの態様の組成物は、てんかんを治療するまたは麻酔を誘発させるのに用いることができる。
【0064】
本発明の組成物では、存在するエタノールの量は、いずれも組成物重量に対して好ましくは約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、10%未満、5%未満または1%未満である。特定の実施形態では、本発明の組成物は本質的にエタノールを含まない。
【0065】
薬学的に許容される有効な任意の形態のミダゾラムを本発明の製剤に含めることができる。例えば、ミダゾラムの遊離分子を用いることができる。あるいは、塩を用いることができる。本発明の好ましい実施形態では、その塩酸塩、マレイン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩が用いられる。塩酸塩およびマレイン酸塩が、最も一般的に用いられるミダゾラムの形態である。他の薬学的に許容される塩には、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ベシル酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、プロピオン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重炭酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモン酸塩(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が含まれる。
【0066】
本発明の製剤は、(これらに限定されないが)コルチコステロイド、細胞傷害性薬物、抗生物質、免疫抑制剤、非ステロイド系抗炎症薬、他の麻酔性鎮痛剤、局部麻酔剤、NMDAアンタゴニスト、神経弛緩剤、抗けいれん剤、鎮痙剤、制吐剤、抗うつ剤または筋肉弛緩剤から選択される他の治療剤と逐次的にまたは同時に投与することができる。これらの薬剤は別々に投与しても一緒に投与してもよい。
【0067】
本発明の製剤は、用量分をそこから取り出せるバルク溶液として提供することができる。しかし、好ましい実施形態では、製剤は単位用量として提供される。単位用量は好ましくは使い捨て投与手段、最も好ましくは点滴器、例えば英国特許出願番号第0922357.9号(これを参照により本明細書に組み込む)に開示されているもので提供される。
【0068】
単位用量は約0.1〜約20mlの医薬品を含むことができる。より好ましい実施形態では、その単位用量は、約0.2〜約10ml、約0.25〜約5ml、より好ましくは約0.5〜約2mlの製剤を含む。最も好ましい処置では、単位用量は1mlの医薬品を含む。単位用量の医薬品の使用は不正確な用量で投与するリスクを排除するのに有利である。
【0069】
本発明の態様の組成物はミダゾラムを主要活性薬剤として含む。しかし、ミダゾラムと置き換えるかまたはそれに加えて、類似の組成物を用いて代替の活性成分を製剤することができる。そうした類似組成物は、例えば、アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、シノラゼパム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エチゾラム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ハラゼプラム(halazepram)、ケタゾラム、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、クアゼパム、テマゼパム、テトラゼパムおよびトリオゾラムを含むベンゾジアゼピンである。
【0070】
ミダゾラムと置き換えるかまたはそれに加えて本発明の組成物で製剤できる代替の活性成分には、ニコチンおよびその誘導体ならびに/またはコデイン、モルヒネ、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ニコモルホン、オキシモルホン、フェンタニル、メチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ペチジン、メタドン、ブプレノルフィン、トラマドールを含むオピオイドが含まれる。
【0071】
本発明の製剤はキットの一部として提供することができる。このキットは、それを必要とする患者の口腔、鼻腔、舌下および/または直腸腔に製剤を投与するための取扱説明書も含むことができる。製剤は、本発明の製剤の少なくとも1回の単位用量の形態でキット中に含まれることが好ましい。キットは、1回または複数回用量の他の治療剤も含むことができる。
【0072】
本発明の第3の態様によれば、てんかん発作を治療するかつ/または患者にある程度の麻酔を誘発させるために患者に投与するための約6.0以上のpHを有し、200mg/ml未満のシクロデキストリンを含む液体医薬品であって、ミダゾラムの少なくとも50%が溶解して存在する液体医薬品の製造におけるミダゾラムの使用を提供する。
【0073】
本発明の第4の態様によれば、てんかん発作を治療するかつ/または患者にある程度の麻酔を誘発させるためのミダゾラムの使用であって、そのミダゾラムが、約6.0以上のpHを有しかつ200mg/ml未満のシクロデキストリンを含む液体医薬品として患者に投与され、ミダゾラムの少なくとも50%が溶解して存在する使用を提供する。
【0074】
本発明の第5の態様によれば、上記で論じた製剤を患者に投与することによって、てんかん発作を治療するかつ/または患者にある程度の麻酔を誘発させる方法を提供する。
【0075】
本発明の第3、第4および第5の態様において、ミダゾラムは上記の製剤で投与されることが好ましい。
【0076】
本発明の製剤はすべての患者群で使用するのに適している。しかし、具体的な利点は、製剤を小児患者で使用する場合に特に明らかである。例えば、口腔経路を介したミダゾラムの投与によって、針付きの注射器の使用による不安の惹起が避けられる。これはそうした若い患者において特に重要である。さらに、許容される香味剤プロファイルを有する製剤の使用は、そうした患者において特に重要である。
【0077】
「小児患者」という用語は、18才未満のすべての子供や青少年を含む。本発明の製剤は、若い患者、例えば早産児から12〜14才の子供に特に適している。
【0078】
不確実さが残るのを避けるためだが、ミダゾラムの濃度が示されている場合、例えば製剤が5mg/mlの濃度のミダゾラムを有するとされている場合、別段の指定のない限り、提供される遊離ミダゾラムの濃度であって、使用されるミダゾラムの何らかの塩の濃度ではない。
