説明

半導体受光素子および半導体受光素子の製造方法

【課題】耐久性が高く、かつ、高速応答性能を有する半導体受光素子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体受光素子1は、入力部121と、第一出力部122と、第二出力部123とを含み、入力部121から入力した光を偏光分離せずに、入射光よりも強度の低い光に分岐して、第一出力部122、第二出力部123から出力する光分波器12と、第一出力部122からの光を伝播させる第一光導波路13Aと、第二出力部123からの光を伝播させる第二光導波路13Bと、第一光導波路13Aの光射出側端面、第二光導波路13Bの光射出側端面に接続された半導体光吸収層142とを備える。第一光導波路13Aからの光は、第二光導波路13Bからの光とは異なる方向から前記半導体光吸収層142に入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光素子および半導体受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的普及に伴い通信量は急激に増加している。これを支えているのが光通信技術である。このような光通信技術では、半導体レーザ、光ファイバ、半導体受光素子の連携により光通信を行う。半導体レーザでは、電気信号を光信号に変換する。光ファイバでは、変換された前記光信号を伝送する。半導体受光素子では、光ファイバから出力された信号を受光し、電気信号に変換する。
電気信号を送る場合と比較して、光ファイバでは伝送に伴う減衰割合が少さく、より遠くまで、小さなパワーで送ることが可能となる。
しかし、伝送に伴う光パワーの減衰量はゼロではない。通信波長帯で伝送に伴う減衰量は約0.2〜0.4dB/kmである。このため、より遠くまで伝送するためには、受光素子の効率を高くすることが必要である。
ここで、受光素子としては、図15に示すような受光素子が提案されている(非特許文献1参照)。この受光素子は、n型のInP層902、光吸収層903、p型のInP層904を積層したものである。光がエッジ端面より入射し、光吸収層903と平行に導波しながら吸収されるため、薄膜の光吸収層903でも高い受光効率を実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−37006号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.E. Bowers, et al. Lightwave Technol., vol. Lt-5, No. 10, 1339 (1987)
【非特許文献2】T. Takeuchi, et. al., Electron. Lett., 36, 972(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に開示された受光素子は、耐久性に劣るという課題がある。
図16、図17を参照して説明する。
図16は量子効率の導波路長依存性を示した図である。図17は光電流密度の、導波路方向各位置での相対強度を示したものである。ここで、導波路長とは図15で示した吸収層領域の導波路方向への長さである。
導波路長が長くなるほど、量子効率は上昇し、その効率の上昇率は導波長10μm以下で急激に増加することがわかる。これは、入射光の大部分が端面で吸収されることを示している。このため光電流は、図17からわかるように導波端面10μm以下に集中する。このように光電流密度が光入力端面領域に集中するため、高い強度の光が入力する時に素子が破壊されることがある。特に、伝送路内に、伝送に伴い減衰した光パワーを増幅するEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)を導入した場合には、受光素子に高い強度の光が入力されるため、受光素子が破壊しない程度の高い耐久性が求められる。
【0006】
このような課題を解決するために、エバネッセント波を受光する受光素子を使用することが考えられる(たとえば、非特許文献2参照)。図18はエバネッセント波を受光する受光素子の断面構造図である。この受光素子は、InP基板802上にガイド層803を形成し、このガイド層803上に光吸収層804、半導体層805を集積した構造であり、入射光はガイド層803を導波しながら染み出すように吸収層804で吸収される。
図19はエバネッセント型受光素子の吸収層長と効率の関係を計算した結果である。 吸収層長Lは図18に示すように、ガイド層803の上に積層された吸収層804の長さで定義される。
