説明

半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法及び樹脂封止型半導体装置

【課題】金属濃度を低減させることで、製造時の金属の混入も防止し、半導体封止を行った際には装置の信頼性を損なうことのない金属異物を実質的に含まない半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法を提供する。
【解決手段】常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂及び無機充填材を含む原材料全てを溶剤に混合して液状の混合物とし、混合物を液体用マグネットフィルターに通して金属成分を除去し、金属成分を除去した混合物から前記溶剤を除去する半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法及び樹脂封止型半導体装置に係り、特に、高信頼性の樹脂封止半導体装置の製造に用いるための金属異物を実質的に含まないエポキシ樹脂成形材料の製造方法及び該成形材料を用いた樹脂封止型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂成形材料の製造において、樹脂成分と無機充填材を用い、混合装置内で造粒する方法は、よく知られている。例えば、無機充填材と樹脂成分を実質的に無加圧状態で混合した混合物を、実質的に無加圧状態で加熱造粒してなる粒状半導体封止材料が知られている(特許文献1参照)。このとき、樹脂成分が溶剤を含有していてもよいとしている。
【0003】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、硬化促進剤、および、無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂成形材料において、無機充填材を除く成分をあらかじめ有機溶剤にて溶解して均一な溶液とし、しかる後に、有機溶剤を留去させ、均一な樹脂組成物とし、これに無機充填材を混合してエポキシ樹脂成形材料を得る製造方法も知られている(特許文献2参照)。さらに、基体樹脂、架橋剤、と有機溶剤を分散混合機内で脱気造粒する方法も知られている(特許文献3参照)。
【0004】
一方、本発明の技術分野である半導体用エポキシ樹脂成形材料の分野では、半導体用途向けの優れた封止樹脂性能を得るため、出発原料として、固形のエポキシ樹脂と固形のフェノール樹脂を用いて、固形の樹脂と無機充填材、ならびに他の原材料を混合装置にて分散混合し、二軸のロール混練装置や、押出し混練装置を用いて、加熱溶融混練させ、冷却、粉砕して、粒状の成形材料とし、この粒状の成形材料を、そのまま封止成形に用いるか、粒状の成形材料を、さらに打錠機によりタブレット化して、成形機にて封止成形するのが、通例であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−41327号公報
【特許文献2】特開平6−107767号公報
【特許文献3】特開平11−116854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法では、種々の問題が生じていた。すなわち、二軸のロール混練装置や押出し混練装置を用いて、常温では固形の混練成分を加熱溶融するため、混練温度では、まだ高粘度であり、かつ、無機充填材を多く含んでいるため、混練装置において、装置を構成する部材の金属表面と混練成分に含まれる上記の無機充填材、例えば、アルミナ、窒化珪素、結晶性シリカ、溶融シリカ、等の研磨剤類似の無機充填材とが接触磨耗し、製造した半導体封止用エポキシ樹脂成形材料中の金属濃度が高くなるという問題が生じる。さらに、十分に微細な磨耗粉であれば、短絡やリーク不良の原因となることは少ないが、部品各部の形状や、磨耗の進行度合いにより、100μmから500μm、やそれ以上の長さの金属が混入する。
【0007】
さらに厄介なのは、樹脂封止半導体装置の出荷時の検査、例えば、バーンインテストをすり抜けることであり、また、通常行われるPCTやTCTのテストをすり抜け、市場での短絡やリーク不良による事故を発生させていることである。このことは、特に、自動車用、船舶用、車両用、航空・宇宙機用、等の移動機械自体や該移動機械のシステム制御用のデバイス、すなわち樹脂封止型半導体装置において、重大な問題を起こす可能性が高く、この改善は、半導体産業分野において喫緊の課題である。
【0008】
上述した、先行技術文献による開示例では、このような問題を解決することができない。本発明は、従来型の混練装置、また、新しく開発されている方法でも、解決できない問題を解決しようとするものであり、特に、金属異物を実質的に含まない材料を製造し、半導体封止用に適したエポキシ樹脂成形材料の製造方法を提供することを究極の目的とする。