【0079】
ミダゾラムの開環型または閉環型の割合に言及されている場合、例えば存在する閉環型の割合が99%であるとされている場合、与えられたそのパーセンテージは、存在するミダゾラム全量に対する割合である。
【0080】
ミダゾラムおよび添加剤の濃度を規定するために「mg/ml」という単位が使用されている場合、その濃度は全製剤に対する割合として提供される。
【0081】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
ある範囲の製剤を調製した。これらは以下の組成を有する:
【0083】
【表1】

【0084】
これらの製剤は3.4、4.1、4.8、5.5、6.2、6.9、7.5、8.0、8.5、9.0、10.0のpHを有した。調製したら、製剤を40℃、75%の相対湿度のもとで貯蔵した。1カ月間貯蔵した後、これらの試料の不純物プロファイルを測定し、以下の結果が観察された:
【0085】
【表2】

【0086】
これらの結果を図3に示す。図から分かるように、高いpHを有する製剤は、40℃、75%の相対湿度下で貯蔵した後、認められる不純物の量が減少するというメリットが得られた。したがって、これらの製剤のpHを増大させると、その製剤中のミダゾラムの安定性に有利となり、それは予想外に改善された。
【0087】
図4は、製剤の外挿された不純物含量を示す図である。分解副生成物の生成が比較的一定であると仮定すると、8〜10のpHを有する製剤は、加速条件下での9カ月間の貯蔵の後でも約5%の不純物含量しか含まない。
【0088】
[実施例2]
安定性に対するpHの効果をさらに検討するために、実施例1で論じたものに対する代替の一連の製剤を調製した。pH8.5で溶解しているミダゾラムを含む一連の組成物を以下の2つの方法に従って作製した。
【0089】
方法1. 水、グリセロール、Lycasin(登録商標)、プロピレングリコール/PEG200/400およびエタノールの順番に加えて、添加剤のすべて(10%水酸化ナトリウムを除く)を単一のプレミックスとしてブレンドした。これらの添加剤が混合されて最終的に均一な溶液になったら、マレイン酸ミダゾラムを加えた。
【0090】
方法2. 最初にマレイン酸ミダゾラムを混合容器に加えた。次いで添加剤を以下:水、グリセロール、Lycasin(登録商標)、プロピレングリコール/PEG200/400、エタノールの順番で逐次加えた。ミダゾラムを、水-グリセロールプレミックス中における境界層pH誘導により溶解し、沈殿させた。グリセロールとLycasin(登録商標)の添加の間に10分間の遅れをもたせた。残りの添加剤を添加した後、容器(ねじぶた付きのガラス瓶)を密封し、目視で溶液が透明になるまで、約10〜15分間強力に振とうさせた。
【0091】
調製した溶液は以下に示す組成を有した。以下の表には、結晶化を促進させるために冷蔵庫に短時間貯蔵した後の溶液の外観の表示も示す。得られた溶液の透明さによって、結晶化が起こっておらず、その中でミダゾラムが安定であることが確認される。
【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
[実施例3]
実施例2で論じた製剤のいくつかの安定性を、市販されている4.5〜5.5のpHを有するEpistatus製品(比較例)の2つの試料と比較した。これらの試料を、40℃の温度、75%の相対湿度下で3カ月間貯蔵した。貯蔵後、試料を分析した。不純物スクシニルミダゾラム(SMA、SMB)および全不純物の濃度%を図5aおよび図5bにそれぞれ示す。これから分かるように、本発明の高いpHの製剤は、45℃の温度、75%の相対湿度下で3カ月間貯蔵した後、著しく少ない量の不純物しか含有していなかった。
【0096】
実施例2で論じた製剤の不純物含量を測定するために用いた分析方法は、実施例1で論じた製剤の不純物含量を測定するために用いた分析方法とは異なり、より高い感度レベルを有している。したがって、実施例1で得られた結果は、この実施例で考察し、図5aおよび図5bに示した結果と直接には比較できない。
【0097】
[実施例4]
本発明の組成物のフラックス速度対低pH(約5)比較例製剤のフラックス速度を、フランツセルを用いて測定した。フラックス速度を、250μm膜を備えたRotulex No.18フランツセルと紫外-可視分光光度計(Spectronic Biomate, Thermo Electron Limited, Cambridge, UK)を用い、活性剤を無限投与して21℃で測定した。
【0098】
低pH比較例製剤は以下の組成物を有した。
【0099】
【表6】

【0100】
その比較例製剤とグリセロール40:(PEG200)60製剤のフラックス速度を上記に概要を示した装置を用いて測定した。得られた結果を図6にグラフで示す。四角印で示した上の線は本発明の組成物で得られた結果であり、菱形印で示した下の線は比較例組成物で得られた結果である。
【0101】
この図から分かるように、本発明の組成物の吸収は232nmにピークがある。比較例製剤の平均セル体積は2.93mlであり、本発明の製剤の平均セル体積は3.13mlであった。25μg/mlのマレイン酸ミダゾラム標準品の吸収は232nmで1.455である。
【0102】
したがって、算出された本発明の組成物のフラックス速度は88.67μg/cm2/時間であり、他方、算出された比較例組成物のフラックス速度は8.12μg/cm2/時間に過ぎなかった。すなわち、本発明の組成物は、比較例組成物のそれより10倍以上大きいフランツセルでのフラックス速度を示した。
【0103】
これは、本発明の製剤が、従来の組成物より急速に口腔を介して吸収され、したがって治療活性のより速い始まりを示すことを強く示唆している。
【0104】
[実施例5]
実施例4で論じた比較例製剤および実施例2で調製した組成物のいくつかを用いて追加のフランツセル試験(Franz cell testing)を実施した。
【0105】
得られた結果を図7aおよび図7bに示す。図7aから分かるように、本発明の組成物で製剤した場合、ミダゾラムの移動は比較例製剤より著しく大きく、その差は時間とともに増大している。図7bから明らかなように、図7aで観察された有利な結果はPEG200:GLY(60:40)製剤に限定されず、本発明の他の製剤でも示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが6以上であり、粘度が200〜400CPである、ミダゾラムおよび薬学的に許容される担体を含む、患者に投与するための液体組成物であって、前記組成物が200mg/ml未満のシクロデキストリンを含み、前記ミダゾラムの少なくとも50%が溶解して存在する、液体組成物。
