説明

半導体メモリカード

従来技術では、ユーザの意思に反してサービスが実行されるという課題がある。この課題を解決するために、本発明に係る半導体メモリカード(110)は、当該半導体メモリカード(110)の前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得部(707)と、2以上の第2の前記アクセス方向種別を含むアクセス条件を予め記憶かつ管理する条件管理部(705)と、2以上の前記第1のアクセス方向種別と、2以上の前記第2のアクセス方向種別とを比較し、両者が一致するか否かを判定する条件判定部(703)と、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタと非接触通信を行う半導体メモリカードに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、マスメディアや金融機関、国、自治体などの幅広い分野において、リーダライタと非接触通信を行う半導体メモリカード(非接触半導体メモリカード)を使用するシステムが普及している。その理由としては、非接触半導体メモリカードの持つ利便性と安全性が挙げられる。すなわち、ユーザは、ICカードリーダライタに対して非接触半導体メモリカードをかざす、いわゆる近接させるだけで、サービスを享受することができるという利便性を備える。また、サービスを享受するために、ICカード内の秘匿性のある情報を外部に表示する必要がないという安全性も備える。このような特徴を持った非接触半導体メモリカードとしては、非接触ICカード(以下、単に「ICカード」という場合がある)が代表的である。
【0003】
図1は、一般的なICカードの利用形態を示す図である。ユーザは、ICカード110をリーダライタ106にかざすだけで、サービスを享受することができる。ICカード110を財布や鞄などに格納した状態で、あるいはポータブルデバイス107に接続した状態でリーダライタ106にかざしても、ICカード単体の場合と同様にサービスを享受することができる。
【0004】
図2は、一般的なICカードのハードウェア構成を示す図である。このICカードは、アンテナコイル310と、ROM301と、RAM302と、CPU303と、Electrically Erasable Programmable Read Only Memory(EEPROM)304とを備える。アンテナコイル310は、外部機器から電力供給を受け、外部機器と通信する。ROM301は、プログラムを記憶する。RAM302は、プログラムを実行する際に用いられるデータを一時的に記憶する。CPU303は、ROM301に記憶されたプログラムに従って各種コマンド処理等の制御処理を行う。EEPROM304は、書き換え可能なメモリであって、外部からダウンロードされたプログラムを記憶する。
【0005】
一般に、ICカードの特徴としては、磁気ICカードに比べて記憶容量が大きいことはもとより、その内部に記憶される個人情報等についてのセキュリティ機能が強化されていることを挙げることができる。
【0006】
これまで、一枚のICカードによって実現されるサービスは、電子マネー等の単一のサービスであった。しかし、近年は、ICカードにおけるメモリの記憶容量が増大したことやCPUの処理速度が向上したことから、一枚のICカードによって複数のサービスを実現することが提案されている。
【0007】
これにより、ユーザは、複数枚の異なるICカードを所持する必要がなく、一枚のICカードによって様々なサービスを享受することが可能となる。このように、複数のサービスに対応するICカードは複数のアプリケーションプログラムを搭載しているので、以下、複数のサービスに対応するICカードを「マルチアプリケーション対応のICカード」と呼ぶ場合がある。
【0008】
図3は、一般的なICカードのソフトウェア構成を示す図である。ICカード110のソフトウェアは3層のレイヤ構造を持つ。最下位層にはアプリケーションプログラム用メモリ領域405が存在し、その上位層にはOS404が存在し、最上位層には少なくとも1個のアプリケーションプログラムが存在する。
【0009】
ここでは、最上位層において、i個のECクライアントアプリケーションプログラム(C_E_APL)401、402、・・・、40iが存在する場面を例示している。これらC_E_APL401、402、・・・、40iは、それぞれ、図示しないi個のECサーバアプリケーションプログラム(E_APL)101、102、・・・、10iに対応している。
【0010】
このように、各アプリケーションプログラムは各サービスに対応しているので、以下、アプリケーションプログラムを「サービス」と呼ぶ場合がある。
【発明の開示】
【0011】
ユーザは、ICカードをリーダライタにかざすだけで、サービスを享受することができる。従って、ユーザの意図しない理由でICカードがリーダライタに近接してしまった場合は、ユーザの意思に反してサービスが実行されるという課題がある。すなわち、ICカードをリーダライタの上に落としてしまった場合、ユーザの意思に反してサービスが実行される場合がある。
【0012】
このように、ユーザの意思に反してサービスが実行されるという課題は、複数のサービスの中から、実行したいサービスを選択する際にも同様に起こり得る。
【0013】
すなわち、2つのサービス(例えば、C_E_APL401および402)がICカード内に存在する場合がある。この場合、ユーザにはC_E_APL401を実行する意思があったとしても、リーダライタがC_E_APL402のみに対応しているときは、ユーザの意思に反してC_E_APL402が実行される。
【0014】
また、C_E_APL401とC_E_APL402が2枚のICカード内に別個に存在する場合がある。この場合、ユーザは、C_E_APL401を実行する意思があったとしても、C_E_APL402が存在するICカードをリーダライタにかざしてしまうときがある。このとき、リーダライタがC_E_APL401とC_E_APL402の両方に対応していると、ユーザの意思に反してC_E_APL402が実行される。
【0015】
例えば、電子マネーサービスがユーザの意思に反して実行された場合は、ICカード内の電子マネーが減額される。この場合、ユーザは、減額された電子マネーを戻してもらうようにサービス会社に要求する等、煩わしい作業をしなければならない。
【0016】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ユーザの意思確認を確実に行ったうえでアプリケーションプログラムを実行することが可能な半導体メモリカードを提供することを目的とする。
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る半導体メモリカードは、リーダライタと非接触通信を行う半導体メモリカードであって、当該半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得部と、2以上の第2の前記アクセス方向種別を含むアクセス条件を予め記憶かつ管理する条件管理部(記憶部)と、前記方向取得部により取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、前記条件管理部に記憶されている前記アクセス条件に含まれる2以上の前記第2のアクセス方向種別とを比較し、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致するか否かを判定する条件判定部と、前記条件判定部により、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行部とを備える。これによって、2回以上、半導体メモリカードをリーダライタにかざさなければ、サービスが実行されない。すなわち、ユーザの意思確認を確実に行ったうえでアプリケーションプログラムを実行することが可能となる。
【0018】
ここで、前記アクセス条件は、前記第2のアクセス方向種別の時系列パターンを含み、前記条件判定部は、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別を時系列に比較してもよい。これによって、前記アクセス方向種別の時系列パターンが所定の条件を満たすか否かを判定することができる。
【0019】
また、前記アクセス方向種別は、当該半導体メモリカードのアクセス面種別でもよい。これによって、当該半導体メモリカードのアクセス面種別が所定の条件を満たすか否かを判定することができる。
【0020】
また、前記アクセス方向種別は、当該半導体メモリカードにおける同一面上の水平アクセス方向種別でもよい。これによって、当該半導体メモリカードにおける同一面上の水平アクセス方向種別が所定の条件を満たすか否かを判定することができる。
【0021】
また、前記方向取得部は、当該半導体メモリカードに対して前記リーダライタから電磁波が供給されることにより発生する電力が所定の電圧を超えた時点から所定の時間が経過した時、前記アクセス方向種別を取得してもよい。これによって、アクセス方向種別が変更される度、変更後のアクセス方向種別を取得することが可能となる。
【0022】
また、前記アクセス条件は、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別の比較回数を含み、前記条件判定部は、前記回数分、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別を比較してもよい。これによって、比較回数を多くするほど、より確実にユーザの意思確認を行うことが可能となる。
【0023】
また、前記アクセス条件は、当該半導体メモリカードが前記リーダライタに対してアクセスする際の制限時間を含み、前記条件判定部は、最初のアクセスから前記回数分の比較が完了するまでの時間が前記制限時間以内であるか否かを判定し、前記実行部は、前記条件判定部により、前記制限時間以内であると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行してもよい。これによって、必要以上に意思確認作業に時間のかかるユーザに対してサービスが実行されるという不具合を回避することができる。
