説明

半導体層の向上した噴射性能のための印刷プロセス

【課題】有機半導体フィーチャの堆積性能が改善されたプロセスを提供する。
【解決手段】1つ又はそれ以上の有機半導体を含む液体組成物を準備し、液体組成物を、第1の温度における非ニュートン型から第2の温度におけるニュートン型へ変換し、変換された液体組成物を基板上に堆積させて1つ又はそれ以上の半導体フィーチャを形成するステップを含む、半導体フィーチャを形成するプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は一般に有機半導体に関し、より具体的には向上した印刷性能を有する有機半導体の材料及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術は、過去数十年にわたり電子回路の発展に重要な役割を果たしてきた。半導体技術の2つの例として、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)加工技術及び有機半導体加工技術が挙げられる。
【0003】
有機半導体加工技術はより最近に開発されたもので、それにより半導体の性質を示す有機材料を用いて電子及び光電子デバイスが堅い又は柔軟な基板の上に形成される。
【0004】
CMOS加工技術に比べて、有機半導体加工技術は実施コストがより低く、柔軟な電子回路及びディスプレイのような特定の用途に対してより適している。これは、特に大面積ディスプレイ及び低価格RFIDタグに対して有利である。
【0005】
有機半導体を形成する通常の方法は、粒子含有分散液を基板に印刷するステップを含む。印刷可能な分散液は非ニュートン流体であることが多く、その場合粘度は加えられる歪み速度によって変化する。そのようなよく定まらない粘度を有する分散液は、印刷中に不十分な噴射性能をもたらし得る。例えば、印刷された有機半導体フィーチャに対して、不均一又は破線又は模様、ギザギザなどを含んだ、初めの設計からの著しいオフセットが観察されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、従来技術のこれら及び他の問題を克服して、有機半導体フィーチャの堆積性能を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々の実施形態により、本教示は、初めに1つ又はそれ以上の有機半導体を含む液体組成物を準備することにより半導体フィーチャを形成するためのプロセスを含む。次に液体組成物を第1の温度における非ニュートン型から第2の温度におけるニュートン型に変換することができる。ニュートン型に変換した液体組成物は次に基板上に堆積させて1つ又はそれ以上の半導体フィーチャを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本教示の種々の実施形態による、有機半導体フィーチャを形成するための例示的な方法を示す。
【図2】本教示の種々の実施形態による、有機半導体フィーチャを形成するための例示的な印刷システムを示す。
【図3】本教示の種々の実施形態による、例示的な非ニュートン液体組成物に対する例示的なレオロジー試験結果を示す。
【図4】本教示の種々の実施形態による、例示的な液体組成物の非ニュートン型からニュートン型への変換を示す。
【図5A】本教示の種々の実施形態による、非ニュートン型において噴射された例示的な半導体フィーチャを示す。
【図5B】本教示の種々の実施形態による、非ニュートン型において噴射された例示的な半導体フィーチャを示す。
【図6A】本教示の種々の実施形態による、ニュートン型において噴射された例示的な半導体フィーチャを示す。
【図6B】本教示の種々の実施形態による、ニュートン型において噴射された例示的な半導体フィーチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示的な実施形態は、有機半導体フィーチャを形成するための材料及びプロセスを提供する。一実施形態において、半導体フィーチャの形成には、不定の粘度を有する非ニュートン「分散液」と一定の粘度を有するニュートン「溶液」との間の液体組成物のレオロジー的変換を含めることができる。実施形態において改善された堆積性能により均一の半導体フィーチャを形成することができる。
【0010】
図1は本教示の種々の実施形態による、半導体フィーチャを形成するための例示的なプロセスを示す。図1のプロセス100は一連の行為又は事象として示し以下で説明するが、本発明はそのような行為又は事象の示された順序には限定されないことを認識されたい。例えば、幾つかの行為は異なる順序で、及び/又は、本明細書で示し及び/又は説明したのとは別の他の行為又は事象と同時に行うことができる。また、本発明の1つ又はそれ以上の態様又は実施形態による方法を実施するのに、示されたステップの全てを必要とはしない可能性がある。さらに本明細書で示した1つ又はそれ以上の行為は、1つ又はそれ以上の別個の行為及び/又は段階で行うことができる。
【0011】
図1の110において、1つ又はそれ以上の半導体材料を適切な有機溶媒中に分散させることにより液体組成物を形成することができる。
【0012】
実施形態において、半導体材料は以下の化学式(I)を有する1つ又はそれ以上の有機半導体を含むことができる。
【化1】

