説明

半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法

【課題】半導体ウエハ用収容ケースの品質を容易に且つ短時間で評価できると共に、内部に収容される半導体ウエハの常温における保管寿命を推定することで当該収容ケースの品質を評価することが可能な半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法を提供する。
【解決手段】ウエハ収容ケースを所定条件で乾燥させた後、半導体ウエハを収容して、常温より高い所定温度で所定時間加熱し、該加熱されたウエハ収容ケースに収容されている半導体ウエハの品質を判定し、前記所定温度と判定された半導体ウエハの品質とに基づいてアレニウスプロットを実行し、収容ケース内の常温における水分量に基づいて、該収容ケースが吸着している水分量を算出し、アレニウスプロットとウエハ収容ケース内が吸着している水分量に基づいて、半導体ウエハの常温における保管寿命を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを収容する半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品化された半導ウエハは、各デバイス製造会社に搬送する際に、半導体ウエハを多数枚同時に保持する収容ケースに収容され、該収容ケースに所定の梱包が施されて出荷される。
【0003】
半導体ウエハが収容ケースに収納されている期間は、半導体ウエハが製品化された時点から各デバイス製造会社でのデバイス工程に至るまでの期間を考慮すると数カ月に及ぶことがある。この期間に収容ケースから発生する微量な揮発成分が半導体ウエハに対して影響を与えるか否かは収容ケースの材質、及び収容ケースの管理方法に起因するため、その材質選定、及び収容ケースの管理方法が大きな問題となっている。
【0004】
収容ケースの材質選定、及び管理方法において重要となる項目の一つに、収容ケース素材から収容ケース内部へ放出される水分量が挙げられる。収容ケース内の雰囲気中に含まれる水分が多いと、有機アウトガス或いは無機イオンが半導体ウエハ上に析出、実体化し、ウエハ表面の完全性を損なう危険性が増大すると考えられるからである。
【0005】
このような材質選定、及び収容ケースを適切に管理するための評価方法は、従来、その候補となる材質で構成された包装容器内に実際に半導体ウエハを保管するか、またはデシケーター等の容器内に半導体ウエハと包装容器の候補となる材質片を密閉し、いずれも長期保存をした後に半導体ウエハの表面の状態を観察して評価している。
【0006】
しかしながら、上記のような長期保存をする評価方法では、包装容器を製品化して量産するまでに時間がかかり過ぎるという問題があった。特に、改良のために収容ケースの一部を変更したい場合等は、さらに長期保存が必要となり、需要に対応できないという問題点があった。
【0007】
このような問題を解消すべく、半導体ウエハ用収容ケースの材質の適格性を短時間で評価することができる方法が提案されている。
【0008】
図7は、従来の半導体ウエハ用収容ケースの材質の適格性を評価する方法を説明する概略図である。
【0009】
図7において、従来の評価方法で使用される装置は、不活性ガスボンベ100と、乾燥剤収納容器2と、活性炭収納容器103と、流量計104a、104b、104cと、材料片収納容器105a,105bと、水槽106と、評価容器107とを備えている。乾燥剤21及び活性炭31により浄化された不活性ガス110を用いて材料片151a,151bからの揮発成分を抽出し、さらに、同不活性ガスにより純水161から水分を抽出して、評価容器107内に充満させる。そして、評価容器107内に半導体ウエハ171を収納し、該半導体ウエハを所定時間後に評価する。この方法によれば、揮発成分や水分による半導体ウエハへの影響度を短時間で評価することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−145875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の評価方法では、装置の構成が複雑であるため、上記評価方法を容易に実行することができないという問題がある。また、収容ケース内の雰囲気中に含まれる水分による半導体ウエハへの影響度に基づいて収容ケースの材質の適格性を評価することはできるものの、該収容ケース内に収容されている半導体ウエハの常温における保管寿命を推定することで収容ケースの品質を評価することはできない。
【0012】
