説明

半導体マッハツェンダ型光変調器および半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法

【課題】 小型で、正確にプッシュプル駆動し、低損失な半導体マッハツェンダ型光変調器を提供する。
【解決手段】
分波器11aと、合波器11bと、半導体光導波路13および14と、信号電極15と、正バイアス電極17と、負バイアス電極18とを有し、
分波器11aと合波器11bとは、2本の半導体光導波路13および14により連結され、
信号電極15は、2本の半導体光導波路13および14の上部に接続され、かつ、2本の半導体光導波路13および14の上部に共通の高周波信号を入力可能であり、
正バイアス電極17は、半導体光導波路13の下部に接続され、負バイアス電極18は、他方の半導体光導波路14の下部に接続されていることを特徴とする半導体マッハツェンダ型光変調器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体マッハツェンダ型光変調器および半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超高速大容量長距離光通信基幹システムは、波長多重通信(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を中心に発展、実用化されてきた。このようなシステムにおける変調方式としては、例えば、二位相偏移変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)等があげられる。このBPSKにおける光の変調は、例えば、マッハツェンダ型光変調器によって行われる。
【0003】
前記マッハツェンダ変調器は、アームと呼ばれる2本の光導波路により光を導波し、その光の干渉を利用して変調を行う。前記マッハツェンダ変調器において、前記2本の光導波路への光の分波および前記2本の光導波路からの光の合波は、例えば、2×2−MMI(Multimode Interference)によって行われる。前述のBPSKにおける光の変調は、光の位相を一定のまま、光の振幅を1〜−1まで変化させて行われる。前記光の位相が変動すると、波長チャーピングが発生する。この波長チャーピングが発生すると、光ファイバによる光の分散が発生し、光の伝送波形が崩れてしまう。したがって、光の位相を一定のまま変調するのが重要である。
【0004】
前述のように光の位相を一定のまま変調を行うには、例えば、マッハツェンダ型光変調器の2本の光導波路に、光の位相が逆方向に動くような電圧(高周波信号)を印加する。この時、前記両光導波路に印加される高周波信号を、それぞれV1、V2とすると、例えば、V1+V2が一定となるようにする。このような駆動方式を、プッシュプル駆動という。プッシュプル駆動するマッハツェンダ型光変調器としては、例えば、2つの逆相の高周波信号を印加するものがあげられる(例えば、特許文献1の図5等参照)。このマッハツェンダ型光変調器の一例を、図3に示す。このマッハツェンダ型光変調器30では、光導波路39aに入射された導波光は、2×2−MMI31aおよび31bで、分波および合波され、それぞれのアーム(光導波路33および34)に別々に設けられた信号電極35aおよび35bから2つの逆相の高周波信号が印加される。このようにして、光を変調することにより、このマッハツェンダ型光変調器30は、プッシュプル駆動する。信号電極35aおよび35bは、グラウンド電極36とともにコプレーナ伝送線路を形成している。合波された光は、光導波路39bから出射される。
【0005】
また、プッシュプル駆動するマッハツェンダ型光変調器としては、例えば、同相の信号を入力するものが提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の半導体PINマッハ・ツェンダー変調器では、両アーム(光導波路)の真性層における結合量子井戸を適切に設計すると、DCバイアス印加時(電界印加時)に、前記両アームの屈折率が逆に変化するという現象を用いている。この結合量子井戸により、プッシュプル駆動を行うことができるとされている。
【0006】
また、プッシュプル駆動するマッハツェンダ型光変調器としては、例えば、単一のドライバで駆動させるものが提案されている(特許文献3参照)。特許文献3に記載の半導体マッハツェンダ変調器では、2つのpinダイオードを直列に接続し、全体に一定のDC逆バイアスをかける。この状態で、前記両pinダイオードにおける一方の第1導電型クラッド層と他方の第2導電型クラッド層との接続点に、単一ドライバの信号を印加することにより、プッシュプル駆動を行う。
【0007】
また、プッシュプル駆動するマッハツェンダ型光変調器としては、例えば、2本の光導波路に対して、スロットラインタイプの高周波伝送線路を用いるものがある(特許文献4参照)。特許文献4に記載のマッハツェンダ型光変調器では、第2の位相変調電極から高導電率層へ電界を発生させ、同時に高導電率層から第1の位相変調電極へと電界を発生させる。このようにすることで、第1の導波路内および第2の光導波路内のそれぞれの電界の方向が逆となる。これにより、プッシュプル駆動を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−218384号公報
【特許文献2】特開2004−318095号公報
【特許文献3】特開平10−333106号公報
【特許文献4】特開2004−151590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3に示したマッハツェンダ型光変調器では、前述のとおり、それぞれの光導波路33および34に別々に設けられた信号電極35aおよび35bから、2つの逆相の高周波信号が印加される。したがって、前記2つの逆相の高周波信号同士のクロストークを抑制するために、前記両光導波路を、間隔をあけて配置する必要がある。この結果、図3に示したマッハツェンダ型光変調器では、小型化が困難である。
【0010】
前記特許文献2に記載の半導体PINマッハ・ツェンダー変調器では、前記のとおり、結合量子井戸の設計によりプッシュプル動作が可能とされている。しかし、正確なプッシュプル動作を可能とする結合量子井戸の設計は、困難を伴う。
【0011】
前記特許文献3に記載の半導体マッハツェンダ変調器では、高周波電極(信号電極)は、一方のpinダイオードの下部に位置する第1導電型クラッド層(n型InPクラッド層)と、他方のpinダイオードの上部に位置する第2導電型クラッド層(p型InPクラッド層)との間にわたって形成される。このように、高周波電極が前記両pinダイオードの谷間に形成されるため、前記両pinダイオード間(光導波路間)をある程度離す必要がある。このため、小型化が困難である。
【0012】
また、前記特許文献4に記載のマッハツェンダ型光変調器においても、2本の光導波路間の間隔が、例えば、8μm以上必要である(特許文献4の第0038段落)。
【0013】
そこで、本発明は、小型で、正確にプッシュプル駆動し、低損失な半導体マッハツェンダ型光変調器および半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、
分波器と、合波器と、半導体光導波路と、信号電極と、正バイアス電極と、負バイアス電極とを有し、
前記半導体光導波路は、2本であり、
前記分波器と前記合波器とは、前記2本の半導体光導波路により連結され、
前記信号電極は、前記2本の半導体光導波路の上部に接続され、かつ、前記2本の半導体光導波路に共通の高周波信号を入力可能であり、
前記正バイアス電極は、前記2本の半導体光導波路のうち一方の半導体光導波路の下部に接続され、前記負バイアス電極は、他方の半導体光導波路の下部に接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法は、
分波器を形成する分波器形成工程と、
合波器を形成する合波器形成工程と、
前記分波器と前記合波器を連結する2本の半導体光導波路を形成する半導体光導波路形成工程と、
前記2本の半導体光導波路の上部に接続され、かつ、前記2本の半導体光導波路に共通の高周波信号を入力可能な信号電極を形成する信号電極形成工程と、