(I)
式中、Aは二価連結基であり、R1及びR2は独立に、水素、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、パーハロアルキル、アルコキシアルキル、シロキシ置換アルキル、ポリエーテル、アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択され、nは2から約5,000までである。
【0013】
実施形態において、化学式(I)の二価連結基Aは以下の構造及びそれらの組合せから選択される構造を含むことができる。
【化2】

式中、各々のR’は独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、-CN、及び-NO2から成る群から選択される。
【0014】
さらに別の実施形態において、半導体材料は以下の化学式を有する化合物を含むことができる。
【化3】

(II)
【化4】

(III)
【化5】

(IV)
【化6】

(V)
【化7】

(VI), 及び
【化8】

(VII)
式中、R1、R2、R’、及びR”は独立に、i)水素、ii)アルキル又は置換アルキル、iii)アリール又は置換アリール、iv)アルコキシ又は置換アルコキシ、v)適切なヘテロ原子含有基、vi)ハロゲン、又はそれらの混合物のうちから選択され、nは約2から約5,000までの、約2から約2,500までの、約2から約1,000までの、約100から約800までの、又は約2から約100までの整数である。炭化水素は、例えばゼロ乃至約35個の炭素原子、又は約1乃至約30個の炭素原子、又は約1乃至約20個の炭素原子、又は約6乃至約18個の炭素原子を含む側鎖を含んだアルキル、アルコキシ、アリール、及びそれらの置換誘導体などとすることができる。
【0015】
実施形態において、R1及びR2は同じ又は異なるものとし、各々独立に、約6乃至約30個の炭素原子、又は約6乃至約20個の炭素原子を含む長い炭素側鎖から選択することができ、R’又はR”は同じ又は異なるものとし、各々独立に0乃至約5個の炭素原子を含む置換基から選択することができる。或は、R1及びR2は各々独立に0乃至約5個の炭素原子を含む置換基から選択することができ、R’は6乃至約30個の炭素原子を含む長い炭素側鎖とすることができる。
【0016】
実施形態において、R1及びR2、R’、並びにR”は独立に、約1乃至約35個の炭素原子を有するアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシル、或は約7乃至約42個の炭素原子を有するアリールアルキル、例えば、メチルフェニル(トリル)、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル、ペンタデシルフェニル、ヘキサデシルフェニル、ヘプタデシルフェニル、及びオクタデシルフェニルとすることができる。他の実施形態において、R1、R2、R’及びR”は独立に、約1乃至約35個の炭素原子を有するアルキル基又は置換アルキル基を表すことができる。
【0017】
特定の実施形態において、半導体材料は以下の化学式を有する化合物とすることができる。
【化9】