【0009】
さらに、混練手法による製造では、無機充填材の偏在による製造した粉の性能のバラつき、さらに、混練開始時、混練過程、混練終端部、で温度条件や混練応力が変化することから、製造された成形材料の性能、例えば、粘度、弾性率、膨張係数等に差が生ずるという問題があることもよく知られている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意検討した結果、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料を製造するにあたり、一旦、無機充填材を含む全原材料を溶剤と混合し、金属を捕集した後、溶剤を除去して固形化することで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法は、常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂及び無機充填材を含む原材料全てを溶剤に混合して液状の混合物とし、前記混合物を液体用マグネットフィルターに通して金属成分を除去し、金属成分を除去した混合物から前記溶剤を除去することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の樹脂封止型半導体装置は、半導体チップを、上記のエポキシ樹脂成形材料の製造方法で得られた半導体封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて樹脂封止したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法によれば、原材料を、一旦、溶剤により液状として均一化処理を行い、マグネットフィルターにより金属濃度を低減させておくことで、簡便な操作により金属異物を実質的に含まないエポキシ樹脂成形材料を製造することができる。
【0014】
また、本発明の樹脂封止半導体装置は、上記の金属異物を実質的に含まないエポキシ樹脂成形材料で封止されているため、これらの金属異物起因の偶発不良を防止することができる。特に、薄型化、小型化し、かつ配線幅や端子間距離、ワイヤー間隔が一層狭くなって来ている最先端デバイスの市場不良の発生を防止できる。すなわち、安全性の要求される自動車用や航空機に搭載する半導体パッケージに好適であり、その産業的価値は、非常に大きい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明においては、樹脂成形材料として用いる原材料の全てを溶剤と混合して液状の混合物を得る。このとき、本発明で用いる樹脂成形材料としては、常温で固形のエポキシ樹脂及び常温で固形のフェノール樹脂を主成分とする成形材料であれば、その種類を問わない。その他の原材料については、半導体封止用の成形材料として用いることができる公知の材料であればよく、同じく、その種類は問わない。すなわち、固形の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料であれば、その構成成分を特に限定しないものである。なお、ここで用いる原材料としては、上記した固形のエポキシ樹脂及び固形のフェノール樹脂の他に、無機充填材を必須の構成材料として含むものである。
【0017】
ここで用いるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられ、通常、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料に使用される常温で固形のエポキシ樹脂を用いればよい。これらは単独でも併用しても差し支えない。なお、液状のエポキシ樹脂では、半導体用エポキシ樹脂成形材料に要求される高温での体積抵抗率の要求数値を満たすことができず、かつ、即硬化性も付与し難い。
【0018】
また、本発明に用いる硬化剤としてのフェノール樹脂は、エポキシ樹脂を硬化させる常温で固形のものであれば特に限定されずに用いることができる。
【0019】
本発明に用いるフェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられ、通常、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料に使用される固形のフェノール樹脂を用いればよい。これらは単独でも併用しても差し支えない。エポキシ樹脂の場合と同様に、液状のフェノール樹脂では、半導体用エポキシ樹脂成形材料に要求される高温での体積抵抗率の要求数値を満たすことができず、かつ、即硬化性も付与し難い。
【0020】
これらの配合量としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比(エポキシ基数/フェノール性水酸基数)としては0.7〜1.4が好ましい。