本発明の目的は、半導体ウエハ用収容ケースの品質を容易に且つ短時間で評価できると共に、内部に収容される半導体ウエハの常温における保管寿命を推定することで当該収容ケースの品質を評価することが可能な半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法は、半導体ウエハを収容する収容ケースの品質を評価する半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法であって、環境加速試験として、半導体ウエハを収容した収容ケースを、常温より高く設定される所定温度で所定期間加熱する加熱ステップと、前記加熱ステップにより加熱された収容ケースに収容されている半導体ウエハの品質を判定する判定ステップと、前記所定温度と前記判定ステップにより判定された半導体ウエハの品質とに基づいてアレニウスプロットを実行するプロットステップと、前記収容ケース内の常温における水分量に基づいて、前記収容ケースが吸着している水分量を算出する算出ステップと、前記アレニウスプロットと前記収容ケースが吸着している水分量とに基づいて、常温における前記半導体ウエハの保管寿命を推定する推定ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法は、請求項1記載の品質評価方法において、前記加熱ステップは、複数の収容ケースを、互いに異なる複数の所定温度及び互いに異なる複数の所定時間で加熱し、前記決定ステップは、前記複数の収容ケースに収容された複数の半導体ウエハの保管寿命を判定し、前記プロットステップは、前記判定ステップにより判定された複数の半導体ウエハの品質に基づいてアレニウスプロットを実行することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法は、請求項1又は2記載の品質評価方法において、前記判定ステップは、前記収容ケースに収容されている半導体ウエハ上に存在するパーティクルに基づいて、前記半導体ウエハの品質を判定することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法は、請求項3記載の導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法において、前記判定ステップは、前記半導体ウエハ上に光を照射して、前記パーティクルによって発生する輝点を検出することにより前記半導体ウエハの品質を判定することを特徴とする。
【0017】
請求項5の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法において、前記加熱ステップの前に、収容ケースをクリーンルームに所定期間保管する保管ステップを更に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法によれば、半導体ウエハを収容した収容ケースを、常温より高く設定される所定温度で所定期間加熱し、該加熱された収容ケースに収容されている半導体ウエハの品質を判定し、前記所定温度と判定された半導体ウエハの品質とに基づいてアレニウスプロットを実行し、収容ケース内の常温における水分量に基づいて、該収容ケースが吸着している水分量を算出し、該アレニウスプロットと前記収容ケースが吸着している水分量とに基づいて、前記半導体ウエハの常温における保管寿命を推定する。したがって、収容ケースの品質を容易に且つ短時間で評価できると共に、内部に収容される半導体ウエハの常温における保管寿命を推定することで当該収容ケースの品質を評価することが可能となる。
【0019】
請求項2記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法によれば、複数の収容ケースを互いに異なる複数の所定温度及び互いに異なる複数の所定時間で加熱し、複数の収容ケースに収容された複数の半導体ウエハの品質を判定し、判定された複数の半導体ウエハの品質に基づいてアレニウスプロットを実行するので、収容ケースの品質をより正確に評価することができる。
【0020】
請求項3記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法によれば、収容ケースに収容されている半導体ウエハ上に存在するパーティクルに基づいて、半導体ウエハの保管寿命を決定するので、収容ケースの品質をより正確に評価することができる。
【0021】
請求項4記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法によれば、加熱された収容ケースに収容されている半導体ウエハ上に光を照射することにより、半導体ウエハ上に存在するパーティクルを検出するので、収容ケースの品質をより正確に評価することができる。
【0022】