(1)
【化10】

(2)
【化11】

(3)
【化12】

(4)
【化13】

(5)
【化14】

(6)
【化15】

(7)
【化16】

(8)
【化17】

(9)
【化18】

(10)、及び
【化19】

(11)
実施形態において、例えば、ポリエチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィで測定したときのポリマーの数平均分子量(Mn)は、例えば、約1,000乃至約150,000を含んだ約500乃至約400,000とすることができ、その重量平均分子量(Mw)は約1,500乃至約200,000を含んだ約600乃至約500,000とすることができる。
【0018】
特定の実施形態において、半導体材料は化学式(1)の化合物とすることができる。別の特定の実施形態においては、半導体材料は化学式(2)乃至(5)の化合物とすることができる。
【0019】
実施形態において、用いる溶媒の種類により、溶媒への半導体材料の効果的な混合又は分散をもたらすことができる。実施形態において溶媒は芳香族溶媒とすることができる。幾つかの実施形態において、溶媒はハロゲン化芳香族溶媒とすることができる。例示的なハロゲン化芳香族溶媒としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(1,2−ジクロロベンゼン及び1,3−ジクロロベンゼン)、トリクロロベンゼン、又はクロロトルエンを挙げることができる。特定の実施形態において、溶媒は1,2−ジクロロベンゼンを含むことができる。幾つかの実施形態において、溶媒は非ハロゲン化溶媒とすることができる。例示的な非ハロゲン化芳香族溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、テトラヒドロナフタレンなどを挙げることができる。幾つかの実施形態において、溶媒は非芳香族溶媒とすることができる。例示的な非芳香族溶媒としては、クロロホルム、クロロエタン、シクロヘキサン、ビシクロへキシルなどを挙げることができる。
【0020】
例示的な実施形態において、液体組成物は、例示的な溶媒であるジクロロベンゼン中に分散させたポリ(3,3’’’-ジアルキル-クォーターチオフェン)(PQT-12)を含むことができる。
【0021】
実施形態において、有機半導体に加えて、液体組成物は、例えば、ナノチューブ、ナノワイヤ・ナノドット、量子ドット、ナノロッド、ナノ結晶、ナノテトラポッド、ナノトリポッド、ナノバイポッド、ナノ粒子、ナノソー、ナノスプリング、ナノリボン、及び/又は任意の他の適切なナノ材料若しくはナノ材料の組合せのような任意の適切なナノ材料をさらに含み、形成される半導体のキャリア移動度及び導電率を向上させるように形成することができる。
【0022】
実施形態において、周囲温度(例えば、凡そ20−25℃)より高い温度を用いて溶媒中の有機半導体の分散/溶解を促進することができる。この後に冷却プロセスを行い周囲温度における液体組成物を形成することができる。実施形態において、何れかの適切なプロセス、例えば、超音波処理又は機械的撹拌を用いて、溶媒中の有機半導体の分散/溶解を促進することができる。
【0023】
例えば、有機半導体は、用いる有機半導体及び溶媒に応じて、例えば約80℃までの高温で溶媒に溶解させることができる。次いで、この溶液を室温(凡そ20−25℃)まで冷却することにより、分散液を形成して液体組成物を形成することができ、この場合、溶解した有機半導体は凝集し、例えば、溶媒中のナノ構造体になる。実施形態において、冷却中に分散液を超音波処理することができる。
【0024】
実施形態において、有機半導体は、溶媒中の半導体凝集物又は半導体ナノ粒子のような半導体粒子を形成することができる。その結果、半導体粒子を含む形成された液体組成物は不定の粘度を有する非ニュートン流体となり得る。即ち、半導体粒子を含む液体組成物の粘度は液体組成物に剪断力が加わると変化する可能性がある。
【0025】
種々の実施形態において、半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物は、約0℃乃至約40℃又は約20℃乃至約40℃の温度を含む、0乃至約50℃の範囲の第1の温度において安定に存在し得る。さらに、半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物は、例えば少なくとも約2日間の長い保存期間を有し得る。他の実施形態は、例えば約1年又はそれ以上の長い保存期間を有する安定な非ニュートン液体組成物を含むことができる。第1の温度における非ニュートン液体組成物の安定性は、さらに後の処理の前の貯蔵及び運搬を容易にすることができる。
【0026】
種々の実施形態において、非ニュートン液体組成物中の半導体粒子は、様々な規則正しい又は不規則な形状、及び様々な寸法を含み得る。例えば、半導体粒子は、約1000nm又はそれ以下の少なくとも1つの短寸法を有するナノメートルスケールの凝集物を含み得る。実施形態において、非ニュートン液体組成物中の半導体ナノ粒子は、ナノチューブ、ナノフィブリル、ナノロッド、ナノベルト、ナノシャフト、ナノピラー、ナノワイヤ、ナノニードル又はこれらの組合せを含むが、それらに限定されない様々な規則正しい又は不規則な形状を有する可能性がある。