【0021】
また、硬化剤成分に加えて、成形材料の硬化を促進させて半導体装置の製造を効率良く行うことができることから、硬化促進剤を添加することが好ましい。
【0022】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。例えば1,8−ジアザビシクロ(5.4.1)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられ、また、潜在性を有する尿素系触媒や包接触媒を用いてもよい。これらは単独でも混合しても差し支えない。
【0023】
本発明に用いる無機充填材としては、一般に、封止材料に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、繊維状シリカ、ガラス繊維、低膨張無機素材等が挙げられ、これらは単独でも併用しても差し支えない。
【0024】
無機充填材の配合量は、成形性と耐半田性のバランスから、全エポキシ樹脂組成物中75〜93質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは80〜91質量%である。75質量%未満だと、吸水率の上昇に伴い耐半田性が低下し、93質量%を越えると、ワイヤースイープ及びパッドシフト等の成形性の問題が生じ好ましくない。
【0025】
また、本発明においては、上記した成分の他、必要に応じて、カップリング剤や、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン等の難燃剤、リン系やリン・窒素系の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、イオン捕捉剤等を配合することができる。
【0026】
次に、本発明に用いる溶剤としては、上記したエポキシ樹脂成形材料の各成分を混合させ、液状の混合物とすることができるものであればよく、極性有機溶剤及び非極性有機溶剤のいずれも用いることができる。例えば、極性有機溶剤の代表例としては、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸メチル、水、ジエチルケトン、ジオキサン、蟻酸エチル、イソプロピルアルコール等が挙げられる。また、非極性有機溶剤の代表例としては、アニソール、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エチルエーテル、ペンタン等が挙げられる。
【0027】
これら極性有機溶剤と非極性有機溶剤は、混合して用いることもでき、原材料の均一な混合物を形成しやすいことから混合溶剤を用いることが好ましい。混合溶剤としては、アニソールとメタノール、アニソールとエタノールの混合溶剤が好ましい。混合溶剤とするにあたっては、その混合割合を30:100〜100:30とすることが好ましい。
【0028】
上記したように、ここで用いる溶剤は、成形材料の原材料を均一に混合することができるものであればよいが、後述する溶剤の除去を行うために、常温から50℃程度の加温で気化しやすいものであり、また、使用の便から、臭気や毒性が低く、また、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の諸性能を劣化させないものであることが好ましい。
【0029】
混合物を生成するにあたっては、上記した成形材料の原材料と上記した溶剤とを、定法に従い混合、撹拌することで均一の混合物とすれば良く、特別な操作を行うものではない。なお、このとき、得られる混合物の粘度は、液状にして原材料を均一に混合することができ、かつ液体用マグネットフィルターでの金属捕集に支障の無い粘度であれば、特に限定されるものではないが、20ポイズ以下であることが好ましく、より均一化を考慮した場合、5ポイズ以下とすることがより好ましい。
【0030】
また、上記では、混合溶剤としておき、そこに原材料であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂等を混合するように記載したが、それぞれの原材料成分を、それらを溶解する別々の溶剤に溶解しておき、溶解液を混合して、原材料が均一に混合した混合物としてもよい。例えば、非極性有機溶媒にエポキシ樹脂を溶解させ、極性有機溶媒にフェノール樹脂を溶解させておき、両溶液を混合して均一化することができる。
【0031】
この混合は、本発明で用いる原材料と樹脂材料を溶解できる溶剤を投入して混合することができ、かつ減圧脱気機能を有する撹拌混合槽からなる混合機であれば特に限定されずに用いることができる。このとき、粉体化が容易なことから万能混合機であることが好ましい。
【0032】