前記2本の半導体光導波路のうち一方の半導体光導波路の下部に接続される正バイアス電極を形成する正バイアス電極形成工程と、
他方の光半導体光導波路の下部に接続される負バイアス電極を形成する負バイアス電極形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型で、正確にプッシュプル駆動し、低損失な半導体マッハツェンダ型光変調器および半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器の実施形態1における一例の構成を示す平面図である。(b)は、図1(a)のI−I方向に見た断面図である。
【図2】本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器の実施形態2における一例の構成を示す断面図である。
【図3】従来のマッハツェンダ型光変調器の一例の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、前述した背景技術の問題点について、より詳しく説明する。本発明者らは、これらの点に着目し、鋭意検討の結果、本発明に到達した。
【0019】
まず、図3に示したマッハツェンダ型光変調器では、前記のとおり、クロストークを抑制する必要がある。電圧印加に対する屈折率変化と光吸収損失との関係等から、両光導波路33および34の長さを3mm程度とした場合、クロストークを抑制するには、光導波路33と光導波路34との間に、例えば、100μmオーダの間隔が必要である。前記両光導波路間を100μm離すためには、例えば、前記両光導波路と分波器および合波器との間のS字導波路の長さが、200〜300μm程度必要である。これ以上短くすると、S字の曲率が大きくなり、導波光の放射損失が無視できなくなる。この場合、マッハツェンダ型光変調器としての挿入損失が許容できないものとなる。しかし、前記のとおり、クロストーク抑制のためには、前記両光導波路を近づけることができず、S字導波路を省略または短縮することができない。この結果、図3に示したマッハツェンダ型光変調器では、前記のように小型化が困難である。
【0020】
前記特許文献2に記載の半導体PINマッハ・ツェンダー変調器では、前記のとおり、結合量子井戸の適切な設計により、DCバイアス印加時(電界印加時)に、前記両アームの屈折率が逆に変化し、プッシュプル駆動が可能とされている。しかしながら、ある範囲の電界強度にわたって、電界印加に対する屈折率変化を常に正確に逆とするように結合量子井戸を設計することは、相当困難である。したがって、光の位相変化によっては、前記屈折率変化の誤差により、正確なプッシュプル駆動ができず、波長チャーピングを引き起こして伝送エラーが起こるおそれがある。
【0021】
前記特許文献3に記載の半導体マッハツェンダ変調器では、前記両pinダイオードにおける一方の第1導電型クラッド層(n型InPクラッド層)と他方の第2導電型クラッド層(p型InPクラッド層)との接続点に、単一ドライバの信号を印加するため、前記両pinダイオード間にクロストーク問題がない。しかし、前記のとおり、高周波電極が前記両pinダイオードの谷間に形成されるため、前記両pinダイオード間をある程度離す必要があり、小型化が困難である。
【0022】
また、前記特許文献4に記載のマッハツェンダ型光変調器では、2本の光導波路に対して、スロットラインタイプの高周波伝送線路を用いるので、前記両光導波路間が、比較的近い。しかし、インピーダンス整合などを考慮すると、前記両光導波路の電極の間には、少なくとも3μm以上の間隙が必要である。この電極の間隙を確保するには、前記両光導波路間を、例えば、8μm以上とする必要がある。前記2本の光導波路を分岐する分波器、前記2本の光導波路を合流する合波器に用いる2×2−MMIは、その長さ(MMI長)がその幅(MMI幅)のおおよそ2乗に比例する。このため、2×2−MMIに入出力する前記両光導波路の間隔が、前述のように、8μm以上と広い場合、前記MMI長が長くなり過ぎる。これを回避しようとするとS字光導波路が必要となる。このように、前記MMI長の長短と前記S字光導波路の要否とは、トレードオフの関係にある。この結果、前記特許文献4に記載のマッハツェンダ型光変調器でも、小型化が困難である。前記トレードオフの関係を超越するためには、更なる光導波路間隔の短縮が望まれる。
【0023】
以下、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器について、例をあげて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0024】
(実施形態1)
本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、構成材料にInP系を用いた半導体マッハツェンダ型光変調器である。
【0025】
図1に、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器の一例の構成を示す。図1(a)は、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器の平面図である。図1(b)は、図1(a)のI−I方向に見た断面図である。図1(a)および図1(b)に示すとおり、この半導体マッハツェンダ型光変調器10は、分波器である2×2−MMI11aと、合波器である2×2−MMI11bと、2本の半導体光導波路13および14と、信号電極15と、正バイアス電極17および負バイアス電極18とを有する。2×2−MMI11a(分波器)および2×2−MMI11b(合波器)は、2本の半導体光導波路13および14により連結されている。2×2−MMI11aは、入力光導波路19aに連結されている。2×2−MMI11bは、出力光導波路19bに連結されている。半導体光導波路13上には、p型コンタクト層134が形成されている。半導体光導波路14上には、n型コンタクト層144が形成されている。信号電極15は、p型コンタクト層134およびn型コンタクト層144上に形成されている。正バイアス電極17は、半導体光導波路13の下部に電気的に接続されている。負バイアス電極18は、半導体光導波路14の下部に電気的に接続されている。
【0026】
なお、本発明において、前記「正バイアス電極」は、前記「負バイアス電極」より相対的に高い電圧が印加される電極であり、正の電圧が印加される電極のみに限定されない。また、前記「負バイアス電極」は、前記「正バイアス電極」より相対的に低い電圧が印加される電極であり、負の電圧が印加される電極のみに限定されない。
【0027】
両半導体光導波路13および14は、分波器である2×2−MMI11aおよび合波器である2×2−MMI11bと、S字光導波路を介さず直結されている。両2×2−MMI11aおよび11bは、その幅が、例えば、11μm、その長さが、例えば、200μmである。ただし、両2×2−MMI11aおよび11bの幅および長さは、この例に限定されず、例えば、一般に知られるMMIの設計論に従って、別のサイズであってもよい。
【0028】
本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、前述のとおり、信号電極15は、p型コンタクト層134およびn型コンタクト層144上に形成されている。このため、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、信号電極15から、両半導体光導波路13および14の上部に共通の高周波信号を入力することができ、両半導体光導波路13および14間にはクロストークの問題に配慮する必要がない。この結果、両半導体光導波路13および14同士を近づけることができ、前述のように、両半導体光導波路13および14を、S字光導波路を介さず、両2×2−MMI11aおよび11bにつなげることができる。このように、両半導体光導波路間を近づけ、かつS字光導波路を省略しているため、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、小型である。さらに、S字光導波路を省略しているため、S字光導波路に起因する放射損失または内部損失等の挿入損失が発生せず、低損失である。