請求項5記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法によれば、収容ケースを加熱する前に、収容ケースをクリーンルームに所定期間保管した場合にも、半導体ウエハの常温における保管寿命を推定することができ、ウエハ収容ケースの品質をより正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法を実行する際に用いられる半導体ウエハ用収容ケースの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】ウエハ収容ケース内に配置されたデータロガーで取得される測定チャートを示す図である。
【図3】クリーンルームでのウエハ収容ケースの保管期間と収容ケース内雰囲気の水分放出量との関係を乾燥条件別に示す図である。
【図4】環境加速試験後に、各ウエハ収容ケースに収容されている半導体ウエハを観察した結果を示す図であり、(a)は3日間、(b)は5日間、(c)は8日間ウエハ収容ケースをクリーンルームに保管した場合を示す。
【図5】乾燥直後のウエハ収容ケースについて、環境加速試験の温度と、該環境速度試験においてLPD量によって判定された半導体ウエハの賞味期限との関係を示す図である。
【図6】乾燥後14日間経過したウエハ収容ケースについて、環境加速試験の温度と、該環境速度試験においてLPD量によって判定された半導体ウエハの賞味期限との関係を示す図である。
【図7】従来の半導体ウエハ用収容ケースの材質の適格性を評価する方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法を実行する際に用いられる半導体ウエハ用収容ケースの構成を概略的に示す断面図である。
【0026】
図1において、ウエハ収容ケース1は、多数の半導体ウエハを並列に収納するためのウエハ支持溝11を備えたウエハバスケット10と、該バスケット10を収納するウエハ収容ケース本体20と、該ウエハ収容ケース本体20の上方開口部を覆蓋する上蓋30と、ウエハバスケット10内の半導体ウエハを押さえて保持するためのウエハ押さえ40と、上蓋30とウエハ収容ケース本体20間に介在し、ウエハ収納ケース1の密封性を高めるパッキン50とを備える。ウエハ収容ケース1は、一般にPP(ポリプロピレン)やPC(ポリカーボネート)等の有機樹脂で形成されている。パッキン50は、ポリオレフィン系のエラストマーやシリコーンゴム等で形成されている。
【0027】
上述したように、ウエハ収容ケースの材質選定において重要となる項目の一つに水分の放出量が挙げられる。ウエハ収容ケース内の雰囲気中に含まれる水分が多いと、有機アウトガス或いは無機イオンが半導体ウエハ上に析出、実体化し、品質リスクが増大すると考えられるからである。
【0028】
そこで、本発明では、ウエハ収容ケースから放出される揮発成分のうちの水分に着目し、ウエハ収容ケースの水分放出量を次のように算出する。
【0029】
先ず、ウエハ収容ケースの内部温度及び内部相対湿度を測定可能なデータロガーを各ウエハ収容ケース内に設置し、該ウエハ収容ケースを密閉する。そして、複数のウエハ収容ケースを夫々異なる条件で乾燥させ、その後クリーンルームで複数のウエハ収容ケースを所定期間で保管する。本実施形態における乾燥条件として、(i)55℃で13時間乾燥、(ii)55℃で20時間乾燥、を夫々実行する。このとき、ウエハ収容ケース内底部に配置されたデータロガー60(図1)で、図2に示すような測定チャートを取得し、時間毎のウエハ収容ケースの内部温度及び内部相対湿度を測定しておく。
【0030】
次に、各乾燥条件における加熱前後の温度と相対湿度とに基づいて、ウエハ収容ケース内に放出された水分量(放出水分量)を算出する。この放出水分量は以下の方法で算出される。
【0031】
(1)加熱前後の温度に基づいて飽和水蒸気圧[hpa・kg/cm2]を算出する。水蒸気圧はWagner式を用いて算出する。
【0032】
(2)相対湿度に基づいて実際の水蒸気圧[kg/cm2]を算出し、気体の状態方程式を用いて1m中の水分量A[g/m3]を算出する。
【0033】
P(hpa)=((Aτ+Bτ1.5+Cτ36)/(T/TC))
但し、τ=1-T(K)/TC
A=-7.76451, B=1.45838, C=2.7758, D=-1.23303, Tc=-647.3(K), Pc=22120kPa
(3)(放出水分量)=(加熱後の水分量A1)−(加熱前の水分量A2)から放出水分量を求める。
【0034】
A[g/m3]=M[kg/kmol]* n[kmol]/V[m3
=M[kg/kmol]* P[kgf/cm2]/(R[kgf/kgmolK]*T[K])*1000
但し、R=847.82[kgf/(kmolK)]
上記の方法で算出された水分放出量の経時変化は、図3のように表される。
【0035】
図3は、クリーンルームでのウエハ収容ケースの保管期間と収容ケース内雰囲気の水分放出量との関係を乾燥条件別に示す図である。
【0036】