このとき注意すべきは、半導体パッケージに有害な、金属異物の混入と有害イオンの混入を防止することであり、そのため、イオンを多く含むガラス製容器などは、イオンの溶出等のおそれがあるため好ましくなく、ステンレス製のように異物の溶出、混入等のおそれが少ない素材で構成されているものが好ましい。なお、混合の際に、溶剤を中温(30〜70℃)に加温してBステージ化反応を進めておいてもよい。また、無機充填材やワックス等で溶媒に溶けない素材は細かくしておくことで均一化する。
【0033】
そして、本発明においては、このように混合物とした後、この混合物を金属捕集用の磁石を有する液体用のマグネットフィルターに通過させることで、混合物中に含まれる金属異物を該磁石により捕集し、混合物から除去するものである。ここで、用いる磁石は、各種の液体用マグネットフィルターが挙げられ、例えば、(株)マグネテックジャパンの液体用マグネットフィルターが代表例である。この磁石の型式としては、ポット式、ラウンド式、エルボー式、チーズ式、クロス式、チューブ式、Tトラップ式等が挙げられる。
【0034】
次いで、金属成分を除去した混合物を、混合物中の溶剤を除去して固形化することにより半導体封止用のエポキシ樹脂成形材料とすることができる。
【0035】
溶剤の除去は、混合物から溶剤を気化させながら除去するもので、脱気しながら行うことで混合物を固形化させ、エポキシ樹脂成形材料とすることができるものである。このとき、撹拌脱気することで行えば、溶剤の除去を行うことで得られるエポキシ樹脂成形材料を粒子状として得ることができる。
【0036】
この溶剤の除去を効率的に行うために、溶剤の除去を加温しながら行うようにすることもできる。例えば、加温された乾燥窒素、乾燥空気を送入することで、より効率化が可能となる。
【0037】
このようにして得られた粒状のエポキシ樹脂成形材料は、その平均粒径が0.1mm〜5mmとなるように形成することが好ましく、0.5mm〜2mmとすることがより好ましい。このとき、得られた粒状の成形材料を上記範囲の粒子にするために、又は、上記範囲よりもさらに細かくするために、ボールミルやセラミック製粉砕機等により粉砕してもよい。ここで、本明細書における平均粒径は、ふるい法により求めたものである。
【0038】
このようにして得られた粉末状又は粒子状の成形材料は、従来と同様、圧縮成形機、移送成形機又は射出成形機によりパッケージ成形を行うか、粒子状の成形材料を、さらに打錠機によりタブレット化して、該タブレットを用いて移送成形機にて封止成形を行って、半導体素子を封止すればよい。なお、本発明のエポキシ樹脂成形材料による半導体素子の封止に際しては、最近になって導入が図られている半導体素子の圧縮成形方法を好適に用いることができる。
【0039】
本発明の樹脂封止型半導体装置は、上記のように得られたエポキシ樹脂成形材料を用いて、半導体素子を封止して得られるものであり、定法により半導体素子の封止を行えばよい。このとき、用いる半導体素子として、半導体素子のワイヤー間のピッチが100μm以下、例えば、25〜50μmであっても、短絡不良やリーク不良の発生を有効に抑制することができる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0041】
(実施例1)
万能混合機に、有機溶剤であるアニソールならびにメタノール、1:1配合(質量比)の混合溶媒 100質量部を投入しておき、攪拌しながら、粗粉砕したビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000) 6.0質量部とフェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0質量部を投入し混合した。溶解したことを確認の後、さらに球状溶融シリカ粉(平均粒径21μm) 90質量部を投入し、次に、シリカの表面処理剤であるエポキシシランカップリング剤 0.2質量部を加えた。
【0042】
2分後に、微粉砕したトリフェニルホスフィン 0.2質量部、カルナバワックス 0.4質量部、カーボンブラック 0.3質量部を加えた。得られた混合物を、(株)マグネテックジャパン製の液体用Tトラップマグネットフィルターに通して金属を除去した後に、再度、万能混合機に投入し、温度を50℃まで上げ、30分撹拌の後に、減圧下で溶媒を除去すると同時に造粒を行い、粒子状のエポキシ樹脂成形材料(A)を得た。エポキシ樹脂成形材料(A)の平均粒径は1.5mmであった。
【0043】
試作した該粒子中の、金属含有量、含有する場合の最大金属長を測定した。本発明の目的が、前述したように「・・厄介なのは、樹脂封止半導体装置の出荷時の検査、例えば、バーンインテストをすり抜けることであり、また、通常行われるPCTやTCTのテストをすり抜け、市場での短絡やリーク不良による事故を発生させていることである。」ことにより、この試作粒子の、良否を、PCTやTCTのテストでは、判断できない。故に、本発明では、試作粒子中の金属含有量と含有する場合の最大金属長を評価基準とした。また、測定結果の重要性からいえば、試作粒子中の金属含有量よりも含有する場合の最大金属長が、より重要である。