【0027】
種々の実施形態において、非ニュートン液体組成物中の半導体の約0.5%乃至約100%はナノ凝集物となり得る。幾つかの実施形態において、非ニュートン液体組成物中の半導体の少なくとも約30%はナノ凝集物となり得る。他の実施形態において、非ニュートン液体組成物中の半導体の約50%乃至約80%はナノ凝集物となり得る。
【0028】
様々な実施形態において、半導体粒子を含んだ非ニュートン液体組成物を基板上に直接堆積させる場合、例えば基板上に噴射する場合、望ましくない欠陥が観察される可能性があり、その理由は非ニュートン液体組成物の剪断粘度が高周波数で噴射されるときプリントヘッド内で変化し得るからである。
【0029】
ステップ120において、ステップ110で形成された非ニュートン液体組成物を一時的にニュートン液体組成物に変換することができる。即ち、液体組成物の歪み対応力曲線を、原点を通る直線にすることができる。従ってニュートン液体組成物はその比例定数によって決定される一定の粘度を有することができる。
【0030】
種々の技術を用いて液体組成物のそのようなレオロジー変換を行うことができる。例えば、実施形態において加熱プロセス又は他の適切なプロセスにより、非ニュートン液体組成物をニュートン液体組成物に変換することができる。加熱プロセスは、例えば、高温を用いて又は段階的に行うことができる。実施形態において加熱温度は、特定の液体組成物の非ニュートン状態とニュートン状態の間の変換温度に応じて選択することができる。
【0031】
種々の実施形態において、次ぎに変換温度は、例えば液体組成物のレオロジー的性質を測定することにより決定することができる。例えば、振動測定法を用いて非ニュートン液体組成物の複素粘度を温度の関数として測定することができる。変換温度は、液体組成物が均一なニュートン溶液になることを意味する、液体組成物の複素粘度が一定になるときの開始温度又は温度範囲とすることができる。この変換の間、半導体粒子は溶媒中で均一に又は完全に溶解することができ、ある場合には、均一なニュートン溶液内には凝集物又は粒子がなにも観察できなくなる。特定の実施形態において、ニュートン溶液には有機半導体の凝集物又は粒子が実質的に存在しない状態になり得る。
【0032】
種々の実施形態において、非ニュートン液体組成物を第2の温度に加熱することができる。第2の温度は、特定の液体組成物の変換温度(又は変換温度範囲)とするか又は変換温度(又は変換温度範囲)より高くすることができる。例示的な実施形態において非ニュートン液体組成物は、約20℃乃至約120℃、ある場合には約40℃乃至約120℃の高温に加熱することができる。他の例示的な実施形態において、半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物は、約45℃乃至約80℃の範囲の高温に加熱して変換することができる。
【0033】
その結果、半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物を変換して、ニュートン液体組成物の均一溶液にすることができる。
【0034】
実施形態において、そのような変換は、例えば約1時間未満の間に行うことができる。幾つかの実施形態において、非ニュートン型からニュートン型への変換は、約30分間又はそれ以下、幾つかの実施形態においては約10分間又はそれ以下の間に起こり得る。さらに別の実施形態においては、約1分間又はそれ以下の迅速変換を達成することができる。
【0035】
実施形態において変換後、ニュートン液体組成物はある時間、例えば約1時間又はそれ以下の間平衡化させることができる。幾つかの実施形態においては、ニュートン液体組成物は約30分間又はそれ以下の間、又は幾つかの実施形態においては約10分間又はそれ以下の間平衡化させることができる。他の実施形態において、ニュートン液体組成物は約1分間又はそれ以下の間平衡化させることができる。実施形態において液体組成物は、短時間の間第2の温度に保って有機半導体の劣化を防ぐことができる。
【0036】
種々の実施形態において、液体組成物に用いる材料及び方法に応じて、他の変換温度、変換温度範囲、及び/又は平衡化時間を用いることができる。
【0037】
種々の実施形態において、加熱は、ヒータ、例えば、オーブン、放射ネルギー源、熱電対、又はそれらの組合せを用いて行うことができる。
【0038】
図1の130において、ニュートン液体組成物は基板上の半導体フィーチャに堆積させることができる。堆積した半導体フィーチャは次に、例えば蒸発又は加熱プロセスにより固化又は乾燥させることができる。その結果種々の半導体フィーチャ、例えば、半導体層、パターン、ライン又はドットを形成することができる。
【0039】
種々の実施形態において、堆積は印刷又はコーティング技術を用いて実施することができる。例示的な印刷技術としては、インクジェット印刷、リソグラフィ又はオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、スタンピング、ミクロ接触印刷、グラビア印刷などを挙げることができる。例示的なコーティング技術としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティングなどを挙げることができる。一実施形態において堆積はインクジェット印刷とすることができる。