【0029】
本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、小型であることにより、例えば、チップサイズを小さくできる。このため、例えば、1個のチップが何らかの欠陥にあたる確率が低くなり、チップ歩留まりが向上する。この結果、例えば、チップコストを低減することができる。
【0030】
なお、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、例えば図1のように、S字光導波路を省略した構造とすることが好ましいが、本発明は、この例に限定されない。例えば、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、前記両光導波路の間隔を短くすることにより、前記S字光導波路を極力短縮した構造でもよい。このような態様であっても、両光導波路間を近づけ、かつS字光導波路を短縮しているため、小型化が可能である。さらに、S字光導波路を短縮しているため、S字光導波路に起因する挿入損失を抑制できて、低損失とすることができる。
【0031】
S字光導波路自体には、前記のように、小型化と低損失化とにトレードオフの関係がある。すなわち、S字光導波路を小型化すれば、曲率が大きくなり放射損失等が大きくなる。一方、放射損失等を極力抑えようとすれば、S字光導波路を緩やかに曲げる必要があるため非常に長くなる。本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、前述のように、S字光導波路を省略または短縮可能であるため、このようなトレードオフの関係を解消または大幅に改善できるという大きな効果がある。
【0032】
半導体光導波路13および14は、半絶縁性InP基板12上に形成されている。半導体導波路13は、半絶縁性InP基板12上に、n型InPクラッド層131、SCH−多重量子井戸層(i型)132およびp型InPクラッド層133が、下から上に(図1(b)において、上下方向)前記順序で積層された導電型構造(pin構造)を有する。SCH−多重量子井戸層(i型)132は、半導体光導波路13のコア層である。前記SCHとは、Separate Confinement Heterostructureの略であり、導波光閉じ込めのためのヘテロ接合構造である。半導体導波路14は、半絶縁性InP基板12上に、p型InPクラッド層141、SCH−多重量子井戸層(i型)142およびn型InPクラッド層143が、下から上に(図1(b)において、上下方向)前記順序で積層された導電型構造(pin構造)を有する。SCH−多重量子井戸層(i型)142は、半導体光導波路14のコア層である。この半導体マッハツェンダ型光変調器10において、両半導体光導波路13および14の上下方向の導電型構造は、互いに上下反転した構造である。
【0033】
n型InPクラッド層131およびp型InPクラッド層141の層厚は、それぞれ、例えば、1±0.7μmである。前記両層は、例えば、3±2μmの間隔を空けて、半絶縁性InP基板12の左の部分および右の部分(図1(b)において、左右方向)の上面をそれぞれ覆うように形成されている。SCH−多重量子井戸層(i型)132およびp型InPクラッド層133は、n型InPクラッド層131上面において、p型InPクラッド層141と対向する側(図1(b)において右側)の辺縁に積層され、n型InPクラッド層131とともに半導体光導波路13を形成する。SCH−多重量子井戸層(i型)142およびn型InPクラッド層143は、p型InPクラッド層141上面において、n型InPクラッド層131と対向する側(図1(b)において左側)の辺縁に積層され、p型InPクラッド層141とともに半導体光導波路14を形成する。p型InPクラッド層133上面(半導体光導波路13上)には、前記のとおり、p型コンタクト層134が形成されている。n型InPクラッド層143上面(半導体光導波路14上)には、前記のとおり、n型コンタクト層144が形成されている。
【0034】
なお、本発明において、「上に」は、特に断らない限り、上面に直接接触した状態でも、間に他の構成要素が配置された状態でもよいものとする。「下に」は、特に断らない限り、下面に直接接触した状態でも、間に他の構成要素が配置された状態でもよいものとする。また、「上面に」は、特に断らない限り、上面に直接接触した状態とする。「下面に」は、特に断らない限り、下面に直接接触した状態とする。
【0035】
半導体光導波路13およびp型コンタクト層134と、半導体光導波路14およびn型コンタクト層144との間には、半絶縁性InP埋込み層151aが形成されている。前記半絶縁性(SI:Semi−Insulating)InP埋込み層151aは、例えば、FeやRuをドーピングすることによって高抵抗とした層である。なお、埋込み層151aは、InPに代えて、ポリイミドまたはBCB(benzocyclobuteneすなわちベンゾシクロブテン樹脂)等の樹脂から形成された埋込み層であってもよい。埋込み層の形成材料に、ポリイミドまたはBCBを用いれば、埋込み層と両SCH−多重量子井戸層(i型)132および142との屈折率差を大きくすることができる。これにより、両SCH−多重量子井戸層(i型)132および142における導波光の閉じ込めを強くでき、両半導体光導波路13および14間における導波光の結合を小さくできる。この結果、両半導体光導波路13および14の間隔をより狭くできる。
【0036】
SCH−多重量子井戸層(i型)132およびSCH−多重量子井戸層(i型)142の幅は、それぞれ、例えば、1.3±0.8μmである。両半導体光導波路13および14の導波光を結合させないために、両SCH−多重量子井戸層(i型)132および142の間のギャップは、1μm以上あることが好ましく、2μm以上あることがより好ましい。p型InPクラッド層141のうち、SCH−多重量子井戸層(i型)142直下の部分は、光吸収損失を低減するために、その不純物濃度を低くすることが好ましい。
【0037】
p型InPクラッド層133の層厚は、例えば、2±1μmである。n型InPクラッド層143の層厚も同様である。
【0038】
p型コンタクト層134は、例えば、InGaAsP、またはInGaAs等から形成することができる。n型コンタクト層144も、p型コンタクト層134と同様に、InGaAsP、またはInGaAs等から形成することができる。
【0039】
n型InPクラッド層131上面において、半導体光導波路13と反対側(図1(b)において左側)の辺縁の一部には、正バイアス電極17が形成されている。正バイアス電極17は、n型InPクラッド層131に、すなわち半導体光導波路13の下部にコンタクトして(接続されて)いる。p型InPクラッド層141上面において、半導体光導波路14と反対側(図1(b)において右側)の辺縁の一部には、負バイアス電極18が形成されている。負バイアス電極18は、p型InPクラッド層141に、すなわち半導体光導波路14の下部にコンタクトして(接続されて)いる。
【0040】
n型InPクラッド層131上面において、SCH−多重量子井戸層(i型)132、p型InPクラッド層133およびp型コンタクト層134と、正バイアス電極17との間には、半絶縁性InP埋込み層151bが埋め込まれている。p型InPクラッド層141上面において、SCH−多重量子井戸層(i型)142、n型InPクラッド層143およびn型コンタクト層144と、負バイアス電極18との間には、半絶縁性InP埋込み層151cが埋め込まれている。これらにより、半絶縁性InP埋込み層151bから、半導体光導波路13上のp型コンタクト層134、半絶縁性InP埋込み層151a、半導体光導波路14上のn型コンタクト層144および半絶縁性InP埋込み層151cにかけて、これらの層の最上部が平坦化されている。半絶縁性InP埋込み層151bおよび151cは、誘電体膜161で覆われている。半絶縁性InP埋込み層151bおよび151cの形成材料は、例えば、InP埋込み層151aと同じであってもよい。すなわち、InP埋込み層151bおよび151cは、例えば、FeやRuをドーピングすることによって高抵抗とした層であるが、例えば、半絶縁性InPに代えて、ポリイミドまたはBCB(benzocyclobuteneすなわちベンゾシクロブテン樹脂)等の樹脂から形成された埋込み層であってもよい。
