説明

半導体ウェハの研磨方法

【課題】アルカリ性緩衝液が、半導体ウェハの金属性汚染の原因になることを回避する。
【解決手段】研磨パッド中に結合された砥粒物質を含有する研磨パッドを使用し、且つアルカリ性研磨剤の供給下で半導体ウェハを研磨する方法に関し、その際、該研磨剤の体積流量が5リットル/分以上であり、且つ該研磨剤を、研磨中に研磨剤循環路内で循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ、特にシリコンウェハは、例えばマイクロプロセッサ又はメモリチップのような大規模集積電子部品の製造のために使用されている。この場合、その上に電子部品が作製される該シリコンウェハの表面の平坦度には厳しい要求が課される。これはシリコンウェハの露光(リソグラフィ)に際してと、中間研磨プロセス("化学機械研磨",CMP)に際しての問題を該部品の製造中に最小限にとどめるために必要である。
【0003】
半導体ウェハの表面の研磨は、可能な限り均一である平面の表面を形成するために該半導体ウェハの表面から材料を除去する目的を追求している。それによって不所望な表面トポグラフィ及び表面欠陥、例えば粗い表面、結晶格子損傷又はスクラッチを取り除くことができ、且つ均一な表面が、その後の加工のために利用可能となる。
【0004】
それゆえ、研削、洗浄及びエッチングステップ後に、従来技術に従って、該半導体ウェハの表面は一次研磨によって平滑化される。
【0005】
両面研磨(DSP)の場合、半導体ウェハがいわゆるキャリアに束ねられずに装着され、且つ表面及び裏面が同時に、"自由に浮動(floating freely)"する形で、研磨パッドが張られた上部研磨プレートと下部研磨プレートとの間で研磨ゾルによって研磨される。支持部は、半導体ウェハを研磨支持体に押し付ける制御可能な圧力を供給する。
【0006】
従来技術において、該研磨は、加圧下及び研磨剤(スラリ)の供給下で、ウェハと研磨パッドとの間の相対運動によって行われる。該研磨剤は、例えばコロイド状に分散したシリカゾルである。該研磨パッドは砥粒を含有しない。該シリカゾルの機械的な研摩作用と、該アルカリ性研磨剤の化学的腐食との相互作用により、次いで該ウェハ表面の平滑化につながる材料除去がもたらされる。
【0007】
シリコンウェハのDSPの例示的な一実施態様は、US2003054650Aに開示されている。かかるDSP研磨のために適した装置は、DE10007390A1に表されている。
【0008】
それに対して、CMP研磨の場合、表面のみが、例えば軟質研磨パッドによって研磨される。
【0009】
慣例の研磨剤調製方法の場合、該研磨剤成分は、濃縮溶液及び/又は固体として調達される。しかしながら、該固体は一般に、使用の前に別途調製ステーションにおいて超純水で溶解される。これらの研磨剤成分及び超純水は、中心的な調製ステーションにおいて処理されて、完成した研磨剤が形成されるか又は部分混合物が形成される。このようにして製造された溶液はたいてい、適した容器中に一時的に貯蔵される。使用準備のできた混合物は、環状管路を介して消費装置に送り込まれる。該研磨剤は、次いで分岐管路を介して処理ステップのために抜き取られる。使用された研磨剤は、その後に廃棄される。
【0010】
慣例的に、コロイド状に分散されたシリカゾルに加えて、アルカリ性緩衝液、例えばK2CO3又はKOH溶液も使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2003054650A
【特許文献2】DE10007390A1
【特許文献3】WO92/13680A1
【特許文献4】US2005/227590A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術から公知の使用において、該アルカリ性緩衝液は、半導体ウェハの金属性汚染の原因になるものと考えられる。
【0013】
これを回避することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、研磨パッド中に結合された砥粒物質を含有する研磨パッドを使用し、且つアルカリ性研磨剤の供給下で半導体ウェハを研磨する方法に関し、その際、該研磨剤の体積流量が5リットル/分以上であり、且つ該研磨剤を、研磨中に研磨剤循環路内で循環させる。
【0015】