【0040】
実施形態において、ニュートン液体組成物の堆積の際に、例えば上記の半導体層、パターン、ライン又はドットを含む半導体フィーチャのアレイを形成するように、所定のアレイを設計することができる。
【0041】
実施形態において、結果として得られたアレイ中の各半導体フィーチャは、初めの設計からのオフセット、即ち、中心間距離を有する可能性がある。実施形態においてオフセットは0乃至約30ミクロン、又は幾つかの実施形態においては0乃至約20ミクロンの範囲にすることができる。他の実施形態において、形成された半導体フィーチャとその初めの設計とのオフセットは約10ミクロン未満にすることができる。
【0042】
図2は、本教示の種々の実施形態による、半導体フィーチャを印刷するための例示的なシステム200を示す。図2に示したシステム200は一般化した概略図を表すこと、及び、他の要素/デバイスを加えることができる、或は既存の要素/デバイスを除去又は変更することができることが、当業者には直ちに分かるはずである。
【0043】
図2に示すように、システム200は印刷可能な基板205と、カートリッジ210、各々がジェットノズル225有する1つ又はそれ以上のプリントヘッド220、及びヒータ230を含む印刷ステーションと、を含むことができる。
【0044】
カートリッジ210は、実施形態において、半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物のようなインク分散液を供給するのに用いることができる。
【0045】
ヒータ230は、プリントヘッド220及び/又はジェットノズル225と共に、プリントヘッド220及び/又はジェットノズル225を通過する非ニュートン液体組成物を加熱するように構成することができる。このようにして半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物分散液をその場でニュートン液体組成物溶液に変換することができる。
【0046】
実施形態において、液体組成物のニュートン特性により、インクジェットノズルの目詰まりの発生を最小限にすることができ、印刷又は噴射の均一性並びに堆積した半導体フィーチャの均一性を達成することができる。
【0047】
次に、加熱された非ニュートン液体組成物を、ジェットノズル225を通して印刷可能基板205上に噴射することができる。印刷可能基板205は、噴射された液体組成物を受け取り、例えば乾燥プロセスにより半導体フィーチャを形成するように構成することができる。
【0048】
一実施形態において、ニュートン液体組成物の堆積の前に、印刷可能基板の表面を化学的に処理するか又は機械的に擦ることができる。実施形態において印刷可能基板は、有機基板、無機基板、可撓性基板又は剛性基板とすることができる。実施形態において印刷可能基板としては、例えば、ガラス、シリコン(シリコン基板を支える電極を含む)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(エチレンナフタラート)(PEN)、インジウムスズ酸化物(ITO)、又は任意の他の適切な基板を挙げることができる。
【0049】
実施形態において、基板を第3の温度にすることができる。第3の温度は、例えば、約20℃乃至約80℃、又は約20℃乃至約40℃を含む約0乃至約120℃とすることができる。さらに別の実施形態において、第3の温度は第1の温度に類似の、例えば、液体組成物の変換温度より低い温度にすることができる。換言すれば、ニュートン流体は基板に達するとき非ニュートン流体になることができる。即ち、ナノ凝集物又はゲルが基板上で再形成される。全プロセスを考えると、液体組成物は非ニュートン状態(ナノ凝集物相又は分散液相を有する)からニュートン状態(溶液相中にナノ凝集物が実質的に存在しない)への相変化、及び非ニュートン状態(ナノ凝集物相又は分散液相を有する)に戻る相変化を受けることができる。この相変化印刷プロセスにより、ニュートン状態での高精度噴射、及び非ニュートン状態への戻りによる基板上での液体組成物の低拡散性又は境界明瞭な小滴が可能になる。低剪断速度において高粘度を有する非ニュートン・インク流体のフィーチャはインク小滴の範囲限定及び拡散の減少を助長することができる。
【0050】
実施形態において、本明細書で開示したプロセス100及び/又はシステム200は、例えば、トランジスタ、センサー、発光ダイオード、光起電デバイス、又は任意の他の適切なデバイス、又はデバイスの組合せ、のようなデバイスを形成するのに用いることができる。
【0051】
以下の実施例は、本発明及びその有利な特性の例証であり、多少なりとも本開示又は特許請求の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
【実施例1】
【0052】
有機半導体PQT。
有機半導体PQTを、半導体フィーチャを形成するための例示的な有機半導体として用いた。有機半導体PQTは以下の構造を有するものであった。
【化20】