図3において、「△」は55℃で13時間乾燥させた場合を示し(乾燥条件(i))、「○」は55℃で20時間乾燥させた場合を示す(乾燥条件(ii))。この結果から、2つの乾燥条件下のいずれにおいても、クリーンルームでウエハ収容ケースを保管する期間(保管期間)が増大すると、ウエハ収容ケースの水分放出量が増大することが分かる。また、ウエハ収容ケースを乾燥させる時間(乾燥時間)を増大させると、ウエハ収容ケースの水分放出量を抑制できることが分かる。
【0037】
次に、クリーンルームでのウエハ収容ケースの保管期間と半導体ウエハの品質との関係を検討するための実験を行う。
【0038】
先ず、図1に示すようなウエハ収容ケース1を組立て、半導体ウエハを収容したウエハ収容ケースをクリーンルームに所定期間保管し、保管期間経過後、各ウエハ収容ケースに対して環境加速試験を行う。その後、レーザ表面検査装置を用いて、各ウエハ収容ケースに収容されている半導体ウエハの表面から輝点(Light Point Defect(LPD))を検出し、これを測定する。この輝点は、一般に、半導体ウエハ上の微細な凹凸を検出したものであるが、本環境加速試験の場合では、半導体ウエハに付着したパーティクルや凸状欠陥等の凸状異物(以下、単に「パーティクル」という)によって発生すると考えられる。本実施の形態では、ポリプロピレン製ウエハバスケット、ポリプロピレン製ウエハ収容ケース本体、ポリカーボネート製上蓋、熱可塑性エラストマー製ウエハ押さえ、及び熱可塑性エラストマー製パッキンで構成されるウエハ収容ケース(ケースA)を3つ準備し、各ウエハ収容ケースをクリーンルームに夫々(a)3日間、(b)5日間、(c)8日間保管し、その後、各ウエハ収容ケースに半導体ウエハを収容し、各ウエハ収容ケースを80℃で72時間加熱し、加熱後の各ウエハ収容ケースに収容されている半導体ウエハの表面を観察する。この観察結果を図4に示す。
【0039】
図4は、環境加速試験後に、各ウエハ収容ケースに収容されている半導体ウエハを観察した結果を示す図であり、(a)は3日間、(b)は5日間、(c)は8日間ウエハ収容ケースをクリーンルームに保管した場合を示す。
【0040】
図4に示すように、クリーンルームに3日間保管したウエハ収容ケースでは、半導体ウエハ表面に輝点(LPD)が数点検出される程度であった(図4(a)中の矢印A)。5日間保管したウエハ収容ケースでは、半導体ウエハ表面に輝点領域が検出され(図4(b)中の矢印B)、8日間保管したウエハ収容ケースでも、半導体ウエハ表面に輝点領域が検出される(図4(c)中の矢印C)。この結果から、ウエハ収容ケースをクリーンルームに保管する保管期間が増大すると、半導体ウエハ表面上でパーティクルが増加することが分かる。
【0041】
上記の実験結果から、クリーンルームでウエハ収容ケースを保管する期間が増大すると、ウエハ収容ケースの水分放出量が増大し、半導体ウエハ上でパーティクルが増加することが分かる。したがって、ウエハ収容ケースを所定時間乾燥させた後、環境加速試験を実行して、経過時間毎に半導体ウエハ上のLPD量(又はLPD値の増加量)を測定すれば、該LPD量に基づいて、常温における半導体ウエハの賞味期限(保管寿命)を推定することができる。ここで、賞味期限とは、所定の方法で保存した場合、期待されるウエハ品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す。
【0042】
本実施の形態では、ウエハ収容ケースを所定時間乾燥させた後、ウエハ収容ケースを常温より高く設定された温度、例えば80℃で所定時間加熱し(加熱ステップ)、該ウエハ収容ケースに収容された半導体ウエハのLDP量を測定して、半導体ウエハの品質が合格であるか否かを判定する(判定ステップ)。また、他の環境加速試験として、ウエハ収容ケースを他の温度(70℃、60℃、及び40℃)でも行い、上記同様の判定を行う。その後、上記所定時間と半導体ウエハの品質判定結果とに基づいてアレニウスプロットし(プロットステップ)、該アレニウスプロットから半導体ウエハの常温(25℃)における賞味期限を推定する(推定ステップ)。尚、半導体ウエハの常温における賞味期限は、所定温度をT[K]、半導体ウエハの賞味期限を(保管寿命)Y[hr]、A: 定数, Ea: 活性化エネルギー、k: ボルツマン定数、とすれば、アレニウスの式から、反応速度vは、v= A*exp(-Ea/kT)で求められる。半導体ウエハの賞味期限(保管寿命)Yはvの逆数と考えられるので、Y = (1/v) = (1/A)exp(-Ea/kT) となることから、Ln(Y) = Ln(A) + Ea/kT・・・(1) となる。
【0043】
図5は、乾燥直後のウエハ収容ケースについて、環境加速試験の温度と、該環境速度試験においてLPD量によって判定された半導体ウエハの賞味期限との関係を示す図である。尚、このとき、ウエハ収容ケースの乾燥条件を「55℃で8時間以上」と設定している。