【0041】
また、前記のとおり、信号電極15は、p型コンタクト層134およびn型コンタクト層144上に形成されている。信号電極15は、進行波電極である。信号電極15は、p型コンタクト層134およびn型コンタクト層144の上面に接して形成されることにより、2本の光導波路13および14の上部に接続され、かつ、両半導体光導波路13および14に共通の高周波信号を入力可能である。信号電極15の両側の誘電体膜161上には、グラウンド電極16aおよび16bが設けられている。グラウンド電極16aおよび16bは、信号電極15とともにコプレーナ伝送線路を構成する。このコプレーナ伝送線路は、高周波信号を供給する高周波回路(図示せず)とインピーダンス整合されるように設計される。具体的には、例えば、前記コプレーナ伝送線路の特性インピーダンスは、50Ωに設計される。前記コプレーナ伝送線路は、図1(a)に示すように、チップの端部(図1(a)において下端部)に引き出され、外部の50Ω系の高周波回路(図示せず)と電気的に接続される。
【0042】
なお、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器において、半導体光導波路の「上部」は、前記半導体光導波路のコア層(光路となる層)よりも上の部分をいう。すなわち、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器において、前記信号電極は、前記2本の半導体光導波路の、コア層よりも上の部分に接続されており、かつ、前記2本の半導体光導波路に(前記2本の半導体光導波路の、コア層よりも上の部分に)共通の高周波信号を入力可能である。また、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器において、半導体光導波路の「下部」は、前記半導体光導波路のコア層(光路となる層)よりも下の部分をいう。すなわち、前記正バイアス電極は、前記2本の半導体光導波路のうち一方の半導体光導波路の、前記コア層よりも下の部分に接続されている。前記負バイアス電極は、他方の半導体光導波路の、前記コア層よりも下の部分に接続されている。また、本発明において「接続」は、直接接触していてもよいし、他の構成要素を介して接続されていてもよい。例えば、前記信号電極は、前記2本の半導体光導波路の上部に直接接触していてもよいし、他の構成要素(例えばコンタクト層等)を介して接続されていてもよい。また、前記正バイアス電極および前記負バイアス電極は、前記2本の半導体光導波路の下部に直接接触していてもよいし、他の構成要素(例えばコンタクト層等)を介して接続されていてもよい。なお、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、前記正バイアス電極および前記負バイアス電極により、前記2本の半導体光導波路にバイアスを印加可能である必要がある。このため、前記正バイアス電極は、前記2本の半導体光導波路の一方の下部に、電気的に接続されている必要がある。同様に、前記負バイアス電極は、他方の半導体光導波路の下部に、電気的に接続されている必要がある。
【0043】
本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、両半導体光導波路の上部に共通の高周波信号を入力するために、信号電極は両半導体光導波路の上に形成され、両半導体光導波路のコア層よりも上部にコンタクトを取って(接続されて)いる。このため、前述のように、信号電極を進行波電極とすることができる。
【0044】
本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器において、信号電極は、特に限定されないが、例えば本実施形態のように、進行波電極を用いることが好ましい。例えば、前記特許文献3の半導体マッハツェンダ型光変調器では、前記信号電極(高周波電極)は、2つのアームの谷間に形成されることから、進行波電極とすることは難しく、集中定数型電極となる。前記信号電極が集中定数型電極の場合、例えば25Gspsのような超高速のシンボルレートでは、導波光が信号電極の下を通過する間の時間(時間ずれ)を無視することができない。すなわち、前記信号電極が集中定数型電極であり、かつ、前記信号電極による信号のシンボルレートが超高速であると、前記時間ずれにより変調波形が崩れ、伝送エラーが発生する場合がある。一方、前記信号電極に進行波電極を用いれば、この電極(本実施形態では、コプレーナ伝送線路)を走行する高周波の伝搬速度と、両半導体光導波路を伝搬する導波光の伝搬速度とが整合するように、前記信号電極を設計することができる。このため、前記時間ずれによる変調波形の崩れに由来する伝送エラーを抑制することができる。
【0045】
本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、前述のとおり、信号電極(コプレーナ伝送線路)が形成される部分が平坦化されている。このため、例えば、信号電極(コプレーナ伝送線路)を、半導体光導波路のコア層より下部の層とコンタクトを取る必要がない。この結果、例えば、コア層より下部の層とコンタクトを取った段差のある進行波電極(伝送線路)を用いる場合において、25Gspsの高周波信号が伝搬する際に生じる、散乱、損失、反射等を低減する効果が得られる。
【0046】
なお、信号電極15が、p型コンタクト層134とn型コンタクト層144とに、共通の高周波信号を入力できるのであれば、信号電極15にはp型コンタクト層134およびn型コンタクト層144の間にギャップがあってもよい。
【0047】
また、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、例えば本実施形態のように、さらにグラウンド電極(接地電極)を有することが好ましい。
【0048】
つぎに、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器の動作を説明する。
【0049】
入力光導波路19aから入力された光は、分波器である2×2−MMI11aにより分波されて、両半導体光導波路13および14により導波される。負バイアス電極18と正バイアス電極17との間には、一定のDC電圧を印加する。一方、信号電極15から、両半導体光導波路13および14の上部に共通(同相)の高周波信号を印加する。これにより、コア層であるSCH−多重量子井戸層(i型)132および142の屈折率を変化させる。ここで、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、両半導体光導波路13および14の上下方向の導電型構造(pin構造)が互いに上下反転しているため、正確に逆相の高周波信号を加えることができる。このため、両半導体光導波路13および14を導波する光の位相を、正確に逆方向に動かすことができる。この結果、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、両半導体光導波路間の速度整合のばらつきがなく、正確にプッシュプル駆動する。これにより、例えば、波長チャーピングの制御が格段に向上する。
【0050】
本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器では、前記のとおり、両アーム(前記2本の半導体光導波路)に加える高周波信号を共通の伝送線路(信号電極)により印加する。このため、両アームの速度整合のばらつきが無く、かつ、前述のとおり、クロストークの問題もそもそも存在しない。したがって、本発明によれば、正確なプッシュプル駆動を実現した半導体マッハツェンダ型光変調器を提供することができる。
【0051】