【0024】
また、前記半導体メモリカードは、さらに、前記アクセス条件を外部機器より取得する条件取得部を備え、前記条件管理部は、前記アクセス条件を記憶かつ管理してもよい。これによって、アクセス条件を変更する必要が生じたときに、即座に対応することができる。
【0025】
なお、本発明は、このような半導体メモリカードの特徴的な構成部をステップとする方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムが格納された、CD−ROM等の記憶媒体として実現したり、集積回路として実現することもできる。プログラムは、通信ネットワーク等の伝送媒体を介して流通させることもできる。
【0026】
明細書、図面、及び特許請求の範囲を含む、2004年5月25日にされた出願番号2004−154048号の日本特許出願により開示されている事項は、そっくりそのまま引用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、本発明に係る非接触半導体メモリカードとして、マルチアプリケーション対応で、かつ、耐タンパモジュールを内蔵した非接触ICカードを例示する。
【0028】
なお、以下では、ICカードがリーダライタよりも上方に存在することを前提に説明する。例えば、ICカードの表面をリーダライタにかざす場合は、単に「ICカードの裏面を上にする」と表現する。
【0029】
また、ICカードの左側・右側・上側・下側という場合がある。ICカードの左側とは、ICカードの長手方向を横にした状態で、そのICカードの表面または裏面を見た場合、その面の左側に当たる領域をいうものと仮定する。右側・上側・下側についても同様である。
【0030】
(実施の形態1)
図4は、本発明に係るICカードの使用環境を示す図である。
【0031】
この使用環境には、ECサーバ100、ネットワーク104、無線基地局105、リーダライタ106、ポータブルデバイス107、ポータブルデバイス107の拡張リーダライタ108、ICカード110が含まれる。ユーザは、ICカード110を使用することによって、サービスを享受することができる。ICカード110は、単体で使用されても、ポータブルデバイス107と接続された状態で使用されても、ポータブルデバイス107の拡張リーダライタ108と接続された状態で使用されてもよい。
【0032】
ECサーバ100は、ネットワーク104と無線基地局105またはリーダライタ106とを介して、ICカード110にECサービスを提供する。ECサーバ100では、i個のE_APL101〜10iが動作している。これらE_APL101〜10iは、それぞれ固有のECサービスをICカード110に提供する。
【0033】
無線基地局105は、建物や電柱の屋上に備え付けられた機器であり、携帯電話型のポータブルデバイス107とデータの入出力を行う。無線基地局105は、ネットワーク104を介してECサーバ110と接続されている。この無線基地局105を介することによって、ICカード110は、ECサーバ100のECサービスを享受することができる。
【0034】
リーダライタ106は、具体的にはクレジット会社などのキャッシュディスペンサーであり、ICカード110とデータの入出力を行う。リーダライタ106は、ネットワーク104を介してECサーバ110と接続されている。このリーダライタ106を介することによって、ICカード110は、ECサーバ100のECサービスを享受することができる。
【0035】
ポータブルデバイス107は、ICカード110にアクセスする機器である。ポータブルデバイス107には、ブラウザソフトなどがインストールされている。ユーザは、このブラウザソフトのユーザインタフェースを介して、ICカード110内のデータにアクセスすることができる。また、ポータブルデバイス107に拡張リーダライタ108を備えることも可能である。
【0036】
図5は、本発明に係るICカードの使用形態を示す図である。ここでは、ICカードの表面501と裏面502とを区別するために、裏面502に斜線を描いている。
【0037】
なお、以下の説明では、表面501をリーダライタ106に相対させてICカードをリーダライタ106にかざすことを「裏面502を上にしてICカードをリーダライタ106にかざす」と表現している。また、裏面502をリーダライタ106に相対させてICカードをリーダライタ106にかざすことを「表面501を上にしてICカードをリーダライタ106にかざす」と表現している。
【0038】
まず、ユーザは、図5Aに示すように、裏面502を上にしてICカードをリーダライタ106にかざす。次に、図5Bに示すように、ICカードを返して裏面502と表面501を入れ替える。次に、図5Cに示すように、ICカードをリーダライタ106の通信エリアから外す。次に、図5Dに示すように、表面501を上にしてICカードをリーダライタ106にかざす。
【0039】
このように、ユーザは、ICカードを表面501、裏面502、裏面502の順序でリーダライタ106にかざす。これによって、サービスが実行されることになるが、その実行手順については後述する。サービスが実行された後、図5Eに示すように、ICカードをリーダライタ106の通信エリアから外す。
【0040】
図6は、本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。ここでは、ICカードの左側503と右側504とを区別するために、左側503に斜線を描いている。
【0041】
なお、以下の説明では、ICカードの左側503に比べてICカードの右側504をよりリーダライタ106に近づけるようにかざすことを「ICカードの右側504をリーダライタ106にかざす」と表現している。また、ICカードの右側504に比べてICカードの左側503をよりリーダライタ106に近づけるようにかざすことを「ICカードの左側503をリーダライタ106にかざす」と表現している。
【0042】
まず、ユーザは、図6Aに示すように、ICカードの右側504をリーダライタ106にかざす。次に、図6Bに示すように、ICカードをリーダライタ106の通信エリアから外す。次に、図6Cに示すように、ICカードの左側503をリーダライタ106にかざす。
【0043】
このように、ユーザは、ICカードを右側504、左側503の順序でリーダライタ106にかざす。これによって、サービスが実行されることになるが、その実行手順については後述する。サービスが実行された後、図6Dに示すように、ICカードをリーダライタ106の通信エリアから外す。
【0044】
図7は、本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。すなわち、図5および図6では、リーダライタ106の読み取り部分が1つの場合を例示したが、図7に示すように、リーダライタ106の読み取り部分が複数ある場合にも本発明を適用することができる。
【0045】
ここでは、図7Aに示すように、左側の読み取り部分106aに表面501をかざし、図7Bに示すように、中央の読み取り部分106bに裏面502をかざし、図7Cに示すように、右側の読み取り部分106cに裏面502をかざすことによって、サービスが実行されることを示している。3つの読み取り部分106a、106b、106cにICカードをかざす順序は特に限定されるものではない。すなわち、左側の読み取り部分106aに表面501をかざし、中央の読み取り部分106bに裏面502をかざし、右側の読み取り部分106cに裏面502をかざす以上、その順序に関係なく同様の効果を得ることができる。
【0046】
図8は、本発明に係るICカードのハードウェア構成を示す図である。このICカード110は、複数のアンテナコイル310および320を備えることによって、当該ICカード110のリーダライタに対するアクセス方向種別を取得することができる。それ以外の構成(ROM301、RAM302、CPU303、EEPROM304を備える点)は一般的なICカードと変わらない。
【0047】
ここでいうアクセス方向種別には、アクセス面種別と水平アクセス方向種別の両方が含まれる。アクセス面種別とは、具体的には、当該ICカード110の表面または裏面の種別をいう。水平アクセス方向種別とは、当該ICカード110における同一面上の水平アクセス方向の種別、具体的には、当該ICカード110の右側、左側、上側、下側、またはこれらの組み合わせの種別をいう。
【0048】
以下、アクセス面種別または水平アクセス方向種別を検出する技術について詳細に説明する。
【0049】
図9は、本発明に係るICカードの機能ブロック図である。このICカード110は、第1起電力測定部311と、第2起電力測定部312と、起電力比較部313と、方向取得部707とを備える。第1起電力測定部311は、第1アンテナコイル310の起電力を測定する。第2起電力測定部312は、第2アンテナコイル320の起電力を測定する。起電力比較部313は、第1起電力測定部311および第2起電力測定部312によって測定された起電力の特性を比較する。方向取得部707は、起電力比較部313によって比較された結果に基づいて、リーダライタにアクセスする当該ICカード110のアクセス面種別または水平アクセス方向種別を検出する。
【0050】
図10Aは、複数のアンテナコイルを備えるICカードの表面側の概観を示す平面図である。図10Bは、同ICカードの裏面側の概観を示す平面図である。このICカード110は、表面側に第1アンテナコイル310を備え、裏面側に第2アンテナコイル320を備える。
【0051】
図10Cは、同ICカードの一部の断面斜視図である。このICカード110には、第1アンテナコイル310と第2アンテナコイル320とが、それぞれ異なる深さの位置に、互いに重なり合うように埋設されている。なお、ここでは図示を省略したが、RAM302やCPU303等を搭載した集積回路のチップも埋設されていることは言うまでもない。