【0044】
加えて、偶発不良ではなく、試作粒子の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の平均した信頼性における実力を確認するため、アルミ配線を有する2mm角のテスト素子(ワイヤー間ピッチ 35μm)を有するDIPパッケージをエポキシ樹脂成形材料(A)にて12素子作成し、TCT、PCTでの長期信頼性を評価した。
以下の実施例及び比較例による測定、評価も本実施例と同様の方法により行った。
【0045】
このエポキシ樹脂成形材料(A)中の金属含有量は2ppm以下であった。このときの金属量は、自動磁性体量分析装置((株)龍森製、商品名:MA−1040)を用い、100gのサンプルを用いて測定した。
【0046】
このエポキシ樹脂成形材料(A) 200gをアセトン 500ccに分散させた後に、10000ガウスの磁石にて捕集した磁石付着物の顕微鏡による観察では、検知可能な45μm以上の金属異物は、存在しなかった。
【0047】
長期信頼性評価では、TCT(−55℃-120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間まで、不良は、発生しなかった。
【0048】
(実施例2)
万能混合機に、アセトン 100質量部を投入しておき、攪拌しながら、粗粉砕したビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000) 6.0質量部とフェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0質量部を投入し混合した。溶解したことを確認の後、球状溶融シリカ粉(平均粒径21μm) 90質量部を投入し、次に、シリカの表面処理剤であるエポキシシランカップリング剤 0.2質量部を加えた。
【0049】
2分後に、微粉砕したトリフェニルホスフィン 0.2質量部、カルナバワックス 0.4質量部、カーボンブラック 0.3質量部を加えた。得られた混合物を、(株)マグネテックジャパン製の液体用Tトラップマグネットフィルターに通して金属を除去した後に、再度、万能混合機に投入し、温度を50℃まで上げ、30分撹拌の後に、減圧下で溶媒を抜くと同時に、造粒を行い、粒子状のエポキシ樹脂成形材料(B)を得た。エポキシ樹脂成形材料(B)の平均粒径は、1.8mmであった。
【0050】
該粒子中の、金属含有量、含有する場合の最大金属長、また、実施例1と同一のテスト素子を有するDIPパッケージをエポキシ樹脂成形材料(B)にて12素子作成し、TCT、PCTでの長期信頼性を評価した。
【0051】
このエポキシ樹脂成形材料(B)中の金属含有量は2ppm以下であった。また、磁石付着物の顕微鏡による観察では、検知可能な45μm以上の金属は、存在しなかった。長期信頼性評価でも、TCT(−55℃-120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間まで、不良は、発生しなかった。
【0052】
(実施例3)
ステンレス製のケミカルフラスコに、アニソール 50質量部を投入しておき、攪拌しながら、粗粉砕したビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000)6.0質量部を投入した。また、別にメタノール 50質量部を投入したステンレス製のケミカルフラスコに、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0質量部を投入した。それぞれ溶解したことを確認の後混合し、この混合溶剤に球状溶融シリカ粉(平均粒径21μm) 90質量部を投入した。次に、シリカの表面処理剤であるエポキシシランカップリング剤 0.2質量部を加えた。
【0053】
2分後に、微粉砕したトリフェニルホスフィン 0.2質量部、カルナバワックス 0.4質量部、カーボンブラック 0.3質量部を加えた。得られた混合物を、(株)マグネテックジャパン製の液体用Tトラップマグネットフィルターに通して金属を除去した後に、再度、ステンレス製のケミカルフラスコに投入し、温度を50℃まで上げ、30分撹拌の後に、ドラフト中で、ステンレス製のパッドに取り出し、減圧して溶媒を除去した。厚さ約1.5mmの該生成物をセラミック製のボールミルで粉砕し、粉末状のエポキシ樹脂成形材料(C)を得た。エポキシ樹脂成形材料(C)の平均粒径は、0.3mmであった。
【0054】
該粒子中の、金属含有量、含有する場合の最大金属長、また、実施例1と同一のテスト素子を有するDIPパッケージをエポキシ樹脂成形材料(C)にて12素子作成し、TCT、PCTでの長期信頼性を評価した。