導波路型受光素子の効率の導波路長依存性の計算結果を示す図16とエバネッセント型受光素子の計算結果を示す図19を比較して検討すると、効率80%を得るためにはエバネッセント型受光素子では、導波路型受光素子の倍の長さである30μmの吸収層が必要となる。
すなわち、同等の受光効率を得るためにはエバネッセント型構造では吸収層の長さが長くなる。これは、受光素子の基本性能である高速応答性能を低下させる原因となる。
なお、特許文献1には、入射光をTE波あるいは、TM波に分離して、光電変換する方法が開示されている。この場合においても、入射光がTE波のみの場合、TM波のみの場合には、光電変換部分の一端面に入射光が集まってしまうので、光電変換部分が劣化しやすくなり耐久性がわるくなる。
【0007】
本発明は、耐久性が高く、かつ、高速応答性能を有する半導体受光素子およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、入力部と、第一出力部と、第二出力部とを含み、前記入力部からの入力光を、前記入力光よりも強度の低い光に分岐して、前記第一出力部、前記第二出力部から出力する光分波器と、前記第一出力部からの光を伝播させる第一光導波路と、前記第二出力部からの光を伝播させる第二光導波路と、前記第一光導波路の光射出側端面および前記第二光導波路の光射出側端面に接続された半導体光吸収層とを備え、前記第一光導波路からの光は、前記第二光導波路からの光とは異なる方向から前記半導体光吸収層に入射する半導体受光素子が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、入力部と、第一出力部と、第二出力部とを含み、前記入力部から入力した入力光を偏光分離せずに、前記入力光よりも強度の低い光に分岐して、前記第一出力部、前記第二出力部から出力する光分波器と、前記第一出力部からの光を伝播させる第一光導波路と、前記第二出力部からの光を伝播させる第二光導波路と、前記第一光導波路の光射出側端面および前記第二光導波路の光射出側端面に接続された半導体光吸収層とを形成し、前記第一光導波路からの光が、前記第二光導波路からの光とは異なる方向から前記半導体光吸収層に入射するように、前記第一光導波路、前記第二光導波路を形成する半導体受光素子の製造方法も提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性が高く、かつ、高速応答性能を有する半導体受光素子およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる半導体受光素子を示す平面図である。
【図2】図1のA−A'断面図である。
【図3】図1のB−B'断面図である。
【図4】図1のC−C'断面図、D−D'断面図である。
【図5】図1のE−E'断面図である。
【図6】図1のF−F'断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる半導体受光素子を示す平面図である。
【図8】図7のA−A'断面図、C−C'断面図、D−D'断面図である。
【図9】図7のB−B'断面図である。
【図10】図7のE−E'断面図である。
【図11】製造工程を示す断面図である。
【図12】製造工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第三実施形態にかかる半導体受光素子を示す平面図である。
【図14】本発明の第四実施形態にかかる半導体受光素子の要部を示す断面図である。
【図15】背景技術にかかる半導体受光素子を示す断面図である。
【図16】導波路長と、量子効率とを示す図である。
【図17】導波路長と、光電流密度とを示す図である。
【図18】背景技術にかかる半導体受光素子を示す断面図である。
【図19】吸収層長と、光電流密度とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
(第一実施形態)
図1〜図6を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
はじめに、本実施形態の半導体受光素子の概要について説明する。
本実施形態の半導体受光素子1は、入力部121と、第一出力部122と、第二出力部123とを含み、入力部121から入力した入力光を偏光分離せずに、入力光よりも強度の低い光に分岐して、第一出力部122、第二出力部123から出力する光分波器12と、第一出力部122からの光を伝播させる第一光導波路13Aと、第二出力部123からの光を伝播させる第二光導波路13Bと、第一光導波路13Aの光射出側端面および第二光導波路13Bの光射出側端面に接続された半導体光吸収層142とを備える。
第一光導波路13Aからの光は、第二光導波路13Bからの光とは異なる方向から前記半導体光吸収層142に入射する。