【0052】
図11Aは、本発明に係るICカードの操作方法を説明するための図である。まず、ユーザは、ICカード110の第2アンテナコイル320を備える面をリーダライタ106にかざす(リーダライタ106上を矢印方向に通過させる)。これによって、リーダライタ106からの電磁波がICカード110の第1アンテナコイル310および第2アンテナコイル320によって受信され、第1アンテナコイル310および第2アンテナコイル320それぞれにおいて起電力が発生する。このように発生した起電力は、第1起電力測定部311および第2起電力測定部312それぞれによって測定される。このように測定された起電力は、起電力比較部313によって比較される。
【0053】
図11Bは、ICカードからリーダライタまでの距離と、それぞれのアンテナコイルにおいて発生する起電力との関係を示す図である。本図では、第1アンテナコイル310において発生する起電力の推移を波形602で示し、第2アンテナコイル320において発生する起電力の推移を波形601で示している。ここで、ICカード110からリーダライタ106までの距離を例えばd1とする。そして、この一定の距離d1における第1アンテナコイル310の起電力をWAで表し、同様に第2アンテナコイル320の起電力をWBで表すと、WB>WAとなる。すなわち、リーダライタ106に近い第2アンテナコイル320の方に、第1アンテナコイル310よりも大きな起電力が発生する。したがって、方向取得部707は、第2アンテナコイル320を備える面(裏面)がリーダライタ106にかざされていることを検出することになる。
【0054】
図11Cは、リーダライタをICカードが通過する時間(あるいは、接近する時間)と、それぞれのアンテナコイルにおいて発生する起電力との関係を示す図である。本図でも、第1アンテナコイル310において発生する起電力の推移を波形602で示し、第2アンテナコイル320において発生する起電力の推移を波形601で示している。
【0055】
ここで、第1アンテナコイル310と第2アンテナコイル320の一方が発生させた起電力が、所定の電圧vを超えた時点t21を検出する。そして、この時点t21から所定の時間が経過した時点t23における第1アンテナコイル310の起電力をWAで表し、同様に第2アンテナコイル320の起電力をWBで表すと、WB>WAとなる。すなわち、リーダライタ106に近い第2アンテナコイル320の方に、第1アンテナコイル310よりも大きな起電力が発生する。したがって、方向取得部707は、第2アンテナコイル320を備える面(裏面)がリーダライタ106にかざされていることを検出することになる。
【0056】
ここで、時点t23は、時点t21から所定の時間Δtが経過するまでの時点であればよい。なお、所定の時間Δtとは、第2アンテナコイル320(最初に起電力がvを超えたアンテナコイル)の起電力が最初の極大値に達するまでの任意の時間とすることができる。
【0057】
なお、以下に説明する図12B、図12C、図14A、および図14Bに示す“v”も、本図11Cにおいて説明した“所定の電圧v”を表している。
【0058】
このように、本発明に係るICカードによれば、表面と裏面とにそれぞれアンテナコイルを備えているので、リーダライタにかざされている当該ICカードのアクセス面種別を検出することができる。
【0059】
なお、図11Bの説明では、横軸を「リーダライタまでの距離」としているが、「リーダライタをICカードが通過する時間(あるいは、接近する時間)」と読み替えてもよい。ICカードからリーダライタまでの距離は、ICカードがリーダライタを通過する時間(あるいは、接近する時間)に置き換えることができるからである。
【0060】
図12Aは、本発明に係るICカードの別の操作方法を説明するための図である。このICカード110は、一方の面の左側に第1アンテナコイル310を備え、その面の右側に第2アンテナコイル320を備える。ここでは、ユーザは、第2アンテナコイル320を備える右側から、ICカード110をリーダライタ106にかざす。これによって発生した起電力は、第1起電力測定部311および第2起電力測定部312それぞれによって測定される。このように測定された起電力は、起電力比較部313によって比較される。
【0061】
図12Bは、ICカードがリーダライタを通過する時間と、それぞれのアンテナコイルにおいて発生する起電力との関係を示す図である。本図では、第1アンテナコイル310の起電力の推移を波形604で示し、第2アンテナコイル320の起電力の推移を波形603で示している。ここで、ICカード110がリーダライタ106を通過する所定の時刻を例えばt0とする。そして、この所定の通過時刻t0における第1アンテナコイル310の起電力をWCで表し、同様に第2アンテナコイル320の起電力をWDで表すと、WD>WCとなる。すなわち、所定の通過時刻t0においては、はじめにリーダライタ106に近づく第2アンテナコイル320の方に、第1アンテナコイル310よりも大きな起電力が発生する。したがって、方向取得部707は、第2アンテナコイル320を備える側(右側)からリーダライタ106にかざされていることを検出することになる。
【0062】
ここで、所定の通過時刻t0は、第2アンテナコイル320(最初に起電力を発生させたアンテナコイル)において起電力が発生した時刻t1から、所定時間(例えば、100msec)経過したときと定義してもよい。また、第1アンテナコイル310(次に起電力を発生させたアンテナコイル)において起電力が発生した時刻t2から、所定時間(例えば、10msec)経過したときと定義してもよい。なお、所定時間とは、最初に起電力を発生させたアンテナコイルの起電力が最初の極大値に達するまでの任意の時間とすることができる。
【0063】
また、第1アンテナコイル310と第2アンテナコイル320との起電力を比較する基準は、所定の通過時刻t0に限られるものではない。例えば、第2アンテナコイル320における最初の起電力の発生を検知した後、第1アンテナコイル310における次の起電力の発生を検知した時点で、起電力比較部313は、先に起電力を発生させたアンテナコイルが第2アンテナコイル320であることを示す情報を方向取得部707に出力するようにしてもよい。
【0064】
図12Cは、ICカードがリーダライタを通過する時間と、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力の最初の極大値との関係を示す図である。本図では、第1アンテナコイル310の起電力の推移を波形606で示し、第2アンテナコイル320の起電力の推移を波形605で示している。ここで、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力の最初の極大値をWEで表す。そうすると、第2アンテナコイル320の起電力の最初の極大値605aの到達時刻t3は、第1アンテナコイル310の起電力の最初の極大値606aの到達時刻t4よりも早い。したがって、この場合、起電力比較部313は、先に起電力が最初の極大値に達したアンテナコイルが第2アンテナコイル320であることを示す情報を方向取得部707に出力する。
【0065】
このように、第1アンテナコイル310および第2アンテナコイル320のうち、いずれのアンテナコイルの起電力が先に最初の極大値に到達したかを基準に比較するようにしてもよい。すなわち、第1アンテナコイル310の起電力と第2アンテナコイル320の起電力とを比較する基準は様々あり、特に限定されるものではない。
【0066】
このように、本発明に係るICカードによれば、一方の面の左右にそれぞれアンテナコイルを備えているので、リーダライタにかざされている当該ICカードの水平アクセス方向種別を検出することができる。
【0067】
図13Aは、本発明に係る別のICカードの表面側の概観を示す平面図であり、図13Bは、同ICカードの裏面側の概観を示す平面図である。このICカード110は、表面の左側に第1アンテナコイル310を備え、表面の右側に第2アンテナコイル320を備える。また、裏面の左側に第3アンテナコイル311を備え、裏面の右側に第4アンテナコイル321を備える。
【0068】
図13Cは、同ICカードの操作方法を説明するための図である。ここでは、ユーザは、第4アンテナコイル321を備える裏面の右側から、ICカード110をリーダライタ106にかざす。これによって発生した起電力は、対応する起電力測定部それぞれによって測定される。このように測定された起電力は、起電力比較部313によって比較される。
【0069】
すなわち、起電力比較部313は、ICカード110の左側に備える第1アンテナコイル310の起電力または第3アンテナコイル311の起電力と、ICカード110の右側に備える第2アンテナコイル320の起電力または第4アンテナコイル321の起電力とを比較する。ここでは、前記と同様に、起電力の発生時間等を比較する。図13Cに示した例で説明すると、ICカード110の右側に備えるアンテナコイルの起電力が大きいと判断することになる。
【0070】
その後、起電力比較部313は、ICカード110の表面側に備える第2アンテナコイル320の起電力と、裏面側に備える第4アンテナコイル321の起電力とを比較する。ここでは、前記と同様に、起電力の大きさを比較する。図13Cに示した例で説明すると、ICカード110の裏面に備えるアンテナコイルの起電力が大きいと判断することになる。
【0071】
この結果、起電力比較部313は、第4アンテナコイル321の起電力が最も大きいと判断することになる。したがって、方向取得部707は、第4アンテナコイル321を備える側(裏面右側)からリーダライタ106にかざされていることを検出することになる。
【0072】
このように、本発明に係るICカードによれば、表面と裏面とにそれぞれ2つのアンテナコイルを備えているので、リーダライタにかざされている当該ICカードのアクセス面種別および水平アクセス方向種別を検出することができる。