PQT-12、R=C1225
【実施例2】
【0053】
PQT半導体粒子を含むPQT分散液又は非ニュートン液体組成物。
PQT半導体粒子を含む非ニュートン液体組成物は、PQT-12半導体を1,2-ジクロロベンゼン溶媒中に約80℃までの高温において溶解させ、次いで冷却するプロセスにより調製した。冷却中、粒子分散液を超音波処理した。PQT及び/又はナノPQT粒子を含む紫色の分散液を得たが、これは室温で非常に安定であり、例えば、約1年を超える保存寿命を有する。
【0054】
PQT分散液のレオロジー特性は円錐円板ジオメトリのRFS3流体分光計(デラウェア州ニューカッスル所在のティー・エー・インスツルメント製)を用いて測定した。名目円錐角が0.02ラジアン及びギャップが48.3ミクロンのTi(チタン)ベースの円錐を用いた。
【0055】
PQT分散液に対して、定常速度掃引試験を温度25℃及び1乃至1000s-1の範囲の周波数で行った。図3は測定結果を示し、これはPQT分散液が非ニュートン流体であることを示す。具体的には、図3はPQT分散液が剪断減粘特性(又は偽塑性特性)を有すること、即ち、低剪断速度では高い粘度(例えば、100cps以上)を有し、高剪断速度(例えば、約103-1)では低い粘度(例えば、約2〜3cps)を有することを示す。
【実施例3】
【0056】
非ニュートン型からニュートン型への変換。
実施例2のPQT分散液に対して小振幅振動測定を行ったが、その際、非ニュートン分散液を、約2℃の温度刻みで約25℃から約65℃までの高温に加熱した。各々の上昇温度は約120秒の平衡時間を有した。
【0057】
このレオロジー振動測定中、約1Hzの一定周波数を用いた。図4に示すように、PQT分散液を室温から約40℃まで徐々に加熱したとき、複素粘度は徐々に減少した。しかし、温度を約40℃又はそれ以上に、例えば、この実施例では約65℃まで上昇させると複素粘度は一定になり、ニュートン特性を示す。換言すれば、この例示的なPQT分散液は、40℃付近に、非ニュートン分散液からニュートン溶液に変化する変換温度又は狭い変換温度範囲を有した。
【実施例4】
【0058】
非ニュートン型において噴射された半導体フィーチャ。
この比較(又は対照)実施例においては、10pLカートリッジを取り付けたディマティクスのインクジェットプリンター用いた。プリントヘッドは室温に設定した。実施例2のPQT分散液を非ニュートン型において堆積させた。100μmの間隔の4×4cmのドットアレイ、及び各々が単一小滴幅を有する2つの直線を設計し、実施例として印刷した。
【0059】
図5A及び図5Bは、本教示の種々の実施形態による、非ニュートン型で噴射された例示的な半導体フィーチャを示す。
【0060】
具体的には、図5Aはドットアレイの噴射結果を略図で示す。図示したように、大部分の領域は設計パターンに類似した規則正しいドットアレイを示すが、誤方向の堆積が観察された。図5Bは細い線の噴射結果を略図で示す。ギザギザ及び/又は損傷した領域がまた、この実施例2の非ニュートンPQT分散液に対して観察された。
【実施例5】
【0061】
ニュートン型において噴射された半導体フィーチャ。
この実施例においては、実施例4と同じプリンター及びカートリッジを用いた。カートリッジのプリントヘッドは60℃に設定したが、これは実施例3で示された変換温度より高い。従って、実施例2のPQT分散液がプリントヘッドを通過するとき、粒子分散液はニュートン溶液に変化することができ、次にこれがノズルから噴射される。比較のために図5A及び図5Bに示したのと同じパターン設計を印刷した。
【0062】
図6A及び図6Bは、本教示の種々の実施形態による、ニュートン型で噴射された例示的な半導体フィーチャを示す。
【0063】