【0013】
次に、本実施形態の半導体受光素子1について詳細に説明する。
この半導体受光素子1は、半導体基板11上に光分波器12と、光導波路13A,13Bと、受光領域となる受光素子部14とを積層したものである。
【0014】
光分波器12は、多モード干渉光導波路(MMI: Multi Mode Interference)で構成されている。
本実施形態では、多モード干渉光導波路には一つの入力部121と、二つの出力部122,123とが形成されている。
入力部121には、入力用の光導波路15が接続されている。この光導波路15は入力部121へ光を入射させるためのものである。図2に図1のA−A'方向の断面図を示す。半導体基板11上に積層された厚さ1μmのInP層151A、このInP層151A上に積層された厚さ0.2μmのInGaAsP層151B、このInGaAsP層151B上に積層された厚さ1μmのInP層151Cを備える。光導波路15は、メサ型導波路構造であり、メサ幅Wは2μm、メサ高さhは3μmである。
なお、各半導体層の組成や、厚み、メサの幅、高さ等は例示であり、これに限定されるものではない。半導体レーザ等からの信号源からの光はInGaAsP層151Bをコアとする光導波路15に入力されることとなる。
【0015】
多モード干渉光導波路(光分波器12)は、矩形の干渉領域を有している。矩形の一方の辺に入力部121が形成され、対向する他方の辺に出力部122,123が形成される。
図3は、多モード干渉光導波路の断面であり、図1のB−B'方向の断面図である。図3に示すように、多モード干渉光導波路は、半導体基板11上にInP層124A、組成波長1.2μmのInGaAsP層124B、InP層124Cが積層されたメサ型構造である。メサ幅Wはたとえば、10μm、メサ高さhはたとえば、3μmである。このとき、図1において多モード干渉光導波路の長さL(MMI長)はたとえば100μmである。
入力部121からの光は、InGaAsP層124Bをコアとする多モード干渉導波路を伝播する。
【0016】
多モード干渉光導波路の出力部122には、第一光導波路13Aが接続されている。また、多モード干渉光導波路の出力部123には、第二光導波路13Bが接続されている。第一光導波路13Aと、第二光導波路13Bとは同じ層構造であり、図1のC−C'断面図および、D−D'断面図を図4に示す。第一光導波路13Aおよび、第二光導波路13Bはそれぞれ、InP層131、組成波長1.2μmのInGaAsP層132、InP層133をこの順で半導体基板11上に積層した積層構造であり、メサ型構造である。出力部122,123からの光は、それぞれInGaAsP層132内を伝播する。第一光導波路13Aの光射出側端面、第二光導波路13Bの光射出側端面には、受光素子部14が接続されている。
【0017】
受光素子部14は、図5に示すように、n型InP層141、光吸収層であるi-InGaAs層142、p型InP層143が半導体基板11上にこの順で積層されたものであり、メサ型構造である。メサ幅Wはたとえば3.0μm、メサ高さhはたとえば3μmである。p型InP層143の層厚はたとえば、1μm、光吸収層であるi-InGaAs層142の層厚はたとえば、0.6μmである。p型InP層143の直上にはp型電極144が形成され、n型InP層141上にはn型電極145が形成されている。なお、図5は、図1のE−E'断面図である。
図6に示すように、光吸収層142は、第一光導波路13A、第二光導波路13BのInGaAsP層132の光射出側端面に接続され、第一光導波路13A、第二光導波路13BのInGaAsP層132からの光を吸収する。このため、InGaAsP層132と光吸収層142は、ほぼ積層方向で同じ高さに積層されている。第一光導波路13A、第二光導波路13Bからの光は、光吸収層142の異なる端面にそれぞれ入射する。本実施形態では、光吸収層142の対向する端面からそれぞれ光が入射することとなる。なお、図6は、図1のF−F'断面図である。
【0018】
以上のような半導体受光素子1は、たとえば、以下のようにして製造することができる。光導波路15、第一光導波路13A、第二光導波路13B、多モード干渉導波路12を形成する際には、半導体基板11上に光導波路15、第一光導波路13A、第二光導波路13B、多モード干渉導波路12を構成する半導体層を積層させる。その後、受光素子部14が形成される領域以外をマスクで被覆し、上記で成長した半導体層を除去する。その次に、受光素子部14となる部分に半導体層を選択的に形成して(選択成長させて)、受光素子部14を形成する。つぎに、上記成長した各半導体層を、光導波路15、第一光導波路13A、第二光導波路13B、多モード干渉導波路12、受光素子部14の形になるようにエッチング等により選択的に除去する。これにより、第一光導波路13Aからの光が、第二光導波路13Bからの光とは異なる方向から半導体光吸収層142に入射する前述した半導体受光素子1を得ることができる。