【0073】
なお、ここでは、ICカード110の左右の起電力比較を行なった後に、表裏の起電力比較を行なう例を示したが、順序を逆にしてもよい。すなわち、ICカード110の表裏の起電力比較を行なった後に、左右の起電力比較を行なうようにしてもよい。
【0074】
ところで、図5では、ICカードを表面501、裏面502、裏面502の順序でリーダライタ106にかざす場合について説明した。この場合は、表面501から裏面502に入れ替わったことと、裏面502が連続して2回かざされたことを検出する必要がある。
【0075】
図14Aは、表面501から裏面502に入れ替えた際、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力を示す図である。本図では、表面501に備える第1アンテナコイル310の起電力の推移を波形601で示し、裏面502に備える第2アンテナコイル320の起電力の推移を波形602で示している。
【0076】
まず、ユーザは、裏面502を上にしてICカードをリーダライタ106にかざす。このようにICカードをかざし始めた時点t11からかざし終わった時点t12までの起電力波形は、既に説明した通りである。すなわち、リーダライタ106に近い第1アンテナコイル310(波形601)の方に、第2アンテナコイル320(波形602)よりも大きな起電力が発生する。
【0077】
次に、ユーザは、ICカードを返して裏面502と表面501を入れ替える。このようにICカードを返し始めた時点t13から、両アンテナコイルの起電力は降下し始める。そして、ICカードがリーダライタ106に対して垂直になった時点t14で両アンテナコイルの起電力は所定の電圧vより小さい値となる。さらに、ICカードを返し終わった時点t15では、リーダライタ106に近い第2アンテナコイル320(波形602)の方に、第1アンテナコイル310(波形601)よりも大きな起電力が発生する。
【0078】
図14Bは、裏面502が連続して2回かざされた際、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力を示す図である。本図でも、表面501に備える第1アンテナコイル310の起電力の推移を波形601で示し、裏面502に備える第2アンテナコイル320の起電力の推移を波形602で示している。
【0079】
ここでは、裏面502がリーダライタ106にかざされている状態から説明を始める。すなわち、ユーザは、裏面502が下を向いているICカードをリーダライタ106の通信エリアから外す。このようにICカードをリーダライタ106から遠ざけ始めた時点t16から、両アンテナコイルの起電力は降下し始める。そして、ICカードがリーダライタ106の通信エリアから外れた時点t17で両アンテナコイルの起電力は0となる。
【0080】
次に、ユーザは、表面501を上にしてICカードをリーダライタ106にかざす。このようにICカードをリーダライタ106にかざし始めた時点t18から、両アンテナコイルの起電力は上昇し始める。そして、ICカードをリーダライタ106にかざし終わった時点t19では、もとの通り、リーダライタ106に近い第2アンテナコイル320(波形602)の方に、第1アンテナコイル310(波形601)よりも大きな起電力が発生する。
【0081】
このように、表面501から裏面502に入れ替わった場合や、裏面502が連続して2回かざされた場合は、その途中で両アンテナコイルの起電力が所定の電圧vを下回る瞬間がある。このように所定の電圧vを下回ったことが検出されたら、図11Cを用いて説明した手法によって、両アンテナコイルの起電力を比較する。このようにすれば、表面501から裏面502に入れ替わったことと、裏面502が連続して2回かざされたことを検出することができる。
【0082】
図15は、本発明に係るICカードのソフトウェア構成を示す図である。基本的なソフトウェア構成は、一般的なICカード(図3)と変わらないが、時刻取得部701と、履歴記憶部702と、条件判定部703と、方向取得部707とを備える点が一般的なICカードと異なる。
【0083】
方向取得部707は、当該ICカードのリーダライタに対するアクセス方向種別(アクセス面種別および水平アクセス方向種別)を取得する。このようにアクセス面種別および水平アクセス方向種別を取得するための構成としては、前記したように、複数のアンテナコイルと起電力測定部と起電力比較部とを備える構成を採用することができる。もちろん、別の技術によって、ICカードのアクセス面種別および水平アクセス方向種別を取得するようにしてもかまわない。
【0084】
時刻取得部701は、当該ICカード110がリーダライタ106にアクセスした時刻を取得する。このアクセス時刻は、外部機器700であるECサーバ100やリーダライタ106からコマンドによって取得したり、ポータブルデバイス107本体から取得したりすることができる。
【0085】
履歴記憶部702は、EEPROM304などの不揮発性メモリ内にある履歴管理テーブル704にアクセス履歴を記憶させる。アクセス履歴には、アプリケーションプログラムID(サービスID)と、方向取得部707によって取得されたアクセス方向種別(アクセス面種別、水平アクセス方向)と、時刻取得部701によって取得されたアクセス時刻とが含まれる。
【0086】
条件判定部703は、アクセス履歴がアクセス条件を満たすか否かを判定する。具体的には、方向取得部707によって取得されたアクセス方向種別と、条件管理部708に記憶されているアクセス条件に含まれるアクセス方向種別とを比較し、一致するか否かを判定する。アクセス条件は、当該ICカード110がリーダライタ106にアクセスする際の条件を示す情報であり、後述する条件管理テーブル705に記憶されている。
【0087】
図16は、履歴管理テーブルの内部構成を示す図である。履歴管理テーブル704は、サービス種別810と、そのサービスに対応するアプリケーションプログラムID820と、アクセス状態830とを記憶している。アクセス状態830には、アクセス時刻831とアクセス方向832とが含まれる。
【0088】
ここでは、E_SRV1を実行するにあたり、ユーザが2度アクセスを試みた場合を例示している。すなわち、1番目のレコード目には、1度目のアクセス履歴840が記憶され、2番目のレコードには、2度目のアクセス履歴841が記憶されている。
【0089】
1度目のアクセス履歴840について説明する。サービス種別810は、“E_SRV1”である。アプリケーションプログラムID820は、E_SRV1に対応するアプリケーションプログラムIDを示す“0001h”である。アクセス時刻831は、2004年3月3日12時24分55秒を示す“07D5h、03h、03h、0Ch、18h、37h”である。アクセス方向832は、ICカードの表面上側を示す“88h”である。
【0090】
2番目のアクセス履歴841について説明する。1度目のアクセス履歴840と同様、サービス種別810は“E_SRV1”であり、アプリケーションプログラムID820は“0001h”である。アクセス時刻831は、2004年3月3日12時24分56秒を示す“07D5h、03h、03h、0Ch、18h、38h”である。アクセス方向832は、ICカードの裏面下側を示す“94h”である。
【0091】
なお、ここでは、アクセス条件を記憶する条件管理テーブル705と、この条件管理テーブル705を管理する条件管理部708とを備えることとしているが、両者は一体であってもよい。すなわち、条件管理部708がアクセス条件を記憶かつ管理する構成としても、同様の効果を得ることができる。
【0092】
図17は、アクセス方向の値が示す意味を詳細に示す図である。アクセス方向832は1バイトの数値で表される。以下、各ビットの値が示す意味について説明する。
【0093】
まず、上位2ビットb8およびb7は、表裏確認フラグ1100を設定するためのビットである。すなわち、最上位ビットb8が1である場合は、ICカードの表裏面を区別して扱う。ICカードの表裏面はビットb5の値で判定することができる。一方、最上位ビットb8が0である場合は、ICカードの表裏面を区別しない。この場合は、例えば、最初にアクセスした面を面1として扱い、次にアクセスした面を面2として扱う。ビットb7はリザーブであり、デフォルトでは0が設定される。
【0094】
次の2ビット1101は、ICカードの表面か裏面かを示すためのビットである。すなわち、ビットb5が0である場合は、ICカードが表面であることを示し、1である場合は、ICカードが裏面であることを示す。ビットb6はリザーブであり、デフォルトでは0が設定される。
【0095】
さらに、下位4ビットは、当該ICカードがリーダライタにアクセスした方向を示すためのビットである。すなわち、上位のビットb4(1102)が1である場合は、ICカードの上側からアクセスしたことを示す。次のビットb3(1103)が1である場合は、ICカードの下側からアクセスしたことを示す。次のビットb2(1104)が1である場合は、ICカードの左側からアクセスしたことを示す。次のビットb1(1105)が1である場合は、ICカードの右側からアクセスしたことを示す。
【0096】
図18は、条件管理テーブルの内部構成を示す図である。ここでは、複数のサービスE_SRV1〜E_SRVnがICカード内に存在する場面を例示している。
【0097】
条件管理テーブル705は、サービス種別1200と、そのサービスに対応するアプリケーションプログラムID1201と、そのサービスを実行するためのアクセス条件1202とを記憶している。アクセス条件1202には、比較回数1203と、制限時間1204と、時系列パターン1205とが含まれる。
【0098】
比較回数1203とは、アクセス方向種別の比較回数をいう。制限時間とは、当該ICカードがリーダライタに対してアクセスする際の制限時間をいう。時系列パターン1205とは、アクセス方向種別の時系列パターンをいい、その値が示す意味は、履歴管理テーブル704におけるアクセス方向832の値が示す意味と同じである。