前記一定電圧は、例えば、−5±4Vである。この印加電圧であれば、p型InP層141/半絶縁性InP埋込み層151a/n型InP層131の構造における逆電流を、十分に低く抑えることができる。p型InP層141/半絶縁性InP埋込み層151a/n型InP層131の構造は、高速変調のために容量も一定値以下であることが好ましい。ここで、前述のように、両n型InP層131およびp型InP層141の層厚を1.7μm以下とし、n型InP層131とp型InP層141とを1μm以上離した上で、1V以上の逆バイアスをかけることで、所望の容量が達成される。また、両n型InP層131およびp型InP層141の層厚を、0.3μm以上とすることで、抵抗値を所望の値以下に抑えることができる。前記抵抗値の好ましい値は、例えば、10Ω以下である。
【0052】
本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、両半導体光導波路13および14の上下方向の導電型構造は、pin構造であり、前記pin構造に電圧印加することによりコア層の屈折率を変化させる。ただし、本発明は、この例に限定されない。前記半導体光導波路の上下方向の層構造は、例えば、n型/p型/i型/n型、n型/半絶縁性型/i型/n型、またはn型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型であってもよい。より具体的には、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、前記2本の半導体光導波路が、それぞれ、上下方向に、負バイアス側から正バイアス側に向かって、p型/i型/n型の順序、n型/p型/i型/n型の順序、n型/半絶縁性型/i型/n型の順序、またはn型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造を有することが好ましい。前記n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造においては、前記半絶縁性型半導体層の少なくとも一つが、p型半導体層で置換されていてもよい。なお、本発明において、正バイアス電極および負バイアス電極は、前述のとおり、前記2本の半導体光導波路の下部にそれぞれ接続されている。したがって、「上下方向に、負バイアス側から正バイアス側に向かって」は、負バイアス電極に接続された半導体光導波路においては「下から上に向かって」を意味し、正バイアス電極に接続された半導体光導波路においては「上から下に向かって」を意味する。また、例えば、前記2本の半導体光導波路の上下方向の導電型構造が、互いに上下反転した構造であってもよい。図1の半導体マッハツェンダ型光変調器では、前述のとおり、前記2本の半導体光導波路の上下方向の導電型構造が、互いに上下反転している。
【0053】
前述のとおり、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、InP基板上の半導体マッハツェンダ型光変調器であるが、本発明は、この例に限定されない。例えば、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、pn接合を形成できる半導体により形成されていればよい。具体的には、例えば、GaAs基板上の半導体マッハツェンダ型光変調器であってもよいし、Si基板上の半導体マッハツェンダ型光変調器であってもよい。
【0054】
本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法は特に制限されないが、前記本発明の製造方法により製造することが好ましい。また、前記本発明の製造方法において、前記各工程を行う順序は特に制限されず、どのような順序でもよく、逐次でも同時でもよい。以下、本実施形態のマッハツェンダ光変調器の製造方法の一例を、図1を参照して説明する。
【0055】
まず、半絶縁性InP基板12上に、アンドープInP層を全面に成長させる。このアンドープInP層に、例えば、イオン注入または拡散によりn型領域とp型領域と半絶縁性領域とを形成する。半導体光導波路13から正バイアス電極17を形成する領域までを、例えば、n型不純物のイオン注入により前記n型領域(n型InPクラッド層131)とする。半導体光導波路14から負バイアス電極18を形成する領域までを、例えば、p型不純物の拡散により前記p型領域(p型InPクラッド層141)とする。この時、半導体光導波路14におけるSCH−多重量子井戸層(i型)142の直下に相当する領域では、p型不純物濃度が低下するように、例えば、拡散マスクを調整することが好ましい。両2×2−MMI11aおよび11bを形成する領域から、半絶縁性InP基板12の端面に向かって伸びる入力導波路19aおよび出力導波路19bにかけての領域は、例えば、プロトン注入により半絶縁性とする。このようにすることで、前記n型領域と前記p型領域を高抵抗で分離することができる。
【0056】
つぎに、n型InPクラッド層131およびp型InPクラッド層141が形成されているInP層上に、SCH−多重量子井戸層を全面に成長させる。このSCH−多重量子井戸層の半導体光導波路13を含む領域(SCH−多重量子井戸層132)上に、p型InPクラッド層133および、p型コンタクト層134を、前記順序で形成する。このSCH−多重量子井戸層の半導体光導波路14を含む領域(SCH−多重量子井戸層142)上に、n型InPクラッド層143および、n型コンタクト層144を、前記順序で形成する。このように2つの領域で異なる結晶成長を行うには、例えば、特許文献3に記載の方法と類似の方法を用いる。すなわち、まず、前記SCH−多重量子井戸層上に、p型InP層およびp型コンタクト層を前記順序で全面成長させる。つぎに、前記SCH−多重量子井戸層の半導体光導波路14を含む領域以外の領域に、エッチングマスクを形成する。この状態で、選択エッチングを行って、p型InP層およびp型コンタクト層を除去する。つぎに、前記エッチングマスクを残した状態で、n型InP層およびn型コンタクト層を前記順序で成長させる。この成長を行った後、両半導体光導波路13および14、2×2−MMI11a(分波器)および11b(合波器)、並びに入力光導波路19aおよび出力光導波路19bとなる部分以外を、選択エッチャントを用いて前記SCH−多重量子井戸層まで除去する。さらに、両半導体光導波路13および14間を、半絶縁性InP基板12に到達するまで追加エッチングする。以上のようにして、前記半導体光導波路形成工程と、前記分波器形成工程と、前記合波器形成工程等とを同時に(一括して)行うことができる。なお、前記3つの工程は、別々に行ってもよい。また、最初にアンドープInP層を成長させた後に、例えば、プロトン注入により両半導体光導波路13および14間に相当する領域を半絶縁性化する場合は、この追加エッチングは不要である。
【0057】
つぎに、両半導体光導波路13および14間には、FeドープまたはRuドープのInP結晶を成長させて、半絶縁性InP埋込み層151aを形成する。同時に、半導体光導波路13の半導体光導波路14側とは反対側の側面(図1(b)において、左側の側面)にも、FeドープまたはRuドープのInP結晶を成長させて、半絶縁性InP埋込み層151bを形成する。同時に、半導体光導波路14の半導体光導波路13側とは反対側の側面(図1(b)において、右側の側面)にも、FeドープまたはRuドープのInP結晶を成長させて、半絶縁性InP埋込み層151cを形成する。ここで、半絶縁性InP埋込み層151a、151bおよび151cを形成する際には、半絶縁性InP埋込み層151bから、半導体光導波路13上のp型コンタクト層134、半絶縁性InP埋込み層151a、半導体光導波路14上のn型コンタクト層144および半絶縁性InP埋込み層151cにかけて、これらの層の最上部が平坦となるようにする。
【0058】
つぎに、半導体光導波路13上のp型コンタクト層134および半導体光導波路14上のp型コンタクト層144のうち、信号電極15とコンタクトする部分以外を、エッチングにより除去する。この際、エッチングにより露出したp型InPクラッド層133およびn型InPクラッド層143は、例えば、プロトン注入等により半絶縁性化する。このようにすることで、例えば、信号電極15からの高周波の漏洩を防止可能である。