【0019】
次に、本実施形態の光受光素子の動作について説明する。
入力光は、光導波路15を介して、多モード干渉光導波路12に入射する。そして、多モード干渉光導波路12から、第一光導波路13A、第二光導波路13Bに出射される。
このとき、多モード干渉光導波路12に入射した、入射光パワーが1mWである場合、出力部122,123には、各々0.5mWのパワーが結合する。すなわち、出力部122,123には、入力部121に入力した光のパワーの半分のパワーの光が入射し、出力部122,123からは、略同一の強度の光が射出されることとなる。出力部122から出射された信号光は第一光導波路13Aを伝播し、第一光導波路13Aの出射側端面から、受光素子部14に入射する。一方、出力部123から射出された信号光は、第二光導波路13Bの出射側端面を介して、受光素子部14に入射する。図6に示すように、受光素子部14の光吸収層142には、信号光が異なった方向(本実施形態では、反対方向)から入射するため、光吸収層142端面での光電流密度を半減することが可能となる。この結果、優れた耐高光入力特性を実現できる。
【0020】
また、出力部122,123には、入力部121に入力した光のパワーの半分のパワーの光が入射することとなるので、受光素子部14の光吸収層142の第二光導波路13Bに接続される端面、光吸収層142の第一光導波路13Aに接続される端面のいずれにも同程度のパワーの光が入射することとなる。これにより、光吸収層142の一方の光入射端面が、他方の光入射端面に比べて過度に劣化してしまうことを抑制できる。
【0021】
また、本実施形態では、受光素子部14の光吸収層142の端面には、光導波路13A,13Bの出射側端面(光導波路13A,13Bの光伝播方向と直交する端面)から出射した光が導入されるため、半導体受光素子1は、高速応答性能を有するものとなる。
すなわち、この受光素子部14は、光を伝播させながら、エバネッセント波を吸収するものではないので、高速応答性能が低下してしまうことを防止できる。
【0022】
ここで、特許文献1には、入射光をTE波あるいは、TM波に偏光分離して、光電変換する方法が開示されている。この場合、入射光がTE波のみの場合、TM波のみの場合には、光電変換部分の一端面に入射光が集まってしまうので、光電変換部分が劣化しやすくなり耐久性がわるくなる。
これに対し、本実施形態では、光分波器12により、入射光を偏光分離せずに、入射光よりも強度の低い光に分岐している。これにより、入射光がTE波、TM波のみの場合であっても、光分波器12により分岐されることとなるので、優れた耐高光入力特性を確実に実現できる。
【0023】
(第二実施形態)
上述した第一実施形態では、光導波路15,13A,13Bおよび多モード干渉導波路および受光素子部14がメサ構造の場合について説明したが、本発明は、これに限られるものではない。
本実施形態では、光導波路、多モード干渉導波路、および受光素子部が埋め込み型である。
半導体受光素子が、埋め込み型である点以外は、前記実施形態と同様である。
図7に半導体受光素子2の平面図を示す。この半導体受光素子2も、第一実施形態と同様、半導体基板11上に光導波路25,23A,23B,多モード干渉導波路22、受光素子部24を積層したものである。
図8は、図7のA-A'、D−D',C−C'断面図に該当する。光導波路25は、導波路コアとなる波長組成1.2μmのInGaAsP層151をInP層200で埋め込んだ構造である。同様に、光導波路23A,23Bも、導波路コアとなる波長組成1.2μmのInGaAsP層132をInP層200で埋め込んだ構造である。導波路コアの幅Wは3μm、層厚hは2μmである。図9は、図7のB−B'断面図に該当する図である。多モード干渉導波路22も、導波路コアとなる波長組成1.2μmのInGaAsP層124BをInP層221で埋め込んだ構造である。
図10は、図7のE-E'の断面に該当する断面図である。受光素子部24は、前記実施形態と同様にn型InP層141、光吸収層であるi-InGaAs層142、p型InP層143の積層構造を形成し、この積層構造をFeもしくはRuを不純物とする半絶縁性InP層247で埋め込んだ構造である。
【0024】
このような半導体受光素子2は、例えば以下のように作製できる。