【0099】
更に詳しく説明するために、サービス種別E_SRV1のアクセス条件1210を例示して説明する。アプリケーションプログラムIDは、E_SRV1に対応するアプリケーションプログラムIDを示す“0001h”である。比較回数1203は、2回を示す“02h”である。制限時間1204は、4秒を示す“04h”である。時系列パターン1205は、1回目のアクセス方向が表面を示し、2回目のアクセス方向が裏面下側を示す“80h、94h”である。すなわち、表面、裏面下側の順序で4秒以内にICカードをリーダライタにかざすと、ID“0001h”のアプリケーションプログラムが実行されて、E_SRV1を享受することができる。
【0100】
図19および図20は、本実施の形態1におけるサービス実行手順のフローチャートである。以下、図19および図20を用いて、本実施の形態1におけるICカードの動作を詳細に説明する。
【0101】
まず、ICカードをリーダライタにかざすことによって、ICカードをリーダライタにアクセスさせる(ステップS900)。これによって、条件判定部703は、リーダライタからコマンドを受信すると、ユーザが意思確認作業を実行中であるか否かを判定する(ステップS901)。
【0102】
ここで、「ユーザが意思確認作業を実行中であるか否か」とは、当該アクセスが最初のアクセスであるか否か、より具体的には、意思確認フラグ706(図15参照)がOFFであるか否かという意味である。さらに、最初のアクセスとは、所定のアプリケーションプログラムを実行するに必要な一連のアクセスのうちの最初のアクセスをいう。
【0103】
これによって、意思確認フラグ706がOFFである場合(ステップS901のN)、条件判定部703は、当該アクセスは最初のアクセスであるとみなし、意思確認フラグ706をONにする(ステップS902)。また、条件管理部708は、条件管理テーブル705から1つのAPL_ID1201を選択する(ステップS903)。
【0104】
ここで選択される1つのAPL_ID1201は、ユーザが実行しようとしているアプリケーションプログラムである。この選択を実現する手法は特に限定されるものではないが、例えば、所望のサービスを実行したい旨をユーザが予めリーダライタに対して指定するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザによって指定されたサービス種別に対応するAPL_ID1201を選択することができる。リーダライタが単一のサービスにしか対応していない場合は、このリーダライタに対して所望のサービスを実行したい旨を指定する必要がないのはいうまでもない。
【0105】
一方、意思確認フラグがONである場合(ステップS901のY)、条件判定部703は、当該アクセスは最初のアクセスでなく、一連のアクセスの途中であるとみなす。この場合は、すでに1つのAPL_ID1201が選択されている状態であるため、特別な処理は行わない。
【0106】
次に、時刻取得部701は、リーダライタからのコマンドやポータブルデバイスなどからアクセス時刻を取得する(ステップS904)。また、方向取得部707は、起電力比較部313などからICカードのアクセス方向を取得する(ステップS905)。これによって、履歴記憶部702は、このアクセス時刻とアクセス方向の組をアクセス履歴として履歴管理テーブル704に記憶させる(ステップS906)。
【0107】
前記のように1つのAPL_ID1201を選択した条件管理部708は、このAPL_ID1201に対応するアクセス条件を条件管理テーブル705から読み出して条件判定部703に渡す。
【0108】
これによって、条件判定部703は、アクセス履歴を履歴管理テーブル704から読み出す。そして、当該ICカードがリーダライタにアクセスする回数が比較回数に達したか否かを判定する(ステップS907)。すなわち、アクセス履歴を元に現時点のアクセス回数を判定して、このアクセス回数と、アクセス条件に含まれる比較回数1203とが一致するか否かを判定する。
【0109】
これによって、条件判定部703は、比較回数に達していない場合(ステップS907のN)には、ステップS900からステップS907の動作を繰り返す。一方、比較回数に達している場合(ステップS907のY)には、アクセス方向がアクセス条件を満たすか否かを判定する(ステップS908)。すなわち、アクセス履歴に含まれるアクセス方向832と、アクセス条件に含まれる時系列パターン1205とを比較し、両者が一致するか否かを判定する。
【0110】
これによって、条件判定部703は、アクセス方向がアクセス条件を満たす場合(ステップS908のY)には、サービスを実行して(ステップS910)、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS911)。一方、アクセス方向がアクセス条件を満たさない場合(ステップS908のN)には、サービスを実行せずに、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS911)。
【0111】
なお、ステップS907からステップS900の間には、制限時間に達しているか否かを判定するステップを介在させるのが好ましい。すなわち、条件判定部703は、最初のアクセスから比較回数1203分の比較が完了するまでの時間が制限時間に達していない場合(ステップS909のN)には、ユーザに意思確認作業を続行させる。一方、制限時間に達している場合(ステップS909のY)には、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS911)。このようにすれば、必要以上に意思確認作業に時間のかかるユーザに対してサービスが実行されるという不具合を回避することができる。
【0112】
以下、電子マネーによる支払いを行う場合を例示して、本発明に係るICカードの構成を更に詳しく説明する。ここでは、ECサービスであるE_SRVi(図18参照)を実行する場合を想定して説明する。
【0113】
まず、ユーザは、電子マネーによって購入したい商品を選択した後、支払機のリーダライタにICカードの裏面を右側からかざす。購入したい商品を選択する手法は、本発明とは直接関係しないので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0114】
これによって、ICカードは、意思確認フラグ706をチェックすることによって、当該アクセスが最初のアクセスであるか否かを判定する(S901)。ここでは、支払い処理において最初のアクセスであるため、意思確認フラグ706をONにする(S902)。そして、サービス種別E_SRViに対応するAPL_ID(0120h)を選択する(S903)。
【0115】
次に、ICカードは、アクセス時刻 “2004年4月4日17時23分41秒”を取得するとともに(S904)、アクセス方向 “裏面右側”を取得する(S905)。そして、このアクセス時刻“07D5h、04h、04h、0Fh、17h、29h”とアクセス方向“91h”とを履歴管理テーブル704に記憶させる(S906)。
【0116】
ここで、現時点でのアクセス回数は1回であるのに対して、条件管理テーブル705に記憶されている比較回数1203は“03h(3回)”である。すなわち、アクセス回数が比較回数1203に達していないため、ここではサービスを実行せずに待ち状態となる。
【0117】
次に、ユーザは、ICカードの表面を右側からかざす。これによって、ICカードは、意思確認フラグ706をチェックする。この場合は、すでに意思確認フラグ706がONになっていることを確認することになる。そして、2回目のアクセス時刻である“2004年4月4日17時23分45秒(07D5h、04h、04h、0Fh、17h、2Dh)”と、アクセス方向である“表面右側(81h)”とを取得して(S904、5)、これらを履歴管理テーブル704に記憶させる(S906)。この時点においても、アクセス回数は比較回数1203に達していないため、サービスを実行せずに待ち状態となる。
【0118】
さらに、ユーザは、ICカードの表面を左側からかざす。これによって、ICカードは、意思確認フラグ706をチェックする。この場合も、すでに意思確認フラグ706がONになっていることを確認することになる。そして、3回目のアクセス時刻である“2004年4月4日17時23分51秒(07D5h、04h、04h、0Fh、17h、33h)”と、アクセス方向である“表面左側(82h)”とを取得して(S904、5)、これらを履歴管理テーブル704に記憶させる(S906)。
【0119】
ここで、アクセス回数が比較回数1203の3回に達したため、アクセス方向がアクセス条件を満たすか否かを判定する(S908)。すなわち、条件管理テーブル705における時系列パターン1205は、図18に示すように、“11h、01h、02h”である。この“11h、01h、02h”は、図17に示すように、“面2右側、面1右側、面1左側”を意味している。
【0120】
ここで、実際のアクセス方向は、前記したように、裏面右側、表面右側、表面左側である。そこで、表面を面1、裏面を面2とすると、裏面右側は面2右側に、表面右側は面1右側に、表面左側は面1左側になる。従って、実際のアクセス方向はアクセス条件を満たしていることになる。
【0121】
また、最初のアクセスから3回分の比較が完了するまでの時間が制限時間に達しているか否かについても判定する(S909)。ここでは、条件管理テーブル705における制限時間1204は“15秒(0Fh)”である。一方、 1回目のアクセス時刻は“2004年4月4日17時23分41秒”である。また、3回分の比較が完了した時刻は “2004年4月4日17時23分52秒”であると仮定する。そうすると、最初のアクセスから3回分の比較が完了するまでの時間(11秒)は、制限時間(15秒)に達していない。