【0059】
つぎに、正バイアス電極17および負バイアス電極18を形成する部分を、SCH−多重量子井戸層まで選択エッチャントを用いてエッチングする。この状態で、この結晶上に、誘電体膜161を成膜する。この誘電体膜161のうち、両半導体光導波路13および14上の信号電極15とのコンタクト部分、正バイアス電極17を形成する部分および負バイアス電極18を形成する部分のみを開口する。この状態で、この結晶の全面に、電極を形成する。形成された電極をパターニングして、信号電極15、グラウンド電極16aおよび16b、正バイアス電極17および負バイアス電極18を形成する。このようにして、前記信号電極形成工程、前記正バイアス電極形成工程、および前記負バイアス電極形成工程を行うことができる。
【0060】
さらに、この結晶を劈開して入出力端面(図1(a)において、左右の端面)に無反射コーティングを施す。このようにして、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器を得る。なお、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器を製造する方法は、この例に限定されない。
【0061】
前述の製造方法では、両半導体光導波路以外の部分を、前述の半絶縁性InP埋込み層を形成して、これらの最上部を平坦化し、この平坦化された最上部において、信号電極15とのコンタクトをとる工程を採用している。このため、信号電極15とグラウンド電極16aおよび16bから構成されるコプレーナ伝送線路が平坦面上に形成されることとなる。この結果、高周波の散乱、損失、反射等を十分に抑えることができる。
【0062】
(実施形態2)
次に、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、構成材料にInP系を用いた半導体マッハツェンダ型光変調器である。
【0063】
図2に、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器の一例の構成を示す。同図において、図1と同一部分には、同一符号を付している。図2に示すとおり、この半導体マッハツェンダ型光変調器20は、前述の半導体マッハツェンダ光変調器10における半導体光導波路13および14に代えて、半導体光導波路23および24を有する。半導体光導波路23上には、p型コンタクト層134に代えてn型コンタクト層236が形成されている。半導体光導波路24上には、n型コンタクト層144に代えてn型コンタクト層246が形成されている。信号電極15は、n型コンタクト層236およびn型コンタクト層246上に形成されている。正バイアス電極17は、半導体光導波路23の下部に電気的に接続されている。負バイアス電極18は、半導体光導波路24の下部に電気的に接続されている。
【0064】
半導体光導波路23および24は、半絶縁性InP基板12上に形成されている。両半導体光導波路23および24の上下方向(図2において、上下方向)の構造は、同一である。半導体導波路23は、半絶縁性InP基板12上に、n型InPクラッド層231、半絶縁性InPクラッド層232、SCH−多重量子井戸層(i型)233、半絶縁性InPクラッド層234、n型InPクラッド層235が、前記順序で積層された上下方向の構造を有する。SCH−多重量子井戸層(i型)233は、半導体光導波路23のコア層である。半導体導波路24は、半絶縁性InP基板12上に、n型InPクラッド層241、半絶縁性InPクラッド層242、SCH−多重量子井戸層(i型)243、半絶縁性InPクラッド層244、n型InPクラッド層245が、前記順序で積層された上下方向の構造を有する。SCH−多重量子井戸層(i型)243は、半導体光導波路24のコア層である。正バイアス電極17は、n型InPクラッド層231にコンタクトして(接続されて)いる。負バイアス電極18は、n型InPクラッド層241にコンタクトして(接続されて)いる。両半導体光導波路23および24において、両SCH−多重量子井戸層(i型)233および243以外の各層の層厚は、いずれも、例えば、1±0.7μmである。
【0065】
n型InPクラッド層231およびn型InPクラッド層241は、例えば、3±2μmの間隔を空けて、半絶縁性InP基板12の左の部分および右の部分(図1(b)において、左右方向)の上面をそれぞれ覆うように形成されている。半絶縁性InPクラッド層232、SCH−多重量子井戸層(i型)233、半絶縁性InPクラッド層234およびn型InPクラッド層235は、n型InPクラッド層231上面において、n型InPクラッド層241と対向する側(図1(b)において右側)の辺縁に積層され、n型InPクラッド層231とともに半導体光導波路23を形成する。半絶縁性InPクラッド層242、SCH−多重量子井戸層(i型)243、半絶縁性InPクラッド層244およびn型InPクラッド層245は、n型InPクラッド層241上面において、n型InPクラッド層231と対向する側(図1(b)において左側)の辺縁に積層され、n型InPクラッド層241とともに半導体光導波路24を形成する。n型InPクラッド層235上面(半導体光導波路23上)には、前記のとおり、n型コンタクト層236が形成されている。n型InPクラッド層245上面(半導体光導波路24上)には、前記のとおり、n型コンタクト層246が形成されている。また、前記のとおり、信号電極15は、n型コンタクト層236およびn型コンタクト層246上に形成されている。信号電極15は、進行波電極である。信号電極15は、n型コンタクト層236およびn型コンタクト層246の上面に接して形成されることにより、2本の半導体光導波路23および24の上部に接続され、かつ、半導体光導波路23および24に共通の高周波信号を入力可能である。
【0066】
これら以外の構成は、前述の半導体マッハツェンダ型光変調器10と同様である。
【0067】
前述のとおり、半導体光導波路23と半導体光導波路24とは、同一構造である。しかしながら、両半導体光導波路23および24の上下方向の構造が、前述のとおり、n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型であるため、極性を反対にしていなくとも電流が流れず、位相変調器として動作する。この結果、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、前述の半導体マッハツェンダ型光変調器10と同様の効果を得ることができる。また、半導体光導波路23および24の前記構造によれば、バイアスの方向を逆にしても電流が流れず、位相変調器として動作する。すなわち、電極17は、正バイアス電極として説明したが、本実施形態では、これに負バイアスを印加し、負バイアス電極として用いてもよい。同様に、電極18は、負バイアス電極として説明したが、本実施形態では、これに正バイアスを印加し、正バイアス電極として用いてもよい。このように、本実施形態の半導体光導波路構造によれば、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器において、バイアス印加方向の自由度が高くなるという効果がある。
【0068】
本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器では、例えば本実施形態のように、いずれの半導体光導波路も、上下方向に、負バイアス側から正バイアス側に向かって、n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造を有することが好ましい。また、例えば、前記n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造における前記半絶縁性型半導体層の少なくとも一つが、p型半導体層で置換されていてもよい。すなわち、前記半導体光導波路の上下方向の構造は、例えば、n型/p型/i型/p型/n型の順序の積層構造、n型/半絶縁性型/i型/p型/n型の順序の積層構造、またはn型/p型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造であってもよい。これらの半導体光導波路構造によれば、前記のとおり、バイアス印加方向の自由度が高くなるとともに、後述するように、簡便かつ低コストで製造できる。