具体的には、図6Aはドットアレイの噴射結果を略図で示す。図示したように、全体の4×4cmアレイに対して、誤噴射小滴は観察されなかった。図6Bは細い線の噴射結果を略図で示す。図示したように、印刷された線は、損傷領域が何もなく、滑らかで均一であることが観察された。
【0064】
図5A及び図5Bと比較して、図6A及び図6Bは、開示したプロセス及びシステムを用いて達成された高品質の半導体印刷又は半導体フィーチャを示す。
【符号の説明】
【0065】
100:プロセス」
110、120、130:ステップ
200:システム
205:基板
210:カートリッジ
220:プリントヘッド
225:噴射ノズル
230:ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体フィーチャを形成するプロセスであって、
1つ又はそれ以上の有機半導体を含む液体組成物を準備し、
前記液体組成物を、第1の温度における非ニュートン型から第2の温度におけるニュートン型へ変換し、
前記変換された液体組成物を基板上に堆積させて1つ又はそれ以上の半導体フィーチャを形成する、
ステップを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記変換するステップのための変換温度を決定し、
前記液体組成物を前記第1の温度から前記第2の温度まで加熱する、
ステップをさらに含み、
前記第2の温度は前記決定された変換温度であるか又は前記決定された変換温度より高い温度である、
ことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の温度は約0乃至約50℃の範囲であり、前記第2の温度は約40℃乃至約120℃の範囲の高温度であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記1つ又はそれ以上の有機半導体は、以下の化学式を有し、
【化1】

式中、R1及びR2は独立に、水素、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、パーハロアルキル、アルコキシアルキル、シロキシ置換アルキル、ポリエーテル、アルコキシ、及びハロゲンから成る群から選択され、nは2乃至約5,000であり、
式中、Aは2価連結基であり、以下の化学式の化合物、
【化2】





及びそれらの組合せ、から成る群から選択され、
式中、各々のR’は独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、−CN、及び−NO2から成る群から選択される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
半導体フィーチャを形成するプロセスであって、
溶媒中に分散した複数の有機半導体粒子を含み、約2日より長い保存寿命を有する非ニュートン液体組成物を形成し、
前記液体組成物を加熱し、前記複数の有機半導体粒子を前記溶媒中に均一に溶解させてニュートン液体組成物を形成し、
前記ニュートン液体組成物を基板上に堆積させて1つ又はそれ以上の均一な半導体フィーチャを前記基板上に形成する、
ステップを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項6】
前記加熱するステップは、プリントヘッドを通過する前記液体組成物を加熱して一定の粘度を有するように、前記プリントヘッドと共に構成されたヒーターによって実施されることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−66408(P2011−66408A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200978(P2010−200978)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】