【0122】
このように、全ての条件を満たしている場合は、電子マネーによる支払い処理(S910)が行われる。支払い処理が完了すると、意思確認フラグがOFFになり(S911)、全体の処理が終了する。
【0123】
以上のように、本実施の形態1によれば、所定の条件でICカードをリーダライタにかざさなければサービスが実行されない。すなわち、ユーザの意思確認を確実に行ったうえでアプリケーションプログラムを実行することが可能となる。
【0124】
また、ユーザにとっては、所定の条件でICカードをリーダライタにかざすという簡便な操作でアプリケーションプログラムを実行することができるというメリットがある。すなわち、液晶部の表示内容を確認しながらボタン等を操作するという煩わしさがない。もっとも、ボタンや液晶部をICカードに備えた場合は、ハードウェア構成が複雑になるので、破損しやすくなるうえ、ICカードの価格も高くなるという問題もある。
【0125】
なお、ここでは、“表面右側”など、アクセス面種別(表裏面)と1つの水平アクセス方向種別(上下方向または左右方向)とを組み合わせたアクセス方向を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、“表面上左側(8Ah)”など、アクセス面種別(表裏面)と2つの水平アクセス方向種別(上下方向および左右方向)とを組み合わせたアクセス方向を採用してもかまわない。このような構成を採用すれば、アクセス方向がより複雑化されることになり、ユーザの意思確認をより確実に行うことができる。
【0126】
また、ここでは、条件判定部703がサービスを実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、条件判定部703は判定処理のみ行うこととし、サービスを実行するための構成部(実行部)を別に備えてもよい。このような構成によっても、条件判定部703によって判定された結果が実行部に通知されるようにすれば、同様の効果を得ることができる。
【0127】
また、ここでは、条件管理テーブル705が予めアクセス条件を記憶していることを前提に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、図21に示すように、外部機器からアクセス条件を取得して、このアクセス条件を条件管理テーブル705に記憶させる条件取得部709を備えるようにしてもよい。このようにすれば、アクセス条件を変更する必要が生じたときに、即座に対応することができる。
【0128】
(実施の形態2)
前記実施の形態1によれば、ユーザがアプリケーションプログラムを実行しようとした時に、その実行意思の確認を確実に行うことができる。すなわち、前記実施の形態1では、ユーザが実行しようとしているアプリケーションプログラムをICカード側で予め特定することができる場合を想定していた。
【0129】
以下、本実施の形態2を前記実施の形態1と異なる点のみ説明する。
ここでは、図4に示したように、ECサーバ100にi個のE_APL101〜10iが存在する。また、ICカード110には、図3に示したように、i個のC_E_APL401、402、・・・、40iが存在する。さらに、リーダライタ106は、これらi個のサービスに対応していると仮定する。すなわち、ここでは、i個のサービスのうち所望のサービスを選択して実行することができる環境を想定している。
【0130】
図22および図23は、本実施の形態2におけるサービス実行手順のフローチャートである。以下、図22および図23を用いて、本実施の形態2におけるICカードの動作を詳細に説明する。
【0131】
まず、ICカードをリーダライタにかざすことによって、ICカードをリーダライタにアクセスさせる(ステップS100)。これによって、条件判定部703は、リーダライタからコマンドを受信すると、ユーザが意思確認作業を実行中であるか否かを判定する(ステップS101)。
【0132】
これによって、意思確認フラグ706がOFFである場合(ステップS101のN)、条件判定部703は、当該アクセスは最初のアクセスであるとみなし、意思確認フラグ706をONにする(ステップS102)。ここで、前記実施の形態1では、条件管理テーブル705から1つのAPL_ID1201を選択すると説明した。それに対して、本実施の形態2では、この時点では前記i個のサービスのいずれを実行するかは不明であるため、特別な処理は行わない。
【0133】
一方、意思確認フラグがONである場合(ステップS101のY)、条件判定部703は、当該アクセスは最初のアクセスでなく、一連のアクセスの途中であるとみなす。そこで、時刻取得部701は、リーダライタからのコマンドやポータブルデバイスなどからアクセス時刻を取得する(ステップS104)。また、方向取得部707は、起電力比較部313などからICカードのアクセス方向を取得する(ステップS105)。これによって、履歴記憶部702は、このアクセス時刻とアクセス方向の組をアクセス履歴として履歴管理テーブル704に記憶させる(ステップS106)。
【0134】
ここで、条件管理部708は、前記i個のサービス全てに対応するアクセス条件を条件管理テーブル705から読み出して条件判定部703に渡す。これによって、条件判定部703は、アクセス履歴を履歴管理テーブル704から読み出す。そして、当該ICカードがリーダライタにアクセスする回数が比較回数に達したか否かを判定する(ステップS107)。すなわち、アクセス履歴を元に現時点のアクセス回数を判定する。そして、このアクセス回数と一致する比較回数1203が、前記i個のサービス全てに対応するアクセス条件の中に存在するか否かを判定する。
【0135】
これによって、条件判定部703は、現時点のアクセス回数と一致する比較回数1203が存在しない場合(ステップS107のN)には、ステップS100からステップS107の動作を繰り返す。一方、現時点のアクセス回数と一致する比較回数1203が存在する場合(ステップS107のY)には、この比較回数1203と同一のレコードに含まれる時系列パターン1205を特定する。そして、この時系列パターン1205と、アクセス履歴に含まれるアクセス方向832とを比較し、両者が一致するか否かを判定する(ステップS108)。
【0136】
これによって、条件判定部703は、アクセス方向がアクセス条件を満たす場合(ステップS108のY)には、当該アクセス条件に対応するAPL_ID820を選択する(ステップS103)。そして、このAPL_ID820に対応するサービスを実行して(ステップS110)、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS111)。
【0137】
一方、条件判定部703は、アクセス方向がアクセス条件を満たさない場合(ステップS108のN)には、制限時間に達しているか否かを判定する(ステップS109)。そして、制限時間に達していない場合(ステップS109のN)には、ユーザに意思確認作業を続行させ、制限時間に達している場合(ステップS109のY)には、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS111)。
【0138】
以上のように、本実施の形態2によれば、所定の条件でICカードをリーダライタにかざすことによって、複数のサービスの中から所望のサービスを選択することができる。言い換えれば、所定の条件でICカードをリーダライタにかざさなければ、サービスが選択されない。すなわち、ユーザがサービスを選択する意思の確認を確実に行うことが可能である。
【0139】
なお、ここでは、比較回数1203の一致を判定した後に時系列パターン1205の一致を判定することとしているが、この判定の順序は限定されるものではない。すなわち、アクセスの度、前記i個のサービスに対応する時系列パターン1205と実際のアクセス方向832とを比較するようにしてもよい。そして、その比較結果が比較回数1203に至るまで一致し続けるサービスを実行するようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0140】
また、本発明の用途は様々あり、ユーザの意思確認だけに限定されるものではない。例えば、ゲーム機に本発明を適用してもよいし、あるいは、ユーザを認証するために本発明を利用してもよい。もちろん、ユーザを認証するために本発明を利用する場合は、ユーザ本人しか知らないアクセス条件をICカードに設定しておくことになる。
【0141】
(実施の形態3)
前記実施の形態1や2では、アプリケーションプログラムを実行する意思確認処理の全部をICカード側で行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、この意思確認処理の一部を外部機器が行うようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0142】
以下、本実施の形態3を前記実施の形態1と異なる点のみ説明する。
図24は、本実施の形態3におけるICカードとECサーバのソフトウェア構成を示す図である。このICカード110とサーバ100とは、図4に示したように、ネットワーク104とリーダライタ106とを介して接続されているが、ここでは図示を省略している。
【0143】
ICカード110は、時刻取得部701と、方向取得部707と、送受信部710と、実行部711とを備える。時刻取得部701と方向取得部707とは、前記実施の形態1において説明した通りである。送受信部710は、リーダライタ106等を介してECサーバ100とデータを送受信する。実行部711は、アプリケーションプログラムを実行する。前記実施の形態1では、条件判定部703がアプリケーションプログラムを実行することとしていたが、別途、このような実行部711を備えてもよい点は既に説明した通りである。
【0144】