【請求項2】
口腔、経鼻、経直腸および/または舌下経路で投与するためである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
pHが7以上である、請求項1または2に記載の液体組成物。
【請求項4】
pHが8以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項5】
pHが8〜11である、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項6】
pHが8〜10.5である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項7】
pHが8〜10である、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記ミダゾラムの少なくとも90%が溶解して存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記ミダゾラムの少なくとも98%が溶解して存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項10】
ミダゾラムの濃度が5mg/ml〜20mg/mlである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ミダゾラムの濃度が6mg/ml〜15mg/mlである、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ミダゾラムの濃度が7.5mg/ml〜12.5mg/mlである、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
粘度が250CP〜350CPである、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
粘度が270CP〜330CPである、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
増粘成分をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
50mg/ml以下のシクロデキストリンを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
シクロデキストリンを含まない、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
緩衝剤をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記緩衝剤が、リン酸緩衝剤、グリシン/NaOH緩衝剤または炭酸もしくは重炭酸緩衝剤あるいはそれらの混合物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
甘味剤、香味増進剤、保存剤および/または抗真菌薬をさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記担体が、水、エタノール、グリセリン、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはそれらの混合物を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
追加の治療剤をさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
てんかん発作を治療するかつ/またはある程度の麻酔を誘発させるのに使用するための請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
添付の明細書で上記に説明したような組成物。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物の単位用量。
【請求項26】
0.1〜10mlの製剤を含む、請求項25に記載の単位用量。
【請求項27】
0.2〜5mlの製剤を含む、請求項25または26に記載の単位用量。
【請求項28】
0.5〜2mlの製剤を含む、請求項25から27のいずれか一項に記載の単位用量。
【請求項29】
使い捨て投与手段内に含有される、請求項25から28のいずれか一項に記載の単位用量。
【請求項30】
前記使い捨て投与手段が点滴器である、請求項25から29のいずれか一項に記載の単位用量。
【請求項31】
請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物または請求項25から30のいずれか一項に記載の単位用量を含むキット。
【請求項32】
追加の治療剤をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記追加の治療剤が単位用量で提供される、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
てんかん発作を治療するかつ/または患者においてある程度の麻酔を誘発させるのに使用するための、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記患者が14才以下の年齢である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記患者に追加の治療剤を同時または逐次的に投与する、請求項34または35に記載の組成物。
【請求項37】
医薬品が追加の治療剤を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記追加の治療剤が、コルチコステロイド、細胞傷害性薬物、抗生物質、免疫抑制剤、非ステロイド系抗炎症薬、麻酔性鎮痛剤、局部麻酔剤、NMDAアンタゴニスト、神経弛緩剤、抗けいれん剤、鎮痙剤、制吐剤、抗うつ剤および筋肉弛緩剤からなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2012−6925(P2012−6925A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−137329(P2011−137329)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(511151329)スペシャル・プロダクツ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】