好ましくは、該アルカリ性研磨剤は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)のような化合物又はこれらの化合物の任意の所望の混合物を含有する超純水もしくは純水である。
【0016】
TMAHの使用が特に好ましい。
【0017】
該研磨剤のpH値は、好ましくは10〜12の範囲にある。
【0018】
該研磨剤溶液中の上記化合物の割合は、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.01〜0.2質量%である。
【0019】
そのうえ該研磨剤溶液は、1つ以上の更なる添加剤、例えば、湿潤剤及び界面活性剤のような表面活性添加剤、保護コロイドとして作用する安定剤、防腐剤、殺菌剤、アルコール及び錯化剤を含有してよい。
【0020】
この場合、該研磨剤は固体を含まない。
【0021】
該研磨剤は、砥粒を含有するスラリであってもよい。
【0022】
該研磨剤スラリ中の砥粒物質の割合は、好ましくは0.25〜20質量%、特に好ましくは0.25〜1質量%である。
【0023】
該砥粒物質粒子の粒径分布は、好ましくは際立って単峰性である。
【0024】
平均粒径は、5〜300nm、特に好ましくは5〜50nmである。
【0025】
該砥粒物質は、好ましくは、元素のアルミニウム、セリウム又はシリコンの1つ以上の酸化物から成る。
【0026】
コロイド状に分散したシリカを含有する研磨剤スラリが特に好ましい。
【0027】
該シリコンウェハは、研磨されるべき側面を有する研磨ヘッドを使って、研磨プレート上にある研磨パッドに押し付けられ、且つこのように研磨されることができるか、又は代替的に自由浮動式両面研磨に−キャリアによって導いて−供されることができる。
【0028】
研磨ヘッドを用いた研磨の場合、該研磨ヘッドにはまた、基板を側方で囲むリテーナリングが含まれ、且つ研磨中にそれが該研磨ヘッドからずれることを防止する。
【0029】
現在の研磨ヘッドの場合、研磨パッドから離れている半導体ウェハの側面は、かけられた研磨圧力を伝える弾性膜上に載置されている。該膜は、気体又は液体クッションを形成する、ことによると細別されたチャンバ系の一部分である。
【0030】
しかしながら、該研磨ヘッドはまた、弾性支持体("裏面パッド")が膜の代わりに使用される場合にも使用される。
【0031】
基板は、該基板と該研磨パッドとの間に研磨剤を供給し、且つ該研磨ヘッドと該研磨プレートの回転により研磨される。
【0032】
この場合、該研磨ヘッドは、付加的に該研磨パッドの上を平行移動してもよく、それによって該研磨パッド面のより広範な利用が得られる。
【0033】
本発明による方法は、等しくシングルプレート式研磨機及びマルチプレート式研磨機で;片面研磨処理のみならず両面研磨処理の形でも行われることができる。
【0034】
好ましくは2つ、特に好ましくは3つの研磨プレート及び研磨ヘッドを有するマルチプレート式研磨機を使用することが好ましい。
【0035】
本発明による方法において、研磨パッド中に結合された砥粒物質を含有する研磨パッドが使用される(FAP又はFAパッド)。
【0036】
適した砥粒物質は、例えば、元素のセリウム、アルミニウム、シリコン又はジルコニウムの酸化物の粒子及びシリコンカーバイド、ホウ素窒化物及びダイヤモンドのような硬質物質の粒子を含む。
【0037】
特に適した研磨パッドは、反復微細構造によって形作られた表面トポグラフィを有する。これらの微細構造("ポスト")は、例えば、円筒形又は多角形の断面を有するピラーの形又は錐体又は角錐台の形を持つ。
【0038】
かかるポリシングパッドのより詳細な記載は、例えばWO92/13680A1及びUS2005/227590A1に含まれている。
【0039】
使用されるFAP研磨パッドの粒子の大きさは、好ましくは0.1μm以上で、且つ1.0μm以下である。
【0040】
基本的に、該研磨剤は、好ましくは環状管路によって研磨機を通過し、且つ循環する(研磨剤循環路)。
【0041】
該研磨剤循環路内を循環させられる媒体は、好ましくは冷却される。該冷却は、好ましくは該研磨剤循環路内に組み込まれた熱交換素子によって行われる。
【0042】
該研磨機の付近で、該研磨剤は、好ましくは分配器ユニットによって抜き取られ、次いで研磨パッドと半導体ウェハの間に導入される。
【0043】