【0055】
このエポキシ樹脂成形材料(C)中の金属含有量は4ppmであった。また、磁石付着物の顕微鏡による観察では、検知可能な45μm以上の金属は存在しなかった。長期信頼性評価でも、TCT(−55℃-120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間まで、不良は、発生しなかった。
【0056】
(比較例1)
ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000) 6.0質量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0質量部、球状溶融シリカ(平均粒径21μm) 90質量部、トリフェニルホスフィン 0.2質量部、エポキシシランカップリング剤 0.2質量部、カーボンブラック 0.3質量部、カルナバワックス 0.4質量部、をヘンシェルミキサーにて混合し、次に二軸加熱ロールにて、樹脂温度90℃にて混練したのち、冷却粉砕して、粒子状のエポキシ樹脂成形材料(D)を作成した。エポキシ樹脂成形材料(D)の平均粒径は、1.5mmであった。
【0057】
該粒子中の、金属含有量、含有する場合の最大金属長、また、実施例1と同一のテスト素子を有するDIPパッケージをエポキシ樹脂成形材料(D)にて12素子作成し、TCT、PCTでの長期信頼性を評価した。
【0058】
このエポキシ樹脂成形材料(D)中の金属含有量は65ppmであった。また、磁石付着物の顕微鏡による観察で、検知可能な45μm以上の金属を14個観察した。また、該金属片の最大長は300μmであった。
【0059】
なお、長期信頼性評価では、TCT(−55℃-120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間までのテストでは、不良は、発生しなかった。
【0060】
(比較例2)
ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000) 6.0質量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0質量部、球状溶融シリカ(平均粒径21μm) 90質量部、トリフェニルホスフィン 0.2質量部、エポキシシランカップリング剤 0.2質量部、カーボンブラック 0.3質量部、カルナバワックス 0.4質量部、をヘンシェルミキサーにて混合し、次に二軸加熱ロールにて、樹脂温度90℃にて混練したのち、冷却してシート化した。該シートをセラミック製のボールミルで粉砕して、粒子状のエポキシ樹脂成形材料(E)を作成した。エポキシ樹脂成形材料(E)の平均粒径は0.4mmであった。
【0061】
該粒子中の、金属含有量、含有する場合の最大金属長、また、実施例1と同一のテスト素子を有するDIPパッケージをエポキシ樹脂成形材料(E)にて12素子作成し、TCT、PCTでの長期信頼性を評価した。
【0062】
このエポキシ樹脂成形材料(E)中の金属含有量は60ppmであり、また、磁石付着物の顕微鏡による観察で、検知可能な45μm以上の金属を15個観察した。さらに、該金属片の最大長は245μmであった。なお、長期信頼性評価では、TCT(−55℃-120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間までのテストでは、不良は、発生しなかった。
【0063】
(比較例3)
ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000) 6.0質量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0質量部、球状溶融シリカ(平均粒径21μm) 90質量部、トリフェニルホスフィン 0.2質量部、エポキシシランカップリング剤 0.2質量部、カーボンブラック 0.3質量部、カルナバワックス 0.4質量部、をヘンシェルミキサーにて混合し、次に二軸加熱ロールにて、樹脂温度90℃にて混練したのち、冷却粉砕して、粒子状のエポキシ樹脂成形材料を作成した。このエポキシ樹脂成形材料から、金属を除去するため、日本マグネティック社製の固体粉用の高磁力型磁力選別機を3回通して、エポキシ樹脂成形材料(F)を得た。エポキシ樹脂成形材料(F)の平均粒径は1.5mmであった。
【0064】
該粒子中の、金属含有量、含有する場合の最大金属長、また、実施例1と同一のテスト素子を有するDIPパッケージをエポキシ樹脂成形材料(F)にて12素子作成し、TCT、PCTでの長期信頼性を評価した。
【0065】