ECサーバ100は、履歴記憶部702と、条件判定部703と、履歴管理テーブル704と、条件管理テーブル705と、意思確認フラグ706と、条件管理部708と、送受信部712とを備える。履歴記憶部702と、条件判定部703と、履歴管理テーブル704と、条件管理テーブル705と、意思確認フラグ706と、条件管理部708の機能は、前記実施の形態1におけるICカードの各部の機能と同じである。送受信部712は、リーダライタ106等を介してICカード110とデータを送受信する。
【0145】
図25および図26は、本実施の形態3におけるサービス実行手順のフローチャートである。以下、図25および図26を用いて、本実施の形態3におけるICカードとECサーバの動作を詳細に説明する。
【0146】
まず、ICカードをリーダライタにかざすことによって、ICカードをリーダライタにアクセスさせる(ステップS120)。これによって、ICカードにおいて処理が実行される。すなわち、時刻取得部701は、リーダライタからのコマンドやポータブルデバイスなどからアクセス時刻を取得する(ステップS121)。また、方向取得部707は、起電力比較部313などからICカードのアクセス方向を取得する(ステップS122)。これによって、送受信部710は、このアクセス時刻とアクセス方向の組をアクセス履歴としてECサーバに送信する(ステップS123)。
【0147】
ECサーバの送受信部712は、このように送信されたアクセス履歴を受信する(ステップS124)。そこで、条件判定部703は、ユーザが意思確認作業を実行中であるか否かを判定する(ステップS125)。
【0148】
これによって、意思確認フラグ706がOFFである場合(ステップS125のN)、条件判定部703は、当該アクセスは最初のアクセスであるとみなし、意思確認フラグ706をONにする(ステップS126)。また、条件管理部708は、条件管理テーブル705から1つのAPL_ID1201を選択する(ステップS127)。
【0149】
一方、意思確認フラグがONである場合(ステップS125のY)、条件判定部703は、当該アクセスは最初のアクセスでなく、一連のアクセスの途中であるとみなす。そこで、履歴記憶部702は、アクセス履歴を履歴管理テーブル704に記憶させる(ステップS128)。
【0150】
前記のように1つのAPL_ID1201を選択した条件管理部708は、このAPL_ID1201に対応するアクセス条件を条件管理テーブル705から読み出して条件判定部703に渡す。
【0151】
これによって、条件判定部703は、アクセス履歴を履歴管理テーブル704から読み出す。そして、ICカードがリーダライタにアクセスする回数が比較回数に達したか否かを判定する(ステップS129)。すなわち、アクセス履歴を元に現時点のアクセス回数を判定して、このアクセス回数と、アクセス条件に含まれる比較回数1203とが一致するか否かを判定する。
【0152】
これによって、条件判定部703は、比較回数に達していない場合(ステップS129のN)には、制限時間に達しているか否かを判定する(ステップS130)。そして、制限時間に達していない場合(ステップS130のN)には、ユーザに意思確認作業を続行させ、制限時間に達している場合(ステップS130のY)には、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS133)。
【0153】
一方、条件判定部703は、比較回数に達している場合(ステップS129のY)には、アクセス方向がアクセス条件を満たすか否かを判定する(ステップS131)。すなわち、アクセス履歴に含まれるアクセス方向832と、アクセス条件に含まれる時系列パターン1205とを比較し、両者が一致するか否かを判定する。
【0154】
これによって、条件判定部703は、アクセス方向がアクセス条件を満たす場合(ステップS131のY)には、サービスを実行する旨を送受信部(通知部)712を介してICカードに通知して(ステップS132)、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS133)。一方、アクセス方向がアクセス条件を満たさない場合(ステップS131のN)には、前記の通知はせずに、意思確認フラグ706をOFFにする(ステップS133)。
【0155】
以上のように、本実施の形態3では、ICカードに備えていた構成部の一部をECサーバに備えるようにした。このようにすれば、アプリケーションプログラムを実行するまでの意思確認処理の一部をECサーバ側で行うことができる。
【0156】
ここで説明した動作は単なる例示であることはいうまでもない。例えば、ICカードがリーダライタにアクセスする度、そのアクセス履歴をECサーバに送信することとしているが、複数のアクセス履歴を一括してECサーバに送信するようにしてもかまわない。
【0157】
なお、ステップS124では、ECサーバの送受信部712はICカードからアクセス履歴を受信すると説明した。このアクセス履歴には前記の通りアクセス方向が含まれるので、ECサーバの送受信部712は、このステップS124では方向取得部として機能していることになる。
【0158】
また、ここでは、ECサーバが意思確認処理の一部を行う構成を例示したが、サーバの種別がECサーバに限定されないのはいうまでもない。ECサーバが意思確認処理のどの範囲を行うかという点についても限定されるものではない。もちろん、ECサーバやICカードに加え、これらとは別の装置が意思確認処理の一部を行うようにしてもかまわない。
【0159】
(実施の形態の第1の補足事項)
以上、実施形態を説明した。尚、これまでの説明における、方向取得部、時刻取得部、履歴記憶部、条件判定部、条件管理部などの各機能は、典型的には、CPUがコンピュータプログラムを実行することによって実現される。そのプログラムは、ICカード内のROMに予め記憶されている場合と、外部よりダウンロードされてICカード内の不揮発性メモリに記憶されるものとがある。
【0160】
(実施の形態の第2の補足事項)
また、前述の機能は、集積回路であるLSIによって実現される場合がある。これら機能は、個別に1チップ化されてもよいし、幾つかまとまった単位で1チップ化されてもよい。
【0161】
図27は、本発明に係るICカードの特徴的な構成部を集積回路化した場合の一例を示す図である。LSI1000は、集積回路の一例であり、破線で囲まれている範囲に含まれる構成部の機能を実現する。集積回路は、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0162】
また、集積回路は、LSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサによって実現されてもよい。LSI製作後にプログラムを格納することが可能なField Programmable Gate Array(FPGA)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成することが可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーが利用されてもよい。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術(バイオ技術、有機化学技術等)が登場すれば、当然その技術を用いて前記機能の集積化が行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明に係る半導体メモリカードは、ユーザの意思確認を確実に行ったうえでアプリケーションプログラムを実行することが必要な非接触ICメモリカード等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0164】
これら、並びに、発明の他の目的、効果、及び特徴は、発明の特定の実施の形態を説明する添付図面とともに行なう説明から明らかである。
【図1】一般的なICカードの利用形態を示す図である。
【図2】一般的なICカードのハードウェア構成を示す図である。
【図3】一般的なICカードのソフトウェア構成を示す図である。
【図4】本発明に係るICカードの使用環境を示す図である。
【図5A】本発明に係るICカードの使用形態を示す図である。
【図5B】本発明に係るICカードの使用形態を示す図である。
【図5C】本発明に係るICカードの使用形態を示す図である。
【図5D】本発明に係るICカードの使用形態を示す図である。
【図5E】本発明に係るICカードの使用形態を示す図である。
【図6A】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図6B】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図6C】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図6D】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図7A】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図7B】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図7C】本発明に係るICカードの別の使用形態を示す図である。
【図8】本発明に係るICカードのハードウェア構成を示す図である。
【図9】本発明に係るICカードの機能ブロック図である。
【図10A】複数のアンテナコイルを備えるICカードの表面側の概観を示す平面図である。
【図10B】同ICカードの裏面側の概観を示す平面図である。
【図10C】同ICカードの一部の断面斜視図である。
【図11A】本発明に係るICカードの操作方法を説明するための図である。
【図11B】ICカードからリーダライタまでの距離と、それぞれのアンテナコイルにおいて発生する起電力との関係を示す図である。
【図11C】リーダライタをICカードが通過する時間と、それぞれのアンテナコイルにおいて発生する起電力との関係を示す図である。