図11(A)に示すように、半導体基板11上にInP層291、InGaAsP層290、InP層292を積層する。InP層291およびInP層292は、図8のInP層200および図9のInP層221の一部となる。InGaAsP層290は図8のInGaAsP層132、151および図9のInGaAsP層124Bとなる。次に、受光素子部24が形成される領域以外をマスクで被覆し、上記で積層した半導体層を除去する。その次に、図11(B)に示すように、受光素子部24となる領域にPIN構造となる、n型InP層294、i型InGaAs層293、p型InP層295を選択成長する。n型InP層294は図10のn型InP層141となり、i型InGaAs層293は図10のi型InGaAs層142となり、p型InP層295は図10のp型InP層143になる。
次に、上記成長した各半導体層を、光導波路25、第一光導波路23A、第二光導波路23B、多モード干渉導波路22、受光素子部24の形になるようにエッチング等により選択的に除去する。図12(A)、(B)はエッチング等により除去したあとの構造を説明するための図である。図12(A)は、図7においてA-A‘、C-C'、D-D'の位置の作製途中(エッチング後)断面図である。図7におけるB-B'の断面も、メサ幅Wが広くなる以外は同じである。図12(B)は図7の受光領域となるE-E'の位置の作製途中(エッチング後)断面図である。
その後、上記エッチングで除去した領域をRu(ルテニュウム)またはFeを不純物とするInPで埋め込む。図12(C)および図12(D)は、おのおの図12(A)および(B)を、Fe-InP層296で埋め込んだ後の形状である。このFe-InP層は図8のInP層200および図9のInP層221および図10のInP層247の一部である。さらに、InP層で埋め込みを行い、図8のInP層200および図9のInP層221および図10のInP層247を完成させる。
【0025】
このような埋め込み構造受光素子においても、第一実施形態と同様の効果を奏することができ、優れた耐高光入力特性が実現できる
【0026】
(第三実施形態)
図13を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。
本実施形態では、光分波器32である多モード干渉光導波路には、2つの入力部321,322が形成されている。すなわち、多モード干渉光導波路は、入力部と出力部を各二つ備えた2×2多モード干渉導波路である。光分波器32の入力部321,322には、入力用の光導波路15がそれぞれ接続されている。他の点については第一実施形態と同様である。
ここで、一方の入力部321から多モード干渉光導波路に入射した信号光は、パワーが分割され出力部122,123からそれぞれ出力される。なお、入射光パワーが1mWである場合、各出力部122,123には、各々半分のパワーの光、すなわち、0.5mWのパワーが結合する。その後、受光素子部14の光吸収層142に異なった方向(ここでは、反対方向)から入射し吸収される。この結果、優れた耐高光入力特性を実現できる。
なお、一方の入力部321には、光源(光信号源)が接続されるが、他方の入力部322には、光源は接続されておらず光が入力されない。すなわち、入力部322は無接続状態となっている。
【0027】
さらに、本実施形態では、光源(光信号源)への反射戻り光を抑制できる。光導波路13A,13Bと光吸収層142との接続界面では屈折率が異なるため反射が生じる。例えば、図13において出力部122,123からの信号光は、光導波路13Aと受光素子部14の接続界面、および光導波路13Bと受光素子部14との接続界面で一部の光が反射する。この反射光は伝播してきた光導波路13A,13B内を戻り、出力部122,123から多モード干渉導波路32に入射し、無接続の入力部322に結合する。すなわち、反射戻り光が光源(光信号源)側に戻ることを抑制できる。
【0028】
(第四実施形態)
図14を参照して、本発明の第四実施形態について説明する。
本実施形態では、受光素子部が増倍層を具備する、アバランシェフォトダイオードであることを特徴とする。他の点は、第一実施形態と同様である。
図14は受光素子部の断面図である。受光素子部は、n型InP層41、InAlAs増倍層42、InAlAs電界緩和層43、InGaAs吸収層44、p型InP層45を備えている。他の点は、第一実施形態と同様である。
このような第四実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏することができるうえ、受光領域の増倍層でキャリアを増倍する内部利得を有するため、受光感度向上できる。