【0069】
本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器では、前述のとおり、両SCH−多重量子井戸層(i型)233および243の上下の層構造が同一である。このため、例えば、半絶縁性InP基板上のn型InP層からn型コンタクト層までの結晶成長を一括で行うことができる。この点を除いて、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、実施形態1で説明した製造方法と同様にして製造可能である。このように、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器は、両半導体光導波路の上下方向の構造(導電型構造)が反転している場合と比較して、例えば、特許文献3に記載されている全面成長、選択エッチング、選択成長という製造方法から、製造工程を大幅に短縮することできて、より低コストで製造可能である。ただし、本実施形態の半導体マッハツェンダ型光変調器を製造する方法は、この例に限定されない。
【0070】
前記本発明の製造方法では、例えば本実施形態で示したように、前記半導体光導波路形成工程において、半導体層を、下から上に向かって、n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序、n型/半絶縁性型/i型/p型/n型の順序、n型/p型/i型/半絶縁性型/n型の順序、またはn型/p型/i型/p型/n型の順序で積層させ、これらの積層構造を有する前記2本の半導体光導波路を同時に形成することが好ましい。このようにすれば、前述のように、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器を、より簡便かつ低コストに製造できる。
【0071】
なお、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、以下のとおり、例えば、差動四位相偏移変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)に用いることが好ましい。ただし、以下の説明は、本発明をなんら限定ないし制限しない。
【0072】
超高速大容量長距離光通信基幹システムでは、さらなる波長利用効率向上のために、例えば、多値化が有効と考えられる。多値化を行った場合には、ビットレートは、シンボルレート×多値度となる。具体的には、例えば、シンボルレート25Gsps(symbols per second、1秒間に伝搬されるシンボル数)の差動四位相偏移変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)によれば、50Gbps(bits per second、1秒間に伝搬されるビット数)のビットレートが実現され、波長当たりの伝送容量が向上する。すなわち、前述のBPSKの場合には、ビットレート=シンボルレートであるが、前述のDQPSKの場合(多値度:2)には、ビットレート=シンボルレート×2となる。前記DQPSKでは、光は、その位相が90°異なる2つの信号IとQに直交分解される。前記信号Iと前記信号Qとは、それぞれ独立に、前述のBPSKの通信を行っていると考えることができる。
【0073】
前記DQPSKにおいて、前述の2つの逆相の高周波信号を印加するマッハツェンダ型光変調器を用いる場合、プッシュプル駆動を行うためには、I、−I、Q、−Qの計4個の高周波信号を2つのマッハツェンダ型光変調器に入力することとなる。ここで、DQPSK変調器を、例えば、1個のInP基板上に集積することを考えると、マッハツェンダ型光変調器を少なくとも2個並列して配置することとなる。前記DQPSK変調のために2並列に集積する場合、2個のマッハツェンダ型光変調器に対して、分波、合波するためのS字光導波路が必要となる。前記S字光導波路で離さなければならない両光導波路の間隔は、例えば、200μm程度と広い。この間隔を取るために、前記S字光導波路の長さは、放射損失を無視できるように緩やかに曲げると、例えば、400μm程度の長さが必要となる。結局のところ、マッハツェンダ変調器を2個並列に配置すると、例えば、6mm程度の全長が必要となる。これに、2つのBPSK変調の光を直交させるための位相調整電極、RZ(Return to Zero)のためのマッハツェンダ型光変調器等まで考慮すると、InP光半導体デバイスとしては、異例の大きさのチップサイズとなる。このように、マッハツェンダ型光変調器を集積すればするほど、前記S字光導波路の面積が膨大になり、かつ、前記S字光導波路が過剰に長くなる。このため、チップサイズが大きくなり、例えば、チップコストがかさむこととなる。
【0074】
また、この程度まで光導波路の引き回しが長くなると、例えば、挿入損失も問題になる。さらに、S字光導波路自体にも製造する上での課題がある。例えば、光導波路がInPによる埋込み導波路である場合、光導波路が結晶方位から斜めに傾いていると、埋込み成長の際、結晶のかぶりが生じる場合がある。これはボイドの原因となり、導波光の散乱損失を生じる場合がある。また、例えば、リッジ導波路の場合、メサをウェットの選択エッチャントで形成すると、光導波路の斜め角度に応じて、メサ側面が90°から傾いてしまう。これは光導波路設計を複雑にする。いずれにせよ、大規模なS字光導波路では、損失を生じさせる機会が増え、安定して低挿入損失とするのが難しい。
【0075】
また、DQPSK変調器集積では、前述の2つの逆相の高周波信号を印加するマッハツェンダ型光変調器を用いる場合、4本の高周波伝送線路を配線しなければならない。このため、配線が混み合うこととなる。この結果、各信号間でクロストークを抑制しつつ、互いに時間遅れが無いように配慮することが難しい。また、例えば、25Gspsのような超高周波では、コプレーナ線路の引き回しが長いと、電気信号の損失または反射等も無視できない。さらに、例えば、25Gspsのように超高周波では、各高周波信号を入力する4本の高周波伝送線路の配線長にわずかなばらつき(伝送線路の実行長の誤差)があるだけでも、各高周波信号間に無視できない時間遅れが生じてしまう。これらにより、V1+V2が一定という条件から外れ、正確なプッシュプル駆動からの誤差が発生する。この時、波長チャーピングが発生して、伝送エラーが発生する。
【0076】
すなわち、マッハツェンダ型光変調器、特にInP系のマッハツェンダ型光変調器を集積する際には、例えば以下の問題が生じる。第1に、集積すればするほどS字光導波路の面積が膨大になるため、チップサイズが大きくなり、チップコストが高くなる。第2に、集積すればするほどS字導波路が過剰に長くなり、S字光導波路の放射損失や内部損失に起因する挿入損失が大きくなる。第3に、集積すればするほど伝送線路が長くなり、伝送線路が混み合う。このため、伝送線路の実効長の誤差や、クロストーク、高周波の損失や反射に起因して、正確なプッシュプル駆動からの誤差が発生する。
【0077】
前述のDQPSKにおけるマッハツェンダ型光変調器に、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器を適用すれば、まず、個々のマッハツェンダ型光変調器において、前述のとおり、両光導波路間を近づけ、S字光導波路を省略または短縮することができる。このため、個々のマッハツェンダ型光変調器を、小型、低損失で、正確にプッシュプル駆動するマッハツェンダ型光変調器とすることができる。さらに、個々のマッハツェンダ型光変調器が小型化されているので、これらをつなぐためのS字光導波路を、省略または短縮することができる。このように、本発明は、単に1個のマッハツェンダ型光変調器の小型化に寄与するのみでなく、1個のマッハツェンダ型光変調器を小型化することにより、並列させて集積する時のS字光導波路も小型化することができる。このように、本発明によれば、マッハツェンダ型光変調器を集積すればするほど、その寄与が波及していくという大きな効果が得られる。この結果、例えば、マッハツェンダ型光変調器の高集積化が容易となる。