使用される該研磨媒体の流量は、好ましくは測定循環路及び制御循環路によって以下のように調整される:該研磨媒体の流量は、調節弁又はニードル弁を有する流量調整器によって又は計量供給ポンプによって調整される。該弁は、管路径の変更によって調節される。該流量は、例えば羽根車式流量計によって測定される。当然の事ながら、適したソフトウェアによる自動制御が可能であり、且つ好ましい。
【0044】
砥粒研磨剤成分、溶液及び水を有してよい、このように制御された媒体は、混合ユニットに(例えば静的混合エレメントを有する導管)に導かれ、そこで該研磨剤が混合される。
【0045】
このように混合された該研磨剤は次いで、まず保持ステーションに導かれるか、又は再循環保持容器として及び該研磨剤を場合によっては補充することもある容器として用いられる保持容器に直接導かれてもよい。
【0046】
該保持容器から、該研磨剤は、好ましくは環状管路を介して、1つ以上の消費装置に送り込まれ、且つ分岐管路によって該研磨機に送り込まれる。
【0047】
使用されなかった研磨剤は保持容器に流れて戻り、且つ該消費装置に環状管路を介して再び送り込まれる。
【0048】
研磨中に消費された研磨剤は、適した収集システムによって収集され、且つ管路系により該保持容器に返送される。前記管路系は、好ましくは排出を意図しており、すなわち好ましくは、消費された研磨剤の部分が取り出され、且つ該保持容器には返送されない。未消費の新しい研磨剤の相応する量が、次いで該保持容器に供給される。
【0049】
結果として、既に使用された研磨剤の一定分が、常に新しい研磨剤と取り替えられる。
【0050】
好ましくは、該研磨剤のアルカリ性成分が、これの補充のために使用される。
【0051】
好ましくは、保持容器中の該研磨剤のpH値は、常にオンライン分析によってモニタリングされる。必要な場合には、消費された研磨剤を排出し、且つ保持容器中に該研磨剤を補充することによって、該pH値は、好ましくはアルカリ性溶液を供給することによって、相応して校正される。
【0052】
該保持容器の充填レベルは、好ましくは常に一定の最低水準にある。これは新しい研磨剤による相応する調製によって保証される。
【0053】
本発明による方法において、研磨剤の規定の量又は濃度が保持容器中に収集され、次いで再利用され、その際、消費された研磨剤の規定の量が、新しい研磨剤と取り替えられる。これは、まず新しい研磨剤を作製し、且つそれが一度使用された後に、それを保持容器中に導くようにして行われる。該保持容器中の充填レベルがその最高レベルに達したら、該処理法は、すでに一度使用されていて、且つ収集容器中にある研磨剤に完全に切り替えられる。使用目的に応じて、保持容器中の充填レベルは、媒体損失/水洗損失、洗浄速度等の結果低下する。保持容器中で特定の充填レベルに達したら、又は既定の使用継続時間後に又はウェハの特定数の後に、すでに一回以上使用された該研磨剤は、供給容器からの新しい研磨剤の添加によって補充される。
【0054】
該方法を行うために適しているのは、研磨剤を規定の量及び濃度の限度内で交換することのできる手段を有する半導体ウェハ用の研磨設備である。好ましくは、このタイプの研磨設備は、すでに使用されている研磨剤用の少なくとも1つの保持容器、及び消費された研磨剤を排出し、且つ新しい研磨剤を添加する手段も有する。
【0055】
半導体ウェハ用の好ましい1つの研磨設備は、制御器を有するものであり、その際、該研磨剤は、薬液消費量に基づいて再生される。これは、該研磨方法中に研磨剤の流出流において該薬液消費量を決定し、次いで相応して新しい研磨剤又は特定の研磨剤成分を供給する装置によって行われる。該薬液消費量は、例えば電極によって測定される。
【0056】
半導体ウェハ用の更なる好ましい研磨設備は、研磨剤の規定の量又は濃度を排出し、且つ交換する手段を有する。これらの手段は、例えば市販の測定システム及びポンプである。
【0057】
半導体ウェハ用の更なる好ましい研磨設備は、研磨剤の規定の量又は濃度を、再利用のための保持容器中に収集する手段、及び消費された研磨剤を新しい研磨剤の規定の量と交換する手段を有する。
【0058】
本発明の利点は、該研磨剤の組成が、再生された研磨剤の場合ですら安定したままであるという事実にある。
【0059】
研磨摩擦速度は、実際に一定であり続け、且つ該研磨時間を再調整する必要がなく、この場合、該研磨時間も一定であり続け、且つ例えば所望の厚みに関して、より良好な品質が得られる。