【図12A】本発明に係るICカードの別の操作方法を説明するための図である。
【図12B】ICカードがリーダライタを通過する時間と、それぞれのアンテナコイルにおいて発生する起電力との関係を示す図である。
【図12C】ICカードがリーダライタを通過する時間と、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力の最初の極大値との関係を示す図である。
【図13A】本発明に係る別のICカードの表面側の概観を示す平面図である。
【図13B】同ICカードの裏面側の概観を示す平面図である。
【図13C】同ICカードの操作方法を説明するための図である。
【図14A】表面から裏面に入れ替えた際、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力を示す図である。
【図14B】裏面が連続して2回かざされた際、それぞれのアンテナコイルが発生させる起電力を示す図である。
【図15】本発明に係るICカードのソフトウェア構成を示す図である。
【図16】履歴管理テーブルの内部構成を示す図である。
【図17】アクセス方向の値が示す意味を詳細に示す図である。
【図18】条件管理テーブルの内部構成を示す図である。
【図19】本実施の形態1におけるサービス実行手順のフローチャートである。
【図20】本実施の形態1におけるサービス実行手順のフローチャートである。
【図21】本発明に係る別のICカードのソフトウェア構成を示す図である。
【図22】本実施の形態2におけるサービス実行手順のフローチャートである。
【図23】本実施の形態2におけるサービス実行手順のフローチャートである。
【図24】本実施の形態3におけるICカードとECサーバのソフトウェア構成を示す図である。
【図25】本実施の形態3におけるサービス実行手順のフローチャートである。
【図26】本実施の形態3におけるサービス実行手順のフローチャートである。
【図27】本発明に係るICカードの特徴的な構成部を集積回路化した場合の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタと非接触通信を行う半導体メモリカードであって、
当該半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得部と、
2以上の第2の前記アクセス方向種別を含むアクセス条件を予め記憶かつ管理する条件管理部と、
前記方向取得部により取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、前記条件管理部に記憶されている前記アクセス条件に含まれる2以上の前記第2のアクセス方向種別とを比較し、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致するか否かを判定する条件判定部と、
前記条件判定部により、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行部と
を備える半導体メモリカード。
【請求項2】
前記アクセス条件は、前記第2のアクセス方向種別の時系列パターンを含み、
前記条件判定部は、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別を時系列に比較する
請求項1に記載の半導体メモリカード。
【請求項3】
前記アクセス方向種別は、当該半導体メモリカードのアクセス面種別である
請求項1に記載の半導体メモリカード。
【請求項4】
前記アクセス方向種別は、当該半導体メモリカードにおける同一面上の水平アクセス方向種別である
請求項1に記載の半導体メモリカード。
【請求項5】
前記方向取得部は、当該半導体メモリカードに対して前記リーダライタから電磁波が供給されることにより発生する電力が所定の電圧を超えた時点から所定の時間が経過した時、前記第1のアクセス方向種別を取得する
請求項1に記載の半導体メモリカード。
【請求項6】
前記アクセス条件は、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別の比較回数を含み、
前記条件判定部は、前記回数分、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別を比較する
請求項1に記載の半導体メモリカード。
【請求項7】
前記アクセス条件は、当該半導体メモリカードが前記リーダライタに対してアクセスする際の制限時間を含み、
前記条件判定部は、最初のアクセスから前記回数分の比較が完了するまでの時間が前記制限時間以内であるか否かを判定し、
前記実行部は、前記条件判定部により、前記制限時間以内であると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する
請求項6に記載の半導体メモリカード。
【請求項8】
前記半導体メモリカードは、さらに、
前記アクセス条件を外部機器より取得する条件取得部を備え、
前記条件管理部は、前記アクセス条件を記憶かつ管理する
請求項1に記載の半導体メモリカード。
【請求項9】
半導体メモリカードと非接触通信を行うリーダライタにネットワークを介して接続されたサーバであって、
前記半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得部と、
2以上の第2の前記アクセス方向種別を含むアクセス条件を予め記憶かつ管理する条件管理部と、
前記方向取得部により取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、前記条件管理部に記憶されている前記アクセス条件に含まれる2以上の前記第2のアクセス方向種別とを比較し、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致するか否かを判定する条件判定部と、
前記条件判定部により判定された結果を前記半導体メモリカードに通知する通知部と
を備えるサーバ。
【請求項10】
リーダライタと非接触通信を行う半導体メモリカードと、前記リーダライタにネットワークを介して接続されたサーバとを備えたシステムによって、サービスを提供する方法であって、
前記半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得ステップと、
前記方向取得ステップにおいて取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、予め記憶部に記憶されている2以上の第2の前記アクセス方向種別とを比較し、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致するか否かを判定する条件判定ステップと、
前記条件判定ステップにおいて、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行ステップと
を含むサービス提供方法。
【請求項11】
リーダライタと非接触通信を行うためのプログラムであって、
当該半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得ステップと、
前記方向取得ステップにおいて取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、予め記憶部に記憶されている2以上の第2の前記アクセス方向種別とを比較し、一致するか否かを判定する条件判定ステップと、
前記条件判定ステップにおいて、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
リーダライタと非接触通信を行うためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
当該半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得ステップと、
前記方向取得ステップにおいて取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、予め記憶部に記憶されている2以上の第2の前記アクセス方向種別とを比較し、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致するか否かを判定する条件判定ステップと、
前記条件判定ステップにおいて、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。
【請求項13】
リーダライタと非接触通信を行う半導体メモリカードに用いられる集積回路であって、
前記半導体メモリカードの前記リーダライタに対する第1のアクセス方向種別を取得する方向取得部と、
2以上の第2の前記アクセス方向種別を含むアクセス条件を予め記憶かつ管理する条件管理部と、
前記方向取得部により取得された2以上の前記第1のアクセス方向種別と、前記条件管理部に記憶されている前記アクセス条件に含まれる2以上の前記第2のアクセス方向種別とを比較し、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致するか否かを判定する条件判定部と、
前記条件判定部により、前記第1のアクセス方向種別と前記第2のアクセス方向種別が一致すると判定された場合、所定のアプリケーションプログラムを実行する実行部と
を備える集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2008−500602(P2008−500602A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519562(P2006−519562)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/JP2005/009493
【国際公開番号】WO2005/116918
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】