【0078】
また、前述のDQPSKにおけるマッハツェンダ型光変調器に、前述の2つの逆相の高周波信号を印加するマッハツェンダ型光変調器を用いる場合、プッシュプル駆動を行うためには、前述のとおり、I、−I、Q、−Qの計4個の高周波信号を2つのマッハツェンダ型光変調器に入力することとなる。このため、この場合には、4本の高周波伝送線路を配線しなければならない。前述のDQPSKにおけるマッハツェンダ型光変調器に、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器を適用すれば、DQPSKのプッシュプル駆動を行うために必要な高周波信号を、例えば、I、Qの2個に低減することができる。このため、前述のDQPSKにおけるマッハツェンダ型光変調器に、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器を適用すれば、高周波伝送線路を2本に低減することができる。この結果、例えば、マッハツェンダ型光変調器の高集積化が容易となり、かつ、正確なプッシュプル駆動が可能となる。
【0079】
また、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、以下のとおり、例えば、InP系のマッハツェンダ型光変調器に用いることが好ましい。ただし、以下の説明は、本発明をなんら限定ないし制限しない。
【0080】
最新の超高速大容量長距離光通信基幹システムの送信装置に用いられるマッハツェンダ型光変調器の材料系は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)が主流である。一方、InP系マッハツェンダ型光変調器は、小型化のためには有望であると考えられながら、現状では、最上位の通信システムには用いられていない。
【0081】
InP基板上の化合物半導体の光導波路は、LiNbOの光導波路と比較して、光ファイバとの結合効率が悪い。InP系の集積度を上げることにより、この問題を最小限に抑え、かつInP系が小型であるという利点を最大限に生かすことができる。これにより、LiNbOに対抗することが考えられる。しかし、InP系マッハツェンダ型光変調器は、小型であるとは言いながら、面積当たりの単価(チップコスト)がLiNbOと比較して高い。このため、高集積を前提に考えると、InP系マッハツェンダ型光変調器は、更に極力小型にすることが望まれる。
【0082】
InP系のマッハツェンダ型光変調器に、本発明を適用すれば、より小型化が可能であるため、コスト面においても、LiNbOに対抗することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のとおり、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器は、小型、低損失で、正確にプッシュプル駆動可能である。したがって、本発明の半導体マッハツェンダ型光変調器の用途としては、例えば、幹線系、メトロ系、アクセス系等に使用される光通信用送信機の光変調器等が挙げられ、その用途は制限されず、広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
10、20 半導体マッハツェンダ型光変調器
11a 2×2−MMI(分波器)
11b 2×2−MMI(合波器)
12 半絶縁性InP基板
13、14、23、24 半導体光導波路
15 信号電極
16a、16b グラウンド電極
17 正バイアス電極
18 負バイアス電極
19a 入力光導波路
19b 出力光導波路
30 従来のマッハツェンダ型光変調器
31a、31b 2×2−MMI
33、34、39a、39b 光導波路
35a、35b、 信号電極
36 グラウンド電極
131、143、231、235、241、245 n型InPクラッド層
132、142、233、243 SCH−多重量子井戸層(i型)
133、141 p型InPクラッド層
134 p型コンタクト層
144、236、246 n型コンタクト層
151a、151b、151c 半絶縁性InP埋込み層
161 誘電体膜
232、234、242、244 半絶縁性InPクラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分波器と、合波器と、半導体光導波路と、信号電極と、正バイアス電極と、負バイアス電極とを有し、
前記半導体光導波路は、2本であり、
前記分波器と前記合波器とは、前記2本の半導体光導波路により連結され、
前記信号電極は、前記2本の半導体光導波路の上部に接続され、かつ、前記2本の半導体光導波路に共通の高周波信号を入力可能であり、
前記正バイアス電極は、前記2本の半導体光導波路のうち一方の半導体光導波路の下部に接続され、前記負バイアス電極は、他方の半導体光導波路の下部に接続されていることを特徴とする半導体マッハツェンダ型光変調器。
【請求項2】
前記2本の半導体光導波路の上下方向の導電型構造が、互いに上下反転した構造であることを特徴とする請求項1記載の半導体マッハツェンダ型光変調器。
【請求項3】
前記2本の半導体光導波路が、それぞれ、上下方向に、負バイアス側から正バイアス側に向かって、p型/i型/n型の順序、n型/p型/i型/n型の順序、n型/半絶縁性型/i型/n型の順序、またはn型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の半導体マッハツェンダ型光変調器。
【請求項4】
前記2本の半導体光導波路が、いずれも、上下方向に、負バイアス側から正バイアス側に向かって、n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造を有することを特徴とする請求項3記載の半導体マッハツェンダ型光変調器。
【請求項5】
前記n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序の積層構造における前記半絶縁性型半導体層の少なくとも一つが、p型半導体層で置換されていることを特徴とする請求項3または4記載の半導体マッハツェンダ型光変調器。
【請求項6】
前記信号電極が、進行波電極であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体マッハツェンダ型光変調器。
【請求項7】
分波器を形成する分波器形成工程と、
合波器を形成する合波器形成工程と、
前記分波器と前記合波器を連結する2本の半導体光導波路を形成する半導体光導波路形成工程と、
前記2本の半導体光導波路の上部に接続され、かつ、前記2本の半導体光導波路に共通の高周波信号を入力可能な信号電極を形成する信号電極形成工程と、
前記2本の半導体光導波路のうち一方の半導体光導波路の下部に接続される正バイアス電極を形成する正バイアス電極形成工程と、
他方の半導体光導波路の下部に接続される負バイアス電極を形成する負バイアス電極形成工程とを含むことを特徴とする半導体マッハツェンダ型光変調器の製造方法。
【請求項8】
前記半導体光導波路形成工程において、半導体層を、下から上に向かって、n型/半絶縁性型/i型/半絶縁性型/n型の順序、n型/半絶縁性型/i型/p型/n型の順序、n型/p型/i型/半絶縁性型/n型の順序、またはn型/p型/i型/p型/n型の順序で積層させ、これらの積層構造を有する前記2本の半導体光導波路を同時に形成することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記分波器形成工程と、前記合波器形成工程と、前記半導体光導波路形成工程とを、同時に行うことを特徴とする請求項7または8記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−133582(P2011−133582A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291506(P2009−291506)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】