【0060】
5リットル/分以上の比較的高い体積流量の使用が、本発明により予定されている。好ましくは、該研磨剤の体積流量は5〜10リットル/分であり、特に好ましくは5〜9リットル/分であり、及び極めて好ましくは6〜8リットル/分である。比較的高い体積流量は、半導体ウェハからの及びその直接の周囲状況、すなわち研磨剤及び研磨パッドからのより良好な熱の放散につながる。
【0061】
本発明は、プロセス最適化、プロセス開発及び該方法の拡張におけるパラメータ及び変動値に関してより高い適応性を可能にする。プロセスに関連する測定データを用いて、本発明により、該研磨剤の組成を変えられることができる。
【0062】
好ましくは、例えば3つの媒体を要する研磨シーケンスにおいて、全ての3つの媒体が、記載したように再利用され、補充され且つ/又は再生される。
【0063】
プロセス技術的な措置の結果として、特に重要なアルカリ性成分を有する該研磨剤が連続的に循環され、補充され、且つ再生されるという事実によって、半導体ウェハのバルク中での金属汚染の侵入を減少させることができる。重要な金属は、特に銅及びニッケルである。
【0064】
研磨剤リサイクルによってまた、特に純アルカリ性媒体、例えばTMAHの使用が経済的なものとなり、これにより該金属汚染が更に減少される。
【0065】
最後に、金属イオンの拡散速度は、該研磨剤循環路を冷却することによって低下させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッド中に結合された砥粒物質を含有する研磨パッドを使用し、且つアルカリ性研磨剤の供給下で半導体ウェハを研磨する方法であって、その際、前記研磨剤の体積流量が5リットル/分以上であり、且つ前記研磨剤を、研磨中に研磨剤循環路内で循環させる、半導体ウェハの研磨方法。
【請求項2】
前記アルカリ性研磨剤が、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)のような化合物又はこれらの化合物の任意の所望の混合物を含有する超純水である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ性研磨剤が、元素のアルミニウム、セリウム又はシリコンの1つ以上の酸化物から選択される砥粒を含有するスラリを有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記研磨剤のpH値が、10〜12の範囲にある、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記研磨剤が、コロイド状に分散されたシリカ及びTMAHを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記研磨パッドが、元素のセリウム、アルミニウム、シリコン又はジルコニウムの酸化物の粒子又は硬質物質、例えばシリコンカーバイド、ホウ素窒化物及びダイヤモンドの粒子から選択される砥粒を有し、そして平均粒径が0.1μm以上且つ1.0μm以下である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ性研磨剤を、研磨媒体循環路内で循環させ、且つ該処理において冷却する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
研磨剤の規定の量又は濃度を、薬液消費量によって調節して補充する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
使用済み研磨剤の規定の量又は濃度を排出し、且つ新しい研磨剤と交換する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
研磨剤の規定の量又は濃度を保持容器中に収集し、次いで再利用し、その際、消費した研磨剤の規定の量を、新しい研磨剤と交換する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2011−77525(P2011−77525A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−218895(P2010−218895)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】