【0044】
図5において、各温度における「●」は、半導体ウエハの品質判定結果が「合格」であることを示し、「△」は「警告」であることを示し、「○」は「不合格」であることを示している。LPD量に基づく半導体ウエハの品質判定方法としては、例えば、半導体ウエハの表面からLPD量を検出し、この検出値が所定閾値より大きい場合は「合格」、所定閾値と同じ場合は「警告」、所定閾値より小さい場合は「不合格」とする。そして、これらのアレニウスプロットに対して最適な直線を引くと、半導体ウエハの常温(25℃)における賞味期限は約101ヶ月となる。このとき、直線の傾きEaの値は 1.167 (eV)、切片Aの値は1.61E-15 (hrs)と求められる。
【0045】
したがって、上記の材料で構成されるウエハ収容ケースを55℃で8時間以上乾燥させ、その乾燥直後にウエハ収容ケースに半導体ウエハを収容すると、常温であれば半導体ウエハの賞味期限が約101ヶ月になると推定される。
【0046】
また、乾燥直後のウエハ収容ケースからウエハ収容ケース内部に放出された水分量を算出すると0.68g/mとなり、出荷ケースの内容積が10630cmであることから、このときのウエハ収容ケースが吸着している水分量は0.01gと算出される。尚、洗浄及び乾燥を行わないウエハ収容ケースからウエハ収容ケース内部に放出された水分量を算出すると15.10g/mとなり、このときのウエハ収容ケースが吸着している水分量は0.16gと算出される。
【0047】
図6は、乾燥後14日間経過したウエハ収容ケースについて、環境加速試験の温度と、該環境速度試験においてLPD量によって判定された半導体ウエハの賞味期限との関係を示す図である。このとき、図5の場合と同様に、ウエハ収容ケースの乾燥条件を、55℃で8時間以上と設定し、乾燥後にクリーンルームにて14日間保管した。
【0048】
図6において、図5と同様に、「●」は、LDP量の検出結果が「合格」レベルであることを示し、「△」は、LDP量の検出結果が「警告」レベルであることを示し、「○」は、LDP量の検出結果が「不合格」レベルであることを示している。これらのアレニウスプロットに対して最適な直線を引くと、半導体ウエハの常温(25℃)における賞味期限は約12ヶ月となる。このとき、直線の傾きEaの値は0.683(eV)、切片Aの値は1.135E-8 (hrs)と求められる。
【0049】
したがって、上記の材料で構成されるウエハ収容ケースを55℃で8時間以上乾燥させた後にクリーンルームに14日間保管し、その保管後にウエハ収容ケースに半導体ウエハを収容すると、常温であれば半導体ウエハの賞味期限が約12ヶ月になると推定される。
【0050】
また、乾燥後14日間経過したウエハ収容ケースからウエハ収容ケース内部に放出された水分量を測定すると、10.15g/mであり、出荷ケースの内容積が10630cmであることから、このときのウエハ収容ケースが吸着していた水分量は0.11gと算出される。
【0051】
図5及び図6の結果から、ウエハ収容ケースを所定条件で乾燥させた直後に該ウエハ収容ケースに半導体ウエハを収容すると、乾燥後14日間クリーンルームに保管した場合と比較して、導体ウエハの常温における賞味期限が約8.4倍になる。これにより、乾燥直後にウエハを収容したウエハ収容ケースの品質は、乾燥後14日間クリーンルームに保管されたウエハ収容ケースよりも良好であると評価することができる。
【0052】
そして、常温におけるウエハ収容ケース内の水分量を測定し、この測定された水分量と上記アレニウスプロットに基づいて、当該収容ケースに収容される半導体ウエハの賞味期限を推定する。例えば、上記の材料で構成されるウエハ収容ケース(ケースA)の場合、乾燥後14日間経過したウエハ収容ケースが吸着していた水分量は、常温で0.11gと算出されることから、ウエハ収容ケースが吸着している水分量が0.11g以下であれば、該収容ケース内に収容される半導体ウエハの常温における賞味期限が12ヶ月以上であると推定される。
【0053】
本実施の形態によれば、ウエハ収容ケースを所定条件で乾燥させた後、半導体ウエハを収容して、常温より高い所定温度で所定時間加熱し、該加熱されたウエハ収容ケースに収容されている半導体ウエハの品質を判定し、前記所定温度と判定された半導体ウエハの品質とに基づいてアレニウスプロットを実行する。そして、ウエハ収容ケース内の常温における水分量に基づいて、該ウエハ収容ケースが吸着している水分量を算出し、該算出された水分量とアレニウスプロットに基づいて、半導体ウエハの常温における保管寿命を推定する。したがって、ウエハ収容ケースの品質を容易に且つ短時間で評価できると共に、内部に収容される半導体ウエハの保管寿命を推定することで当該ウエハ収容ケースの品質を評価することが可能となる。