このエポキシ樹脂成形材料(F)中の金属含有量は60ppm、磁石付着物の顕微鏡による観察で、検知可能な45μm以上の金属を12個観察した。また、該金属片の最大長は280μmであった。なお、長期信頼性評価では、TCT(−55℃-120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間までのテストでは、不良は、発生しなかった。
【0066】
上記のように、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法によって、簡便に金属を実質的に含まない粒状の半導体封止用のエポキシ樹脂成形材料が得られるものである。
特に、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、より薄型化、また大面積化、かつ、片面封止する半導体パッケージに対応させるため、採用の進んでいる圧縮成形用の半導体封止用粉末状成形材料に、特に適している。その理由は、本発明の材料の最大の特徴が、メタルフリーという点にあるため、そのまま粉体として使用することが、最も優れた対偶発不良性を示すからである、移送成形や射出成形に用いても、勿論、良いが、その場合、ペレット化やタブレット化の際に、金属部材との“こすれあい”が生ずるため、金属含有量や、特に、含有金属の最大長の面で、ある程度の性能低下は避けられないため、やや好ましくない。
【0067】
また、本発明の実施により、副次的に、二軸加熱ロール機や二軸加熱押し出し機のような混練手法による製造が持つ欠点を克服することができる。すなわち、無機充填材の偏在による製造した粉の性能のバラつき、混練開始時、混練過程、混練終端部、で温度条件や混練応力が変化することを防止でき、製造された成形材料の性能、例えば、粘度、弾性率、膨張係数、等に差が生ずることを防げるという効果が生じる。
【0068】
結果として、本発明の粒状の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、半導体パッケージの市場に於ける短絡事故の発生を防止でき、特に、自動車用、船舶用、航空機用、電車車輛用、また、半導体デバイスを搭載する二輪車、三輪車、等の人が登場するモバイル機器の安全を保障できるという点で、本発明の粒状の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法は、産業上きわめて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂及び無機充填材を含む原材料全てを溶剤に混合して液状の混合物とし、前記混合物を液体用マグネットフィルターに通して金属成分を除去し、金属成分を除去した混合物から前記溶剤を除去することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項2】
減圧脱気機能を有する撹拌混合槽を用いて、常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂及び無機充填材を含む原材料全てを溶剤に混合して均一溶解処理を行い液状の混合物とし、前記混合物を液体用マグネットフィルターに通して金属成分を除去し、金属成分を除去した混合物を撹拌脱気して前記溶剤を除去することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記混合物を、前記常温で固形のエポキシ樹脂を非極性有機溶剤に溶解し、かつ、前記常温で固形のフェノール樹脂を極性有機溶剤に溶解し、これらを混合すると共に、その他原材料全てを混合して得ることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項4】
前記混合物を、前記常温で固形のエポキシ樹脂を溶解する非極性有機溶剤と前記常温で固形のフェノール樹脂を溶解する極性有機溶剤とを予め混合して混合溶剤とし、この混合溶剤に、前記常温で固形のエポキシ樹脂及び常温で固形のフェノール樹脂を溶解し、さらに、その他原材料全てを混合して得ることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項5】
半導体チップを、請求項1乃至4記載の製造方法で得られた半導体封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて樹脂封止したことを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子のワイヤー間のピッチが100μm以下であることを特徴とする請求項5記載の樹脂封止型半導体装置。

【公開番号】特開2011−252042(P2011−252042A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125199(P2010−125199)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】