【0029】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記各実施形態では多モード干渉導波路に2つの出力部を形成したが、これに限らず、出力部は3以上であってもよい。各出力部に導波路を接続し、光吸収領域へ導けばよい。ただし、各導波路からの光は、光吸収領域へそれぞれ異なる方向から入力されるようにすることが好ましい。
さらに、前記実施形態では、光分波器は入力部が2つ形成されていたが、これに限らず、3つ以上であってもよい。
また、前記各実施形態で述べた各半導体層の組成や、厚み、メサの幅、高さ等は例示であり、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 半導体受光素子
2 半導体受光素子
11 半導体基板
12 光分波器(多モード干渉導波路)
13A 第一光導波路
13B 第二光導波路
14 受光素子部
15 光導波路
22 光分波器(多モード干渉導波路)
23A 第一光導波路
23B 第二光導波路
24 受光素子部
25 光導波路
32 光分波器(多モード干渉導波路)
41 InP層
42 増倍層
43 電界緩和層
44 吸収層
45 InP層
121 入力部
121D InP層
122 第一出力部
123 第二出力部
124A InP層
124B InGaAsP層
124C InP層
131 InP層
132 InGaAsP層
133 InP層
141 InP層
142 半導体光吸収層
142 吸収層
143 InP層
144 電極
145 電極
151A InP層
151B InGaAsP層
151C InP層
200 InP層
221 InP層
247 InP層
290 InGaAsP層
291 InP層
292 InP層
293 i-InGaAs層
294 n-InP層
295 p-InP層
296 Fe-InP層
321 入力部
322 入力部
802 基板
803 ガイド層
804 光吸収層
804 吸収層
805 半導体層
902 InP層
903 光吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、第一出力部と、第二出力部とを含み、前記入力部からの入力光を偏光分離せずに、前記入力光よりも強度の低い光に分岐して、前記第一出力部、前記第二出力部から出力する光分波器と、
前記第一出力部からの光を伝播させる第一光導波路と、前記第二出力部からの光を伝播させる第二光導波路と、
前記第一光導波路の光射出側端面および前記第二光導波路の光射出側端面に接続された半導体光吸収層とを備え、
前記第一光導波路からの光は、前記第二光導波路からの光とは異なる方向から前記半導体光吸収層に入射する半導体受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体受光素子において、
前記光分波器の前記第一出力部および前記第二出力部から射出される光の強度は、略同一である半導体受光素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体受光素子において、
前記光分波器が、多モード干渉(MMI)構造である半導体受光素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体受光素子において、
前記光分波器は、入力部を2以上備え、
一つの入力部に光源が接続され、他の入力部には光源が接続されていない半導体受光素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体受光素子において、
前記半導体光吸収層を含んだアバランシェフォトダイオードが形成されている半導体受光素子。
【請求項6】
入力部と、第一出力部と、第二出力部とを含み、前記入力部からの入力光を偏光分離せずに、前記入力光よりも強度の低い光に分岐して、前記第一出力部、前記第二出力部から出力する光分波器と、
前記第一出力部からの光を伝播させる第一光導波路と、前記第二出力部からの光を伝播させる第二光導波路と、
前記第一光導波路の光射出側端面および前記第二光導波路の光射出側端面に接続された半導体光吸収層とを形成し、
前記第一光導波路からの光が、前記第二光導波路からの光とは異なる方向から前記半導体光吸収層に入射するように、前記第一光導波路、前記第二光導波路を形成する半導体受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−287623(P2010−287623A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138481(P2009−138481)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】