【0054】
また、アレニウスプロットから最適な直線を決定することにより、半導体ウエハの他の温度における保管寿命を推定することが可能である。したがって、ウエハ収容ケースの搬送時や保管時の温度変化に応じて、半導体ウエハの保管寿命を推定することができる。さらに、事前にアレニウスプロットを実行しておけば、その後は半導体ウエハを使用する必要がなく、既に作成されたアレニウスプロットと収容ケースが吸着している水分量とに基づいて、半導体ウエハの保管寿命を推定することができる。
【0055】
加えて、上記以外の材料で構成されるウエハ収容ケースに対して同様の推定を実行すれば、ウエハ収容ケースの材料に応じて半導体ウエハの賞味期限を推定することができ、この推定によってウエハ収容ケースの品質を相対的に評価することが可能となる。
【0056】
尚、本実施の形態では、4点の温度(80℃、70℃、60℃、40℃)についてアレニウスプロットを実行したが、これに限るものではなく、任意の点数を選択してアレニウスプロットを実行してもよく、また、任意の温度を選択してアレニウスプロットを実行してもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、レーザ表面検査装置を用いて半導体ウエハ表面の輝点を検出するが、これに限るものではなく、半導体ウエハ表面のパーティクルを検出できる方法であれば、如何なる方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 ウエハ収容ケース
11 ウエハ支持溝
10 ウエハバスケット
20 ウエハ収容ケース本体
30 上蓋
40 ウエハ押さえ
50 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを収容する収容ケースの品質を評価する半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法であって、
環境加速試験として、半導体ウエハを収容した収容ケースを、常温より高く設定される所定温度で所定期間加熱する加熱ステップと、
前記加熱ステップにより加熱された収容ケースに収容されている半導体ウエハの品質を判定する判定ステップと、
前記所定温度と前記判定ステップにより判定された半導体ウエハの品質とに基づいてアレニウスプロットを実行するプロットステップと、
前記収容ケース内の常温における水分量に基づいて、前記収容ケースが吸着している水分量を算出する算出ステップと、
前記アレニウスプロットと前記収容ケースが吸着している水分量とに基づいて、前記半導体ウエハの常温における保管寿命を推定する推定ステップと、を有することを特徴とする半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法。
【請求項2】
前記加熱ステップは、複数の収容ケースを、互いに異なる複数の所定温度及び互いに異なる複数の所定時間で加熱し、
前記判定ステップは、前記複数の収容ケースに収容された複数の半導体ウエハの品質を判定し、
前記プロットステップは、前記判定ステップにより判定された複数の半導体ウエハの品質に基づいてアレニウスプロットを実行することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記収容ケースに収容されている半導体ウエハ上に存在するパーティクルに基づいて、前記半導体ウエハの品質を判定することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法。
【請求項4】
前記判定ステップは、前記半導体ウエハ上に光を照射して、前記パーティクルによって発生する輝点を検出することにより前記品質を判定することを特徴とする請求項3記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法。
【請求項5】
前記加熱ステップの前に、収容ケースをクリーンルームに所定期間保管する保管ステップを更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体ウエハ用収容ケースの品質評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181302(P2010−181302A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25610(P2009−25610)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000111096)シルトロニック・ジャパン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】